JP3588690B2 - 磁気共鳴装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気共鳴装置に関する。特にスペクトロスコピックイメージングおよび拡散スペクトロスコピックイメージングに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴装置は、静磁場中に置かれた測定対象に特定周波数の高周波磁場を照射して磁気共鳴現象を誘起し、測定対象の物理的化学的情報を取得する装置である。現在、広く普及している磁気共鳴イメージング(MRI、 Magnetic Resonance Imaging)は、主として水分子中の水素原子核の磁気共鳴現象を用い、組織によって異なる水素原子核密度や緩和時間の差などを画像化する方法である。これに対し、スペクトロスコピックイメージングとは、分子の化学結合の違いによる磁気共鳴周波数の差異(ケミカルシフト)を元に分子毎に磁気共鳴信号を分離し、これを画像化する方法である。対象とする原子核としては1H、31P、13C、17Fなどがある。スペクトロスコピックイメージングによって代謝物質の濃度分布が得られるため、通常の磁気共鳴イメージングよりも早くかつ詳細な診断が可能になると期待されている。また、磁気共鳴イメージングに水分子の拡散情報を付与したイメージング技術として拡散イメージングが提案されている。これは分子拡散が激しい領域の信号を強く減衰させるように強力な傾斜磁場を印加する手段を加えたもので、拡散を強調した画像や拡散係数を測定することが可能となる。これにより、脳虚血などの早期診断が可能になると期待されている。また、スペクトロスコピックイメージングと拡散イメージングとを組み合わせ、代謝物質毎の分子拡散情報を得る拡散スペクトロスコピックイメージングも提案されている。
【0003】
スペクトロスコピックイメージングの撮像技術として、最も広く使用されているのは3D−CSI (ケミカルシフトイメージング:Chemical Shift Imaging) と呼ばれている方法である。この方法は、高周波磁場による核スピンの励起後、2方向に位相エンコード傾斜磁場を印加して磁気共鳴信号に空間情報を付与し、繰り返し計測により画像化を行う方法である。この方法には、2方向に繰り返し計測を行うことから、計測時間が長くかかるという問題がある。この問題を解決するために、振動傾斜磁場を使用する方法が特開昭61ー13143に提案されている。この方法はEPSI (エコープラナーイメージング:Echo Planar Spectroscopic Imaging) と呼ばれ、高周波磁場による励起後、第1の方向に位相エンコード傾斜磁場を印加し、その後、第1の方向とは異なる第2の方向に振動傾斜磁場を印加しながらデータの取得を行う方法である。これにより、位相エンコード傾斜磁場の繰り返しは1方向ですみ、計測時間の大幅な短縮が図れる。これらの方法では、測定対象の動き、例えば拍動、呼吸、脳脊髄液流などの体動や、静磁場と傾斜磁場の時間変動によって、位相エンコード方向にアーティファクトが生じるという問題があった。
【0004】
拡散イメージングの撮像技術として広く使用されているのはスッテジコウ−タナー(Stejskal−Tanner)のパルスシーケンス(ジャーナル・オブ・ケミカルフィジックス:The Journal of Chemical Physics誌、42号、288頁、1965年発行)を基礎としたものである。この方法は高周波磁場による核スピンの励起の後、互いに補償する二つ以上の傾斜磁場を印加するものである。ここで「互いに補償する」という意味は、もし分子が移動していなければ核スピンの位相を回転させる影響を相殺するということである。拡散があると位相回転の影響を完全に相殺することはできず、傾斜磁場の印加強度・時間に応じた割合で信号強度が減衰する。ここで、拡散による信号減衰を生じさせるために印加する傾斜磁場は拡散傾斜磁場と呼ばれている。拡散情報を画像化する方法は、D.レビハン(D. LeBihan)らによってラジオロジー(Radiology)誌、161号、401頁、1986年発行に報告されている。この方法では、核スピンの励起後、第1の方向に位相エンコード傾斜磁場を印加し、第2の方向にリードアウト傾斜磁場を印加して2方向の空間情報を信号に付与し、位相エンコード傾斜磁場を変化させながら計測を繰り返す方法である。この方法では測定対象の動きなどによって、位相エンコード方向にアーティファクトが生じるという問題があった。これを解決するために、振動傾斜磁場を用いて2方向の空間情報を同時に取得し、高速に拡散イメージングを行う方法が、R.タナー(R. Turner)らによってラジオロジー誌、177巻、407頁、1990年発行に報告されている。また、H.グッドジャアトソン(H. Gudbjartsson)らによって励起領域を線状に制限し、この線状の領域を変化させて計測を繰り返す方法がマグネチック・レゾネンス・イン・メジソン(Magnetic Resonance in Medicine)誌、36巻、509頁、1996年発行に報告されている。
【0005】
拡散スペクトロスコピックイメージングについては、3D−CSIに拡散傾斜磁場を付加した方法やEPSIに拡散傾斜磁場を付加した方法が提案されている。前者については、ジャーナル・オブ・マグネチック・レゾネンス、シリーズB誌(Journal of Magnetic Resonance、 Series B誌)、102巻、222頁、1993年発行に報告されている。後者については特開平7ー184875に報告されている。これらの方法においても、測定対象の動きにより位相エンコード方向にアーティファクトが発生することが問題となっていた。特に位相エンコード傾斜磁場よりもはるかに強力な拡散傾斜磁場が印加されるため、この拡散傾斜磁場印加中の体動は致命的な画質劣化を引き起こしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、位相エンコード傾斜磁場を使用していることから、測定対象の動きが画質劣化を引き起こしやすいと言う欠点を有していた。これは測定対象の拍動や呼吸による動き、脳脊髄液流などの流れなどの体動によって、設定と異なる位相エンコード傾斜磁場が印加された状態と同等となり、画像上で位相エンコード方向に流れのようなアーティファクトが生じるというものであった。特に拡散スペクトロスコピックイメージングでは、位相エンコード傾斜磁場よりもはるかに強力な拡散傾斜磁場を印加することから、この拡散傾斜磁場印加中の測定対象の体動は致命的な画質劣化を引き起こしていた。
【0007】
本発明の目的は、測定対象の体動によるアーティファクトを除去し、スペクトロスコピックイメージングおよび拡散スペクトロスコピックイメージングの高精度化および高速化が可能な磁気共鳴装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、高周波磁場印加によって励起する領域を線状に制限し、その領域から生じる信号に振動傾斜磁場を用いてケミカルシフト情報と空間情報とを付与する。この線状の領域を繰り返し計測毎に変化させて画像化を行う。本発明によれば、従来必要であった位相エンコード傾斜磁場が不必要となり、体動によるアーティファクトを除去することが可能となる。また、不必要な領域からの信号混入を防ぐために領域外の信号を抑圧する手段を使用する場合、線状の領域に応じて抑圧する領域を設定可能なことから、従来より詳細な抑圧領域の設定が可能になる。また、従来フーリエ変換に伴うアーティファクトを低減するために位相エンコード方向に余分な回数の計測を行っていたが、これを除くことが可能となり、高速化が可能となる。また、2方向に位相エンコード傾斜磁場を繰り返し印加する方法と比較すると、振動傾斜磁場を用いることにより1方向分の繰り返し計測を省略できることから格段の高速化が図れる。
【0009】
線状の領域を選択するための手段としては次の方法がある。所定の方向に第1の傾斜磁場を印加すると共に第1の高周波磁場を印加して所定の方向に制限された面状の領域を選択し、所定の時間後に所定の方向とは異なる方向に第2の傾斜磁場を印加すると共に第2の高周波磁場を印加してこの異なる方向に制限された面状の領域を選択し、この結果二つの面状の領域の交わった線状の領域を選択する。ケミカルシフト情報と空間情報とを付与する振動傾斜磁場は第1および第2の傾斜磁場の方向と異なる第3の方向に印加する。線状の領域を繰り返し計測毎に変化させる手段としては、第1および第2の高周波磁場の周波数のいずれか一方もしくは両方を変化させる方法がある。
【0010】
また、線状の領域を選択するための他の手段としては次の方法がある。第1の高周波磁場と共に所定の方向に第1の傾斜磁場と上記方向とは異なる方向に第2傾斜磁場を印加してこれらにより制限された面状の領域を選択し、所定の時間後に第2の高周波磁場と共に前記第1の傾斜磁場の方向同様に第3の傾斜磁場と前記第2の傾斜磁場の方向同様に第4傾斜磁場を印加してこれらにより制限された面状の領域を選択し、この結果二つの面状の領域の交わった線状の領域を選択する。ケミカルシフト情報と空間情報とを付与する振動傾斜磁場は第1および第2の傾斜磁場の方向と異なる第3の方向に印加する。線状の領域を繰り返し計測毎に変化させる手段としては、第1および第2の高周波磁場の周波数のいずれか一方もしくは両方を変化させる方法がある。
【0011】
また、上記の方法に、3方向Gx、Gy、Gzの少なくともの1方向に前記第1の高周波磁場と前記第2高周波磁場との間に第1の拡散傾斜磁場の印加し、同様の方向に前記第2の高周波磁場と前記振動傾斜磁場との間に第2の拡散傾斜磁場を印加して分子拡散情報を得ることができる。このような体動に影響されやすい拡散傾斜磁場を加えても、本発明では体動によるアーティファクトを除去することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図4は本発明にかかる磁気共鳴装置の概略構成図である。図4において、1は静磁場H0を発生する磁石、2は測定対象、3は高周波磁場の発生と測定対象2から生じる磁気共鳴信号の検出のためのコイル、4、5、6はそれぞれx方向、y方向およびz方向の傾斜磁場を発生させるための傾斜磁場コイルである。7は上記各傾斜磁場発生コイル4、5、6に電流を供給するためのコイル駆動装置である。8は各磁場の発生タイミングおよび強度の制御と測定されたデータの演算を行うための計算機、9は計算機8での演算結果を表示するためのディスプレイである。
【0014】
次に本装置の動作の概要を説明する。測定対象2の核スピンを励起する高周波磁場H1は、シンセサイザ10により発生させた高周波を変調装置11で波形整形、電力増幅し、コイル3に電流を供給することにより発生させる。コイル駆動装置7から電流を供給された傾斜磁場発生コイル4、5、6は傾斜磁場を発生し、測定物体2からの磁気共鳴信号を変調する。該変調信号はコイル3により受信され、増幅器12で増幅、検波装置13で検波された後、計算機8に入力される。計算機8は演算後、演算結果をディスプレイ9で表現する。なお、計算機8は予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するように制御を行う。このプログラムの内、特に高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したものはパルスシーケンスと呼ばれている。
【0015】
次に本発明の第一の実施例について説明する。
【0016】
本発明にかかるパルスシーケンスを図1に示す。z方向のスライス傾斜磁場24の印加とともに周波数f0の励起高周波磁場パルス21を印加し、z方向の所定のスライス内に核磁気共鳴現象を誘起する。励起高周波磁場パルスとしては典型的にはπ/2−パルスが用いられる。次にy方向のスライス傾斜磁場25の印加とともに周波数fnの反転高周波磁場パルス22を印加することでy方向の所定のスライス内の磁化を反転する。反転高周波磁場パルスとしては典型的にはπ−パルスが用いられる。励起および反転される領域の模式図を図2に示す。横軸はz方向、縦軸はy方向を表し、x方向は紙面に垂直な方向である。領域31はz方向のスライス傾斜磁場24の印加とともに周波数f0の励起高周波磁場パルス21を印加することで核スピンが励起されるスライスを表し、領域32はy方向のスライス傾斜磁場25の印加とともに周波数fnの反転高周波磁場パルス22を印加することで核スピンが反転されるスライスを表している。この結果、エコー23を生じさせる核スピンの存在するのはx方向に線状となる領域33のみとなる。領域33は、反転高周波磁場パルス22の周波数fnを変えることにより、y方向に変化される。領域33から発生したエコー23は、x方向に振動リードアウト傾斜磁場26を印加しながらADサンプリングされ、データとして格納される。このとき、エコー23は振動リードアウト傾斜磁場により、x方向とケミカルシフト方向の両方の情報が付与された複数のエコーで構成される。格納されたデータは各エコー毎および時間方向にフーリエ変換され、x方向とケミカルシフト方向の情報が分離および再構成される。y方向の情報は、既に説明したとおり反転高周波磁場の周波数を変化して励起領域33を変化させて得られる。こうしてケミカルシフト、x方向、およびy方向の情報からなるケミカルシフトイメージが得られる。
【0017】
なお、振動傾斜磁場を用いた場合のケミカルシフト情報と空間情報の分離方法については、特開昭61ー13143に詳述されている。
【0018】
なお、図1のパルスシーケンスでは説明の簡略化のために水信号や脂肪信号を抑圧し、目的とする分子のみの信号を取得するためのプリパレーションパルスを省略した。プリパレーションパルスとして、例えば、水信号を抑圧するためには水のケミカルシフトにあわせた狭帯域の高周波磁場を印加するCHESS (ケミカル・シフト・ソレクテブ・サプレション:Chemical shift Selective Suppression) 法、脂肪信号を抑圧するためには脂肪領域にあたるスライスを選択的に励起するOVS (アウター・ボリュウム・サプレション:Outer Volume Suppression) 法などを用いても良い。なお、CHESS法については特開昭60ー168041、OVS法についてはマグネチック・レゾナンス・イン・メジソン誌、10巻、315頁、1992年発行に詳述されている。
【0019】
また、図1ではz方向を励起高周波磁場パルスによるスライス方向、y方向を反転高周波磁場パルスによるスライス方向、x方向を振動傾斜磁場の印加方向に設定しているが、この方向に限らないのは言うまでもない。例えば、それぞれの方向の役割を入れ替えても良いし、軸に沿った方向ではなく、例えば45度傾いた方向などでも良い。また、これら三つの方向は直交する3方向である必要もない。例えば、励起高周波磁場パルスと反転高周波磁場パルスによる二つのスライスが直交しなくても良く、この場合、エコーを生じさせる領域は平行四辺形の断面をもつ線状の領域となる。
【0020】
また、図1の振動傾斜磁場の波形をサイン波にしても良い。これにより傾斜磁場の立ち上がりによって生じる渦電流を軽減可能となり、渦電流によるアーティファクトを低減できる。
【0021】
また、領域33の変更方法であるが、繰り返し計測毎に、隣り合う順番に計測する方法と隣り合わないように計測する方法とがある。前者の場合、例えばL1、L2、L3、...の順番で計測を行うことになり、周波数fnを一定のステップで変更していけば良くプログラムが簡単に作成できるという利点を持つ。後者の場合、例えばL1、L(N/2+1)、L2、L(N/2+2)、...と計測することになり、スライス選択の不完全性から生じる影響を低減することが可能となる。
【0022】
比較のため、図3に従来法のパルスシーケンスを示す。従来法ではy方向の空間情報を付与するために位相エンコード傾斜磁場27が必要であった。このため、測定対象の動き、例えば拍動や呼吸による動き、脳脊髄液流などの流れ、などにより、本来設定された位相エンコード傾斜磁場とは異なる量の位相エンコード傾斜磁場が印加されたのと同等となり、画像上で位相エンコード方向に流れのようなアーティファクトが発生することがあった。本方法では、位相エンコード傾斜磁場が不要なことから、体動によるアーティファクトが発生しないという利点を有する。
【0023】
また、従来法ではy方向に実際に必要なピクセル数が数個であったとしても、フーリエ変換によって生じるアーティファクトを軽減するために16あるいはそれ以上の回数の計測が必要とされていた。本方法によれば、実際に必要な領域のみを計測すれば良く、計測回数の低減が図れる。なお、本方法では励起領域が従来法と比較して小さくなることから、SNR (シグナル・ツウ・ノイズ比:Signal to Noise Ratio) が低下する。これを抑えるために、信号の加算回数を増加させるなどの操作をしても良い。
【0024】
また、従来法でプリパレーションパルスとしてOVS法を用いた場合、数箇所のスライスを抑圧する必要があり、また細かな形状の抑圧は不可能であった。この様子の模式図を図5(1)に示す。ハッチングを施した円周は人体頭部を横断像で撮像した場合の皮下脂肪を表している。2本の平行線は抑圧する領域を示している。脂肪信号が混入しないように抑圧するには円周に沿うようにスライスを設定し抑圧する必要があるが、プリパレーションパルスの長さの制限から数スライスが限度である。図では8スライスの場合を示しているが、内側に抑圧領域がはみだし、信号が失われることが判る。図5(2)に、本方法の場合のOVS法による抑圧スライスを示す。点線は各計測で励起される領域を示している。本方法ではy方向とz方向には既に励起領域が制限されていることから、OVS法による抑圧スライスとしてはx方向を主として考えれば良くなり、2、3回程度の抑圧で十分な効果を得ることができる。また、y方向の励起領域が変化する度に抑圧領域を変化させることが可能なため、抑圧領域のより細かな設定が可能となる。図5(2)では抑圧領域が内部にはみでる量が減少していることが判る。なお、本発明において抑圧効果を高めるために、励起領域外のスライスを抑圧しておいても良いのは言うまでもない。
【0025】
次に本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は拡散スペクトロスコピックイメージングに関するものである。
【0026】
図6に本発明にかかるパルスシーケンスを示す。図1に示したパルスシーケンスとの相違点は、分子拡散を強調した画像を取得するために、拡散傾斜磁場28が印加されていることにある。この二つの拡散傾斜磁場は強度の時間積分が等しくなるように調整されている。これにより、分子拡散が弱い場合にはエコー23が大きく、また分子拡散が激しい場合にはエコー23が小さくなる。予め設定された強度で拡散傾斜磁場を印加することにより、分子拡散を強調した画像が取得でき、またこの設定値を様々に変化させて信号変化率から分子の拡散係数を計算することができる。
【0027】
本方法によれば、従来必要であった位相エンコード傾斜磁場を印加する必要がなくなる。従来法では、測定対象の動きによって位相エンコード方向にアーティファクトが発生することがあった。特に、分子拡散を強調するために強力な拡散傾斜磁場が印加されているため、測定対象の動きによるアーティファクトは通常のスペクトロスコピックイメージングと比較して、極端に大きかった。すなわち、拡散傾斜磁場印加中に拍動や呼吸、組織液の流動などの体動があると位相エンコード磁場印加による位相変化よりもはるかに大きな位相差が加わり、画像が位相エンコード方向に乱れるというアーティファクトが生じていた。このため、拡散強調画像や拡散係数が正確に計測できないなどの問題があったが、本方法によりこのアーティファクトを除去可能となり、正確な拡散強調画像および拡散係数が測定可能となった。
【0028】
なお、図6では拡散傾斜磁場を3方向に印加しているが、これに限らない。例えばある特定の方向の拡散係数を計測したい場合には、その方向の拡散傾斜磁場を印加すればよい。また、スライス方向およびリードアウト方向などのx、y、z方向の役割は第1の実施例同様変更可能であること、プリパレーションパルスが使用可能なこと、などは言うまでもない。また、振動傾斜磁場23の印加に先だって信号を取得し、その信号の位相および強度に応じて、エコー23を計測して得られたデータの位相および強度を補正した後、再構成演算を行っても良い。特に信号加算時には、本補正により各信号の位相をそろえることが可能となり、SNRが最良となる。なお、補正方法の詳細についてはジャーナル・オブ・マグネチック・レゾネンス、 シリーズ B誌、102巻、222頁、1993年発行に報告されている。
【0029】
また、渦電流を抑制するために、振動傾斜磁場の波形をサイン波とすること、拡散傾斜磁場の波形をサイン波とすることなどが適用可能である。また、渦電流によって発生する静磁場不均一を抑制するために、傾斜磁場のオフセットまたはシムコイルに流す電流値を修正してもよい。また、拡散傾斜磁場の形状をバイポーラーにすることで拡散時間の短い分子を撮影しやすくすることも可能である。
【0030】
次に本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は第1の実施例とは異なるスライスの励起方法を示すものである。
【0031】
図7に本発明にかかるパルスシーケンスを示す。図1に示したパルスシーケンスとの相違点は、励起高周波磁場パルス21の周波数と各スライス傾斜磁場24、25の印加方向である。図8に各パルスによる励起スライスを示す。横軸はz方向、縦軸はy方向を表し、x方向は紙面に垂直な方向である。領域31はz方向のスライス傾斜磁場24の印加とともに周波数fnの励起高周波磁場パルス21を印加することで核スピンが励起されるスライスを表し、領域32はy方向のスライス傾斜磁場25の印加とともに周波数fnの反転高周波磁場パルス22を印加することで核スピンが反転されるスライスを表している。この結果、エコー23を生じさせる核スピンの存在するのはx方向に線状となる領域33のみとなる。領域33は、励起高周波磁場パルス21の周波数fnと反転高周波磁場パルス22の周波数fnを変えることにより、y方向に変化される。図2との相違点は領域33の断面が菱形に変わった点と、高周波磁場パルスの周波数fnを変化させることにより領域31、32が各計測において重ならない点である。励起領域が菱形になるため、励起される各スピンの存在比は半分となり、SNRも半分に低下する。しかし、領域31、32が各計測において重ならないために各計測間の待ち時間を極端に短縮することが可能となる。例えば第1の実施例では、領域31が常に一定だったため、励起された核スピンが回復するまで1秒から数秒の待ち時間が必要であった。この第2の実施例によればこの待ち時間を短縮し、例えば数十から数百ミリ秒間隔で計測を繰り返すことが可能となる。このため計測時間を極端に短縮することが可能となる。また、短縮された時間を信号積算に使用してSNRを向上することも可能となる。
【0032】
なお、図7ではx、y、zの各方向が担う役割が決まっているが、第1の実施例同様、これに限るものではない。また、図7ではプリパレーションパルスを省略しているが、使用可能なことは言うまでもない。また、図8では各パルスにより励起される領域31、32が直交するように書かれているが、この限りではない。例えばこれら二つの領域が斜めに交わるようにすることも可能である。また、励起高周波磁場パルスの周波数と反転高周波磁場パルスの周波数を同じfnとして説明したが、それぞれ異なる周波数であっても良い。図8ではz方向の中心が計測されているが、この二つの周波数を異ならせることでz方向の中心以外のスライスを計測可能にできる。また、領域33の変更方法として、各計測毎に隣り合うように設定する方法と隣り合わないように設定する方法を使用可能なことは言うまでもない。また、図11に示すように、拡散傾斜磁場を付加して、拡散スペクトロスコピックイメージングに拡張可能なことは言うまでもない。この場合にも、上で説明したシーケンスの変形、及び第2の実施例で示したシーケンスの変形などが適用可能である。
【0033】
次に第4の実施例について説明する。本実施例は空間方向3次元のスペクトロスコピックイメージングに関するものである。
【0034】
図9に本発明にかかるパルスシーケンスを示す。図1に示したパルスシーケンスとの相違点は、励起高周波磁場パルス21の周波数である。図10に各パルスによる励起スライスを示す。横軸はz方向、縦軸はy方向を表し、x方向は紙面に垂直な方向である。領域31はz方向のスライス傾斜磁場24の印加とともに周波数fmの励起高周波磁場パルス21を印加することで核スピンが励起されるスライスを表し、領域32はy方向のスライス傾斜磁場25の印加とともに周波数fnの反転高周波磁場パルス22を印加することで核スピンが反転されるスライスを表している。この結果、エコー23を生じさせる核スピンの存在するのはx方向に線状となる領域33のみとなる。領域33は、励起高周波磁場パルス21の周波数fmと反転高周波磁場パルス22の周波数fnを変えることにより、y、z方向に変化される。これにより、x、y、zの各方向とケミカルシフト方向とからなる画像が得られる。
【0035】
なお、図9ではx、y、zの各方向が担う役割が決まっているが、第1の実施例同様、これに限るものではない。また、図9ではプリパレーションパルスを省略しているが、使用可能なことは言うまでもない。また、図10では各パルスにより励起される領域31、32が同一の幅で書かれているが、この限りではない。例えば一方向のみ幅を広くして、励起領域33が長方形をしていても良い。また、領域31、32は直交していなくても良い。また、領域33の変更方法として、各計測毎に隣り合うように設定する方法と隣り合わないように設定する方法を使用可能なことは言うまでもない。また、図12に示すように、拡散傾斜磁場を付加して、拡散スペクトロスコピックイメージングに拡張可能なことは言うまでもない。この場合にも、上で説明したシーケンスの変形、及び第2の実施例で示したシーケンスの変形などが適用可能である。
【0036】
なお、各実施例のパルスシーケンスでは、励起高周波磁場パルスと反転高周波磁場パルスとからなるスピンエコー系のパルスシーケンスを基本としていたが、これに限るものではない。例えば、STEAM (ステミュレイテッド・エコー収集形態:Stimulated Echo Acquisition Mode) 法のように3つの励起高周波磁場パルスよりなるパルスシーケンスを用いても良い。この場合にも振動傾斜磁場の方向に線状となる領域を励起高周波磁場により励起すればよい。特にSTEAM法は、拡散スペクトロスコピックイメージングに好適で、拡散強調を行いやすくなると言う利点を持つ。STEAMについては例えばジャーナル・オブ・マグネチック・レゾネンス誌、72巻、502頁、1987年に記述されている。また、1回の高周波磁場の印加で様々な形状の領域を選択する方法である選択励起パルスを用いて、線状の領域を選択励起しても良い。選択励起パルスについては例えばマグネチック・レゾレンス・イン・メジソン誌、37巻、378頁、1997年に記述されている。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によればスペクトロスコピックイメージングおよび拡散スペクトロスコピックイメージングにおける体動アーティファクトを除去し、高精度かつ高速な測定が可能な磁気共鳴装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例のパルスシーケンスを示す図である。
【図2】第1の実施例のパルスシーケンスにより励起される領域を示す図である。
【図3】従来法のパルスシーケンスを示す図である。
【図4】本発明を実施する際に用いられる装置構成の一例を示す図である。
【図5】OVS法で抑圧するスライスを従来法(1)と本発明の方法(2)で比較した図である。
【図6】第2の実施例のパルスシーケンスを示す図である。
【図7】第3の実施例のパルスシーケンスを示す図である。
【図8】第3の実施例のパルスシーケンスにより励起される領域を示す図である。
【図9】
第4の実施例のパルスシーケンスを示す図である。
【図10】
第4の実施例のパルスシーケンスにより励起される領域を示す図である。
【図11】
第3の実施例のパルスシーケンスに拡散傾斜磁場を付加した図である。
【図12】
第4の実施例のパルスシーケンスに拡散傾斜磁場を付加した図である。
【符号の説明】
1 静磁場発生用磁石
2 測定対象
3 高周波磁場発生および信号検出用コイル
4、5、6 傾斜磁場コイル
7 コイル駆動装置
8 計算機
9 CRTディスプレイ
10 シンセサイザ
11 変調装置
12 増幅機
13 検波装置
21 励起高周波磁場パルス
22 反転高周波磁場パルス
23 エコー
24、25 スライス傾斜磁場
26 振動傾斜磁場
27 位相エンコード傾斜磁場
28 拡散傾斜磁場
31 励起高周波磁場パルスによる励起スライス
32 反転高周波磁場パルスによる励起スライス
33 二つの高周波磁場パルスにより励起される線状の領域
Claims (2)
- 静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場発生手段と、測定対象からの磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と、前記信号検出手段の検出信号の演算を行なう計算機および前記計算機による演算結果の出力手段を有する磁気共鳴装置において、前記測定対象の線状の領域に存在する核スピンを励起するための高周波磁場と傾斜磁場を印加する第1印加手段と、前記線状の領域からの磁気共鳴信号にケミカルシフト情報と空間情報とを付与するための振動する傾斜磁場を印加する第2印加手段と、前記高周波磁場の周波数を変化させて前記線状の領域を変化させる手段とを備えることを特徴とする磁気共鳴装置。
- 静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場発生手段と、測定対象からの磁気共鳴信号を検出する信号検出手段と、前記信号検出手段の検出信号の演算を行なう計算機および前記計算機による演算結果の出力手段を有する磁気共鳴装置において、
前記測定対象の線状の領域に存在する核スピンを励起するための高周波磁場と傾斜磁場を印加する第1印加手段と、前記線状の領域からの磁気共鳴信号に分子拡散による信号減衰を生じせしめるための拡散傾斜磁場を印加する第2印加手段と、前記線状の領域からの磁気共鳴信号にケミカルシフト情報と空間情報とを付与するための振動する傾斜磁場を印加する第3印加手段と、前記高周波磁場の周波数を変化させて前記線状の領域を変化させる手段とを備えることを特徴とする磁気共鳴装置。
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