JP3735310B2 - 生分解性を有するポリオレフィン系樹脂組成物、及び、生分解性を有するシート状物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土中や海水中等の微生物により分解される合成樹脂およびそれからなるシート状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチシートをはじめとする農業・工業用途シート状物は一般に安価であることが求められ、主としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を原料として生産されている。
【0003】
しかしながら、これら農業・工業用シート状物の回収・再生は、たとえば、様々な汚れ(たとえばマルチシートの場合には泥などが付着する)のため、なかなか捗っていないのが現状であり、廃棄により環境汚染等様々な問題を引き起こすおそれがある。
【0004】
ここで、ポリ乳酸、ポリ酪酸等の生分解性を有する樹脂を原料とすることにより、回収・再生を行わず廃棄しても環境汚染等の問題を引きおこさない方法が考えられる。
しかし、これら生分解性を有する樹脂からなるシート状物は樹脂自体が高価であるためなかなかその普及が進まない。
【0005】
ここで、本発明者等は安価な、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂をベースとしながらも、生分解が可能なポリオレフィン系樹脂組成物に関する検討を行った。
【0006】
生分解性成分として比較的安価で入手しやすいポリ乳酸系生分解性合成樹脂を用い、ポリオレフィン系重合体を配合したところ、充分な生分解性が得られることが確認された。しかし、これらの樹脂組成物をシート状またはフィルム状に加工する検討を行ったところ、樹脂組成物を混合するロールの表面に樹脂成分が付着して、その結果、混練ができず均一な樹脂組成物とならなかったり、あるいは、樹脂組成物自体は作製できたものの、平滑なシートあるいはフィルムを安定的に得ることができない場合があることが判った。
【0007】
そして、本発明者等は、検討の結果、ロール表面への樹脂成分の付着は、ポリ乳酸系生分解性合成樹脂成分の吸湿、及び、ポリオレフィン系重合体との組み合わせに原因があることを見出した。
【0008】
ポリ乳酸系生分解性樹脂成分はトウモロコシ等のでんぷんから得られる乳酸を原料とした合成樹脂成分であるが、非常に吸湿性が高く、さらに、ポリオレフィン系重合体との相溶性が低いために、ポリ乳酸系生分解性樹脂成分を水分がある状態でポリオレフィン系重合体と混合してフィルム化、あるいは、シート化しようとするとロールの表面にこのポリ乳酸系生分解性樹脂成分が付着することが判り、ポリ乳酸系生分解性樹脂成分に水分がある状態でも安定してフィルム化、あるいは、シート化できる方法について詳細に検討し、本発明に至った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、ロールによるシートあるいはフィルム(本発明においてこれらを併せて「シート状物」と云う)への加工に際して、ロール表面への樹脂成分の付着が生ぜず、安定して生産できる生分解性を有するポリオレフィン系樹脂組成物及び表面が平滑でかつ安価な生分解性を有するポリオレフィン系樹脂組成物、及び、生分解性を有するシート状物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、請求項1に記載の通り、ベース成分としてポリオレフィン系樹脂、a成分としてポリ乳酸系合成樹脂成分、及び、b成分として酢酸ビニルユニット含有量が55%以上の酢酸ビニル・エチレン共重合体、アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレン又はポリスチレン系共重合体からなる群より選ばれた1種以上を含むポリオレフィン系樹脂組成物であって、上記ポリスチレン系共重合体はハードセグメントとしてのスチレンに、ソフトセグメントとしての、ビニルポリイソプレンまたはポリ(エチレン−プロピレン)が結合してなるポリスチレン系共重合体であるポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0011】
このような構成の樹脂組成物を用いることにより、安価でありながら充分な生分解性を有し、かつ、原料に多少水分が含まれた状態であっても平滑な表面を持つシート状物を得ることができる。
【0012】
さらに、上記樹脂組成物において、ベース成分、a成分及びb成分の含有比は請求項2に記載のように、ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量を10重量%以上とし、かつ、b成分の酢酸ビニル・エチレン共重合体の含有量を0.5重量%以上とするか、または、請求項3に記載のように、ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量を10重量%以上とし、かつ、b成分のアクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンの含有量を0.5重量%以上とするか、あるいは、請求項4に記載のように、ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量を10重量%以上とし、かつ、b成分のポリスチレン系共重合体の含有量を5重量%以上とすることにより、より容易に生産性良く安定したシート生産が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においてベースとなる樹脂成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、エチレン系共重合体(エチレンユニットが主(80%程度以上)のもの)、プロピレン系共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系重合体の1種、あるいは2種以上であることが必要である。
【0014】
これらポリオレフィン系重合体をベース樹脂成分とすることにより、安価、軽量なシートあるいはフィルムを得ることができ、かつ、万一焼却処理してもハロゲン、ダイオキシン等の有害ガスが発生しない。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース成分としてポリオレフィン系樹脂を含み、これにa成分としてポリ乳酸系合成樹脂成分、及び、b成分として酢酸ビニル・エチレン共重合体、アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレン又はポリスチレン系共重合体からなる群より選ばれた1種以上を含むものである。
【0016】
ここで、ポリ乳酸系合成樹脂成分はトウモロコシ等のでんぷんから得られる乳酸を原料とした合成樹脂であり、市販されているものである。
【0017】
ポリ乳酸系合成樹脂成分はポリオレフィン系重合体、ポリ乳酸系合成樹脂成分及び酢酸ビニル・エチレン共重合体または/及びアクリル変成されたポリテトラフルオロエチレン等のポリマー成分の合計量を100とした場合に、そのうち10重量%以上とすることが好ましい。
【0018】
ポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量が10重量%以上であると充分な生分解性を得ることができ、あるいは、分解までに必要な期間が短縮できる。ポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量は好ましくは10重量%以上75重量%以下である。
しかし、本発明の趣旨からポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量は30重量%以下であれば充分であり、コスト面でも有利である。
【0019】
ポリ乳酸系合成樹脂成分は吸湿性が高く、開封後放置により2000重量%程度、吸湿する場合があるが、本発明においてはその特有の構成により、2000重量%程度までの吸湿であれば、その水分を予め乾燥することなく配合して用いることができる。
【0020】
一方、酢酸ビニル・エチレン共重合体を添加する際には、ポリマー成分の合計量を100として好ましくは0.5重量%含有するように添加する。このように極めて少量の添加でも充分な効果が得られるので、コストへの影響は極めて小さい。酢酸ビニル・エチレン共重合体の含有量が0.5重量%以上であるとポリ乳酸系合成樹脂成分中の残留水分による影響が小さくなり、フィルム化、シート化時のロールへの付着防止効果が高くなり、良品の安定生産が可能となるからである。
【0021】
酢酸ビニル・エチレン共重合体の含有量は、通常50重量%以下とすることが望ましい。50重量%以下がコスト的に有利で、またロールへの粘着などの問題が特におこりにくいからである。
【0022】
本発明で用いる酢酸ビニル・エチレン共重合体(「VAE」とも云う)は酢酸ビニルとエチレンとからなる共重合体であるが、エチレン系共重合体である一般的なエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルユニットは通常15%以上20重量%以下)とは異なり、酢酸ビニルユニット含有量がエチレンユニット含有量に対して相対的に多いもの(酢酸ビニルユニット含有率は55%以上、通常70%以下)である。このような酢酸ビニル・エチレン共重合体の例として、日本合成化学工業製ソアブレンBH、CH、CI及び大日本インキ化学工業製エバスレン410−P、420−P、450−P、350−P、310−Pなどが挙げられる。
【0023】
また、アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンを添加する際にはポリマー成分の合計量を100として0.5重量%以上含有するように添加することが望ましい。このように極めて少量の添加でも充分な効果が得られるので、コストへの影響は極めて小さい。アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.5重量%以上であるとポリ乳酸系合成樹脂成分中の残留水分による影響が小さくなり、フィルム化、シート化時のロールへの付着が起きにくく、良品の安定生産が可能となるからである。
【0024】
アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンの含有量は通常20重量%以下とすることが望ましい。20重量%以下がコスト的に有利だからである。
ここでアクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンは、三菱レイヨン等から入手できる。
【0025】
一方、ポリスチレン系共重合体は、ハードセグメントとしてのスチレンにソフトセグメントとしてのビニルポリイソプレンとが結合した共重合体(SIS)で、例えばクラレからハイブラー7125などとして入手可能である。
【0026】
また、ソフトセグメントとしてポリ(エチレン−プロピレン)が結合したポリスチレン系共重合体(SEPS)なども用いることができ、このようなポリスチレン系共重合体は、クラレからセプトン2063、2007、1001、1050、104等として入手可能である。
なお、ポリスチレン系共重合体としては上記のものを2種以上混合して用いることもできる。
【0027】
これらポリオレフィン系重合体、a成分及びb成分は、ニーダー、バンバリーミキサー等により均一になるよう混練、混合され、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができるが、この樹脂組成物は必要に応じて押し出し成形等によりペレットとすることができる。
【0028】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、上記ポリオレフィン系重合体、a成分及びb成分からなる基本樹脂組成物以外に、その混練時、あるいはフィルム化加工、シート化加工などの際に、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、酸化防止剤、滑剤等を適宜添加することができる。
【0029】
このようにして得られたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて、Tダイ押出成形、カレンダー加工などにより、フィルム化、シート化して本発明のシート状物を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明のポリオレフィン系樹脂組成物およびそれよりなるシート状物について具体的に説明する。
表1に示す原料を用い、表2〜5に示す含有率(重量比)となるよう8インチテストロールを用いて混練して、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造すると同時に、厚さ0.2mmのシートを作製した。
【0031】
なお、ポリ乳酸系合成樹脂成分は通常アルミシート内装袋付紙袋の荷姿で入手されるが、同一種類のものを、開封直後に使用した場合(表2〜5における「*1」、及び、開封後冷暗倉庫に3か月保管した場合(表2〜5における「*2」、水分率:1916重量%:カールフィッシャー法により測定)の2つをそれぞれ用いている(配合は乾燥重量をベースとして行った)。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
表2における比較例3のポリオレフィン系樹脂組成物を用いた場合には、ロールに組成物の成分が付着して平滑なシートができなかったために、以下の評価を行わなかった。また、比較例4及び5のポリオレフィン系樹脂組成物を用いた場合には、前ロール表面及び後ロール表面にフィルム長さ方向に平行に筋状の「取れ」(ロールにより形成されるシートの一部分がそのロール表面から剥離されずに残留したために形成されたシートの瑕疵)が発生し、安定な生産ができなかった。
【0038】
このように安定的に生産ができない場合を「×」として評価した。
また、後ロール表面に点状の「取れ」が発生したものの、安定生産が可能であると判断されたものは「△」、また、安定生産が可能であると判断されたものの後ロール表面(鏡面仕上げ)に剥離せずに「曇」状の樹脂組成物の付着が見られたものを「○〜△」として評価した。
【0039】
これらシートについて、引張強度、引裂強度及び生分解性についてそれぞれ評価を行った。ただし、上記安定生産性評価が、「×」、「△」及び「○〜△」と評価された組成物によるシートの内、その幅(横)方向の機械的強度の測定に使用可能な大きさのサンプルが得られない場合には、長さ方向(縦方向)のみについて評価した。
【0040】
引張強度及び引裂強度はJIS K6723に準じて評価した。なお「縦」とはシート長さ方向、「横」はシート長さ方向に垂直な方向をそれぞれ示す。
【0041】
また、生分解性についてはコンポスト試験として松下電工製生ゴミ分解処理機EH432AHを用いて、この装置の通常条件で運転したときの分解状況を目視で判定し、試験前の状態から変化が見られなかった場合を「×」、若干分解されて部分的に亀裂が入った状態となった場合を「△」、分解が進んで亀裂が全体に入った状態となっている場合を「○」として評価した。
これら評価結果を表2〜5に併せて記載した。
【0042】
表2〜表5により、本発明に係るポリオレフィン系樹脂組成物を用いてなるシート状物は、高い生分解性を維持しながら、開封後時間が経過したポリ乳酸系合成樹脂成分を用いた場合であっても良品の安定生産が可能であり、さらに、引張強度、引裂強度とも、従来のオレフィン系−ポリ乳酸系のポリオレフィン系樹脂組成物を用いてなるシート状物より高いことが判る。
【0043】
なお、上記実施例1〜21のうち、シートの安定生産性評価が「○」であったポリオレフィン系樹脂組成物について、カレンダーによって、それぞれ厚さ100μmのフィルムを作製したが、その際も安定生産が可能であり、得られたフィルムの機械的特性も、比較例2のポリオレフィン系樹脂組成物から同様に作製したフィルムと同等以上であった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ベース成分としてポリオレフィン系樹脂、a成分としてポリ乳酸系合成樹脂成分、及び、b成分として酢酸ビニル・エチレン共重合体、アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレン又はポリスチレン系共重合体からなる群より選ばれた1種以上を含む構成を有しているため、シート状物の安定生産が可能で、かつ、この樹脂組成物から得られる本発明のシート状物も、充分な生分解性を維持しながら、引張強度、引裂強度等の機械的強度に優れたものとすることができる。
Claims (5)
- ベース成分としてポリオレフィン系樹脂、a成分としてポリ乳酸系合成樹脂成分、及び、b成分として酢酸ビニルユニット含有量が55%以上の酢酸ビニル・エチレン共重合体、アクリル変成されたポリテトラフルオロエチレン又はポリスチレン系共重合体からなる群より選ばれた1種以上を含むポリオレフィン系樹脂組成物であって、
上記ポリスチレン系共重合体はハードセグメントとしてのスチレンに、ソフトセグメントとしての、ビニルポリイソプレンまたはポリ(エチレン−プロピレン)が結合してなるポリスチレン系共重合体であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。 - ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量が10重量%以上であり、b成分の酢酸ビニル・エチレン共重合体の含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量が10重量%以上であり、b成分のアクリル変成されたポリテトラフルオロエチレンの含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- ポリマー成分合計量を100として上記a成分のポリ乳酸系合成樹脂成分の含有量が10重量%以上であり、b成分のポリスチレン系共重合体の含有量が5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなることを特徴とするシート状物。
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