<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態を説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
最初に、本実施形態の磁気共鳴装置の装置構成を説明する。図1は、本実施形態の磁気共鳴装置100の概要を説明するための構成図である。磁気共鳴装置100は、静磁場発生磁石11、傾斜磁場発生コイル12、高周波磁場コイル13、計算機14、傾斜磁場電源15、シンセサイザ16、変調装置17、増幅器18、および、AD変換器19を備える。
シンセサイザ16は高周波を発生し、変調装置17は、シンセサイザ16が発生した高周波を波形整形し、電力増幅し、高周波磁場コイル13に電流を供給する。高周波磁場コイル13は、電流を供給されると、被検体10の核スピンを励起する高周波磁場(励起パルス:RFパルス)を発生させ、被検体10に照射する。傾斜磁場電源15は、傾斜磁場発生コイル12に電流を供給する。傾斜磁場発生コイル12は、それぞれ、x軸方向、y軸方向、z軸方向に傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル12x、12y、12z(不図示)を備え、傾斜磁場電源15から電流を供給されると傾斜磁場を発生し、被検体10からの核磁気共鳴信号である高周波信号を空間的な位置に応じて変調する。変調された高周波信号は、高周波磁場コイル13によって受信(検出)される。増幅器18は、高周波磁場コイル13が受信した高周波信号を増幅する。AD変換器19は、増幅された高周波信号をAD変換し、計算機14に送信する。
計算機14は、受信したデータを処理し、保存および表示する。また、計算機14は、予めプログラムされたタイミングで磁気共鳴装置100を構成する各装置が動作するように制御を行い、計測を実行する。ここで各装置の動作タイミングと強度を予めプログラムしたものをパルスシーケンスと呼ぶ。すなわち、本実施形態の計算機14は、計測により得られたデータを処理するデータ処理部と、パルスシーケンスに従って、計測を実行する制御部と、を備える。計算機14は、CPU、記憶装置、メモリを備え、CPUが、記憶装置に保持されたプログラムをメモリにロードして実行することにより、これらの機能を実現する。
本実施形態のパルスシーケンスの説明に先立ち、従来の拡散強調SIについて説明する。図2は、従来の拡散強調SIの1手法である2D−CSI(DW−2D−CSI)のパルスシーケンス図である。図2において、RFは高周波磁場パルスの印加および受信タイミングを、Gx、Gy、Gzは、それぞれ、x、y、z軸方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを、ADは信号の計測期間を示す。
DW−2D−CSIでは、スライス傾斜磁場22の印加とともに励起高周波磁場パルス21を印加し、対象物体内のあるスライス内に核磁気共鳴現象を誘起する。励起高周波磁場パルス21としては典型的にはπ/2−パルスが用いられる。その後、核スピンの位相にエンコード方向の位置情報を付加するための位相エンコード傾斜磁場27を印加する。この位相エンコード傾斜磁場27の強度はプログラムに従って変更されながら複数回測定が繰り返される。次にスライス傾斜磁場24の印加とともに反転高周波磁場パルス23を印加することでスライス内の磁化を反転する。反転高周波磁場パルス23としては典型的にはπ−パルスが用いられる。そして、磁化が発生する核磁気共鳴信号25をデータ取得26する。このとき、核磁気共鳴信号25に分子拡散の情報を付加する為に、励起高周波磁場21からデータ取得26の間に、分子拡散の激しさに依存して信号減衰を起こさせる拡散傾斜磁場(Diffusion Gradient、Motion Probing Gradient)28を印加する。拡散傾斜磁場28は、ディフェーズとリフェーズの二つの傾斜磁場パルスからなり、この二つの傾斜磁場パルスの印加量は等しくなるように調整される。
次に、拡散傾斜磁場28による信号減衰について、説明する。図3は、拡散傾斜磁場28による信号減衰を説明するための図であり、(a)上段は図2に示すパルスシーケンスの一部を抜き出したものであり、下段は、上段のパルスシーケンスに従って拡散傾斜磁場28が印加された際の各分子およびその核磁化の様子を模式的に表したものである。図3(a)下段に示すように、分子拡散の無い静止した状態では、拡散傾斜磁場28のディフェーズとリフェーズのバランスが取れているために、一旦ディフェーズされた核磁化は全てリフェーズされ、その和として表される巨視的磁化について信号量の減衰は生じない。
一方、分子拡散がある場合、一旦ディフェーズされた核磁化は、リフェーズするタイミングでは既に位置が変わっているためにリフェーズされる量が異なる。このため、完全にはリフェーズされず、巨視的磁化の信号量が減衰する。その減衰量は、分子拡散の激しさと、拡散傾斜磁場の印加時間および印加強度で式(1)のように定式化されている。
ここで、S(b)はb値がbのときの信号強度、S
0はb値が0のときの信号強度、Dは拡散係数である。なお、b値[s/m2]は、拡散傾斜磁場の印加強度と印加時間によって決まる値で、以下の式(2)により計算される。
ここで、TEは、エコー時間[s]、γは、磁気回転比[Hz/T]、G(τ)は、時刻τでの拡散傾斜磁場印加強度[T/m]である。特に、b値は、拡散傾斜磁場が2つのパルスで印加される場合、以下の式(3)により計算される。
ここで、Gは拡散傾斜磁場の印加強度[T/m]、δは1つのパルスの印加時間[s]、Δは2つのパルスの印加間隔[s]である。拡散計測では、この信号の減衰から、分子拡散の激しさを知ることができる。なお、拡散計測方法の原理の詳細については非特許文献4、特許文献2−5に記載されている。
一方、分子拡散に加えて、体動がある場合には、図3(a)下段に示すように、体動による信号位相のばらつきが生じる。拍動や呼吸動などの体動が示す変位は最大、数mm、数〜数百Hzであり、拡散傾斜磁場28が印加される数ms〜数10msの間隔ではコヒーレントな一定量の平行移動と考えられる。よって、巨視的磁化を構成する核磁化について、ディフェーズとリフェーズのアンバランスは全て一定と考えることができ、巨視的磁化の信号量は同一だがその位相が変位する。位相の変位量は、体動とシーケンスとのタイミングの違いや、体動の大きさの変化など様々な要因によって変動する。
このような位相の変位(ばらつき)により、本来位相エンコードで付加される位相とは異なる位相が信号に付加され、画像化する際に本来の位置とは異なる場所に結像し、位相エンコード方向におけるゴースト状アーティファクトが発生する。また、ばらついた位相により本来の信号量が加えられないため、信号加算時に、本来の信号強度よりも強度が減衰する。特に、位相が反転している場合にはキャンセルされる場合もある。
図3(b)に、体動の有無による画像およびスペクトルの変化の様子を示す。ここでは、円筒状の試料瓶に入れた水とN−acetylaspartateを拡散SI計測した結果を示す。上段には、試料瓶を静止させて計測した場合の、下段には、試料瓶を動かしながら計測した場合の、それぞれ画像とスペクトルとを示す。本図に示すように、静止させた場合、円状の画像が得られ、スペクトルにはN−acetylaspartateの信号ピークが明瞭に見られる。これに対し、動かしながら計測した場合、画像には、位相エンコード方向であるx方向にゴースト状のアーティファクトが見られ、スペクトルでは、N−acetylaspartateのピークが減衰している。特に、拡散SIが対象としている水以外の化学物質は、水よりも分子量が大きいため、分子拡散も遅い。遅い分子拡散を精度良く検出するためには、前記b値を高く設定しなければならず、その分、体動の影響も大きくなる。
本実施形態では、上記位相の変位によるアーティファクトを低減し、信号強度減衰を最小限に抑える。これを実現する本実施形態のパルスシーケンスおよびデータ処理部によるデータの処理について以下に説明する。
まず、本実施形態のパルスシーケンス401について説明する。図4は、本実施形態のパルスシーケンス401のパルスシーケンス図である。本図において、RFは高周波磁場パルスの印加および受信タイミングを、Gx、Gy、Gzは、それぞれ、x、y、z軸方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを、ADは信号の計測期間を示す。本図に示すように、パルスシーケンス401では、図2に示す拡散強調2D−CSI計測のパルスシーケンスと対比すると、位相エンコード方向のアーティファクトを避けるため位相エンコード傾斜磁場27を印加せず、代わりに、拡散傾斜磁場28を印加後、振動傾斜磁場を用いながらデータを取得する。さらに、励起高周波磁場パルス21の印加から一定時間後、ナビゲーション用の磁気共鳴信号を取得する。
具体的には、本実施形態のパルスシーケンス401では、本図に示すように、スライス傾斜磁場22の印加とともに励起高周波磁場パルス21を印加し、対象物体内のあるスライス内に核磁気共鳴現象を誘起する。励起高周波磁場パルスとしては典型的にはπ/2−パルスが用いられる。次にスライス傾斜磁場24の印加とともに反転高周波磁場パルス23を印加することでスライス内の磁化を反転する。反転高周波磁場パルスとしては典型的にはπ−パルスが用いられる。また、反転高周波磁場パルスの前後に拡散傾斜磁場28を印加し、以降得られる核磁気共鳴信号に拡散情報を付加する。その後、ナビゲーション用振動傾斜磁場41を印加し、x、yの両軸方向の空間情報を付加したナビゲーション用磁気共鳴信号42を発生させてデータ取得43する。引き続き、スペクトロスコピックイメージング(SI)用振動傾斜磁場44を印加し、x、yの空間情報と時間情報tとを付加したSI用磁気共鳴信号45を発生させてデータ取得46する。
ナビゲーション用振動傾斜磁場41およびSI用振動傾斜磁場44は、k空間をジグザグに走査するよう、Gx方向に印加する振動傾斜磁場とGy方向に印加する振動傾斜磁場との周波数が異なるように設定する。典型的には、一方の1周期が他方の周期の倍数となるよう設定する。ここでは、一例として、Gy方向に印加する振動傾斜磁場の周期をGx方向に印加する振動傾斜磁場の周期より大きく設定する場合を例示する。
以下、本明細書では、上記パルスシーケンス401の1回の実行をショット(shot)と呼ぶ。さらに、本実施形態では、SI用振動傾斜磁場44の印加およびデータ取得46の開始タイミングをずらしながら、もしくは信号加算効果を得るために同一開始タイミングで、上記パルスシーケンス401(ショット)を予め定められた回数実行し、データ取得46を繰り返し、k空間を充填していく、時間領域でのインターリーブを行う。
また、本明細書では、時間領域でのインターリーブに必要な回数、上記ショットを実行し、拡散SI強調画像を再構成可能なだけのデータを収集する一連の処理を計測と呼ぶ。データ加算が必要な場合は、上記、予め定められた回数のショットからなる計測を、繰り返し実行する。
本実施形態は、上記パルスシーケンス401に従って、計算機14の制御部が磁気共鳴装置100を構成する各装置を制御し、データを取得する。具体的には、ショット(shot)毎のデータ取得43により、x、y両軸方向の空間情報(kx、ky)が付加されたナビゲーションデータRr(shot、kx、ky)を、ショット(shot)毎のデータ取得46により、空間情報(kx、ky)に時間情報(time)が付加されたSIデータSr(shot、time、kx、ky)を取得する。
ここで、時間領域でのインターリーブによるk空間の充填について、図5を用いて説明する。図5(a)は、1回のSI用振動傾斜磁場44の印加後に取得したデータの軌跡を(time,kx,ky)の3次元空間内で俯瞰した図である。図5(b)は、図5(a)を(time,kx)と(time,ky)の2次元空間に射影した図である。これらの図から判るように、SI用振動傾斜磁場44により、kx方向に高速で振動させながら、ky方向にも振動させ、結果として(time,kx,ky)の3次元空間を走査する。ただし、図5(b)から明らかに判るように、同一な(kx,ky)を繰り返し取得するtime方向の取得間隔は、振動傾斜磁場の印加強度と周期とに依存する。以下、式を用いて詳細に説明する。
一般に、振動傾斜磁場の印加強度Gr[T/m]と、x,y方向それぞれの所望の空間分解能ε[m]とは、以下の式(4)に示す関係がある。
ここで、Nは半周期(T/2[s])あたりのADサンプリング点数、ρはADサンプリング間隔[s]である。
また、SI振動傾斜磁場44の周期T[s]と、スペクトルの観測帯域L[Hz]とは、以下の式(5)に示す関係がある。
なお、式(5)は、データ取得46時のSI振動傾斜磁場44の符号(プラスとマイナス:極性)に応じて、取得されたデータ群を別々に画像再構成し、最後に両者を加算するデータ処理を行う場合の関係式である。データ群をこのように分けない場合は、周期Tは上記Tの2倍(一軸のみデータ群を分け、他方の一軸は分けない場合)もしくは4倍(二軸両方でデータ群を分けない場合)になる。データ群を分けない場合、SI振動傾斜磁場44をプラスにかけた場合と、マイナスにかけた場合とでは、k空間でのジグザグな軌跡の傾きが逆向きになるために、端に行くほどサンプリング点の間隔が不等間隔となり、そのままフーリエ変換するとアーティファクトを生じやすい。この点、データ群を分けて再構成すると、周期Tを短くする必要があるが、SI用振動傾斜磁場44の符号によりデータ群を分けて、サンプリング点の間隔を等間隔にすることでアーティファクトの発生を抑制できる。また、さらに最後にデータ群を足すことによりSNRを向上させることができる。
すなわち、SI用振動傾斜磁場44の周期Tが長くなると、スペクトルの観測帯域Lが狭くなり、観測する化学物質の制限や、帯域外のスペクトルが折り返して重畳され、化学物質の分離が困難になることがある。ところが、傾斜磁場のハードウェア的な制約、および測定対象に与える磁気刺激の上限の制約により振動傾斜磁場の印加強度の上限と印加周期の下限が制限されている。特に、単位時間当たりの最大磁場変化であるスルーレイト(slew rate)は、ハードウェア上の仕様および磁気刺激観点からの安全性で制限されるため、前記振動傾斜磁場の印加強度と周期は制限される。このため、所望の空間分解能εを得ようとすると、印加強度を高めねばならず、このため周期が長くなり、結果として所望の観測帯域Lを得られない。また逆に、所望の観測帯域Lを得ようと周期を短くすると、印加強度が低下し、所望の空間分解能εを得られない。このような制約の中で、所望の空間分解能εと観測帯域Lとを得るため、ショット毎にSI用振動傾斜磁場44の印加およびデータ取得46の開始時間をずらしたショットを実行し、k空間を充填する。
このときの、k空間の充填の様子を2次元空間(time,ky)に射影したものを図5(c)に示す。ここでは、4ショットで1回の計測を実現する場合を例とし、ショット毎に、(1)実線、(2)破線、(3)一点鎖線、(4)二点鎖線でそれぞれ示す。本図に示すように、SI用振動傾斜磁場44およびデータ取得46の開始時間をずらしながらショットを繰返すと、各ショットで得られるデータの軌跡は、少しずつtime方向に変位してk空間に充填される。全てのショットの軌跡を合わせることで、time方向の取得間隔を狭めることができていることが判る。なお、各ショットによる軌跡をtime方向に等間隔に配置するため、ショット数Mとスペクトルの観測帯域Lと振動傾斜磁場の周期Tとは、以下の式(6)に示す関係を有する。
次に、計算機14のデータ処理部によりデータ処理手順を図6および図7を用いて説明する。データ処理部は、上記パルスシーケンス401に従って得られたデータを処理し、拡散強調画像SIを得る。図6は、本実施形態のデータ処理の処理フローである。また、図7は、データ処理の模式図と図6の処理フローの各ステップとの関係を示す図である。図7には、ショット数が4((1)〜(4))で、時間方向に6つのデータを取得する場合を例示する。
本実施形態のデータ処理は、制御部から全計測を終えた旨の通知を受けて開始される。先ず、データ取得43で得られたショット(shot)毎のk空間上の各点(kx、ky)のナビゲーションデータRr(shot,kx,ky)について、kx,ky方向に画像再構成を行い、ショット(shot)毎の実空間上の各点(x、y)のナビゲーション画像Ri(shot,x,y)を計算する(ステップS601)。画像再構成には、典型的には、2次元フーリエ逆変換を用いる。
次に、データ取得46で得られたショット(shot)毎および時間(time)毎のk空間上の各点(kx、ky)のSIデータSr(shot,time,kx,ky)についてkx,ky方向に画像再構成を行い、ショット(shot)および時間(time)毎の実空間上の各点(x、y)の、中間データSm(shot,time,x,y)を計算する(ステップS602)。画像再構成には、典型的には、2次元フーリエ逆変換を用いる。
次に、中間データSm(shot,time,x,y)の位相を、それぞれ、同じショットで取得した、実空間上の同位置(x、y)のナビゲーション画像Ri(shot,x,y)の位相を用いて補正する(ステップS603)。本位相補正は、中間データSm(shot,time,x,y)の位相から、ナビゲーション画像Ri(shot,x,y)の位相を減算することで実現する。このステップS603の処理により、体動によって発生する位相のばらつきを低減(補正)する。
次に、中間データSm(shot,time,x,y)に対し、時間(time)方向に整列処理を行い、中間データSa(time,x,y)を計算する(ステップS604)。ここで、整列処理は、時間領域のインターリーブの手法で取得した各ショットのデータを、取得時間順に並べる処理である。詳細は後述する。
最後に、中間データSa(time,x,y)について、time方向に周波数解析し、分子c毎の拡散強調SI画像Si(c,x,y)を計算し(ステップS605)、データ処理を終了する。周波数解析には、典型的には、1次元フーリエ逆変換を用いる。
なお、以上の処理により得られた拡散強調SI画像Si(c,x,y)は、計算機14に接続される表示装置(不図示)にSIとして表示される。例えば、SIとして、空間上各点(x,y)での拡散強調スペクトル、あるスペクトルピークの面積、最大ピーク値を算出し、拡散強調画像等が表示される。また、本拡散強調画像について、拡散傾斜磁場の印加強度、印加方向、印加タイミングのいずれかの少なくとも1つを変えた複数のb値でフィッティング計算し、空間上の各点(x,y)におけるADCを算出し、ADCマップとして表示してもよい。
ここで、整列処理の詳細を説明する。簡単のため、空間上、同一位置(x、y)のデータで説明する。すなわち、ステップS603で得た中間データSm(shot,time,x,y)の、(x,y)の記載を省略し、また、ショットを特定する変数shotとして順に付与されるショット番号{1,2,3,…M}(Mはショット数)を用い、1番目のショットの第1番目のデータ取得開始タイミングをt0とし、各ショット内でのデータ取得時間間隔をD、取得データ数をNで表す。各ショット内のデータ取得間隔がDで、ショット数がMであるため、時間領域でのインターリーブを実現するため、各ショットは、D/MずつSIデータの取得開始時間をずらして取得される。なお、M、Nは、正の整数である。以下の説明では、M、Nは4以上の場合を例にあげて説明する。
1番目のショットで取得したSIデータから得られる中間データSmは、Sm(1、t0)、Sm(1、t0+D)、Sm(1、t0+2D)、・・・Sm(1、t0+(N−1)D)である。また、2番目のショットで取得したSIデータから得られる中間データ(2番目の中間データ)Smは、Sm(2、t0+D/M)、Sm(2、t0+D/M+D)、Sm(2、t0+D/M+2D)、・・・Sm(2、t0+D/M+(N−1)D)である。3番目のショットによる中間データSmは、Sm(3、t0+2D/M)、Sm(3、t0+2D/M+D)、Sm(3、t0+2D/M+2D)、・・・Sm(3、t0+2D/M+(N−1)D)である。同様に、M番目のショットによる中間データSmは、Sm(M、t0+(M−1)D/M)、Sm(M、t0+(M−1)D/M+D)、Sm(M、t0+(M−1)D/M+2D)、・・・Sm(M、t0+(M−1)D/M+(N−1)D)である。
ステップS604で行われる整列処理は、これらの全ショットの全中間データを、図7に示すように、time方向に取得時間順に並べ、Sm(1、t0)、Sm(2、t0+D/M)、Sm(3、t0+2D/M)・・・Sm(M、t0+(M−1)D/M)、Sm(1、t0+D)、Sm(2、t0+D/M+D)、Sm(3、t0+2D/M+D)・・・Sm(M、t0+(M−1)D/M+D)、・・・Sm(1、t0+(N−1)D)、Sm(2、t0+D/M+(N−1)D)、Sm(3、t0+2D/M+(N−1)D)、Sm(M、t0+(M−1)D/M+(N−1)D)を得る。なお、上記説明は、整列処理の演算方法を説明するもので、メモリ領域で実際にデータを移動しても良いし、移動せずに整列処理結果どおりにメモリ領域を指すポインタを変更するよう構成してもよい。本計測でのデータ量は大きくなる場合が多いので、後者のポインタの変更での処理が演算速度の点で有利である。
また、データ加算のため、上記計測を複数回繰り返す場合は、ステップS604において、整列処理に加え、加算処理を行ってもよい。すなわち、各計測毎に取得したデータを保持し、ステップS603まで繰り返し、ステップS604の整列処理後、加算処理を行う。
ここで、加算処理とは、同一のパラメータで特定される中間データSm(shot,time,x,y)または、中間データSa(time,x,y)がある場合,それらを加算する処理を言う。なお、整列処理と加算処理とはいずれを先に行ってもよい。例えば、整列処理後、加算処理を行う場合、中間データSa(time,x,y)のためのメモリ領域を用意し、そこに同一(time,x,y)を有する中間データSaを順次加算する。一方、加算処理後、整列処理を行う場合、中間データSm(shot,time,x,y)のためのメモリ領域を用意し、そこに同一(shot,time、x,y)を有する中間データSmを整列処理の前に加算し、加算処理後、上述の整列処理を行う。
なお、上記処理フローの説明では詳述していないが、ナビゲーションデータRrおよびSIデータSrは、振動傾斜磁場の極性に応じて分離して計算する。すなわち、上記ステップS601において、ナビゲーションデータRrは、データ取得43の際のx軸方向(Gx)に印加されるナビゲーション用振動傾斜磁場41の極性により二つに分離され、それぞれからナビゲーション画像Riを再構成後、加算される。また、ステップS602において、SIデータSrは、データ取得46の際のx軸方向(Gx)およびy軸方向(Gy)に印加されるSI用振動傾斜磁場44の極性により4つに分類され、それぞれから中間データSmを再構成後、加算される。
また、上記処理フローでは、制御部から全計測を終えた旨の通知を受けて開始されるものとしたが、これに限られない。例えば、各ショットを終える毎に、ステップS603まで処理を進め、全ショットについて、ステップS603まで処理を終えた後、ステップS604以降の処理を行うよう構成してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、上述のパルスシーケンス401に従って、体動補正に用いるナビゲーションデータRrと拡散SIデータSrとを取得するショットを拡散SIデータSrの取得タイミングを変化させて複数回繰り返し、各ショットにおいて、ナビゲーションデータRrから空間上の各点での位相変位を算出し、当該位相変位を用いて、同じショットで取得した拡散SIデータにおける空間上同一位置のデータの位相を補正する。そして、補正後の一連のデータを時間方向に整列させ、時間方向に周波数解析を行う。
一般に、時間領域でのインターリーブの手法を用いる場合、位相情報を用いてケミカルシフト情報を得ているため、体動による位相ばらつきがあると本来無いケミカルシフトにスペクトルピークが出現するというスペクトル方向のゴースト状のアーティファクトが発生する。また、ケミカルシフト方向にスペクトルピークのずれが発生することにより、信号加算時における信号減衰も発生する。
しかし、本実施形態では、ショット毎にナビゲーションデータRr(shot,kx,ky)を取得し、データ処理時に、体動によるコヒーレントな位相変位を、ナビゲーションデータRr(shot,x,y)から再構成したナビゲーション画像Ri(shot,x,y)で検出し、検出結果を中間データSm(shot,time,x,y)から減算している。従って、SIデータ本来の位相を算出できる。
特に、本実施形態では、ナビゲーション用振動傾斜磁場41によりショット毎に2次元(kx,ky)のナビゲーションデータRr(shot,kx,ky)を取得し、各位置(x,y)での位相変位を検出している。さらに、SI用振動傾斜磁場44により得られるSI用データSr(shot,time,kx,ky)についても、ショット毎にtime方向に2次元(kx,ky)のデータを得ている。従って、本実施形態によれば、位置(x、y)毎に得た位相変位で位置(x、y)毎にSI用データSrを補正できる。従って、位置(x、y)により大きく変化する体動による位相変位を精度良く補正できる。結果として、拡散強調SI画像Si(c,x,y)において、スペクトル方向のゴースト状のアーティファクトを抑制でき、同時に信号加算時の信号減衰も抑制できる。
また、上述のように、本実施形態によれば、励起高周波磁場パルス21と反転高周波磁場パルス23で選択されるスライス面内全ての核磁化の信号を検出するため、前述の拡散強調2D−CSIと同等のSNRが得られる。
一般に、拡散SIが対象としている生体内代謝物の計測では、代謝物のADCが低く、信号量が小さい。このため、高いb値を用い、必要となる加算回数が多くなりがちである。このような場合であっても、本実施形態によれば、体動アーティファクトを抑制でき、かつ、空間分解能、スペクトル観測帯域およびSNRを維持できる。従って、計測精度が向上するとともに、計測時間を短縮することができる。
なお、本実施形態の各ショットで用いられるパルスシーケンスでは、位相エンコードを用いていないため、位相エンコード方向のゴースト状のアーティファクトも当然発生しない。
ここで、従来のDWIにおける体動アーティファクトの抑制効果の限界について説明する。図8は、従来の拡散強調イメージング(DWI)のパルスシーケンス図である。詳細については、特許文献2、3に記載がある。従来のDWIのパルスシーケンス801は、図4に示す本実施形態のパルスシーケンス401と拡散傾斜磁場28の印加までは同じである。その後、従来のDWIでは、1次元のナビゲーション用傾斜磁場81を印加してx方向の空間情報を付加した核磁気共鳴信号82を発生させてデータ取得83する。引き続き、位相エンコード傾斜磁場84とイメージング用振動傾斜磁場85とを印加してx、yの空間情報を付加した核磁気共鳴信号86を発生させてデータ取得87する。以上のパルスシーケンス801で実現される1ショットを、位相エンコード傾斜磁場84の印加強度を変更しながら複数回実行する。このように、k空間を分割し、各分割されたk空間毎にデータを充填していく手法を、k空間分割と呼ぶ。
次に、図9と図10を用いて、従来のDWIの場合のデータ処理を説明する。ここで、図9は、従来のDWIのフローチャートであり、図10は、図9に示すフローチャートに従って行われるデータ処理の模式図と各ステップとの関係を示す。
先ず、ショット毎のデータ取得83で得られたナビゲーションデータRr(shot,kx)について、kx方向に画像再構成を行うことで、ショット毎のナビゲーション画像Ri(shot,x)を計算する(ステップS901)。ここで、画像再構成には、典型的には、1次元フーリエ逆変換を用いる。
次に、ショット毎にデータ取得87で得られたイメージングデータIr(shot,kx,ky)についてkx方向に画像再構成を行うことで、ショット毎の中間データIm(shot,x,ky)を計算する(ステップS902)。ここでも、画像再構成には、典型的には、1次元フーリエ逆変換を用いる。
次に、ショット毎の中間データIm(shot,x,ky)の位相を、同じ位置xのナビゲーション画像Ri(shot,x)の位相で補正する(ステップS903)。本位相補正は、中間データIm(shot,x,ky)の位相から、同じショットで取得したナビゲーション画像Ri(shot,x)の位相を減算することで実現する。
次に、ショット毎の中間データIm(shot,x,ky)をky方向に整列処理することにより、中間データIa(x,ky)を計算する(ステップS904)。
最後に、中間データIa(x,ky)について、ky方向に画像再構成することで画像Ii(x,y)を計算する(ステップS905)。ここで、画像再構成には、典型的には1次元フーリエ逆変換を用いる。なお、従来のDWIにおいても、加算処理を行う場合は、ステップS904において行う。
以上説明したように、従来のDWIでは、SIを対象とせず、空間情報のみ取得しているため、取得したデータから、化学物質を分離しながらその拡散強調画像を取得したり、ADCマップを算出することはできない。また、従来のDWIでは、ナビゲーション用傾斜磁場81によりy方向全体で合算された位相変位が検出される。先に説明したように、体動による位相変位は位置に依存しているため、このようにy方向全体で合算された位相変位では精度よく位相変位を補正することができず、体動アーティファクトを抑制することは難しい。
なお、この従来のDWIの変法として、x方向1次元とy方向1次元のナビゲーションデータをそれぞれ取得し、2次元各点の位相変位を推定する方法も考えられる。しかし、1回のショットで2次元の各点(x,y)での位相変位を正確に得られない点では変わりがなく、体動アーティファクトの抑制効果も限定的である。特に、従来のDWIでは、k空間分割を使用しているため、ky方向のk空間分割の場合、各エコーでは1次元xの空間情報しか得られず、y方向には合算された信号が検出される。このため、例え、ナビゲーションデータで2次元各点の位相変位が得られたとしても、補正対象となるイメージングデータ側にx方向の空間情報しかないため、それを用いた2次元各点での位相補正を行うことは難しく、1次元x方向での位相補正となる。従って、y方向の体動による位相変位の補正を十分に行うことは難しく、体動アーティファクトの抑制効果も限定的となる。
これに比して、本実施形態では、時間領域のインターリーブによる手法で、必要なデータを取得し、空間の各点(x、y)での位相変位を正確に補正できるため、上記従来のDWIに比べ、位相補正を正確に行うことができ、それに伴い、体動アーティファクトも抑制できる。
ここで、従来の他のDWIにおける体動アーティファクトの抑制効果の限界について説明する。図11(a)は、従来の拡散強調ラインスキャンエコープラナーSI(Diffusion−weighted Line−scan Echo−planar SI、DW−LSEPSI)のパルスシーケンス図である。詳細については、特許文献5に記載されている。本図に示すように、DW−LSEPSIのパルスシーケンス1101では、スライス傾斜磁場22の印加とともに励起高周波磁場パルス21を印加し、対象物体内のあるスライス内に核磁気共鳴現象を誘起する。励起高周波磁場パルスとしては典型的にはπ/2−パルスが用いられる。次に、スライス傾斜磁場22とは異なる軸(ここでは、Gz軸)方向にスライス傾斜磁場24を印加するとともに反転高周波磁場パルス23を印加する。反転高周波磁場パルスとしては典型的にはπ−パルスが用いられる。これにより、励起高周波磁場パルス21とスライス傾斜磁場22とにより選択されたスライスと、反転高周波磁場パルス23とスライス傾斜磁場24とにより選択されたスライスとの交差領域内の磁化が反転される。反転高周波磁場パルスの前後に拡散傾斜磁場28を印加することで以降得られる核磁気共鳴信号に拡散情報を付加する。振動傾斜磁場44を印加して、核磁気共鳴信号45を発生させ、データ取得46する。
このように、従来のDW−LSEPSIでは、二つの高周波磁場パルスで選択されるスライスが交差する(y,z)面に直交する1ラインのみから核磁気共鳴信号が得られる。この1ライン分の核磁気共鳴信号を取得する計測をここでは、1ショットと呼ぶ。これにより、位相エンコードを使用せずにSIが可能となり、体動による位相エンコード方向のゴースト状のアーティファクトは発生しない。また、信号加算時の信号減衰については、ショット毎に各点(x,y)でのスペクトルが得られるため、これらスペクトルを基に位相補正を行いながら加算すれば、信号減衰を抑制できる。
しかしながら、この従来のDW−LSEPSIでは、SNRが低下する場合がある。特に、励起ラインが、励起スライス内を超えないようにする場合に、顕著である。図11(b)にその様子を表す。図11(b)は全shotの励起ラインの様子を(y,z)面で画像化したものである。中央横一列に並んでいるのが、励起ラインである。その上下に点線で示した範囲で示される領域の内部が本来取得したい励起スライスである。すなわち、DW−LSEPSIで信号が取得される領域は、本来取得したい領域の半分であり、その分、SNRが低下しやすいことが判る。また、1繰り返し時間(TR)の間で計測できる励起ライン数には上限があり、それを超えると計測時間の延長を招き、結果として時間当たりのSNRが低下する。
これに対し、本実施形態では、上述のように、励起領域は本来取得したい領域と同一なのでSNRの劣化はない。また、体動アーティファクトの抑制効果についても、同様な2次元各点(x,y)での体動による位相変位の補正が可能なため、従来のDW−LSEPSIと同様な抑制効果を得られる。
なお、上記実施形態では、SIを、スペクトルcと、x軸およびy軸で定まる2次元平面上の位置(x,y)とからなる3次元データSi(c,x,y)として扱っているが、これに限られない。2次元平面の設定は他の軸やオブリーク断面でも構わない。また、マルチスライスによる空間3次元化(x,y,z)により、4次元データSi(c,x,y,z)を取得するよう構成してもよい。また、ナビゲーション用振動傾斜磁場41およびSI用振動傾斜磁場44について、さらにもう一軸方向について振動させ3次元空間を走査することで、4次元データSi(c,x,y,z)を取得するよう構成してもよい。
また、上記パルスシーケンス401において、ナビゲーション用磁気共鳴信号42とSI用磁気共鳴信号45との取得タイミングを逆にしてもよい。但し、ショット毎のナビゲーション用磁気共鳴信号42の取得タイミングは、励起高周波磁場パルス21の印加タイミングを基点として同一時間後に設定する必要がある。これは、ナビゲーション用磁気共鳴信号42から計算されるナビゲーション画像Ri(shot,x,y)は、位相補正に用いるためのものであり、経過時間の差による位相変動を含めないようにするためである。従って、例えば、SI用磁気共鳴信号45のデータ取得46後の待ち時間を調整し、これを実現する。
また、1Hを測定対象とする拡散強調SIの場合、強大な水信号を予め抑圧する水抑圧パルスを励起高周波磁場パルス21の前にプリパルスとして付加するよう構成してもよい。これにより、通常は水信号で隠れてしまう微弱な代謝物の信号を検出できる。ただし、水信号は、信号強度が高いため、体動を検出するナビゲーション用データとしては有用であり、補正の精度を高める。このため、プリパルスとして印加する水抑圧パルスで完全に水信号を抑圧するのではなく、1/10程度に信号強度を低下させるよう調整する前処理をさらに加えるよう構成してもよい。また、プリパルスとしては、領域外選択(Outer Volume Suppression、OVS)パルスを使用し、例えば、皮下脂肪の領域など観測の妨げになる領域からの信号を抑圧するよう構成してもよい。
また、図4に示す本実施形態のパルスシーケンス401は、励起と反転というスピンエコーシーケンスをベースとしている。しかし、ベースとするシーケンスは、これに限られない。例えば、Stimulated Echo Acquisition Mode (STEAM)や、Point Resolve Spectroscopyをベースにしてもよい。
また、拡散傾斜磁場28の印加強度、印加時間、および波形は変更可能である。拡散傾斜磁場28を、例えば、x,y,zの各軸方向それぞれに、同一の印加強度で印加するよう構成し、得られた拡散強調SIを平均処理して等方性拡散強調SIを取得するよう構成してもよいし。また、静磁場不均一の影響を抑制するために、各軸で極性を正負逆にした2回の計測を行い、平均処理を行うよう構成してもよい。また、x,y,zの各軸方向の少なくとも1軸方向に他の軸方向と異なる印加強度で印加するよう構成し、異方性拡散強調SIを取得するよう構成してもよい。さらに、得られた複数の拡散強調SIから等方性ADCマップや異方性ADCマップ、Fractional Anisotropyマップを算出するよう構成してもよい。また、x,y,zの各軸方向の少なくとも2方向に拡散傾斜磁場28を印加して得た複数の拡散強調SIからの拡散テンソルの算出や、当該拡散テンソルを連結して表示するトラクトグラフィ(tractgraphy)表示を行うよう構成してもよい。特に、N−acetylaspartateのように神経細胞に特有に含まれる代謝物ではトラクトグラフィによる神経線維の描出は有効と考えられる(例えば、特許第3538726号公報参照)。
さらに、拡散強調傾斜磁場28の印加時間を変更し、分子拡散を制限している構造物の情報を強調するよう構成してもよい。拡散の平均移動距離Vは次式(7)で与えられる。
ここでt
dは拡散時間を表し、典型的なパルス状の拡散傾斜磁場においては、次式(8)で与えられる。
このため、拡散時間t
dを調整することで、平均移動距離以下の距離間隔にある構造物による制限拡散を強調することができる。例えば、N−acetylaspartateの生体内でのADCは0.2×10
−9m
2/s程度である。拡散時間t
dを40msに設定すると、平均移動距離Vは約4μmとなる。すなわち、拡散時間を40ms以下にすると、平均移動距離は4μm以下になるために、細胞膜による分子拡散の制限よりも、細胞内構造物による制限が支配的となる。これにより、細胞内構造物による制限拡散が強調される。逆に、拡散時間を40ms以上にすると、平均移動距離が4μmを超えるため、細胞膜による制限の割合が増大する。
さらに、拡散傾斜磁場の印加方向を放射状に変化させて、平均移動距離を3次元構造として描出するHigh Angular Resolution Diffuison Imaging(HARDI)も可能である(例えば、特許第3457999号公報参照)。これにより神経線維の交差状況が観察できる。
また、本実施形態では、波形が矩形の拡散傾斜磁場28を印加している。しかし、拡散傾斜磁場28の波形は矩形に限られない。例えば、渦電流を抑制するためにサイン波を用いてもよい。また、ディフェーズとリフェーズを組み合わせたバイポーラ(bi−polar)波形を反転高周波磁場パルス23の前後のいずれか一方に印加するよう構成してもよい。このように構成することで、拡散時間を短縮することが可能となる。なお、このバイポーラ波形の拡散傾斜磁場を反転高周波磁場パルス23の前後両方に印加してもよい。この場合、先の拡散傾斜磁場の印加から後の拡散傾斜磁場の印加までの間、体動が等速運動とみなせる場合、体動による位相変位は生じない。このため、体動アーティファクトの抑制が、さらに容易になる。また、反転高周波磁場パルス23の印加は必須ではなく、例えば、反転高周波磁場パルス23を印加する代わりに拡散傾斜磁場28のディフェーズとリフェーズに当たる二つの傾斜磁場パルスの極性を逆転するよう構成してもよい。
なお、測定対象とする核種は核磁気共鳴信号を発生する核種であれば特に制限はない。ただし、拡散強調を行いやすい核種としては、1Hと19Fが挙げられる。これらは磁気回転比γが高いため、同一の拡散傾斜磁場28であってもb値を大きくすることができる。特に代謝物では、ADCが低い場合が多く、高いb値が出せる核種の選択は重要である。
また、一般に、信号加算を行う場合、計測毎に同一メモリ領域に加算しながら格納する。しかし、本実施形態では、上述のように位相補正を行うため、各計測のそれぞれのショットで得られた信号は、それぞれ別個の記憶領域に格納する。ただし、次の計測のデータ取得43前に、前の計測のナビゲーション画像Riによる中間データSmの位相補正を完了するようにし、位相補正後の中間データSmを、従来同様、計測毎に同一メモリ領域に格納するよう構成してもよい。これにより、データ格納領域を縮小でき、データ処理時間を短縮できる。
また、上記実施形態では、ナビゲーション用振動傾斜磁場41およびSI用振動傾斜磁場44として、x方向に高速にジグザグに走査しながら、y方向にもジグザグに走査するエコープラナー形の振動傾斜磁場波形を用いている。しかしながら、これらの振動傾斜磁場は、これに限られない。例えば、スパイラル形の振動傾斜磁場を用いるよう構成してもよい。この場合のパルスシーケンス図を図12(a)に示す。また、図12(b)に、スパイラル形の振動傾斜磁場を1回印加後に取得したデータの軌跡を(time、kx、ky)の3次元空間内で俯瞰した図を、図12(c)に、図12(b)を(time、kx)および(kx、ky)の2次元空間に射影した図を示す。なお、データ処理については、図6、7で示した方法を適用可能である。ただし、スパイラル形の振動傾斜磁場を用いる場合は、kx,ky方向の画像再構成において、スパイラル波形に応じたグリッディング処理を用いる。
なお、ナビゲーション用振動傾斜磁場波形41およびSI用振動傾斜磁場波形44に同一の形状の振動傾斜磁場を用いると、振動傾斜磁場による空間的な歪が同様となるとともに、同一の画像再構成プログラムを利用できる。しかし、いずれか一方をエコープラナー形とし、他方をスパイラル形とするよう構成してもよい。
また、ナビゲーション用振動傾斜磁場41による走査範囲を縮小し、ナビゲーション画像Riの空間分解能をSI画像Siよりも低くすることで、ナビゲーションデータ取得に使用する時間を短縮するよう構成してもよい。これにより、エコー時間(TE)を短縮することができ、T2が短い代謝物の測定精度を向上できる。
また、複数のRF受信コイルの感度分布の差異を利用してk空間の走査回数を減らすパラレルイメージングを応用し、振動傾斜磁場で走査するk空間の点数を減らしてもよい。例えば、SI用振動傾斜磁場波形をエコープラナー形としてy方向の振動傾斜磁場の走査回数を半分に減らし、減らした分についてはy方向のRF受信コイルの感度分布の差異を利用したSensitivity Encoding(SENSE)法を用いてもよい。これにより、time方向の計測周期を半分に出来るため、インターリーブの回数を半分にできるという利点がある。また、例えば、SI用振動傾斜磁場波形をスパイラル形としてk空間上のスパイラルの軌跡の幅を倍にして計測点を半分に減らし、減らした分についてはx,y方向のRF受信コイルの感度分布の差異を利用したSENSE法を用いてもよい。これにより、time方向の計測周期を半分に出来るため、インターリーブの回数を半分にできるという利点がある。なお、ここで走査回数の減少は半分に限るものではないことは言うまでもない。
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態を説明する。本実施形態では、照射する励起高周波磁場パルスと反転高周波磁場パルスとの中心周波数、および、ナビゲーション用磁気共鳴信号とSI用磁気共鳴信号との検波の基準とする中心周波数を別個に設定する。本実施形態の磁気共鳴装置は基本的に第一の実施形態と同様である。しかし、計算機14が磁気共鳴装置100を構成する各装置の動作を制御するパルスシーケンスが第一の実施形態と異なる。以下、第一の実施形態と異なる構成についてのみ説明する。また、本実施形態では、照射するパルスの中心周波数および受信信号の検波の基準とする中心周波数をそれぞれ単にパルスの中心周波数、信号の中心周波数と呼ぶ。
以下、本実施形態のパルスシーケンス402について説明する。図13は、本実施形態のパルスシーケンス402のパルスシーケンス図である。本実施形態のパルスシーケンス402は基本的に第一の実施形態のパルスシーケンス401と同様である。ただし、本実施形態では、上述のように、励起高周波磁場パルス21A、反転高周波磁場パルス22A、ナビゲーション用磁気共鳴信号42A、および、SI用磁気共鳴信号45Aの中心周波数が異なる。スペクトル観測帯域の中心周波数fcと水の共鳴周波数fwとすると、本実施形態では、図13に示すように、典型的な1H計測において、励起高周波磁場パルス21A、反転高周波磁場パルス22AおよびSI用磁気共鳴信号45Aの中心周波数をfcに設定し、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aの中心周波数をfwに設定する。すなわち、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aを取得する際と、SI用磁気共鳴信号45Aを取得する際に、中心周波数を変更する。
SI用振動傾斜磁場44を印加する場合、中心周波数からずれたピークには、折返しや、グリッディング処理による画像歪や画像ボケが発生しやすい。SI用磁気共鳴信号45Aの取得時に、中心周波数をスペクトル観測帯域の中心(fc)に設定することで、これら現象の影響を低減できる。なお、一般に、水信号よりも高域には通常対象となる代謝物のスペクトルが無いため、スペクトル観測帯域の中心(fc)は、水信号よりも低域側でほぼ水信号と脂肪信号の中間となる。
一方、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aは、体動による位相変位の検出に用いられる。ここで、水信号が最大の信号強度を有するため、水画像を用いると最も精度よく位相変位を算出できる。ところが、水画像を水の共鳴周波数fwではない中心周波数でデータ取得43したデータから算出すると、その周波数差に応じて位置ずれが生じる。従って、水画像で算出した体動による位相変位についても位置ずれが混入し、体動補正の効果が減少する場合がある。また、ナビゲーションデータのデータ取得43のタイミングが僅かでもずれると、水の共鳴周波数fwと中心周波数との差に応じた位相回転が混入し、体動補正の効果を減少させる場合がある。本実施形態では、この二つの影響を低減するため、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aのデータ取得43の際、中心周波数を水の共鳴周波数fwに設定する。
本実施形態においても、第一の実施形態同様、パルスシーケンス402の1回の実行であるショットを、SI用振動傾斜磁場44の印加およびデータ取得46の開始タイミングをずらしながら、予め定められた回数実行する、時間領域でのインターリーブにより計測を行う。
以上のパルスシーケンス402に従って計測を行って取得したデータの処理は、第一の実施形態と同様であるため、ここでは説明しない。
以上説明したように、本実施形態によれば、上述のパルスシーケンス402に従って、体動補正に用いるナビゲーションデータRrと拡散SIデータSrとを取得するショットを拡散SIデータSrの取得タイミングを変化させて複数回繰り返し、それぞれデータを取得する。このとき、ナビゲーションデータRrは、データ処理時に最大信号強度を呈するスペクトルピークの周波数を検波の基準とする中心周波数として取得する。第一の実施形態と同様に、各ショットにおいて、ナビゲーションデータRrから空間上各点での位相変位を算出し、当該位相変位を用いて、同じショットで取得した拡散SIデータにおける空間上同一位置のデータの位相を補正する。そして、補正後の一連のデータを時間方向に整列させ、時間方向に周波数解析を行う。
従って、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、体動アーティファクトを抑制し、かつ、SNR、空間分解能、スペクトル観測帯域等を維持した高精度な計測を実現できる。さらに、水の共鳴周波数fwとスペクトル観測帯域の中心周波数fcとの差による位置ずれの影響を低減できるため、位相変位を精度よく算出でき、より高い精度の計測を実現することができる。
なお、前者の位置ずれの影響については、水の共鳴周波数fwと中心周波数との差を用いて位置ずれの量を算出できる。このため、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aのデータ取得43の際の中心周波数をfcのままとし、図6のステップS601において、中心周波数fcと水の共鳴周波数fwとの差異による位置ずれを補正する構成を追加してもよい。
さらに、静磁場不均一により正確な水の共鳴周波数fwが判らない場合がある。このような場合は、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aを2種類取得することで、中心周波数と水の共鳴周波数fwとの差を求めることができる。
図14(a)にナビゲーション用磁気共鳴信号42Aを2種類取得する場合のパルスシーケンス図を示す。本図に示すパルスシーケンス403は、図13に示すパルスシーケンス402と異なり、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aのデータ取得43の際に中心周波数を、他の中心周波数と同じfcに設定する。また、ナビゲーション用振動傾斜磁場41Aの印加を延長し、Gyの極性が反転している間もデータを取得する。
データ処理時は、ナビゲーション用振動傾斜磁場41Aの極性に応じて取得したナビゲーションデータを分類し、画像再構成を行う。図14(b)は、このようにして得られた水の画像を模式的に表したものである。画像1401は、x軸方向(Gx)に印加するナビゲーション用振動傾斜磁場41Aの極性が正(+)で、y軸方向(Gy)に印加するナビゲーション用振動傾斜磁場41Aの極性が+の間に取得したナビゲーションデータから再構成した画像であり、画像1402は、Gxが負(−)で、Gyが正(+)の間に取得したナビゲーションデータから再構成した画像であり、画像1403はGxが+、Gyが−の間に取得したナビゲーションデータから再構成した画像であり、画像1404は、Gxが−、Gyが−の間に取得したナビゲーションデータから再構成した画像である。また、画像1405は、画像1401〜1404の位置ずれを平均処理したものである。
中心周波数と水の共鳴周波数fwとの差δ[ppm]に応じて、4方向(2方向の±)に位置ずれが生じる。x軸方向のずれ量をΔx、y軸方向のずれ量をΔyで表すと、それぞれ、以下の式(9)で表される。
ここで、Gxはx軸方向の振動傾斜磁場の印加強度、τはデータサンプリング間隔、Gyはy軸方向の振動傾斜磁場の印加強度、Txはx軸方向の振動傾斜磁場の周期である。なお、式(9)は位置ずれの典型的な状況を示すために、単純な矩形波で振動させた場合について導出したものである。
式(9)から判るように、位置ずれの量は、早く振動させているx軸方向には小さく、遅く振動させているy軸方向には大きい。この位置ずれ量から、逆に中心周波数と水の共鳴周波数fwとの差δを求めることができる。もちろん、静磁場に不均一がある場合のように、位置に応じて水の共鳴周波数fwが異なる場合、画像中の特徴点の変位を計算することで、上述のように各特徴点における周波数の差異を算出し、それを補間することで全域の共鳴周波数を推定することができる。
なお、本実施形態では、主に1Hを対象とし、ナビゲーション画像Riとして水を利用する場合について説明した。しかしながら、これに限られない。例えば、1Hを対象とする場合でも、水抑圧を十分に行うと、脳ではN−acetylaspartateが最大の信号強度となる場合がある。このような場合には、上記説明における水の項を全てN−acetylaspartateと変更して実施すればよい。同様に、他の核種に変更して実施してもよい。すなわち、体動による位相変位を高精度に検出するために、当該計測の中で、最大信号強度を示す化学物質の中心周波数を、ナビゲーション用磁気共鳴信号42Aの検波の基準とする周波数として設定すればよい。
なお、第一の実施形態で説明した様々な変法は、本実施形態においても適用可能である。
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態を説明する。本実施形態では、SI用磁気共鳴信号を取得する前に、水信号を抑圧する。本実施形態の磁気共鳴装置は基本的に第一の実施形態と同様である。本実施形態では、計算機14が磁気共鳴装置100を構成する各装置の動作を制御するパルスシーケンスが第一の実施形態と異なる。以下、第一の実施形態と異なる構成についてのみ説明する。本実施形態では、典型的には、1Hを対象核種としたSIを取り扱う。
以下、本実施形態のパルスシーケンス405について説明する。図15は、本実施形態のパルスシーケンス405のパルスシーケンス図である。本実施形態のパルスシーケンス405は基本的に図4に示す第一の実施形態のパルスシーケンス401と同様である。ただし、本実施形態では、ナビゲーション用磁気共鳴信号42とSI用磁気共鳴信号45とを取得する間に、水信号抑圧用高周波磁場パルス1501と信号抑圧用クラッシャーパルス1502とを印加する。
信号抑圧用高周波磁場パルス1501は、所定の周波数帯の信号のみを励起するパルスである。典型的には、水信号の抑圧を目的に、水の共鳴周波数fwを中心として1ppm以下の帯域を有するパルスが用いられる。信号抑圧用クラッシャーパルス1502は、信号抑圧用高周波磁場パルス1501の前後に、印加量がキャンセルされるように調整されて印加される傾斜磁場パルスである。信号抑圧用クラッシャーパルス1502により、水以外の代謝物の信号はディフェーズおよびリフェーズされ、信号量に大きな変化は生じない。しかしながら水信号は、ディフェーズとリフェーズの間に信号抑圧用高周波磁場パルス1501により回転が与えられるため、リフェーズにあたる後段の信号抑圧用クラッシャーパルス1502がクラッシャーとして振舞い、抑圧される。
本実施形態においても、第一の実施形態同様、パルスシーケンス405の1回の実行であるショットを、SI用振動傾斜磁場44の印加およびデータ取得46の開始タイミングをずらしながら、予め定められた回数実行する、時間領域でのインターリーブにより計測を行う。
本実施形態においても、上記パルスシーケンス405に従って計測を行い取得したデータのデータ処理は第一の実施形態と同様であるため、ここでは、説明しない。
以上説明したように、本実施形態によれば、上述のパルスシーケンス405に従って、体動補正に用いるナビゲーションデータRrと拡散SIデータSrとを取得するショットを拡散SIデータSrの取得タイミングを変化させて複数回繰り返し、それぞれデータを取得する。このとき、ナビゲーションデータRrの取得と拡散SIデータ取得との間に信号抑圧パルスを印加する。そして、第一の実施形態と同様に、各ショットにおいて、ナビゲーションデータRrから空間上各点での位相変位を算出し、当該位相変位を用いて、同じショットで取得した拡散SIデータにおける空間上同一位置のデータの位相を補正する。そして、補正後の一連のデータを時間方向に整列させ、時間方向に周波数解析を行う。
従って、本実施形態によれば、ナビゲーションデータには、信号量の大きい水信号を利用でき、かつ、SIの観測時には、信号量が大きすぎて他の代謝物の観測の妨げになる水信号を抑圧できる。水信号は、SIの観測時に視覚的な把握を妨げるだけでなく、ピーク面積の計算におけるベースライン誤差としても混入するため、拡散強調画像の算出や、ADCの算出にも誤差が混入する可能性がある。SIの観測時に水信号を抑圧するため、これらの算出の精度を高めることができる。
すなわち、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、体動アーティファクトを抑制し、かつ、SNR、空間分解能、スペクトル観測帯域等を維持した高精度な計測を実現できる。さらに、水信号抑圧による拡散SIの視認性と定量的な算出の精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では水信号の抑圧を例にあげて説明したが、抑圧対象とする信号はこれに限らない。例えば、1Hを観測核種とした場合、脂肪信号は一般にADCが低く、拡散強調SIでは信号が強大になりすぎる場合がある。この場合、信号抑圧高周波磁場パルス1501は、脂肪信号の抑圧が可能なように周波数と帯域とを設定する。
また、第一の実施形態で説明した様々な変法は、本実施形態においても適用可能である。特に、ナビゲーションデータのデータ取得43およびSIデータのデータ取得46間の時間間隔を長くできないため、信号抑圧用高周波磁場パルス1501および信号抑圧用クラッシャー1502の印加回数は制限される。従って、ある程度抑圧対象の信号を抑圧しておくため、信号抑圧用のプリパルスの併用も可能である。
ただし、本実施形態では、ナビゲーションデータに信号量の大きい水信号を利用するため、ナビゲーション用磁気共鳴信号42とSI用磁気共鳴信号45とを取得する間に、水信号抑圧用高周波磁場パルス1501および信号抑圧用クラッシャーパルス1502とを印加する。このため、ナビゲーション用磁気共鳴信号42とSI用磁気共鳴信号45との取得タイミングを逆にすることは、本実施形態ではできない。
また、本実施形態においても、第二の実施形態同様、励起高週は磁場パルス21、反転高周波磁場パルス22、SI用磁気共鳴信号45の中心周波数を、スペクトル観測帯域の中心周波数fcとし、ナビゲーション用磁気共鳴信号42を取得する際の中心周波数を水の共鳴周波数fwとするよう構成してもよい。このように構成することで、第二の実施形態同様、精度よく位相変位を算出することができる。
また、第二の実施形態と同様に、上記全ての中心周波数をスペクトル観測帯域の中心周波数fcとし、水の共鳴周波数fwとスペクトル観測帯域の中心周波数fcとの差から位置ずれ量を算出して補正するよう構成してもよい。
さらに、第二の実施形態と同様に、正確な水の共鳴周波数fwが得られない場合、図14(a)に示す手法でナビゲーション用磁気共鳴信号42を2種類取得し、水の共鳴周波数fwを推定するよう構成してもよい。
<<第四の実施形態>>
次に、本発明を適用する第四の実施形態を説明する。本実施形態では、ナビゲーションデータを取得せず、SIデータから補正に用いる位相を算出する。本実施形態の磁気共鳴装置は基本的に第一の実施形態と同様である。本実施形態では、計算機14が磁気共鳴装置100を構成する各装置の動作を制御するパルスシーケンスおよび取得データを処理するデータ処理が第一の実施形態と異なる。以下、第一の実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
以下、本実施形態のパルスシーケンス406について説明する。図16は、本実施形態のパルスシーケンス406のパルスシーケンス図である。本実施形態のパルスシーケンス406は基本的に図4に示す第一の実施形態のパルスシーケンス401と同様である。ただし、上述のように、本実施形態では、ナビゲーションデータを取得しない。このため、第一の実施形態のパルスシーケンス401と異なり、ナビゲーション用磁気共鳴信号42、ナビゲーション用振動傾斜磁場41、およびナビゲーションデータのデータ取得43はない。
本実施形態においても、第一の実施形態同様、パルスシーケンス406の1回の実行であるショットを、SI用振動傾斜磁場44の印加およびデータ取得46の開始タイミングをずらしながら、予め定められた回数実行する、時間領域でのインターリーブにより計測を行う。
本実施形態では、SI用磁気共鳴信号45をデータ取得46で得たSIデータにデータ処理を施し、補正に用いるナビゲーション画像Riを計算する。以下、本実施形態における計算機14のデータ処理部によるデータ処理の手順について、ナビゲーション画像Riの計算に主眼をおいて説明する。
図17は、本実施形態のデータ処置の処理フローである。また、図18は、データ処理の模式図と図17の処理フローの各ステップとの関係を示す図である。ここでは、第一の実施形態と同様の処理を行うステップは、同番号を付与する。また、本実施形態のデータ処理も第一の実施形態同様、制御部から全計測を終えた旨の通知を受けて開始される。
本実施形態では、まず、データ取得46で得られたショット毎および時間毎のk空間上の各点(kx、ky)のSIデータSr(shot,time,kx,ky)について、time、kx、ky方向に周波数解析と画像再構成とを行い、ショット毎および分子c毎の実空間上の各点(x、y)のナビゲーション中間データRm(shot,c,x,y)を計算する(ステップS1701)。
次に、ナビゲーション中間データRm(shot,c,x,y)について、各shotの開始タイミングに応じた位相補正処理を加え、予め指定したスペクトルピークc0のみを選択し、ナビゲーション画像Ri(shot,x,y)を計算する(ステップS1702)。
ここで、各shotの開始タイミングに応じた位相補正は、各ショットにおいてtime方向のフーリエ逆変換の中心がずれるために生じる位相回転を補正するものである。図18では、各ショットの開始タイミングに応じた位相ずれを模式的に点線枠からのずれで表現している。実際には、ショット毎の実空間上の位置(x、y)における位相ずれp(shot,x,y)は、ショットの開始タイミングの差Δt(shot)とSI用振動傾斜磁場44の周期Tとを用いて次の式(10)で求められる。
ここでは、各ショットの開始タイミングの差Δt(shot)は、予め計測条件として設定される。この開始タイミングの差Δt(shot)とSI用振動傾斜磁場44の周期Tとを用いて位相ずれp(shot,x,y)を計算し、ナビゲーション中間データRm(shot,c,x,y)からこの位相ずれp(shot,x,y)を減算し、位相補正を行う。典型的にはエコー時間TEを取るショットがフーリエ逆変換の中心となるよう、すなわち位相ずれp(shot,x,y)が0となるように開始タイミングの差Δt(shot)を計算して位相補正を行う。また、予め指定したスペクトルピークc0は、1Hを観測対象核種とする場合、例えば、水のスペクトルピークを指定する。
以後、上記ナビゲーション画像を用い、第一の実施形態のステップS602からステップS605と同様の処理を行い、拡散強調SI画像Si(c,x,y)を得る。
なお、各shotにおける周波数解析では、スペクトル観測帯域の狭小化により、水スペクトルが折り返す場合がある。この場合、ステップS1701において、水信号の中心周波数で周波数補正した後、周波数解析するよう構成する。これにより折り返しではない水のスペクトルピークを得ることができる。
また、静磁場不均一などの影響により、水信号の中心周波数fwが予め判らない場合は、SI用振動傾斜磁場のGxとGyとの極性で分類した四つのSIデータを基に、ステップS1701とステップ1702とにおいて四つのナビゲーション画像Ri(x,y)を算出し、第二の実施形態と同様の手法で画像の位置ずれから水信号の周波数を算出する。もちろん、このような処理を行わず、水の共鳴周波数fwを中心周波数として設定し、計測及びデータ処理を単純化してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、上述のパルスシーケンス406に従って、拡散SIデータSrの取得タイミングを変化させて複数回繰り返しデータを取得する。そして、ショット毎に、拡散SIデータから体動補正に用いるナビゲーションデータを派生させる。得られたナビゲーションデータから空間上の各点での位相変位を算出し、当該位相変位を用いて、派生元の拡散SIデータにおける空間上同一位置のデータの位相を補正する。そして、補正後の一連のデータを時間方向に整列させ、時間方向に周波数解析を行う。
従って、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、体動アーティファクトを抑制し、かつ、SNR、空間分解能、スペクトル観測帯域等を維持した高精度な計測を実現できる。また、本実施形態によれば、ナビゲーションデータを拡散SIデータとは別に取得しなくて済むため、エコー時間を短縮でき、また、計測制御を単純化できる。エコー時間を短縮できるため、短いT2の代謝物の計測精度を向上することができ、拡散SIにとっては大きな利点となる。
なお、本実施形態においても、第一の実施形態で挙げた様々な変法が適用可能である。また、第二の実施形態同様、水の共鳴周波数とSI用磁気共鳴信号45を取得する際の中心周波数との差から位置ずれの量を算出し、位相変位算出時に補正するよう構成してもよい。さらに、第三の実施形態同様、SI用磁気共鳴信号取得前に水信号抑圧用高周波磁場パルス1501と信号抑圧用クラッシャーパルス1502とを印加するよう構成してもよい。
なお、上記各実施形態は、原子核スピンの共鳴を利用した拡散SIを念頭に記載しているが、それぞれ、電子スピンの共鳴を利用した電子スピン共鳴に対しても適用が可能である。