JP3672759B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関し、特に優れた耐衝撃性を備える熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略することがある)は成形性に優れ、耐溶剤性をはじめ種々の優れた特性を有する熱可塑性材料であり、溶融成形および射出成形により良好な物理的、機械的性質を有しており、種々の用途に用いられている。これらのうち代表的な使用用途として、電気・電子部品用途・電化製品ハウジング・自動車用途といったものが挙げられる。しかしながら元来PBT樹脂は結晶化速度が速いことに加え、到達結晶化度が高いために靭性が不足する。靭性はPBTポリマー内部でのクラック進行であり、これを抑制するための方法としてエラストマーを添加する方法や分子量を高くする方法などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした方法は過剰なエラストマーの添加などを招きやすく流動性の悪化を招くなどの問題を有していた。
本発明は上記課題を鑑み、流動性に優れ且つ耐衝撃性の優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる現状に鑑み、本発明者は前記課題を鋭意検討した結果、PBT中に分散したエチレン-α-オレフィン共重合体が特定の粒径分布を有する場合に、組成物の流動性を損なうことなく優れた耐衝撃性を有することを見出し本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、ポリブチレンテレフタレート(A)100重量部およびα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合させて得た変性エチレン-α-オレフィン共重合体(B)0.1〜20重量部よりなる樹脂組成物であって、ディリクレ分割により測定した変性エチレン-α-オレフィン共重合体(B)粒子の有効範囲平均値をDa,標準偏差をDsとしたときにDa×Ds<200μm4であり、樹脂組成物をJIS K−7210 A法で測定した250℃、325gでのMFR値が4以上である樹脂組成物である。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるポリブチレンテレフタレート(A)はテレフタル酸を主たる酸成分とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。ここで、主たる成分とは、全酸成分又は全グリコール成分に対して80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占める成分を言う。
【0007】
共重合可能な酸成分は、例えば、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等;脂環族ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸である。
【0008】
共重合可能なグリコール成分は、例えばエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール、シキリレングルコール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスヒドロキシエトキシビスフェノールAである。
【0009】
ポリエステルが実質的に成形性能を失わない範囲、例えば3モル%以下の範囲で、多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸を共重合してもよい。
【0010】
ポリブチレンテレフタレートを得る際に用いることのできる他の共重合成分の例としては、オキシ酸、例えばp−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸がある。
【0011】
また、分子量の異なるポリブチレンテレフタレートを2種類以上混合してもよい。
【0012】
本発明に用いられるエチレン-α-オレフィン共重合体 (B)としては、エチレン重合体またはエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体(以下、この両者を総称してエチレン重合体という)を用いる。
【0013】
エチレン重合体としては共重合タイプの方が好ましく、共重合成分であるα-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、デセン−1、4−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1を挙げることができる。これらの中ではプロピレンおよびブテン−1が特に好ましい。また、上記エチレン重合体は、これにα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合させて得た変性エチレン重合体として用いる。
【0014】
α,β−不飽和カルボン酸またはその酸誘導体(以下、これらを総称して単にα,β−不飽和カルボン酸という)としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸あるいは前記酸のエステル、グリシジルエステル、酸無水物またはイミド等を挙げることができる。これらの中ではグリシジルエステル、無水マレイン酸およびマレイン酸イミドが特に好ましい。
【0015】
未変性エチレン重合体にグラフト重合させるα,β−不飽和カルボン酸の量が多すぎる場合には得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が黄色ないし赤色に着色して外観の悪い成形品しか得られないことから、グラフト重合させる量は、変性エチレン重合体全体の0.1〜1重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.8重量%である。なお、ここでグラフト重合とは未変性エチレン重合体の一部または全部がα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体のモノマーまたはポリマーと化学的に結合することを意味する。
【0016】
このような変性エチレン重合体は、常法に従って未変性エチレン重合体にα,β−不飽和カルボン酸を添加し、普通150〜300℃で溶融混練することにより容易に製造できる。溶融混練に際してはスクリュー型押出機がよく用いられる。
【0017】
もちろんグラフト重合を効率よく生起させるためにα,α*−ビス−t−ブチルパーオキシ−p−ジイソプロピルベンゼンのような有機過酸化物を未変性エチレン重合体に対し0.001〜0.05重量%用いてもよい。
【0018】
未変性エチレン重合体としては、例えば、低密度ポリエチレンあるいはチーグラー・ナッタ系触媒の中でオキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム等のバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物を用いて50モル%以上好ましくは50〜95モル%のエチレンと50モル%以下好ましくは20〜5モル%のα−オレフィンとを共重合することにより得られる物が挙げられる。このような未変性エチレン重合体として特に好適な物として、三井石油化学工業(株)社よりタフマーの商標で市販されている一連のポリマー例えばタフマーA-4085、タフマーA-4090、タフマーA-20090等のタフマーAシリーズ(エチレンーブテン-1共重合体)、タフマーP-0180、タフマーP-0280、タフマーP-0480、タフマーP-0680等のタフマーPシリーズ(エチレンープロピレン共重合体)が挙げられる。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体 (B)の配合量は、ポリブチレンテレフタレート(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは全組成物に対して0.1〜10重量%となる量である。変性エチレン系共重合体の配合量が0.1重量部以下であると耐衝撃性の改良効果がなく、20重量部を超えると剛性の低下が著しく、エンジニアリングプラスチックスとして使用するうえでの問題が生じる。
【0020】
また、本発明の樹脂組成物中の(B)成分の分散粒子はディリクレ分割により測定した粒子の有効範囲平均値をDa,標準偏差をDsとしたときにDa×Ds<200μm4であり、JIS K−7210 A法で測定した250℃、325gでのMFR値が4以上である必要がある。
【0021】
耐衝撃性の向上には分散粒子の大きさだけでなくその分散状態が大きく関与する。例え分散粒子面積が小さくとも分散粒子が凝集したような状態であると耐衝撃性の向上は見込めない。また、十分に小さな分散粒子が得られなくとも均一な分散状態であれば耐衝撃性の向上は可能である。
【0022】
こうした分散状態の評価方法としてはH.Tanaka et al,J Appl.Phys.65(1989)に記載されたディリクレ分割法が有効である。この評価により得られた各分散粒子の占有する面積の平均値は各々の粒子が有効な効果を示し得る範囲を表し、標準偏差は各々の粒子の分散状態を表すことができる。標準偏差が小さければ均一分散状態であり、大きいほど凝集状態である。
【0023】
こうした均一分散性を作り出す方法としては(A)成分、(B)成分の250℃におけるせん断速度300sec-1における溶融粘度をそれぞれηA,ηBとしたときに下記(I)式を満足することが好ましい。
3<ηB/ηA <15 (I)
ηB/ηAがこの範囲から外れると(B)成分の粒子の分散が難しくなる。また、JIS K−7210 A法で測定した樹脂組成物の250℃、325gでのMFR値4が以上である必要がある。MFR値が4未満であると流動性が低く実用性に乏しい。
【0024】
本発明の組成物には、所望により無機充填剤として、炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、ホワイトカーボン、カーボンブラック、ガラスビーズ等のごとき粒状又は無定形の充填剤;カオリンクレー、タルク等のごとき板状の充填剤;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等のごとき燐片状の充填剤;ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム等のごとき繊維状の充填剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0025】
また、必要に応じて難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの他の配合剤をその効果の発現量添加してもよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、これらの配合成分が均一に分散されていることが好ましい。配合成分の全部または一部を加熱した二軸押出機に一括または分割して供給し、溶融混練により均質化された後に、針金状に押出された溶融樹脂を冷却固化させ、ついで所望の長さに切断して粒状化する方法が好ましい。
【0027】
このようにして作られた成形用樹脂組成物から樹脂成形品を得るには、通常十分乾燥された状態に保ったまま射出成形機などの成形機に供して成形する。
【0028】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の評価方法は下記のとおりである。表中において組成物を構成する成分の単位は特に記載のない限り重量部である。
【0029】
[変性EPRの製造]
三井化学(株)製未変性エチレン-プロピレン共重合体(タフマーP0680)100重量部、少量のアセトンに溶解させたα,α−ビス−t−ブチルパーオキシ−p−ジイソプロピルベンゼン0.025重量部および無水マレイン酸0.5重量部をヘンシェルミキサー内でブレンドした後、スクリュー径44mmの二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で押出しペレット化して変性エチレン重合体(以下、変性EPR1と表記:無水マレイン酸共重合量0.33重量%)を得た。
【0030】
三井化学(株)製未変性エチレン-プロピレン共重合体(タフマーP0680)100重量部、少量のアセトンに溶解させたα,α−ビス−t−ブチルパーオキシ−p−ジイソプロピルベンゼン0.025重量部および無水マレイン酸1.0重量部をヘンシェルミキサー内でブレンドした後、スクリュー径44mmの二軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で押出しペレット化して変性エチレン重合体(以下、変性EPR2と表記:無水マレイン酸共重合量0.66重量%)を得た。
【0031】
[実施例1〜6,比較例1〜6]
固有粘度(オルソクロロフェノール中、35℃)が0.70dl/gであるポリブチレンテレフタレート(以下PBT−Aと表記)、固有粘度(オルソクロロフェノール中、35℃)が1.05dl/gであるポリブチレンテレフタレート(以下、PBT−Bと表記)、衝撃改良剤としてタフマーP0680,先にあげた変性EPR1、変性EPR2を、表に示す割合(重量部単位)で均一に予備混合し、スクリュー径44mmの二軸押出機を用いて、バレル温度250℃で表に示す条件で溶融混練しペレット化した。得られたペレットを130℃×5時間予備乾燥した後に射出成形し後述の方法により物性を評価した。
【0032】
[評価方法]
[せん断速度300sec-1における溶融粘度の測定]
130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥させたPBT−A,PBT−Bおよび未乾燥状態のエチレン−α−オレフィン共重合体を島津製作所(株)製高架式フローテスター CFT−500を用い測定温度250℃,ダイスL/D=10/1mm,予熱時間300秒の条件のもとに荷重を変化させて、せん断速度300sec-1の前後5点のデータを測定し得られたデータを最少自乗法によるフィッティングを施しせん断速度300sec-1による溶融粘度を求めた。
【0033】
[衝撃強度]
ASTM D256で規定される成形品を型締め力60t、シリンダー容量145cmの射出成形機を用いてシリンダー温度260℃、金型温度80℃、全成形サイクル45秒の条件で成形し機械加工にて試験片の残厚みが0.4インチに成るようにノッチ加工を施して試験片を得た。この試験片をASTM−D256に従い衝撃強度を評価した。
【0034】
[流動性]
JIS K−7210 A法により定められたMFR試験方法に従い、樹脂組成物の測定温度250℃荷重325gにおけるMFR値を測定し流動性とした。
【0035】
[ディリクレ分割法による粒子有効範囲の測定]
衝撃強度を測定した試験片を140℃に加熱したキシレン中で3時間加熱処理し、衝撃改良剤成分を溶解させた。この試験片の破断面を電子顕微鏡で観察した。
電子顕微鏡は日本電子(株)製JSM−6100型を用いた。1サンプルにつき3枚の写真を倍率2000倍で撮影した。得られた画像をインタークエスト(株)製の画像処理ソフトImage Hyper2を使用しディリクレ分割した。ディリクレ分割の方法は(H.Tanaka et al,J Appl.Phys.65(1989))の方法に準拠した。分散粒子の画像に対して4近傍排他的膨張処理を施し各々の粒子の占有範囲に分割した。得られた占有範囲の画像から元の分散粒子画像の論理差をもとめた後に、フレームに接している部分を除去した。この画像の各領域の面積を求め、各粒子の有効範囲とした。
実施例1のディリクレ分割後の画像を図1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、流動性に優れ耐衝撃性が改良された樹脂組成物ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のディリクレ分割後の画像である。
Claims (1)
- ポリブチレンテレフタレート(A)100重量部およびα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合させて得た変性エチレン-α-オレフィン共重合体(B)0.1〜20重量部よりなる樹脂組成物であって、ディリクレ分割により測定した変性エチレン-α-オレフィン共重合体(B)粒子の有効範囲平均値をDa,標準偏差をDsとしたときにDa×Ds<200μm4であり、樹脂組成物をJIS K−7210 A法で測定した250℃、325gでのMFR値が4以上である樹脂組成物。
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