JP3679682B2 - 梅毒抗体標準品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、梅毒抗体検査に用いる一定な品質を有する梅毒抗体標準品に関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査の分野では、血液を用いて梅毒抗体の検査を行っており、種々の測定法が開発され利用されている。これらの測定法の代表的方法としては、酵素反応を利用する生化学測定法や、抗原抗体反応を利用する免疫測定法が挙げられる。近年においては血液中の梅毒抗体を精度良く測定することが望まれ、特異性の高い遺伝子組み替え抗原を利用した免疫測定法が盛んに用いられている。
【0003】
特開平8−105897号公報においては梅毒トレポネーマ抗原より作製した試薬を用いて、梅毒抗体を検出する方法が開示されている。
また、Medical Technology Vol.27 No.5においては、北橋、巽らが、ラテックス法及びEIA法による梅毒抗体測定試薬についての評価を行っている。
【0004】
これらのいずれの記載においても、梅毒抗体測定において検量線をあらかじめ作成するという方法がとられている。その際に、標準品と呼ばれる既知の一定量の梅毒抗原に対する抗体を含んだサンプルを測定することが行われている。
この標準品は、ヒト等の梅毒抗体陽性血清から調製され、あらかじめ一定値の抗体価を有することが確認されているサンプルであり、この標準品を稀釈する等して測定の際に用いる検量線が作製される。
【0005】
しかしながら、このように梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体は、ヒト由来の物が多いので、安定して供給することが難しい。また、梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体は、その感染時期により、梅毒トレポネーマ抗原の各部位に対する抗体のでき方が違っている。これは梅毒トレポネーマ抗原が詳細にはTpN47kDaと呼ばれる部分や、TpN17kDa、又は、TpN15kDaと呼ばれる部分に免疫学的に別れており、それぞれに対する抗体のでき方がちがうために起こる問題である。
【0006】
現に、Medical Technology Vol.27 No.5において、北橋、巽らは、各試薬メーカーごとに同じ検体を測定しても、計測される抗体価に差がでることを指摘している。これは、各社とも上記の3抗原に対する抗体の管理がうまくできておらず、ロットやメーカーごとに3抗体の調整が行われていないために起こっていることである。
【0007】
例えば、感染初期では、TpN47kDaに対する抗体価が高く、TpN15kDaに対する抗体価が低くなり、逆に回復期ではその逆になるが、従来は3抗体を含めた総抗体価を梅毒抗体価として表現していた。したがって、検出試薬に用いられているそれぞれの抗原の組成比が一定であっても、標準品中のそれぞれの抗原に対する抗体組成が違うので、メーカーやロットが変わると、同じ100T.U.の標準品でも、試薬の反応性が変化してしまうことになる。
そのため、定量する際に、検量線が一定でないので定量性に支障が出てしまうという問題があった。
【0008】
なお、TpNとはTreponema pallidum Nicholsの略であり、それぞれの梅毒抗原の部位については、TpN15kDaは、Purcell BK,Swancutt MA,Radolf JDらの「Lipidajor membrane immunogen of Treponemapallidum」(Mol.Microbiol.1990 Aug;4(8):1371−1379)に報告され、TpN17kDaは、Akins DR,Purcell BK,Mitra MM,Norgard MV,Radolf JDらの「Lipid Modification of the 17−Kilodalton Membrane Immunogen of Treponema Pallidum Determines Macrophage Activation as Well as Amphiphilicity」(Infect.Immun.1993 Apr;61(4):1202−1210)に報告され、TpN47kDaは、Weigel LM, Brandt ME,Norgard MVらの「Analysis of theN−Terminal Region of the 47−Kilodalton Integral Membrane Lipoprotein ofTreponema pallidum」(Infect.Immun.1992 Apr;60(4):1568−1576)に報告されている。
【0009】
先の北橋、巽らは、Medical Technology Vol.27 No.5において、メディエースTPLA(積水化学工業社製)、セラテスタム梅毒(カイノス社製)、LPIA・TPテスト(ダイアヤトロン社製)、ランリームTP(シスメックス社製)の試薬で同一検体を測定したところ、こうした標準品の違いから、その値に3倍以上の違いがあることを指摘している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、メーカーやロットごとに検量線の値に乖離が出ず、同時に製造工程を安定化することにより、感度が良好で常に一定の品質を有する梅毒抗体標準品を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いる梅毒抗体標準品であって、梅毒抗原TpN15kDa、梅毒抗原TpN17kDa及び梅毒抗原TpN47kDaからなる群より選ばれる少なくとも1種の抗原に反応する抗体を含有する2種以上の原料を、所定の抗体価になるよう混合してなる梅毒抗体標準品である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の梅毒抗体標準品は、梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いるものである。
上述のとおり、梅毒抗体の抗体価を測定する際には、あらかじめ、標準品と呼ばれる梅毒抗原に対する抗体を一定量含んだサンプルを測定し検量線を作成する。本発明の梅毒抗体標準品は、このような梅毒抗原に対する抗体を一定量含んだサンプルである。本発明の梅毒抗体標準品は、梅毒抗体の抗体価を測定する際に、稀釈する等して検量線の作成に用いられる。
【0013】
本発明の梅毒抗体標準品に含まれる梅毒抗原に対する抗体としては特に限定されず、例えば、血清中や腹水中に存在する抗体、遺伝子組み換え等の手段を用いて産生された抗体、モノクローナル抗体等が挙げられる。これらの抗体は、ヒト由来のものであっても良いし、ウサギやウシ、ヤギ等に由来するものであっても良い。
【0014】
本発明の梅毒抗体標準品を調製するには、梅毒抗原TpN15kDa、梅毒抗原TpN17kDa及び梅毒抗原TpN47kDaからなる群より選ばれる少なくとも1種の抗原に反応する抗体を含有する2種以上の原料を、所定の抗体価になるよう混合する。
上記原料としては、梅毒陽性のヒト血清、上記の抗原で免疫したウサギ、ウシ、ヤギ等の血清や腹水、組み換え体やモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを培養した培地、組み替え体の粉砕物、市販されている抗体試薬等が挙げられる。
【0015】
上記原料の混合は、得られた梅毒抗体標準品が所定の抗体価を有するように行う。得られた梅毒抗体標準品の抗体価が所定の値となるように調整するには、それぞれの原料中の各抗体の含有量、抗体活性値、抗体価等に基づいて、3種の梅毒抗原に反応する各抗体の抗体価が常に一定値であるように、上記原料の混合を行う。それぞれの原料中の各抗体の含有量、抗体活性値、抗体価等が明らかでない場合は、あらかじめ上記の各抗体の含有量、抗体活性値、抗体価等を測定することが必要である。
【0016】
上記各抗体の含有量の測定方法としては特に限定されず、例えば、用いる血清や腹水を常法に従い精製した後、280nmの吸収波長を利用してタンパク量を測定する方法、ビゥレット法等の化学的定量法を用いてタンパク量を測定する方法等が挙げられる。
【0017】
上記の各抗体の抗体価の測定方法としては特に限定されず、例えば、下記のような方法が挙げられる。
まず、メディエースTPLA(積水化学工業社製)等の梅毒抗体測定用の市販のキットに、上記原料を反応させ原料中に存在する梅毒抗体の総抗体価を定量する。
しかるのち、梅毒抗原TpN15kDaを上記原料に大過剰となるように投入し、いわゆる中和反応を起こして検体中から梅毒抗原TpN15kDaに対する抗体を吸収除去した後、再度上記キットで抗体価を測定する。
そうすると、梅毒抗原TpN15kDaに対する抗体は先の梅毒抗原TpN15kDaと反応し吸収されるので、先に測定した総抗体価から後の抗体価の差をとれば、梅毒抗原TpN15kDaに反応する抗体量が定量できる。同様に梅毒抗原TpN17kDaに対する抗体量、梅毒抗原TpN47kDaに対する抗体価を測定する。
【0018】
本発明2は、梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いる梅毒抗体標準品であって、梅毒抗原TpN15kDaのみに反応する抗体、梅毒抗原TpN17kDaのみに反応する抗体、及び、梅毒抗原TpN47kDaのみに反応する抗体からなる群より選ばれる少なくとも2種の抗体を、所定の抗体価になるよう混合してなる梅毒抗体標準品である。
【0019】
本発明2は、本発明1と同様に、梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いる梅毒抗体標準品である。
本発明2の梅毒抗体標準品は、梅毒抗原TpN15kDaのみに反応する抗体、梅毒抗原TpN17kDaのみに反応する抗体、及び、梅毒抗原TpN47kDaのみに反応する抗体からなる群より選ばれる少なくとも2種の抗体を、所定の抗体価になるよう混合してなる。
【0020】
上記の各抗体としては、本発明1の梅毒抗体標準品に含まれる抗体と同様のものが挙げられる。
上記の各抗体を、所定の抗体価になるよう混合するには、上記の各抗体の抗体価があらかじめ明らかな場合は、その値に従い、上記の各抗体の抗体価が不明な場合は、上記の各抗体を精製後、タンパク量の濃度、抗体活性等を測定し、又は、それぞれ個別にメディエースTPLA(積水化学工業社製)等の試薬を用いて抗体価測定を行った後、所定の抗体価となるよう混合すればよい。
【0021】
本発明1及び本発明2の梅毒抗体標準品は、緩衝液に稀釈して製品とすることができるが、安定性等を勘案し適宜ショ糖等を加えても良く、更に他の添加剤を加えても良い。
【0022】
上記緩衝液としては特に限定されず、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、Good緩衝液等が挙げられる。
本発明1及び本発明2の梅毒抗体標準品の形態としては特に限定されず、例えば、溶液、凍結品、凍結乾燥品等が挙げられる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
(原料)
メディエースTPLA(積水化学工業社製)1セット(100回分)を用意した。
梅毒抗体原料としては、日本TSI社製の3種類の梅毒抗体陽性ヒト血清、LotA、LotB、LotCを100mLずつ用意した。
【0025】
(ヒト血清の抗体価測定)
以下に示した条件に従い、メディエースTPLA(積水化学工業社製)を用いて生化学自動分析装置「日立7050形」により、上記の各血清中の抗梅毒トレポネーマ抗体の総抗体価を測定した。結果を表1に示した。
測定モード:Original ABS
パラメーター:検体量20μL、ラテックス試薬(第1試薬)量50μL、検体希釈液(第2試薬)量350μL
測定波長:570nm
測定時間:検体分注後、直ちに検体希釈液を添加・混合し、その後、ラテックス試薬を添加・混合した。ラテックス試薬の添加80秒後から320秒後までの吸光度変化量を求め、これを反応量とした。
【0026】
【表1】
【0027】
次に上記の各血清を100μLずつ3本用意し、遺伝子組換TP抗原TpN15kDa、TpN17kDa、TpN47kDa(各Bio kit社製)の1mg/mL溶液を100μLずつ加えて中和した。しかるのち各抗原を加えた後の抗体価からそれぞれの抗体量を計算した。結果を表2に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
同様にメディエースTPLA(積水化学工業社製)に付属の標準品について、上記の各抗原に対する抗体の抗体価を測定した。結果を表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
メディエースTPLA(積水化学工業社製)に付属の標準品と同じ組成にするため、LotA LotB LotCを2:2:1の比で混合し、梅毒抗体標準品を調製した。
【0032】
(実施例2)
(原料)
メディエースTPLA(積水化学工業社製)1セット(100回分)を用意した。
梅毒抗体として、Ab15(Lee社製、抗梅毒抗原TpN15kDaモノクローナル抗体)、Ab17(Lee社製、抗梅毒抗原TpN17kDaモノクローナル抗体)、Ab47(シバヤギ社製、抗梅毒抗原TpN47kDaウサギポリクローナル抗体)を用い、それぞれの抗体について10mg/mL濃度の抗体液を100mLずつ用意した。
【0033】
(抗体の抗体価測定)
以下に示した条件に従い、メディエースTPLA(積水化学工業社製)を用いて生化学自動分析装置「日立7050形」により、上記の各抗体液中の抗梅毒トレポネーマ抗体の抗体価を測定した。結果を表4に示した。
測定モード :Original ABS
パラメーター:検体量20μL、ラテックス試薬(第1試薬)量50μL、検体希釈液(第2試薬)量350μL
測定波長:570nm
測定時間:検体分注後、直ちに検体希釈液を添加・混合し、その後、ラテックス試薬を添加・混合した。ラテックス試薬の添加80秒後から320秒後までの吸光度変化量を求め、これを反応量とした。
【0034】
【表4】
【0035】
同様にして、メディエースTPLA(積水化学工業社製)に付属の標準品について、上記の各抗原に対する抗体の抗体価を測定した。結果を表5に示した。
【0036】
【表5】
【0037】
メディエースTPLA(積水化学工業社製)に付属の標準品と同じ組成にするため、Ab15、Ab17、Ab47の抗体を1:2:2の比で混合し、梅毒抗体標準品を調製した。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、上記のような構成を有することより、常に安定した組成で梅毒抗原TpN15kDa、梅毒抗原TpN17kDa、梅毒抗原TpN47kDaに対する抗体を含有する梅毒抗体標準品を作ることができ、これにより試薬のロットやメーカーごとの測定値の乖離をなくすことが可能となる。
Claims (2)
- 梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いる梅毒抗体標準品であって、
梅毒抗原TpN15kDa、梅毒抗原TpN17kDa及び梅毒抗原TpN47kDaからなる群より選ばれる少なくとも1種の抗原に反応する抗体を含有する2種以上の原料を、所定の抗体価になるよう混合してなることを特徴とする梅毒抗体標準品。 - 梅毒抗体の抗体価を測定する際に、検量線の作成に用いる梅毒抗体標準品であって、
梅毒抗原TpN15kDaのみに反応する抗体、梅毒抗原TpN17kDaのみに反応する抗体、及び、梅毒抗原TpN47kDaのみに反応する抗体からなる群より選ばれる少なくとも2種の抗体を、所定の抗体価になるよう混合してなることを特徴とする梅毒抗体標準品。
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