JP3602002B2 - 防液堤設備の表面被覆方法並びに表面被覆を有する防液堤設備 - Google Patents
防液堤設備の表面被覆方法並びに表面被覆を有する防液堤設備 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LNG、LPG、LEG等の低温液化ガス貯槽施設に関し、特に防液堤設備の表面被覆方法、並びに、表面被覆層を有する防液堤設備に関するものであり、断熱及び土木の技術分野において利用するものである。
尚、本発明における防液堤設備は、例えば、防液堤を形成する凸状の堤防部分や、当該堤防部分の内部における床部分、さらには、前記堤防部分の内部に設けられた設置物などを意味するものとし、何れか一つのみを意味する場合や、これらを組み合わせた部分を意味する場合があるものとする。
【0002】
【従来の技術】
従来、防液堤の内周壁部あるいは防液堤内部の地表面を形成すべく使用される、例えば、超軽量コンクリートあるいはポリウレタンフォーム等の断熱材に対しては、前記低温液化ガスが漏洩した際の火災発生を防止するため等の目的から、組成物として自己消火性を有するクロロスルフォン化ポリエチレン系被覆材を利用してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、クロロスルフォン化ポリエチレンは、オゾン層を破壊する物質としてフロン規制の対象になっている四塩化炭素を溶媒として生産されるため、今後、クロロスルフォン化ポリエチレンは製造が中止される方向にある。
【0004】
また、前記超軽量コンクリート等は、普通コンクリートに比べて乾燥収縮率が大きく、ひび割れを発生させ易い材料であるが、前記クロロスルフォン化ポリエチレン系の組成物は、ひび割れ追従性に劣っていた。このため、前記超軽量コンクリート等で形成する下地材にひび割れが生じると、前記組成物にもひび割れが生じることとなる。この結果、雨水等の環境因子の遮蔽性が損なわれ、下地材の耐久性が損なわれていた。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、難燃性及びひび割れ性に優れた組成物を用いて行う防液堤設備の表面被覆方法、並びに、前記組成物による表面被覆層を有する防液堤設備を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(手段1)
本発明に係る防液堤設備の表面被覆方法は、請求項1に記載したごとく、低温液化ガス貯蔵タンク3に係る防液堤設備に、(a)成分 炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと、(b)成分 (メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチルのうち少なくとも何れか一方と、(c)成分 N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも何れか一方とを必須構成単量体単位とする共重合体の水性エマルション、および、無機質水硬化性物質、並びに、金属水酸化物・金属酸化物・金属塩から選択される無機質難燃剤であって、その配合割合が、前記共重合体100重量部に対して80〜200重量部の無機質難燃剤からなる組成物を塗工して表面被覆層を形成する点に特徴を有する。
【0007】
(作用効果)
本手段のごとく、(メタ)アクリル酸アルキル等からなる共重合体の水性エマルション、および、無機質水硬化性物質、無機質難燃剤からなる組成物を使用するものであれば、従来のごとく四塩化炭素を用いることなく、しかも、環境に対して悪影響を及ぼさずに組成物を得ることができる。
【0008】
また、当該組成物から得られる表面被覆層は、遮塩性・伸び率・水蒸気透過性・難燃性等を有しているため、塩分等の環境因子に対する遮蔽性に優れるうえに、普通コンクリートに比べて乾燥収縮率が大きい超軽量コンクリート等に設けた場合でも良好なひび割れ追従性を発揮するものとなる。
【0009】
さらに、前記共重合体の水性エマルションに対して前記無機質水硬性物質・無機質難燃剤を配合することで、形成される表面被覆層が強度および難燃性に優れたものとなる。
【0010】
このように、本手段の方法によれば、良好な作業性および所定の性能を有する組成物を得ることができると共に、これにより形成された表面被覆層は、断熱材のひび割れ等に対しても十分に追従することができる。よって、長期に亘って上記性能を発揮し得る表面被覆層を備えた防液堤設備を得ることができる。
【0011】
(手段2)
本発明に係る防液堤設備の表面被覆方法では、請求項2に記載したごとく、前記共重合体の共重合割合を、前記(a)成分を20〜90重量%とし、前記(b)成分を0.1〜8重量%とし、前記(c)成分を0.01〜30重量%とすることができる。
(作用効果)
本手段のごとく必須構成単量体単位の共重合割合を設定した場合には、以下の効果を得ることができる。
前記(a)成分である(メタ)アクリル酸アルキルの共重合割合を、前記必須構成単量体単位の全量に対して20〜90重量%とすることで、得られた塗膜による塗膜に耐候性、耐寒性及び耐アルカリ性を付与することができる。仮に、この割合が20重量%に満たない場合は、完成した表面被覆層の耐候性が低下することがあり、他方90重量%を超えると、表面被覆層がべとついたり、強度が低下する場合がある。
【0012】
前記(b)成分である(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルの共重合割合を0.1〜8重量%とすることで、前記無機質水硬性物質として使用する、例えばセメント中のアルカリによって(メタ)アクリル酸メチル等が加水分解し、これがセメント中のCaと内部架橋を形成し、形成した表面被覆層の強度を向上させる等の好ましい効果を得ることができる。仮に、この割合が0.1重量%に満たないと、表面被覆層の強度が低下してしまい、又8重量%より多いと、表面被覆層の耐水性及び耐アルカリ性が極端に低下し、防水材としての性能を維持することができなくなる。
【0013】
前記(c)成分である(メタ)アクリルアミド等の共重合割合を0.01〜30重量%とすることで、前記セメント等との混合時において主剤である共重合体の水性エマルションを安定化させることができる。また、得られる表面被覆層の乾燥性を良好なものとする他に、下地材である断熱材との密着性を向上させる等の働きがある。仮に、共重合割合が0.01重量%に満たないと上記効果を十分に発揮せず、30重量%を超えると表面被覆層の耐水性が著しく低下してしまうことがある。
【0014】
(手段3)
本発明に係る防液堤設備の表面被覆方法は、請求項3に示すごとく、前記無機質難燃剤として、金属水酸化物を用いる場合には、水酸化アルミニウム、もしくは、水酸化マグネシウムを用い、金属酸化物を用いる場合には、三酸化アンチモン、もしくは、五酸化アンチモンを用いることができる。
(作用効果)
本手段のごとく、前記主剤である共重合体の水性エマルションに前記無機質難燃剤を配合させることで表面被覆層に難燃性を付与することができ、LPG・LNG・LEG等の可燃性の低温液化ガスを貯蔵するタンクに付帯して設ける防液堤およびその内部の地表面等に対して当該組成物を塗布した場合でも、十分に安全な防液堤等を得ることができる。
特に、水酸化アルミニウム及び三酸化アンチモンを用いた場合には、難燃性及び経済性に優れた防液堤等を得ることができる。
【0015】
(手段4)
本発明に係る防液堤設備の表面被覆方法は、請求項4に示すごとく、塩化ビニリデンを構成単量体単位とする共重合体をさらに含有させて得た前記組成物を用いることもできる。
(作用効果)
本手段であれば、表面被覆層の難燃性をさらに高めることができ、例えば、後述するバーンスルー試験においても優れた性能を発揮するものとなる。
【0016】
(構成1)
本発明に係る防液堤設備は、請求項5に示すごとく、請求項1〜4の何れかの方法により形成された表面被覆層を備えた点に特徴を有する。
(作用効果)
本構成の組成物を用いる場合には前記手段1の作用効果で記載したのと同様に、作業性よく組成物を防液堤等に塗布することができ、乾燥収縮率が大きい超軽量コンクリート等の断熱材に塗布した場合でも良好なひび割れ追従性を発揮するうえに、遮塩性・伸び率・水蒸気透過性・難燃性・凍結安定性等においても優れている。
よって、本構成の表面被覆層を有する防液堤設備は、所期の性能を長期に亘って維持し得るものとなる。
【0017】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
(本発明の概要)
本発明は、LNGタンク・LPGタンク・LEGタンク等の低温液化ガス貯蔵タンク3に付帯して設ける防液堤1や、その内部の床面2を構成するコンクリート表面、および、断熱材表面等に特定の組成物を塗工する方法および当該組成物を塗布した防液堤設備に関するものである。
図1には、低温液化ガス貯蔵タンク3の一つであるLNGタンク3Aの周囲に防液堤1を設けた例を示す。当該防液堤1は、LNGタンク3Aに貯蔵してある超低温液化ガスが外部に流出した場合に、当該ガスが敷設外へ拡散流出するのを阻止すると共に、大気中へのガス蒸発量を最小限に抑えるためのものである。
【0019】
前記防液堤1は一般のコンクリートで構築し、その内周面4に、例えば超軽量コンクリートで形成した断熱パネル5を取り付けて構成する。当該断熱パネル5は、例えば600mm×900mm×60mmのサイズのものを一単位として、シーリング剤6を介して並設する。
前記断熱パネル5の取付けは、通常、仮固定用のアンカー7で前記コンクリート壁8に仮固定し、隣接する前記断熱パネル5どうしの隙間をシーリング剤6で目止めした後、前記コンクリート壁8と前記断熱パネル5との間の空間に無収縮モルタルあるいはポリマーセメント等の接着剤9を充填して前記コンクリート壁8に接着固定する。
尚、予め接着剤9を塗布した前記断熱パネル5を仮固定用のアンカー7を用いて前記コンクリート壁8に当接させた状態で支持し、前記接着剤9を硬化させて接着固定してもよい。
【0020】
一方、前記防液堤1で囲まれた地表面2については、まず、通常のコンクリートを現場打設してコンクリート床10を形成する。そして、さらにその上面に超軽量コンクリート等を用いて断熱床11を形成する。その際には、例えば3m×3mのサイズを一単位とする型枠を設置して超軽量コンクリートを現場打設する。夫々の単位の境界には、防液堤1の場合と同様にシーリング剤6を介在させる。このように個々の単位に区切るのは乾燥収縮によるひび割れ等の発生を防止するためである。
【0021】
以上のごとく、防液堤1、および、当該防液堤1で囲まれた断熱床11等の周辺設備を、超軽量コンクリート等の断熱材を用いて形成することで、仮に低温液化ガスが漏洩した場合でも漏洩した低温液化ガスを確実に受け止め、当該ガスの蒸発量を最小限に留めることができる。
【0022】
一般に、超軽量コンクリート等の断熱材は、断熱効果を高めるべく発泡質に構成してあり、吸湿性が高い等の特性を有する。よって、これら断熱材に良好な断熱効果を発揮させるためには、断熱材の表面に被覆層を形成しておく必要がある。当該表面被覆層は、難燃性・耐候性に優れていることは勿論のこと、塗工性においても良好な特性を有している必要がある。
以下、本発明に係る断熱材および組成物、並びに、当該組成物を用いた被覆方法について説明する。
【0023】
(断熱材)
本発明に係る防液堤設備は、前述のごとく断熱材を用いることが好ましい。当該断熱材としては、例えば、ポリウレタンフォーム・塩化ビニールフォーム・石綿炭酸カルシウム・発泡ガラス・セラミックフォーム・パーライトコンクリート・スチレンビーズコンクリート・ALC等の断熱材を用いて構成する。その中でも、特に、パーライトコンクリート・スチレンビーズコンクリート等のセメント系断熱材を用いるのが好ましい。当該セメント系断熱材は、超軽量骨材として真珠岩系パーライト・黒曜石系パーライト・発泡スチロール・セラミック(ガラス)ビーズ等を用いている。当該セメント系断熱材は、不燃性・断熱性・高圧縮強度・低吸水率・高耐久性等の多くの特徴を有している。
【0024】
前記セメント系断熱材が備えるべき物性としては、熱伝導率が0.13kcal/m2℃以下であって、強度が20kgf/cm2以上であり、表面に被覆層を形成した状態でLNGが当該表面に接触した場合のLNGの蒸発速度が、LNGが地表面に接触した場合の前記蒸発速度に対しておよそ10分の1であることが一つの基準とされている。
【0025】
(組成物の概要)
一方、このような断熱材に塗布すべき組成物としては、形成された被覆層が柔軟であって、断熱材のひび割れに対して追従性に優れ、長期に亘って難燃性を維持し、強度が11〜13kgf/cm2 程度と比較的小さく、断熱材が変形した場合でも損傷が生じ難いものであることが必要である。また、加水分解による膜厚の消耗がないことも必要である。
【0026】
本発明に係る組成物は、主に、炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル等の必須構成単量体単位を複数混合した共重合体の水性エマルションを主剤として構成する。当該共重合体の主剤は水性であることから、安全性・施工性に優れ、得られた塗膜はベタつきもなく光沢に優れ、耐水性・耐薬品性・耐紫外線性・耐オゾン性が良好である点で最も優れているからである。
また、本発明に係る組成物は、上記共重合体の水性エマルションと、無機質水硬性物質、無機質難燃剤等とからなる。前記無機質水硬性物質は、前記共重合体に速硬化性を付与する働きを有する。また、前記無機質難燃剤は、本発明に係る組成物によって形成した塗膜に難燃性を付与する。
【0027】
(必須構成単量体単位)
本発明に係る組成物を構成する成分のうち、前記共重合体の水性エマルションが最も重要な機能を有する。
前記共重合体は、(a)成分である炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと、(b)成分である(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチルのうち少なくとも何れか一方と、(c)成分であるN−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも何れか一方とを必須構成単量体単位とする。
【0028】
前記共重合体中の(a)成分である、炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、組成物によって形成した塗膜に耐候性、耐寒性及び耐アルカリ性を付与するための成分である。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル・(メタ)アクリル酸イソブチル・2エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸n−ヘキシル等を用いることができる。炭素数が4より小さい(メタ)アクリル酸アルキルは、塗膜の耐アルカリ性が低下してしまうので多量には使用できず、又、炭素数が10を超える(メタ)アクリル酸アルキルは、耐寒性が低下するので使用することができない。
(a)成分の共重合割合は、前記必須構成単量体単位の全量に対して20〜90重量%が好ましく、60〜90重量%であればなおよい。この割合が20重量%に満たない場合は、完成した表面被覆層の耐候性が低下することがあり、他方90重量%を超えると、表面被覆層がべとついたり、強度が低下する場合がある。
【0030】
前記(b)成分としては、(メタ)アクリル酸メチル又は/及び(メタ)アクリル酸エチルを用いる。特に、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。当該(b)成分は、例えば後述する無機質水硬性物質であるセメント中のアルカリにより加水分解し、これがセメント中のCaと内部架橋を形成し、形成した表面被覆層の強度を向上させる等の好ましい効果を得ることができる。
【0031】
前記必須構成単量体単位の全量に対する前記(b)成分の共重合割合は0.1〜8重量%が好ましい。この割合が0.1重量%に満たないと、表面被覆層の強度が低下することがあり、又、8重量%より多いと、表面被覆層の耐水性及び耐アルカリ性が極端に低下し、防水材としての性能を維持できない場合がある。
【0032】
前記(c)成分としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、及び/又は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドである。このN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドとしては、N−(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等を用いることができる。
前記(c)成分を共重合することで、後述する無機質水硬性物質であるセメント等との混合時において前記共重合体を安定化させることができる。また、得られる表面被覆層の乾燥性及び断熱材等の下地との密着性等を向上させる働きがある。
尚、(c)成分の共重合割合は、0.01〜30重量%とするのが好ましく、0.1〜10重量%であればなおよい。共重合割合が0.01重量%に満たないと上記効果を発揮せず、30重量%を超えると表面被覆層の耐水性が低下する場合がある。
【0033】
以上のごとく、前記(a)成分乃至前記(c)成分の共重合割合は、(a)成分を20〜90重量%とし、(b)成分を0.1〜8重量%とし、(c)成分を0.01〜30重量%とするのが好ましい。
【0034】
前記共重合体としては、前述した(メタ)アクリル酸アルキル等の単量体単位の他に、 (メタ)アクリル酸アルキル等と共重合可能な不飽和エチレン結合を有する単量体を重合させたものであってもよい。
当該単量体としては、通常(メタ)アクリル系重合体における共重合性単量体として使用されているものであればよく、例えば、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル及び塩化ビニリデン等を用いることができる。
但し、官能基としてカルボキシル基又はスルホン酸基をもつ単量体及び通常のカチオン性単量体は、共重合体の安定性を低下させる場合があり、使用しないことが好ましい。
当該単量体の共重合割合としては、(メタ)アクリル酸アルキル100重合部に対して100重量部以下が好ましく、前記ガラス転移点Tgが−20℃以下となる様、種類及び共重合割合を選択することが好ましい。
【0035】
上記の共重合体としては、ガラス転移点(以下Tg点という)が−20℃以下のものが好ましい。当該Tg点とは、共重合体に係る無定形重合体の各種性質が急変する温度で、この温度以下では重合体の無定形部分に係る分子セグメントの運動が凍結されるような温度である。
このような共重合体であれば、一度に数百μm以上の厚さに塗布しても、ひび割れ及び亀裂等を生じることがなく、下地材である断熱材のひび割れ等によく追従する。例えば、仮に断熱材に数mmの亀裂が発生しても、その表面被覆層にピンホール等が生じることはない。また、低温時の塗工性及び成膜性にも優れている。
尚、前記Tg点が−20℃を超える共重合体では、通常の防水材等においてよくみられる数百μm以上の膜厚に塗布した場合、成膜時に塗膜の亀裂及びひび割れ等が生じ易く、成膜後においても下地材の亀裂に対する塗膜の追従性が不充分となることがある。
【0036】
共重合体のTg点を測定するには、例えば、個々の単量体単位のTg点の値が知られているので共重合体のTg点の値は、次の計算式によって求めることができる。
【0037】
【数1】
1/Tg=CA/TgA+CB/TgB+・・・+CX/TgX
【0038】
CA : 成分Aの重量分率
CB : 成分Bの重量分率
CX : 成分Xの重量分率
TgA: 成分A単量体単位のTg(°K)
TgB: 成分B単量体単位のTg(°K)
TgX: 成分X単量体単位のTg(°K)
ここでCA+CB+・・・+CX=1である。
【0039】
(乳化剤)
前記共重合体の水性エマルションは、乳化剤の存在下において前記(a)〜(c)成分を重合して得ることができる。当該乳化剤としては、エマルションの安定性及び基材との密着性に優れる点で、カチオン性又はノニオン性の界面活性剤が好ましい。
本発明に使用し得るカチオン性界面活性剤としては、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド・トリメチルドデシルアンモニウムクロライド・トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド・アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド・ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド及びトリメチルステアリルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、並びにジメチルオクチルアミン・ジメチルデシルアミン・ジメチルラウリルアミン・ジメチルミリスチルアミン・ジメチルパルミチルアミン・ジメチルステアリルアミン・ジメチルオレイルアミン・トリオクチルアミン・N−メチルモルフォリン・ジメチルベンジルアミン及びポリオキシエチレンアルキルアミン等の3級アミン等が挙げられる。
【0040】
ノニオン性界面活性剤としては、通常(メタ)アクリル系重合体エマルションの製造で使用されるいずれのものが使用可能である。具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル・ポリオキシエチレンオレイルエーテル・ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンのアルキル又はルキルフェノールエーテル・ソルビタンモノステアレート・ソルビタンモノラウレート・ソルビタンジステアレート・ソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、並びにグリセリンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、特に重合安定性・機械的・化学的安定性に優れるという点で、HLB値15以上のポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0041】
前記界面活性剤の配合割合は、前記共重合体に要求される性質等に応じて適宜調整すれば良い。前記共重合体の安定性を向上させるには界面活性剤の配合量が多くことが望ましく、乾燥性及び塗膜の耐水性を向上させるためには配合量が少ない方が望ましい。好適な配合割合は、前記共重合体に対して1〜5重量%である。
【0042】
前記共重合体を得るには、例えばラジカル重合触媒である一般のノニオン性触媒やカチオン性触媒等を用いることができる。これらの中でも、特にカチオン性触媒である2,2’− アゾビス(2−アミジノプロパン)を使用することが好ましい。前記共重合体は、一般的なエマルション重合の方法によって製造すれば良い。
【0043】
前記共重合体の水性エマルションにおける前記共重合体の割合は、40〜65重量%であるのが好ましい。40重量%に満たない場合は、乾燥性が不充分となり、又塗膜の伸びが不充分となることがある。一方、65重量%を超えると、共重合体が製造時にゲル化したり、得られた組成物の粘度が高くなって作業性が低下する等の不都合が生じる場合がある。
【0044】
(無機質水硬化性物質)
本発明に係る組成物には、その硬化特性および塗膜強度を向上させるために、無機質水硬化性物質を配合する。即ち、当該物質中のCa等の多価金属と前記共重合体とが架橋し、塗膜の乾燥性、下地材との密着性、塗膜の柔軟性及び強度を向上させるのである。当該無機質水硬化性物質としては、例えばセメントを用いることができる。
当該セメントとしては、通常、市販のセメントの全てが使用でき、例えば普通ボルトランドセメント・トランドセメント・早強セメント・高炉セメント・ホワイトセメント・シリカセメント・フライアッシュセメント及びアルミナセメント等のセメントを用いることができる。これらのセメントであれば、塗布に際して適度な作業時間を確保することができるからである。ただし、価格及び性能の面からみて、普通ボルトランドセメント及びアルミナセメントを用いるのが好ましい。
【0045】
当該セメントは前記共重合体の100重量部に対して5〜2000重量部の範囲で使用するのが好ましく、10〜150重量部であればより好ましい。5重量部以下の場合には、前記速硬化性が得られず、2000重量部を超えると市販ポリマーセメント系被覆材と同程度のひび割れ追従性しか得ることができず好ましくない。
【0046】
(無機質難燃剤)
本発明に係る組成物には、難燃性を得るために無機質難燃剤を配合する。当該無機質難燃剤は、金属水酸化物、金属酸化物及び金属塩のうちから選択して用いる。
前記金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムを用いることができる。前記金属酸化物としては、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンを用いることができる。前記金属塩としては、アンチモン酸ソーダ・炭酸マグネシウム・硫酸マグネシウム及びメタホウ酸バリウムを用いることができる。これらの中でも、経済性及び難燃性に優れる点で、金属水酸化物および金属酸化物が好ましく、水酸化アルミニウム及び三酸化アンチモンがより好ましい。尚、当該無機質難燃剤は、二種以上を併用してもよい。
【0047】
無機質難燃剤の配合割合としては、前記共重合体100重量部に対して80〜200重量部が好ましく、より好ましくは90〜160重量部である。この割合が80重量部に満たない場合は、塗膜に十分な難燃性を付与できず、他方200重量部を超える場合は、塗膜の強度が低下したり、耐水性が低下することがある。
【0048】
(その他の成分)
又、本発明に係る組成物には上記の各成分の他に骨材を配合することができる。当該骨材を配合することで、混練性の改良・塗工性の向上・塗膜厚の確保・塗膜の強靱性及び柔軟性の向上・塗膜のタックの減少等を図ることができる。
【0049】
骨材の具体例としては、例えば珪砂・タルク・炭酸カルシウム・石こう・珪そう土・酸化チタン・シリカ・バーライト等の発泡体・マイカ・フェライト及びカーボンブラック等を例示できる。又、必要に応じて繊維質材料も配合することができる。
骨材の配合割合としては、前記無機質水硬性物質100重量部に対して20〜200重量部が好ましく、特に30〜115重量部とした場合にはより好ましい結果を得ることができる。前記骨材の配合割合が20重量部に満たない場合には、塗膜の伸び及び強度が低下することがあり、他方200重量部を超える場合には難燃性が低下することがある。
【0050】
骨材以外にも、通常の塗膜防水材に配合されているような、増粘稠剤・消泡剤・成膜助剤・反応遅延剤・顔料及び染料等を添加することもできる。
また、組成物の粘度を調整する目的で、さらに水を添加することもできる。具体的には、前記共重合体および前記無機質水硬性物質、前記無機質難燃剤の合計量を100重量部として10重量部以下が好ましく、本質的には、本発明に係る組成物の粘度が4000〜20000cPになる様な量を添加することが好ましい。これにより、組成物の塗工性を改善することができる。
【0051】
表面被覆層にさらなる難燃性を付与する方法としては、組成物に塩化ビニリデンを構成単量体単位とする重合体をさらに配合することが好ましい。当該重合体としては、塩化ビニリデンの単独重合体、あるいは、塩化ビニリデンと他の単量体との共重合体等を用いることができる。
【0052】
さらに、表面被覆層に難燃性を付与する方法としては、トリアジン環を有する化合物を組成物に配合するものであってもよい。当該化合物としては、例えば、メラミンおよびその誘導体並びにそれらの重合体を用いることができる。
【0053】
(表面被覆層の特性)
上記の組成物によって形成した表面被覆層は、良好な遮塩性および伸び率、水蒸気透過性を有するものとなる。
【0054】
例えば、前記遮塩性は10−2〜10−6mg/cm2・dayのものを得ることができる。 尚、当該数値が10−2を上回ると飛来塩分に対する浸透阻止効果が不十分となり、断熱材中の鉄筋に対する長期的な防錆効果に欠けたものとなる。また、前記数値が10−6mg/cm2・dayを下回ると、形成した表面被覆層が膨れたり、剥がれる等の不都合が生じ易くなる。
【0055】
前記伸び率については、50〜1000%の範囲のものを得ることができる。伸び率が50%を下回った場合には、コンクリートのひび割れに対する追従性が損なわれ、水・酸素・二酸化炭素・飛来塩分等を遮断できなくなる。一方、伸び率が1000%を超えた場合には摩耗衝撃等に対して弱くなり、形成した表面被覆層の耐久性が不十分なものとなる。
【0056】
前記水蒸気透過性は、5g/m2・day以上のものを得ることができる。これ以下の場合には、形成した表面被覆層が膨れ易くなって好ましくない。
【0057】
(製造方法および塗布方法)
本発明の組成物は、前記共重合体の水性エマルション、および、無機質水硬性物質、無機質難燃剤からなるスラリー状のものであり、これらの成分、または、必要に応じてこれらと骨剤とを常法に従い混合すれば良い。通常は、各成分を、混合機を用いて施工現場で混合して製造する。
【0058】
本発明に係る組成物の塗工方法としては、通常の塗膜防水工法等で適用される方法に従えば良い。例えば、刷毛、ローラー刷毛及びゴムレーキ等を用いる塗布方法や、スプレーガンを用いる吹付け法等により行う。
塗布に際しては、一回の塗布作業で表面被覆層の厚さを確保するために粘度を4000〜20000cP程度に設定する。表面被覆層の膜厚は、300〜3000μmの範囲となるように施工するのが好ましい。塗布層が300μmを下回る場合には、断熱材のひび割れに対する追従性に欠けると共に、遮塩性等に劣るものとなる。一方、塗布層が3000μmを上回る場合には、経済的でなくなるばかりでなく、水蒸気透過性が小さくなり、塗膜が膨れ易くなるため好ましくない。
【0059】
(効果)
以上のごとく、本発明の防液堤設備の表面被覆方法によれば、組成物が良好なのび性あるいは速硬化性等を有するから塗装作業が極めて容易なものとなる。
また、塩分等の環境因子に対する遮蔽性が向上するから、従来のクロロスルフォン化ポリエチレン、ポリマーセメントを被覆した防液堤等に比べて耐候性・耐久性に優れた防液堤設備を得ることができる。
さらに、本発明に係る表面被覆を有する防液堤設備では、液化ガスが漏洩したような場合における断熱材からの入熱による液化ガスの初期蒸発量が、従来のクロロスルフォン化ポリエチレンを塗布した防液堤等の初期蒸発量と略等しい。即ち、本発明に係る表面被覆層の膜厚は、従来のクロロスルフォン化ポリエチレンの膜厚に対して厚いにも拘わらず、前記初期蒸発量に与える影響度が小さい防液堤を得ることができる。この結果、前記表面被覆層の塗布作業を容易に行いつつ前記表面被覆層を有する防液堤等を得ることができる。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明の防液堤設備に形成する表面被覆層の具体例を示す。
尚、以下において、特に断らない限り、「部」は重量部を意味し、「%」は重量%を意味するものとする。
【0061】
(共重合体に係る実施例)
本発明に係る組成物を調製すべく、複数種類の共重合体を製造した。これらの共重合体の組成を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1における1)〜7)は、以下の意味を示す。
1)単位は部
2)NMAA:N−メチロールアクリルアミド
3)NBAA:N−(ブトキシメチル)アクリルアミド
4)TMHDAC:トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド
5)POENPE:ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル
(HLB:1 8.5)
6)触媒:2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)
7)消泡剤:ノプコ267A、サンノプコ(株)製
【0064】
このうち、例えば、必須構成単量体単位1については以下のごとく製造した。内容積500リットルの攪拌機を備えたステンレス製反応器中に、イオン交換水114.2部を入れ内温を80℃に加熱した後、2−エチルヘキシルアクリレート231部、メチルアクリレート9部、スチレン51部、N−メチロールアクリルアミド9部、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB:18.9)系界面活性剤5部、消泡剤0.03部及びイオン交換水100部の混合液と、重合開始剤として2,2’−アゾビス (2−アミジノプロパン)塩酸塩1.2部及びイオン交換水10.8部よりなる水溶液を連続的に添加し、4時間重合を行い、共重合体の水性エマルションを得た。
得られた水性エマルションは、Tg点−58.3℃の共重合体56%からなり、粘度256cP、pH5.7であった。この水性エマルションをNo.1エマルションと称する。
尚、表1には、同様にして得たNo.2エマルション乃至No.6エマルションの組成を示した。
【0065】
(凍結融解安定性)
上記No.1エマルションの400ccをポリエチレン袋に入れ、密閉したのち、恒温恒湿槽に放置し、−10℃で6時間保持し60℃で6時間保持する熱サイクルを8回付与した後、エマルション状態を観察した。その結果、凝集物の発生もなく、粘度290cPと良好であった。
尚、No.2エマルション乃至No.6エマルションについても良好な凍結融解安定性を有していることが確認できた。
【0066】
(共重合体に係る第2の実施例)
表1に示す各種の共重合体の水性エマルションに対し、セメントおよび無機質難燃剤等を加えて8種類の組成物を製造した。これら組成物の組成及び性状を表2に示す。
【0067】
表2における1)〜6)は、以下の意味を示す。
1)単位は部
2)PC:ポルトラントセメント、AC:アルミナセメント
括弧内の数字は、エマルション中の共重合体100部に対する部数
3)Al:水酸化アルミニウム、Sb:三酸化アンチモン
括弧内の数字はエマルション中の共重合体100部に対する部数
4)ミルコン:天然繊維状粘度鉱物
垂れ防止材、昭和鉱業(株)商品名;ミルコン
5)粘度:スラリー粘度、単位はcP
6)PL:ポットライフを意味する。ここでポットライフ(PL)とは、混練りした組成物をポリエチレンカップに取り、20℃の恒温室に放置して静置状態の粘度を測定し、粘度が30,000cP以下となった時間をいう。つまり、ポットライフは、組成物を塗装するに際しての可使時間を示す。
7)固形分が54%のポリ塩化ビニリデンエマルション。
【0068】
表2に示す夫々の組成物の各種物性、及び、当該組成物により形成した表面被覆層の物性を以下のごとく評価した。その評価結果を表3に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
(伸び率及び引張り強度)
まず、表面被覆層の伸び率及び引張り強度を測定した。
測定に際しては、JIS A 6021「アクリルゴムの屋根防水用塗膜剤の試験」に準拠し、無処理において20℃及び−10℃における引張り試験を行い、各温度における伸び率と引張り強度を測定した。試験には、厚さ±0.2mmの塗膜を使用した。
【0072】
(水中浸漬後の膨潤率)
前述の引張り試験で使用した塗膜からダンベル3号の型枠で試験片を打ち抜き、水中に1週間放置したのち、JIS A 6021のアルカリ処理を施し、試験片を取り出した直後の塗膜の長さを測定した。
【0073】
(難燃性)
防液堤設備に使用するコンクリートパネルやウレタンフォーム等の断熱材は、火災時等における延焼の被害を最小限に留めるために一定の難燃性を備えていなければならない。当該難燃性を評価する方法としては、例えば、消防危57条試験方法、あるいは、バーンスルー試験方法等がある。
前記コンクリートパネルや前記ウレタンフォームには、通常、本発明に係る組成物を塗布して表面被覆層を形成するので、上記試験も表面被覆層を形成した状態で行う必要がある。
本実施例では、特に、ウレタンフォームに表面被覆層を形成した場合の上記試験結果を示すこととする。つまり、ウレタンフォームについて上記試験をクリアできるものであれば、ウレタンフォームよりも難燃性を有するコンクリートパネルについての試験においては良好な略確実に良好な試験結果を得ることができるからである。
【0074】
前者の消防危57条試験方法は、消防法 危険物関連通達「屋外貯蔵タンクの保温剤としてのウレタンフォームの難燃性の判断基準」に係る試験であり、主に、屋外貯蔵タンクの断熱材として用いるウレタンフォームの難燃性を判断するために設けられた基準である。
本試験方法は、例えば、幅50mm×長さ150mm×厚さ13mmの試験体の端部をガスバーナーによって60秒間加熱したのちバーナーを除去し、加熱開始から試験体の火が消えるまでの時間と、試験体が燃焼した部分のうち、燃焼長さが最も長い部分の長さを測定するものである。そして、当該試験を五つの試験体について行い、その何れもが、燃焼時間が120秒以内であって、且つ、燃焼長さが60mm以下のものを合格とする。
表3に示すごとく、本実施例に係る組成物で構成した表面被覆層は、何れも上記消防危57条試験に合格するものであった。
【0075】
一方、後者のバーンスルー試験方法も、ウレタンフォーム等の難燃性を判断するための試験方法である。
この試験では、例えば、縦150mm×横150mm×厚さ25mmの寸法を有する試験体の片面に濾紙を貼付し、これと反対の面から1,080℃の炎で加熱する。そして、加熱開始から、炎が試験体を貫通して濾紙が燃焼開始するまでの時間を測定する。
当該試験においては、加熱中の試験体からの発煙の状態や、溶融変形・燃焼状況・濾紙の変色状況・炭化状態・発火状態等を観察して評価する。
【0076】
表3には、本発明の組成物によって得た表面被覆層に係る消防危57条試験の結果を示すが、何れの組成物も合格の判定を得ることができた。
尚、本実施例では、バーンスルー試験に係る具体的な結果は掲載していないが、表3に示した組成物のうち、No.8の組成物が特に良好な結果を示した。
【0077】
(耐候性)
JIS A 6021に準拠して、JIS A 1415による紫外線処理を1000時間行った後の塗膜外観を目視観察した。その結果、塗膜に変化がみられなかったものを〇印で評価し、塗膜に僅かな変色が見られたものを△印で評価し、塗膜にひび割れ及び変色が見られたものを×印で評価することとした。
【0078】
(成膜性)
300mm×300mm×3mmのスレート板にエポキシ系プライマーを塗布し乾燥させた表面に、本発明に係る組成物を2kg/m2 になる様に吹き付け、20℃、湿度60%の雰囲気中で加重テストを実施して塗膜の硬化時間を測定した。当該加重テストは、塗膜面に鉛筆を立てることによって1kgの加重を15秒間加え、塗膜面に鉛筆跡が殆ど付かなくなるまでの時間を測定するものである。
【0079】
(初期蒸発速度)
表4には、本発明の組成物による表面被覆層を備えた断熱パネルにつき、LNG初期蒸発速度を測定した結果を示す。
LNG初期蒸発速度は、50mmの厚みを有する試験体の表面に液化窒素LN2を投入し 、その後の経過時間とLN2の重量変化を測定して、LN2の初期蒸発速度を求める。この結果を別途換算してLNGの初期蒸発速度を得るのである。表4には、従来の表面被覆層を有する場合と、本発明に係る表面被覆層を有する場合の結果を示す。本発明に係るものについては、さらに二種類の膜厚を形成した場合についての試験結果を示した。
当該結果を一見すると、本発明の表面被覆層に係る試験結果と、従来の表面被覆層に係る試験結果とでは、特段の差異がないようにみえる。しかし、従来の表面被覆層の膜厚が約200μであるのに対して、本発明の表面被覆層の膜厚は500μあるいは1mmである。これは、従来の表面被覆層では、この程度の厚みに留めておかないと、適切な成膜性やひび割れ追従性を得られないためである。この点、本発明の組成物を用いる場合には、多少厚く塗布した場合でも、良好な成膜性やひび割れ追従性を得ることができる。つまり、本発明の組成物では、作業性においても優れた特性を有している。
以上のごとく、何れの組成物も良好な性能を有していることが確認できた。
【0080】
【表4】
【0081】
(比較例)
表5に、本発明の組成物と比較するために生成した2種類の組成物の組成および性状を示すと共に、表6には、これら組成物の評価結果を示す。評価方法は前述のものと同様に行った。以下これらの組成物を比較例1〜2と称する。
【0082】
【表5】
【0083】
尚、表5における1)〜7)は、以下の意味を示す。
1)単位は部
2)PC:ポルトラントセメント、AC:アルミナセメント
括弧内の数字は、エマルション中の共重合体100部に対する部数
3)Al:水酸化アルミニウム、Sb:三酸化アンチモン
括弧内の数字はエマルション中の共重合体100部に対する部数
4)ミルコン:天然繊維状粘度鉱物
垂れ防止材、昭和鉱業(株)商品名;ミルコン
5)粘度:スラリー粘度、単位はcP
6)PL:ポットライフ
7)市販品1:エチレン−酢ビエマルション、日本合成化学工業(株)商品名;ハイフレック#1000(固形分50%)
【0084】
【表6】
【0085】
〈比較例1〉
比較例1は、市販のエチレン−酢ビ系エマルションを使用した例である。比較例1により得られた塗膜は、難燃性・低温の伸び・耐水性・耐アルカリ性に劣るものであった。
【0086】
〈比較例2〉
比較例2は、共重合体が(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルを共重合したものでなく、本発明に係る組成物に対して、無機質水硬性物質及び無機質難燃材の割合を僅かに少なくした例である。比較例2により得た塗膜は、難燃性・強度・伸び・耐水性・耐アルカリ性に劣るものであった。
【0087】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防液堤を示す説明図
【符号の説明】
1 防液堤
3 低温液化ガス貯蔵タンク
Claims (5)
- 低温液化ガス貯蔵タンクに係る防液堤設備に、
(a)成分 炭素数4〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと、
(b)成分 (メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチルのうち少なくとも何れか一方と、
(c)成分 N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドのうち少なくとも何れか一方とを必須構成単量体単位とする共重合体の水性エマルション、および、
無機質水硬化性物質、並びに、
金属水酸化物・金属酸化物・金属塩から選択される無機質難燃剤であって、その配合割合が、前記共重合体100重量部に対して80〜200重量部の無機質難燃剤からなる組成物を塗工して表面被覆層を形成する防液堤設備の表面被覆方法。 - 前記共重合体の共重合割合を、
前記(a)成分を20〜90重量%とし、
前記(b)成分を0.1〜8重量%とし、
前記(c)成分を0.01〜30重量%としてある請求項1に記載の防液堤設備の表面被覆方法。 - 前記無機質難燃剤として、
金属水酸化物を用いる場合には、水酸化アルミニウム、もしくは、水酸化マグネシウムを用い、
金属酸化物を用いる場合には、三酸化アンチモン、もしくは、五酸化アンチモンを用いる請求項1または2に記載の防液堤設備の表面被覆方法。 - 前記組成物が、塩化ビニリデンを構成単量体単位とする共重合体をさらに含有するものである請求項1〜3の何れかに記載の防液堤設備の表面被覆方法。
- 請求項1〜4の何れかの方法により形成された表面被覆層を有する防液堤設備。
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