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JP3590992B2 - 耐摩耗性摺動部材 - Google Patents
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JP3590992B2 - 耐摩耗性摺動部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、摺動接触する部材の摺動面に耐摩耗,低摩擦抵抗処理を施した摺動部材に関する。特に、本発明は一般の相対摺動接触する機械部品の他、すべり軸受(真空用を含む),ころがり軸受の内外輪レース面,グルーブ軸受のスラスト受部あるいは人工関節等の摺動接触部に適用して有用な耐摩耗性摺動部材の摺動面構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対摺動接触する部材の摺動面に耐摩耗処理を施したものとして、例えば特開昭60−135564号公報に示された金属摺動部材がある。これは、互いに摺動接触する金属部材の少なくとも一方の部材の摺動面に、耐摩耗硬質材と固体潤滑剤とを区分けしてスパッタ蒸着し、これによって硬質材料蒸着部および固体潤滑材料蒸着部によるまだら状又はディンプル状パターン(以下まだら状パターンと称する)の蒸着面を形成したものである。この構成により、摺動接触する硬質材料部分で負荷荷重を受け、その周囲の固体潤滑材料が相手部材との摺動接触で掘り起されて硬質材料部分へ潤滑剤として供給され、耐摩耗性と摩擦力の軽減が同時にもたらされる。
【0003】
また他の例としては、摺動部材の母材の表面に凹凸面を形成し、この凹凸面上に直接固体潤滑膜を形成するか、あるいは該凹凸面にその凹凸形状を維持できる範囲で硬質材料層を設けた後、最上層の凹凸部に固体潤滑膜を形成し、これによって摺動時のせん断応力による固体潤滑膜の剥離を防止するとともに、耐摩耗性および充分な潤滑性を発揮できるようにした耐摩耗性摺動部材が提案されている(特開平2−76925号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の金属摺動部材あるいは耐摩耗性摺動部材はいずれも、摺動に伴なって固体潤滑面からの潤滑剤がそのまわりの耐摩耗硬質材あるいは母材の摺動面凸部へ供給されるので高い潤滑性が得られ、しかも耐摩耗硬質材あるいは凹凸パターンの凸部の部分で荷重を受けるので、負荷容量および寸法精度を向上させ得る効果がある。しかし前述の特開昭60−135564号公報記載のものは、摺動面の硬質材料部と固体潤滑材料部によるまだら状パターンの両材料部の面積比率については各々の部材の使用条件によって適宜実験的に定めるとするのみで、具体的に特定されていない。特開平2−76925号公報においても円筒または円柱状の各々の凹部または凸部の直径は例示されているものの、それらの個数あるいは分布状況即ち摺動面全体に占める凹部または凸部の面積比率については示されていない。
【0005】
前述のように凹凸パターンの形成されている摺動部材においては、凸部で荷重を受け凹部の部分から潤滑剤を供給することになるので、凸部の面積が少ないと耐荷重性能が低下し、逆に凸部全体の面積が大即ち凹部が少ないと潤滑剤の供給能が低下する。凹部の深さについても凹部溝深さが大であると該凹部からの潤滑剤が凸部へ流出しずらくなり、凹部が浅すぎると潤滑剤の保持が有効になされない。このように摺動部材の低摩擦抵抗および耐摩耗性を最大限に発揮するようにするには凹凸パターンの凹部と凸部の面積比率および凹部の溝深さを最適な値に定める必要がある。
【0006】
本発明は、凹凸パターンを形成した摺動面の凹凸部の面積比率および凹部の深さを最適な範囲に定めることにより、摺動面の潤滑性,耐摩耗性,耐焼付性を長期間にわたり確保できる摺動部材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐摩耗性摺動部材は、他部材に摺動接触する母材の摺動面に、複数の凹部を設けることで凹凸パターンを形成し、前記凹部の配列ピッチを0.8〜1.6mmにするとともに該凹部に液体潤滑剤を満たし、前記凹部の面積比率を摺動面全体の30〜70%、深さを1μm以上10μm以下とし、前記母材が金属材料,樹脂材料,セラミック材料の少なくとも1種類の材料で構成され、かつTiN,TiC,ダイヤモンド及びセラミック材料の少なくとも1種類の材料による被膜処理が施され、前記凹凸パターンの凹部は円形換算した時の直径が0.2〜0.8mmとなるように形成されている。
【0008】
本発明の1つの形態によれば、前記凹凸パターンが規則的に配列され、前記凹部の円形換算したときの直径が0.2〜0.8mmとされている。
【0009】
また本発明の1つの形態によれば、前記凹凸パターンが規則的に配列され、その凹部間のピッチが0.8〜1.6mmとされている。
【0010】
また本発明によれば、互いに嵌合して摺動接触する人工骨頭及び臼蓋ソケットを有する人工関節における摺動接触面構造において、前記人工骨頭又は前記臼蓋ソケットの一方又は双方の相対摺動面に、複数の凹部を設けることで凹凸パターンが形成され、前記凹部の配列ピッチが0.8〜1.6mmとされ、前記凹部に液体潤滑剤が満たされ、かつこの凹部の面積比率が摺動面全体の30〜70%、深さが1μm以上10μm以下とされ、前記凹凸パターンの凹部は円形換算した時の直径が0.2〜0.8mmとなるように形成されており、前記人工骨頭及び前記臼蓋ソケットの母材の材質がコバルト合金,ジルコニア,高分子ポリエチレンで構成されるとともにTiNでコーティングされ、前記液体潤滑剤が生理食塩水,スエット(牛あるいは羊の腎臓周辺の脂肪などの動植物油),関節液及びその混合物から選定した潤滑剤で構成されることを特徴とする人工関節における摺動接触面構造が提供される。
【0011】
さらに本発明の一形態によれば、前記凹凸パターンとして円柱状凹部を有する凹パターンが人工股関節の相対摺動面(人工骨頭または臼蓋ソケット)の一方または双方に形成され、これらの円柱状凹部の直径が略0.5mm、ピッチが略1.2mmに形成された人工股関節構造が提供される。
【0012】
また本発明の一形態によれば、前記摺動面がころがり軸受の少なくとも内外輪レース面好ましくは内外輪レース面及び保持器の摺動面、グルーブ軸受のスラスト対向受面、あるいは人工関節対向受面の少なくとも1つから選ばれた耐摩耗性摺動部材が得られる。
【0013】
また、本発明の1つの形態によれば、前記母材がステンレス、炭素鋼などの鉄鋼類、銅、アルミニウム、チタン、チタン合金などの非鉄金属類、樹脂材料あるいはセラミックスの少なくとも1つから選ばれ、前記母材にTiN、TiCなどの少なくとも1つから選ばれる被膜処理が施された耐摩耗性摺動部材が得られる。
【0014】
【作用】
摺動部材の母材表面に凹部の面積比率が30〜70%、凹部の深さが1mm以下または加工時間を短縮するため好ましくは10μm以下の凹凸面を形成した摺動部材は、潤滑剤が下地の凹凸面に拘束され、かつ凹部が潤滑剤を供給する役割を果たすとともに凸部で荷重を受けるため、摺動面の潤滑性を長期間にわたり保持できる。
また凹凸面を維持できる範囲で表面に硬質材料層を設けることにより、潤滑剤がなくなっても硬質材料層が摩耗バリアの役目を果たし、より高い耐摩耗性,耐焼付性が得られる。
さらに、摺動部において摩耗が発生したとしても、摩耗粉を凹部に逃がすことができ、アブレシブによる急速な摩耗を防止することができる。
【0015】
凹部の円形換算したときの直径を0.2〜0.8mmとした根拠は、直径0.2mm以下にすると、パターンが無い場合と殆ど等しくなり、凹部に必要な量の潤滑剤が貯えられないばかりか、凸部の摩耗潤滑剤や摩耗粉が凹部に溜めることができないからであり、また0.8mm以上になると実質的に凸部の面積が減少し、荷重を支えきれなくなり、摺動面が摩耗または微細な凹凸が発生し、摺動性が低下するからである。
【0016】
凹部間のピッチを0.8〜1.6mmとしたのは、0.8mm以下になると、凸部の領域が狭くなり、荷重を支える面積が不足し、摺動面の摩耗が進行し易く、1.6mm以上になると、凹部の潤滑剤が凸部に乗り移りにくくなり、かつ凸部の潤滑剤または摩耗粉を凹部に貯えにくくなるからである。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例による耐摩耗性摺動部材の摺動面の部分的な斜視図である。母材1は鉄,炭素鋼,ステンレス鋼などの鉄鋼類をはじめ、銅,アルミニウム、白金、チタンおよびチタン合金その他の非鉄金属、PPS(ポリフェニレンサルフアイド)、ポリアミドイミド、ポリイミド、フェノール、PES(ポリエチレンサルフアイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトンなど)の樹脂材料、あるいはAl2 3 、ダイアモンド、サフアイア、Si3 4 、SiC、ジルコニア、シリカ、チタニアなどのセラミックス材料などのセラミックスから選び、母材の表面に選択的になす被膜材料(コーティング材料)としてTiN、ダイアモンド、上記の如きセラミックスなどから選ばれる。また後述する人工関節にあっての母材の表面に選択的になすコーティング材としては、凸部を形成するため、TiNを蒸着させて用いること、また母材がCoーCr合金の場合は表面を窒化し、表面硬化することもできる。そして同じく人工関節の液体潤滑剤として生理食塩水や子牛血清脂肪、脂肪油、ラード、鯨の脂肪、スエット(牛,羊の腎臓周辺の脂肪などの動植物油)、関節液又はその類似液を用いる。
【0018】
図1の例では直径Dの円柱状の凹部3が複数個等間隔に規則的に母材1の摺動面上に形成され、これらの凹部3以外の部分が摺動面における凸部2となっている。図1の例においては凹部3全体の摺動面に対する面積比率は30〜70%である。
【0019】
凹凸パターンとしては必ずしも上述のような円柱状や円筒状のものに限定されるものでなく、矩形その他多角形状の凹凸部、あるいは凹部と凸部が層状に区分けされて配置されたもの等でもよい。いずれも規則的に摺動面全面に配列され、全体の凹部の面積比率は全摺動面に対し30〜70%である。凹部が円形でない場合、これを円形換算したときの直径は前述した如く0.2〜0.8mmである。
【0020】
凸部2または凹部3の比率を上述のようにした根拠を具体的な摩耗摩擦試験を示して説明する。まず本発明において採用した摩擦摩耗試験装置を図2に示す。空気軸受5により垂直に軸支された回転軸4の下端にその軸芯から偏心して球面状の接触子6が固着され、この接触子6に、試料取付台7に取り付けられた試料8が接触している。なお回転軸4と試料取付台7は軸方向に荷重がかけられ、これによって接触子6と試料8の圧接力が調整可能となっている。試料取付台7はスラスト方向およびラジアル方向に空気軸受9で支えられている。試料取付台7の外側部は固定設置したロードセル10に連結されており、図示しない可変速モータで回転軸4を軸線まわりに回転駆動することで接触子6と試料8との間の摩擦力による試料取付台7の回転方向荷重がロードセル10で検出され、接触子6と試料8間の摩擦力の経時変化が観察される。なお、この方法で得られた時間−トルク特性図は一般に図3のようになり、急激にトルク変化が増大(E点)し始めるまでの時間をもって寿命と判定する。
【0021】
既に説明したように凹凸パターンの形成されている摺動部材においては、凸部で荷重を受けることになり、凹部から潤滑剤を供給することになる。凸部が少なくなれば耐荷重性能が低下し、凹部が少なくなると潤滑剤の供給能力が低下する。したがって、1つの摺動面において凸部と凹部の最適な面積比率が存在する。また凹部の深さが大きすぎると潤滑剤が摺動面へ流出しずらくなり、浅すぎると潤滑不足が生じる。したがって凹部の深さhについても最適な値が存在する。
【0022】
凹凸はまずエッチング、スパッタリング、ビームプロセス(電子、レーザ)等の方法で母材1に1〜10μmとなるように形成し、選択的に被膜をスパッタ、イオンプレーティング、蒸着、湿式メッキ等により形成する。また、この被膜により摺動面の凸部を形成してもよい。そして固体潤滑剤を同様の方法で前記凹凸にならわせて1〜10μmの厚さに形成する。したがって、母材自体に深さ1〜10μmの凹凸を形成した場合、該母材に被膜形成、固体潤滑膜を形成しても、いずれもその表面には1〜10μmの深さの凹部が形成されていることになる。つまり、凸部の固体潤滑剤が摩耗してもこの潤滑剤は凹部に移動し、また凹部の固体潤滑剤は再び凸部に必要量だけ移動することができ、耐摩耗性、低トルク、低摩擦などの効果を奏し得る。特に人工関節では摩耗粉の逃げ場がなく、かかる凹部は余分の固体潤滑剤や摩耗した潤滑剤の一種のストレージとなると同時に摺動面への供給源となって耐摩耗性、低トルク、低摩擦などの効果を発揮する。
【0023】
図1のような円筒状凹部3による凹凸パターンを摺動面に形成し、凹部3の面積比率を変え、その上に固体潤滑膜としてMoS2 スパッタ膜をコーティングしたときの被膜寿命の試験データを表1に示す。なお、凹部の深さはいずれも10μmとした。ここで回転軸4の回転数;1000rpm,接触子の押付荷重;0.23kgf,すべり速度;0.4 m/sとした。この例では凹部の面積比が14%で潤滑不足となり、80%で負荷容量が低下する。凹凸パターンがなく単にMoS2 膜をスパッタしただけの試料(表中「なし」で示した)は負荷容量が小さく、被膜寿命は1時間であった。
【0024】
【表1】
【0025】
被膜寿命は凹凸パターンの凹部の深さにも関係する。図2の装置を用いた摩耗試験において、粗さ計により摺動面の摩耗状況を観測した場合、表面に超高分子量ポリエチレンを被覆した摺動面に対して、凹凸パターンの有無による摩耗差は顕著である。凹凸パターンを付与しない場合の粗さ計の結果にみられる大きな傷跡は、摩耗粉により摺動面が深く削られたものと考えられる。つまり摩耗粉自体が新たな摩耗をひき起す。しかし凹凸パターンを施した摺動面においては、凹部からの潤滑剤の供給に加えて凹部への摩耗粉の逃げがもたらされ、摺動面の凸部へ摩耗粉が入り込まない。
【0026】
表2は図1のような凹凸パターンを施した摺動面で凹部3の面積比率を摺動面全体に対し70%とし、凹部3の溝深さhを変え、その上に固体潤滑膜としてMoS2 スパッタ膜をコーティングしたときの被膜寿命の試験データを示す。
【0027】
【表2】
【0028】
このデータから溝深さhが15μmを超えると潤滑剤が凹部3の底にたまり、凸部2へ潤滑剤が流出しなくなり、被膜寿命は著しく低下する。
【0029】
本発明による摺動面構造は、凹凸パターンの凹部の面積比率を30〜70%、凹部の溝深さを10μm以下1μm以上とするものであるが、この範囲の凹凸パターンをもつ摺動面は上述の実験結果からも低摩擦抵抗,耐摩耗性を最大限に発揮することが分る。
【0030】
本発明の応用例として人工関節の相対摺動部の表面改質が挙げられる。人工関節においては互いに嵌合する人工骨頭および臼蓋ソケットが、金属あるいはセラミックスと超高分子量ポリエチレンの組み合せから成るのが一般的である。図2の摩耗摩擦試験装置で接触子を平面仕上げした超高分子量ポリエチレンとし、試料にステンレス材に生体適合性に優れたTiNをコーティングしたものを用いて試験した。この場合の摩擦力の変化を図4に示す。パターンを付加しない試料を使用した場合、摩擦力の変動が大きく、かつ不安定である。一方、凹凸パターンを付加した試料を使用した場合、その変動は小さく、安定しているのが分る。試験後の観察で試料のTiNの表面においてはパターンの有無による摩耗の差を判断することは難しいが、固体潤滑剤としての超高分子量ポリエチレンに関しては、パターンを付加していない場合の方が、パターンを付加したものと比べて摩耗が著しく起きているのが観測される。またパターンを付加しない場合の粗さを測定したところ、大きな傷跡が見られたが、この傷跡は摩耗片により深く削られたものと考えられる。パターンを付加している場合は凹部に摩耗片が取り込まれ、摺動面に出ないので大きな摩耗が防止される。
【0031】
また同様に、摺動面に凹凸パターンを形成した試料に、生体適合性に優れたTiNをコーティングし、相手材として超高分子量ポリエチレンを用い、液体潤滑剤となる生理食塩水中にて摩擦試験を行ったときの摩擦力の時間的推移を図5に示す。比較のため凹凸パターンの無い試料を同一条件下で試験した場合を同図に併せて示した。この図からも明らかに凹凸パターンをもつ摺動面の優位性が顕著である。
【0032】
図6は本発明の耐摩耗性摺動面構造を用いた人工股関節の分解側面図である。ステム11の先端にボール(人工骨頭)12が装着され、このボール12に相手部材である臼蓋ソケット13の凹球面13aが相対摺動可能に嵌合されるようになっている。ボール12およびソケット13の摺動面の一方または双方に図1に拡大して示すような円柱状凹部3による凹凸パターンが形成される。凹凸パターンの凹部3の面積比率および深さは上述した範囲のものが採用されてよいが、個々の凹部3の直径およびピッチについても人工股関節として使用する場合の最適な値が存在する。なお、人工股関節にあっては、ボール12、ソケット13の材料即ち母材としてコバルト−クロム合金、ジルコニア、超高分子量ポリエチレンなどが用いられる。
【0033】
図7は凹凸パターンの円柱状凹部の直径(mm)に対する人工股関節部の摺動面特性の実験結果を示した図である。摺動面には超高分子量ポリエチレンを用いた。図中にプロットした白丸は凹部直径に対する摩擦力の減少率(%)の値であり、黒丸は超高分子量ポリエチレンの摩耗量(mm)を示している。図8は、同様に超高分子量ポリエチレンの摺動面において、円柱状凹部のピッチ(mm)に対する摩擦力の減少率(白丸)及び摩耗量(黒丸)についての実験結果を示したものである。これらの図から分かるように凹部の直径Dが0.5mm、ピッチp(図1)が1.2mmのときに摩擦力の減少率は最も大きく、超高分子量ポリエチレンの摩耗量は最も小さくなる。以上から凹凸パターンを施した人工股関節の場合、パターンの直径0.5mm、ピッチ1.2mmが潤滑特性を最も向上させる最適値となる。従来のように人工関節の摩擦や摩耗の防止手段として材質の改良のみでは充分な効果が得られなかったが、本発明のような摺動面構造とすることにより、人工関節摺動面の潤滑特性を改善でき人工関節の寿命を大幅に延ばすことが可能となる。
【0034】
なお、上述の説明で凹部の深さを1.0mm以下好ましくは10μm以下としたが、例えば人工股関節などに用いる摺動面には摩耗粉を封じ込める必要がある場合は深くし、固体潤滑剤を凹部に満たす場合は浅くすることが望ましく、使用箇所により深さは適宜前記の範囲で選択する。ただ加工上からは、特に凹凸パターンを微細加工技術で形成する必要がある場合は浅く、好ましくは10μm以下にするのがよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、他部材に摺動接触する母材の表面に凹凸パターンを形成し、凹部の面積比を30〜70%、凹部の深さを1.0mm以下または加工時間を短縮するため好ましくは10μm以下とすることにより、固体潤滑条件下あるいは生理食塩水等の液体中において、凹部からの潤滑剤の供給、凹部への摩耗粉の逃げによるアブレシブ摩耗の防止により、耐摩耗性および耐焼付性が向上する。また母材の凹凸パターンの形成と共に、TiN,TiC,TiB2 等の硬質膜やイオン注入による硬質層を設けることにより、潤滑剤がなくなっても硬質層が摩耗を防ぎ、一層高い耐摩耗性,耐焼付性および負荷容量の向上が達成される。本発明を人工関節に適用することにより、関節摺動面の特性改善、特に摩擦、摩耗を飛躍的に減少させることができ、人工関節の寿命の延長に多大な効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による凹パターンをもつ耐摩耗性摺動部材の部分的な斜視図である。
【図2】本発明に係る摩耗摩擦試験装置の概略的な縦断面図である。
【図3】摩耗摩擦試験で得られる時間−トルク特性を示した図である。
【図4】超高分子量ポリエチレンとTiN被覆材との摩擦力試験における摩擦力の経時変化を示した図である。
【図5】生理食塩水中にて超高分子量ポリエチレンとTiN被覆材との摩擦試験を行った場合の摩擦力の経時変化を示した図である。
【図6】本発明の適用例による人工股関節の分解側面図である。
【図7】本発明による摺動面の凹凸パターンの凹部直径に対する人工股関節の摺動面特性を示した図である。
【図8】本発明による摺動面の凹凸パターンの凹部ピッチに対する人工股関節の摺動面特性を示した図である。
【符号の説明】
1 母材
2 凸部
3 凹部
4 回転軸
5,9 空気軸受
6 接触子
7 試料取付台
8 試料
10 ロードセル
12 ボール
13 ソケット

Claims (3)

  1. 他部材に摺動接触する母材の摺動面に、複数の凹部を設けることで凹凸パターンを形成し、前記凹部の配列ピッチを0.8〜1.6mmにするとともに該凹部に液体潤滑剤を満たし、前記凹部の面積比率を摺動面全体の30〜70%、深さを1μm以上10μm以下とし、前記母材が金属材料,樹脂材料,セラミック材料の少なくとも1種類の材料で構成され、かつTiN,TiC,ダイヤモンド及びセラミック材料の少なくとも1種類の材料による被膜処理が施され、前記凹凸パターンの凹部は円形換算した時の直径が0.2〜0.8mmとなるように形成されることを特徴とする耐摩耗性摺動部材。
  2. 前記母材が鉄鋼材料の鉄,炭素鋼,ステンレス鋼,若しくはコバルトクロム合金、又は非鉄金属の銅,アルミニウム,白金,若しくはチタン及びチタン合金、又は樹脂材料のPPS(ポリフェニレンサルファイド),ポリアミド,ポリアミドイミド,ポリイミド,フェノール,PES(ポリエチレンサルファイド),若しくはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、又はセラミック材料のAl2 3 ,ダイヤモンド,サファイヤ,Si3 4 ,SiC,ジルコニア,シリカ,若しくはチタニアで構成されることを特徴とする請求項第1項に記載の耐摩耗性摺動部材。
  3. 互いに嵌合して摺動接触する人工骨頭及び臼蓋ソケットを有する人工関節における摺動接触面構造において、前記人工骨頭又は前記臼蓋ソケットの一方又は双方の相対摺動面に、複数の凹部を設けることで凹凸パターンが形成され、前記凹部の配列ピッチが0.8〜1.6mmとされ、前記凹部に液体潤滑剤が満たされ、かつこの凹部の面積比率が摺動面全体の30〜70%、深さが1μm以上10μm以下とされ、前記凹凸パターンの凹部は円形換算した時の直径が0.2〜0.8mmとなるように形成されており、前記人工骨頭及び前記臼蓋ソケットの母材の材質がコバルト合金,ジルコニア,高分子ポリエチレンで構成されるとともにTiNでコーティングされ、前記液体潤滑剤が生理食塩水,スエット(牛あるいは羊の腎臓周辺の脂肪などの動植物油),関節液及びその混合物から選定した潤滑剤で構成されることを特徴とする人工関節における摺動接触面構造。
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