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JP3766682B2 - ナノチューブプローブ - Google Patents
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JP3766682B2 - ナノチューブプローブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカーボンナノチューブ、BCN系ナノチューブ、BN系ナノチューブ等のナノチューブを探針として物質の表面信号を操作するナノチューブプローブに関し、更に詳細には、ナノチューブの先端に超微粒子やフラーレン等をセンサー部として設け、この所定構造のセンサー部により物質の表面信号を再現性よく高分解能に操作できるナノチューブプローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、試料表面を高倍率に観察する顕微鏡として電子顕微鏡があったが、真空中でなければ電子ビームが飛ばないために実験技術上で種々の問題があった。ところが、近年、大気中でも表面を原子レベルで観察できる走査型プローブ顕微鏡技術が開発されるに到った。プローブの最先端にある探針を試料表面に原子サイズまで極微接近させると、個々の試料原子からの物理的・化学的作用を探針で検出し、探針を表面上に走査させながら検出信号から試料表面像を現出させる顕微鏡である。
【0003】
これらの顕微鏡の中でも特によく利用されるものは、走査型トンネル顕微鏡(STMとも略称する)と原子間力顕微鏡(AFMとも略称する)である。STMでは研磨金属針などの導電性探針が用いられ、AFMではシリコン製ピラミッドを探針としたカンチレバーを用いて表面信号を検出している。これらに共通した問題は、探針の先端を超微細に先鋭加工できないために物質表面の原子レベルでの微細構造を高分解能に検出できないと云うことであった。
【0004】
例えば、図15は従来のシリコン製のAFM用カンチレバーである。このカンチレバー50の後方はサブストレート52に固定され、前方にはピラミッド状探針54が形成されている。このピラミッド状探針54の先端には極細の先鋭部56が形成され、この先鋭部56が物質表面に近接して表面情報を検出する。このAFM用カンチレバーは半導体プレーナ技術により製造されるが、如何に先鋭部をシャープに形成したとしても、原子サイズと比較すればかなり大きなものになる。従って、表面情報が原子サイズで変化する場合には、上記探針を用いても表面情報を原子レベルにまで高精度に検出することには限界があった。
【0005】
そこで、近年になってカーボンナノチューブを探針に利用しようとするアイデアが出現した。カーボンナノチューブは導電性であるため、トンネル電流を検出するSTMにはもちろん、原子間力を検出するAFMにも利用できる。J.Am.Chem.Soc.120巻(1998年)603頁に、生物システムを映像化する高分解能プローブとしてカーボンナノチューブ探針が提案されている。しかし、カーボン混合物中からカーボンナノチューブだけをどのように収集するか、またどのようにしてホルダーにカーボンナノチューブを固定するのかについては全く未解決であった。
【0006】
また、プローブ顕微鏡分野とは異なるが、近年、コンピュータのメモリ容量が増大するにつれ、メモリ装置がフロッピーディスク装置からハードディスク装置へ、更に高密度ディスク装置へと進化しつつある。小さな空間に更に高密度に情報を詰め込むと、1情報当たりのサイズが小さくなるため、その入出力用の探針もより微細なものが必要になってくる。従来の磁気ヘッド装置では一定以上に小さくすることは不可能であった。CD装置などの電子装置でもその入出力用プローブの超微小化が要望されていた。
【0007】
この磁気ヘッドに替わるものとして、図16に示す磁気プローブが考えられていた。この磁気プローブは、前記ピラミッド状探針54の先鋭部56に蒸着法により強磁性金属膜58を形成して構成される。しかし、この強磁性金属膜58は多結晶膜であるから、多数の磁気的ドメイン60が複合的に配置した膜構造となっている。
【0008】
図17はこの磁気プローブで対象物質の磁気情報を検出する場合の説明図である。この磁気プローブを対象物質62の表面に近接させると、磁気力は逆二乗則で作用する長距離力であるから、各々の磁気的ドメインが1/zに比例した強度で磁気情報を検出する。結果的にそれらの合成信号が磁気的表面情報となるため、磁気情報を高分解能に検出することは極めて困難である。問題点は、先鋭部自体が原子レベルではかなり巨大であること、また多数の磁気的ドメインから構成されることである。
【0009】
従って、この磁気プローブとして前述したカーボンナノチューブを利用することが当然考えられる。しかし、カーボンナノチューブにどうやって強磁性体を担持させるかという技術はまだできていない。更に、カーボンナノチューブの精製技術やホルダーへの固定化技術については全く未解決であることは前述と同様であった。
【0010】
本発明者等は、これらの問題点のうち微小化技術に解決策を与える3件の特許出願をなした。即ち、特願平10−280431号では電気泳動法によりナノチューブの精製方法を与え、特願平10−376642号ではコーティング膜によるナノチューブの固定化技術を提案し、特願平10−378548号では熱融着によるナノチューブの固定化技術を完成した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は更にナノチューブプローブの研究を進める中で、ナノチューブを探針としてSTM,AFMや磁気プローブ等に応用した場合に、同一物質表面に対して得られる信号が使用するナノチューブによって変動するという欠点があることに気づいた。これは、表面信号を感知するナノチューブの先端部の物理構造あるいは電子構造がナノチューブ毎にバラバラであることを意味している。言い換えると、使用されるナノチューブのサイズがバラバラであることである。電子顕微鏡内でナノチューブを選別してホルダーに固定しているが、電子顕微鏡像ではサイズや電子構造を含めて同一構造のナノチューブであるかどうかを判別することは困難である。
【0012】
従って、本発明の第1目的は、先端部の物理構造や電子構造を同一にしたナノチューブおよびその製造方法を提供することである。
本発明の第2目的は、先端部を同一化した前記ナノチューブをホルダーに固定することにより、対象物質の表面情報を高精度に再現できるナノチューブプローブを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題及び目的を達成するためになされたものである。
請求項1の発明は、ナノチューブの先端にセンサー部を設けたことを特徴とするナノチューブである。
請求項2の発明は、前記センサー部が超微粒子のナノチューブである。
請求項3の発明は、前記超微粒子が強磁性金属超微粒子のナノチューブである。
請求項4の発明は、前記センサー部がフラーレンのナノチューブである。
【0014】
請求項5の発明は、基板上に金属の薄膜を形成し、この金属薄膜を加熱して金属超微粒子化し、この金属超微粒子上に炭素化合物ガスを流通させながら加熱して炭素化合物を分解させ、超微粒子を押し上げながら炭素成分がその根本にカーボンナノチューブを形成することを特徴とするナノチューブの製造方法である。
請求項6の発明は、ナノチューブの所要部を切断し、その切断面にフラーレンを結合させることを特徴とするナノチューブの製造方法である。
請求項7の発明は、ナノチューブの閉口または開口した先端面にフラーレンを結合させるナノチューブの製造方法である。
【0015】
請求項8の発明は、先端にセンサー部を設けたナノチューブの基端部をホルダーに固定したことを特徴とするナノチューブプローブである。
請求項9の発明は、前記センサー部が超微粒子のナノチューブプローブである。
請求項10の発明は、前記超微粒子が強磁性金属超微粒子のナノチューブプローブである。
請求項11の発明は、前記センサー部がフラーレンのナノチューブプローブである。
請求項12の発明は、請求項5により形成されたナノチューブの基端部をホルダーに固定することを特徴とするナノチューブプローブの製造方法である。
請求項13の発明は、請求項6又は7により形成されたナノチューブの基端部をホルダーに固定することを特徴とするナノチューブプローブの製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者等はナノチューブ探針の先端部の物理構造や電子構造を同一化するために鋭意研究した結果、ナノチューブの先端にサイズや構造の決まったセンサー部を別個形成することにより、ナノチューブの構造が多少変動してもセンサー部の同一性を保証できる技術を完成するに到った。センサー部が同一である限りその物質構造や電子構造は同一であり、対象物質の表面情報を高精度に再現することが可能となる。
【0017】
本発明者等は、既定のサイズや物質構造を有したセンサー部として、超微粒子やサッカーボール状物質であるフラーレンが適当であるとの認識に到達した。
【0018】
超微粒子は粒径が数十nm以下のクラスター状の原子集団を云い、金属超微粒子、金属酸化物超微粒子、シリコン超微粒子、SiC超微粒子など多種類の超微粒子が製造されている。その製造方法および製造条件によって、単結晶状または単結晶性の強い多結晶状で、各種の粒径の超微粒子が製造できることが分かっている。従って、製法と条件を特定すれば、電子構造が同一で単一ドメインを有した特定粒径の超微粒子を製造することができる。この特定構造の超微粒子をナノチューブの先端に固定することによって、高再現性能を有して超微粒子により対象物質の表面情報を読み取ったり、対象物質表面に情報を書きこんだりすることが可能になる。
【0019】
この超微粒子ナノチューブプローブは、従来から存するプローブ顕微鏡、例えば走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、摩擦力顕微鏡、磁気力顕微鏡、化学力顕微鏡などの探針プローブとして利用できる。それぞれの用途に応じて、特有の物理的・化学的作用を検知する超微粒子をナノチューブの先端に固定すれば、対象物質の物理的・化学的な表面情報を得ることができる。
【0020】
例えば、超微粒子としてFe、Co、Ni等の強磁性金属超微粒子を利用すれば、対象物質表面の磁気を感知するから、その磁性表面構造を読み取ることができる。逆に、この強磁性金属超微粒子を磁気ヘッドとして利用すれば、対象物質表面に磁気情報を書きこむことが可能となり、入出力用プローブとすることができる。入出力できる磁気情報の単位サイズは超微粒子のサイズに依存し、数nm以下、更には1nm以下にまで小さくすることができ、超高密度化を図ることが可能となる。
このように超微粒子は極めて小さいので、微小物体の磁性測定に有効である。例えば、生物細胞内の磁性測定にはFeやFe等の酸化鉄超微粒子を用いることができ、ナノチューブプローブとすることにより、細胞内の測定位置を自在に極微調整することができる。
【0021】
また、触媒作用を有する超微粒子をセンサー部として用いれば、ナノチューブプローブを触媒用プローブとして活用することができる。例えば、Ni超微粒子は1,3−シクロオクタジエンの水素化触媒として利用できるし、Cu−ZnO超微粒子はメタノール合成触媒として利用できる。これらの超微粒子を粉体として単に分散配置させるのではなく、ナノチューブに固定することにより、触媒配置を正確に調整でき、触媒効率の高度化を図ることができる。また、触媒反応測定用のプローブとすることもできる。
【0022】
超微粒子をナノチューブの先端に固定する方法として、現在のところ二つの方法がある。一つ目は、ナノチューブと超微粒子を別個に製造しておき、ナノチューブの先端面或いは先端を切断した切断面に超微粒子を極微接近させて原子間力により結合させる方法である。またはナノチューブの先端面や切断面の2重結合を光照射・化学反応などで開いて、その結合の手に超微粒子を化学結合させる方法もある。その結合部に電子ビーム照射やレーザービーム照射して融着により結合を強化することもできる。これらの一連の操作は電子顕微鏡内で直接観察しながら行なうことができる。
二つ目は、ナノチューブと超微粒子を同時又は前後に結晶成長させる方法である。この方法には半導体技術に用いられている化学的気相成長法(CVD法)などの各種の方法が利用できる。例えば、基板上に超微粒子を成長させ、次にその表面付近に炭素化合物ガスを流通させると、熱分解により炭素分子が超微粒子の根本部分に成長してカーボンナノチューブとして成長し、その先端に超微粒子を担持することになる。
【0023】
センサー部としてフラーレンを用いることができる。フラーレンはサッカーボール状物質、即ち球殻分子の総称で、1985年にグラファイトを高エネルギーレーザーで照射して得られた蒸気冷却物の中に第1号のC60が発見された。現在では原子数70〜100の高級フラーレン、それ以上の巨大フラーレンも発見され、これらの合成法も確立している。これらのフラーレンは、炭素のsp軌道が作る五員環と六員環で構成されており、中には七員環を含むものも発見されている。
【0024】
フラーレンを図形として理論的に考えた場合に、オイラーの多面体定理から、五員環は12個含まれ、六員環は全原子の数によって変化することが分かっている。また、12個の五員環は隣接しないという孤立五員環則が数学的に満たされると考えられている。これらの数学的規則から考察すると、高級フラーレンにはC70、C76、C78等があり、巨大フラーレンにはC240、C540、C960等が存在することが分かる。また、実験的にもそれらの存在が確認されている。
【0025】
フラーレンは炭素ススの中に大量に含まれていることが確認されている。従って、特定構造のフラーレンの製造方法は、ススの製造法とススからの特定フラーレンの分離法からなる。フラーレンのススの製造法には抵抗加熱法やアーク放電法等があるが、直流アーク放電法が多く利用される。即ち、グラファイト電極間に直流電圧を印加してアーク放電を起こさせると、生成されるススの中に各種炭素数のフラーレンが混在するのである。次に、このススをクロマトグラフィの技術で分離する。特に液体クロマトグラフィやカラムクロマトグラフィを用いれば特定炭素原子数のフラーレンを容易に分離することができる。
【0026】
例えば、ポリスチレン系のカラムを用い、展開溶液をベンゼンや二硫化炭素として、高速液体クロマトグラフを行うことにより、C76、C78、C82、C84、C90、C96等のフラーレンを分離することができる。原子数が決まったフラーレンは異性体の区別を除けば同一の電子構造をとると考えてよい。また、最近では、同一サイズのフラーレンを構造異性体毎に分離することも可能になってきた。この段階まで行けば、電子状態が同一である特定構造のフラーレンを大量に製造することができる。このサイズや構造の決まったフラーレンをナノチューブ先端に固定することにより、ナノチューブの異同に関係なく対象物質の表面構造を高精度に再現可能に読み取ることができ、また情報を対象表面に書き込むことも可能になる。
【0027】
金属を内包したフラーレンを製造することもできる。例えば、グラファイト粉末と金属酸化物を適当な割合で混合し、この混合物にグラファイトセメントを加えて棒状電極の形に成形する。この棒状電極をアルゴン雰囲気中でゆっくり加熱して、最終的に1200℃で10時間くらい加熱すると電極として完成する。この電極を用いてアーク放電させ、得られたススを溶媒抽出して特定構造のフラーレンを分離する。このフラーレンの中には金属原子が閉じこめられている。金属原子としてはLa、Y、Sc等があるが、金属酸化物を変更することによって、所望の金属原子をフラーレン中に包含させることができる。
【0028】
この特定構造のフラーレンをナノチューブに固定するには次のような方法がある。まず、ナノチューブとフラーレンを別個に製造しておく。次に、ナノチューブの先端を切断して、その切断面にフラーレンを極微接近させて原子間力により結合させる。この結合部に電子ビーム照射やレーザービーム照射して結合を強化することもできる。これらの一連の操作は電子顕微鏡内で実観察しながら行われる。
【0029】
こうして完成したナノチューブは、ナノチューブに多少のサイズのバラツキがあっても、物質表面を観測するセンサー部は特定構造のフラーレンであるから、同一対象表面からは同一の信号を高精度に再現することができる。従って、ナノチューブの構造のバラツキに影響されずに、高精度に物質表面を測定・操作できるナノチューブプローブを提供できる。
【0030】
このフラーレンナノチューブプローブは、従来から存するプローブ顕微鏡、例えば走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、摩擦力顕微鏡、磁気力顕微鏡、化学力顕微鏡などの探針プローブとして利用できる。それぞれの用途に応じて、特有の物理的・化学的作用を検知するフラーレンをナノチューブの先端に固定すれば、対象物質の物理的・化学的な表面情報を得ることができる。
【0031】
また、特定の物理的・化学的情報を検知する原子をフラーレンに内包し、この原子内包フラーレンをナノチューブに固定すれば、対象表面の特定情報を検出することができる。例えば、Fe、Co、Niのような強磁性金属原子を内包させると、前述した超微粒子と同様に、対象表面の磁気構造を検出できる。又逆に、対象物質表面が磁気記録媒体であれば、このフラーレンナノチューブプローブを用いて特定情報を書き込むこともできる。
【0032】
本発明で用いられるナノチューブは、カーボンナノチューブ、BCN系ナノチューブ、BN系ナノチューブ等のナノチューブである。その中でもカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)が最初に発見された。従来、カーボンの安定な同素体としてダイヤモンド、グラファイトおよび非晶質カーボンが知られていた。ところが、1991年に直流アーク放電によって生成される陰極堆積物の中に、筒状構造のカーボンナノチューブの存在が認められた。
【0033】
このカーボンナノチューブの発見に基づいてBCN系ナノチューブが合成された。例えば、非晶質ホウ素とグラファイトの混合粉末をグラファイト棒に詰め込み、窒素ガス中で蒸発させる。また、焼結BN棒をグラファイト棒に詰め込み、ヘリウムガス中で蒸発させる。更に、BCNを陽極、グラファイトを陰極にしてヘリウムガス中でアーク放電させる。これらの方法でカーボンナノチューブ中のC原子が一部B原子とN原子に置換したBCN系ナノチューブが合成されたり、BN層とC層が同心状に積層した多層ナノチューブが合成される。
【0034】
またごく最近では、BN系ナノチューブが合成された。これはC原子をほとんど含有しないナノチューブである。例えば、カーボンナノチューブとB粉末をるつぼの中に入れて窒素ガス中で加熱する。この結果、カーボンナノチューブ中のC原子のほとんどがB原子とN原子に置換されたBN系ナノチューブに変換できる。勿論、これら以外の種々のナノチューブも利用できる。
【0035】
本発明のナノチューブプローブを製造するには二つの方法がある。一つ目は、ナノチューブにセンサー部を固定し、その後このセンサー部付きナノチューブの基端部をホルダーに固定する方法である。二つ目は、ナノチューブの基端部を先にホルダーに固定して、その後センサー部をナノチューブの先端部に固定する方法である。
【0036】
ナノチューブをセンサー部に固定するには、配置されたナノチューブの先端にセンサー部を固定する(又は結晶成長させる)場合、配置されたセンサー部にナノチューブを固定する(又は結晶成長させる)場合がある。特に後者では、超微粒子を形成して超微粒子を押し上げながらナノチューブを形成する場合も含まれる。
【0037】
ナノチューブの基端部をホルダーに固定するには二つの方法がある。一つ目は、電界印加またはファンデルワールス力によりナノチューブをホルダー面上に転移させ、ナノチューブの先端部を突出させた状態で、ホルダー面に接触した基端部をコーティング膜により被覆固定する方法である。二つ目は、電界印加またはファンデルワールス力によりナノチューブをホルダー面に転移させ、ホルダー面に接触したナノチューブの基端部をホルダー面に熱融着させる方法である。
【0038】
センサー付きナノチューブの形成とそのホルダーへの取り付けを同時に行うこともできる。具体的には、カンチレバーのシリコンピラミッドの表面に金属膜を形成し、更に加熱して金属膜を金属超微粒子にし、続いて炭素化合物ガスを流通させて金属超微粒子を押し上げるようにカーボンナノチューブを形成する。こうすればカンチレバーのピラミッドにセンサー付きナノチューブを一気に形成することになり、製造工程の簡易化を図ることができる。炭素化合物の中でも炭化水素が好ましい。
【0039】
【実施例】
[実施例1:超微粒子付きナノチューブの形成]
図1(A)〜(D)は超微粒子付きナノチューブの中で、特に超微粒子付きカーボンナノチューブの形成方法の工程図である。図1(A)の酸化鉄を表面に持つシリコン基板2の表面に厚さ10nmのNiの金属膜4を蒸着法で形成する(図1(B))。これを直径28mmで長さが50cmの円筒容器に入れ、Heガスを50sccmの流量で流しながら真空度を60mTorrに保持する。毎分120℃の温度上昇率で800℃まで加熱して1時間熱処理すると、図1(C)に示すように、シリコン基板2上でNiの金属膜4が多数のNiの超微粒子6に変化し、その直径は約20nmである。次に、真空を壊すことなく、60mTorrの真空度を保持しながら、Cガスを10sccmの流量で1時間流すと、Ni超微粒子6の脱水素触媒反応により、Ni超微粒子6の下端に炭素原子が蓄積してカーボンナノチューブ8が形成される。このカーボンナノチューブ8はNi超微粒子6を押し上げながら成長し、超微粒子付きカーボンナノチューブ10が形成される。
【0040】
図2は超微粒子付きカーボンナノチューブ10の断面図である。カーボンナノチューブ8の直径dは15〜150nmに分布し、平均は45nmであった。Niの超微粒子6の直径Dは前記直径dよりやや大きいが、直径Dを小さくするには、Ni金属膜4の厚さを薄くしたり、超微粒子化するための加熱処理時間を短くする等の方法がある。
【0041】
図3は超微粒子付きカーボンナノチューブ10をAFM用カンチレバー12のピラミッド14に転移させる工程図である。この場合、ピラミッド14が超微粒子付きカーボンナノチューブ10の取り付け用のホルダーになる。超微粒子付きカーボンナノチューブ10を形成したシリコン基板2とカンチレバー12間に直流電源16により直流電界を形成し、この静電界力により超微粒子付きカーボンナノチューブ10をピラミッド14に飛跳転移させる。この場合、超微粒子6が先端に突出し、カーボンナノチューブ8の軸がカンチレバー12にほぼ垂直になり、その基端部8aがピラミッド14に接合するように調整される。これらの操作は電子顕微鏡の中で直接観察しながら行われる。直流電源16の電極の向きはナノチューブの帯電性に応じて調整される。
【0042】
図4は超微粒子付きカーボンナノチューブ10をピラミッド14に固定する工程図である。カーボンナノチューブ8の基端部8aを電子ビーム16で照射すると、基端部8aが変成して融着部8bとなり、ピラミッド14に熱融着で固定される。
【0043】
図5はNi超微粒子6の磁化工程図である。この試料では、ナノチューブ直径dは25nm、Ni超微粒子直径Dは35nm、先端長Lは400nmである。このNi超微粒子6に対し、10msの間だけ12.5テスラのパルス磁場Bを加えて磁化する。Ni超微粒子6は単一ドメインの強磁性体であり、このパルス磁化によって単一磁化ドメインを持った高分解能磁気検出用のナノチューブプローブ16として活用できるようになる。
【0044】
図6は高分解能磁気検出用のナノチューブプローブの使用状態図であり、このナノチューブプローブ16を用いて磁気記録媒体18の表面磁気情報20を測定する。超微粒子6の表面への接近距離ADは50〜100nmが好ましいが、ファンデルワールス力の影響を避けるために80nmに設定された。
【0045】
図7はコンピュータに表示された磁気記録媒体18の磁気像である。走査対象は20μm×20μmの領域で、磁気トラックの間隔は1.5μmである。このように、本発明のナノチューブプローブ16によって、表面磁気構造が詳細に現出できることが分かった。逆に、このナノチューブプローブ16を用いて磁気記録媒体に対し磁気情報を書き込むこともできる。図示しない電子装置によりNi超微粒子6に磁気信号を与えながら磁気記録媒体表面を走査すると、次々と磁気信号が書き込まれて行くことになる。
【0046】
図8はナノチューブ8をホルダーに固定する他の方法を示す工程図である。この場合、ホルダーはピラミッド14であり、ナノチューブ8とカンチレバー12間に電源22を介して電流を流し、基端部8aを融着部8bに変成させてピラミッドに固定する。
【0047】
図9は更に他の固定方法を示す工程図である。電子顕微鏡内には不純物として炭素化合物が含まれている。従って、ナノチューブ近傍を電子ビーム16により照射すると炭素化合物が分解し、ナノチューブ8の基端部8a上に炭素皮膜であるコーティング膜24が堆積形成される。このコーティング膜24によりカーボンナノチューブ8はピラミッド14に強固に固定される。コーティング膜24の形成方法には、上記方法以外に物理蒸着法や化学蒸着法(CVD法)などの公知の各種方法が利用できる。このコーティング膜法では、カーボンナノチューブ8の先端部上にもコーティング膜を形成できるから、カーボンナノチューブ8を太くすることによって共振を抑制でき、精度向上の効果を有する。
【0048】
図10は本発明に係る前記ナノチューブプローブ16を原子間力顕微鏡(AFM)
に適用した構成図である。ナノチューブプローブ16の先端にある超微粒子が試料面に当接し、試料表面情報を正確に読み取ることができる。このナノチューブプローブ16は図示しないホルダーセット部に着脱自在に固定される。探針の交換時にはプローブ16の全体が交換される。この場合に、探針はセンサー部付きナノチューブである。試料26はピエゾ素子からなる走査駆動部28によりXYZ方向に駆動される。30は半導体レーザー装置、32は反射ミラー、33は二分割光検出器、34はXYZ走査回路、35はAFM表示装置、36はZ軸検出回路である。
【0049】
試料26をナノチューブプローブ16に対し所定の斥力位置になるまでZ軸方向に接近させ、その後、Z位置を固定した状態で走査回路34で走査駆動部28をXY方向に走査する。このとき、表面原子の凹凸でカンチレバー12が撓み、反射したレーザービームLBが二分割光検出器33に位置変位して入射する。上下の検出器33a、33bの光検出量の差からZ軸方向の変位量をZ軸検出回路36で算出し、この変位量を原子の凹凸量としてAFM表示装置35に表面原子像を表示する。この装置では、試料26をXYZ走査する構成にしているが、プローブ16をXYZ走査しても構わない。
【0050】
図11は本発明に係るナノチューブプローブを適用した走査型トンネル顕微鏡(STM)の構成図である。超微粒子付きナノチューブ10を探針として平板状のホルダー15に固着してナノチューブプローブ16を構成する。固定法は融着法、コーティング膜法またその他方法でもよい。このホルダー15をホルダーセット部17の切り溝17aに嵌合してバネ圧で着脱自在に固定する。Xピエゾ28x、Yピエゾ28y、Zピエゾ28zからなる走査駆動部28はホルダーセット部17をXYZの3次元方向に伸縮走査してナノチューブプローブ16の試料26に対する走査を実現する。37はバイアス電源、38はトンネル電流検出回路、39はZ軸制御回路、40はSTM表示装置、41はXY走査回路である。
【0051】
各XY位置においてトンネル電流が一定になるようにZ軸制御回路でナノチューブプローブ16をZ方向に伸縮制御し、この移動量がZ軸方向の凹凸量になる。ナノチューブプローブ16をXY走査するに従いSTM表示装置40に試料26の表面原子像が表示される。本発明ではナノチューブプローブを交換する場合には、ホルダー15をホルダーセット部17から取り外してプローブ16として一体で交換する。
【0052】
図12はC60というフラーレンの拡大図である。このフラーレンは12個の五角形と20個の六角形から構成され、五角形は相互に隣接しないと云う孤立五員環則が成立している。更に大きなフラーレンでは六角形の数が増大することが分かっている。このフラーレンをセンサー部としてナノチューブの先端に固定すれば、高分解能を有したナノチューブプローブを形成できる。
【0053】
図13(A)〜(B)はフラーレンをセンサー部としたナノチューブプローブの製造工程図である。工程(A)のナノチューブ8は、CNT系ナノチューブ、BCN系ナノチューブ、BN系ナノチューブ等のいずれのナノチューブであってもよい。工程(B)でナノチューブ8の所要部、主には先端部を切断する。工程(C)で、切断面8cにフラーレン7をファンデルワールス力で接着させて、フラーレン付きナノチューブ11を形成する。この接着を強力にするために、電子ビーム照射や電流加熱により両者を結合部で融着させることもできる。
【0054】
図14はフラーレン付きナノチューブの他の形成方法を示している。ナノチューブ8の先端は通常は閉じており、この閉口した先端面において、光励起や触媒などを利用してその二重結合を開く。同様にフラーレンの二重結合も開き、両者の結合の手を結ぱせることによって、フラーレン付きナノチューブ11を形成できる。この方法は先端が開口したナノチューブに対しても適用できる。ここで開口したとは、切断して開口させた場合と、自然状態で開口している場合の両者を含む。
【0055】
このフラーレン付きナノチューブ11の基端部を図示しないホルダーに固定して、ナノチューブプローブを構成できる。固定方法には前述したコーティング膜法や融着法などが利用できる。このようにすれば、ナノチューブ8の太さや構造が多少変わっても、フラーレン7さえ同一の構造であれば、同一の対象表面からは常に同一の信号を高精度に再現することができる。
【0056】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものである。
【0057】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、新規な構造のナノチューブを提供でき、各種の物質表面に感応するナノチューブを提供できる。
請求項2の発明によれば、特定構造の超微粒子をセンサー部として利用でき、ナノチューブの異同に関係なく、高精度に物質表面に感応するナノチューブを提供できる。
請求項3の発明によれば、対象物質の磁気構造に感応するナノチューブを提供でき、また対象物質に磁気書き込みできるナノチューブ提供できる。
請求項4の発明によれば、特定構造のフラーレンをセンサー部として利用でき、ナノチューブの異同に関係なく、高精度に物質表面に感応するナノチューブを提供できる。
請求項5の発明によれば、金属超微粒子を先端に形成したカーボンナノチューブを安価に量産することができる。
請求項6及び7の発明によれば、フラーレンを先端に形成したナノチューブを安価に量産することができる。
【0058】
請求項8の発明によれば、センサー部をナノチューブ先端に固定するから、ナノチューブの異同に関係なく、高精度に物質の表面情報を入出力したり、操作できるナノチューブプローブを提供できる。
請求項9の発明によれば、センサー部が超微粒子であるから、同一構造の超微粒子を用いて対象物質の表面情報を読みとり、また書き込んだりできるナノチューブプローブを提供できる。
請求項10の発明によれば、強磁性金属超微粒子を用いることにより、対象物質の表面磁気情報を読み取ったり、また磁気情報を書き込んだりできるナノチューブプローブを提供できる。
【0059】
請求項11の発明によれば、大量に存するフラーレンを活用して、安価にしかも大量に高分解能のナノチューブプローブを提供できる。
請求項12の発明によれば、超微粒子をセンサー部とするナノチューブプローブを安価にしかも大量に量産できる製造方法を提供できる。
請求項13の発明によれば、フラーレンをセンサー部とするナノチューブプローブを安価にしかも大量に量産できる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)〜(D)は超微粒子付きカーボンナノチューブの形成方法の工程図である。
【図2】図2は超微粒子付きカーボンナノチューブの断面図である。
【図3】図3は超微粒子付きカーボンナノチューブをホルダーの一種であるAFM用カンチレバーのピラミッドに転移させる工程図である。
【図4】図4は超微粒子付きカーボンナノチューブをピラミッドに強固に固定する工程図である。
【図5】図5はNi超微粒子の磁化工程図である。
【図6】図6は高分解能磁気検出用のナノチューブプローブの使用状態図である。
【図7】図7はコンピュータに表示された磁気記録媒体の磁気像である。
【図8】図8はナノチューブをホルダーに電流により熱融着固定する工程図である。
【図9】図9はコーティング膜による固定方法を示す工程図である。
【図10】図10は本発明に係るナノチューブプローブを原子間力顕微鏡(AFM)に適用した構成図である。
【図11】図11は本発明に係るナノチューブプローブを走査型トンネル顕微鏡(STM)に適用した構成図である。
【図12】図12はC60というフラーレンの拡大図である。
【図13】図13(A)〜(B)はフラーレンをセンサー部としたナノチューブプローブの製造工程図である。
【図14】図14は他の製造方法によるフラーレン付きナノチューブの構成図である。
【図15】図15は従来のシリコン製のAFM用カンチレバーの概念図である。
【図16】図16は従来考えられた磁気プローブの説明図である。
【図17】図17はこの従来磁気プローブで対象物質の磁気情報を検出する場合の説明図である。
【符号の説明】
2は酸化膜を表面に持つシリコン基板、4は金属膜、6は超微粒子、7はフラーレン、8はナノチューブ又はカーボンナノチューブ、8aは基端部、8bは融着部、8cは切断面、10は超微粒子付きカーボンナノチューブ、11はフラーレン付きナノチューブ、12はAFM用カンチレバー、14はピラミッド、15はホルダー、16はナノチューブプローブ、17はホルダーセット部、17aは切り溝、18は磁気記録媒体、20は磁気情報、22は電源、24はコーティング膜、28は走査駆動部、28xはXピエゾ、28yはYピエゾ、28zはZピエゾ、30は半導体レーザー装置、32は反射ミラー、33は2分割光検出器、34はXYZ走査回路、35はAFM表示装置、36はZ軸検出回路、37はバイアス電源、38はトンネル電流検出回路、39はZ軸制御回路、40はSTM表示装置、41はXY走査回路、50はカンチレバー、52はサブストレート、54はピラミッド状探針、56は先鋭部、58は金属膜、60は磁気的ドメイン、62は対象物質、LBはレーザービームである。

Claims (5)

  1. 電子顕微鏡の中で直接観察しながら組み立てられるプローブであり、ナノチューブと、このナノチューブを保持するホルダーと、前記ナノチューブの基端部を前記ホルダーの表面に付着させて前記基端部の所要領域を電子顕微鏡の中で電子ビーム照射により生成される炭素物質によって上方から被覆してナノチューブをホルダーに固定するコーティング膜と、前記ホルダーから突出するように配置されたナノチューブの先端部を試料表面を走査する探針とし、前記ナノチューブの先端部先端又は先端部を切断した切断面にセンサー物質を結合固定し、前記センサー物質を試料表面を直接走査する探針点とし、このセンサー物質のサイズ及び構造を調整することにより試料表面像の再現精度を向上することを特徴としたナノチューブプローブ。
  2. 電子顕微鏡の中で直接観察しながら組み立てられるプローブであり、ナノチューブと、このナノチューブを保持させるホルダーと、前記ナノチューブの基端部を前記ホルダーの表面に付着させて電子顕微鏡の中で基端部自体をホルダーに融着させた融着部と、前記ホルダーから突出するように配置されたナノチューブの先端部を試料表面を走査する探針とし、前記ナノチューブの先端部先端又は先端部を切断した切断面にセンサー物質を結合固定し、前記センサー物質を試料表面を直接走査する探針点とし、このセンサー物質のサイズ及び構造を調整することにより試料表面像の再現精度を向上することを特徴としたナノチューブプローブ。
  3. 前記センサー物質は前記ナノチューブの先端部先端又は先端部を切断した切断面に融着されて結合が強化される請求項1又は2に記載のナノチューブプローブ。
  4. 前記センサー物質は超微粒子又はフラーレンである請求項1、2又は3に記載のナノチューブプローブ。
  5. 前記超微粒子が強磁性金属超微粒子であり、この強磁性金属超微粒子を磁化することにより単一磁化ドメインを形成し、この単一磁化ドメインにより試料表面を磁気検出できる請求項4に記載のナノチューブプローブ。
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