JP3605374B2 - 樹脂製薄膜成形用キャスティング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状またはシート状の樹脂製薄膜を成形するためのもので、例えば二軸延伸フィルム機,無延伸フィルム機,シート機等として用いて好適の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図21および図22はそれぞれ従来の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図および正面図である。なお、図22では、従来装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
これらの図21および図22に示すように、従来装置においては、押出機(図示省略)により溶融された樹脂をフィルム状またはシート状の薄膜102として押し出すTダイ101と、このTダイ101から押し出された薄膜102を外周面上に引き取って冷却して送り出すキャスティングロール(冷却ロール)103と、薄膜102をキャスティングロール103上に安定して密着させるための吸引チャンバ(真空ボックス)104とがそなえられている。
【0003】
ここで、キャスティングロール103は、ロール支軸106によりサイドフレーム107に対して回転可能に支持されている。
吸引チャンバ104は、Tダイ101の一方の側面に固定的に取り付けられている。また、吸引チャンバ104には真空ポンプ105が接続され、この真空ポンプ105を作動させることにより、薄膜102とキャスティングロール103との間の空気が吸引チャンバ104の開口部104aを通じて吸引されるように構成されている。
【0004】
なお、開口部104aは、薄膜102がキャスティングロール103の外周面に密着を開始する部分の直近において、薄膜102の全幅に亘って形成されている。また、吸引チャンバ104とキャスティングロール103との間には、シール隙間104bが形成されている。このシール隙間104bの大きさは、キャスティングロール103の回転を許容しながら、薄膜102とキャスティングロール103との間の密着部において所要の吸引圧(減圧レベル)を確保できるように設定されている。図21および図22において、符号108は本装置を移動させる際に用いられる車輪を示している。
【0005】
上述の構成により、図示省略の押出機により溶融された樹脂は、Tダイ101からフィルム状またはシート状の薄膜102として押し出され、キャスティングロール103の外周面上に引き取られ冷却されて成形される。
このとき、吸引チャンバ104内の空気を真空ポンプ105で吸引することにより、吸引チャンバ104の開口部104aから、薄膜102とキャスティングロール103との間の密着部の空気が吸引される。これにより、その密着部が減圧されて、薄膜102とキャスティングロール103との間に巻き込まれる空気が排除され、溶融樹脂からなる薄膜102をキャスティングロール103に安定的に密着させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、樹脂の種類によっては、Tダイ101とキャスティングロール103との隙間が小さい条件では溶融樹脂の伸長による配向が緩和されずにキャスティングロール103で冷却固化されるため、所要のフィルム特性(薄膜特性)が得られない。また、Tダイ101とキャスティングロール103との隙間が小さい条件では、Tダイ101の出口で生じるミクロな表面凹凸が伸長区間で緩和されずに、冷却固化後、表面荒れとして残り、フィルム品質(薄膜品質)を低下させることになる。
【0007】
そこで、所要のフィルム特性(薄膜特性)を得るべく樹脂の種類によってTダイ101とキャスティングロール103との隙間を変化させることが考えられるが、図21および図22に示す従来装置では、吸引チャンバ104がTダイ101に対して固定されているため、Tダイ101とキャスティングロール103との隙間を変化させることができない。
【0008】
例えば、図21および図22に示す従来装置において、キャスティングロール103を下げて、Tダイ101とキャスティングロール103との隙間を大きくしようとしても、吸引チャンバ104とキャスティングロール103との間のシール隙間104bが拡がってしまい、所要の吸引圧が得られず、薄膜102とキャスティングロール103との間に巻き込まれる空気を排除できず、薄膜102をキャスティングロール103に安定的に密着させることができなくなる。
【0009】
また、実験によれば、上述のような吸引チャンバ104を用いたキャスティング装置により薄膜102を成形する場合、材料樹脂の種類,溶融時の粘度,薄膜102の厚さ,成形速度等の条件に応じて、Tダイ101から吐出された直後の薄膜状の溶融樹脂とキャスティングロール103の外周面と吸引チャンバ104の先端とから形成される真空空間の形状や、その真空空間への外気の流入の有無が、薄膜102のキャスティングロール103への安定密着に影響を及ぼす。特に、比較的伸長粘度の低い樹脂では、前記真空空間への外気の流入状況が薄膜102のキャスティングロール103への安定密着に影響を及ぼしている。
【0010】
このために、薄膜102が振動(揺動)したり吸引チャンバ104内に引き込まれたりする不具合が生じ、特に高速で薄膜102の成形を行なう場合には、その影響が大きくなる。例えば、図23に、図21のS−S線に沿う断面における外気の流入状況(点線矢印が気流を示す)を示すが、この図23に示すように、B2部での動圧およびB1部での吸い込みによる渦の形成により、薄膜102が振動(揺動)したり吸引チャンバ104内に引き込まれたりして、薄膜成形の高速化が阻害されることになる。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、動圧や渦の形成を抑制できるようにして、薄膜の振動(揺動)や吸引チャンバへの引込みを抑制し、いかなる樹脂に対しても安定した薄膜形成を行なえ、所要の薄膜特性を確保して樹脂製薄膜の品質の向上をはかった、樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置(請求項1)は、溶融樹脂を薄膜として押し出すダイと、このダイから押し出された薄膜を外周面上に引き取って冷却して送り出す冷却ロールと、薄膜を冷却ロール上に密着させるべく薄膜と冷却ロールとの間の空気を吸引する吸引チャンバとをそなえてなるものにおいて、冷却ロールの幅方向に沿って開口する吸引チャンバの吸引開口部の端部を遮蔽しうる遮蔽板を、薄膜の幅方向に移動可能にそなえたことを特徴としている。このとき、吸引チャンバの前記吸引開口部の端部側方から空気を吸引する吸引ノズルをそなえてもよい(請求項3)。
【0013】
また、本発明の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置(請求項2)は、上述したダイ,冷却ロールおよび吸引チャンバをそなえてなるものにおいて、吸引チャンバの前記吸引開口部の端部側方から空気を吸引する吸引ノズルをそなえたことを特徴としている。
なお、上述した各樹脂製薄膜成形用キャスティング装置において、吸引チャンバを、ダイとは独立に且つ冷却ロールとの間に所要のシール隙間をあけた状態で設置してもよい(請求項4)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔1〕第1実施形態の説明
図1〜図10は本発明の第1実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を示すもので、図1および図2はそれぞれその模式的な側面図および正面図、図3はその弾性シール部材および遮蔽板の構成および取付状態を示す斜視図、図4はその弾性シール部材の構成および取付状態を示す側断面図、図5はその弾性シール部材の実装状態を示す側断面図、図6は図5に示すものとはサイズの異なる弾性シール部材を実装した状態を示す側断面図、図7および図8はいずれもその操作例を説明するための模式的な側面図、図9は図1のP−P線に沿う断面における外気の流入状況を示す図、図10(a)〜図10(c)はいずれも第1実施形態における弾性シール部材の変形例の構成および取付状態を示す側断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、第1実施形態のキャスティング装置も、押出機(図示省略)により溶融された樹脂をフィルム状またはシート状の薄膜2として押し出すTダイ(ダイ)1と、このTダイ1から押し出された薄膜2を外周面上に引き取って冷却して送り出すキャスティングロール(冷却ロール)3と、薄膜2をキャスティングロール3上に安定して密着させるべく薄膜2とキャスティングロール3との間の空気を吸引する吸引チャンバ40とをそなえて構成されている。また、キャスティングロール3は、ロール支軸16によりサイドフレーム17に対して回転可能に支持されており、サイドフレーム17の下部には、本装置を水平方向へ移動させる際に用いられる車輪18が装着されている。
【0016】
本実施形態において、吸引チャンバ40はTダイ1とは独立に設けられている。また、吸引チャンバ40は、キャスティングロール3の外周面に沿うように形成され、その吸引チャンバ40とキャスティングロール3の外周面との間に所要のシール隙間が形成されるようになっている。このシール隙間の大きさ(間隔)は、キャスティングロール3の回転を許容しながら、薄膜2とキャスティングロール3との間の密着部において所要の吸引圧(減圧レベル)を確保できるように設定されている。
【0017】
吸引チャンバ40は、図3,図5および図6に示すように、上壁41a,41b,後壁41cおよび左右の側壁41dからなる筐体41と、後壁41cおよび左右の側壁41dの外面下部にそれぞれ固設されたラビリンスパッキン42および43とから構成されている。なお、ラビリンスパッキン43は左右の側壁41dにそれぞれ固設されている。
【0018】
そして、吸引チャンバ40の前方(図5,図6中の左方)は開口していて、吸引チャンバ40の上壁41aとキャスティングロール3の外周面との間に吸引口(吸引開口部)40aが形成されている。また、筐体41は、吸引口40aを除いて下方側からキャスティングロール3の外周面により閉塞され、筐体41とキャスティングロール3との間に吸引室40bが形成されている。
【0019】
ラビリンスパッキン42および43は、僅かの間隔を隔ててキャスティングロール3の外周面に対抗しており、後壁41cおよび左右の側壁41dの下部からの空気の流入を小さく抑えている。なお、ラビリンスパッキン42,43に代えて、ゴムシールやフェルトシール等を用いることもできる。
【0020】
このように構成された吸引チャンバ40(吸引室40b)には、上壁41bに固設された吸引用ダクト60を介して真空ポンプ5が接続され、この真空ポンプ5を作動させることにより、薄膜2とキャスティングロール3との間の空気が吸引チャンバ40の吸引口40aを通じて吸引されるように構成されている。また、吸引口40aは、薄膜2がキャスティングロール3の外周面に密着を開始する部分の直近において、薄膜2の全幅に亘って形成されている。
【0021】
そして、所要のシール隙間を保持しながら吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って移動させる周方向移動機構として、駆動部材110が用いられている。この駆動部材110は、その基端側をキャスティングロール3のロール支軸(回転軸)16周り(図1中の矢印A方向)に回動可能にロール支軸16と同軸的に軸支されるとともに先端側に吸引チャンバ40を固定されている。
【0022】
また、駆動部材110には、キャスティングロール3の半径方向に沿って、2つの長孔110aが形成され、これらの長孔110aを貫通する支持ボルト11の締め付け位置を調整することにより、吸引チャンバ40は、駆動部材110に対して、キャスティングロール3の半径方向に移動可能に、つまり、キャスティングロール3の外周面と吸引チャンバ40との間の所要のシール隙間を調整可能に取り付けられている。上述した長孔110aおよび支持ボルト11により半径方向移動機構が構成されている。なお、図2では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
【0023】
さらに、Tダイ1と吸引チャンバ40との間には弾性シール部材50が介装されており、この弾性シール部材50によりTダイ1と吸引チャンバ40との間の隙間がシールされている。
この弾性シール部材50は、薄膜2の全幅を超える幅に亘って配置されるもので、図3〜図6に示すように、弾性シール本体51と取付金具(取付具)52および53とから構成されている。
【0024】
ここで、弾性シール本体51は、耐熱性に優れ反発弾性が大きく圧縮残留歪みの少ないポリイミドフォーム等の発泡材により、断面半円形の棒状に形成され、その前表面をアルミ箔で被覆したガラスクロス(アルミ箔とガラスクロスとを接着剤により一体的に接着したもの)で覆われている。
この弾性シール本体51は、その下部を前後から取付金具52および53の立ち上がり部52bおよび53bで挟持され、これらの取付金具52および53を取付ボルト55により吸引チャンバ40の上壁41aに対して締め付けて固定することにより、吸引チャンバ40に対して固定されている。
【0025】
そして、図5および図6に示すように、弾性シール部材50は、弾性シール本体51をTダイ1に対し弾性力をもって押圧接触させることによりTダイ1と吸引チャンバ40との間を閉塞している。
取付金具53は、取付金具52上に載る形で配置され、取付金具52側に形成された長孔52aと取付金具53側に形成されたボルト孔53aとを整合させた状態で、これらの長孔52aとボルト孔53aとに、ワッシャ54を介して取付ボルト55を貫通させて吸引チャンバ40の上壁41aに対して締め付けることにより、取付金具52および53が一体的に固定される。図4に示すように、取付ボルト55と螺合する上壁41a側の雌ネジは、裏板41eによって盲ネジとして構成されている。
【0026】
長孔52aは、図6に示すように、大きさの異なる弾性シール本体51を吸引チャンバ40に取り付けるべく取付金具53の位置を変更できるようにするために形成されている。また、長孔53aは、取付金具52側の長孔52aと協働して、吸引チャンバ40に対する弾性シール部材50の取付位置を調整できるようにするために形成されており、図5や図6に実線で示す位置から、図5や図6に一点鎖線A3で示す位置に弾性シール部材50を移動して取り付けることも可能である。
【0027】
なお、図1,図5および図7では、第1実施形態の装置において、例えば薄膜(フィルム,シート)2が薄いため、その薄膜2を吸引チャンバ40により吸引する力が比較的小さくて十分で、Tダイ1とキャスティングロール3との間の距離を小さく設定した状態が示されている。図6および図8では、第1実施形態の装置において、例えば薄膜(フィルム,シート)2が厚いため、その薄膜2を吸引チャンバ40により吸引する力を比較的大きくする必要があり、Tダイ1とキャスティングロール3との間の距離を大きく設定した状態が示されている。
【0028】
さらに、第1実施形態のキャスティング装置では、図1および図3に示すように、冷却ロール3の幅方向に沿って開口する吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aの端部に、その端部開口を遮蔽して端部からの吸い込みを抑制するための遮蔽板160が、薄膜2の幅方向に移動可能に取り付けられている。なお、図2,図7および図8において、遮蔽板160の図示は省略されている。
【0029】
つまり、図3に示すように、遮蔽板160には、長孔160aが形成されており、この長孔160aを貫通し且つワッシャ161を介し吸引チャンバ40の上壁41aに対して締め付けられる取付ボルト162により、遮蔽板160は、吸引チャンバ40に取り付けられている。遮蔽板160は、その長孔160により薄膜2の幅方向に移動可能で、吸引チャンバ40の吸引口40aの端部の遮蔽量を調整できるようになっている。なお、図3では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
【0030】
次に、上述のごとく構成された本発明の第1実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置の動作について説明する。
図示省略の押出機により溶融された樹脂は、Tダイ1からフィルム状またはシート状の薄膜2として押し出され、キャスティングロール3の外周面上に引き取られ冷却されて成形される。
【0031】
このとき、吸引チャンバ40内の空気を真空ポンプ5で吸引することにより、吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aから、薄膜2とキャスティングロール3との間の密着部の空気が吸引される。これにより、その密着部近傍の空間が減圧されて、薄膜2とキャスティングロール3との間に巻き込まれる空気が排除され、溶融樹脂からなる薄膜2をキャスティングロール3に安定的に密着させることができる。
【0032】
ここで、所要のフィルム特性(薄膜特性)を得るべく樹脂の種類によってTダイ1とキャスティングロール3との隙間を変化させる場合について考える。例えば、キャスティングロール3を後退させる(下げる)ことにより、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間(間隔)を大きくすることができる。しかし、従来装置では、キャスティングロール3を後退させただけでは、薄膜2と吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aとの間隔が大きくなるほか、吸引チャンバ40とキャスティングロール3との間のシール隙間も大きくなり、薄膜2とキャスティングロール3との間の密着部近傍の空間(減圧空間)を所要の減圧レベルにすることができなくなる。
【0033】
特に、本実施形態では、図7および図8に示すように、キャスティングロール3を後退させることで、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間を大きくすることができる。ただし、単にキャスティングロール3を後退させただけでは、薄膜2とキャスティングロール3の外周面と吸引チャンバ40の先端とで形成される側面の開口部が大きくなり、所要の減圧レベルに達しない。
【0034】
本実施形態では、吸引チャンバ40がTダイ1から分離されこのTダイ1とは独立的に設けられ、その吸引チャンバ40を、キャスティングロール3との間で所要のシール隙間を保持しながら、駆動部材110により、キャスティングロール3の周方向に沿って移動させることができる。
【0035】
従って、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が大きい場合には、吸引チャンバ40を駆動部材110によりロール支軸16周りに反時計周り方向へ移動させて所要位置まで前進させ、吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aを薄膜2とキャスティングロール3との密着開始部に近付けることにより、薄膜2と吸引チャンバ40の吸引口40aとの間隔を小さくする。逆に、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が小さい場合には、吸引チャンバ40を駆動部材110によりロール支軸16周りに時計周り方向へ移動させて所要位置まで後退させる。
【0036】
例えば図7に示すごとく、駆動部材110に取り付けられた吸引チャンバ40を所要の位置まで前進させ、側面の開口部を小さくし、吸引チャンバ40内の空気を真空ポンプ5で所要の減圧レベルに吸引することにより、Tダイ1からの押し出し直後で溶融状態の薄膜2をキャスティングロール3に安定的に密着させることができる。
【0037】
また、このとき、吸引チャンバ40がキャスティングロール3の外周面に沿うように形成されているので、吸引チャンバ40が駆動部材110により回動しても、吸引チャンバ40とキャスティングロール3の外周面との間には常に所要のシール隙間が保持されている。
【0038】
上述のように吸引チャンバ40の位置が設定されるとともにシール隙間が保持されることにより、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間の大きさによることなく、減圧空間で所要の減圧レベルが確保され、薄膜2とキャスティングロール3との間における空間の減圧を吸引チャンバ40によって安定的に行なうことができる。
なお、駆動部材110をロール支軸16周りに回転駆動して吸引チャンバ40を回動させる操作は、人手で行なってもよいし、図示省略の駆動機構(駆動モータ)を用いて行なってもよい。
【0039】
一方、上述したように、溶融樹脂はTダイ1から押し出され薄膜2となってキャスティングロール3に巻き取られて冷却成形されるが、このとき、吸引チャンバ40を用いない場合、溶融状態の薄膜2は、キャスティングロール3に引かれて、図5または図6に二点鎖線A1で示すような方向に走り、薄膜2とキャスティングロール3との間に空気が巻き込まれるために、薄膜2の品質が低下する。
【0040】
そこで、吸引チャンバ40の吸引動作により薄膜2の後側(図5,図6の右側)を負圧とし、前側との圧力差で薄膜2を後側に引いて薄膜2の姿勢を、図5や図6に実線で示すように立たせることにより、薄膜2がキャスティングロール3へ入る角度を大きくする。
【0041】
薄膜2の後側に負圧を作るために薄膜2の後側に仕切りを形成して薄膜2との間の空気を吸引チャンバ40によって吸引するが、この仕切られた空間の大きさが適切でないと、薄膜2が、吸引される空気によって振動する不安定現象が発生する。特に、図6に矢印A2で示すように、Tダイ1と吸引チャンバ40との間を通って吸引室40b内へ空気が流入する場合には、不安定になり易い。
【0042】
このため、吸引チャンバ40の先端を不安定現象が発生し難い最適な位置に調整するが、その調整のために吸引チャンバ40の位置を変更しても外部からの空気の流入通路が形成されないようにTダイ1と吸引チャンバ40との間の隙間を閉ざしておく必要がある。
【0043】
本実施形態の弾性シール部材50は、吸引チャンバ40の上面とTダイ1の下面との間の隙間が変わっても弾性的に変形して自動的にその隙間を塞ぎ続けるようになっている。つまり、上述のごとくTダイ1とキャスティングロール3との隙間の大きさや吸引チャンバ40の位置を変化させることにより、Tダイ1と吸引チャンバ40との隙間(間隔)が変化しても、本実施形態では、Tダイ1と吸引チャンバ40との間に弾性シール部材50が介装されているため、その変化に追随しながらTダイ1と吸引チャンバ40との間が弾性シール部材50で閉塞される。これにより、Tダイ1,薄膜2および吸引チャンバ40で囲まれる減圧空間の気密性を確保でき、その減圧空間において所要の減圧レベルを確実に得ることができる。
【0044】
なお、図5および図6では、吸引チャンバ40が移動する前の弾性シール部材50の輪郭形状(Tダイ1から押圧されて変形する前の輪郭形状)が二点鎖線で示されている。
また、Tダイ1とキャスティングロール3との位置関係を大きく変更する場合には、図6や図8に示すように、弾性シール部材50自体を別のサイズのものと交換して調整することになる。
さらに、弾性シール部材50を、Tダイ1の下面に取り付けて、吸引チャンバ40の上面側に対し弾性力をもって押圧接触させるようにしてもよい。
【0045】
ついで、図9を参照しながら遮蔽板160による作用効果について説明する。
図23に示した従来例では、前述した通り、吸引チャンバ104の前面開口部に対して、前面からの流れが主流となるため、B2部での動圧およびB1部での吸い込みによる渦の形成により、薄膜102が振動(揺動)したり吸引チャンバ104内に引き込まれたりする不具合を生じていた。
【0046】
これに対して、本実施形態では、図9に点線矢印で示すように、遮蔽板160の整流効果により、前面開口部に対して、側面からの流れが主流となるため、動圧や渦の形成が抑制され、薄膜2の振動(揺動)や吸引チャンバ40への引込みが抑制され、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になる。
【0047】
特に、本実施形態では、比較的、伸長粘度の低い樹脂による薄膜形成に際して、薄膜2をキャスティングロール3に安定的に密着させるのに大きな効果を発揮する。
なお、薄膜2のネッキング量に応じて遮蔽板160を移動させることにより、気流を適切に制御することができる。
【0048】
このように、本発明の第1実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置によれば、吸引チャンバ40の位置を変化させても吸引チャンバ40の上面とTダイ1の下面との間の隙間を弾性シール部材50により確実に且つ自動的に塞ぐことができるので、Tダイ1,薄膜2および吸引チャンバ40で囲まれる減圧空間の気密性を確保することができ、その減圧空間において所要の減圧レベルを確実に得ることができる。
【0049】
また、個々の薄膜(フィルム,シート)2の生産運転の開始に先んじて行なう最適条件を求めるための吸引チャンバ40の位置調整に際しても、上述の通り、吸引チャンバ40の位置を変化させても吸引チャンバ40の上面とTダイ1の下面との間の隙間を弾性シール部材50により確実に且つ自動的に塞ぐことができるので、その隙間から吸引チャンバ40へ空気が流入するために生じる薄膜2の振動を確実に防止でき、調整作業が極めて容易に行なえるとともに、調整作業から続けて生産運転に直ちに入ることができる。
【0050】
そして、吸引チャンバ40が、キャスティングロール3との間に所要のシール隙間を保持しながら、キャスティングロール3の周方向に移動可能であり、且つ、キャスティングロール3の半径方向にも移動可能であり、吸引チャンバ40とキャスティングロール3との間のシール隙間を調整できるほか、弾性シール部材50により、Tダイ1の下面と吸引チャンバ40の上面との間の隙間の大小によらず、その隙間をシールすることができる。
【0051】
従って、Tダイ1とキャスティングロール3との間の隙間の大小によらず、薄膜2とキャスティングロール3との間における空間の減圧を吸引チャンバ40によって安定的に行なうことができるので、いかなる樹脂に対してもTダイ1とキャスティングロール3との隙間を適切に設定することが可能になり、所要のフィルム特性(薄膜特性)が確保されて樹脂製薄膜(フィルムまたはシート)2の品質を大幅に向上させることができる。
【0052】
さらに、吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aの端部を遮蔽しうる遮蔽板160をそなえることにより、Tダイ1から押し出される薄膜2とキャスティングロール3と吸引チャンバ40とで形成される空間への吸い込みによる流れの主流が制御され、薄膜の振動(揺動)や吸引チャンバ40内への薄膜2の引込みなどを抑制することができる。従って、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になり、所要の薄膜特性が確保されて樹脂製薄膜の品質を大幅に向上できる。
【0053】
なお、Tダイ1と吸引チャンバ40との間を閉塞する弾性シール部材として、図3〜図6により前述した弾性シール部材50に代えて、図10(a)〜図10(c)のいずれかに示すような板バネ56a〜56cが用いられてもよい。ここで、図10(a)〜図10(c)はいずれも第1実施形態における弾性シール部材の変形例の構成および取付状態を示す側断面図である。
【0054】
これらの板バネ56a〜56cは、例えばステンレス等の耐蝕性のある薄い金属製(板厚は1mm以下)のもので、薄膜2の全幅を超える幅に亘って配置され吸引チャンバ40の上壁41aに取付ボルト55により取り付けられている。そして、金属製板バネ56a〜56cをTダイ1の下面に対し弾性力をもって押圧接触させることによりTダイ1の下面と吸引チャンバ40の上面との間が閉塞されている。
【0055】
図10(a)に示す板バネ56aは、先端を円弧状に膨らませて折り返した形状を有しており、図10(b)に示す板バネ56bは、上部に円弧部を有する山形のものであり、図10(c)に示す板バネ56cは、先端側を上方に向けた鈎形のものであり、いずれの図においてもTダイ1と接触して変形した状態を二点鎖線で示している。
【0056】
これらの板バネ56a〜56cは、いずれもTダイ1の下面と吸引チャンバ40の上面との両方に弾性力をもって接触して隙間を塞ぐもので、その形状は、図10(a)〜図10(c)に示す形状に限定されるものではない。また、板バネ56a〜56cを、Tダイ1の下面に取り付けて、吸引チャンバ40の上面側に対し弾性力をもって押圧接触させるようにしてもよい。
【0057】
また、Tダイ1とキャスティングロール3との位置関係を大きく変更する場合には、板バネ56a〜56c自体を別のサイズのものと交換して調整することになる。
弾性シール部材50に代え図10(a)〜図10(c)に示すような板バネ56a〜56cを用いても、第1実施形態の弾性シール部材50と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
〔2〕第2実施形態の説明
図11〜図13は本発明の第2実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を示すもので、図11はその模式的な側面図、図12はその弾性シール部材および吸引ノズルの構成および取付状態を示す斜視図、図13は図11のQ−Q線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。なお、既述の符号と同一の符号は同一もしくは同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0059】
この第2実施形態は、図11に示すように、前述した第1実施形態とほぼ同様に構成されているが、本実施形態では、図11および図12に示すように、吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aの端部に、第1実施形態の遮蔽板160に代えて、その端部側方から空気を吸引するサイド吸引ノズル70が取り付けられている。このサイド吸引ノズル70は真空ポンプ71に接続されており、この真空ポンプ71により吸引チャンバ40の吸引口40aの端部における空気がサイド吸引ノズル70から吸引されるようになっている。なお、図12では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
【0060】
上述のごとく構成された第2実施形態の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置も、基本的には第1実施形態と同様に動作するので、ここでは、図13を参照しながらサイド吸引ノズル70による作用効果についてのみ説明する。
本実施形態では、図13に点線矢印で示すように、サイド吸引ノズル70の吸引動作により、サイド吸引ノズル70への吸い込みによる流れが主流となり、動圧や渦の形成が抑制され、薄膜2の振動(揺動)や吸引チャンバ40への引込みが抑制され、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になる。
【0061】
特に、本実施形態では、比較的、伸長粘度の低い樹脂による薄膜形成に際して、薄膜2をキャスティングロール3に安定的に密着させるのに大きな効果を発揮する。
なお、真空ポンプ5および71により吸引チャンバ40およびサイド吸引ノズル70への吸い込み空気量をそれぞれ制御することで、気流を制御することができる。
【0062】
このように、本発明の第2実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるほか、吸引チャンバ40の吸引開口部40aの端部側方から空気を吸引するサイド吸引ノズル70をそなえることにより、Tダイ1から押し出される薄膜2とキャスティングロール3と吸引チャンバ40とで形成される空間への吸い込みによる流れの主流が制御され、薄膜2の振動(揺動)や吸引チャンバ40内への薄膜2の引込みなどを抑制することができる。従って、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になり、所要の薄膜特性が確保されて樹脂製薄膜の品質を大幅に向上できる。
なお、第2実施形態においても、弾性シール部材50に代えて、図10(a)〜図10(c)に示した板バネ56a〜56cを用いてもよい。
【0063】
〔3〕第3実施形態の説明
図14〜図16は本発明の第3実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を示すもので、図14はその模式的な側面図、図15はその弾性シール部材,遮蔽板および吸引ノズルの構成および取付状態を示す斜視図、図16は図14のR−R線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。なお、既述の符号と同一の符号は同一もしくは同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0064】
この第3実施形態は、図14に示すように、前述した第1実施形態とほぼ同様に構成されているが、本実施形態では、図14および図15に示すように、第1実施形態で説明した遮蔽板160と第2実施形態で説明したサイド吸引ノズル70との両方がそなえられている。
【0065】
つまり、吸引チャンバ40の吸引口(吸引開口部)40aの端部に、その端部開口を遮蔽して端部からの吸い込みを抑制するための遮蔽板160が、薄膜2の幅方向に移動可能に取り付けられ、この遮蔽板160(即ち、吸引チャンバ40の吸引口40aの端部)に、その端部側方から空気を吸引するサイド吸引ノズル70が取り付けられている。このサイド吸引ノズル70は真空ポンプ71に接続されており、この真空ポンプ71により吸引チャンバ40の吸引口40aの端部における空気がサイド吸引ノズル70から吸引されるようになっている。
【0066】
また、第1実施形態と同様、図15に示すように、遮蔽板160には、長孔160aが形成されており、この長孔160aを貫通し且つワッシャ161を介し吸引チャンバ40の上壁41aに対して締め付けられる取付ボルト162により、遮蔽板160は、吸引チャンバ40に取り付けられている。遮蔽板160は、その長孔160により薄膜2の幅方向に移動可能で、吸引チャンバ40の吸引口40aの端部の遮蔽量を調整できるようになっている。
【0067】
なお、図15では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
上述のごとく構成された第3実施形態の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置も、基本的には第1実施形態と同様に動作するので、ここでは、図16を参照しながら遮蔽板160およびサイド吸引ノズル70による作用効果についてのみ説明する。
【0068】
本実施形態では、図16に点線矢印で示すように、サイド吸引ノズル70の吸引動作により、サイド吸引ノズル70への吸い込みによる流れが主流となることに加え、遮蔽板160により吸引チャンバ40への吸い込みを整流することで、動圧や渦の形成が抑制され、薄膜2の振動(揺動)や吸引チャンバ40への引込みが抑制され、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になる。
【0069】
特に、本実施形態では、比較的、伸長粘度の低い樹脂による薄膜形成に際して、薄膜2をキャスティングロール3に安定的に密着させるのに大きな効果を発揮する。
なお、本実施形態でも、真空ポンプ5および71により吸引チャンバ40およびサイド吸引ノズル70への吸い込み空気量をそれぞれ制御することで、気流を制御することができる。
【0070】
このように、本発明の第3実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるほか、吸引チャンバ40の吸引開口部40aの端部を遮蔽しうる遮蔽板160と吸引チャンバ40の吸引開口部40aの端部側方から空気を吸引するサイド吸引ノズル70とをそなえることにより、Tダイ1から押し出される薄膜2とキャスティングロール3と吸引チャンバ40とで形成される空間への吸い込みによる流れの主流が制御され、薄膜2の振動(揺動)や吸引チャンバ40内への薄膜2の引込みなどを抑制することができる。従って、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になり、所要の薄膜特性が確保されて樹脂製薄膜の品質を大幅に向上できる。
なお、第3実施形態においても、弾性シール部材50に代えて、図10(a)〜図10(c)に示した板バネ56a〜56cを用いてもよい。
【0071】
〔4〕第4実施形態の説明
図17および図18は、それぞれ、本発明の第4実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図および正面図である。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0072】
この第4実施形態では、図17および図18に示すように、所要のシール隙間を保持しながら吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って移動させる周方向移動機構として、ガイドフレーム(ガイド部材)13が用いられるとともに、吸引チャンバ40をキャスティングロール3の半径方向に移動させて所要のシール隙間を調整する半径方向移動機構として、取付ボルト12が用いられている。
【0073】
ここで、ガイドフレーム13は、キャスティングロール3のロール支軸16の側端を軸支するサイドフレーム17に対して、取付ボルト12により取り付けられている。このガイドフレーム13には、吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って案内すべく、吸引チャンバ40の側面に取り付けられた2つのピン(またはロール)11a,11aを係合される長穴状ガイドレール13aが形成されている。
【0074】
そして、本実施形態では、取付ボルト12によってサイドフレーム17に対するガイドフレーム13の取付高さ位置を調整することにより、キャスティングロール3の外周面と吸引チャンバ40との間の所要のシール隙間を調整できるようになっている。つまり、上述した取付ボルト12が半径方向移動機構としての機能を果している。
【0075】
また、Tダイ1の下面と吸引チャンバ40の上面との間の隙間は、吸引チャンバ40に取り付けられた、前述の弾性シール部材50(もしくは板バネ56a〜56c)により閉塞されている。
なお、第4実施形態のキャスティング装置において、上述した周方向移動機構および半径方向移動機構以外の構成は、第1〜第3実施形態と同様に構成されているので、その説明は省略する。ただし、図17および図18においては、第1〜第3実施形態で説明した遮蔽板160やサイド吸引ノズル70の図示は省略されている。また、図18では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
【0076】
上述のごとく構成された本発明の第4実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置によれば、周方向移動機構や半径方向移動機構の構成が第1〜第3実施形態と異なるだけであり、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
ただし、第4実施形態では、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が大きい場合、吸引チャンバ40をガイドフレーム13の長穴状ガイドレール13aに沿って反時計周り方向(図17の左方)へ移動させて所要位置まで前進させ、吸引チャンバ40の吸引開口部40aを薄膜2とキャスティングロール3との密着開始部に近付けることにより、薄膜2と吸引チャンバ4の吸引開口部40aとの間隔を小さくする。逆に、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が小さい場合、吸引チャンバ40をガイドフレーム13の長穴状ガイドレール13aに沿って時計周り方向(図17の右方)へ移動させて所要位置まで後退させる。
【0078】
このとき、第1〜第3実施形態と同様、吸引チャンバ40がキャスティングロール3の外周面に沿うように形成されているので、吸引チャンバ40がガイドフレーム13の長穴状ガイドレール13aに沿って移動しても、吸引チャンバ40とキャスティングロール3の外周面との間には常に所要のシール隙間が保持されている。
なお、吸引チャンバ40をガイドレール13aに沿って移動させる操作は、人手で行なってもよいし、図示省略の駆動機構を用いて行なってもよい。
【0079】
〔5〕第5実施形態の説明
図19および図20は、それぞれ、本発明の第5実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図および正面図である。なお、図中、既述の符号と同一の符号は同一もしくは同様の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0080】
この第5実施形態では、図19および図20に示すように、所要のシール隙間を保持しながら吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って移動させる周方向移動機構として、駆動部材20およびガイドフレーム(ガイド部材)23が用いられるとともに、吸引チャンバ40をキャスティングロール3の半径方向に移動させて所要のシール隙間を調整する半径方向移動機構として、取付ボルト22用いられている。
【0081】
ここで、駆動部材20は、その基端側をキャスティングロール3のロール支軸16周りに回動可能にロール支軸16と同軸的に軸支され、この駆動部材20の先端側にガイドフレーム23が、取付ボルト22により取り付けられている。このガイドフレーム23には、吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って案内すべく、吸引チャンバ40の側面に取り付けられた2つのピン(またはロール)11a,11aを係合される長穴状ガイドレール23aが形成されている。
【0082】
そして、本実施形態では、取付ボルト22によって駆動部材20に対するガイドフレーム23の取付高さ位置を調整することにより、キャスティングロール3の外周面と吸引チャンバ40との間の所要のシール隙間を調整できるようになっている。つまり、上述した取付ボルト22が半径方向移動機構としての機能を果している。
【0083】
また、Tダイ1の下面と吸引チャンバ40の上面との間の隙間は、吸引チャンバ40に取り付けられた、前述の弾性シール部材50(もしくは板バネ56a〜56c)により閉塞されている。
なお、第5実施形態のキャスティング装置において、上述した周方向移動機構および半径方向移動機構以外の構成は、第1〜第3実施形態と同様に構成されているので、その説明は省略する。ただし、図19および図20においては、第1〜第3実施形態で説明した遮蔽板160やサイド吸引ノズル70の図示は省略されている。また、図20では、本実施形態の装置の幅方向の一端部側のみを図示しているが、他端部側も同様に構成されている。
【0084】
第5実施形態では、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が大きい場合には、吸引チャンバ40を駆動部材20によりロール支軸16周りに反時計周り方向へ移動させて適当な位置まで前進させる粗調整を行なってから、吸引チャンバ40をガイドフレーム23の長穴状ガイドレール23aに沿って移動させ所要位置に位置決めする微調整を行ない、吸引チャンバ40の吸引口40aを薄膜2とキャスティングロール3との密着開始部に近傍に位置決めする。
【0085】
逆に、Tダイ1とキャスティングロール3との隙間が小さい場合には、吸引チャンバ40を駆動部材20によりロール支軸16周りに時計周り方向へ移動させて適当な位置まで後退させる粗調整を行なってから、吸引チャンバ40をガイドフレーム23の長穴状ガイドレール23aに沿って移動させ所要位置に位置決めする微調整を行なう。
【0086】
このとき、第1〜第3実施形態と同様、吸引チャンバ40がキャスティングロール3の外周面に沿うように形成されているので、吸引チャンバ40が駆動部材20により回動しても、また、吸引チャンバ40がガイドフレーム23の長穴状ガイドレール23aに沿って移動しても、吸引チャンバ40とキャスティングロール3の外周面との間には常に所要のシール隙間が保持されている。
【0087】
なお、駆動部材20をロール支軸16周りに回転駆動して吸引チャンバ40を回動させる操作は、人手で行なってもよいし、図示省略の駆動機構(駆動モータ)を用いて行なってもよい。同様に、吸引チャンバ40をガイドレール23aに沿って移動させる操作は、人手で行なってもよいし、図示省略の駆動機構を用いて行なってもよい。
【0088】
上述のごとく構成された本発明の第5実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置によれば、周方向移動機構や半径方向移動機構の構成が第1〜第3実施形態と異なるだけであり、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、第5実施形態では、吸引チャンバ4の位置決めを駆動部材20による粗調整とガイドフレーム23による微調整との2段階で行なうので、高い精度で位置決めを行なうことができる。
【0089】
なお、上述した第1〜第5実施形態では、Tダイ1と吸引チャンバ40との間を弾性シール部材50もしくは板バネ56a〜56cにより閉塞しているが、Tダイ1と吸引チャンバ40との隙間をその大きさの変化に追随しながら閉塞できるものであればよく、ゴム等の弾性体のほか、蛇腹状の部材などを用いることもできる。
【0090】
また、周方向移動機構や半径方向移動機構は、上述したものに限定されるものではなく、所要のシール隙間を保持しながら吸引チャンバ40をキャスティングロール3の周方向に沿って移動させることのできる周方向移動機構や、吸引チャンバ40をキャスティングロール3の半径方向に移動させて所要のシール隙間を調整することのできる半径方向移動機構であれば、他の機構を用いてもよい。さらに、周方向移動機構のみをそなえてもよい。
【0091】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置(請求項1〜請求項4)によれば、吸引チャンバの吸引開口部の端部を遮蔽しうる遮蔽板や、吸引チャンバの吸引開口部の端部側方から空気を吸引する吸引ノズルをそなえることにより、ダイから押し出される薄膜と冷却ロールと吸引チャンバとで形成される空間への吸い込みによる流れの主流が制御され、薄膜の振動(揺動)や吸引チャンバ内への薄膜の引込みなどを抑制することができる。従って、いかなる樹脂においても安定した薄膜成形を行なうことが可能になり、所要の薄膜特性が確保されて樹脂製薄膜の品質を大幅に向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す正面図である。
【図3】第1実施形態の弾性シール部材および遮蔽板の構成および取付状態を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の弾性シール部材の構成および取付状態を示す側断面図である。
【図5】第1実施形態の弾性シール部材の実装状態を示す側断面図である。
【図6】第1実施形態のキャスティング装置において、図5に示すものとはサイズの異なる弾性シール部材を実装した状態を示す側断面図である。
【図7】第1実施形態の操作例を説明するための模式的な側面図である。
【図8】第1実施形態の操作例を説明するための模式的な側面図である。
【図9】図1のP−P線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。
【図10】(a)〜(c)はいずれも第1実施形態における弾性シール部材の変形例の構成および取付状態を示す側断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図12】第2実施形態の弾性シール部材および吸引ノズルの構成および取付状態を示す斜視図である。
【図13】図11のQ−Q線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図15】第3実施形態の弾性シール部材,遮蔽板および吸引ノズルの構成および取付状態を示す斜視図である。
【図16】図14のR−R線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。
【図17】本発明の第4実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図18】本発明の第4実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す正面図である。
【図19】本発明の第5実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図20】本発明の第5実施形態としての樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す正面図である。
【図21】従来の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す側面図である。
【図22】従来の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置を模式的に示す正面図である。
【図23】図21のS−S線に沿う断面における外気の流入状況を示す図である。
【符号の説明】
1 Tダイ(ダイ)
2 フィルム状またはシート状の薄膜
3 キャスティングロール(冷却ロール)
5 真空ポンプ
11 支持ボルト(半径方向移動機構)
11a ピン(またはロール;周方向移動機構)
12 取付ボルト(半径方向移動機構)
13 ガイドフレーム(ガイド部材;周方向移動機構)
13a 長穴状ガイドレール
16 ロール支軸(回転軸)
20 駆動部材(周方向移動機構)
22 取付ボルト(半径方向移動機構)
23 ガイドフレーム(ガイド部材;周方向移動機構)
23a 長穴状ガイドレール
40 吸引チャンバ(真空ボックス)
40a 吸引口(吸引開口部)
50 弾性シール部材
51 弾性シール本体
52,53 取付金具(取付具)
56a,56b,56c 金属製板バネ(弾性シール部材)
70 サイド吸引ノズル
110 駆動部材(周方向移動機構)
110a 長孔(半径方向移動機構)
160 遮蔽板
Claims (4)
- 溶融樹脂を薄膜として押し出すダイと、該ダイから押し出された該薄膜を外周面上に引き取って冷却して送り出す冷却ロールと、該薄膜を該冷却ロール上に密着させるべく該薄膜と該冷却ロールとの間の空気を吸引する吸引チャンバとをそなえてなる樹脂製薄膜成形用キャスティング装置において、
該冷却ロールの幅方向に沿って開口する該吸引チャンバの吸引開口部の端部を遮蔽しうる遮蔽板が該薄膜の幅方向に移動可能にそなえられていることを特徴とする、樹脂製薄膜成形用キャスティング装置。 - 溶融樹脂を薄膜として押し出すダイと、該ダイから押し出された該薄膜を外周面上に引き取って冷却して送り出す冷却ロールと、該薄膜を該冷却ロール上に密着させるべく該薄膜と該冷却ロールとの間の空気を吸引する吸引チャンバとをそなえてなる樹脂製薄膜成形用キャスティング装置において、
該吸引チャンバの前記吸引開口部の端部側方から空気を吸引する吸引ノズルがそなえられていることを特徴とする、樹脂製薄膜成形用キャスティング装置。 - 該吸引チャンバの前記吸引開口部の端部側方から空気を吸引する吸引ノズルがそなえられたことを特徴とする、請求項1記載の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置。
- 該吸引チャンバが、該ダイとは独立に且つ該冷却ロールとの間に所要のシール隙間をあけた状態で設置されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂製薄膜成形用キャスティング装置。
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