JP3593451B2 - インゴットのスライス方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円柱状のインゴットをその長手方向に多分割してウエハーを採取する為のインゴットのスライス方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば半導体の分野で使用される円柱状のインゴットは、前記切断加工や研削加工等を順次経てウエハーに仕上げられる。研削加工装置は、インゴットから採取された被研削ワークを、図7の如く砥石25に対向して回転するキャリアプレート23のセット穴26に嵌め込んだ上で、前記砥石25を加工送りさせることにより前記被研削ワーク5を研削するものである。例えば、前記キャリアプレート23は、テーブル27の上面に設けられたV字状の支持溝28を有する複数の支持ローラー29で回転自在に保持されたリング状の回転枠30に、その空洞部31を覆う形で定着され、この回転枠30の外周面に刻設された歯32と、前記テーブル27上のモーター33の回転軸に装着された駆動歯車34とが噛み合い、モーター33が駆動することにより回転枠30が回転し、その下面に定着されたキャリアプレート23が回転するものである。前記キャリアプレート23は、被研削ワーク5の厚みよりも薄い板体で、その自重によって撓んで変形しないように水平外周方向に緊張した状態で架設してあり、その中央部に被研削ワーク5を嵌め込む為の前記セット穴26が設けられている。砥石25は、前記キャリアプレート23の上方及び下方で被研削ワーク5の中心から水平方向へずれた位置において各々回転し上下に昇降する。
【0003】
被研削ワークを回転させるには、前記キャリアプレートの回転を前記被研削ワークへ伝達する必要があるが、従来は、結晶方位の目安とすべく、被研削ワーク周縁の一部を楔状に切欠して成るノッチや、被研削ワーク周縁の一部を直線的に切欠して成るオリフラを回転力を伝達する為の掛止部として利用し、前記セット穴の外形を当該被研削ワークの外形に倣う形状に設定するという手段が採られてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体は比較的高価な材料であり、被研削ワークにノッチやオリフラを設けると、それらを避けて部品取りされることによって、材料の無駄部分が多く発生するという問題があった。又、一枚のウエハーから得るチップの点数を多くする為のウエハー径の拡大が日々進むに伴って、ノッチやオリフラの形成による無駄が更に増大する傾向にあることから、今日では、結晶方位の目安を設ける別の手段として、レーザーによるマーキング等も採用されつつあり、前記キャリアプレートの回転力を伝達する手段としても、前記ノッチやオリフラによらない手段が望まれている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであって、スライス工程を経た後に、被研削ワークにおける回転力伝達用の掛止部が煩雑な工程を経ることなく、且つ周縁の切欠を伴うことなく形成できるインゴットのスライス方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に成された本発明によるインゴットのスライス方法は、円柱状のインゴットの側面へその全長に亘る保持材を接着して成る被切断ワークを、スライス加工装置にセットし、当該被切断ワークをその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワークを採取するインゴットのスライス方法であって、後の研削工程において研削加工装置による回転力を受けるに足る接着強度を持った第1接着剤で前記インゴットの側面へ直接接着される掛止層と、一定の条件下において接着強度が第1接着剤より劣化する第2接着剤で前記掛止層に重ねて接着される中間層と、前記中間層に連結され且つ前記スライス加工装置の支持部に連結される支持層とを重合一体化した保持材を用いることを特徴とするものである。尚、各接着剤は、前記一定の条件を除く一般的な作業環境において、それぞれの役割(支持すべき重量や加えらえれる外力等)に応じた適当な接着強度を具備する必要がある。
【0007】
スライス加工装置の態様は、特に限定するものではなく、前記支持層と連結し得る支持部を具備していれば良い。又、前記研削加工装置にあっても、前記被研削ワークに対し、当該被研削ワークに付設された掛止層を介して回転力を伝達(研削作業において研削ワークを回転させる形態を採る場合)し、或いは制動力を伝達(研削作業において砥石を回転させる形態を採る場合)できる形態の加工装置であれば良い。
【0008】
前記「一定の条件下において接着強度が第1接着剤より劣化する」の一定の条件には、熱や溶剤に対する物性が挙げられ、第1接着剤と第2接着剤との組み合わせの具体例として、第1接着剤:熱硬化性の接着剤(エポキシ系接着剤など)と第2接着剤:熱で溶ける接着剤(蝋など)の組み合わせや、第1接着剤:樹脂又はゴムを有機溶剤に溶解して成る接着剤と第2接着剤:水溶性接着剤の組み合わせが挙げられる。どの様な一定の条件の下にあっても、劣化する度合いは、前記第1接着剤と第2接着剤との間で差があればある程望ましい。
【0009】
尚、掛止層、中間層及び支持層がそれぞれの機能に必要な強度を具備する必要があることは言うまでもなく、カーボン、樹脂成形物、樹脂・ガラス・セラミックの混合物、樹脂・(樹脂、セラミック、ガラス)繊維のコンポジット等の素材から形成すれば良い。支持層にあっては、スライス加工の際にインゴットと共に切断する必要がないので、硬質な金属を用いても良い。又、中間層と支持層との連結手段は、スライス加工に際して中間層及び前記掛止層及びインゴットの重量を支え得る連結強度を具備していれば良く、接着剤による連結をはじめどの様な形で連結しても構わないが、一度用いた支持層を再使用するには、両者の連結部が相互に嵌合しボルト等で固定されて一体化する連結手段を設けておくのが望ましい。前記支持層のスライス加工装置の支持部に対する連結手段は、当該スライス加工装置の支持形態に合わせれば良い。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるインゴットのスライス方法を図面に基づき説明する。
このスライス方法は、円柱状のインゴット1の側面へその全長に亘る保持材2を接着して成る被切断ワーク3を、スライス加工装置4にセットし、当該被切断ワーク3をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク5を採取するインゴットのスライス方法である。
【0011】
本発明によるインゴットのスライス方法においては、図1乃至図2に示す様にカーボン製の掛止層7及び中間層8並びに金属製の支持層11を重合して成る三層構造の保持材2が用いられ、掛止層7は、前記インゴット1の重量を支え且つ後の研削工程において研削加工装置6による回転力を受けるに足る接着強度を持ったエポキシ系接着剤(第1接着剤)13で前記インゴット1の側面へ直接接着され、中間層8は、当該掛止層7及びインゴット1の重量を支え且つ前記エポキシ系接着剤13の接着強度が劣化する温度より十分低い温度でゾル化して接着機能がなくなる接着用ワックス(第2接着剤、ADFIX(製品名)相当品など)14で前記掛止層7の上に重ねて接着され、支持層11は、当該中間層8及び前記掛止層7及びインゴット1の重量を支え得る嵌合部(連結手段9)を介して前記中間層8に重合され且つ前記スライス加工装置4の支持部10に連結されている。
【0012】
前記接着用ワックス14は、融点が80℃程度で150℃を超えるとゲル化(初期硬化)する。接着に用いる際は、一旦、適温(100〜140℃程度)でゾル化し、それを接着面に塗布して自然冷却する。エポキシ系接着剤13は、その種類に応じた使用法で用いれば良い。
【0013】
前記スライス加工装置4は、図3の如くワイヤーソー15を具備し、ローラー16に掛けられた無端ワイヤー17を一方向送り又は往復動させ、当該ワイヤー17に吹き付けたスラリー18に含まれる砥粒を以て、スライス加工装置4へ水平にセットされた被切断ワーク3をその長手方向に対して垂直にスライスするものである。その際、一本のワイヤー17を以てワイヤー17が水平に走る複数の切断部19を、前記被切断ワーク3の長手方向へ一定のピッチで平面的に且つ平行に配列することにより、一度の切断動作によって多数の被研削ワーク5をスライスすることができることになっている。
【0014】
前記各切断部19によるスライス作業を終えた被研削ワーク5は、図4の如く当該被研削ワーク5の下方より、インゴット1及び掛止層7の全部、並びに中間層8の下部に至る範囲でのみ切り込まれているので、各被研削ワーク5は、掛止層7と中間層8の一部を介し依然として分離されていない状態にある。当該スライス加工装置4においては、一本の被切断ワーク3のスライス作業が全て終了した後に、図5の如く当該スライスされた被切断ワーク3を80℃程度の湯20を蓄えた受け槽21へ浸漬するが、当該湯20の熱によって前記接着用ワックス14はゾル化し、保持材2における掛止層7と中間層8との接着力が失われ、個々に分離した被研削ワーク5が得られることとなる。前記受け槽21の湯20には、予め前記被切断ワーク3の全体を収容でき、且つ多数相重なった被研削ワーク5の損傷を防止する為のクッション材24を付設した受け篭22が沈められており、当該受け篭22を引き上げることによって個々に分離した被研削ワーク5を一度に収集することができるようにされている。尚、前記接着用ワックス14を用いた場合には、前記湯20の代わりに所定の剥離剤を受け槽21に蓄えても同様に被研削ワーク5を分離することができる。
【0015】
以上の如く採取された被研削ワーク5には、当該ワーク5の縁の一部に80℃程度の温度でははずれないスライスされた掛止層7が残留するが、以後の研削工程において用いられる前記研削加工装置6のキャリアプレートにおけるセット穴を前記被研削ワーク5が調度嵌まる形状に設定しておけば、インゴット1と共に当該被研削ワーク5を構成している掛止層7が、ほぼ真円に近い外縁を有するインゴット1を回転させ、或いは静止させる際の手掛りとなる他、当該インゴット1の半導体の結晶方位を認識する際の目安となり、前記掛止層7が不要となった場合にも、前記エポキシ系接着剤に適した溶剤を以て被研削ワーク5から掛止層7を容易に取り外すことができる。
【0016】
図8及び図9は、被切断ワーク3として側面の全域に保護層12が付着されたインゴット1を用いたものである。当該インゴット1の側面へは、前記例と同様に、その全長に亘る保持材2を接着し、それを被切断ワーク3としてスライス加工装置4にセットし、当該被切断ワーク3をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク5を採取する。前記保護層12を構成する素材としては、ワークの損傷を防止でき、インゴット1の側面に対する接着性が良好な被膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、後の研削工程を終えてスライスされた掛止層7をウエハーから除去する際、同時に剥離するような素材、即ち、第1接着剤と同系統の素材を用いることが望ましい。例えば、前記第1接着剤としてエポキシ系接着剤を用いた場合には、保護層12も同様にエポキシ系の被膜を形成することによって、掛止層7を接着する為のエポキシ性接着剤との接着性も高くなる他、エポキシ系接着剤用の溶剤を以て保護層12をも同時に取り除くことができる。
【0017】
【発明の効果】
以上の如く本発明によるインゴットのスライス方法を用いれば、スライス工程を経た後に、被研削ワークにおける結晶方位の目安を兼ねた回転力伝達用の掛止部が、煩雑な工程を経ることなく形成できるので、半導体チップを製造する際の工程を簡素化することができる。しかも、被切断ワークをスライスして得た被研削ワークの周縁一部を切欠する手段を採らないので、半導体チップを形成できる領域が増加することにより、一枚の半導体ウエハーから採取できるチップの点数も増加し、貴重な材料を有効に使うことが可能となる。
【0018】
又、更にインゴットの側面に保護層を被着することによって、搬送に際してはもちろんの事、後の研削工程においては、キャリアプレートのセット穴に、被研削ワークが保護層を介して嵌められるから、被研削ワーク自体はセット穴に直接接触することがなく、加工時の衝撃で被研削ワークに損傷を与えることなく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの一例を示す正面図である。
【図2】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの一例を示す側面図である。
【図3】本発明によるインゴットのスライス方法に用いるスライス加工装置の概略図である。
【図4】本発明によるインゴットのスライス方法によりスライス工程を終えた被切断ワークの一例を示す側面図である。
【図5】本発明によるインゴットのスライス方法によりスライス工程を終えた被切断ワークから被研削ワークを採取した状態の一例を示す側面図である。
【図6】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態を示す平面図である。
【図7】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態の一例を示す断面図である。
【図8】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの類例を示す正面図である。
【図9】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態の類例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 インゴット
2 保持材
3 被切断ワーク
4 スライス加工装置
5 被研削ワーク
6 研削加工装置
7 掛止層
8 中間層
9 連結手段
10 支持部
11 支持層
12 保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、円柱状のインゴットをその長手方向に多分割してウエハーを採取する為のインゴットのスライス方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば半導体の分野で使用される円柱状のインゴットは、前記切断加工や研削加工等を順次経てウエハーに仕上げられる。研削加工装置は、インゴットから採取された被研削ワークを、図7の如く砥石25に対向して回転するキャリアプレート23のセット穴26に嵌め込んだ上で、前記砥石25を加工送りさせることにより前記被研削ワーク5を研削するものである。例えば、前記キャリアプレート23は、テーブル27の上面に設けられたV字状の支持溝28を有する複数の支持ローラー29で回転自在に保持されたリング状の回転枠30に、その空洞部31を覆う形で定着され、この回転枠30の外周面に刻設された歯32と、前記テーブル27上のモーター33の回転軸に装着された駆動歯車34とが噛み合い、モーター33が駆動することにより回転枠30が回転し、その下面に定着されたキャリアプレート23が回転するものである。前記キャリアプレート23は、被研削ワーク5の厚みよりも薄い板体で、その自重によって撓んで変形しないように水平外周方向に緊張した状態で架設してあり、その中央部に被研削ワーク5を嵌め込む為の前記セット穴26が設けられている。砥石25は、前記キャリアプレート23の上方及び下方で被研削ワーク5の中心から水平方向へずれた位置において各々回転し上下に昇降する。
【0003】
被研削ワークを回転させるには、前記キャリアプレートの回転を前記被研削ワークへ伝達する必要があるが、従来は、結晶方位の目安とすべく、被研削ワーク周縁の一部を楔状に切欠して成るノッチや、被研削ワーク周縁の一部を直線的に切欠して成るオリフラを回転力を伝達する為の掛止部として利用し、前記セット穴の外形を当該被研削ワークの外形に倣う形状に設定するという手段が採られてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体は比較的高価な材料であり、被研削ワークにノッチやオリフラを設けると、それらを避けて部品取りされることによって、材料の無駄部分が多く発生するという問題があった。又、一枚のウエハーから得るチップの点数を多くする為のウエハー径の拡大が日々進むに伴って、ノッチやオリフラの形成による無駄が更に増大する傾向にあることから、今日では、結晶方位の目安を設ける別の手段として、レーザーによるマーキング等も採用されつつあり、前記キャリアプレートの回転力を伝達する手段としても、前記ノッチやオリフラによらない手段が望まれている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであって、スライス工程を経た後に、被研削ワークにおける回転力伝達用の掛止部が煩雑な工程を経ることなく、且つ周縁の切欠を伴うことなく形成できるインゴットのスライス方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為に成された本発明によるインゴットのスライス方法は、円柱状のインゴットの側面へその全長に亘る保持材を接着して成る被切断ワークを、スライス加工装置にセットし、当該被切断ワークをその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワークを採取するインゴットのスライス方法であって、後の研削工程において研削加工装置による回転力を受けるに足る接着強度を持った第1接着剤で前記インゴットの側面へ直接接着される掛止層と、一定の条件下において接着強度が第1接着剤より劣化する第2接着剤で前記掛止層に重ねて接着される中間層と、前記中間層に連結され且つ前記スライス加工装置の支持部に連結される支持層とを重合一体化した保持材を用いることを特徴とするものである。尚、各接着剤は、前記一定の条件を除く一般的な作業環境において、それぞれの役割(支持すべき重量や加えらえれる外力等)に応じた適当な接着強度を具備する必要がある。
【0007】
スライス加工装置の態様は、特に限定するものではなく、前記支持層と連結し得る支持部を具備していれば良い。又、前記研削加工装置にあっても、前記被研削ワークに対し、当該被研削ワークに付設された掛止層を介して回転力を伝達(研削作業において研削ワークを回転させる形態を採る場合)し、或いは制動力を伝達(研削作業において砥石を回転させる形態を採る場合)できる形態の加工装置であれば良い。
【0008】
前記「一定の条件下において接着強度が第1接着剤より劣化する」の一定の条件には、熱や溶剤に対する物性が挙げられ、第1接着剤と第2接着剤との組み合わせの具体例として、第1接着剤:熱硬化性の接着剤(エポキシ系接着剤など)と第2接着剤:熱で溶ける接着剤(蝋など)の組み合わせや、第1接着剤:樹脂又はゴムを有機溶剤に溶解して成る接着剤と第2接着剤:水溶性接着剤の組み合わせが挙げられる。どの様な一定の条件の下にあっても、劣化する度合いは、前記第1接着剤と第2接着剤との間で差があればある程望ましい。
【0009】
尚、掛止層、中間層及び支持層がそれぞれの機能に必要な強度を具備する必要があることは言うまでもなく、カーボン、樹脂成形物、樹脂・ガラス・セラミックの混合物、樹脂・(樹脂、セラミック、ガラス)繊維のコンポジット等の素材から形成すれば良い。支持層にあっては、スライス加工の際にインゴットと共に切断する必要がないので、硬質な金属を用いても良い。又、中間層と支持層との連結手段は、スライス加工に際して中間層及び前記掛止層及びインゴットの重量を支え得る連結強度を具備していれば良く、接着剤による連結をはじめどの様な形で連結しても構わないが、一度用いた支持層を再使用するには、両者の連結部が相互に嵌合しボルト等で固定されて一体化する連結手段を設けておくのが望ましい。前記支持層のスライス加工装置の支持部に対する連結手段は、当該スライス加工装置の支持形態に合わせれば良い。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるインゴットのスライス方法を図面に基づき説明する。
このスライス方法は、円柱状のインゴット1の側面へその全長に亘る保持材2を接着して成る被切断ワーク3を、スライス加工装置4にセットし、当該被切断ワーク3をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク5を採取するインゴットのスライス方法である。
【0011】
本発明によるインゴットのスライス方法においては、図1乃至図2に示す様にカーボン製の掛止層7及び中間層8並びに金属製の支持層11を重合して成る三層構造の保持材2が用いられ、掛止層7は、前記インゴット1の重量を支え且つ後の研削工程において研削加工装置6による回転力を受けるに足る接着強度を持ったエポキシ系接着剤(第1接着剤)13で前記インゴット1の側面へ直接接着され、中間層8は、当該掛止層7及びインゴット1の重量を支え且つ前記エポキシ系接着剤13の接着強度が劣化する温度より十分低い温度でゾル化して接着機能がなくなる接着用ワックス(第2接着剤、ADFIX(製品名)相当品など)14で前記掛止層7の上に重ねて接着され、支持層11は、当該中間層8及び前記掛止層7及びインゴット1の重量を支え得る嵌合部(連結手段9)を介して前記中間層8に重合され且つ前記スライス加工装置4の支持部10に連結されている。
【0012】
前記接着用ワックス14は、融点が80℃程度で150℃を超えるとゲル化(初期硬化)する。接着に用いる際は、一旦、適温(100〜140℃程度)でゾル化し、それを接着面に塗布して自然冷却する。エポキシ系接着剤13は、その種類に応じた使用法で用いれば良い。
【0013】
前記スライス加工装置4は、図3の如くワイヤーソー15を具備し、ローラー16に掛けられた無端ワイヤー17を一方向送り又は往復動させ、当該ワイヤー17に吹き付けたスラリー18に含まれる砥粒を以て、スライス加工装置4へ水平にセットされた被切断ワーク3をその長手方向に対して垂直にスライスするものである。その際、一本のワイヤー17を以てワイヤー17が水平に走る複数の切断部19を、前記被切断ワーク3の長手方向へ一定のピッチで平面的に且つ平行に配列することにより、一度の切断動作によって多数の被研削ワーク5をスライスすることができることになっている。
【0014】
前記各切断部19によるスライス作業を終えた被研削ワーク5は、図4の如く当該被研削ワーク5の下方より、インゴット1及び掛止層7の全部、並びに中間層8の下部に至る範囲でのみ切り込まれているので、各被研削ワーク5は、掛止層7と中間層8の一部を介し依然として分離されていない状態にある。当該スライス加工装置4においては、一本の被切断ワーク3のスライス作業が全て終了した後に、図5の如く当該スライスされた被切断ワーク3を80℃程度の湯20を蓄えた受け槽21へ浸漬するが、当該湯20の熱によって前記接着用ワックス14はゾル化し、保持材2における掛止層7と中間層8との接着力が失われ、個々に分離した被研削ワーク5が得られることとなる。前記受け槽21の湯20には、予め前記被切断ワーク3の全体を収容でき、且つ多数相重なった被研削ワーク5の損傷を防止する為のクッション材24を付設した受け篭22が沈められており、当該受け篭22を引き上げることによって個々に分離した被研削ワーク5を一度に収集することができるようにされている。尚、前記接着用ワックス14を用いた場合には、前記湯20の代わりに所定の剥離剤を受け槽21に蓄えても同様に被研削ワーク5を分離することができる。
【0015】
以上の如く採取された被研削ワーク5には、当該ワーク5の縁の一部に80℃程度の温度でははずれないスライスされた掛止層7が残留するが、以後の研削工程において用いられる前記研削加工装置6のキャリアプレートにおけるセット穴を前記被研削ワーク5が調度嵌まる形状に設定しておけば、インゴット1と共に当該被研削ワーク5を構成している掛止層7が、ほぼ真円に近い外縁を有するインゴット1を回転させ、或いは静止させる際の手掛りとなる他、当該インゴット1の半導体の結晶方位を認識する際の目安となり、前記掛止層7が不要となった場合にも、前記エポキシ系接着剤に適した溶剤を以て被研削ワーク5から掛止層7を容易に取り外すことができる。
【0016】
図8及び図9は、被切断ワーク3として側面の全域に保護層12が付着されたインゴット1を用いたものである。当該インゴット1の側面へは、前記例と同様に、その全長に亘る保持材2を接着し、それを被切断ワーク3としてスライス加工装置4にセットし、当該被切断ワーク3をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク5を採取する。前記保護層12を構成する素材としては、ワークの損傷を防止でき、インゴット1の側面に対する接着性が良好な被膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、後の研削工程を終えてスライスされた掛止層7をウエハーから除去する際、同時に剥離するような素材、即ち、第1接着剤と同系統の素材を用いることが望ましい。例えば、前記第1接着剤としてエポキシ系接着剤を用いた場合には、保護層12も同様にエポキシ系の被膜を形成することによって、掛止層7を接着する為のエポキシ性接着剤との接着性も高くなる他、エポキシ系接着剤用の溶剤を以て保護層12をも同時に取り除くことができる。
【0017】
【発明の効果】
以上の如く本発明によるインゴットのスライス方法を用いれば、スライス工程を経た後に、被研削ワークにおける結晶方位の目安を兼ねた回転力伝達用の掛止部が、煩雑な工程を経ることなく形成できるので、半導体チップを製造する際の工程を簡素化することができる。しかも、被切断ワークをスライスして得た被研削ワークの周縁一部を切欠する手段を採らないので、半導体チップを形成できる領域が増加することにより、一枚の半導体ウエハーから採取できるチップの点数も増加し、貴重な材料を有効に使うことが可能となる。
【0018】
又、更にインゴットの側面に保護層を被着することによって、搬送に際してはもちろんの事、後の研削工程においては、キャリアプレートのセット穴に、被研削ワークが保護層を介して嵌められるから、被研削ワーク自体はセット穴に直接接触することがなく、加工時の衝撃で被研削ワークに損傷を与えることなく加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの一例を示す正面図である。
【図2】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの一例を示す側面図である。
【図3】本発明によるインゴットのスライス方法に用いるスライス加工装置の概略図である。
【図4】本発明によるインゴットのスライス方法によりスライス工程を終えた被切断ワークの一例を示す側面図である。
【図5】本発明によるインゴットのスライス方法によりスライス工程を終えた被切断ワークから被研削ワークを採取した状態の一例を示す側面図である。
【図6】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態を示す平面図である。
【図7】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態の一例を示す断面図である。
【図8】本発明によるインゴットのスライス方法に用いる被切断ワークの類例を示す正面図である。
【図9】本発明によるインゴットのスライス方法により採取された被研削ワークが研削加工装置にセットされた状態の類例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 インゴット
2 保持材
3 被切断ワーク
4 スライス加工装置
5 被研削ワーク
6 研削加工装置
7 掛止層
8 中間層
9 連結手段
10 支持部
11 支持層
12 保護層
Claims (3)
- 円柱状のインゴット(1)の側面へその全長に亘る保持材(2)を接着して成る被切断ワーク(3)を、スライス加工装置(4)にセットし、当該被切断ワーク(3)をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク(5)を採取するインゴットのスライス方法であって、後の研削工程において研削加工装置(6)による回転力を受けるに足る接着強度を持った第1接着剤で前記インゴット(1)の側面へ直接接着される掛止層(7)と、一定の条件下において接着強度が第1接着剤より劣化する第2接着剤で前記掛止層(7)に重ねて接着される中間層(8)と、当該中間層(8)に連結され且つ前記スライス加工装置(4)の支持部(10)に連結される支持層(11)とを重合一体化した保持材(2)を用い、前記被研削ワーク(5)が掛止層(7)と中間層(8)の一部を介して分離されない様にスライスし、前記保持材(2)における掛止層(7)と中間層(8)との接着力を失わせ、掛止層(7)が残留した被研削ワーク(5)を得るインゴットのスライス方法。
- 円柱状のインゴット(1)の側面へその全長に亘る保持材(2)を接着して成る被切断ワーク(3)を、スライス加工装置(4)にセットし、当該被切断ワーク(3)をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク(5)を採取するインゴットのスライス方法であって、後の研削工程において研削加工装置(6)による回転力を受けるに足る接着強度を持った第1接着剤で前記インゴット(1)の側面へ直接接着される掛止層(7)と、前記第1接着剤より低い温度で接着強度が劣化する第2接着剤で前記掛止層(7)に重ねて接着される中間層(8)と、当該中間層(8)に連結され且つ前記スライス加工装置(4)の支持部(10)に連結される支持層(11)とを重合一体化した保持材(2)を用い、前記被研削ワーク(5)が掛止層(7)と中間層(8)の一部を介して分離されない様にスライスし、前記保持材(2)における掛止層(7)と中間層(8)との接着力を失わせ、掛止層(7)が残留した被研削ワーク(5)を得るインゴットのスライス方法。
- 円柱状のインゴット(1)の側面へその全長に亘る保持材(2)を接着して成る被切断ワーク(3)を、スライス加工装置(4)にセットし、当該被切断ワーク(3)をその長手方向に多分割して円盤状の被研削ワーク(5)を採取するインゴットのスライス方法であって、後の研削工程において研削加工装置(6)による回転力を受けるに足る接着強度を持った第1接着剤で前記インゴット(1)の側面へ直接接着される掛止層(7)と、前記第1接着剤を溶かさない溶剤を以て溶解する第2接着剤で前記掛止層(7)に重ねて接着される中間層(8)と、当該中間層(8)に連結され且つ前記スライス加工装置(4)の支持部(10)に連結される支持層(11)とを重合一体化した保持材(2)を用い、前記被研削ワーク(5)が掛止層(7)と中間層(8)の一部を介して分離されない様にスライスし、前記保持材(2)における掛止層(7)と中間層(8)との接着力を失わせ、掛止層(7)が残留した被研削ワーク(5)を得るインゴットのスライス方法。
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