JP3671905B2 - バッテリ劣化診断装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置に関し、詳細には、バッテリの劣化を、内燃機関への走行依存度により診断する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車両において、動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断する方法としては、従来より、バッテリの電流値、電圧値及び充電時間を検出するなど、バッテリ自体の出力特性に着目したものが一般的であった。本出願人に係る先願の特願2000−078462号には、バッテリの劣化が進行するほどその内部抵抗が上昇することに着目し、バッテリの平衡状態での開放端電圧と、始動時の端子電圧及び放電電流とに基づいて内部抵抗を検出するものが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バッテリの劣化は、始動時に限らず走行中にも監視できることが望ましい。ここで、走行中は、走行パターンに応じて充放電が繰り返されており、診断に必要な充電状態が常に得られるとは限らないことや、地形等により電流値や電圧値が変化することも考えられる。これらのことが走行中の劣化診断を困難なものとしていた。
【0004】
ところで、ある一定の経路を走行する場合を想定すると、バッテリが劣化したときと劣化前のときとでは、バッテリが劣化したときの方が内燃機関への走行依存度が高くなる。すなわち、パラレル式の構成では、内燃機関による走行距離が長くなる。これは、バッテリの劣化が進行しているときほど、その消耗が速く進むことによる。このことから、バッテリ自体の出力特性によらずとも、内燃機関への走行依存度を検出することで、バッテリの劣化を診断できると考えられる。
【0005】
また、特開平5−203456号公報には、走行中のエネルギー消費量が、走行距離のみに限らず、その経路の道路種別等にも影響されることが開示されている。例えば、市街地等の信号が多く設けられる道路では、交通が停滞せずに流れる場合と比較して、バッテリの消耗が速く進むことが予想される。このことから、内燃機関への走行依存度は、同じ距離を走行するにしても、道路状況に応じて変化すると考えられる。
【0006】
従って、本発明の目的は、ハイブリッド車両において、バッテリ自体の出力特性によらずにバッテリの劣化を診断できるバッテリ劣化診断装置を提供することである。
また、本発明は、同じ走行経路であっても時々変化する道路状況によらず、正確に劣化を診断することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が通過する特定走行区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記区間において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0008】
請求項2に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が走行する経路上で、所定距離毎にその区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記各区間において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0009】
請求項3に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が走行する特定経路に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記経路において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0010】
請求項4に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として渋滞情報を読み込むこととした。
請求項5に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として信号情報を読み込むこととした。
請求項6に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として地形情報を読み込むこととし、請求項7に記載の発明では、地形情報として道路の勾配を採用することとした。
【0011】
請求項8に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として外気温度を読み込むこととした。
請求項9に記載の発明では、バッテリ劣化診断手段において、検出された実際の走行距離若しくは運転時間を読み込んだ道路情報に基づいて補正し、この補正値が基準となる走行距離若しくは運転時間を超える場合に、バッテリが劣化しているものと診断することとした。
【0012】
請求項10に記載の発明では、基準となる走行距離若しくは運転時間を、初期状態において道路情報に基づいて補正して算出された走行距離若しくは運転時間の平均値として設定することとした。
請求項11に記載の発明では、バッテリの残容量を検出するバッテリ残容量検出手段を設け、検出された残容量が所定範囲内にある場合にのみ、バッテリの劣化を診断するように構成した。
【0013】
【発明の効果】
請求項1〜3に係る発明によれば、バッテリの劣化を、バッテリ自体の出力特性によらず、内燃機関による走行距離若しくはその運転時間として検出される内燃機関への走行依存度により診断することとした。このため、経路途中における時々のバッテリの状態によらず、所定の経路を走行したことをもって診断できるので、融通性の高い診断が可能となる。
【0014】
また、バッテリの劣化を、どのような走行経路であっても内燃機関への走行依存度という1つのパラメータにより診断できるので、非常に簡便である。このとき、道路情報に基づいてこのパラメータが補正されるので、高い診断精度が得られる。
請求項1に係る発明によれば、特に、走行経路が全体として一致しなくとも、部分的に対応する特定区間での走行依存度により診断できるので、診断頻度を確保できる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、特に、所定距離毎にその区間に関する道路情報に基づいて補正される走行依存度により診断することで、走行依存度の検出精度が向上するので、診断精度を向上できる。
請求項3に係る発明によれば、特に、特定経路を走行する(すなわち、走行経路が全体として一致する)場合に検出される走行依存度に基づいて診断することで、診断に要する処理を簡略化できる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、道路情報として渋滞情報を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。道路が渋滞している場合には、交通が円滑な場合と比較してバッテリの消耗が速く、内燃機関への走行依存度が高くなるからである。
請求項5に係る発明によれば、道路情報として信号情報を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。信号が多く設置されている経路では、車両が停止及び再発進を繰り返すことが予測され、バッテリの消耗が速いからである。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、道路情報として地形情報を、特に、請求項7の発明により道路の勾配を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。傾斜路と平地とではバッテリの消耗度合が異なり、例えば、登り坂では、消耗がより速く進むからである。
請求項8に係る発明によれば、道路情報として外気温度を採用することで、内燃機関への走行依存度の検出にバッテリの温度が反映されることとなるので、バッテリをより最適に管理できる。
【0018】
請求項9に係る発明によれば、道路情報に基づいて補正された内燃機関への走行依存度と、基準となる走行依存度との比較により、簡単にバッテリの劣化を診断できる。
請求項10に係る発明によれば、比較のための基準依存度を、初期状態において補正して算出された走行依存度の平均値とすることで、比較結果の信頼性を向上できる。
【0019】
請求項11に係る発明によれば、バッテリの残容量が所定範囲内にある場合にのみバッテリの劣化を診断することで、誤診を防止できる。バッテリの残容量が過度に少ない場合には、劣化がそれほど進行していなくとも内燃機関への走行依存度が高い値として検出されることが考えられるからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図である。なお、図に向かって左側の車輪9,9が前輪であり、その逆の右側の車輪7,7が後輪である。
【0021】
本車両では、内燃機関(以下「エンジン」という。)1の出力側に、発電機としての機能を兼ね備える電気モータ(以下「モータジェネレータ」という。)2を直結し、さらに、エンジン1及びモータジェネレータ2に対して、トルクコンバータ3及び変速機4を接続している。そして、変速機4の出力側に接続された動力伝達軸(プロペラシャフト)5により、後輪側差動装置6を介してエンジン駆動輪(ここでは、後輪7,7)の車輪駆動軸8,8が駆動されるようにしている。
【0022】
ここで、モータジェネレータ2は、エンジン1のアシスト装置としての機能を有し、エンジン1の始動時には、エンジン1のクランキングを行う始動手段として用いられる。また、減速運転時には、モータジェネレータ2を発電機として機能させ、回生した制動エネルギーをバッテリ14の充電のために使用することが可能である。
【0023】
一方、非エンジン駆動輪である前輪9,9に対しては、モータジェネレータ10が設けられており、その出力側に接続された動力伝達軸(比較的小型のプロペラシャフト)11及び前輪側差動装置12を介して、モータジェネレータ10により発生されたトルクが前輪9,9の車輪駆動軸13,13に伝達され、もって前輪側からも駆動力が得られるようにしている。
【0024】
モータジェネレータ10は、その電力源を構成するバッテリ14に、インバータ15bを介して接続されている。モータジェネレータ10からトルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15bによって三相交流電力に変換されて、モータジェネレータ10に供給される。
一方、モータジェネレータ2は、バッテリ14に、インバータ15aを介して接続されている。そして、モータジェネレータ2からトルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15aによって三相交流電力に変換されて、モータジェネレータ2に供給される。
【0025】
ここで、後輪駆動軸8,8と前輪駆動軸13,13との間には物理的な結合がなく、前後の駆動軸に対してそれぞれ無関係にトルクを伝達することが可能である。すなわち、後輪駆動軸8,8へは、エンジン1及びモータジェネレータ2により、また前輪駆動軸13,13へは、モータジェネレータ10により、それぞれトルクが伝達される。
【0026】
実際の走行時において、通常走行モードでは、後輪7,7のみを駆動輪としてFR方式により車両を推進する。そして、ドライバーの選択等に基づいて4輪駆動状態とする場合には、モータジェネレータ10から前輪駆動軸13,13にトルクが伝達されることにより、前後両輪を駆動輪として4WD方式を成立させることが可能である。
【0027】
また、所定の低速走行モード(例えば、車速が時速20km未満のとき)では、前輪9,9のみを駆動輪とし、モータジェネレータ10のみにより車両を推進する。そして、ドライバーからの加速要求に応じてエンジン1を始動させ、駆動力源をモータジェネレータ10からエンジン1に切り換えて、上記通常走行モードに移行するようにしている。
【0028】
次に、制御系統の構成について説明する。エンジン1、モータジェネレータ2及び10の統合コントローラとしてのハイブリッドコントロールモジュール(以下「HCM」と略す。)21は、通信ライン91を介して、エンジンコントロールモジュール(以下「ECM」と略す。)31、モータジェネレータ2及び10の制御装置(モータコントローラ;以下「M/C」と略す。)32及び33に接続されている。
【0029】
図2は、本制御系統の構成をより詳細に示したものである。同図において、HCM21には、運転状態として、アクセル開度センサ41からのアクセル開度APO、車速センサ42からの車速V、及び回転速度センサ43からのエンジン回転数Neが入力される。
HCM21は、車載ナビゲーション装置と相互に通信可能に接続されており、符号51は、そのコントロールユニット(以下「C/U」と略す。)を示している。C/U51には、GPS(全世界測位システム)情報受信アンテナ61を備える受信装置73からGPS情報が入力されるとともに、VICS(道路交通情報通信システム)情報受信アンテナ62を備える受信装置74からVICS情報が入力される。
【0030】
C/U51は、ドライバーによる操作パネル72の目的地入力操作に応答して経路探索を行う機能を有しており、設定された経路に関する道路地図情報を記憶装置71から読み出し、GPS情報及びVICS情報とともにHCM21に提供する。この提供される情報には、経路ID、区分、道路種別、渋滞状況、道路勾配、距離、信号密度等が含まれる。なお、符号81は、道路地図情報に基づいて作成される道路地図を表示する表示装置であり、道路地図上には、GPS情報に基づいて検出される車両の現在位置が示される。
【0031】
HCM21は、上述の各種センサ41〜43及びナビゲーション装置からのナビゲーション情報に基づいて、ECM31及びM/C32,33に対して制御指令を発生する。
次に、ECM21により実行される制御のうち、バッテリ14の劣化診断制御について説明する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る劣化診断制御のフローチャートである。まず、ドライバーによる目的地入力操作に基づいて走行経路が設定されると、その経路上で劣化診断のための判定区間を設定する。この判定区間は、新規に設定される場合と、以前に走行した経験がある特定区間として設定される場合とがある。
ステップ(以下「S」と略す。)において、車両の現在位置が判定区間の始点に到達すると、S2では、バッテリ2の残容量を検出する。バッテリ2の残容量は、バッテリ2の開放端電圧OCVに基づいて、充電状態SOCとして推定的に検出する。
【0033】
S3では、バッテリ2の残容量、すなわち、充電状態SOCが設定範囲内にあるか否かを判定する。設定範囲内にあると判定した場合には、S4へ進む一方、設定範囲内にないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。充電状態SOCが過度に低い状態では、モータジェネレータ10からのトルクが不足し、バッテリ14が正常であってもエンジン1により走行せざるを得ない。このような条件では、バッテリ14の劣化を誤診する可能性があるので、劣化診断を禁止するのである。
【0034】
なお、バッテリ14の充電状態SOCは、減速回生の可能性や、モータジェネレータ2,10の出力を考慮して、50%付近においてある一定の幅をもって制御されるのが好適である。
S4では、エンジン1による走行距離(以下「エンジン走行距離」という。)Rを検出する。ここで、Rは、制御周期毎にエンジン1がトルクを発生した距離dRを検出し、これを積算して求められる(すなわち、R=ΣdR)。
【0035】
S5では、車両の現在位置が判定区間の終点に到達したか否かを判定する。終点に到達した場合には、S6へ進む一方、未だ到達していないうちは、S4へ戻ってエンジン走行距離Rの検出を継続する。
S6では、エンジン走行距離Rと現状の道路状況とに基づいて、次のように平均補正走行距離L0を算出する。図4は、L0を演算するためのサブルーチンである。
【0036】
S21では、道路情報として、道路地図情報及びVICS情報といったナビゲーション情報を読み込む。道路地図情報としては、信号密度及び道路勾配が読み出され、VICS情報としては、渋滞状況が読み出される。なお、外気温度については、ここではVICS情報としての気象情報から読み出すこととするが、センサにより検出してもよい。
【0037】
S23では、読み込んだ道路情報に基づいてエンジン走行距離Rを補正して、補正走行距離R0を算出する。この補正に対して各種道路情報は、補正係数KRの設定に反映される。そして、設定されたKRをRに乗じることによりR0を算出する(すなわち、R0=R×KR)。
具体的には、まず、渋滞状況については、同じ判定区間であっても、そこで渋滞している場合と渋滞していない場合とを比較すると、渋滞している場合には、一定距離を走行するために要するエネルギー消費量が多く、バッテリ14が劣化していなくとも、その消耗が速くなる。従って、初期の充電状態SOCを一定としたならば、実際の劣化度合よりもエンジン走行距離Rが長い値として検出されることが考えられる。このため、渋滞個所では、補正係数KRを減少させ、その区間が渋滞していなかったとしたならば得られたとされるエンジン走行距離(補正走行距離R0)に換算する。
【0038】
信号密度についても同様であり、信号が多く設置された区間を走行する場合には、それだけ車両が停止及び再発進を繰り返す可能性が高いので、バッテリ14の消耗が速くなる。従って、補正係数KRを減少させ、信号密度が低く円滑に走行できたならば得られたとされるエンジン走行距離に換算する。
また、道路勾配については、登り勾配が大きい道路ほど駆動力を増加させる必要があるので、エンジン1への走行依存度が高くなる。従って、この場合も補正係数KRを減少させ、平地であったならば得られたとされるエンジン走行距離に換算する。
【0039】
なお、このように、地形に基づいて補正できることは、過去に走行経験のない区間を走行する場合であっても、エンジン走行距離を基準化して評価することが可能となることから、情報の不足を補える点で有利である。すなわち、本実施形態に係るバッテリ14の劣化診断は、同じ判定区間を走行する場合に限らず、過去に走行経験のある似たような区間を走行したときに得られたエンジン走行距離と、今回算出された補正走行距離R0とに基づいて行うこともできるのである。
【0040】
外気温度については、例えば、熱地においては、モータジェネレータ10が通常の大きさのトルクを出力するように操作されたとしても、その温度が過度に上昇することが考えられる。そのような場合には、バッテリ14が正常であっても、モータジェネレータ10の故障を防止するために出力制限がかけられるので、エンジン走行距離が長い値として検出される。従って、外気温度が所定値以上に高いときには、補正係数KRを減少させ、所定の温度条件での場合に換算する。
【0041】
S23では、判定区間を走行するのが(過去に走行経験のある区間を持ち出した場合を含めて)初めてか否かを判定する。初めてであれば、S24へ進んで、符合Nを1に設定するとともに、平均補正走行距離L0を0に設定する。その一方、初めてでなければ、S25へ進んで符号Nに1を加算する。
S26では、符号Nが所定値N0(例えば、5)以上であるか否かを判定する。所定値以上であると判定した場合には、S28へ進む一方、所定値未満であると判定した場合には、S27へ進む。S27では、次式(1)により、補正走行距離R0の平均値Lを算出する。ここで、Ln−1は、前回の制御で算出された平均値である。
【0042】
L=(Ln−1×(N−1)+R0)/N ・・・(1)
S28では、符号NがN0であるか否かを判定する。N0であると判定した場合には、S29へ進む一方、N0でないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。すなわち、S29へは、NがN0である場合にのみ進むことになる。S29では、次式(2)により平均補正走行距離L0を算出する。
【0043】
L0=(L×(N−1)+R0)/N ・・・(2)
図3に戻り、続くS7では、平均補正走行距離L0が0であるか否かを判定する。L0は、符号Nが所定値N0未満である間、0に設定される。L0が0であると判定した場合には、本ルーチンをリターンする一方、0以外の値であれば、S8へ進む。
【0044】
S8では、平均補正走行距離L0に安全率KLを乗じて、劣化判定基本値F(F=L0×KL)を算出する。そして、今回算出された補正走行距離R0がFを超えているか否かを判定する。超えていると判定した場合は、S9へ進む一方、超えていないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。
S9では、バッテリ劣化判定カウントmに1を加算し、続くS10では、加算後のカウントmが所定値mLに達したか否かを判定する。未だ達していないうちは、本ルーチンをリターンする一方、達したと判定した場合には、S11へ進む。S11では、MILを点灯させるなどして、バッテリ14が劣化したことの認識をドライバーに促す。
【0045】
次に、図5を参照して、本劣化診断制御の作用について説明する。本劣化診断制御は、同じ判定区間を走行する場合であっても、バッテリ14が劣化していれば、その分エンジン1への走行依存度が増し、エンジン走行距離R(詳細には、補正走行距離R0)が延長されることに基づいている。
図5に示すように、バッテリ14が劣化していないうちは、補正走行距離R0は、初期状態(バッテリ14が新品の状態)において算出されたR0の平均値L0に安全率KLを乗じた値Fを下回ることになる。しかしながら、バッテリ14が劣化し、その消耗が速く進むようになると、その区間を走行した場合の補正走行距離R0は徐々に延長され、交換が必要なほどに劣化が進行したときには、R0が劣化判定基本値Fを上回ることになる。R0がFを上回っているとの判定が所定回数連続して得られた場合には、実際に劣化していると判断でき、劣化判定を下すのである。
【0046】
このように、本実施形態によれば、バッテリ14の劣化を、所定の判定区間を走行したときのエンジン走行距離Rに基づいて診断するので、経路途中における時々のバッテリの状態によらずに診断を行えるという利点がある。また、実際の道路状況に応じて補正するとしても、診断のための基本的なパラメータがエンジン走行距離Rのみであるから、非常に簡便である。
【0047】
そして、ある判定区間について平均補正走行距離L0がひとたび設定されてしまえば、その後は、この区間と似たような他の区間を走行するときにも、このL0を用いて劣化を診断できる。このとき、他の区間を走行したときの実際のエンジン走行距離Rを、その区間に関する道路情報に基づいて補正して基準化し、R0が劣化判定基本値Fを超える場合に、劣化しているものと判定する。このようにすれば、平均値としてのL0が未だ設定できていない区間を走行する場合に劣化を診断することも可能となる。
【0048】
なお、以上では、走行経路での特定区間において劣化を診断する場合について説明したが、本発明は、このようなものに限定されることはない。他の実施形態によれば、設定された走行経路において、所定距離毎にエンジン走行距離Rを検出するとともに、検出されたRをその区間に関して読み込まれた道路情報に基づいて補正し、経路全体で得られた各補正走行距離R0の積算値に基づいて診断することも可能である。
【0049】
また、ある特定経路を走行する場合には、検出されたエンジン走行距離Rを経路全体として設定される1つの補正係数KRにより補正して、補正走行距離R0を算出することができ、処理が非常に簡単となる。
以上では、エンジン1とモータジェネレータ2とがともに駆動力源を構成するもの(従って、ここでは、エンジン1への走行依存度は、エンジン走行距離Rとして示される。)について説明した。本発明は、このような形式のものに限らず、エンジン1がバッテリを充電するための発電機として機能するものに適用することも可能である。
【0050】
図6は、その一例を示したものであり、エンジン1により発電機101を駆動し、発電された電力が発電機用インバータ102を介してバッテリ103に供給されるようになっている。そして、駆動力源である電気モータ104がトルクを発生するときには、バッテリ103からモータ用インバータ105を介して三相交流電力が供給される。電気モータ104が発生したトルクは、動力伝達軸106を介して差動装置107を回転させ、駆動輪108、108の車輪駆動軸109,109を回転させるようになっている。
【0051】
このような構成の駆動装置では、エンジン1と車輪駆動軸109とが機械的には接続されていないので、エンジン1が車両の走行に直接寄与することはない。しかしながら、バッテリ103が劣化したときにはその消耗が速くなることを考えると、劣化の進行に応じて発電機101による発電頻度、すなわち、エンジン1の運転時間が長くなることが想定される。
【0052】
従って、例えば、判定区間を走行した場合のエンジン1の運転時間を検出し、これを前述と同様にして実際の道路状況に応じて補正することが考えられる。そして、得られた補正運転時間を基準値と比較し、基準値よりも長期化した場合にバッテリ103が劣化しているものと判定することができる。この基準値は、初期状態において得られた補正運転時間の平均値に所定の安全率を乗じたものであると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図
【図2】同上駆動装置の制御装置の構成図
【図3】同上制御装置により実行されるバッテリ劣化診断制御のフローチャート
【図4】平均補正走行距離L0の演算ルーチンのフローチャート
【図5】上記制御装置によるバッテリ劣化診断の概念図
【図6】本発明の他の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図
【符号の説明】
1…エンジン
2…モータジェネレータ
3…トルクコンバータ
4…変速機
5…動力伝達軸
6…後輪側差動装置
7…後輪
8…後輪駆動軸
9…前輪
10…モータジェネレータ
11…動力伝達軸
12…前輪側差動装置
13…前輪駆動軸
14…バッテリ
15a,15b…インバータ
21…ハイブリッドコントロールモジュール
31…エンジンコントロールモジュール
32…モータコントローラ
33…モータコントローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置に関し、詳細には、バッテリの劣化を、内燃機関への走行依存度により診断する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車両において、動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断する方法としては、従来より、バッテリの電流値、電圧値及び充電時間を検出するなど、バッテリ自体の出力特性に着目したものが一般的であった。本出願人に係る先願の特願2000−078462号には、バッテリの劣化が進行するほどその内部抵抗が上昇することに着目し、バッテリの平衡状態での開放端電圧と、始動時の端子電圧及び放電電流とに基づいて内部抵抗を検出するものが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バッテリの劣化は、始動時に限らず走行中にも監視できることが望ましい。ここで、走行中は、走行パターンに応じて充放電が繰り返されており、診断に必要な充電状態が常に得られるとは限らないことや、地形等により電流値や電圧値が変化することも考えられる。これらのことが走行中の劣化診断を困難なものとしていた。
【0004】
ところで、ある一定の経路を走行する場合を想定すると、バッテリが劣化したときと劣化前のときとでは、バッテリが劣化したときの方が内燃機関への走行依存度が高くなる。すなわち、パラレル式の構成では、内燃機関による走行距離が長くなる。これは、バッテリの劣化が進行しているときほど、その消耗が速く進むことによる。このことから、バッテリ自体の出力特性によらずとも、内燃機関への走行依存度を検出することで、バッテリの劣化を診断できると考えられる。
【0005】
また、特開平5−203456号公報には、走行中のエネルギー消費量が、走行距離のみに限らず、その経路の道路種別等にも影響されることが開示されている。例えば、市街地等の信号が多く設けられる道路では、交通が停滞せずに流れる場合と比較して、バッテリの消耗が速く進むことが予想される。このことから、内燃機関への走行依存度は、同じ距離を走行するにしても、道路状況に応じて変化すると考えられる。
【0006】
従って、本発明の目的は、ハイブリッド車両において、バッテリ自体の出力特性によらずにバッテリの劣化を診断できるバッテリ劣化診断装置を提供することである。
また、本発明は、同じ走行経路であっても時々変化する道路状況によらず、正確に劣化を診断することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が通過する特定走行区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記区間において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0008】
請求項2に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が走行する経路上で、所定距離毎にその区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記各区間において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0009】
請求項3に記載の発明では、ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置を、(A)車両が走行する特定経路に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、(B)前記経路において、内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、(C)道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成した。
【0010】
請求項4に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として渋滞情報を読み込むこととした。
請求項5に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として信号情報を読み込むこととした。
請求項6に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として地形情報を読み込むこととし、請求項7に記載の発明では、地形情報として道路の勾配を採用することとした。
【0011】
請求項8に記載の発明では、道路情報読込手段において道路情報として外気温度を読み込むこととした。
請求項9に記載の発明では、バッテリ劣化診断手段において、検出された実際の走行距離若しくは運転時間を読み込んだ道路情報に基づいて補正し、この補正値が基準となる走行距離若しくは運転時間を超える場合に、バッテリが劣化しているものと診断することとした。
【0012】
請求項10に記載の発明では、基準となる走行距離若しくは運転時間を、初期状態において道路情報に基づいて補正して算出された走行距離若しくは運転時間の平均値として設定することとした。
請求項11に記載の発明では、バッテリの残容量を検出するバッテリ残容量検出手段を設け、検出された残容量が所定範囲内にある場合にのみ、バッテリの劣化を診断するように構成した。
【0013】
【発明の効果】
請求項1〜3に係る発明によれば、バッテリの劣化を、バッテリ自体の出力特性によらず、内燃機関による走行距離若しくはその運転時間として検出される内燃機関への走行依存度により診断することとした。このため、経路途中における時々のバッテリの状態によらず、所定の経路を走行したことをもって診断できるので、融通性の高い診断が可能となる。
【0014】
また、バッテリの劣化を、どのような走行経路であっても内燃機関への走行依存度という1つのパラメータにより診断できるので、非常に簡便である。このとき、道路情報に基づいてこのパラメータが補正されるので、高い診断精度が得られる。
請求項1に係る発明によれば、特に、走行経路が全体として一致しなくとも、部分的に対応する特定区間での走行依存度により診断できるので、診断頻度を確保できる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、特に、所定距離毎にその区間に関する道路情報に基づいて補正される走行依存度により診断することで、走行依存度の検出精度が向上するので、診断精度を向上できる。
請求項3に係る発明によれば、特に、特定経路を走行する(すなわち、走行経路が全体として一致する)場合に検出される走行依存度に基づいて診断することで、診断に要する処理を簡略化できる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、道路情報として渋滞情報を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。道路が渋滞している場合には、交通が円滑な場合と比較してバッテリの消耗が速く、内燃機関への走行依存度が高くなるからである。
請求項5に係る発明によれば、道路情報として信号情報を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。信号が多く設置されている経路では、車両が停止及び再発進を繰り返すことが予測され、バッテリの消耗が速いからである。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、道路情報として地形情報を、特に、請求項7の発明により道路の勾配を採用することで、内燃機関への走行依存度をより正確に検出できる。傾斜路と平地とではバッテリの消耗度合が異なり、例えば、登り坂では、消耗がより速く進むからである。
請求項8に係る発明によれば、道路情報として外気温度を採用することで、内燃機関への走行依存度の検出にバッテリの温度が反映されることとなるので、バッテリをより最適に管理できる。
【0018】
請求項9に係る発明によれば、道路情報に基づいて補正された内燃機関への走行依存度と、基準となる走行依存度との比較により、簡単にバッテリの劣化を診断できる。
請求項10に係る発明によれば、比較のための基準依存度を、初期状態において補正して算出された走行依存度の平均値とすることで、比較結果の信頼性を向上できる。
【0019】
請求項11に係る発明によれば、バッテリの残容量が所定範囲内にある場合にのみバッテリの劣化を診断することで、誤診を防止できる。バッテリの残容量が過度に少ない場合には、劣化がそれほど進行していなくとも内燃機関への走行依存度が高い値として検出されることが考えられるからである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図である。なお、図に向かって左側の車輪9,9が前輪であり、その逆の右側の車輪7,7が後輪である。
【0021】
本車両では、内燃機関(以下「エンジン」という。)1の出力側に、発電機としての機能を兼ね備える電気モータ(以下「モータジェネレータ」という。)2を直結し、さらに、エンジン1及びモータジェネレータ2に対して、トルクコンバータ3及び変速機4を接続している。そして、変速機4の出力側に接続された動力伝達軸(プロペラシャフト)5により、後輪側差動装置6を介してエンジン駆動輪(ここでは、後輪7,7)の車輪駆動軸8,8が駆動されるようにしている。
【0022】
ここで、モータジェネレータ2は、エンジン1のアシスト装置としての機能を有し、エンジン1の始動時には、エンジン1のクランキングを行う始動手段として用いられる。また、減速運転時には、モータジェネレータ2を発電機として機能させ、回生した制動エネルギーをバッテリ14の充電のために使用することが可能である。
【0023】
一方、非エンジン駆動輪である前輪9,9に対しては、モータジェネレータ10が設けられており、その出力側に接続された動力伝達軸(比較的小型のプロペラシャフト)11及び前輪側差動装置12を介して、モータジェネレータ10により発生されたトルクが前輪9,9の車輪駆動軸13,13に伝達され、もって前輪側からも駆動力が得られるようにしている。
【0024】
モータジェネレータ10は、その電力源を構成するバッテリ14に、インバータ15bを介して接続されている。モータジェネレータ10からトルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15bによって三相交流電力に変換されて、モータジェネレータ10に供給される。
一方、モータジェネレータ2は、バッテリ14に、インバータ15aを介して接続されている。そして、モータジェネレータ2からトルクが得られている状態では、バッテリ14の放電電力がインバータ15aによって三相交流電力に変換されて、モータジェネレータ2に供給される。
【0025】
ここで、後輪駆動軸8,8と前輪駆動軸13,13との間には物理的な結合がなく、前後の駆動軸に対してそれぞれ無関係にトルクを伝達することが可能である。すなわち、後輪駆動軸8,8へは、エンジン1及びモータジェネレータ2により、また前輪駆動軸13,13へは、モータジェネレータ10により、それぞれトルクが伝達される。
【0026】
実際の走行時において、通常走行モードでは、後輪7,7のみを駆動輪としてFR方式により車両を推進する。そして、ドライバーの選択等に基づいて4輪駆動状態とする場合には、モータジェネレータ10から前輪駆動軸13,13にトルクが伝達されることにより、前後両輪を駆動輪として4WD方式を成立させることが可能である。
【0027】
また、所定の低速走行モード(例えば、車速が時速20km未満のとき)では、前輪9,9のみを駆動輪とし、モータジェネレータ10のみにより車両を推進する。そして、ドライバーからの加速要求に応じてエンジン1を始動させ、駆動力源をモータジェネレータ10からエンジン1に切り換えて、上記通常走行モードに移行するようにしている。
【0028】
次に、制御系統の構成について説明する。エンジン1、モータジェネレータ2及び10の統合コントローラとしてのハイブリッドコントロールモジュール(以下「HCM」と略す。)21は、通信ライン91を介して、エンジンコントロールモジュール(以下「ECM」と略す。)31、モータジェネレータ2及び10の制御装置(モータコントローラ;以下「M/C」と略す。)32及び33に接続されている。
【0029】
図2は、本制御系統の構成をより詳細に示したものである。同図において、HCM21には、運転状態として、アクセル開度センサ41からのアクセル開度APO、車速センサ42からの車速V、及び回転速度センサ43からのエンジン回転数Neが入力される。
HCM21は、車載ナビゲーション装置と相互に通信可能に接続されており、符号51は、そのコントロールユニット(以下「C/U」と略す。)を示している。C/U51には、GPS(全世界測位システム)情報受信アンテナ61を備える受信装置73からGPS情報が入力されるとともに、VICS(道路交通情報通信システム)情報受信アンテナ62を備える受信装置74からVICS情報が入力される。
【0030】
C/U51は、ドライバーによる操作パネル72の目的地入力操作に応答して経路探索を行う機能を有しており、設定された経路に関する道路地図情報を記憶装置71から読み出し、GPS情報及びVICS情報とともにHCM21に提供する。この提供される情報には、経路ID、区分、道路種別、渋滞状況、道路勾配、距離、信号密度等が含まれる。なお、符号81は、道路地図情報に基づいて作成される道路地図を表示する表示装置であり、道路地図上には、GPS情報に基づいて検出される車両の現在位置が示される。
【0031】
HCM21は、上述の各種センサ41〜43及びナビゲーション装置からのナビゲーション情報に基づいて、ECM31及びM/C32,33に対して制御指令を発生する。
次に、ECM21により実行される制御のうち、バッテリ14の劣化診断制御について説明する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る劣化診断制御のフローチャートである。まず、ドライバーによる目的地入力操作に基づいて走行経路が設定されると、その経路上で劣化診断のための判定区間を設定する。この判定区間は、新規に設定される場合と、以前に走行した経験がある特定区間として設定される場合とがある。
ステップ(以下「S」と略す。)において、車両の現在位置が判定区間の始点に到達すると、S2では、バッテリ2の残容量を検出する。バッテリ2の残容量は、バッテリ2の開放端電圧OCVに基づいて、充電状態SOCとして推定的に検出する。
【0033】
S3では、バッテリ2の残容量、すなわち、充電状態SOCが設定範囲内にあるか否かを判定する。設定範囲内にあると判定した場合には、S4へ進む一方、設定範囲内にないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。充電状態SOCが過度に低い状態では、モータジェネレータ10からのトルクが不足し、バッテリ14が正常であってもエンジン1により走行せざるを得ない。このような条件では、バッテリ14の劣化を誤診する可能性があるので、劣化診断を禁止するのである。
【0034】
なお、バッテリ14の充電状態SOCは、減速回生の可能性や、モータジェネレータ2,10の出力を考慮して、50%付近においてある一定の幅をもって制御されるのが好適である。
S4では、エンジン1による走行距離(以下「エンジン走行距離」という。)Rを検出する。ここで、Rは、制御周期毎にエンジン1がトルクを発生した距離dRを検出し、これを積算して求められる(すなわち、R=ΣdR)。
【0035】
S5では、車両の現在位置が判定区間の終点に到達したか否かを判定する。終点に到達した場合には、S6へ進む一方、未だ到達していないうちは、S4へ戻ってエンジン走行距離Rの検出を継続する。
S6では、エンジン走行距離Rと現状の道路状況とに基づいて、次のように平均補正走行距離L0を算出する。図4は、L0を演算するためのサブルーチンである。
【0036】
S21では、道路情報として、道路地図情報及びVICS情報といったナビゲーション情報を読み込む。道路地図情報としては、信号密度及び道路勾配が読み出され、VICS情報としては、渋滞状況が読み出される。なお、外気温度については、ここではVICS情報としての気象情報から読み出すこととするが、センサにより検出してもよい。
【0037】
S23では、読み込んだ道路情報に基づいてエンジン走行距離Rを補正して、補正走行距離R0を算出する。この補正に対して各種道路情報は、補正係数KRの設定に反映される。そして、設定されたKRをRに乗じることによりR0を算出する(すなわち、R0=R×KR)。
具体的には、まず、渋滞状況については、同じ判定区間であっても、そこで渋滞している場合と渋滞していない場合とを比較すると、渋滞している場合には、一定距離を走行するために要するエネルギー消費量が多く、バッテリ14が劣化していなくとも、その消耗が速くなる。従って、初期の充電状態SOCを一定としたならば、実際の劣化度合よりもエンジン走行距離Rが長い値として検出されることが考えられる。このため、渋滞個所では、補正係数KRを減少させ、その区間が渋滞していなかったとしたならば得られたとされるエンジン走行距離(補正走行距離R0)に換算する。
【0038】
信号密度についても同様であり、信号が多く設置された区間を走行する場合には、それだけ車両が停止及び再発進を繰り返す可能性が高いので、バッテリ14の消耗が速くなる。従って、補正係数KRを減少させ、信号密度が低く円滑に走行できたならば得られたとされるエンジン走行距離に換算する。
また、道路勾配については、登り勾配が大きい道路ほど駆動力を増加させる必要があるので、エンジン1への走行依存度が高くなる。従って、この場合も補正係数KRを減少させ、平地であったならば得られたとされるエンジン走行距離に換算する。
【0039】
なお、このように、地形に基づいて補正できることは、過去に走行経験のない区間を走行する場合であっても、エンジン走行距離を基準化して評価することが可能となることから、情報の不足を補える点で有利である。すなわち、本実施形態に係るバッテリ14の劣化診断は、同じ判定区間を走行する場合に限らず、過去に走行経験のある似たような区間を走行したときに得られたエンジン走行距離と、今回算出された補正走行距離R0とに基づいて行うこともできるのである。
【0040】
外気温度については、例えば、熱地においては、モータジェネレータ10が通常の大きさのトルクを出力するように操作されたとしても、その温度が過度に上昇することが考えられる。そのような場合には、バッテリ14が正常であっても、モータジェネレータ10の故障を防止するために出力制限がかけられるので、エンジン走行距離が長い値として検出される。従って、外気温度が所定値以上に高いときには、補正係数KRを減少させ、所定の温度条件での場合に換算する。
【0041】
S23では、判定区間を走行するのが(過去に走行経験のある区間を持ち出した場合を含めて)初めてか否かを判定する。初めてであれば、S24へ進んで、符合Nを1に設定するとともに、平均補正走行距離L0を0に設定する。その一方、初めてでなければ、S25へ進んで符号Nに1を加算する。
S26では、符号Nが所定値N0(例えば、5)以上であるか否かを判定する。所定値以上であると判定した場合には、S28へ進む一方、所定値未満であると判定した場合には、S27へ進む。S27では、次式(1)により、補正走行距離R0の平均値Lを算出する。ここで、Ln−1は、前回の制御で算出された平均値である。
【0042】
L=(Ln−1×(N−1)+R0)/N ・・・(1)
S28では、符号NがN0であるか否かを判定する。N0であると判定した場合には、S29へ進む一方、N0でないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。すなわち、S29へは、NがN0である場合にのみ進むことになる。S29では、次式(2)により平均補正走行距離L0を算出する。
【0043】
L0=(L×(N−1)+R0)/N ・・・(2)
図3に戻り、続くS7では、平均補正走行距離L0が0であるか否かを判定する。L0は、符号Nが所定値N0未満である間、0に設定される。L0が0であると判定した場合には、本ルーチンをリターンする一方、0以外の値であれば、S8へ進む。
【0044】
S8では、平均補正走行距離L0に安全率KLを乗じて、劣化判定基本値F(F=L0×KL)を算出する。そして、今回算出された補正走行距離R0がFを超えているか否かを判定する。超えていると判定した場合は、S9へ進む一方、超えていないと判定した場合には、本ルーチンをリターンする。
S9では、バッテリ劣化判定カウントmに1を加算し、続くS10では、加算後のカウントmが所定値mLに達したか否かを判定する。未だ達していないうちは、本ルーチンをリターンする一方、達したと判定した場合には、S11へ進む。S11では、MILを点灯させるなどして、バッテリ14が劣化したことの認識をドライバーに促す。
【0045】
次に、図5を参照して、本劣化診断制御の作用について説明する。本劣化診断制御は、同じ判定区間を走行する場合であっても、バッテリ14が劣化していれば、その分エンジン1への走行依存度が増し、エンジン走行距離R(詳細には、補正走行距離R0)が延長されることに基づいている。
図5に示すように、バッテリ14が劣化していないうちは、補正走行距離R0は、初期状態(バッテリ14が新品の状態)において算出されたR0の平均値L0に安全率KLを乗じた値Fを下回ることになる。しかしながら、バッテリ14が劣化し、その消耗が速く進むようになると、その区間を走行した場合の補正走行距離R0は徐々に延長され、交換が必要なほどに劣化が進行したときには、R0が劣化判定基本値Fを上回ることになる。R0がFを上回っているとの判定が所定回数連続して得られた場合には、実際に劣化していると判断でき、劣化判定を下すのである。
【0046】
このように、本実施形態によれば、バッテリ14の劣化を、所定の判定区間を走行したときのエンジン走行距離Rに基づいて診断するので、経路途中における時々のバッテリの状態によらずに診断を行えるという利点がある。また、実際の道路状況に応じて補正するとしても、診断のための基本的なパラメータがエンジン走行距離Rのみであるから、非常に簡便である。
【0047】
そして、ある判定区間について平均補正走行距離L0がひとたび設定されてしまえば、その後は、この区間と似たような他の区間を走行するときにも、このL0を用いて劣化を診断できる。このとき、他の区間を走行したときの実際のエンジン走行距離Rを、その区間に関する道路情報に基づいて補正して基準化し、R0が劣化判定基本値Fを超える場合に、劣化しているものと判定する。このようにすれば、平均値としてのL0が未だ設定できていない区間を走行する場合に劣化を診断することも可能となる。
【0048】
なお、以上では、走行経路での特定区間において劣化を診断する場合について説明したが、本発明は、このようなものに限定されることはない。他の実施形態によれば、設定された走行経路において、所定距離毎にエンジン走行距離Rを検出するとともに、検出されたRをその区間に関して読み込まれた道路情報に基づいて補正し、経路全体で得られた各補正走行距離R0の積算値に基づいて診断することも可能である。
【0049】
また、ある特定経路を走行する場合には、検出されたエンジン走行距離Rを経路全体として設定される1つの補正係数KRにより補正して、補正走行距離R0を算出することができ、処理が非常に簡単となる。
以上では、エンジン1とモータジェネレータ2とがともに駆動力源を構成するもの(従って、ここでは、エンジン1への走行依存度は、エンジン走行距離Rとして示される。)について説明した。本発明は、このような形式のものに限らず、エンジン1がバッテリを充電するための発電機として機能するものに適用することも可能である。
【0050】
図6は、その一例を示したものであり、エンジン1により発電機101を駆動し、発電された電力が発電機用インバータ102を介してバッテリ103に供給されるようになっている。そして、駆動力源である電気モータ104がトルクを発生するときには、バッテリ103からモータ用インバータ105を介して三相交流電力が供給される。電気モータ104が発生したトルクは、動力伝達軸106を介して差動装置107を回転させ、駆動輪108、108の車輪駆動軸109,109を回転させるようになっている。
【0051】
このような構成の駆動装置では、エンジン1と車輪駆動軸109とが機械的には接続されていないので、エンジン1が車両の走行に直接寄与することはない。しかしながら、バッテリ103が劣化したときにはその消耗が速くなることを考えると、劣化の進行に応じて発電機101による発電頻度、すなわち、エンジン1の運転時間が長くなることが想定される。
【0052】
従って、例えば、判定区間を走行した場合のエンジン1の運転時間を検出し、これを前述と同様にして実際の道路状況に応じて補正することが考えられる。そして、得られた補正運転時間を基準値と比較し、基準値よりも長期化した場合にバッテリ103が劣化しているものと判定することができる。この基準値は、初期状態において得られた補正運転時間の平均値に所定の安全率を乗じたものであると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図
【図2】同上駆動装置の制御装置の構成図
【図3】同上制御装置により実行されるバッテリ劣化診断制御のフローチャート
【図4】平均補正走行距離L0の演算ルーチンのフローチャート
【図5】上記制御装置によるバッテリ劣化診断の概念図
【図6】本発明の他の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の構成図
【符号の説明】
1…エンジン
2…モータジェネレータ
3…トルクコンバータ
4…変速機
5…動力伝達軸
6…後輪側差動装置
7…後輪
8…後輪駆動軸
9…前輪
10…モータジェネレータ
11…動力伝達軸
12…前輪側差動装置
13…前輪駆動軸
14…バッテリ
15a,15b…インバータ
21…ハイブリッドコントロールモジュール
31…エンジンコントロールモジュール
32…モータコントローラ
33…モータコントローラ
Claims (11)
- ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置であって、
車両が通過する特定走行区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、
前記区間において、前記内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、
前記道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、前記機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、前記バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成されるバッテリ劣化診断装置。 - ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置であって、
車両が走行する経路上で、所定距離毎にその区間に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、
前記各区間において、前記内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、
前記道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、前記機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、前記バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成されるバッテリ劣化診断装置。 - ハイブリッド車両の動力装置を構成する電気モータのバッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断装置であって、
車両が走行する特定経路に関する道路情報を読み込む道路情報読込手段と、
前記経路において、前記内燃機関が実際に運転された走行距離若しくは運転時間を検出する機関走行距離検出手段と、
前記道路情報読込手段により読み込まれた道路情報と、前記機関走行距離検出手段により検出された実際の走行距離若しくは運転時間とに基づいて、前記バッテリの劣化を診断するバッテリ劣化診断手段と、を含んで構成されるバッテリ劣化診断装置。 - 前記道路情報読込手段は、前記道路情報として渋滞情報を読み込む請求項1〜3のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記道路情報読込手段は、前記道路情報として信号情報を読み込む請求項1〜4のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記道路情報読込手段は、前記道路情報として地形情報を読み込む請求項1〜5のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記地形情報は、道路の勾配である請求項6に記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記道路情報読込手段は、前記道路情報として外気温度を読み込む請求項1〜7のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記バッテリ劣化診断手段は、前記検出された実際の走行距離若しくは運転時間を前記読み込まれた道路情報に基づいて補正し、該補正値が基準となる走行距離若しくは運転時間を超える場合に、前記バッテリが劣化しているものと診断する請求項1〜8のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記基準となる走行距離若しくは運転時間は、初期状態において前記道路情報に基づいて補正して算出された走行距離若しくは運転時間の平均値として設定される請求項9に記載のバッテリ劣化診断装置。
- 前記バッテリの残容量を検出するバッテリ残容量検出手段を備え、前記バッテリ劣化診断手段は、検出された残容量が所定範囲内にある場合にのみ、バッテリの劣化を診断する請求項1〜10のいずれか1つに記載のバッテリ劣化診断装置。
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