JP3603742B2 - 鉄筋コンクリート柱の解析方法、鉄筋コンクリート柱の解析システム、および鉄筋コンクリート柱の解析方法を実行するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート柱の解析方法、解析システム、および、この解析方法を実行するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート柱は、鉄筋として、その長手方向に延びる主筋と、長手方向に対して垂直に延びる帯筋とを含んでいる。このため、鉄筋コンクリート柱に圧縮荷重が作用した場合、コンクリートはポアソン効果によって横方向に膨張しようとするが、この膨張は帯筋により拘束される。その結果、コンクリート中に3軸応力状態が形成され、鉄筋コンクリート柱の圧縮強度は向上する。すなわち、帯筋がコンクリートを拘束する効果によって、鉄筋コンクリート柱の圧縮強度が向上するのである。このため、鉄筋コンクリート柱について強度解析等を行う場合には、帯筋による拘束効果を考慮して解析計算を行う必要がある。
【0003】
これに関して、本願出願人は、特開平11−352027号公報において、鉄筋コンクリート部材を平面要素にモデル化して解析する二次元解析にあたり、部材の厚さ方向の鉄筋即ち帯筋とコンクリートとの応力の釣り合い式から、厚さ方向の等価剛性を求め、この等価剛性を用いて有限解析法解析を行う解析方法を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鉄筋コンクリート柱のような線状の部材については、単一の線材要素としてモデル化すれば、構造物全体での要素数が少なくなって、構造解析計算に要する手間は格段に軽減される。しかしながら、上記従来の方法は、コンクリート部材を多数の平面要素にモデル化して有限要素法解析を行うものであり、鉄筋コンクリート柱についても、単一の線材要素としてではなく、複数の平面要素からなる部材としてモデル化することになる。この点、上記従来の解析方法は、鉄筋コンクリート柱の解析を行ううえで必ずしも最適なものではなかったことになる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、鉄筋コンクリート柱の解析計算を行うにあたり、鉄筋コンクリート柱を単一の線材要素としてモデル化しながら、帯筋による拘束効果を考慮した3軸方向の応力成分を計算することが可能な鉄筋コンクリート柱の解析方法、解析システム、およびこの解析方法を実行するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の鉄筋コンクリート柱の解析方法は、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向に対して垂直な2方向に延びる帯筋と、コンクリートとの間の応力およびひずみに関する、前記2方向の夫々における釣り合い関係に基づいて、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向のひずみから前記コンクリートに生ずる3軸方向の応力成分を求めることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、帯筋とコンクリートとの間の応力およびひずみに関する釣り合い関係を用いることで、帯筋がコンクリートの変形を拘束する効果を考慮して、コンクリートに生ずる3方向の応力成分を正確に計算することができる。また、応力およびひずみの釣り合い関係を用いることで、鉄筋コンクリートを要素に分割することなく、単一の線状要素として解析計算を行うことができる。
【0008】
ところで、一般に、3軸方向の応力成分が求められると、3軸応力下での周知の破壊理論による破壊条件に基づいて、部材の強度を求めることができる。したがって、請求項2に記載するように、前記求められた3方向の応力成分に基づいて前記鉄筋コンクリート柱の強度を求めることにより、鉄筋コンクリート柱の破壊強度を、帯筋による拘束効果を考慮して正確に求めることができる。
【0009】
なお、請求項3および4に係る発明は鉄筋コンクリート柱の解析システムに係るものである。また、請求項5に記載の発明は請求項1または2に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体に係るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本実施形態では、鉄筋コンクリート柱を線材要素としてモデル化し、帯筋がコンクリートを拘束する効果を考慮してコンクリートに生ずる3軸方向の応力を計算する。そして、この3軸方向の応力に基づいて得られた鉄筋コンクリート柱の圧縮力と変形量との関係を用いて、鉄筋コンクリート柱で構成された建物の鉄筋フレーム解析を行う。なお、フレーム解析とは、建物を構成する柱や梁などの部材をそれぞれ1本の線材としてモデル化し、構造物に与えられた荷重に対する部材の変形や部材に生ずる力を計算するものである。
【0011】
図1乃至図3は、それぞれ、解析対象である鉄筋コンクリート柱10の横断面図、縦断面図、および斜視図である。図1および図2に示す如く、鉄筋コンクリート柱10は、コンクリート12に埋設された主筋14および帯筋16を備えている。本実施形態では、図1乃至図3に示す如く、主筋14がx軸方向に延び、また、帯筋16がy軸またはz軸方向に延びるように、x,y,zの3軸を設定して解析計算を行う。以下に示す数式において、コンクリート12の応力、ひずみ、および縦弾性係数を、それぞれ、σ,ε,Eで表し、各記号に付した添字(x,y,またはz)でそれらの方向を表すものとする。
【0012】
一般には、単純な線材要素では、軸方向(x方向)の応力−ひずみ関係は次式(1)で表される。
【数1】
【0013】
これに対して、上記従来技術に関して述べたように、鉄筋コンクリート柱10に圧縮荷重が作用すると、そのポアソン効果による横方向への膨張が帯筋16によって拘束され、鉄筋コンクリート柱10は3軸応力状態となる。このため、式(1)をそのまま用いたのでは、鉄筋コンクリート柱10の解析を正確に行うことはできない。以下、鉄筋コンクリート柱10に適用することが可能な式(1)に相当する関係式を導出する。
【0014】
材料力学理論より3軸応力状態でのひずみ−応力関係式は式(2)〜(4)で与えられる。
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、νst(s,t=x,y,z)はs−t平面内のポアソン比、すなわち、s方向に応力が作用した場合に、この応力によりs方向に生じるひずみに対するt方向に生じるひずみの比である。
【0015】
また、y方向の帯筋16について、鉄筋比をρSyi、剛性をESyi、鉄筋の応力をσSyiとし、同様に、z方向の帯筋について、鉄筋比をρSzi、剛性をESzi、鉄筋の応力をσSziとする。ただし、添字i(=1,2,・・・)は、y,z各方向の複数の帯筋16に付けた番号である。この場合、y方向およびz方向のそれぞれについて、コンクリート12に生ずる応力と、帯筋16に生ずる応力との釣り合いより、次式(5),(6)が成立する。
【0016】
【数5】
【数6】
ただし、m,nはそれぞれy方向およびz方向の帯筋16の本数である。
【0017】
さらに、y方向およびz方向におけるひずみは、コンクリート12と帯筋16とで等しいことから、各鉄筋が弾性範囲にある場合、ひずみεyおよびεzは次式(7),(8)で与えられる。
【数7】
【数8】
【0018】
式(7),(8)および式(5),(6)からσSyi,σSziを消去することにより次式(9),(10)が得られる。
【数9】
【数10】
【0019】
また、式(3),(4)を式(9),(10)に代入してεy,εzを消去することにより次式(11),(12)が得られる。
【数11】
【数12】
【0020】
式(11),(12)を連立させてσy,σzについて解くことにより次式(13),(14)が得られる。
【数13】
【数14】
【0021】
ただし、Ey *,Ez *は次式(15),(16)で表される等価剛性である。
【数15】
【数16】
【0022】
式(13),(14)の分母をEyEzで除して、ny=Ey */Ey,nz=Ez */Ezとおくと、次式(17)、(18)が得られる。
【数17】
【数18】
【0023】
式(17),(18)を式(2)に代入してσy,σzを消去することにより次式(19)が得られる。
【数19】
【0024】
よって、コンクリート12のx方向(つまり軸方向)の応力σxとひずみεxとの間の関係式として次式(20)が得られる。
【数20】
【0025】
また、σy,σzについても式(20)を式(17),(18)へ代入することにより、ひずみεxに対する関係式を得ることができる。そして、これらの関係式を上記式(1)に代えて用いることで、帯筋16による拘束効果を考慮した3軸応力下での解析を行うことができる。なお、帯筋16が存在しない場合、
ρSyi=ρSzi=0であるから、Ey *=Ez *=0となり、したがって、ny=nz=0となる。この場合、式(20)は式(1)に一致する。
【0026】
上記の如く、本実施形態では、コンクリート12の軸方向の歪(つまり、鉄筋コンクリート柱10の軸方向の歪)εxから、コンクリート12に生ずる3方向の応力σx,σy,σzを算出することができる。その際、εxからσx,σy,σzを算出するための関係式(20),(17),(18)は、帯筋16とコンクリート12との応力およびひずみの釣り合い式(5),(6),(7),(8)に基づいて得られたものである。したがって、算出された応力σx,σy,σzは、帯筋16によるコンクリート12の拘束効果が考慮されたものとなり、実際の応力に近い正確なσx,σy,σzを求めることができる。
【0027】
また、上記式(20),(17),(18)およびny,nz,Ey *,Ez *の定義からわかるように、各帯筋16について鉄筋比ρSyi,ρSziおよび剛性ESyi,ES ziを与えるだけで、式(20),(17),(18)によって帯筋16の拘束効果を考慮した応力σx,σy,σzを算出することができる。一般に、帯筋16は同じ鋼材から構成されるので、各帯筋16の縦弾性係数ESyi,ESziは互いに等しい。この縦弾性係数をESとおくと、式(15),(16)で定義されるEy *,Ez *は次式(21),(22)で表すことができる。
【0028】
【数21】
【数22】
式(21),(22)において、
【数23】
【数24】
は、それぞれ、y方向およびz方向の帯筋16の総断面積の、鉄筋コンクリート柱10の縦断面積に対する比である。したがって、y,z各方向の帯筋16の総断面積を与えるだけで、式(21),(22)からEy *,Ez *を求め、このEy *,Ez *を用いて応力σx,σy,σzを算出することができる。
【0029】
このように、本実施形態では、帯筋16の総断面積を与えることのみで、その拘束効果を考慮した応力σx,σy,σzの計算を簡単に行うことが可能となっている。
【0030】
ところで、nyおよびnzの定義からわかるようにnyおよびnzは共に1より小さく、また、ポアソン比νst(s,t=x,y,z)も1より小さい。したがって、式(17),(18)より、σxが正であれば、σy,σzも共に正である。つまり、x方向に圧縮応力が作用すると、y方向およびz方向にも圧縮応力が作用する3軸応力状態となり、一軸応力状態に比べて大幅な強度および変形能力の向上を期待することができる。
【0031】
図4は、鉄筋コンクリート柱10の圧縮変形と圧縮力との関係(以下、圧縮力−変形関係という)を、▲1▼帯筋16による拘束効果がある場合と、▲2▼帯筋16による拘束効果がない場合について示す。一般に、フレーム解析では、図4に示すような圧縮−変形関係を予め想定し、想定した圧縮−変形関係に基づいて解析計算を行う。
【0032】
図4に示すように、帯筋16による拘束効果がある場合(曲線▲2▼)には、3軸応力状態となることによって、帯筋16による拘束効果がない場合(曲線▲1▼)に比べて、大きな強度および変形能力が得られることは上記した通りである。したがって、建物の構造解析において帯筋16による拘束効果を考慮しない場合には、安全を見て図4の曲線▲1▼のような関係に基づいて解析計算を行う必要があるため、鉄筋コンクリート柱10の強度および変形能力を不当に低く見積もってしまうという問題がある。また、実験データ等を用いて帯筋16による拘束効果を予測することも考えられるが、帯筋16による強度向上や変形能力向上の度合いは帯筋の量や作用する荷重により変動するので、正確な予測を行うことは困難である。このため、強度向上等の度合いを大きく見積もり過ぎてしまうおそれがある。
【0033】
これに対して、本実施形態では、各変形量について上記式(20),(17),(18)で計算される3軸応力下での各方向の応力σx,σy,σzを用いることにより、3軸応力下での周知の破壊理論による破壊条件に基づいて、図4の曲線▲2▼に示すような変形―圧縮力関係を正確に求めることができる。そして、求められた変形−圧縮力関係に基づいて、建物のフレーム解析を行うことで、各部材の変形や荷重を正確に計算することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート柱10を単一の線材としてモデル化しているため、上記した従来技術のように、鉄筋コンクリート柱10を多数の平面要素でモデル化することは不要である。このため、従来技術の方法に比べて、鉄筋コンクリート柱からなる構造の解析を容易に行うことが可能となっている。
【0035】
図5は、上記の手法により建物のフレーム解析を行う構造解析システム50の構成図である。図5に示すように、構造解析システム50は、コンピュータ52と、コンピュータ52に内蔵または外部接続された外部記憶装置(ハードディスク装置、フロッピーディスク装置、CD−ROM装置等)54とを備えている。
【0036】
図6は、構造解析システム50のコンピュータ52が実行する処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、コンピュータ52がハードディスク、フロッピーディスク、CD−ROM等の記録媒体に記録されたからプログラムを読み込んで実行することで実現される。図6に示すように、先ず、各鉄筋コンクリート柱のy,z各方向の帯筋の量(総断面積)、帯筋の弾性係数、コンクリートの弾性係数、鉄筋コンクリート柱の寸法、外部荷重等のパラメータを入力し(S100)、各鉄筋コンクリート柱について、ひずみεxと応力σx,σy,σzとの関係式(20),(17),(18)を求める(具体的には、式(20),(17,(18)の右辺のεx,σxの係数を求める)(S102)。そして、求められた関係式より各鉄筋コンクリート柱の圧縮力―変形関係を計算し(S104)、この関係を用いてフレーム解析を行う(S106)。
【0037】
なお、上記の説明では、フレーム解析に先立って圧縮歪εxと3方向応力σx,σy,σzとの応力―ひずみ関係式(20),(17),(18)から圧縮力―変形関係を求め、この関係に基づいてフレーム解析を行うものとしたが、これに限らず、フレーム解析の実行中に、各時点で各鉄筋コンクリート柱に作用する荷重から、応力―ひずみ関係式(20),(17),(18)を用いてその時点での変形量および強度を計算するようにしてもよい。
【0038】
なお、上記した本発明の手法は、フレーム解析に限らず、例えば、建物の有限要素解析を行う場合にも柱や梁等の線材要素に対して適用することができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、帯筋とコンクリートとの間の応力およびひずみに関する釣り合い関係を用いることで、帯筋がコンクリートの変形を拘束する効果を考慮して、コンクリートに生ずる3方向の応力成分を正確に計算することができる。また、上記の釣り合い関係を用いることで、鉄筋コンクリートを要素に分割することなく、単一の線状要素として解析計算を行うことができる。また、求められた3軸方向の応力成分に基づいた強度解析を行うことで、帯筋による拘束効果が考慮された鉄筋コンクリート柱の強度を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における解析対象である鉄筋コンクリート柱の横断面図である。
【図2】図1に示す鉄筋コンクリート柱の縦断面図である。
【図3】図1に示す鉄筋コンクリート柱の斜視図である。
【図4】鉄筋コンクリート柱の圧縮変形と圧縮力との関係を示す図である。
【図5】本発明の手法により建物のフレーム解析を行う構造解析システムの構成図である。
【図6】構造解析システムが備えるコンピュータが実行する処理の流れを表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 鉄筋コンクリート柱
12 コンクリート
16 帯筋
50 構造解析システム
Claims (5)
- 鉄筋コンクリート柱の解析方法であって、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向に対して垂直な2方向に延びる帯筋と、コンクリートとの間の応力およびひずみに関する、前記2方向の夫々における釣り合い関係に基づいて、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向のひずみから前記コンクリートに生ずる3軸方向の応力成分を求めることを特徴とする鉄筋コンクリート柱の解析方法。
- 前記求められた3軸方向の応力成分に基づいて前記鉄筋コンクリート柱の強度を求めることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート柱の解析方法。
- 鉄筋コンクリート柱の解析システムであって、
前記鉄筋コンクリート柱の帯筋の量、当該帯筋の弾性係数、コンクリートの弾性係数、前記鉄筋コンクリート柱の寸法、及び、外部荷重を含むパラメータが入力される入力と、
前記入力されたパラメータを用いて、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向に対して垂直な2方向に延びる帯筋と、コンクリートとの間の応力およびひずみに関する、前記2方向の夫々における釣り合い関係式を求める手段と、
前記求められた釣り合い関係式に基づいて、前記鉄筋コンクリート柱の長手方向のひずみから前記コンクリートに生ずる3軸方向の応力成分を求める手段と、を備えることを特徴とする鉄筋コンクリート柱の解析システム。 - 前記求められた3軸方向の応力成分に基づいて前記鉄筋コンクリート柱の強度を求める手段を更に備えることを特徴とする請求項3記載の鉄筋コンクリート柱の解析システム。
- 請求項1または2記載の方法をコンピュータにより実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。
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