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JP3584465B2 - 吸音構造体 - Google Patents
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JP3584465B2 - 吸音構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸音や遮音を行う防音材において、とくに吸音性能を高めたシート状の樹脂製吸音構造体に関するものであり、例えば自動車のボディ部品や内装部品などの板状部品として用いるのに好適な吸音構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来において、樹脂製の吸音構造体としては、共鳴により吸音を行うものや膜により吸音を行うものがある。共鳴吸音を行う吸音構造体は、例えばレゾネータのように大きな容積を有するものとなっている。また、レゾネータは単体において吸音ピークが1つであるため、広い周波数範囲での吸音性能を備えた吸音構造体とするには、容積が異なるレゾネータを複数用いる必要がある。このような大きな容積を有する樹脂製の吸音構造体は、ブロー成形により比較的容易に成形することができ、剛性を備えた構造にすることも容易である。
【0003】
他方、膜吸音を行う吸音構造体は、シート状に成形することが容易である。しかし、シート状の吸音構造体は、共鳴吸音の吸音構造体に比べて剛性が低くなりやすいので、所定の剛性を確保しようとする場合には、厚みを増大させたり補強用のリブを設けたりする必要があり、また、実際に使用する場合には、その背後に空気層を設ける必要があるので、空気層を維持するための隔壁等の手段を設けることが不可欠である。
【0004】
さらに、従来にあっては、シート状の部材を用いるとともに共鳴吸音の性能を付加した吸音構造体が提案されており、例えば、特開平10ー18471号公報に記載されているように、孔部を設けた平板と凹凸状に成形した成形板とを重ね合わせて、平板と成形板との間に様々な容積の空間部を形成したものや、特開平8−301024号公報に記載されているように、透孔を形成した複数枚のシートを空気層を介して重ね合わせたものがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したような従来の吸音構造体において、共鳴吸音を行う吸音構造体にあっては、剛性を備えたものを容易に成形し得る反面、全体が大型になりやすいと共に、シート状に成形することがきわめて困難であるという問題点があり、他方、膜吸音を行う吸音構造体にあっては、シート状に成形すること自体は容易であるが、剛性を高めるための構造や空気層を確保するための構造を採用すると、その分重量や成形性の面で不利になるという問題点があった。
【0006】
また、シート状の部材を用いるとともに共鳴吸音の性能を付加した吸音構造体にあっては、いずれも複数の板材を積層した構造であるため、各板材を成形したのち、各板材を連結するための接着や溶着を行う必要があり、製造上の手間やコストがかかるという問題点があり、従来においては、とくにシート状の樹脂製吸音構造体において、吸音性能および強度の向上や、成形性の向上等を図るうえでの改善が要望されていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記したような従来の状況に鑑みて成されたもので、シート状の樹脂製吸音構造体において、広い周波数範囲での吸音性能を得ることができ、軽量で且つ剛性を得ることが容易であると共に、低コストで容易に成形することが可能であり、さらに、通常の繊維製吸音構造体の敷設が困難な部位や湿潤な環境にも適用可能である吸音構造体を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる吸音構造体は、請求項1として、シート状に成形した樹脂製の吸音構造体であって、少なくとも片面側に対して、表面に平行な内部断面の大きさよりも小さい開口部を有する中空部を複数備え、開口部および中空部が共鳴により吸音を行う共鳴吸音手段であると共に、開口部および中空部を形成する表層部が膜により吸音を行う膜吸音手段であって、共鳴吸音手段の共鳴吸音ピーク周波数frを10(Hz)とし、膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffを10(Hz)としたときに、双方の差の絶対値|x−y|が0.7以下である構成とし、請求項2として、共鳴吸音手段の共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffが、100〜20000Hzである構成とし、請求項3として、開口部の直径をd、表層部の厚さをt、中空部の深度をL、隣接する開口部同士の中心点間距離をD、表皮部面密度をM、空気の密度をρ、音速をcとしたときに、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffが、
Figure 0003584465
【0009】
により求められる構成とし、請求項4として、開口部の直径dが0.1〜3.0mm、表層部の厚さtが0.1〜20mm、中空部の深度Lが0.1〜100mm、隣接する開口部同士の中心点間距離Dが1〜50mmである構成とし、請求項5として、表面に直交する断面において、(吸音構造体の厚さX)−(表層部の厚さt)−(中空部の深度L)が1mm以上である構成とし、請求項6として、少なくとも片面側に、別の樹脂層を設けた構成とし、請求項7として、別の樹脂層に塗装塗膜が含まれている構成としており、上記の構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
また、本発明に係わる自動車用板状部品は、請求項8として、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を用いたことを特徴とし、さらに、本発明に係わる吸音構造体の成形装置は、請求項9として、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を成形する装置であって、成形空間であるキャビティを形成する固定型および可動型を備えると共に、少なくとも一方の型に、キャビティ内に突出する複数のガス注入用ノズルと、型外から各ガス注入用ノズルに成形用ガスを供給するガス供給系を備えたことを特徴としている。
【0011】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わる吸音構造体では、少なくとも片面側に対して、表面に平行な内部断面の大きさよりも小さい開口部を有する中空部を複数備えた構造になっており、開口部および中空部が共鳴吸音手段であって、開口部内の空気の質量と中空部内の空気ばね成分とによる共鳴現象を利用して共鳴吸音を行い、また、開口部および中空部を形成する表層部が膜吸音手段であって、表層部の質量と中空部内の空気ばね成分とによる膜振動を利用して膜吸音を行う。つまり、少なくとも片面側に共鳴吸音手段と膜吸音手段の両方を備えたシート状の樹脂製吸音構造体となっており、共鳴吸音および膜吸音の両方を行うことで広い周波数範囲での吸音が行われる。この際、当該吸音構造体では、共鳴吸音ピーク周波数frを10(Hz)とし、膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffを10(Hz)としたときに、双方の差の絶対値|x−y|を0.7以下としている。ここで、絶対値|x−y|を0.7よりも大きくすると、周波数域において双方の吸音ピークが離れ過ぎ、ピーク間の吸音効率向上の効果が得られなくなる。したがって、絶対値|x−y|を0.7以下とすることで、周波数の範囲において双方の吸音ピーク間の距離が適切なものとなり、吸音ピーク間の吸音率が向上する。
【0012】
本発明の請求項2に係わる吸音構造体では、開口部および中空部を備えた吸音構造体として共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffを100〜20000Hzとしている。ここで、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffを100Hzよりも小さくすると、中空部の容積が過大になってシート状吸音構造体の用を成さなくなり、また、20000Hzよりも大きくすると、人の可聴周波数域を越えるので吸音構造体の用を成さなくなる。したがって、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffを上記範囲とすることで、とくに中空部の容積がシート状の形態を損なわない大きさに設定され、シート状の吸音構造体としての形態が確保されることとなる。
【0013】
本発明の請求項3に係わる吸音構造体では、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffが100〜20000Hzの範囲となるように、式(1)および(2)において、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度L、隣接する開口部同士の中心点間距離D、表皮部面密度M、空気の密度ρ、音速cの各値が設定される。
【0014】
本発明の請求項4に係わる吸音構造体では、開口部の直径dを0.1〜3.0mm、表層部の厚さtを0.1〜20mm、中空部の深度Lを0.1〜100mm、隣接する開口部同士の中心点間距離Dを1〜50mmとしている。ここで、開口部の直径dを0.1mmよりも小さくすると、中空部の成形が困難になり、3.0mmよりも大きくすると、開口部の形状が不安定になる。また、表層部の厚さtを0.1mmよりも小さくすると、表層部のひけが大きくなり、20mmよりも大きくすると、中空部をガスの注入により成形する際に成形不良が発生しやすくなる。さらに、中空部の深度Lを0.1mmよりも小さくすると、充分な吸音効果が得られなくなり、100mmよりも大きくすると、安定した成形が困難になる。そしてさらに、隣接する開口部同士の中心点間距離Dを1mmよりも小さくすると、中空部同士の隔壁が薄くなって強度および剛性が低下し、50mmよりも大きくすると、中空部の容積が充分に得られなくなって所望の吸音周波数を得にくくなる。したがって、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度L、および隣接する開口部同士の中心点間距離Dを上記の範囲とすることで、例えば射出成形法や加熱圧縮成形法に基づいて当該吸音構造体を成形する際に、開口部や中空部の成形不良が防止されると共に、良好な吸音性能が確保されることとなる。
【0016】
本発明の請求項5に係わる吸音構造体では、表面に直交する断面において、(吸音構造体の厚さX)−(表層部の厚さt)−(中空部の深度L)を1mm以上としている。この値を1mmよりも小さくすると、成形する際にひけが発生して外観品質の低下が起こる。したがって、上記値を1mm以上とすることで、例えば射出成形法や加熱圧縮成形法に基づいて当該吸音構造体を成形する際に、とくに中空部の底部の成形不良が防止される。
【0017】
本発明の請求項6に係わる吸音構造体では、少なくとも片面側に、別の樹脂層を設けたので、樹脂層により外観を形成し得る。
【0018】
本発明の請求項7に係わる吸音構造体では、別の樹脂層に塗装塗膜が含まれているので、塗装塗膜により外観を形成し得る。
【0019】
本発明の請求項8に係わる自動車用板状部品では、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を用いたので、自動車のボディや内装を形成する板状部品において良好な吸音が行われる。
【0020】
本発明の請求項9に係わる吸音構造体の成形装置では、固定型と可動型で形成したキャビティに溶融樹脂を充填し、その充填途中あるいは充填後に、可動型を型開き方向に所定量移動させると共に、ガス供給系から複数のガス注入用ノズルを介して、キャビティの溶融樹脂内に成形用ガスを注入する。このとき、可動型の移動量は、注入する成形ガスの量に対応したものとなる。これにより、キャビティ内に突出したガス注入用ノズルによって開口部が形成されると共に、注入した成形ガスによって中空部が形成され、一回の成形において、片面側に開口部を有する中空部を複数備えた吸音構造体が得られる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わる吸音構造体によれば、シート状の樹脂製吸音構造体において、共鳴吸音手段および膜吸音手段の両方を備えたことにより、単体で高い吸音特性を広い周波数範囲に得ることができ、シート状吸音構造体としての吸音性能を著しく高めることができる。また、通常の繊維製吸音構造体の敷設が困難な部位や湿潤な環境にも適用することが可能であり、適用範囲を大幅に拡大することができる。さらに、開口部を有する複数の中空部を採用したことから、簡単な構造で高い吸音性能を得ることができると共に、軽量化を実現することができ、また、隣接する中空体同士の隔壁がリブの働きをするので、所望の強度ならびに剛性を容易に確保することができると共に、射出成形法や加熱圧縮成形法などに基づいて低コストで容易に成形することが可能になる。そしてさらに、共鳴吸音ピーク周波数frを10(Hz)とし、膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffを10(Hz)としたときに、双方の差の絶対値|x−y|を0.7以下としたことにより、周波数の範囲において双方の吸音ピーク間の距離を適切なものにすることができ、吸音ピーク間の吸音率をより向上させることができる。
【0022】
本発明の請求項2に係わる吸音構造体によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffを100〜20000Hzの範囲にしたことから、とくに中空部の容積がシート状の形態を損なわない大きさになり、共鳴吸音および膜吸音の両方を行うシート状吸音構造体として良好な吸音性能を広い周波数範囲に得ることができる。
【0023】
本発明の請求項3に係わる吸音構造体によれば、請求項2と同様の効果を得ることができるうえに、式(1)および(2)によって、共鳴吸音ピーク周波数fr、膜吸音ピーク周波数ff、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度L、および隣接する開口部同士の中心点間距離D等の各値を容易に設定することができ、当該吸音構造体を設計する際に、吸音特性のコントロールや剛性の確保などに容易に対処することができる。
【0024】
本発明の請求項4に係わる吸音構造体によれば、請求項1〜3と同様の効果を得ることができるうえに、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度L、および隣接する開口部同士の中心点間距離Dを設定したことにより、例えば射出成形法や加熱圧縮成形法に基づいて当該吸音構造体を成形する際に、開口部や中空部に成形不良の無い高品質な吸音構造体とすることができ、しかも良好な吸音性能を確保することができる。
【0026】
本発明の請求項5に係わる吸音構造体によれば、請求項1〜4と同様の効果を得ることができるうえに、(吸音構造体の厚さX)−(表層部の厚さt)−(中空部の深度L)を1mm以上としたことにより、例えば射出成形法や加熱圧縮成形法に基づいて当該吸音構造体を成形する際に、とくに中空部の底部におけるひけ等の成形不良が防止され、外観体裁の良好な高品質の吸音構造体とすることができる。
【0027】
本発明の請求項6に係わる吸音構造体によれば、請求項1〜5と同様の効果を得ることができるうえに、少なくとも片面側に別の樹脂層を設けたことにより、樹脂層によって良好な外観品質を得ることができ、例えば、模様等の加飾、耐擦性および光沢等を有する樹脂層を用いることで、吸音構造体の商品性の向上なども実現することができる。
【0028】
本発明の請求項7に係わる吸音構造体によれば、請求項6と同様の効果を得ることができ、とくに、別の樹脂層に含まれた塗装塗膜によってきわめて良好な外観品質を得ることができる。
【0029】
本発明の請求項8に係わる自動車用板状部品によれば、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を自動車のボディや内装に用いることにより、車内および車外に対してエンジン等の駆動系から発生する音をより低減させたり、車内の静粛性をより高めたりすることができ、自動車の品質のさらなる向上に貢献することができる。また、当該吸音構造体をボディや内装に用いれば、他の吸音材が不要になるので、自動車の部品点数の削減、製造工程の削減、軽量化および低コスト化も実現することができる。さらに、通常の繊維製吸音構造体の敷設が困難な部位や湿潤な環境にも充分に適用することができる。
【0030】
本発明の請求項9に係わる吸音構造体の成形装置によれば、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体、すなわち開口部を有する中空部を複数備えたシート状の樹脂製吸音構造体を一工程で容易に成形することができ、吸音性能の高いシート状吸音構造体を得るうえで、生産性の向上や低コスト化を実現することができる。また、可動型の型開き量、ガス注入用ノズルの配置、同ノズルの突出量や径などを変更することにより、当該吸音構造体の厚さ、開口部および中空部の配置や大きさを変更し、これにより剛性や吸音特性などが異なる吸音構造体を成形することができる。
【0031】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明に係わる吸音構造体(自動車用板状部品)および吸音構造体の成形装置の一実施例を説明する。なお、当該吸音構造体は、吸音を行う構造に主な特徴を有することから、以下の実施例においては吸音を行うものとして述べるが、当然のことながら遮音性能をも有するものであり、防音材として使用することができる。
【0032】
図1は、シート状の樹脂製吸音構造体の成形装置を説明する図であって、図1(a)に示す成形装置1は、成形空間であるキャビティ2を形成する固定型3および可動型4を備えており、固定型3に、キャビティ2内に突出する複数のガス注入用ノズル5と、型外から各ガス注入用ノズル5に成形用ガスを供給するガス供給系6を備えている。
【0033】
固定型3は、その内側に、可動型4側に突出するコア型7を備え、コア型7と可動型4との間でキャビティ2を形成すると共に、コア型7の背面側にガス供給系6の一部であるガス供給空間8を形成している。そして、コア型7に、その背面側から可動型4側に至る複数のガス注入用ノズル5が設けてある。また、固定型3は、型外から本体、ガス供給空間8およびコア型7を貫通してキャビティ2側に至る供給路9を備えると共に、この供給路9に溶融樹脂を加圧供給する樹脂供給手段(図示せず)を備えている。
【0034】
各ガス注入用ノズル5は、図2に示すように、円筒状の本体部の先端にガス噴出孔10を備えたものであって、その先端部をコア型7から突出させた状態に設けてある。このとき、各ガス注入用ノズル5は、後記する吸音構造体の開口部の直径に相当する外径を有すると共に、吸音構造体の表層部の厚さに相当する突出量に設定され、さらに、吸音構造体における複数の中空部の位置に合わせて配置されている。
【0035】
ガス供給系6は、成形ガスの供給源(タンク)11から固定型3のガス供給路12に至る配管13に、圧力調整バルブ14、第1制御弁15、加熱装置16および第2制御弁17を順に備えており、供給源10から固定型3のガス供給空間8に成形ガスを供給し、その成形ガスを各ガス注入用ノズル5に供給する。このように、ガス供給空間8を設けることにより、各ガス注入用ノズル5に対して成形ガスの圧力が均等に働くようにしている。なお、成形ガスとしては、例えば窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0036】
可動型4は、コア型7の外側に嵌合する状態にして、固定型3に閉じ合わされる。したがって、可動型4は、図1の左方向となる型開き方向に移動させた際には、コア型7の突出長さの範囲においてキャビティ2を閉空間として維持するようになっている。
【0037】
ここで、吸音構造体の材料となる樹脂としては、加熱成形時に流動性を帯びているものであれば良く、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでも用いることができる。熱硬化性樹脂の場合は、触媒種、量あるいは加熱温度等で硬化を調整することで容易に使用することができる。なお、好ましくは、中空部の形成時間の設定が容易な熱可塑性樹脂を使用するのがより良い。また、樹脂は、通常使用されているタルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維および有機繊維等の補強材を配合したものであっても良い。
【0038】
吸音構造体の成形装置1は、図1(a)に示す型閉じの状態において、キャビティ2に溶融樹脂を加圧充填し、充填途中あるいは充填完了時に、図1(b)に示すように、コア型7の突出長さの範囲で可動型4を型開き方向に移動させると共に、ガス供給系6からガス供給空間8に成形ガスを供給し、各ガス注入用ノズル5から溶融樹脂内に成形ガスを注入する。このとき、可動型4の移動量は、成形しようとする中空部の大きさつまり成形ガスの注入量に対応した量である。その後、樹脂が硬化したところで可動型4を完全な型開き位置まで移動させ、シート状の樹脂製吸音構造体Aを取出す。
【0039】
上記の吸音構造体Aは、キャビティ2に突出するガス注入用ノズル5の先端部分によって開口部Bが形成されていると共に、注入した成形ガスによって中空部Cが形成されており、図3および図4に一部を示すように、片面側に、円形の開口部Bを有する中空部Cを所定の間隔で複数備えたものとなっている。また、吸音構造体Aは、成形装置1を用いた一回の工程で成形完了となり、低コストで容易に成形することができる。
【0040】
ここで、吸音構造体Aにおいて、開口部Bは、中空体Cのほぼ中心に位置すると共に、当該吸音構造体Aの表面に平行な中空部Cの内部断面の大きさよりも小さいものとなっている。そして、吸音構造体Aは、開口部Bおよび中空部Cにより、共鳴により吸音を行う共鳴吸音手段を構成し、開口部Bおよび中空部Cを形成する表層部Dにより、膜により吸音を行う膜吸音手段を構成している。
【0041】
すなわち、吸音構造体Aは、その作用を図5に模式的に示すように、開口部B内の空気の質量M1と中空部C内の空気ばね成分S1とによる共鳴現象を利用して共鳴吸音を行い、また、表層部Dの質量M2と中空部C内の空気ばね成分S2とによる膜振動を利用して膜吸音を行うこととなり、単体で共鳴吸音と膜吸音の両方を行って、高い吸音特性を広い周波数範囲で得ることができるものとなっている。しかも、吸音構造体Aは、複数の中空部Cにより軽量化が成されていると共に、隣接する中空部C同士の隔壁Eが補強用のリブの働きをすることとなるので、シート状の形態でありながら所定の剛性を備えたものとなっている。したがって、単体での使用が充分可能である。
【0042】
さらに、吸音構造体Aは、その吸音特性として、共鳴吸音手段(開口部Bおよび中空部C)の共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音手段(主に表層部D)の膜吸音ピーク周波数ffが100〜20000Hzの範囲であると共に、共鳴吸音ピーク周波数frを10(Hz)とし、膜吸音ピーク周波数ffを10(Hz)としたときに、双方の差の絶対値|x−y|が0.7以下となるようにしてある。
【0043】
これは、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffを100Hzよりも小さくする場合には、中空部Cの容積を大きくしなければならず、その結果、シート状吸音構造体としての用を成さなくなるからであり、20000Hzよりも大きい周波数域に対しては、人の可聴周波数域を越えるので吸音構造体としての用を成さないからである。
【0044】
また、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffの差の絶対値|x−y|を0.7よりも大きくすると、周波数域において双方の吸音ピークが離れ過ぎ、共鳴吸音および膜吸音の単独のピークが別々に現れるにとどまり、ピーク間の吸音率向上の効果が得られなくなるからである。
【0045】
つまり、吸音構造体Aは、上記の吸音特性を備えることで、シート状の吸音構造体として高い吸音性能を広い周波数域で得られるものとなっている。
【0046】
さらに、吸音構造体Aの上記の吸音特性を得るには、開口部Bの直径d、表層部Dの厚さt、中空部Cの深度L、隣接する開口部C同士の中心点間距離Dの値を各々設定する。これら設定には、表皮部面密度をM、空気の密度をρ、音速をc(m/s)として、次の式(1)および(2)が用いられる。
Figure 0003584465
【0047】
上記の式(1)および(2)に基づいて、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffが100〜20000Hzの範囲となるように各値を設定する。また、成形装置1では、各設定値を備えた吸音構造体Aが得られるように、ガス注入用ノズル5の直径およびキャビティ2への突出量、ガス注入用ノズル5の配置、成形ガスの注入量および注入圧力、可動型4の移動量およびタイミング等を各々調整する。
【0048】
各設定値は、より具体的には、開口部Bの直径dを0.1〜3.0mmとし、表層部Dの厚さtを0.1〜20mmとし、中空部Cの深度Lを0.1〜100mmとし、隣接する開口部C同士の中心点間距離Dを1〜50mmとし、吸音構造体Aの表面に直交する断面において、(吸音構造体Aの厚さX)−(表層部Dの厚さt)−(中空部Cの深度L)を1mm以上とする。
【0049】
開口部Bの直径dを上記範囲としたのは、0.1mmよりも小さくすると、中空部Cを充分に形成することができなくなり、3.0mmよりも大きくすると、開口部Bの形状が不安定になるからである。
【0050】
表層部Dの厚さtを上記範囲としたのは、0.1mmよりも小さくすると、表層部Dのひけが大きくなり、20mmよりも大きくすると、ガス注入用ノズル5の突出量が大きくなって成形ガスがノズル周囲に回り込み、安定した厚みが得られなくなるからである。
【0051】
中空部Cの深度Lを上記範囲としたのは、0.1mmよりも小さくすると、充分な吸音効果が得られなくなり、100mmよりも大きくすると、可動型4の移動量が大きくなって安定した吸音構造体が得られなくなるからである。
【0052】
隣接する開口部C同士の中心点間距離Dを上記範囲としたのは、1mmよりも小さくすると、中空部C同士の隔壁Eが薄くなって吸音構造体Aの強度ならびに剛性が弱くなり、50mmよりも大きくすると、中空部Cの容積が充分に得られなくなって、所望の吸音周波数を得にくくなるからである。
【0053】
そして、(吸音構造体Aの厚さX)−(表層部Dの厚さt)−(中空部Cの深度L)は、中空部Cの底部Fの厚さであり、この厚さを1mmよりも小さくすると、ひけが発生して外観品質が低下するからである。
【0054】
つまり、吸音構造体Aは、開口部Bの直径d、表層部Dの厚さt、中空部Cの深度L、隣接する開口部C同士の中心点間距離Dを上記範囲に設定することにより、成形装置1を用いて成形する際に、開口部Bや中空部Cあるいは底部Fに成形不良の無い高品質なものとすることができ、しかも良好な吸音性能を確保することができる。
【0055】
上記吸音構造体Aは、図4中に仮想線で示すように、少なくとも片面に別の樹脂層Gを設けることが可能であり、この樹脂層Gは複数層にすることができると共に、複数層のうちの一層を塗装塗膜とすることができる。この樹脂層Gには、模様等の加飾、耐擦性および光沢等を有する樹脂薄膜層を接合することができ、これにより外観品質がより高められ、商品性も向上する。
【0056】
また、吸音構造体Aは、シート状で且つ軽量であるうえに強度ならびに剛性を備えており、しかも良好な外観品質を得ることができることから、具体的には、自動車用板状部品として自動車のボディや内装に用いられ、車内および車外に対してエンジン等の駆動系から発生する音をより低減させたり、車内の静粛性をより高めたりすることができ、通常の繊維製吸音構造体の敷設が困難な部位や湿潤な環境にも充分に適用可能であって、自動車の品質のさらなる向上に貢献し得るものである。また、当該吸音構造体Aをボディや内装に用いれば、他の吸音材が不要になるので、自動車の部品点数の削減、製造工程の削減、軽量化および低コスト化なども実現される。
【0057】
なお、上記実施例で説明した吸音構造体Aは、式(1)および(2)に基づいて開口部Bや中空部Cなどの寸法を適宜設定することで、吸音性能を自在にコントロールすることが可能である。また、上記実施例では、吸音構造体として、共鳴吸音手段である開口部Bおよび中空部Cと、膜吸音手段である表層部Dとを片面側に備えた構成を例示したが、これらの手段を両面側に備えた構成とすることも可能である。
【0058】
成形装置1では、ガス注入用ノズル5を各種組合わせることで、1つの吸音構造体Aに、容積の異なる複数の中空部Cや面積の異なる複数の開口部Bを形成することができ、同ノズル5の配置の密度を変えることで、中空部Cの存在率を部分的に偏らせ、吸音構造体Aの重心や剛性を偏らせることができる。また、同ノズル5の配置を均等にすれば、隣接する中空部C同士の隔壁Eの厚さが均一になり、全体に均一な剛性を付与することができ、さらに、同ノズル5の形状および配置、成形ガスの圧力等によって中空体Cの形状を円、楕円あるいは多角形などにすることも可能であって、所定の剛性や軽量化を満たすのに最適な中空部Cを有する吸音構造体Aを成形し得る。
【0059】
次に、表1に示すように、実施例1〜8として本発明に係わる吸音構造体を成形すると共に、比較例1〜9の吸音構造体を用意した。
【0060】
【表1】
Figure 0003584465
【0061】
表1から明らかなように、実施例1〜8は、吸音構造体の厚さX、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度Lおよび隣接する中空部の中心点間距離Dを適宜異ならせたものとした。また、比較例1は中空部の無いものとし、比較例2は、160Hzに共鳴吸音の吸音ピークを有するレゾネータとし、比較例3は、1250Hzに膜吸音の吸音ピークを有するフィルムとした。さらに、比較例4〜9は、吸音構造体の厚さX、開口部の直径d、表層部の厚さt、中空部の深度Lおよび隣接する中空部の中心点間距離Dを適宜異ならせたものとした。ここで、比較例6は、(吸音構造体の厚さX)−(表層部の厚さt)−(中空部の深度L)を1mm以下としたものであり、比較例9は、共鳴吸音ピーク周波数と膜吸音ピーク周波数との差の絶対値|x−y|が0.7を越えるものである。
【0062】
なお、吸音構造体の材料である樹脂には、タルク20質量%のポリプロピレン樹脂を使用し、成形装置には、型締圧力110tの射出成形機を使用し、樹脂温度は210℃とした。成形に際しては、樹脂充填後、吸音構造体の厚さXに相当する分だけ成形型を開くと共に、成形ガスとして窒素ガスを5〜10MPaの圧力で注入し、各種の開口部および中空体を有する吸音構造体を得た。吸音構造体の大きさは、100mm×100mm×(厚さX)mmとした。
【0063】
そして、各実施例1〜8および各比較例1〜9について、JIS A1405の垂直入射吸音率測定方法に基づいて各々の吸音率を測定すると共に、外観を目視で観察してひけの有無を判断した。なお、ひけが発生した比較例4〜6および中空部が未成形となった比較例8については、吸音率の測定を省いた。その結果を表2および表3、ならびに図6〜図8に示す。
【0064】
【表2】
Figure 0003584465
【0065】
【表3】
Figure 0003584465
【0066】
表2および表3から明らかなように、各実施例1〜8の吸音構造体は、いずれも成形状態が良好であることが確認できた。また、各実施例1〜8の吸音構造体は、図6および図7に示すように、いずれも広い周波数範囲において良好な吸音率が得られることを確認した。これに対して、比較例1〜3,7および9の吸音構造体は、図8に示すように、特定の周波数において良好な吸音率を示す例があるものの、それ以外の例では吸音率が低いものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる吸音構造体の成形装置の一実施例を説明する図であって、型閉じの状態を示す断面図(a)、および可動型を開いて中空部を形成した状態を示す断面図(b)である。
【図2】固定型におけるガス注入用ノズルを説明する断面図である。
【図3】吸音構造体の一部を示す平面図である。
【図4】図3中に示すI−I線に基づく断面図である。
【図5】吸音構造体の吸音作用を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例1〜5の吸音構造体について、周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図7】実施例6〜8の吸音構造体について、周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【図8】比較例1〜3,7および9の吸音構造体について、周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A 吸音構造体
B 開口部(共鳴吸音手段)
C 中空部(共鳴吸音手段)
D 表層部(膜吸音手段)
G 別の樹脂層
1 成形装置
2 キャビティ
3 固定型
4 可動型
5 ガス注入用ノズル
6 ガス供給系

Claims (9)

  1. シート状に成形した樹脂製の吸音構造体であって、少なくとも片面側に対して、表面に平行な内部断面の大きさよりも小さい開口部を有する中空部を複数備え、開口部および中空部が共鳴により吸音を行う共鳴吸音手段であると共に、開口部および中空部を形成する表層部が膜により吸音を行う膜吸音手段であって、共鳴吸音手段の共鳴吸音ピーク周波数frを10(Hz)とし、膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffを10(Hz)としたときに、双方の差の絶対値|x−y|が0.7以下であることを特徴とする吸音構造体。
  2. 共鳴吸音手段の共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音手段の膜吸音ピーク周波数ffが、100〜20000Hzであることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
  3. 開口部の直径をd、表層部の厚さをt、中空部の深度をL、隣接する開口部同士の中心点間距離をD、表皮部面密度をM、空気の密度をρ、音速をcとしたときに、共鳴吸音ピーク周波数frおよび膜吸音ピーク周波数ffが、
    Figure 0003584465
    により求められることを特徴とする請求項2に記載の吸音構造体。
  4. 開口部の直径dが0.1〜3.0mm、表層部の厚さtが0.1〜20mm、中空部の深度Lが0.1〜100mm、隣接する開口部同士の中心点間距離Dが1〜50mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸音構造体。
  5. 表面に直交する断面において、(吸音構造体の厚さX)−(表層部の厚さt)−(中空部の深度L)が1mm以上であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の吸音構造体。
  6. 少なくとも片面側に、別の樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸音構造体。
  7. 別の樹脂層に塗装塗膜が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の吸音構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を用いたことを特徴とする自動車用板状部品。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の吸音構造体を成形する装置であって、成形空間であるキャビティを形成する固定型および可動型を備えると共に、少なくとも一方の型に、キャビティ内に突出する複数のガス注入用ノズルと、型外から各ガス注入用ノズルに成形用ガスを供給するガス供給系を備えたことを特徴とする吸音構造体の成形装置。
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