JP3675520B2 - 酸化物単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、チョクラルスキー法による酸化物単結晶の製造方法に関し、特に表面弾性波素子に用いられるタンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶の製造に好適な酸化物単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの酸化物単結晶はチョクラルスキー法で製造することが一般的に行われており、これは貴金属ルツボの回りを耐火物で囲み、原料を加熱・溶融した後に、種結晶を融液につけ、種結晶を回転引き上げすることで行われる。
【0003】
この場合、結晶の肩部は円錐状となり、この肩円錐部の角度θは45°位が最も歪みが少なくかつ転位等の欠陥も少なく良いとされていることより、過去においては通常θは30〜60°の範囲で作られていた。
【0004】
しかし、結晶製造での生産性を上げる目的で特開昭61−266395号公報で開示されているように結晶の肩の部分の円錐部をできるだけ少なくするという製造方法、すなわち、融液の過冷却状態の温度を調整して引上げ結晶の肩部の肩角度を10°以下になるように単結晶を成長させる方法が開示されている。
【0005】
また、特開昭62−260792号公報では肩部開き角度を45°以上110°以下とすること、つまり、肩角度θを35〜67.5°とすることで肩部形成時に発生する異常成長稜を抑えることができることが開示されている。
【0006】
以上のように、生産性の面からは肩角度は小さい値(10°以下)が好ましく、結晶欠陥の抑制の面からは肩角度は35〜67.5°とある程度大きい方が好ましいとされている。
【0007】
このような点から、結晶欠陥の抑制が期待できるとされる特開昭62−260792号公報の方法では肩部を形成する時間が長いことより生産性が悪いという欠点があり、生産性がよい特開昭61−266395号公報の方法では歩留まりが悪いという欠点がある。
【0008】
これは、肩角度が特開昭62−260792号公報と比較して小さいためと言うよりは、肩部から結晶径が一定となるボディー部へ移行するとき、発振機出力を上げすぎることより、融液温度が上昇し、肩部での結晶の広がりが止まるとともに、育成結晶も加熱されることにより、熱歪みが結晶中に残留し、結晶のクラックが生じやすくなるためと考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、生産性と歩留まりの両者を満足し、クラックの生じ難い酸化物単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者は、上記した酸化物結晶育成中、特に肩部形成中での課題の解決方法について検討し、特には、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶といった結晶成長中の熱歪みによりクラックが生じやすい結晶を生産性が良く、歩留まり良く製造する方法について鋭意検討を行った結果、引上げ法により酸化物単結晶を製造するに当り、結晶の成長方向をX軸、結晶の直径f(X)をY軸、結晶径が増加しはじめる点を原点とした時、肩部の形成初期において上記直径f(X)の二次微分f″(X)の値を0から正の方向に単調に増加させ、肩部の形成中期においてf″(X)の値を0を横切って負の方向に単調に減少させ、肩部の形成後期においてf″(X)の値を0に向けて単調に増加させて、かつ3インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が16〜18.5mmの範囲にあるとき、f(X)の一次微分f′(X)の値が0.2〜0.08の範囲となるように、4インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が18.5〜22.5mmの範囲にあるとき、f′(X)の値が1.0〜0.22の範囲となるように肩部を形成することにより、生産性と歩留まりの両方がよい酸化物単結晶が得られることを知見した。
【0011】
即ち、肩部を含めて結晶の形状制御は目標とする形状と実際の形状との差を結晶成長の制御因子である加熱部の出力、結晶引上げ速度、種結晶回転速度にフィードバックすることで行われるが、通常はこの3つの因子の中で加熱部の出力のみにフィードバックすることが行われる。
【0012】
結晶成長はある過冷却度を融液に与えるとほぼ同じ速度で進行する。このため、ネック部の形成終了後に加熱部の出力を融液を過冷却状態となるようなある値まで下げると、ルツボ周囲の熱容量の大きさに依存する時間が経過した後に、結晶径が一定の速度で広がり始める。融液の径方向温度勾配は融液中心からルツボ方向に単調に増加しており、結晶径が増加するに従い、この温度勾配による径方向の温度上昇を打ち消すように一定の速度で加熱部の出力を下げる。結晶径の広がり速度を一定とするには、結晶成長部の過冷却度を一定となるように制御すればよく、このようにして一定の肩角度が得られる。肩部から結晶の径が一定となるボディー部へ移行するには過冷却度を急激に小さくし、結晶の広がりを抑える必要がある。このような点から、時間に対する加熱部の出力は、特開昭61−266395号公報の第2図に示されるように肩部形成中は出力を下げ、肩部からボディー部へ移行するときは加熱部の出力を上げてやる必要がある。
【0013】
しかし、出力の上昇は融液及び育成結晶の温度上昇につながり、育成結晶中に熱歪みが残留するという不利益が生じる。
【0014】
以上の加熱部の出力と結晶の形状との関係を整理すると、融液がΔTという過冷却では、結晶径の1次微分であるf′(X)、つまり結晶径の成長速度は一定の値となる。ΔTが大きければ成長速度が大きくなり肩角度が小さくなり、ΔTが小さければ成長速度が小さくなり肩角度が大きくなるものである。
【0015】
次に、加熱部の出力を変化させΔT/dtという変化量を融液に与えるとする。この結果、結晶形状の2次微分、つまり成長速度が変化する。
【0016】
本発明者は、上記の点を考慮し、肩部の形状とクラックの発生率について最新の自動制御装置を備えた単結晶引上げ機を用いて種々検討を重ね、肩部の形状と結晶欠陥との関係について検討した結果、結晶中に残留歪みを与えないようにするにはこの2次微分の値を単調に変化させることが重要であることを見い出したものである。
【0017】
つまり、特開昭61−266395号公報で開示されているようなネック部から肩部、肩部からボディー部にかけて折れ線的に形状を変化させると、形状の結晶長さに対する一次微分は階段関数的な変化を示し、また、2次微分は階段関数の立ち上がり、下がりの所でデルタ関数的に急激な変化を示す。つまり、折れ線的な形状は仮想的な形状ではあるが、これを実現するには加熱部の出力をデルタ関数的に、つまり急激な変化を与える必要があり、この様な急激な変化は結晶に熱歪みを与えクラックの原因となることより好ましくない。
【0018】
これに対し、酸化物単結晶の肩部を形成するに際し、結晶の成長方向をX軸、結晶の直径f(X)をY軸、結晶径が増加しはじめる点を原点とした時、肩部の形成初期において上記直径f(X)の二次微分f″(X)の値を0から正の方向に単調に増加させ、肩部の形成中期においてf″(X)の値を0を横切って負の方向に単調に減少させ、肩部の形成後期においてf″(X)の値を0に向けて単調に増加させ、かつ3インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が16〜18.5mmの範囲にあるとき、f(X)の一次微分f′(X)の値が0.2〜0.08の範囲となるように、4インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が18.5〜22.5mmの範囲にあるとき、f′(X)の値が1.0〜0.22の範囲となるようにするという肩部形成方法を採用することにより、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶等の酸化物単結晶を熱歪みを可及的に防止して歩留まりよく製造し得るものである。
【0019】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の酸化物単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法による引上げ法によって行われるもので、特にニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム単結晶の引上げに有効に採用し得るものであるが、本発明は肩部の形成に特徴を有するものである。
【0021】
本発明の肩部の形状としてはネック部から次第に肩角度を小さくするように形状を決め、最大の肩角度でも10°を越えるようにし、肩部からボディー部にかけては結晶径の広がりを急に抑えるのではなく、なだらかな角度で、つまり肩角度を次第に大きくするような形状とすばよい。また、結晶長に対する形状の2次微分を単調に変化させるということは肩部の形状を上記のようにスムーズに変化させるということであり、この結果、加熱部出力の変動が抑えられることより、肩部での段差、及び熱歪みによるクラックが防止できるものである。また、肩部からボディー部への移行が滑らかになされることより、形状的に無理なく自然な形での結晶成長がおきることより、肩部付近での歪が少なくなり、この形状からくる歪によるクラックも防止できる。
【0022】
ここで、上記のような肩部形成の制御は、具体的に加熱部出力による温度制御によって行うことができる。
【0023】
なお、肩部形成後のボディー部の引上げなど、上記肩部形成以外は通常の酸化物単結晶の引上げ、製造法を採用し、常法に従って行うことができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の酸化物単結晶の製造方法によれば、クラックを可及的に防止して生産性及び歩留まり良く酸化物単結晶を製造することができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
直径180mmφ、高さ180mmφのイリジウム製ルツボに外径185mmφ、内径130mmφ、厚さ2mmのドーナツ板状のイリジウム製リフレクターを配置し、さらにこの上に直径180mmφ、高さ180mmφの円筒状のイリジウム製アフターヒータを配置した。
【0027】
このルツボ内に組成比がLi/Ta=0.943(モル比)の焼成原料6,500gと結晶塊8,500gの合計15,000gを最初に12,000g入れ、追加チャージで残りの3,000gをいれ、溶融後、チョクラルスキー法によりX軸方位で表1及び図1に示すネック、肩部の形状の4インチ径の重さ10,500gのタンタル酸リチウム単結晶を連続して30本引き上げた。その結果、クラックの発生はなく、歩留まりは92%となった。
【0028】
【表1】
【0029】
〔実施例2〕
直径150mmφ、高さ150mmφのイリジウム製ルツボに外径160mmφ、内径105mmφ、厚さ2mmのドーナツ板状のイリジウム製リフレクターを配置し、更にこの上に直径150mmφ、高さ180mmφの円筒状のイリジウム製アフターヒータを配置した。
【0030】
このルツボ内に組成比がLi/Ta=0.943(モル比)の焼成原料4,500gと結晶塊5,500gの合計10,000gを最初に7,000g入れ、追加チャージで残りの3,000gをいれ、溶融後チョクラルスキー法によりX軸方位で表2及び図2に示すネック部・肩部の形状を持つ3インチ径の重さ6,500gのタンタル酸リチウム単結晶を連続して30本引き上げた。その結果、クラックは1本のみの発生となり、歩留まりは89%となった。
【0031】
【表2】
【0032】
〔比較例〕
直径150mmφ、高さ150mmφのイリジウム製ルツボに外径160mmφ、内径105mmφ、厚さ2mmのドーナツ板状のイリジウム製リフレクターを配置し、更にこの上に直径150mmφ、高さ180mmφの円筒状のイリジウム製アフターヒータを配置した。
【0033】
このルツボ内に組成比がLi/Ta=0.943(モル比)の焼成原料4,500gと結晶塊5,500gの合計10,000gを最初に7,000g入れ、追加チャージで残りの3,000gをいれ、溶融後チョクラルスキー法によりX軸方位で表3及び図3に示すネック、肩部の形状の3インチ径のタンタル酸リチウム単結晶を連続して30本引き上げた。その結果、クラックは5本発生し、歩留まりは71%となった。
【0034】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の結晶成長距離とf″(X)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例2の結晶成長距離とf″(X)との関係を示すグラフである。
【図3】比較例の結晶成長距離とf″(X)との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 引上げ法により酸化物単結晶を製造するに当り、結晶の成長方向をX軸、結晶の直径f(X)をY軸、結晶径が増加しはじめる点を原点とした時、肩部の形成初期において上記直径f(X)の二次微分f″(X)の値を0から正の方向に単調に増加させ、肩部の形成中期においてf″(X)の値を0を横切って負の方向に単調に減少させ、肩部の形成後期においてf″(X)の値を0に向けて単調に増加させて、かつ3インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が16〜18.5mmの範囲にあるとき、f(X)の一次微分f′(X)の値が0.2〜0.08の範囲となるように、4インチ径単結晶を製造する場合、Xの値が18.5〜22.5mmの範囲にあるとき、f′(X)の値が1.0〜0.22の範囲となるように肩部を形成することを特徴とする酸化物単結晶の製造方法。
- 酸化物単結晶がニオブ酸リチウム単結晶もしくはタンタル酸リチウム単結晶である請求項1記載の酸化物単結晶の製造方法。
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