JP3702188B2 - 速度センサレスベクトル制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、速度センサを用いずに誘導電動機をベクトル制御する速度センサレスベクトル制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
誘導電動機の速度センサレスベクトル制御装置に関しては、これまでに種々のものが提案されている。例えば「誘導電動機の速度センサレス非干渉制御方式」(昭63年電気学会産業応用部門全国大会No.85)や「センサレスベクトル制御インバータ」(昭63年電気学会論文誌D108巻2号)において、誘導電動機を駆動する速度センサレスベクトル制御の一手段が開示されている。
【0003】
ベクトル制御装置は、インバータ回路が出力するインバータ周波数ωinv と同一の角速度で回転するdq軸直交座標系上において制御演算をする場合が多い。図17は、このdq軸直交座標系と静止座標系との関係を示したベクトル図である。回転座標系であるdq軸直交座標系は、ab軸静止座標系に対してθabの位相角を有している。uvw軸は、互いに120°の位相差を有する三相の静止座標軸であって、a軸とu軸とが一致するように定義されている。
【0004】
ベクトル制御には上述したものの他にも種々の方式があるが、以下に述べる従来例および本願発明においては、上記dq軸直交座標系のd軸の向きと誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように制御する方式となっている。この方式の場合、力行時におけるインバータ回路の出力電圧ベクトルVは、例えば図17に示すベクトルV(位相角θV )のようになる。
【0005】
さて、図15は、第1の従来例であるセンサレスベクトル制御装置の構成を機能ブロックにより示したものである。
この図15において、センサレスベクトル制御装置1は、三相のインバータ回路2とベクトル制御部3とから構成されている。インバータ回路2は、フィルタコンデンサ4、インバータ主回路5およびPWM回路6から構成され、その交流出力端子には三相の誘導電動機7が接続されている。ベクトル制御部3は、指令電流演算部8、指令電圧演算部9、座標変換部10、11、電流検出器12、13、インバータ周波数演算部14、モータ速度演算部15および積分部16から構成されている。ここで、指令電流演算部8は、減算器17と速度制御部18とから構成され、指令電圧演算部9は、減算器19、20と電流制御部21、22とから構成されている。また、インバータ周波数演算部14は、誘起電圧演算部23とPI演算部24とから構成され、モータ速度演算部15は、基準すべり周波数演算部25と減算器26とから構成されている。
【0006】
インバータ周波数演算部14において、誘起電圧演算部23は、指令d軸電圧VdRefから一次抵抗R1 と一次側に換算した漏れインダクタンスσ・L1 とによるインピーダンス降下分を減算することによりd軸誘起電圧Ed を推定演算している(後述する(19)式参照)。そして、PI演算部24は、このd軸誘起電圧Ed が0に収束するように、次の(1)式に従ってインバータ周波数ωinv を演算する。ここで、Kp 、Ki は、それぞれ比例ゲイン、積分ゲインである。
【0007】
【数1】
【0008】
図16は、第2の従来例であるセンサレスベクトル制御装置の構成を機能ブロックにより示したものである。
このセンサレスベクトル制御装置27は、上記センサレスベクトル制御装置1に対し、ベクトル制御部28内のインバータ周波数演算部29の構成が異なっている。すなわち、インバータ周波数演算部29は、上述した誘起電圧演算部23に加えて、インバータ基準周波数演算部30、軸安定化補償部31および減算器32を備えて構成されている。
【0009】
誘起電圧演算部23は、指令d軸電圧VdRefと同様にして、指令q軸電圧VqRefから一次抵抗R1 と一次側に換算した漏れインダクタンスσ・L1 とによるインピーダンス降下分を減算することによりq軸誘起電圧Eq を推定演算している(後述する(20)式参照)。インバータ基準周波数演算部30は、このq軸誘起電圧Eq と指令d軸電流IdRefとを入力として、次の(2)式に従ってインバータ基準周波数ωinv*を演算する。
【0010】
【数2】
【0011】
また、軸安定化補償部31は、d軸誘起電圧Ed が0に収束するように、次の(3)式、(4)式に従って周波数補正量ωcmp を演算する。ここで、Kp 、Ki は、それぞれ比例ゲイン、積分ゲインである。
【0012】
【数3】
【0013】
減算器32は、上記インバータ基準周波数ωinv*から上記周波数補正量ωcmp を減算することによりインバータ周波数ωinv を生成する。このように、第2の従来例では、誘起電圧演算部23で推定演算されたq軸誘起電圧Eq に基づいて基準項となるインバータ基準周波数ωinv*を演算し、d軸誘起電圧Ed が0に収束するように周波数補正量ωcmp を用いてインバータ周波数ωinv を補正している。
【0014】
以上説明した第1、第2の各従来例は、何れも誘起電圧演算部23で推定演算されたd軸誘起電圧Ed が0に収束するようにインバータ周波数ωinv を補正する点において相違ない。センサレスベクトル制御装置1、27において設定されたモータパラメータに設定誤差がない条件の下では、d軸誘起電圧Ed が0となる状態は、d軸の向きと誘導電動機7の二次磁束の向きとが一致した状態、つまり速度センサを付加した場合における理想的なベクトル制御の動作状態と等しくなる。従って、この動作状態を維持することにより、高速なトルク応答を得ることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一次抵抗などのモータパラメータは、誘導電動機7の運転状態例えば温度状態に応じて変動するため、センサレスベクトル制御装置1、27において用いられるモータパラメータには設定誤差が生じる場合がある。また、インバータ主回路5のデッドタイム補償が十分でない場合、デッドタイム補償誤差による電圧誤差が生じる。この電圧誤差は、一次抵抗の設定誤差による電圧誤差と同様の方向(一次電流の方向)に生じる。こうした場合には、上述した理想的なベクトル制御の動作状態を維持することは困難となる。特に、誘起電圧が小さくなる低速回転時には上記一次抵抗の設定誤差(デッドタイム補償誤差)が大きく影響し、モータ負荷が増大するに従って安定動作の確保が難しくなる。その結果、速度センサを用いずに速度制御をする場合の速度制御範囲は、例えば1:10弱となっていた。
【0016】
そこで、本発明の目的は、第1に、モータパラメータ特には一次抵抗の設定誤差に対してロバストで安定した速度センサレスベクトル制御装置を提供することであり、第2に、モータパラメータ特には一次抵抗を精度良く推定し制御の安定化を図った速度センサレスベクトル制御装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため、請求項1記載の速度センサレスベクトル制御装置は、誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、
前記ベクトル制御手段が、
前記誘導電動機の相電流を検出する電流検出手段と、
d軸と当該d軸に対し90°進んだq軸とからなるdq軸直交座標系において、前記検出された相電流に基づいて前記誘導電動機の一次電流のd軸電流とq軸電流とを演算するdq軸電流演算手段と、
前記d軸電流と前記q軸電流とがそれぞれ前記誘導電動機の励磁電流を指令する指令d軸電流とトルク電流を指令する指令q軸電流とに一致するように指令d軸電圧と指令q軸電圧とを演算するdq軸指令電圧演算手段と、
前記d軸の向きと前記誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように、前記インバータ装置が出力するインバータ周波数を演算するインバータ周波数演算手段とを備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、前記指令d軸電圧、および前記指令q軸電圧に基づいてd軸誘起電圧とq軸誘起電圧とを推定演算するdq軸誘起電圧演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準誘起電圧、前記d軸誘起電圧、および前記q軸誘起電圧に基づいてh軸誘起電圧誤差を演算するh軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記h軸誘起電圧誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、dq軸直交座標系に対して位相角θHVだけ遅れたhv軸直交座標系が新たに定義され、基準誘起電圧と誘起電圧とのh軸における誤差つまりh軸誘起電圧誤差が演算され、このh軸誘起電圧誤差に基づいてインバータ周波数が補正される。この場合、位相角θHVとdq軸直交座標系における一次電流の位相角(d軸を基準として進み方向に見た一次電流ベクトルの位相角)とが同符号となる条件の下では、h軸誘起電圧誤差には、d軸誘起電圧よりも軸ずれ (d軸の向きと二次磁束の向きとのずれ)の影響が顕著に現れる。
【0019】
このため、d軸誘起電圧に着目していた従来構成に比べ、軸ずれの情報をインバータ周波数に作用させ易くなり、制御系の安定化を図ることができる。そして、上記h軸誘起電圧誤差に基づく制御により、モータパラメータ特には一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。その結果、速度制御範囲が低速側へ拡大する。また、すべり周波数が負となるためにインバータ周波数がより0に近付く低速回生時においても、大きなトルクを安定して発生させることが可能となる。
【0020】
請求項2記載の手段によれば、軸ずれ現象が周波数の低い現象と高い現象とに分離され、それぞれに対して補償制御が行われる。すなわち、周波数の低い現象に対しては、第1の軸安定化補償手段が、低域ろ過特性を持つ第1のフィルタ手段を介して出力されるh軸誘起電圧によりインバータ周波数を補正し、周波数の高い現象に対しては、第2の軸安定化補償手段が、高域ろ過特性を持つ第2のフィルタ手段を介して出力されるd軸誘起電圧によりインバータ周波数を補正する。これにより、定常状態における軸ずれと急激に生じる軸ずれの両者に対して制御系の安定性を高めることができ、例えば発生トルクや負荷トルクの急変時においても安定した動作を維持できる。
【0021】
また、一般に二次磁束の応答時定数は誘導電動機の二次時定数にほぼ等しいため、請求項3記載の手段によれば、インバータ周波数補正手段は、主として二次磁束の応答よりも遅い応答をするh軸誘起電圧と、主として二次磁束の応答よりも速い応答をするd軸誘起電圧とに基づいてインバータ周波数を補正することとなる。一方、誘起電圧誤差が一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルの方向に推移するかd軸方向に推移するかは、軸ずれにより二次磁束の大きさが変化するかしないか、つまり軸ずれ現象の持つ時定数が二次時定数よりも大きいか小さいかに依存して決まる。従って、本手段によれば、両補正が干渉し合うことがなく効果的に作用するので、安定性を一層高めることができる。
【0022】
請求項4記載の手段によれば、hv軸位相角演算手段によって位相角θHVが一次電流の位相角に等しく設定され、これによりh軸の向きが一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルの向きに等しくなる。この設定にあっては、モータパラメータに設定誤差がないとした場合、hv軸回転座標系上での誘起電圧誤差の軌跡はv軸上に中心を有しh軸に接する円となることが判明している。そして、軸ずれが正側に生じる場合と負側に生じる場合とにおける誘起電圧誤差の軌跡は、上記円上を原点(理想動作点)に対し互いに逆向きに推移する。従って、正側の軸ずれ時に生じるh軸誘起電圧誤差の(絶対値としての)最大値と負側の軸ずれ時に生じるh軸誘起電圧誤差の(絶対値としての)最大値とは等しくなる。その結果、モータパラメータの設定値が正側または負側のどちらの設定誤差を有する場合でも、それらをバランス良く許容でき、トルク制御精度や速度制御精度を一層高めることができる。
【0023】
請求項5記載の手段によれば、hv軸位相角演算手段は、一次電流位相角演算手段、符号判定手段および位相角設定手段から構成される。このhv軸位相角演算手段によって、力行時にあってはh軸が一次電流ベクトルよりも90°遅れた向きに設定され、回生時にあっては、h軸が一次電流ベクトルよりも90°進んだ向きに設定される。一次抵抗設定値に設定誤差がある場合、誘起電圧誤差の軌跡は一次電流ベクトルの方向つまりv軸方向に推移するため、h軸方向には一次抵抗の設定誤差の影響が現れない。従って、h軸誘起電圧誤差に基づいてインバータ周波数を補正する場合、一次抵抗設定値の設定誤差に対してロバストな軸ずれ補正が可能となる。これにより、速度制御範囲が低速側へ拡大するとともに、制御精度が一層高まる。
【0024】
請求項6記載の手段によれば、インバータ基準周波数演算手段が、位相角θHVとv軸誘起電圧と指令d軸電流またはd軸電流とに基づいて、インバータ周波数の基準項であるインバータ基準周波数を演算する。v軸誘起電圧は軸ずれにより変化しにくいため、v軸誘起電圧を用いて演算されたインバータ基準周波数をインバータ周波数の基準項としても制御系は安定に保持される。また、上記インバータ基準周波数を付加することにより、インバータ周波数補正手段の有する補正ゲインを下げることができ、ハイゲイン化によるトルクリプル、速度リプルの発生や制御系の不安定化を抑制することが可能となる。
【0025】
上記第2の目的を達成するため、請求項7記載の速度センサレスベクトル制御装置は、誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、前記ベクトル制御手段が、電流検出手段、dq軸電流演算手段、dq軸指令電圧演算手段およびインバータ周波数演算手段を備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電圧から、少なくとも、前記誘導電動機の一次抵抗設定値と前記指令d軸電流または前記d軸電流との積を減算することによりd軸誘起電圧を推定演算し、前記指令q軸電圧から、少なくとも、前記一次抵抗設定値と前記指令q軸電流または前記q軸電流との積を減算することによりq軸誘起電圧を推定演算するdq軸誘起電圧演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準誘起電圧、前記d軸誘起電圧、および前記q軸誘起電圧に基づいてv軸誘起電圧誤差を演算するv軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記v軸誘起電圧誤差に基づいて前記一次抵抗設定値を補正する一次抵抗補正手段とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、一次抵抗補正手段は、v軸誘起電圧誤差に基づいて一次抵抗設定値を補正する。位相角θHVとdq軸直交座標系における一次電流の位相角とが同符号となる条件の下では、一次抵抗設定値に誤差がない場合、軸ずれにより生じる誘起電圧の誤差はh軸方向に顕著に現れ、v軸方向には現れにくい。逆に、一次抵抗設定値の誤差による場合、誘起電圧の誤差はv軸方向に顕著に現れ易い。従って、このv軸誘起電圧誤差に基づいて(例えばv軸誘起電圧誤差を0にするように)一次抵抗設定値を補正することにより、一次抵抗設定値を精度良く推定することが可能となる。その結果、速度制御範囲が低速側へ拡大し、トルク制御精度が高まる。
【0027】
この場合、請求項8記載の手段を用いると、v軸と一次電流ベクトルの方向とが一致する。一次抵抗設定値に設定誤差がある場合、誘起電圧誤差の軌跡は一次電流ベクトルの方向つまりv軸方向に推移するため、一次抵抗補正手段はv軸誘起電圧誤差に基づいて一次抵抗設定値をより効果的に補正することができる。
【0028】
上記第1の目的を達成するため、請求項9記載の速度センサレスベクトル制御装置は、誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、前記ベクトル制御手段が、電流検出手段、dq軸電流演算手段、dq軸指令電圧演算手段、d軸誘起電圧演算手段、およびd軸誘起電圧に基づいてインバータ周波数を補正して生成するインバータ周波数演算手段を備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、および前記指令q軸電圧に基づいてq軸誘起電圧を推定演算するq軸誘起電圧演算手段と、
前記q軸誘起電圧と前記基準誘起電圧とに基づいてq軸誘起電圧誤差を演算するq軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記q軸誘起電圧誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とから構成されていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、軸ずれを補正するために、d軸誘起電圧のみならず、q軸誘起電圧と基準誘起電圧とに基づいて演算されるq軸誘起電圧誤差に基づいてインバータ周波数が補正される。重負荷時の場合、d軸誘起電圧には軸ずれの情報が現れにくいが、q軸誘起電圧誤差は軸ずれにより大きく変化することから軸ずれに関する多くの情報を含んでいる。従って、q軸誘起電圧誤差に基づいてインバータ周波数を補正することにより、負荷の大きさにかかわらず、軸ずれの情報をインバータ周波数に作用させ易くなり、制御系の安定化を図ることができる。そして、この制御により、モータパラメータ特には一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。また、速度制御範囲が低速側へ拡大し、低速回生時においてより大きなトルクを安定して発生することが可能となる。
【0030】
上記第1の目的を達成するため、請求項10記載の速度センサレスベクトル制御装置は、誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、前記ベクトル制御手段が、電流検出手段、dq軸電流演算手段、dq軸指令電圧演算手段およびインバータ周波数演算手段を備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記指令d軸電流に基づいて基準二次磁束を演算する基準二次磁束演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、前記指令d軸電圧、および前記指令q軸電圧に基づいてd軸二次磁束とq軸二次磁束とを推定演算するdq軸二次磁束演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準二次磁束、前記d軸二次磁束、および前記q軸二次磁束に基づいてv軸二次磁束誤差を演算するv軸二次磁束誤差演算手段と、
前記v軸二次磁束誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とから構成されていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、v軸二次磁束と基準二次磁束とに基づいて演算されるv軸二次磁束誤差に基づいてインバータ周波数が補正される。q軸二次磁束は、理想的なベクトル制御が成立している状態(理想動作点)では0になる。しかし、重負荷時の場合、q軸二次磁束には軸ずれの情報が現れにくい。これに対し、v軸二次磁束誤差は軸ずれにより大きく変化することから軸ずれに関する多くの情報を有している。従って、v軸二次磁束誤差に基づいてインバータ周波数を補正することにより、負荷の大きさにかかわらず、軸ずれの情報をインバータ周波数に作用させ易くなり、制御系の安定化を図ることができる。そして、この制御により、モータパラメータ特には一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。その結果、速度制御範囲が拡大し、また、低速回生時においてより大きなトルクを安定して発生することが可能となる。
【0032】
上記第1の目的を達成するため、請求項11記載の速度センサレスベクトル制御装置は、前記誘導電動機の発生トルクが指令トルクに等しくなるとともに、前記指令d軸電流に対する前記指令q軸電流の割合が所定値以下となるように前記指令d軸電流と前記指令q軸電流とを演算するdq軸指令電流演算手段を備えていることを特徴とする。
【0033】
d軸電流(励磁電流)に対するq軸電流(トルク電流)の割合が増加する重負荷時においては、軸ずれによる誘起電圧誤差の軌跡は、d軸に対して大きな交差角を持つようになる。一方、一次抵抗設定値に誤差がある場合、誘起電圧誤差の軌跡は、一次電流ベクトルの方向に推移する。従って、重負荷時においては、d軸誘起電圧に関して軸ずれによる影響と一次抵抗設定値の誤差による影響とが互いに干渉し合い、d軸誘起電圧からでは軸ずれを補償できない虞がある。
【0034】
これに対し、本手段によれば、d軸電流に対するq軸電流の割合が所定値以下に制限されるので上記干渉状態を回避し易くなり、軸ずれ補償による安定性と一次抵抗に対するロバスト性とを確保することができる。その結果、速度制御範囲が低速側へ拡大し、重負荷時においても指令トルクに一致したトルクを安定して発生させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施例について図1ないし図9を参照しながら説明する。なお、説明において、R1 、R2 、L1 、L2 、M、σは、それぞれ一次抵抗、二次抵抗、一次インダクタンス、二次インダクタンス、相互インダクタンス、漏れ係数(=1−M2/L1 /L2 )の設定値を表しており、sはラプラス演算子を表している。また、PI制御で用いるKp 、Ki はそれぞれ比例ゲイン、積分ゲインであり、その値は制御系が安定するように適宜決められる。
【0036】
図1は、センサレスベクトル制御装置の構成を機能ブロックにより示したもので、従来技術を示す図15と同一構成部分には同一符号を付している。この図1において、センサレスベクトル制御装置33は、インバータ回路2(インバータ装置に相当)とベクトル制御部34(ベクトル制御手段に相当)とから構成されている。
【0037】
インバータ回路2において、インバータ主回路5は、IGBTなどのスイッチング素子(図示せず)が三相ブリッジ接続されてなる電圧型インバータであって、その直流入力端子間にはフィルタコンデンサ4が接続されており、その交流出力端子には三相の誘導電動機7が接続されている。PWM回路6は、ベクトル制御部34から出力される三相指令電圧VuRef、VvRef、VwRefに基づいて、例えば三角波比較PWM制御方式により、上記スイッチング素子に対するゲート信号を生成するようになっている。さらに、PWM回路6は、アーム短絡防止のためにデッドタイムを設定し、これによる出力電圧の低下を補償するためにデッドタイム補償を行うようになっている。
【0038】
ベクトル制御部34は、指令電流演算部8、指令電圧演算部9(dq軸指令電圧演算手段に相当)、座標変換部10、座標変換部11(dq軸電流演算手段に相当)、電流検出器12、13(電流検出手段に相当)、インバータ周波数演算部35(インバータ周波数演算手段に相当)、モータ速度演算部15および積分部16から構成されている。
【0039】
指令電流演算部8において、減算器17は、指令速度ωrRefから後述する推定速度(モータ速度)ωrhを減算して速度偏差dωr を求め、速度制御部18は、その速度偏差dωr が0に収束するように当該速度偏差dωr に対しPI制御を実行して指令トルク電流IqRefを生成するようになっている。
【0040】
電流検出器12、13は、それぞれ誘導電動機7のU相電流Iu 、W相電流Iw を検出する電流センサである。座標変換部11は、その検出された静止座標系上のU相電流Iu とW相電流Iw とを、次の(5)式、(6)式によりdq軸回転座標系上のd軸電流Id とq軸電流Iq とに変換するようになっている。ここで、位相角θは、静止座標系のa軸またはu軸に対するdq軸回転座標系のd軸がなす角度(図17に示すθabに相当)である。
【0041】
【数4】
【0042】
指令電圧演算部9において、減算器19は、指令励磁電流IdRef(指令d軸電流に相当)からd軸電流Id を減算してd軸電流偏差dId を求め、電流制御部21は、そのd軸電流偏差dId が0に収束するように当該d軸電流偏差dId に対し次の(7)式で示されるPI制御を実行し、指令d軸電圧VdRefを生成するようになっている。
【0043】
【数5】
【0044】
また、減算器20は、指令トルク電流IqRef(指令q軸電流に相当)からq軸電流Iq を減算してq軸電流偏差dIq を求め、電流制御部22は、そのq軸電流偏差dIq が0に収束するように当該q軸電流偏差dIq に対し次の(8)式で示されるPI制御を実行し、指令q軸電圧VqRefを生成するようになっている。
【0045】
【数6】
【0046】
座標変換部10は、上記指令d軸電圧VdRefと指令q軸電圧VqRefとを入力し、次の(9)式〜(13)式により静止座標系上の三相指令電圧VuRef、VvRef、VwRefに変換するようになっている。
【0047】
【数7】
【0048】
詳しくは後述するが、インバータ周波数演算部35は、理想的なベクトル制御を行うために必要となるインバータ周波数ωinv を演算するようになっている。積分部16は、このインバータ周波数ωinv を次の(14)式により積分し、座標変換部10、11に対して上記位相角θを出力するようになっている。
【0049】
【数8】
【0050】
また、モータ速度演算部15において、基準すべり周波数演算部25は、指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefとを入力し、次の(15)式により基準すべり周波数ωs*を演算するようになっている。そして、減算器26において、インバータ周波数ωinv から基準すべり周波数ωs*が減算され、速度センサレスで誘導電動機7の推定速度(モータ速度)ωrhが求められる。
【0051】
【数9】
【0052】
さて、以下においてインバータ周波数演算部35の構成を具体的に説明するが、それに先立って本発明において新規に導入するhv軸回転座標系について説明する。
図2は、hv軸回転座標系とdq軸回転座標系との関係を示すベクトル図である。この図2において、h軸はd軸に対し位相角θhvだけ遅れた軸として定義され、v軸はh軸から90°進んだ軸として定義される。この定義によれば、位相角θhvが正である場合、h軸はd軸に対して遅れの関係となり、位相角θhvが負である場合、h軸はd軸に対して進みの関係となる。図2は、位相角θhvが正である場合を示している。なお、詳しくは後述するように、本実施例においては、位相角θhvは、dq軸回転座標系における一次電流位相角θIdq に等しく設定されている。
【0053】
hv軸位相角演算部36(hv軸位相角演算手段に相当)は、上記位相角θhvを設定するもので、除算器37とAtan演算部38とから構成されている。dq軸回転座標系における一次電流ベクトルは、指令励磁電流IdRef、指令トルク電流IqRefをそれぞれd軸成分、q軸成分とするベクトルであって、d軸から一次電流ベクトルまでの角度が一次電流位相角θIdq となる。ここで、除算器37は、指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefとを入力し、次の(16)式に示す除算を実行するようになっている。
【0054】
【数10】
【0055】
Atan演算部38は、上記電流の比率γを入力として次の(17)式により一次電流位相角θIdq を演算し、それを位相角θhvとして出力するようになっている。つまり、本実施例ではθIdq =θhvの関係が成立する。
【0056】
【数11】
【0057】
本発明における位相角θhvの設定方法によれば、一次抵抗R1 などのモータパラメータに設定誤差がない場合、hv軸回転座標系上での誘起電圧誤差の軌跡は、v軸上に中心Zを有しh軸に接する円となることが判明している(図2参照)。しかしながら、本発明の位相角θhvの設定方法は、上記(16)式、(17)式に限られるものではない。すなわち、本発明は、位相角θhvと一次電流位相角θIdq とが同符号となる条件の下において成立する。従って、次の(18)式に示すように、指令トルク電流IqRefが正となる力行時においては位相角θhvを正の一定値α(αは正)に設定し、指令トルク電流IqRefが負となる回生時においては位相角θhvを負の一定値−β(βは正)に設定するようにしても良い。
【0058】
【数12】
【0059】
誘起電圧演算部23(dq軸誘起電圧演算手段に相当)は、指令d軸電圧VdRef、指令q軸電圧VqRefからそれぞれ一次抵抗R1 と一次側に換算した漏れインダクタンスσ・L1 とによるインピーダンス降下分を減算することによりd軸誘起電圧Ed 、q軸誘起電圧Eq を推定演算するもので、具体的には次の(19)式、(20)式の演算を実行するようになっている。理想的なベクトル制御が成立している場合、d軸誘起電圧Ed は0になる。
【0060】
【数13】
【0061】
hv軸誘起電圧誤差演算部39は、本発明でいうh軸誘起電圧誤差演算手段およびv軸誘起電圧誤差演算手段に相当するもので、座標変換部40、41と減算器42、43とから構成されている。このうち座標変換部40は、dq軸回転座標系における誘起電圧をhv軸回転座標系における誘起電圧に変換するもので、d軸誘起電圧Ed とq軸誘起電圧Eq とを入力とし、次の(21)式によりh軸誘起電圧Eh とv軸誘起電圧Ev とを演算するようになっている。
【0062】
【数14】
【0063】
基準誘起電圧演算部44(基準誘起電圧演算手段に相当)は、インバータ周波数演算部35が演算したインバータ周波数ωinv と指令励磁電流IdRefとに基づいて、dq軸回転座標系において理論上導かれる基準誘起電圧E* を次の(22)式により演算するようになっている。この基準誘起電圧E* は、二次磁束に対し90°進んだq軸上の電圧である。
【0064】
【数15】
【0065】
上記hv軸誘起電圧誤差演算部39の座標変換部41は、dq軸回転座標系における基準誘起電圧をhv軸回転座標系における基準誘起電圧に変換するもので、基準誘起電圧E* を入力とし、次の(23)式、(24)式によりh軸基準誘起電圧Eh*とv軸基準誘起電圧Ev*とを演算するようになっている。
【0066】
【数16】
【0067】
減算器43は、h軸誘起電圧Eh からh軸基準誘起電圧Eh*を減算してh軸誘起電圧誤差dEh を求め、ローパスフィルタ45(第1のフィルタ手段に相当)は、そのh軸誘起電圧誤差dEh を入力とし、次の(25)式に示す低域ろ過特性に従ってその低周波成分であるh軸誘起電圧誤差dEhLF を出力するようになっている。ここで、g1 はカットオフ角周波数である。
【0068】
【数17】
【0069】
軸安定化補償部46(第1の軸安定化補償手段に相当)は、h軸誘起電圧誤差dEhLF が0に収束するように当該h軸誘起電圧誤差dEhLF に対して次の(26)式によりPI制御を実行し、インバータ周波数ωinv に対する補正量ωcmp1(第1の周波数補正量に相当)を出力するようになっている。なお、関数Sgn() は、上述した(4)式により定義されるものである。
【0070】
【数18】
【0071】
一方、ハイパスフィルタ47(第2のフィルタ手段に相当)は、d軸誘起電圧Ed を入力とし、次の(27)式に示す高域ろ過特性に従ってその高周波成分であるd軸誘起電圧EdHF を出力するようになっている。ここで、g2 はカットオフ角周波数である。
【0072】
【数19】
【0073】
軸安定化補償部48(第2の軸安定化補償手段に相当)は、d軸誘起電圧EdHF が0に収束するように当該d軸誘起電圧EdHF に対して次の(28)式によりPI制御を実行し、インバータ周波数ωinv に対する補正量ωcmp2(第2の周波数補正量に相当)を出力するようになっている。なお、ローパスフィルタ45、軸安定化補償部46、ハイパスフィルタ47および軸安定化補償部48により、インバータ周波数補正部49(インバータ周波数補正手段に相当)が構成されている。
【0074】
【数20】
【0075】
インバータ基準周波数演算部50(インバータ基準周波数演算手段に相当)は、v軸誘起電圧Ev 、指令励磁電流IdRefおよび一次電流位相角θIdq を入力とし、次の(29)式によりインバータ基準周波数ωinv*を演算するようになっている。
【0076】
【数21】
【0077】
加算器51は、以上から得られた補正量ωcmp1とωcmp2とを加算して補正量ωcmp とし、減算器52は、インバータ基準周波数ωinv*からその補正量ωcmp を減算することによりインバータ周波数ωinv を出力するようになっている。上述したように、このインバータ周波数ωinv から基準すべり周波数ωs*が減算されて推定速度ωrhが得られる。
【0078】
減算器42は、v軸誘起電圧Ev からv軸基準誘起電圧Ev*を減算してv軸誘起電圧誤差dEv を求める。一次抵抗補正部53(一次抵抗補正手段に相当)は、このv軸誘起電圧誤差dEv が0に収束するように当該v軸誘起電圧誤差dEv に対して次の(30)式によりPI制御を実行し、一次抵抗の設定値R1 を補正するようになっている。ここで、関数Sgn() は、上述した(4)式により定義されるものである。補正された一次抵抗の設定値R1 は、誘起電圧演算部23においてd軸誘起電圧Ed とq軸誘起電圧Eq とを推定演算するのに用いられる((19)式、(20)式参照)。
【0079】
【数22】
【0080】
次に、上記構成を備えたセンサレスベクトル制御装置33の作用、効果を説明するために、図3〜図9を参照しながら誘起電圧誤差に関する解析結果について詳述する。
【0081】
ベクトル制御部34は、d軸の向きと誘導電動機7の二次磁束の向きとが常に一致するように制御することによりベクトル制御を実現するように構成されている。このような理想的なベクトル制御が行われる動作点を、以下の説明において「理想動作点」と称する。ベクトル制御がこの理想動作点から外れると、d軸の向きと二次磁束の向きとがずれた状態すなわち「軸ずれ状態」が生じる。
【0082】
そこで、まず軸ずれと誘起電圧誤差との関係についての解析結果を説明する。図3〜図7は、軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示したもので、以下の▲1▼〜▲3▼の仮定の下でシミュレーションを実施したものである。軸ずれ状態は、真のすべり周波数に対しすべり周波数誤差ΔFs [Hz]を与えることにより設定される。
▲1▼インバータ周波数ωinv は一定
▲2▼電流制御によりd軸電流Id とq軸電流Iq はdq軸座標系上において一定値に制御されている
▲3▼モータパラメータの設定値に設定誤差はない
【0083】
図3、図4、図5、図6、図7は、それぞれ力行150%、力行75%、0%(無負荷)、回生75%、回生150%の負荷条件での解析結果である。各図には、複数のプロットを結んでなる2本の軌跡A、Bと、原点から右斜め上方または右斜め下方(図5では横軸の向き)に延びる2本の直線C、Dが描かれている。
【0084】
軌跡Aは、横軸をd軸誘起電圧誤差とし、縦軸をq軸誘起電圧誤差として描いたすべり周波数誤差ΔFs に対する誘起電圧誤差の軌跡を示している。また、軌跡Bは、横軸をh軸誘起電圧誤差とし、縦軸をv軸誘起電圧誤差として描いたすべり周波数誤差ΔFs に対する誘起電圧誤差の軌跡を示している。すなわち、軌跡AとBとは同じ誘起電圧誤差の軌跡を示したものであるが、軌跡Aはdq軸回転座標系から見たもので、軌跡Bはhv軸回転座標系から見たものである。
【0085】
本実施例の場合、hv軸回転座標系の位相角θhvは、dq軸回転座標系における一次電流位相角θIdq に等しく設定され、一次電流ベクトルのd軸対称ベクトル(後述)の向きがh軸の向きに一致する。従って、軌跡Aを原点を中心として位相角θhvだけCCW方向に回転させたものが軌跡Bとなる。
【0086】
これらの軌跡A、Bは、すべり周波数誤差ΔFs [Hz]を−1.0[Hz]から+1.0[Hz]まで0.1[Hz]刻みで与えた場合における誘起電圧の誤差をそれぞれプロットし、これら合計21個のプロットを順に結ぶことにより描かれている。ここで、例えば−1.0[Hz]のすべり周波数誤差ΔFs とは、本来与えるべきすべり周波数よりも1.0[Hz]低いすべり周波数を与えることを意味しており、本来与えるべきインバータ周波数よりも1.0[Hz]低いインバータ周波数ωinv を与えたことと等価である。また、すべり周波数誤差0.0[Hz]とは、本来与えるべきすべり周波数を与えた場合であって、各図の原点に相当するとともに上述した「理想動作点」に相当する。
【0087】
直線Cは、横軸をd軸、縦軸をq軸とし、d軸電流Id (励磁電流)とq軸電流Iq (トルク電流)とをベクトル要素とする一次電流ベクトル(Id ,Iq )の向きを示している。また、直線Dは、横軸をd軸、縦軸をq軸とし、上記一次電流ベクトル(Id ,Iq )のd軸対称ベクトル(Id ,−Iq )の向きを示している。従って、直線Cは、q軸電流Iq が正となる力行時(図3、図4)には原点から右斜め上方に延び、q軸電流Iq が負となる回生時(図6、図7)には原点から右斜め下方に延びる。
【0088】
図3〜図7によれば、dq軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡Aは、パラメータ誤差のない理想動作点(各図の原点)の近傍において、一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルの方向に推移することが分かる。そして、q軸電流Iq(トルク電流)の絶対値が大きい場合すなわち力行または回生の重負荷の場合(図3または図7参照)には、d軸と一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルとのなす角度が大きくなるため、誘起電圧誤差の軌跡Aはd軸方向ではなくむしろq軸方向に推移するようになる。従って、特に重負荷時においてd軸誘起電圧を用いると、軸ずれの情報を十分に得られない場合がある。
【0089】
これに対し、hv軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡Bは、軸ずれに対し横軸方向つまりh軸方向に推移していることが分かる。このことは解析的にも導出可能であって、上述したようにhv軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡Bは、v軸上に中心を有しh軸に接する円となることが判明している(図2参照)。従って、h軸上において誘起電圧誤差を検出することにより、軸ずれをh軸誘起電圧誤差dEh として最も有効に検出することができ、軸ずれをd軸誘起電圧誤差(d軸誘起電圧Ed )として検出していた従来のものに比べ、軸ずれに対する補正動作をより有効に行うことができる。
【0090】
続いて、モータパラメータの設定誤差を考慮した解析結果の一例として、一次抵抗の設定誤差を考慮する場合の誘起電圧誤差の軌跡について説明する。図8、図9は、回生150%時において、それぞれdq軸回転座標系、hv軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡を示している。各図には、複数のプロットを結んでなる5本の軌跡E、F、G、H、Iと、原点から右斜め下方または左斜め下方に延びる1本の直線Jが描かれている。
【0091】
軌跡E、F、G、H、Iは、それぞれ一次抵抗の設定誤差ΔR1 (=(一次抵抗の設定値R1 −一次抵抗の真値)/一次抵抗の真値×100[%])を−20%、−10%、0%(設定誤差なし)、+10%、+20%に設定した上で描いたすべり周波数誤差ΔFs に対する誘起電圧誤差の軌跡を示している。すべり周波数誤差ΔFs の与え方は図3〜図7と同様である。従って、図8、図9に示す各軌跡Gは、それぞれ図7に示す軌跡A、軌跡Bに等しくなる。また、図8、図9における各直線Jは、それぞれdq軸回転座標系上での一次電流ベクトルの向き、hv軸回転座標系上での一次電流ベクトルの向きを示している。
【0092】
図8、図9において、誘起電圧誤差の軌跡は、一次抵抗の設定誤差ΔR1 の変化に対し一次電流ベクトルの方向に変化することが分かる。dq軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡を示す図8では、例えば一次抵抗の設定誤差ΔR1 が−10%や−20%になると、軌跡FやEが縦軸(q軸)と交差しないことから、d軸誘起電圧誤差すなわちd軸誘起電圧Ed が0に収束し得ない状態となる。このような設定誤差ΔR1 を持った状態でd軸誘起電圧Ed に基づいた軸ずれ補償を実行すると、制御系の安定性が低下する虞がある。
【0093】
これに対し、hv軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡を示す図9では、一次抵抗に同様の設定誤差ΔR1 が存在してもh軸誘起電圧誤差dEh は縦軸(v軸)と交差するので、h軸誘起電圧誤差dEh を0に収束させることが可能となる。従って、h軸誘起電圧誤差dEh が0となるように軸ずれ補償を実行すれば、(一次抵抗の設定誤差ΔR1 の影響で理想動作点には収束し得ないものの)安定性を確保することが可能となる。
【0094】
以上、図3〜図9を用いた解析によれば、軸安定化のためにd軸誘起電圧Edに基づいてインバータ周波数ωinv を調整する従来構成のセンサレスベクトル制御装置(図15、図16参照)では、重負荷時においてd軸誘起電圧Ed の変化である軸ずれの情報が十分に得られず、安定性が低下する可能性があることが理解できる。そして、このような不安定化は、誘起電圧が小さい低速回転時に生じ易い。
【0095】
これに対し、本実施例のように新たにhv軸回転座標系を導入し、この座標系において観測されたh軸誘起電圧誤差dEh を用いると、従来構成に比べて軸ずれの情報を把握し易くなる。さらに、一次抵抗の設定誤差の解析結果に示されるように、一次抵抗に多少の設定誤差ΔR1 が存在する場合であっても、軸ずれ情報を有するh軸誘起電圧誤差dEh は0に収束するので、軸ずれ補償制御を実行する上で一次抵抗の設定誤差に対するロバスト性が向上する。
【0096】
また、PWM回路6は、インバータ主回路5のデッドタイム補償を行うようになっているが、このデッドタイム補償が十分でない場合デッドタイム補償誤差による電圧誤差が生じる。この電圧誤差は、一次抵抗の設定誤差による電圧誤差と同じ方向(一次電流ベクトルの方向)に生じる。従って、h軸誘起電圧誤差dEhを用いた軸ずれ補償を行うと、デッドタイム補償誤差に対するロバスト性の向上も期待できる。
【0097】
そこで、本実施例では、hv軸誘起電圧誤差演算部39においてh軸誘起電圧誤差dEh を求め、軸安定化補償部46においてh軸誘起電圧誤差dEh が0に収束するようにインバータ周波数ωinv を補正している。h軸誘起電圧誤差dEhは、d軸誘起電圧に比べて軸ずれに対する変化が顕著に現れるため、この軸ずれの情報をインバータ周波数ωinv に作用させることにより制御系の安定化を図れる。また、一次抵抗R1 などのモータパラメータの設定誤差やデッドタイム補償誤差に対してロバストな制御系を構築できる。こうした効果により、速度制御範囲を従来よりも低速側に広げることができる。また、すべり周波数ωs*が負となるためにインバータ周波数ωinv がより0に近付く低速回生時においても、大きなトルクを安定して発生させることが可能となる。
【0098】
さらに、軸ずれによる誘起電圧誤差は一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルの方向に推移するという解析結果に基づいて、本実施例では、一次電流位相角θIdq を演算しそれを位相角θhvとすることにより、h軸の向きをd軸対称ベクトルの向きに一致させている。その結果、より安定で且つモータパラメータの設定誤差に対してロバストな制御系を構築できる。
【0099】
さらに、この設定の場合、軸ずれが正側に生じる場合と負側に生じる場合とにおける誘起電圧誤差の軌跡は、v軸上に中心を有する円上を原点(理想動作点)に対し互いに逆向きに推移する。従って、正側の軸ずれ時に生じるh軸誘起電圧誤差の(絶対値としての)最大値と負側の軸ずれ時に生じるh軸誘起電圧誤差の(絶対値としての)最大値とは等しくなる。その結果、一次抵抗の設定値R1 が正側または負側のどちらの設定誤差を有する場合でも、それらをバランス良く許容でき(つまり誤差軌跡をv軸と交差させることができ)、トルク制御精度や速度制御精度を一層高めることができる。
【0100】
なお、d軸誘起電圧Ed を用いた従来の補償制御においては、dq軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡(円)の中心はq軸から外れるため、誤差軌跡が常にq軸と交差するように予め一次抵抗の設定値R1 にオフセットを付加する必要が生じ、理想動作点を保持することが難しかった。
【0101】
ところで、本実施例のインバータ周波数演算部35は、インバータ周波数ωinv を補正するための2つの軸安定化補償部46、48を備えている。これら軸安定化補償部46、48の前段には、それぞれローパスフィルタ45、ハイパスフィルタ47が設けられている。この構成によれば、インバータ周波数ωinv は、角周波数g1[rad/s]よりも遅い軸ずれ成分に対してはh軸誘起電圧誤差dEh により補正され((25)式、(26)式参照)、角周波数g2[rad/s]よりも速い軸ずれ成分に対してはd軸誘起電圧Ed により補正される((27)式、(28)式参照)。
【0102】
このように軸ずれ現象を周波数領域で2分割する理由は、以下のように説明できる。すなわち、誘導電動機7の二次磁束の応答は比較的遅く、その時定数は、電動機容量にもよるが一例として数十[msec]〜数百[msec]の値である。上述した図3〜図9の解析結果は定常状態、すなわち二次磁束が変化した後の状態を示すものである。軸ずれ発生時の過渡状態では、二次磁束がまだ一定であると考えられ、その場合誘起電圧誤差の軌跡の推移はd軸方向(図3〜図9の各原点付近)となる。従って、速い軸ずれ成分に対してはd軸誘起電圧Ed を用い、遅い軸ずれ成分に対してはh軸誘起電圧誤差dEh を用いて補正することにより、瞬時的な軸ずれに対する安定度を高めることができ、指令トルクや負荷トルクの急変時においても安定した動作を確保することができる。
【0103】
このように、誘起電圧誤差が一次電流ベクトルのd軸対称ベクトルの方向に推移するかあるいはd軸上に推移するかは、軸ずれにより二次磁束が変化するか否かに依存すること、および二次磁束の応答時定数は誘導電動機7の二次時定数τ2 (=L2 /R2 )[sec] と見なせることから、上記周波数領域での分割は二次時定数τ2 [sec] に相当する角周波数1/τ2[rad/s]で行うことが好ましい。このため、本実施例では、ローパスフィルタ45のカットオフ角周波数g1 およびハイパスフィルタ47のカットオフ角周波数g2 をともに1/τ2[rad/s]に設定している。これにより、インバータ周波数ωinv に対する定常的および瞬時的な軸ずれ補償が互いに干渉することなく効果的に実行され、より一層の安定性の改善が図られる。
【0104】
さて、本実施例のインバータ周波数演算部35は、インバータ基準周波数演算部50を備え、上述した(29)式によりインバータ周波数ωinv の基準項であるインバータ基準周波数ωinv*を演算するようになっている。このような基準項を付加することにより、軸安定化補償部46、48のPI制御ゲインKp 、Ki を下げることができ、ハイゲイン化によるトルクリプル、速度リプルの発生や制御系の不安定化を抑制することが可能となる。
【0105】
こうした基準項は、第2の従来例を示す図16においても、インバータ基準周波数演算部30がq軸誘起電圧Eq に基づいて生成している。しかし、q軸誘起電圧Eq を用いた場合には、以下に述べる理由により制御系を不安定化させる虞がある。すなわち、上述した軸ずれと誘起電圧誤差との解析結果に示される通り、軸ずれの影響はd軸誘起電圧のみならずq軸誘起電圧にも大きく現れる。そして、力行時と回生時とでは、軸ずれに対するq軸誘起電圧誤差の推移方向が逆になっている。力行時にあっては、インバータ周波数ωinv が下がった場合にq軸誘起電圧が増加することから、インバータ周波数ωinv が上昇して軸ずれを抑制する方向に作用する。しかしながら、回生時にあっては、インバータ周波数ωinv が下がった場合にq軸誘起電圧が減少することから、インバータ周波数ωinv が低下して軸ずれを助長する方向に作用する。従って、第2の従来例において常に制御系を安定化させるのは難しかった。
【0106】
これに対し、本実施例では、軸ずれの影響を受けにくいv軸誘起電圧Ev に基づいてインバータ基準周波数ωinv*を求めているので、制御系を不安定化させるような現象を起こしにくく、安定性を高めることができる。
【0107】
本実施例のインバータ周波数演算部35は、誘起電圧演算部23においてd軸誘起電圧Ed とq軸誘起電圧Eq とを推定演算している((19)式、(20)式参照)。この演算では、指令d軸電圧VdRef、指令q軸電圧VqRefからそれぞれインピーダンス降下分を減算しているために、モータパラメータの正確な値が必要となる。特に、一次抵抗は誘導電動機7の運転状態例えば温度状態に応じて変動するので、その設定値R1 を一定とした場合には設定誤差が大きくなる虞がある。そこで、本実施例では、一次抵抗補正部53を設けて一次抵抗の設定値R1を補正するようになっている((30)式参照)。
【0108】
上述した解析結果が示すように、一次抵抗の設定誤差ΔR1 がなく単なる軸ずれによる誘起電圧誤差は、h軸方向に生じv軸方向にはほとんど生じない(図9参照)。このことは、つまりv軸誘起電圧誤差dEv が生じた場合には、一次抵抗に設定誤差が存在すると考えられる。そこで、本実施例では、v軸誘起電圧誤差dEv が0に収束するように一次抵抗の設定値R1 を調整することにより、精度良く一次抵抗を推定することが可能となっている。
【0109】
その結果、速度制御範囲やトルク制御範囲が広がり、一次抵抗の設定誤差の影響が大きく現れる低速回転重負荷時においても安定した滑らかな運転が可能となる。また、本実施例のように、v軸誘起電圧Ev に基づいて一次抵抗補正を行い、h軸誘起電圧Eh に基づいて軸ずれ補償を行うことにより、これら補正制御および補償制御の非干渉化が図れ、一次抵抗の設定値R1 と推定速度ωrhの一層の高精度化が図れる。
【0110】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施例について図10および図11を参照しながら説明する。本実施例は、第1の実施例に対しhv軸位相角演算部の構成のみを異にするため、他の構成部分については図面による表示および説明を省略する。
【0111】
図10は、hv軸位相角演算部54の構成を機能ブロックにより示したもので、図1に示すhv軸位相角演算部36と同一構成部分には同一符号を付して示している。この図10において、除算器37とAtan演算部38とは一次電流位相角演算手段に相当し、上述した(16)式、(17)式によって一次電流位相角θIdq を演算する。演算された一次電流位相角θIdq は、減算器55、56に入力されるようになっている。減算器55は、90°から一次電流位相角θIdq を減算し、減算器56は、−90°から一次電流位相角θIdq を減算するようになっており、その減算結果はともに入力切替器57に入力されている。
【0112】
符号判断部58(符号判定手段に相当)は、指令トルク電流IqRefを入力とし、その符号に応じて入力切替器57に対し「P」または「N」の極性信号を出力するようになっている。ここで、極性信号は、指令トルク電流IqRefが正の場合(力行指令時)に「P」となり、指令トルク電流IqRefが負の場合(回生指令時)に「N」となる。入力切替器57は、極性信号が「P」の場合にあっては減算器55の出力を位相角θhvとして出力し、極性信号が「N」の場合にあっては減算器56の出力を位相角θhvとして出力するようになっている。なお、減算器55、56と入力切替器57とが、本発明でいう位相角設定手段に相当する。
【0113】
このように構成されたhv軸位相角演算部54を備えたセンサレスベクトル制御装置においては、hv軸とdq軸との関係および誘起電圧誤差の軌跡は図11に示すようになる。すなわち、指令トルク電流IqRefが正の力行状態にあっては、図11(a)に示すようにh軸は一次電流ベクトルに対し90°遅れた軸として定義され、指令トルク電流IqRefが負の回生状態にあっては、図11(b)に示すようにh軸は一次電流ベクトルに対し90°進んだ軸として定義される。また、v軸はh軸から90°進んだ軸として定義される。
【0114】
一次抵抗によるインピーダンス降下は一次電流ベクトルの向きに生じるため、上述のように定義されるhv軸回転座標系では、一次抵抗の設定値R1 に設定誤差が存在すると誘起電圧誤差の軌跡はv軸方向に推移し、h軸誘起電圧Eh には誤差の影響が現れない。従って、本実施例によれば、第1の実施例と同様の作用、効果を得られるとともに、特に一次抵抗の設定誤差に対してロバストな軸ずれ補償が可能となる。これにより、速度制御範囲を低速側へ拡大できるとともに、制御精度を一層高めることができる。
【0115】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施例についてセンサレスベクトル制御装置の構成を機能ブロックにより示す図12を参照しながら説明する。なお、図12において、図1と同一構成部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる構成部分について説明する。
【0116】
この図12において、センサレスベクトル制御装置59は、インバータ回路2とベクトル制御部60(ベクトル制御手段に相当)とから構成され、ベクトル制御部60は、第1の実施例におけるベクトル制御部34に対しインバータ周波数演算部の構成が異なっている。本実施例のインバータ周波数演算部61(インバータ周波数演算手段に相当)は、すべてdq軸回転座標系上において制御を行うようになっている。
【0117】
軸安定化補償部62は、第2の従来例(図16参照)における軸安定化補償部31と同様の構成を備えている。そして、この軸安定化補償部62は、誘起電圧演算部23(d軸誘起電圧演算手段に相当)で演算されたd軸誘起電圧Ed が0に収束するように当該d軸誘起電圧Ed に対してPI制御を実行し((3)式、(4)式参照)、インバータ周波数ωinv に対する補正量ωcmp3を出力するようになっている。
【0118】
減算器63(q軸誘起電圧誤差演算手段に相当)は、誘起電圧演算部23(q軸誘起電圧演算手段に相当)で演算されたq軸誘起電圧Eq から基準誘起電圧演算部44で演算された基準誘起電圧E* を減算し、q軸誘起電圧誤差dEq を出力するようになっている。ここで、基準誘起電圧E* はq軸の基準誘起電圧に相当する。
【0119】
軸安定化補償部64(インバータ周波数補正手段に相当)は、このq軸誘起電圧誤差dEq が0に収束するように当該q軸誘起電圧誤差dEq に対して次の(31)式によりPI制御を実行し、インバータ周波数ωinv に対する補正量ωcmp4を出力するようになっている。なお、関数Sgn() は、上述した(4)式により定義されるものである。
【0120】
【数23】
【0121】
加算器51は、得られた補正量ωcmp3とωcmp4とを加算して補正量ωcmp とし、減算器52は、インバータ基準周波数演算部30(図16参照)で演算されたインバータ基準周波数ωinv*((2)式参照)からその補正量ωcmp を減算することによりインバータ周波数ωinv を出力するようになっている。そして、減算器26により、インバータ周波数ωinv から基準すべり周波数ωs*が減算されて推定速度ωrhが出力される。
【0122】
上記構成を有するセンサレスベクトル制御装置59によれば、d軸誘起電圧Edだけでなくq軸誘起電圧誤差dEq に基づいてインバータ周波数ωinv が補正され、軸ずれ補償が行われる。第1の実施例での解析結果が示すように、特に重負荷時の場合、d軸誘起電圧Ed には軸ずれの情報が現れにくいが、q軸誘起電圧誤差dEq は軸ずれにより大きく変化することから軸ずれに関する多くの情報を含んでいる。
【0123】
従って、q軸誘起電圧誤差が0になるようにインバータ周波数ωinv を補正することにより、負荷の大きさにかかわらず、軸ずれの情報をインバータ周波数ωinv に作用させ易くなり、制御系の安定化を図ることができる。そして、この制御により、モータパラメータ例えば一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。その結果、速度制御範囲を拡大でき、また、低速回転時においてより大きなトルクを安定して発生することが可能となる。
【0124】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施例についてセンサレスベクトル制御装置の構成を機能ブロックにより示す図13を参照しながら説明する。なお、図13において、図1と同一構成部分には同一符号を付して示し、ここでは異なる構成部分について説明する。
【0125】
この図13において、センサレスベクトル制御装置65は、インバータ回路2とベクトル制御部66(ベクトル制御手段に相当)とから構成され、ベクトル制御部66は、第1の実施例におけるベクトル制御部34に対しインバータ周波数演算部の構成が異なっている。本実施例のインバータ周波数演算部67(インバータ周波数演算手段に相当)は、v軸二次磁束誤差に基づいてインバータ周波数ωinv を補正する点に特徴を有している。
【0126】
二次磁束演算部68(dq軸二次磁束演算手段に相当)は、第1の実施例で説明した(19)式、(20)式によりd軸誘起電圧Ed 、q軸誘起電圧Eq を推定演算し、さらに次の(32)式、(33)式による積分演算によりd軸二次磁束φd 、q軸二次磁束φq を演算するようになっている。
【0127】
【数24】
【0128】
v軸二次磁束誤差演算部69(v軸二次磁束誤差演算手段に相当)は、座標変換部70、71と減算器72とから構成されている。このうち座標変換部70は、dq軸回転座標系における二次磁束をhv軸回転座標系における二次磁束に変換するもので、上述のd軸二次磁束φd とq軸二次磁束φq とを入力し、次の(34)式によりh軸二次磁束φh とv軸二次磁束φv とを演算するようになっている。
【0129】
【数25】
【0130】
基準二次磁束演算部73(基準二次磁束演算手段に相当)は、指令励磁電流IdRefに基づいて、dq軸回転座標系において理論上導かれる基準二次磁束φ* を次の(35)式により演算するようになっている。
【0131】
【数26】
【0132】
上記v軸二次磁束誤差演算部69の座標変換部71は、dq軸回転座標系における基準二次磁束をhv軸回転座標系における基準二次磁束に変換するもので、基準二次磁束φ* を入力とし、次の(36)式によりv軸基準二次磁束φv*を演算するようになっている。
【0133】
【数27】
【0134】
減算器72は、v軸二次磁束φv からv軸基準二次磁束φv*を減算してv軸二次磁束誤差dφv を求める。軸安定化補償部74(インバータ周波数補正手段に相当)は、v軸二次磁束誤差dφv が0に収束するように当該v軸二次磁束誤差dφv に対して次の(37)式によりPI制御を実行し、インバータ周波数ωinv を出力するようになっている。
【0135】
【数28】
【0136】
上記構成を有するセンサレスベクトル制御装置65によれば、v軸二次磁束φv とv軸基準二次磁束φv*との差つまりv軸二次磁束誤差dφv が0に収束するようにインバータ周波数ωinv が生成される。第1の実施例での解析結果は、定常状態における軸ずれと誘起電圧誤差との関係を示すものであった。しかし、定常状態においては、誘起電圧は二次磁束に対し90°進んだ関係にあるため、上記軸ずれと誘起電圧とに関する解析結果は、軸ずれと二次磁束との関係についても適用することができる。
【0137】
すなわち、q軸二次磁束φq は、理想的なベクトル制御が成立している状態 (理想動作点)では0になる。しかし、重負荷時の場合、q軸二次磁束φq には軸ずれの情報が現れにくい。これに対し、v軸二次磁束誤差dφv は軸ずれにより大きく変化することから軸ずれに関する多くの情報を有している。従って、v軸二次磁束誤差dφv に基づいてインバータ周波数ωinv を生成することにより、負荷の大きさにかかわらず、軸ずれの情報をインバータ周波数ωinv に作用させ易くなり、制御系の安定化を図ることができる。そして、この制御により、一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。その結果、速度制御範囲が拡大し、低速回生時においてより大きなトルクを安定して発生することが可能となる。
【0138】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施例について図14を参照しながら説明する。
図14は、指令電流演算部の構成を機能ブロックにより示したものである。ここに示す指令電流演算部76は、d軸誘起電圧Ed に基づいてインバータ周波数ωinv を補正しつつ生成する構成を備えたセンサレスベクトル制御装置、例えば従来構成のセンサレスベクトル制御装置1、28(図15、図16参照)において用いられる。
【0139】
この指令電流演算部76は、指令二次磁束φRef と指令トルクTRef とを入力し、指令励磁電流IdRef(指令d軸電流に相当)と指令トルク電流IqRef(指令q軸電流に相当)とを演算するようになっている。
基準励磁電流演算部77は、指令二次磁束φRef を入力とし、次の(38)式により基準励磁電流Id*を演算するようになっている。
【0140】
【数29】
【0141】
基準トルク電流演算部78は、指令二次磁束φRef と指令トルクTRef とを入力し、次の(39)式により基準トルク電流Iq*を演算するようになっている。ここで、Pは誘導電動機の極対数である。
【0142】
【数30】
【0143】
除算器79は、基準トルク電流Iq*を基準励磁電流Id*で除算し、その除算結果をリミット判定部80に対し出力するようになっている。つまり、この除算器79の出力は、基準励磁電流Id*に対する基準トルク電流Iq*の割合(以下、基準電流比と称す)を示している。リミット判定部80は、この基準電流比の絶対値と所定値k(k>0)とを比較し、基準電流比の絶対値が所定値kよりも大きい場合にあってはリミットフラグFlgLMTを1に設定し、基準電流比の絶対値が所定値k以下の場合にあってはリミットフラグFlgLMTを0に設定するようになっている。
【0144】
符号判断部81は、指令トルクTRef を入力し、その符号に応じて次の(40)式により定まる符号信号GSign を出力するようになっている。ここで、関数Sgn() は、上述した(4)式により定義されるものである。
【0145】
【数31】
【0146】
指令励磁電流演算部82は、指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefの絶対値との割合が1:kとなる条件の下で指令トルクTRef に一致したトルク出力が得られるように、次の(41)式により指令励磁電流IdRef0 を演算するようになっている。
【0147】
【数32】
【0148】
また、指令トルク電流演算部83は、指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefの絶対値との割合が1:kとなる条件の下で、次の(42)式により指令トルク電流IqRef0 を演算するようになっている。
【0149】
【数33】
【0150】
切替器84は、スイッチ手段により構成され、上述したリミットフラグFlgLMTに応じた指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefとを出力するようになっている。すなわち、リミットフラグFlgLMT=0つまり基準電流比の絶対値が所定値k以下の場合にあっては、切替器84は、基準励磁電流Id*を指令励磁電流IdRefとし、基準トルク電流Iq*を指令トルク電流IqRefとして出力する。一方、リミットフラグFlgLMT=1つまり基準電流比の絶対値が所定値kよりも大きい場合にあっては、切替器84は、指令励磁電流IdRef0 を指令励磁電流IdRefとし、指令トルク電流IqRef0 を指令トルク電流IqRefとして出力する。従って、一定の指令二次磁束φRef が与えられている時の指令励磁電流IdRefは、前者の場合には一定となり、後者の場合には指令トルクTRef に応じて設定される。
【0151】
このように、指令電流演算部76は、指令二次磁束φRef と指令トルクTRef とに基づいて、励磁電流に対するトルク電流の割合(つまりすべり周波数)が所定値以下であり且つ出力トルクが指令トルクTRef に一致するように、指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefとを生成する。この点において、指令電流演算部76は、いわゆるトルクリミット手段とは全く異なるものである。そして、d軸誘起電圧Ed に基づいて軸ずれ補正を行う構成を備えたセンサレスベクトル制御装置1、28に対し指令電流演算部76を適用すると、以下のような作用、効果が得られる。
【0152】
すなわち、第1の実施例での解析結果が示すように、励磁電流に対するトルク電流の割合が増加する重負荷時には、軸ずれによる誘起電圧誤差の軌跡は、d軸に対して大きな交差角を持つようになる(図3、図7参照)。一方、一次抵抗に設定誤差がある場合、誘起電圧誤差の軌跡は一次電流ベクトルの方向に推移する(図8参照)。従って、重負荷時においては、d軸誘起電圧Ed に関して軸ずれによる影響と一次抵抗の設定誤差による影響とが互いに干渉し合い、d軸誘起電圧Ed からでは軸ずれを正しく検出できない虞がある。
【0153】
これに対し、指令電流演算部76を用いると、d軸電流Id に対するq軸電流Iq の割合が所定値k以下に制限されるので上記干渉状態を回避し易くなり(図4〜図6参照)、軸ずれ補償による安定性と一次抵抗に対するロバスト性とを確保することができる。その結果、速度制御範囲が低速側へ拡大し、重負荷時においても指令トルクに一致したトルクを安定して発生させることができる。
【0154】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す各実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
第1の実施例においては以下のような変形または拡張が可能である。
軸ずれ現象を周波数領域で2分割し、h軸誘起電圧誤差dEhLF とd軸誘起電圧EdHF とに基づいてインバータ周波数ωinv を補正したが、d軸誘起電圧EdHF による補正は必ずしも必要ではない。従って、ローパスフィルタ45、ハイパスフィルタ47、軸安定化補償部48および加算器51を除いた構成としても良い。
ローパスフィルタ45のカットオフ角周波数g1 およびハイパスフィルタ47のカットオフ角周波数g2 をともに1/τ2[rad/s]に設定したが、必ずしもこの値に限定されない。
【0155】
インバータ周波数ωinv の基準項であるインバータ基準周波数ωinv*を得るためにインバータ基準周波数演算部50を備えたが、軸安定化補償部46は積分要素を備えているので、インバータ基準周波数演算部50を除いた構成としても良い。
【0156】
誘起電圧演算部23におけるd軸誘起電圧Ed およびq軸誘起電圧Eq の演算精度を高めるために一次抵抗補正部53を備えたが、要求される制御精度、使用条件などによっては、一次抵抗補正部53を除いた構成としても良い。
また、一次抵抗補正部53は、v軸誘起電圧誤差dEv に基づいて一次抵抗の設定値R1 を補正する新規な構成を備えており、h軸誘起電圧誤差dEh に基づく軸ずれ補償とは独立してセンサレスベクトル制御装置(例えば図15、図16に示すセンサレスベクトル制御装置1、27)に適用することができる。これにより、一次抵抗の変動に対してロバストな制御系を構成することができる。
【0157】
誘起電圧演算部23は、指令d軸電圧VdRef、指令q軸電圧VqRefからd軸電流Id とq軸電流Iq とによるインピーダンス降下分を減算することによりd軸誘起電圧Ed 、q軸誘起電圧Eq を推定演算したが、d軸電流Id とq軸電流Iq に替えて指令励磁電流IdRefと指令トルク電流IqRefを用いて推定演算するように構成しても良い。第4の実施例における二次磁束演算部68についても同様である。
第3の実施例において、インバータ基準周波数演算部30を除いた構成としても良い。また、第4の実施例において、インバータ周波数ωinv の基準項であるインバータ基準周波数ωinv*を演算するインバータ基準周波数演算部を付加しても良い。
【0158】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明の速度センサレスベクトル制御装置は、d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義するとともに、位相角θHVとdq軸直交座標系における一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で位相角θHVを所定の位相角に設定し、h軸誘起電圧誤差に基づいてインバータ周波数を補正するように構成されている。h軸誘起電圧誤差にはd軸誘起電圧よりも軸ずれの影響が顕著に現れるので、d軸誘起電圧に着目していた従来構成に比べて軸ずれの情報をインバータ周波数に作用させ易くなり、制御系の安定性を高めることができる。そして、モータパラメータ特には一次抵抗の設定誤差に対しロバストな制御系を実現できる。その結果、速度制御範囲が低速側へ拡大し、低速回生時においても大きなトルクを安定して発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すセンサレスベクトル制御装置の機能ブロック図
【図2】hv軸回転座標系とdq軸回転座標系との関係を示すベクトル図
【図3】力行150%時における軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図4】力行75%時における軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図5】無負荷時における軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図6】回生75%時における軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図7】回生150%時における軸ずれに対する誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図8】回生150%時におけるdq軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図9】回生150%時におけるhv軸回転座標系から見た誘起電圧誤差の軌跡を示す図
【図10】本発明の第2の実施例を示すhv軸位相角演算部の機能ブロック図
【図11】力行状態(a)および回生状態(b)におけるhv軸回転座標系とdq軸回転座標系との関係を示すベクトル図
【図12】本発明の第3の実施例を示す図1相当図
【図13】本発明の第4の実施例を示す図1相当図
【図14】本発明の第5の実施例を示す指令電流演算部の機能ブロック図
【図15】第1の従来例を示す図1相当図
【図16】第2の従来例を示す図1相当図
【図17】dq軸直交座標系と静止座標系との関係を示すベクトル図
【符号の説明】
2はインバータ回路(インバータ装置)、7は誘導電動機、9は指令電圧演算部(dq軸指令電圧演算手段)、11は座標変換部(dq軸電流演算手段)、12、13は電流検出器(電流検出手段)、23は誘起電圧演算部(dq軸誘起電圧演算手段、d軸誘起電圧演算手段、q軸誘起電圧演算手段)、33、59、65はセンサレスベクトル制御装置、34、60、66はベクトル制御部(ベクトル制御手段)、35、61、67はインバータ周波数演算部(インバータ周波数演算手段)、36、54はhv軸位相角演算部(hv軸位相角演算手段)、39はhv軸誘起電圧誤差演算部(h軸誘起電圧誤差演算手段、v軸誘起電圧誤差演算手段)、44は基準誘起電圧演算部(基準誘起電圧演算手段)、45はローパスフィルタ(第1のフィルタ手段)、46は軸安定化補償部(第1の軸安定化補償手段)、47はハイパスフィルタ(第2のフィルタ手段)、48は軸安定化補償部(第2の軸安定化補償手段)、49はインバータ周波数補正部(インバータ周波数補正手段)、50はインバータ基準周波数演算部(インバータ基準周波数演算手段)、53は一次抵抗補正部(一次抵抗補正手段)、58は符号判断部 (符号判定手段)、63は減算器(q軸誘起電圧誤差演算手段)、64、74は軸安定化補償部(インバータ周波数補正手段)、68は二次磁束演算部(dq軸二次磁束演算手段)、69はv軸二次磁束誤差演算部(v軸二次磁束誤差演算手段)、73は基準二次磁束演算部(基準二次磁束演算手段)である。
Claims (11)
- 誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、
前記ベクトル制御手段が、
前記誘導電動機の相電流を検出する電流検出手段と、
d軸と当該d軸に対し90°進んだq軸とからなるdq軸直交座標系において、前記検出された相電流に基づいて前記誘導電動機の一次電流のd軸電流とq軸電流とを演算するdq軸電流演算手段と、
前記d軸電流と前記q軸電流とがそれぞれ前記誘導電動機の励磁電流を指令する指令d軸電流とトルク電流を指令する指令q軸電流とに一致するように指令d軸電圧と指令q軸電圧とを演算するdq軸指令電圧演算手段と、
前記d軸の向きと前記誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように、前記インバータ装置が出力するインバータ周波数を演算するインバータ周波数演算手段とを備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、前記指令d軸電圧、および前記指令q軸電圧に基づいてd軸誘起電圧とq軸誘起電圧とを推定演算するdq軸誘起電圧演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準誘起電圧、前記d軸誘起電圧、および前記q軸誘起電圧に基づいてh軸誘起電圧誤差を演算するh軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記h軸誘起電圧誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とを備えて構成されていることを特徴とする速度センサレスベクトル制御装置。 - 前記インバータ周波数補正手段は、
前記h軸誘起電圧誤差を入力として低域ろ過特性を有する第1のフィルタ手段と、
この第1のフィルタ手段を介して出力される前記h軸誘起電圧誤差が0となるように前記インバータ周波数に対する第1の周波数補正量を演算する第1の軸安定化補償手段と、
前記d軸誘起電圧を入力として高域ろ過特性を有する第2のフィルタ手段と、
この第2のフィルタ手段を介して出力される前記d軸誘起電圧が0となるように前記インバータ周波数に対する第2の周波数補正量を演算する第2の軸安定化補償手段とを備え、
前記第1の周波数補正量および前記第2の周波数補正量により前記インバータ周波数を補正するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の速度センサレスベクトル制御装置。 - 前記第1および第2のフィルタ手段は、それぞれカットオフ角周波数が前記誘導電動機の二次時定数の逆数にほぼ等しくなるように設定されていることを特徴とする請求項2記載の速度センサレスベクトル制御装置。
- 前記hv軸位相角演算手段は、前記位相角θHVを前記一次電流の位相角に等しく設定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の速度センサレスベクトル制御装置。
- 前記hv軸位相角演算手段は、
前記指令d軸電流または前記d軸電流と前記指令q軸電流または前記q軸電流とに基づいて前記一次電流の位相角を演算する一次電流位相角演算手段と、
前記指令q軸電流または前記q軸電流の符号を判定する符号判定手段と、
前記符号が正と判定された場合には、90°から前記一次電流の位相角を減算した値を前記位相角θHVとして設定し、前記符号が負と判定された場合には、−90°から前記一次電流の位相角を減算した値を前記位相角θHVとして設定する位相角設定手段とから構成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の速度センサレスベクトル制御装置。 - 前記インバータ周波数演算手段は、
前記位相角θHV、前記d軸誘起電圧、および前記q軸誘起電圧に基づいてv軸誘起電圧を演算するv軸誘起電圧演算手段と、
前記位相角θHVと前記v軸誘起電圧と前記指令d軸電流または前記d軸電流とに基づいて、前記インバータ周波数の基準項であるインバータ基準周波数を演算するインバータ基準周波数演算手段とを備えていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の速度センサレスベクトル制御装置。 - 誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、
前記ベクトル制御手段が、
前記誘導電動機の相電流を検出する電流検出手段と、
d軸と当該d軸に対し90°進んだq軸とからなるdq軸直交座標系において、前記検出された相電流に基づいて前記誘導電動機の一次電流のd軸電流とq軸電流とを演算するdq軸電流演算手段と、
前記d軸電流と前記q軸電流とがそれぞれ前記誘導電動機の励磁電流を指令する指令d軸電流とトルク電流を指令する指令q軸電流とに一致するように指令d軸電圧と指令q軸電圧とを演算するdq軸指令電圧演算手段と、
前記d軸の向きと前記誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように、前記インバータ装置が出力するインバータ周波数を演算するインバータ周波数演算手段とを備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電圧から、少なくとも、前記誘導電動機の一次抵抗設定値と前記指令d軸電流または前記d軸電流との積を減算することによりd軸誘起電圧を推定演算し、前記指令q軸電圧から、少なくとも、前記一次抵抗設定値と前記指令q軸電流または前記q軸電流との積を減算することによりq軸誘起電圧を推定演算するdq軸誘起電圧演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準誘起電圧、前記d軸誘起電圧、および前記q軸誘起電圧に基づいてv軸誘起電圧誤差を演算するv軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記v軸誘起電圧誤差に基づいて前記一次抵抗設定値を補正する一次抵抗補正手段とを備えて構成されていることを特徴とする速度センサレスベクトル制御装置。 - 前記hv軸位相角演算手段は、
前記指令d軸電流または前記d軸電流と前記指令q軸電流または前記q軸電流とに基づいて前記一次電流の位相角を演算する一次電流位相角演算手段と、
前記指令q軸電流または前記q軸電流の符号を判定する符号判定手段と、
前記符号が正と判定された場合には、90°から前記一次電流の位相角を減算した値を前記位相角θHVとして設定し、前記符号が負と判定された場合には、−90°から前記一次電流の位相角を減算した値を前記位相角θHVとして設定する位相角設定手段とから構成されていることを特徴とする請求項7記載の速度センサレスベクトル制御装置。 - 誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、
前記ベクトル制御手段が、
前記誘導電動機の相電流を検出する電流検出手段と、
d軸と当該d軸に対し90°進んだq軸とからなるdq軸直交座標系において、前記検出された相電流に基づいて前記誘導電動機の一次電流のd軸電流とq軸電流とを演算するdq軸電流演算手段と、
前記d軸電流と前記q軸電流とがそれぞれ前記誘導電動機の励磁電流を指令する指令d軸電流とトルク電流を指令する指令q軸電流とに一致するように指令d軸電圧と指令q軸電圧とを演算するdq軸指令電圧演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、および前記指令d軸電圧に基づいてd軸誘起電圧を推定演算するd軸誘起電圧演算手段と、
前記d軸誘起電圧に基づいて、前記d軸の向きと前記誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように、前記インバータ装置が出力するインバータ周波数を補正して生成するインバータ周波数演算手段とを備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記インバータ周波数と前記指令d軸電流とに基づいて基準誘起電圧を演算する基準誘起電圧演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、および前記指令q軸電圧に基づいてq軸誘起電圧を推定演算するq軸誘起電圧演算手段と、
前記q軸誘起電圧と前記基準誘起電圧とに基づいてq軸誘起電圧誤差を演算するq軸誘起電圧誤差演算手段と、
前記q軸誘起電圧誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とから構成されていることを特徴とする速度センサレスベクトル制御装置。 - 誘導電動機を駆動するインバータ装置と当該インバータ装置を制御するベクトル制御手段とから構成され、
前記ベクトル制御手段が、
前記誘導電動機の相電流を検出する電流検出手段と、
d軸と当該d軸に対し90°進んだq軸とからなるdq軸直交座標系において、前記検出された相電流に基づいて前記誘導電動機の一次電流のd軸電流とq軸電流とを演算するdq軸電流演算手段と、
前記d軸電流と前記q軸電流とがそれぞれ前記誘導電動機の励磁電流を指令する指令d軸電流とトルク電流を指令する指令q軸電流とに一致するように指令d軸電圧と指令q軸電圧とを演算するdq軸指令電圧演算手段と、
前記d軸の向きと前記誘導電動機の二次磁束の向きとが一致するように、前記インバータ装置が出力するインバータ周波数を演算するインバータ周波数演算手段とを備えて構成されている速度センサレスベクトル制御装置において、
前記d軸に対し位相角θHVだけ遅れたh軸と当該h軸に対し90°進んだv軸とからなるhv軸直交座標系を定義し、
前記インバータ周波数演算手段は、
前記位相角θHVと前記dq軸直交座標系における前記一次電流の位相角とが同符号となる条件の下で前記位相角θHVを所定の位相角に設定するhv軸位相角演算手段と、
前記指令d軸電流に基づいて基準二次磁束を演算する基準二次磁束演算手段と、
前記指令d軸電流または前記d軸電流、前記指令q軸電流または前記q軸電流、前記指令d軸電圧、および前記指令q軸電圧に基づいてd軸二次磁束とq軸二次磁束とを推定演算するdq軸二次磁束演算手段と、
前記位相角θHV、前記基準二次磁束、前記d軸二次磁束、および前記q軸二次磁束に基づいてv軸二次磁束誤差を演算するv軸二次磁束誤差演算手段と、
前記v軸二次磁束誤差に基づいて前記インバータ周波数を補正するインバータ周波数補正手段とから構成されていることを特徴とする速度センサレスベクトル制御装置。 - 前記誘導電動機の発生トルクが指令トルクに等しくなるとともに、前記指令d軸電流に対する前記指令q軸電流の割合が所定値以下となるように前記指令d軸電流と前記指令q軸電流とを演算するdq軸指令電流演算手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし10の何れかに記載の速度センサレスベクトル制御装置。
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