JP3595276B2 - 紫外線発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子に関し、特に、紫外線を発し得る組成のInGaNが発光層として用いられた、GaN系の紫外線発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にInGaNを発光層に用いた素子では、In組成揺らぎによるキャリアの局在化のため、発光層に注入されたキャリアの内、非発光中心に捕獲されるものの割合が少なくなり、結果、高効率の発光が得られると説明されている。GaN系発光ダイオード(LED)やGaN系半導体レーザー(LD)において、420nm以下の紫外線を発光させようとする場合、一般には発光層の材料にはInGaN(In組成0.15以下)が用いられ、発光に係る構造は、単一量子井戸構造(所謂DH構造は活性層が薄いためにこれに含まれる)、多重量子井戸構造とされる。
【0003】
しかし、高いIn組成の発光層を有する青・緑色発光素子に比べ、紫外線発光素子は短波長である為、発光層のIn組成を低下させる必要がある。この為、上述のIn組成揺らぎによる局在化の効果が低減し、非発光再結合中心に捕獲される割合が増え、結果として高出力化の妨げとなっている。このような状況下、非発光再結合中心の原因となる転位密度の低減が盛んに行われている。転位密度を低減させる方法としては、ELO法(ラテラル成長法)が挙げられ、低転位化を図ることにより高出力化・長寿命化が行なわれている(文献(Jpn.J.Appl.Phys.39(2000)pp.L647)等参照)。
【0004】
GaN系発光素子においては、発光層(井戸層)を、それよりも大きなバンドギャップの材料からなるクラッド層(障壁層)で挟む構成とされる。文献(米津宏雄著、工学図書株式会社刊、「光通信素子工学」第72頁)によると、一般にはバンドギャップ差を「0.3eV」以上とする指針が出ている。
上記背景から、紫外線を発し得る組成のInGaNを発光層(井戸層)に用いる場合、キャリアの閉じ込めを考えると発光層を挟むクラッド層(量子井戸構造ではクラッド層だけでなく障壁層をも含む)にはバンドギャップの大きなAlGaNが用いられている。
【0005】
また、量子井戸構造を構成する場合、障壁層はトンネル効果を生じる程度の厚みにする必要があり、一般的には3〜6nm程度としていた。
【0006】
例えば図3は、In0.05Ga0.95Nを発光層の材料とした、従来の発光ダイオードの一例を示す図であって、結晶基板S10上に、バッファ層101を介して、n型GaNコンタクト層102、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層103、In0.05Ga0.95N井戸層(発光層)104、p型Al0.2Ga0.8Nクラッド層105、p型GaNコンタクト層106が順次結晶成長によって積み重ねられ、これに下部電極(通常はn型電極)P10、上部電極(通常はp型電極)P20が設けられた素子構造となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ELO法では下地となるGaN層を成長し、マスク層の形成、再成長といった方法が必要であり、成長が多数回必要であり、工程が非常に多くなる問題を有していた。また、再成長界面が存在する事から、転位密度低減はするものの、出力がなかなか向上しないという問題を有していた。
【0008】
また、発光層の材料をInGaNとした紫外線発光素子をより高出力化すべく、本発明者等が従来の素子構造を検討したところ、AlGaN層はInGaN発光層に対し格子定数差から生じる歪みを与える基となっている事がわかった。
また、量子井戸構造において障壁層厚みを薄くすると、その上に設けるp型層からMgが発光層まで拡散し、非発光中心を形成する為、高出力の紫外発光素子が得られないという問題があった。
【0009】
本発明の課題は、上記問題を解決し、発光層の材料をInGaNとした紫外線発光素子の構造を最適化することによって、より高出力で長寿命の紫外線発光素子を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)段差にて区画された凹部底面および凸部上面を単位基準面として有する凹凸が結晶基板に形成され、
該凹部底面および凸部上面に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介してまたは直接的に、GaN系結晶層が気相成長しており、
該GaN系結晶層の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層が成長し発光層となっている半導体発光素子構造を有する紫外線発光素子であって、
該GaN系結晶層は、結晶基板の凹凸によって横方向成長が抑えられることによりファセット構造を形成しながら成長したものであり、かつ、凹部底面、凸部上面の両方の単位基準面から、結晶単位が、それぞれの頂部に平坦部を有すること無く両ファセット面が頂部で交差する山形の態様として成長した後、成長面が平坦化されてGaN系結晶層となったものであり、これによって、結晶基板からC軸方向に伸びた転位線が前記ファセット面で横方向に曲げられていることを特徴とする、紫外線発光素子。
(2)結晶基板の表面に形成された凹凸が、ストライプパターンを呈する凹凸であって、該ストライプの長手方向が、この上に成長するGaN結晶の〈11−20〉方向、または〈1−100〉方向である上記(1)記載の紫外線発光素子。
(3)GaN系結晶層がGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものであり、発光層と低温バッファ層との間の層が全てGaN結晶からなるものである、上記(1)または(2)記載の紫外線発光素子。
(4)発光層が、InGaNからなる井戸層とGaNからなる障壁層とによって構成された量子井戸構造である、上記(1)または(2)記載の紫外線発光素子。
(5)GaN系結晶層がGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものであり、量子井戸構造と低温バッファ層との間の層が全てGaN結晶からなるものである、上記(4)記載の紫外線発光素子。
(6)障壁層の厚さが8nm〜30nmである上記(4)または(5)記載の紫外線発光素子。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による紫外線発光素子は、LED、LDなどであってよいが、以下では、LEDの構成を例として挙げて、本発明を説明する。また、発光に係る部分の構造は、量子井戸構造など、発光可能な構造であればよい。本明細書において、量子井戸構造とは、SQW(単一量子井戸)構造、MQW(多重量子井戸)構造をさし、また、SQW構造が積層されたものでもよい。
【0017】
GaN系半導体とは、InXGaYAlZN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、X+Y+Z=1)で示される化合物半導体であって、例えば、AlN、GaN、AlGaN、InGaNなどが重要な化合物として挙げられる。
【0018】
発光に係る構造部分が、MQW構造である場合を例として説明する。
図1は、本発明による発光素子の構造の一例を示す図であって、
結晶基板Sの表面に凹凸S1が加工され、該凹凸S1に、GaN系半導体からなる低温バッファ層1を介してまたは直接的に、GaN系結晶層2が気相成長している。同図の例では、GaN系結晶層2は、GaN結晶からなる層であって、先ず、アンドープのGaN結晶層2aが、基板表面の凹凸S1の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んで平坦化するまで成長し、その上に、n型GaN層2bが成長してなる態様である。また、同図の例では、n型GaN層2bは、n型コンタクト層でありかつMQW構造の障壁層をも兼ねている。MQW構造は、InGaN井戸層、GaN障壁層、InGaN井戸層、GaN障壁層の順に成長してなり、続いてp型AlGaNクラッド層4、p型GaNコンタクト層5となっている。さらに、n型電極P1、p型電極P2が形成されて、本発明による紫外線発光が可能なGaN系LEDとなっている。
【0019】
上記の構成によって、結晶基板上に成長するGaN系結晶を好ましく低転位化することが可能となる。この構成では、ELO用のマスク層を用いずに一回の成長で低転位化が達成されている。
即ち、マスクを用いたELO法では、下地にGaN膜を成長させた後、いったん成長装置から外部に取出してマスクを形成し、再び成長装置に戻して再成長を行っている。これに対して、結晶基板に凹凸を形成して行う成長法では、凹凸加工された結晶基板を成長装置内にセットしたあとは成長を止める必要がなく、これにより再成長界面が存在せずに良好な結晶性のものが作製できる。
またさらに、本発明による上記の構成では、マスクを用いずにGaN系結晶層を成長させているため、マスクの分解による結晶品質低下の問題が無い。
これらの作用効果によって転位が少なく良好な結晶のものが出来る結果、発光出力が格段に向上する。また、劣化の原因となる転位密度が低減する結果、長寿命化が図れる。
【0020】
結晶基板上にGaN系結晶を成長させる方法について説明する。
この方法では、結晶基板の表面に凹凸を加工し、GaN系低温バッファ層を介して、該凹凸の凸部および/または凹部からGaN系結晶を気相成長させる。このとき、凹部は空洞として残しても、GaN結晶によって充填してもよいが、後述のように、好ましい低転位化のためには、凸部、凹部の両方からファセット構造を形成しながら成長し、実質的に凹部が充填される態様が好ましい。
上記のようなファセット構造を形成しながらの凹凸埋め込み法によれば、ファセット構造部分において転位線の伝搬方向が制御され、結晶基板上に転位密度の低いGaN系結晶を成長させることが可能であり、本発明に独自の成長法である。この本発明に独自の成長法を、「当該埋め込み成長法」と呼んで、以下に説明する。また、凹凸を埋め込む材料は、GaN系結晶であってよいが、後述のように、素子として最も好ましいGaNで埋め込む場合を例として説明する。
【0021】
当該埋め込み成長法は、図2(a)に示すように、結晶基板Sの表面に凹凸S1を加工し、図2(b)に示すように、その凹部及び凸部にGaN系低温バッファ層1を形成し、図2(c)に示すように、その凹部、凸部からGaN結晶21、22を成長させ、図2(d)に示すように、凹部を空洞とすることなくGaN結晶で充填し、該凹凸を埋め込んで成長成させる方法である。このときのGaN結晶の成長は、凹部、凸部の両方から同時にファセット構造を形成させながら成長することが好ましいが、それに限らず、GaN結晶が凸面から専ら成長するようなものであってもよい。凸部上方部から専ら結晶成長が行われるような形状とすると有効である。「上方部から専ら結晶成長が行われる」とは、凸部の頂点ないし頂面及びその近傍での結晶成長が優勢に行い得る状態をいい、成長初期には凹部での成長が生じてもよいが最終的には凸部の結晶成長が優勢となることを指す。凸部上方部を起点としたラテラル成長により低転位領域が形成されれば、従来のマスクを要するELOと同様の効果がある。
【0022】
また、凹凸の形状や成長条件を選択することによって、結果として凹部を空洞として残さずGaN結晶によって充填するものであってもよい。
以下の説明では、低転位化のために最も好ましい態様として、凹面、凸面の両方からGaN結晶のファセット構造成長を生じさせる場合について説明する。
【0023】
当該埋め込み成長法では、図2(a)に示すように、バッファ層等すら形成していない状態の結晶基板Sの表面に凹凸S1を加工することで、結晶成長当初からファセット面が形成され得る素地面を予め提供しておく。結晶基板に凹凸を設けることで、この面にGaN結晶の気相成長を行うに際し、相互の段差にて区画された凹面と凸面が、ファセット構造成長が生成される単位基準面となる。
【0024】
当該埋め込み成長法に用いられる結晶基板は、GaN系結晶を成長させるためのベースとなる基板であって、格子整合のためのバッファ層等も未だ形成されていない状態のものを言う。好ましい結晶基板としては、サファイア(C面、A面、R面)、SiC(6H、4H、3C)、GaN、AlN、Si、スピネル、ZnO,GaAs、NGOなどを用いることができるが、発明の目的に対応するならばこのほかの材料を用いてもよい。なお、基板の面方位は特に限定されなく、更にジャスト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良い。
【0025】
結晶基板の表面に加工される凹凸とは、その表面自体がなす凹凸である。これは、従来公知のラテラル成長法に用いられているSiO2などからなるマスク層が、フラットな表面に付与されて形成された凹凸とは異なる。
【0026】
凹凸の加工方法としては、例えば、通常のフォトリソグラフイ技術を用いて、目的の凹凸の態様に応じてパターン化し、RIE技術等を使ってエッチング加工を施して目的の凹凸を得る方法などが例示される。
【0027】
当該埋め込み成長法で用いられる凹凸の配置パターンは、ドット状の凹部(または凸部)が配列されたパターン、直線状または曲線状の凹溝(または凸尾根)が一定間隔・不定の間隔で配列された、ストライプ状や同心状のパターンなどが挙げられる。凸尾根が格子状に交差したパターンは、ドット状(角穴状)の凹部が規則的に配列されたパターンとみることができる。また、凹凸の断面形状は、矩形(台形を含む)波状、三角波状、サインカーブ状などが挙げられる。
これら種々の凹凸の態様の中でも、直線状の凹溝(または凸尾根)が一定間隔で配列された、ストライプ状の凹凸パターン(断面矩形波状)は、その作製工程を簡略化できると共に、パターンの作製が容易であり好ましい。
【0028】
凹凸のパターンをストライプ状とする場合、そのストライプの長手方向は任意であってよいが、これを埋め込んで成長するGaN系結晶にとって〈11−20〉方向とした場合、横方向成長が抑制され、{1−101}面などの斜めファセットが形成され易くなる。この結果、基板側からC軸方向に伝搬した転位がこのファセット面で横方向に曲げられ、上方に伝搬し難くなり、低転位密度領域を形成できる点で特に好ましい。
【0029】
一方、ストライプの長手方向を〈1−100〉方向にした場合であっても、ファセット面が形成されやすい成長条件を選ぶ事により前述と同様の効果を得ることができる。
【0030】
凹凸の断面を図2(a)に示すような矩形波状とする場合の好ましい寸法は次のとおりである。凹溝の幅W1は、0.1μm〜20μm、特に0.5μm〜10μmが好ましい。凸部の幅W2は、0.1μm〜20μm、特に0.5μm〜10μmが好ましい。凹凸の振幅(凹溝の深さ)dは、凹部、凸部の内、広い方の20%以上の深さがあれば良い。これらの寸法やそこから計算されるピッチ等は、他の断面形状の凹凸においても同様である。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、上記凹部及び凸部にGaN系低温バッファ層1を形成する。
GaN系低温バッファ層の材料、形成条件は、公知技術を参照すればよいが、例えば、バッファ層材料としては、GaN、AlN、InNなどが例示され、成長温度としては、300℃〜600℃が挙げられる。バッファ層の厚さは10nm〜50nm、特に20nm〜40nmが好ましく、基板の凹凸断面が矩形波状である場合には、図2(b)に示すように、主として、凹部の底面、凸部の上面に形成することが好ましい。成長装置は、その上のGaN結晶層を成長させるための装置を用いてよい。
なお、結晶基板としてGaN結晶からなる基板を用いる場合には、低温バッファ層は必須では無い。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、GaN結晶を高温成長させる。凹面、凸面をファセット構造成長可能な面とすることによって、同図に示すように、成長初期には凹面・凸面の両方から凸状を呈するGaN結晶21、22が成長する。
この結果、結晶基板からC軸方向に伸びる転位線がファセット面(図2(c)に示すGaN系結晶21、22の斜面)で横方向に曲げられ、上方に伝搬しなくなる。その後、成長を続け、各凸状を呈する結晶21、22は、図2(c)に一点鎖線で示すように互いに合体し、さらに、図2(d)に示すように、成長面を平坦化してGaN結晶層2a(=図1の素子における層2a)が得られる。該GaN結晶層の表面近傍は基板からの転位の伝搬が低減された低転位密度領域となっている。
【0033】
結晶基板Sの凹凸S1をGaN結晶で埋め込む際には、結晶成長状態を制御する点からは、図1に示すように、不純物を添加しないアンドープのGaN結晶層2aで凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層2bを成長させることが好ましいが、バッファ層上に最初からn型GaN層を成長させてもよい。また、n型GaN層は、キャリア濃度を変えて、n型GaNコンタクト層、n型GaNクラッド層に区別して設けてもよい。
【0034】
従来の、低温バッファ層を介したGaN結晶成長法では、平坦なサファイアC面基板上に、MOVPE法などにより、GaNなどの低温バッファ層を介し、高温GaN膜を成長させている。低温バッファ層上に高温GaNを成長させると、バッファ層の密に集合した結晶を成長の核として、GaNは横方向成長しながら合体し、やがて平坦になるというものである。しかしながら、従来の方法では、基板面に凹凸が加工されていない為、安定であるC面が出るように成長が進むため平坦化される。これは安定であるC面の成長速度に比べ横方向の成長速度が速い為である。
【0035】
一方、当該埋め込み成長法では、基板面の成長面に凹凸を加工することで、横方向成長を抑えており、加えてC軸方向の成長速度を上げることによって、{1−101}などの斜めのファセットが形成し得る。
【0036】
成長するGaN結晶にファセット面がどのように形成されるかは、凹部の幅と凸部の幅との組み合せによっても、色々と変化し得るが、このファセット面は転位の伝搬を折曲させ得る程度のものであれば良く、好ましい態様は、図2(c)に示すように、各々の単位基準面から成長した結晶単位21、22が、それぞれの頂部に平坦部を有すること無く完全に両ファセット面が頂部で交差する山形(三角錐や山脈状に長く連なった屋根形)の態様である。このようなファセット面であれば、前記ベース面から承継された転位線を概ね全て曲げることができ、その直上の転位密度をより低減できる。
なお、凹凸の幅の組み合せだけでなく、凹部の深さ(凸部の高さ)を変化させる事でもファセット面形成領域の制御が可能である。
【0037】
また、ファセット面の形成は結晶成長を行う時の成長条件(ガス種、成長圧力、成長温度、など)により制御する事ができる。減圧成長ではNH3分圧が低い場合{1−101}面のファセットが出易く、常圧成長では減圧に比べファセット面が出易い。
また成長温度を上げると横方向成長が促進されるが、低温成長すると横方向成長よりもC軸方向の成長が速くなり、ファセット面が形成されやすくなる。
以上成長条件によってファセット形状の制御が可能である事を示したが、本発明の効果が出る範囲内であれば、目的に応じ使い分ければよい。
【0038】
本発明では上記説明した当該埋め込み成長法だけでなく、凹部を空洞として残す成長法を用いてもよい。例えば、特開2000−106455号公報では、結晶基板に凹凸を設け、凹部を空洞として残すように窒化ガリウム系半導体を成長させる方法が開示されている。ただし、このような成長法では、凹部を充填せず空洞部として残しているため、該空洞部の存在が、発光層で生じた熱を基板側に逃がす上で不利であり、熱劣化を助長する問題がある。また、転位の伝搬を積極的に制御しておらず、もっぱら凹部の上方領域だけを低転位化させるラテラル成長の技術思想そのものあって、凸部の上方領域には転位が伝搬している。よって、上記のような問題点を解消しながらより好ましい転位密度の低減効果が得られる点からは、当該埋め込み成長法を用いることがより好ましい。
【0039】
基板上にGaN系結晶層の成長を行う方法はHVPE、MOVPE、MBE法などがよい。厚膜を作製する場合はHVPE法が好ましいが、薄膜を形成する場合はMOVPE法やMBE法が好ましい。
【0040】
次に、本発明による好ましい態様を説明する。
先ず、本発明の好ましい第1の態様では、基板の凹凸上に形成されるGaN系結晶層2の材料をGaN結晶に限定する。このGaN結晶層の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層を井戸層とするMQW構造を構成し発光層とする。付言すると、n型クラッド層はGaNからなり、発光層と低温バッファ層との間にはAlGaN層が存在しない構成となる。
【0041】
この態様では、紫外線を発生し得るような組成のInGaNを発光層に用いながらも、n型クラッド層材料としては、従来必須とされているAlGaNを用いず、GaNを用いている。本発明では、紫外線発光層に対して、n型クラッド層がGaNであっても、正孔の閉じ込めは充分に達成できることを見出している。これは、p型層から注入される正孔の有効質量が重いため、拡散長が短く、n型クラッド層まで充分には到達しないからであると考えられる。よって、本発明の構成においてInGaN発光層の下層として存在するn型GaN層は、厳密には、従来でいうクラッド層に相当するものではないと言える。結晶基板と発光層との間にクラッド層として存在していたAlGaNを排除し、GaN層としたことによって、InGaN発光層の歪みが低減されている。
【0042】
発光層(井戸層)に歪みがかかっている場合、歪みによるピエゾ電界の発生により井戸構造が傾斜し、電子と正孔の波動関数の重なりが少なくなる。この結果、電子と正孔の再結合確率が減少し発光出力が弱くなる。これを回避する為に、MQW構造へSiをドーピングする事によりピエゾ電界をキャンセルする試みも行われているが、ドーピングによる結晶性の低下を引き起こす為、好ましい方法では無い。上記のように、n型AlGaN層を排除する事でこのような危惧も無く、高出力化が得られる。
【0043】
上記で説明した基板の凹凸を用いた低転位化と、AlGaNを排除した上記作用効果とがあいまって、InGaN発光層は低転位化されると共に歪みが低減され、発光出力、素子寿命が十分に向上する。
【0044】
また、本発明の好ましい第2の態様では、発光層の量子井戸構造における障壁層の材料をGaNに限定する。これによって、井戸層と低温バッファ層との間からAlGaN層が排除され、井戸層の歪みが抑制され、高出力化、長寿命化が達成される。従来の量子井戸構造では、井戸層内へのキャリアの閉じ込めを配慮し、障壁層やクラッド層にはAlGaNが用いられていた。
しかしこれらの組み合せでは、結晶成長条件の最適値がAlGaNとInGaNとでは大きく異なる事から次の問題がある。AlNはGaNに比べ高融点であり、InNはGaNに比べ低融点である。その為、最適温度はGaNを1000℃とすると、InGaNは1000℃以下、好ましくは600〜800℃程度、AlGaNはGaN以上である。AlGaNを障壁層に用いた場合、AlGaN障壁層とInGaN井戸層の成長温度を変化させないとそれぞれの最適結晶成長条件とはならず、結晶品質が低下する問題がある。一方、成長温度を変化させることは成長中断を設ける事となり、3nm程度の薄膜である井戸層では、この成長中断中にエッチング作用により厚みが変動する、表面に結晶欠陥が入る等の問題が生じる。これらトレードオフの関係が有る為、AlGaN障壁層、InGaN井戸層のくみ合わせで高品質な物を得るのは困難である。また、障壁層をAlGaNとする事で井戸層へ歪みがかかる問題もあり、高出力化の妨げになる。そこで、本発明では、障壁層の材料としてGaNを用い、上記トレードオフの問題を軽減する試みを行ったところ、結晶品質が改善された。また、歪みを軽減する為にn型クラッド層としてGaNを用いた所、歪みの軽減により高出力化が可能となった。GaNをクラッド層にするとキャリアの閉じ込めが、紫外線発光可能な組成のInGaNに対して、不充分となることが懸念されたが、キャリア(特に正孔)の閉じ込めはできていることが判明した。
【0045】
さらに、本発明の好ましい第3の態様では、MQW構造における障壁層の厚さを6nm〜30nm、好ましくは8nm〜30nm、特に好ましくは9nm〜15nmに限定する。従来のMQW構造における障壁層の厚さは3nm〜7nmである。
障壁層をこのように厚くすると、波動関数の重なりが無くなり、MQW構造というよりも、SQW構造を多重に積み重ねたような状態となるが、充分に高出力化が達成される。障壁層が30nmを超えると、p型層から注入された正孔が井戸層へ到達するまでにGaN障壁層中に存在する非発光中心となる転位欠陥などにトラップされ、発光効率が低下するので好ましくない。
【0046】
また、障壁層を厚くしたことによって、その上の層を成長させるときの熱や、ガスによる損傷を井戸層が受け難くなるのでダメージが軽減され、また、p型層からのドーパント材料(Mgなど)が井戸層に拡散することが低減され、さらには井戸層にかかる歪みも低減されるという作用効果が得られる。
【0047】
【実施例】
実施例1
本実施例では、図1に示すように、DH構造を有するGaN系LEDを製作し、発光層と結晶基板との間の層をGaNだけからなる態様とした。
C面サファイア基板上にフォトレジストによるストライプ状のパターニング(幅2μm、周期4μm、ストライプ方位:ストライプの長手方向が、基板上に成長するGaN系結晶にとって〈11−20〉方向)を行い、RIE装置で2μmの深さまで断面方形となるようエッチングし、図2(a)に示すように、表面がストライプ状パターンの凹凸となった基板を得た。この時のストライプ溝断面のアスペクト比は1であった。
【0048】
フォトレジストを除去後、MOVPE装置に基板を装着し、水素雰囲気下で1100℃まで昇温し、サーマルエッチングを行った。温度を500℃まで下げ、III 族原料としてトリメチルガリウム(以下TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、厚さ30nmのGaN低温バッファ層を成長させた。該GaN低温バッファ層は、図2(b)に示すように、凸部の上面、凹部の底面にのみ形成された。
【0049】
続いて温度を1000℃に昇温し、原料としてTMG、アンモニアを流し、アンドープのGaN層2aを、平坦な基板で2μmに相当する時間成長させた後、成長温度を1050℃に上げ、平坦な基板で4μmに相当する時間成長させた。この条件で成長を行った場合、このときのGaN層2aの成長は、図2(c)に示すように、凸部の上面、凹部の底面から、断面山形でファセット面を含む尾根状となる。その後の成長温度変更により2次元成長が促進され、平坦化する。
【0050】
続いて、図1に示すように、n型GaNコンタクト層(クラッド層)2b、厚さ3nmのInGaN井戸層(発光波長380nm、In組成はゼロに近い為測定が困難)、厚さ6nmのGaN障壁層からなる3周期の多重量子井戸層3、厚さ30nmのp型AlGaNクラッド層4、厚さ50nmのp型GaNコンタクト層を順に形成し、発光波長380nmの紫外線LEDウエハとし、さらに、電極形成、素子分離を行い、LED素子とした。
【0051】
ウエハ全体で採取されたLED素子(ベアチップ状態)、波長380nm、通電20mAにて)の各出力を測定した。
【0052】
比較のために、凹凸加工をしていないサファイア基板上に、上記と同様の条件にて、紫外線LEDチップ(比較例1)を形成し、その出力を測定した。
また、通常のELO用基材(平坦なサファイア基板上に一旦GaN層を形成した後、マスク層を形成したもの)の上に、上記と同様の条件にて、紫外線LEDチップ(比較例2)を形成し、その出力を測定した。
【0053】
カソードルミネッセンスによりLEDウエハ中の転位密度の平均値を測定した結果、および出力の平均値、80℃、20mAによる加速試験における寿命(初期出力の80%まで低下する時間)を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、本実施例では転位密度が低減し、長寿命化、高出力化が図れている。比較例2の結果から明らかなように、転位密度低減法の1つであるELO法によって、同様に転位密度の低減は図れているが、出力が本実施例に比較し低かった。これは再成長界面の存在による結晶性の違いと考えられる。また、通常基板上では転位密度も多いため、出力寿命とも本実施例に比較し悪かった。
【0056】
実施例2
本実施例では、実施例1におけるn型GaNコンタクト層2bと、InGaN井戸層との間に、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件にて、紫外線LEDチップを形成し、その出力を測定した。
上記表1のとおり、実施例1の素子の出力は10mWであったのに対して、本実施例の素子の出力は7mWであった。この結果から、本実施例の素子は比較例1、2に比べて出力は向上しているが、実施例1のように、InGaN井戸層と結晶基板との間からAlGaN層を排除することによって、出力がさらに向上することが明らかになった。
【0057】
実施例3
本実施例では、MQW構造の障壁層の厚さに関する限定の作用効果を調べる実験を行った。
実施例1におけるMQW構造の各障壁層の厚さを、サンプル1;3nm、サンプル2;6nm、サンプル3;10nm、サンプル4;15nm、サンプル5;30nmとしたこと以外は、上記実施例1と同様にGaN系LEDを製作した。これらは、全て本発明による発光素子に属する。
上記と同様の条件にて、紫外LEDチップの出力を測定した。
【0058】
これらの測定結果の平均値は次のとおりである。
サンプル1;2mW、
サンプル2;7mW、
サンプル3;10mW、
サンプル4;8mW、
サンプル5;5mW
【0059】
また、これらサンプルを4Kの低温においてフォトルミネッセンス測定を行った結果、サンプル1において3.2eV付近にMgからの発光が観測された。これは障壁層が薄い為、p型層からMgが拡散してきた結果と考えられる。
上記の結果から明らかなとおり、障壁層の厚さが6nm〜30nmにおいて、高出力化がより改善されることがわかった。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、GaN系紫外線発光素子において,凹凸加工した基板上に一回の成長で結晶構造を作製する事により転位低減を図り、かつ、n型クラッド層(量子井戸構造では障壁層も)の材料をGaNとすることによって歪みを低減を図り、更に、MQW構造における好ましい態様として、障壁層の厚さを限定することで、素子の発光出力を向上させ、長寿命化させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による紫外線発光素子の構造例を示す模式図である。ハッチングは、領域の境界を示す目的で施している(以下の図も同様)。
【図2】本発明において、基板の凹凸を埋め込んでGaN結晶層を成長させる方法を示す模式図である。
【図3】In0.05Ga0.95Nを発光層の材料とした、従来の発光ダイオードの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
S 結晶基板
S1 凹凸
1 GaN系半導体低温バッファ層
2 GaN系結晶層(特にGaN結晶層)
3 紫外線発光可能な組成のInGaN結晶層
4 p型クラッド層
5 p型コンタクト層
Claims (6)
- 段差にて区画された凹部底面および凸部上面を単位基準面として有する凹凸が結晶基板に形成され、
該凹部底面および凸部上面に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介してまたは直接的に、GaN系結晶層が気相成長しており、
該GaN系結晶層の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層が成長し発光層となっている半導体発光素子構造を有する紫外線発光素子であって、
該GaN系結晶層は、結晶基板の凹凸によって横方向成長が抑えられることによりファセット構造を形成しながら成長したものであり、かつ、凹部底面、凸部上面の両方の単位基準面から、結晶単位が、それぞれの頂部に平坦部を有すること無く両ファセット面が頂部で交差する山形の態様として成長した後、成長面が平坦化されてGaN系結晶層となったものであり、これによって、結晶基板からC軸方向に伸びた転位線が前記ファセット面で横方向に曲げられていることを特徴とする、紫外線発光素子。 - 結晶基板の表面に形成された凹凸が、ストライプパターンを呈する凹凸であって、該ストライプの長手方向が、この上に成長するGaN結晶の〈11−20〉方向、または〈1−100〉方向である請求項1記載の紫外線発光素子。
- GaN系結晶層がGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものであり、発光層と低温バッファ層との間の層が全てGaN結晶からなるものである、請求項1または2記載の紫外線発光素子。
- 発光層が、InGaNからなる井戸層とGaNからなる障壁層とによって構成された量子井戸構造である、請求項1または2記載の紫外線発光素子。
- GaN系結晶層がGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものであり、量子井戸構造と低温バッファ層との間の層が全てGaN結晶からなるものである、請求項4記載の紫外線発光素子。
- 障壁層の厚さが8nm〜30nmである請求項4または5記載の紫外線発光素子。
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