JP3740112B2 - 亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性の改善方法に関し、詳しくは、亜鉛系合金めっき鋼板の加工部の耐食性を向上させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板の耐食性を向上させるために、鋼板表面に亜鉛系合金、例えば、Zn−Al系、Zn−Al−Mg系、Zn−Al−Mg−Si系合金などを、電解法や溶融めっき金属への浸漬法などの方法によりめっきすることが広く行なわれている。
【0003】
これらのめっき鋼板は、その優れた耐食性によって、自動車、建材など多くの部材として使用されている。特に、屋外において直接腐食環境に曝される建材などでは、Zn−Al−Si系のやや硬質なめっき層を形成したものを使用することが多い。これらの用途として使用される場合、めっき鋼板は、切断、曲げ、張り出し、溶接などの加工が施される。
【0004】
亜鉛系合金めっき層は、加工性には優れているものの、これらの加工によってめっき層に微小の亀裂が発生することは避けられない。
【0005】
亜鉛系合金めっき層に亀裂が入ると、亀裂部分の隙間に沿ってめっき層の腐食が進行し、白錆が発生し、また、この腐食がめっき層を貫通して基板の鋼板に達すると、赤錆が発生し美観を損ねるのみならず、腐食がさらに進行し、鋼板自体の耐食性を劣化させる。このような亜鉛系合金めっき層の耐食性の劣化を防止するために、めっき層にさらに塗装を施したりして、めっき層の微小亀裂からの腐食の進行を防止したものがある。
【0006】
ところで、溶接製品の溶接部の強度を向上させ、応力集中や、微小応力欠陥を抑制する応力パターンを形成するために超音波衝撃エネルギにより処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第6,171,415号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、亜鉛系合金めっき層の上に防錆のための皮膜を形成する方法は、めっき処理した後の鋼板にほぼ全面にわたって塗装被覆されており、塗装被覆のためのコストがきわめて高いものとなる。さらに、この塗装被覆した亜鉛系合金めっき鋼板も、鋼板を所定の形状に加工した際にめっきに亀裂が入ると共に、塗装皮膜にも亀裂がはいることがあり、塗装皮膜の亀裂を通してめっき層、さらには基板の鋼板にまで腐食が進展する。従って、この塗装被覆した亜鉛系合金めっき鋼板でも、めっき鋼板の耐食性向上のための十分な対策とはなりえない。本発明は、亜鉛系合金めっき鋼板の加工によって生じるめっき層の亀裂の進展を効率的に防止し、亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性を改善する方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、超音波で先端を振幅20〜60μm、周波数19kHz〜60kHz、出力0.2〜3kwで振動させる工具を用いて亜鉛系合金めっき鋼板を打撃する超音波衝撃処理を、鋼板を加工した後の加工部に施すことによって、亜鉛系合金めっき層の表層を塑性変形させ、よって耐食性を改善するものである。その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0010】
(1)鋼板の表面に、質量%で亜鉛を30%以上含有する亜鉛系合金めっきを施した鋼板において、該鋼板を加工した後に、該鋼板の加工部分に、超音波衝撃処理を施すことを特徴とする亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
【0011】
(2)亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が、55%アルミニウム−亜鉛合金のめっき層であることを特徴とする(1)記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
【0012】
(3)亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が、質量%で、1〜20%のアルミニウム、0.5〜10%のMgを含有する亜鉛系合金めっき層であることを特徴とする(1)記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
【0013】
(4)さらに、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が質量%で、Si:0.01〜1%を含有する亜鉛系合金めっき層であることを特徴とする(3)に記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、亜鉛系合金めっき鋼板を加工して使用する構造製品、例えば、自動車の構造部材、電気製品用部材、建築部材などに広く適用されるものである。特に、曲げ加工、張り出し加工など、表面が厳しい引張加工を受けるものに有用である。このような構造製品部材の加工途上において、めっき鋼板が上記のような厳しい引張加工を受けると、めっき鋼板のめっき層の表面に微小な亀裂が発生する。この微小な亀裂が湿潤空気、水滴などが存在すると、亀裂部分とそれ以外の部分との間に電位差が生じて、亜鉛系合金めっき層の腐食が起こり、腐食生成物としての白錆(酸化亜鉛)が発生する。この腐食がさらに進行し亀裂がめっき層を貫通して下地の鋼板にまで達すると、鋼板が腐食し生成物として赤錆(酸化鉄)が発生する。このように加工によって形成されためっき表面の亀裂がめっき鋼板の耐食性を著しく低下させる。
【0015】
従って、加工によって生じた亀裂を修復するか、亀裂の開口部が環境と接触しないように閉塞すれば腐食の進行を防止することができることがわかる。
【0016】
このようなめっき層の亀裂の発生は、厳しい加工を受けた箇所が主であるため、少なくともこの箇所に対してめっき層の亀裂を修復し、或いは、その開口部が環境と接触しないように閉塞する処理を施せばよいことになる。
【0017】
ところで、亀裂を修復ないしは、その開口部を閉塞する方法として、超音波衝撃処理を適用することに想到した。この処理は、超音波で先端のハンマー部を振幅20〜50μm、周波数19〜60kHz、出力0.2〜3kwで振動させる装置により金属表面を打撃してピーニングを行なうものであって、基本的にはハンマーピーニングと同じであるが、一回一回の打撃のエネルギーは小さいかわりに、1秒間に1万回を超える回数の打撃を加えることによって、金属に塑性変形を与えるものである。
【0018】
この打撃処理により、めっき層の表層部を塑性変形させ、よって、亀裂の密着させて、これをなくし或いは、亀裂の開口部を閉塞することにより、亀裂への腐食物質の侵入を防ぐことができる。すなわち、図1(a)、図1(b)は、鋼板1に亜鉛系合金めっき層2を有するめっき鋼板1の加工部に対して、超音波衝撃処理を施す場合の、(a)処理前と(b)処理後のめっき層の性状変化を説明する断面模式図であるが、処理前にあっためっき層の亀裂4は、超音波衝撃処理により、亀裂が解消し、或いは小さくなり、或いは開口部が閉塞されたものとなっている。
【0019】
これによって、めっき層の耐食性を向上させることが可能となる。
【0020】
超音波衝撃処理は、1回の打撃エネルギーが小さいため、先端部のハンマー形状は、小型にすることができ、微小な部分や、狭隘な部分に対しても打撃処理を施すことができる。この点において、曲げや張り出しなどの加工を受けた部分にでも処理が適用可能となる。この場合でも、上述のように打撃回数を極めて多くできることから、十分な塑性変形を与えることができる。
【0021】
また、この超音波衝撃処理は、金属表面に対して非常に多くの回数の打撃を与えているので、金属表面に対して従来のハンマーピーニングにはない効果をもあり、また、一回一回の打撃エネルギーショットは、ショットピーニングよりも大きいので、従来のショットピーニングにない効果もある。
【0022】
すなわち、先ず、打撃の回数が多いことで、処理の均一性が得られる。ハンマーピーニングでも数パスを同一線上で実施すればある程度の均一性が得られるが、超音波衝撃処理の打撃サイクル数は、19〜60kHzであり、その得られる均一性はハンマーピーニングのそれとは全く異なるレベルにあり、処理スピードが0.5m/分程度であれば、所要の金属表面のほとんどを均一にかつ欠陥を残すことなく仕上げることができる。
【0023】
このとき、一回一回の打撃力は小さいために、打撃装置に生じる反動は殆どなく、ハンマーピーニング装置に比べて使用性、施工性の面で優れている。
【0024】
めっき層の表層部を塑性変形させるために必要な変形のためのエネルギーはほぼ一定であるため、1サイクルの衝撃エネルギーを大きくして短時間に処理しても良いが、均一性を高めたい場合や、衝撃部位の位置をより精緻に制御し、過度な塑性変形を防止したい場合は、1サイクルの衝撃エネルギーを小さくし、二回以上の処理を同一箇所に対して行なうことが好ましい。
【0025】
また、衝撃エネルギーによって生じる塑性変形の厚さは、衝撃装置の先端のハンマーの曲率半径Rとも関係しており、1サイクルの衝撃エネルギーが同じでも、Rが小さければ、1サイクルの衝撃で生じる塑性変形の厚さは大きくなり、Rが大きければその厚さは小さくなる。
【0026】
また、ハンマーのRが小さければ、1サイクルで処理される範囲が狭いので繰り返し処理が必要となり、またRが大きければ、微小部分への衝撃制御が困難となることもある。従って、超音波打撃処理装置の先端のハンマーの形状は、処理対象とする鋼板の加工部の状況によって適宜選択する。
【0027】
超音波衝撃処理を施すにあたっては、亜鉛系合金めっき鋼板の処理対象箇所すなわち、加工部の形状、加工度などの性状に応じて、超音波打撃処理に必要なハンマーの形状、1サイクルの打撃エネルギー、サイクル数、処理回数などの処理条件を、予備試験などにより、予め設定しておき、これに従って超音波衝撃処理を行なうことにより、加工部のめっき層を塑性変形させ、亀裂を修復ないしは閉塞して耐食性を向上させることが出来る。
【0028】
加工部は、曲げ、張り出しなどに限らず、切断、絞りなど亜鉛系合金めっき層に亀裂を生ぜしめるような加工を加えた個所を含むものであり、少なくともこの加工部を含む周辺に施すことが好ましい。
【0029】
なお、この超音波衝撃処理を施した表面は、塑性変形によって微小な凹凸が形成されることになるため、その表面光沢は若干変化する。これによって、処理されたかどうかを判定することができる。
【0030】
なお、必要により、鋼板の加工部に超音波処理を施し、その後、加工部を含む鋼板の表面に塗装を行なっても良い。また、鋼板の加工部に塗装を施した後、超音波衝撃処理を施しても良い。
【0031】
しかしながら、めっき鋼板の超音波衝撃処理を施した部分に対しては、この箇所にさらに亀裂を生ぜしめるような加工は行なわないことが好ましい。超音波処理を施した後に、この箇所のめっき層に亀裂を生ぜしめるような引張、曲げ張り出しなどの加工を行なうと、再び亀裂が発生したり、閉塞した開口部が再び開口することがあり、耐食性を向上させる効果が減殺されるからである。
本発明が対象とするめっき鋼板は、亜鉛を主体として合金元素を多量に含有する亜鉛系合金めっき鋼板である。合金元素を多量に含有させることで耐食性や溶接性などの性能が向上する一方で、合金元素の多量添加は金属間化合物を形成するなどしてめっき層の硬さを上げ、加工時のめっき割れを促進することが多いからである。具体的には、55%アルミニウム−亜鉛めっき鋼板(JIS G 3321)、Zn−1〜20%Al−0.5〜10%Mgめっき鋼板、Zn−1〜20%Al−0.5〜10%Mg−0.01〜1%Siめっき鋼板、が挙げられる。
【0032】
めっき層がZnを30%以上含有するものとするのは、Zn含有量が40%未満ではめっき層の耐食性が不充分となるからである。
【0033】
Zn−Al合金めっき鋼板において、Alはめっきの耐食性を高める目的で添加され、55%Al−Znめっき鋼板(JIS G 3321)はその代表例としてよく知られている。めっき層中のAl含有量が70%を超えると湿潤環境での耐食性が低下する。
【0034】
Zn−Al−Mg合金めっき鋼板において、AlおよびMgは耐食性を高める目的で添加されるが、Al含有量が1%未満、Mg含有量が0.5%未満では耐食性向上効果が充分ではない。Al含有量が20%を超えるか、Mg含有量が10%を超えると、めっき層が脆くなりすぎて、超音波衝撃処理を施しても耐食性の改善効果が充分ではない。Mg含有量はより好ましくは5%を上限とする。
【0035】
Zn−Al−Mg合金めっき鋼板には、必要に応じてさらに耐食性を向上させる目的で、Siを添加し得る。SiはZn−Al−Mg合金めっき鋼板の耐食性を一段と向上させる効果があるが、含有量が0.1%未満ではその効果が充分ではない。Si含有量が1%を超えて添加することはめっきの外観を著しく損なうので、Siを添加する場合の上限含有量は1%とする。
【0036】
本願発明におけるZn系合金めっきにおいては、耐食性、めっき密着性、成形性などを改善する目的で、めっき層中にさらにPb,Sb,C,P,Fe,Sn,Mn,Ni,Cr,Co,Cu,Ca,Li,Ti,B、希土類元素の1種または2種以上を総和で25%以下含有させることができる。あるいは不純物として上記の元素を混入したZnめっきであっても、支障を来すことはない。また、S,As等の元素、酸化物、炭化物、硫化物等の化合物を分散させためっきとすることもできる。
【0037】
本願発明が対象とするめっき鋼板の下地鋼板の成分は特に限定されるものではなく、必要な強度、加工性、成形性などに応じて適切な成分を選択することができる。
【0038】
さらに、本発明に適用される鋼板は通常のプロセスで製造される冷延鋼板、熱延鋼板のいずれであってもその効果は充分に発揮されるものであり、鋼板の履歴によって効果が大きく変化するものでもない。
【0039】
当然のことながら、本発明が対象とするめっき鋼板上に、各種の処理を付加して施すことも勿論可能であり、例えば、潤滑性向上処理、樹脂塗布処理、溶接性向上処理、りん酸塩処理、りん酸塩処理性を向上させるための処理、等を施したとしても、本願発明の範囲を逸脱するものではなく、付加して必要とする特性に応じて、各種の処理を施しても本願発明の効果は何ら変わるところはない。
【0040】
本発明が対象とするめっき鋼板の強度としては、引張強度が300N/mm2未満の普通鋼あるいは超深絞り用鋼板から、300N/mm2以上の高強度鋼(300,340,400,440,590,780,980,1180,1450N/mm2級など)などの広範囲にわたるものである。
【0041】
なお、亜鉛系合金めっき鋼板の製造方法は、特に限定するものではないが、鋼板を上記の亜鉛系合金の溶融めっき浴に浸漬してめっきすることが一般的である。
【0042】
【実施例】
亜鉛系合金めっきを施した板厚1.0mmの亜鉛系合金めっき鋼板から曲げ試験片(1.0mm(板厚)×20mm(幅)×100mm(長さ))を採取し、めっき面が曲げの外側となるようにして曲げを施した。曲げは、JIS G 3321に準拠した。次いで、本発明の例においては、この試験片の曲げ面に、半径が1.5mmのハンマーを備えた超音波打撃装置により、振幅30μm、周波数30kHzにて0.5m/minの速度で、超音波衝撃処理を行なった。また、比較例として、曲げ面に、ショット粒径7mm、ショット速度10m/sで、2分間のショットピーニングを施したもの、および曲げ状態のまま(無処理)のものを準備し、これらの試験片について大気中での曝露試験を行なった。
【0043】
その結果を表1に示す。
【0044】
表1から判るように、ショットピーニングを施した比較例1,2では35日で白錆が、120日で赤錆が認められ、特に処理を施さなかった比較例2,3では、30〜40日で白錆が、100〜130日で赤錆が認められた。これに対して、本発明の試験片には、長期間白錆、赤錆が発生せず、超音波衝撃処理により耐食性が向上しているのがわかる。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、亜鉛系合金めっき鋼板の加工部に発生する耐食性の劣化を抑制することができるので、亜鉛めっき鋼板を使用した構造製品の耐久性を向上させることができる。本発明の方法は、ハンマーピーニング装置などに比して使用性に優れた超音波打撃装置を使用するので、加工部という限られた箇所、微小な箇所、狭隘な箇所に対して適用でき、構造製品の耐食性を向上させるための処理として効率的であり、経済的にも優れた方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法による亜鉛系合金めっき鋼板の加工部の性状変化を説明する断面模式図であり、(a)は、超音波衝撃処理前、(b)は、超音波衝撃処理後の亀裂の性状を示す。
【符号の説明】
1…亜鉛系合金めっき鋼板
2…鋼板
3…亜鉛系合金めっき層
4…亀裂
Claims (4)
- 鋼板の表面に質量%で亜鉛を30%以上含有する亜鉛系合金めっきを施した鋼板において、該鋼板を加工した後に、該鋼板の加工部分に、超音波衝撃処理を施すことを特徴とする亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
- 亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が、55%アルミニウム−亜鉛合金のめっき層であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
- 亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が、質量%で、1〜20%のアルミニウム、0.5〜10%のMgを含有する亜鉛系合金めっき層であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
- さらに、亜鉛系合金めっき鋼板のめっき層が質量%で、Si:0.01〜1%を含有する亜鉛系合金めっき層であることを特徴とする請求項3に記載の亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性改善方法。
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