JP3776374B2 - SiC単結晶の製造方法,並びにエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法 - Google Patents
SiC単結晶の製造方法,並びにエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【技術分野】
本発明は,結晶中に転位及び欠陥をほとんど含有しないSiC単結晶の製造方法,並びにエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より,SiC単結晶を利用するSiC半導体は,Si半導体に代わる次世代パワーデバイスの候補材料として期待されている。高性能なSiCパワーデバイスを実現するためには,上記SiC半導体に生じるリーク電流を低減すること,及び耐圧低下を抑制することが必須条件である。これまでの研究報告によれば,上記SiC単結晶に生じるマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,積層欠陥等の欠陥が,SiC半導体のリーク電流や耐圧低下等の原因となっていると考えられている。
また,上記パワーデバイスの用途には,特にエピタキシャル膜を有するSiCウエハが用いられる。そのため,SiC単結晶中のみならず,エピタキシャル膜中にも上記欠陥を含まないエピタキシャル膜付きSiCウエハの開発が望まれている。
【0003】
図7に示すごとく,SiC単結晶は主要な面方位として{0001}面(c面)と,{0001}面に垂直な{1−100}面(a面)及び{11−20}面(a面)とを有している。
従来より上記SiC単結晶を得る方法としては,まず,六方晶の{0001}面(c面)又は{0001}面からオフセット角度10°以内の面を種結晶面として露出するSiC種結晶を用いて,昇華再析出法等により種結晶面上にSiC単結晶を成長させる,いわゆるc面成長を行う方法が用いられてきた。
【0004】
しかし,上記のように{0001}面を種結晶面とし,<0001>方向に成長させてなるSiCバルク単結晶(c面成長結晶)中には,<0001>方向に略平行にマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位がそれぞれ100〜103cm-2,103〜104cm-2,104〜105cm-2程度含まれるという問題があった。さらに,このc面成長結晶からSiCウエハを作製してエピタキシャル膜を成膜すると,該エピタキシャル膜中にはSiCウエハの表面に露出する欠陥及び転位が継承される。これにより,上記エピタキシャル膜中にもSiCウエハと略同密度の転位が存在し,各種デバイス特性に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
一方,特開平5−262599号公報には,SiC単結晶の{0001}面からの傾きが60〜120°(好ましくは90°)の面を種結晶面として,この種結晶をa面成長させて,成長結晶(a面成長結晶)を得る方法が開示されている。そして,このa面成長結晶中には,マイクロパイプ欠陥や螺旋転位が含まれないことを明らかにした。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記a面成長結晶中には,積層欠陥が{0001}面内であって成長方向と略平行に102〜104cm-1という高密度で含まれる。また,<0001>方向に平行及び直交なバーガースベクトルを持つ刃状転位が成長方向に略平行に高密度に含まれる。そして,このa面成長結晶からSiCウエハを作製しエピタキシャル膜を成膜すると,該エピタキシャル膜中にa面成長結晶に含まれる高密度の刃状転位及び積層欠陥から転位及び積層欠陥が継承される。このようにSiC単結晶及びエピタキシャル膜中に転位及び積層欠陥を高密度に含有するSiC単結晶は,オン抵抗が高くなり,また,逆方向リーク電流を生じるため,デバイス動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,転位及び欠陥をほとんど含まず高品質なSiC単結晶の製造方法,並びにSiC単結晶及びエピタキシャル膜中に欠陥及び転位をほとんど含有しないエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】
第1の発明は,六方晶のSiC単結晶よりなるSiC種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造する製造方法において,該製造方法はN回(NはN≧2の自然数)の成長工程を含み,各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表した場合,
n=1である第1成長工程においては,{0001}面から傾斜角度60°〜90°傾いた面を第1成長面として露出させた第1種結晶を作製して,該第1種結晶の上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
n=2,3,...,Nである連続成長工程においては,第n成長面の法線ベクトルを{0001}面に投影したベクトルの方向を第n傾斜方向とした場合に,第(n−1)傾斜方向から<0001>を回転軸として45°〜135°回転したところに第n傾斜方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度10°〜90°(ただし,10°を除く)傾いた面を第n成長面として露出させた第n種結晶を第(n−1)成長結晶から作製して,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させ第n成長結晶を作製し,
上記連続成長工程の第n成長工程においては,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°〜90°である成長工程を1回以上有することを特徴とするSiC単結晶の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明の上記第1成長工程においては,{0001}面から傾斜角度60°〜90°傾いた面を第1成長面として露出させた第1種結晶を作製して,該第1種結晶の上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製する。
そのため,上記第1成長結晶中には主として上記第1成長面の表面から継承される転位が多数存在する。ここで,該転位の発生源は主として第1成長面に露出した欠陥(転位,マイクロパイプ欠陥)である。上記第1成長工程においては,上記転位の方向の大部分を第1成長面の法線ベクトルを{0001}面に投影したベクトルの方向である第1傾斜方向に略平行にそろえることができる。
【0010】
次に,上記連続成長工程においては,第(n−1)傾斜方向から<0001>を回転軸として45°〜135°回転したところに第n傾斜方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度10°〜90°(ただし,10°を除く)傾いた面を第n成長面として露出させた第n種結晶を第(n−1)成長結晶から作製して,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させ第n成長結晶作製する。上記連続成長工程の第n成長工程においては,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°〜90°である成長工程を1回以上有する。
そのため,上記第n成長面には,第(n−1)成長結晶中に存在する転位はほとんど露出されない。第(n−1)成長結晶中の転位の多くは{0001}面内の第(n−1)傾斜方向に平行に存在しており,該転位が上記第n成長面に露出する確率は小さくなるからである。それ故,上記第n成長結晶中には第n成長面から転位が継承されることはほとんどなく,転位及び欠陥はほとんど発生しない。
また,上記連続成長工程は,1回(N=2のとき),複数回繰り返して行うことができる。そして,連続成長工程の回数を増やす毎に,得られる成長結晶のいわゆる転位密度を指数関数的に減少させることができる。
【0011】
このように,本発明によれば,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及び積層欠陥をほとんど含まず,高品質なSiC単結晶の製造方法を提供することができる。
【0013】
上記第1の発明によって作製されたSiC単結晶は,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及び積層欠陥をほとんど含まず高品質である。それ故,高性能なパワーデバイスとして利用することができる。
【0014】
次に,第2の発明は,第1の発明の製造方法により作製されたSiC単結晶より成膜面を露出するSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法にある(請求項6)。
【0015】
第1の発明の製造方法により製造されたSiC単結晶は,上述のごとくマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及び積層欠陥をほとんど含まず,高品質である。そのため,上記SiCウエハの成膜面には上記欠陥及び転位はほとんど露出せず,エピタキシャル膜中へも転位が継承されることはほとんどない。それ故,転位及び欠陥の少ない高品質なエピタキシャル膜付きSiCウエハを作製することができる。
【0017】
上記第2の発明の製造方法によって製造される上記エピタキシャル膜付きSiCウエハは,SiC単結晶及びエピタキシャル膜中に転位や欠陥をほとんど含んでいない。それ故,高性能なSiC電子デバイスに利用することができる。
【0019】
上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを用いた上記SiC電子デバイスは,オン抵抗が低く,またリーク電流の発生もなく優れている。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明(請求項1)においては,上記第1成長面と{0001}との傾斜角度は60°〜90°である。1°未満の場合には,傾斜角度が小さすぎて,上記第n成長結晶は,いわゆるc面成長結晶と同等のものとなり,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位等が高密度で発生する。また、傾斜角度が60°未満の場合には,傾斜方向と平行でない転位が次工程の種結晶の成長面に露出し,成長結晶に転位や欠陥を生じるおそれがある。
また,上記第n傾斜方向は,上記第(n−1)傾斜方向から<0001>を回転軸として45°〜135°回転したところにある。45°未満の場合には,第(n−1)成長結晶が第n成長面に露出する確率が高くなり,上記連続成長工程を繰り返しても,第n成長結晶に含まれる転位はほとんど減少しない。そのため,より好ましくは60°以上がよい。また,135°を超える場合も同様で,より好ましくは120°以下がよい。
【0021】
また,上記連続成長工程において,上記第n傾斜方向を,<0001>を回転軸として第(n−1)傾斜方向から90°回転させたところとする成長工程を1回以上含むことが好ましい。
この場合には,転位が第n成長面上に露出する確率が非常に小さくなり,第n成長結晶に転位及び欠陥が生じるおそれが少なくなる。なお,成長工程回数を増やすごとに成長結晶中の転位密度は小さくなる。
【0022】
また,上記各成長面の上にSiC単結晶を成長させる前には,各成長面の表面の付着物や加工変質層を除去しておくことが好ましい。
この場合には,上記付着物や加工変質層に起因する各成長面から各成長結晶に継承される転位を防ぐことができる。なお,上記付着物や加工変質層を除去する方法としては,例えば研磨,化学洗浄,Reactive Ion Etching(RIE),犠牲酸化等がある。
【0023】
次に,上記第n成長面(n=1,2,...,N)と{0001}面との傾斜角度は,70°未満であることが好ましい(請求項2)。
この場合には,結晶を高く成長させる必要がなく,コストダウンを図ることができる。70°以上の場合には,結晶を高く成長させる必要があり,製造コストが高くなるおそれがある。
【0024】
次に,上記第n成長面(n=1,2,...,N)と{0001}面との傾斜角度は,10°以上であることが好ましい。
この場合には,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位及び刃状転位等の貫通欠陥を減少させることができる。10°未満の場合には,これら貫通欠陥が高密度で発生するおそれがある。
【0025】
次に,n=N(ただし,N=2を除く)である第N成長工程においては,上記第N成長面と{0001}面との傾斜角度が20°以下であることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記SiC単結晶は最終的に略c面成長方向に成長し,現在デバイス作製用として広く用いられている,いわゆるc面成長結晶となる。そのため,上記SiC単結晶をSiC電子デバイス作製上有効なものとすることができる。
【0026】
次に,上記連続成長工程の第n成長工程においては,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°〜90°である成長工程を1回以上有する。
この場合には,結晶中の転位を効率よく減らすことができる。
一般に,{0001}面より1°〜90°の傾斜角度をもった成長面上に結晶を成長させると,成長結晶中に生じる転位の方向は傾斜方向に略平行になる場合が多い。この成長面と{0001}面との傾斜角度が60°を超えると該転位のほとんど全てが傾斜方向に略平行となる。そのため,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度を60°〜90°とした場合には,ほとんど全ての転位を傾斜方向に平行にすることことができ,次工程の種結晶の成長面に転位がほとんど露出しないようにすることが容易になる。
上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°未満の場合には,傾斜方向と平行でない転位が次工程の種結晶の成長面に露出し,成長結晶に転位や欠陥を生じるおそれがある。
【0027】
また,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°〜90°である成長工程は,少なくとも1回以上行うことができるが,結晶中の転位が充分に低減された後の成長工程においては,もはや傾斜角度を大きくする必要はなく,例えば1〜20°という小さい傾斜角度でも充分に高品質な結晶を再現性良く作製することができる。また,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度を小さくすると結晶の高さを高くする必要がなくなるため,コストダウンを図ることができる。
【0028】
上記各種結晶上でのSiC単結晶の成長には昇華再析出法を用いることが好ましい(請求項4)
この場合には十分な成長高さが得られるため大口径のSiC単結晶を作製することができると共に,再現性よく,且つ生産性よく高品質のSiC単結晶を作製することができる。
なお,本発明において使用できるSiC単結晶成長手法は昇華再析出法に限らず,十分な成長高さのバルク状単結晶を成長できる手法であれば全て適用できる。例えば,Mater. Sci. Eng. B Vol.61−62(1999)113−120に示されているような2000℃を越える温度域での化学気相堆積法も用いることができる。
【0029】
上記各種結晶の厚みは,1mm以上であることが好ましい(請求項5)。
この場合には,上記種結晶と種結晶を固定している物体との熱膨張差による応力によって成長結晶に生じる転位及び積層欠陥を防止することができる。即ち,上記種結晶の厚みを充分大きくすることにより,上記応力が種結晶を構成する格子を歪めて,成長結晶に転位及び積層欠陥が発生することを防止することができる。また,特に,上記種結晶の成長面の面積Aが500mm2を越える場合には,上記種結晶の厚みを1mmよりさらに大きくする必要がある。このときの必要最低限の厚みをtseedとすると,tseed=A1/2×2/πの式が与えられる。なお,上記種結晶及び成長結晶とは,本発明におけるすべての種結晶及びすべての成長結晶を含む概念である。
【0030】
また,第2の発明において,上記成膜面は,{0001}面からオフセット角度0.5°〜20°の面,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面であることが好ましい(請求項7)。
この場合には,上記エピタキシャル膜中へのマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位の発生をほとんど抑制することができる。なお,{0001}面からオフセット角度0.5°未満の面を成膜面とした場合には,上記エピタキシャル膜の成膜が困難になるおそれがある。
【0031】
また,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面を上記成膜面として上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した場合には,該エピタキシャル膜付きSiCウエハは,その酸化膜とSiC単結晶との間の界面に発生する界面準位が著しく低減され,MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)デバイスを作製する上で有効である。なお,上記{1−100}面又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面は,それぞれ{1−100}面,又は{11−20}面を含む概念である。
【0032】
ここで,{1−100},{11−20}及び{0001}は,いわゆる結晶面の面指数を表している。上記面指数において,「−」記号は通常数字の上に付されるが,本明細書及び図面においては書類作成の便宜上のため数字の左側に付した。また,<0001>,<11−20>,及び<1−100>は,結晶内の方向を表し,「−」記号の取り扱いについては,上記面指数と同様である。
【0033】
また,上記エピタキシャル膜の成膜には,CVD法,PVE法,又はLPE法を用いることができる。ここで上記CVD法は,Chemical VaporDeposition(化学気相堆積法)法,上記PVE法は,Physical Vapor Epitaxy(昇華エピタキシー)法,上記LPE法は,Liquid Phase Epitaxy(液相エピタキシー)法をいう。
この場合には,デバイス作製上重要な設計パラメータである膜厚及び膜中の不純物濃度を容易に制御することができる。
【0034】
また,上記エピタキシャル膜に1×1013〜1×1020/cm3の不純物を含有させることができる。
この場合には,上記不純物がドナーやアクセプタ等の役割を果たし,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを半導体デバイス等として用いることができる。上記不純物の含有量が1×1013/cm3未満の場合には,上記不純物は充分な量のキャリアを供給することができず,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハのデバイス特性が低下するおそれがある。一方,1×1020/cm3を越える場合には,上記不純物が凝集し,その結果上記エピタキシャル膜中に転位や積層欠陥が発生するおそれがある。
【0035】
また,上記不純物はその構成元素として,窒素,ホウ素又はアルミニウムの1種以上を含有することができる。
この場合には,上記エピタキシャル膜をp又はn型半導体とすることができる。そのため,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハをダイオード及びトランジスタ等の半導体デバイスとして利用することができる。
【0036】
【実施例】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるSiC単結晶及びその製造方法につき説明する。
本発明のSiC単結晶の製造方法は,図1〜図5に示すごとく,六方晶のSiC単結晶よりなるSiC種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造する製造方法である。該製造方法はN回(本例ではN=2)の成長工程を含み,各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表す。
【0037】
図1に示すごとく,n=1である第1成長工程においては,{0001}面から<11−20>方向である第1傾斜方向153へ傾斜角度α(本例ではα=60°)傾いた面を第1成長面15として露出させた第1種結晶1を作製する。そして,図2に示すごとく該第1種結晶1の上記第1成長面15上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶10を作製する(第1成長工程)。
【0038】
次に,図3及び図4に示すごとく,n=2である連続成長工程においては,第2成長面25の法線ベクトル251を{0001}面に投影したベクトルの方向を第2傾斜方向253とした場合に,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸としてβ(本例ではβ=90°)回転したところ,即ち<1−100>方向に第2傾斜方向253を有し,かつ{0001}面から傾斜角度γ(本例ではγ=60°)傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1成長結晶10から作製する。そして,図5に示すごとく該第2種結晶2の上記第2成長面25上にSiC単結晶を成長させ第2成長結晶20を作製し,最終的なSiC単結晶とする(連続成長工程)。
【0039】
以下,本例につき詳細に説明する。
本例は,図1〜図7に示すごとく,SiC単結晶よりなる種結晶上に昇華再析出法によりSiC単結晶を成長させて,SiC単結晶を製造する例である。また,本例は上記のごとくN=2,即ち2回の成長工程を含む例である。
【0040】
まず,昇華再析出法により成長したSiC単結晶を準備した。図7に示すごとく,SiC単結晶は,主要な面方位として{0001}面と,{0001}面に垂直な{1−100}面及び{11−20}面とを有している。また,{0001}面に垂直な方向が<0001>方向,{1−100}面に垂直な方向が<1−100>方向,{11−20}面に垂直な方向が<11−20>である。
【0041】
図1に示すごとく,上記SiC単結晶の{0001}面から<11−20>方向である第1傾斜方向153へ傾斜角度α(α=60°)傾いた面を第1成長面15として露出するように上記SiC単結晶を切断し,さらにこの第1成長面15を加工,研磨した。また,第1成長面15の表面を化学洗浄して付着物を除去し,RIE(Reactive Ion Etching),犠牲酸化により,切断・研磨に伴う加工変質層を除去し,これを第1種結晶1とした。なお,第1種結晶1の厚みは2mmである。
【0042】
次に,図6に示すごとく,上記第1種結晶1とSiC原料粉末75とをこれらが対向するように坩堝6内に配置した。このとき,上記第1種結晶1は坩堝6の蓋体65の内側面に接着剤を介して固定した。そして上記坩堝6を減圧不活性雰囲気中で2100〜2400℃に加熱した。このとき,SiC原料粉末75側の温度を第1種結晶1側の温度より20〜200℃高く設定した。これにより,坩堝6内のSiC原料粉末75が加熱により昇華し,該SiC原料粉末75より低温の第1種結晶1上に堆積し,第1成長結晶10を得た(第1成長工程)。
【0043】
図2に示すごとく,上記第1成長結晶中10には,<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルをもつ転位105が多数存在する。該転位は第1種結晶1の第1成長面15に露出していた欠陥が上記第1成長結晶10中に継承された結果生じたものである。そして該転位105の方向はほとんど全てが第1傾斜方向153に平行になっている。
【0044】
次に,図3及び図4に示すごとく,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸として>β(本例ではβ=90°)回転したところ,即ち<1−100>方向に第2傾斜方向253を有し,かつ{0001}面から傾斜角度γ(本例ではγ=60°)傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして作製した。なお,このときの第2種結晶の厚みは2mmとした。
【0045】
次に,図6に示すごとく,この第2種結晶2とSiC原料粉末75とをこれらが対向するように坩堝6内に配置した。このとき,上記第2種結晶2は坩堝6の蓋体65の内側面に接着剤を介して固定した。そして,上記坩堝6を減圧不活性雰囲気中で2100〜2400℃に加熱した。このとき,SiC原料粉末75側の温度を第2種結晶2側の温度より20〜200℃高く設定した。これにより,坩堝6内のSiC原料粉末75が加熱により昇華し,該SiC原料粉末75より低温の第2種結晶2上に堆積し,第2成長結晶20を得た(連続成長工程)。
図6に示すごとく,上記第2成長結晶20は,表面に欠陥をほとんど露出していない第2成長面25上に上記のようにして結晶を成長させたものである。そのため,第2成長結晶20中にも転位及び欠陥はほとんど継承されず,高品質であった。
【0046】
次に,上記のようにして作製したSiC単結晶中に含まれる欠陥密度を調べるために,上記SiC単結晶から作製したC面基板にKOHエッチングを施し,これによって生じたエッチピット数を測定した。
その結果,転位に対応するエッチピット数は,5×102〜1×103/cm2であり,非常に少なかった。
【0047】
以下,本例の作用効果につき説明する。
本例の第1成長工程においては,{0001}面から,<11−20>方向へ傾斜角度60°傾いた面を第1成長面15として露出させた第1種結晶1を作製して,該第1種結晶1の上記第1成長面15上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶10を作製している。
そのため,上記第1成長結晶10中には第1成長面15の表面から継承される転位105が多数存在するが,該転位105の方向の大部分を第1成長面15の法線ベクトル151を{0001}面に投影したベクトルの方向である第1傾斜方向153に略平行な方向にそろえることができる。
【0048】
次に,第2成長工程においては,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸として90°回転したところに第2傾斜方向253,即ち<1−100>方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度60°傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして作製した。
そのため,上記のように第1成長結晶10から第2傾斜方向253に{0001}面より傾斜角度60°傾いた面を第2成長面25として露出させたとき,この第2成長面の表面には,第(n−1)成長結晶中に存在する転位はほとんど露出しない。上述したごとく,上記第1成長結晶10中の転位105の大部分は{0001}面内の第1傾斜方向153に平行に存在しており,上記転位105が第2成長面25に露出する確率は小さいからである。
【0049】
続いて,この第2種結晶2を上記第1種結晶と同様にして成長させ,図5に示すごとく該第2種結晶2の上記第2成長面25上にSiC単結晶を成長させ第2成長結晶20を作製し,最終的なSiC単結晶とした。
上述したごとく,上記第2成長面25の表面には転位及び欠陥はほとんど露出していないため,第2成長結晶10中には第2成長面25から転位が継承されることはほとんどなく,転位及び欠陥はほとんど発生せず,高品質である。
【0050】
また,本例においては,上記第1成長面15及び第2成長面25上にSiC単結晶を成長させる前に,付着物や加工変質層を取り除いている。そのため,上記付着物や加工変質層に起因し各成長面15,25から各成長結晶10,20に継承される転位を防ぐことができる。
【0051】
また,上記各種結晶の厚みを1mm以上にしている。
そのため,上記各種結晶1,2と種結晶が接触している蓋体65との熱膨張差による応力によって成長結晶10,20に生じる転位及び積層欠陥を防止することができる。
【0052】
このように,本例によれば,欠陥及び転位をほとんど含有せず,高品質なSiC単結晶及びその製造方法を提供することができる。
【0053】
(実施例2)
本例では,実施例1の第2成長工程における傾斜角度γを90°に変更してSiC単結晶を作製した例を示す。
まず,実施例1と同様のSiC単結晶を準備した。このSiC単結晶から実施例1と同様にして第1種結晶1を作製した。なお,第1種結晶1の厚みは2mmである。そして,さらに実施例1と同様にして第1成長結晶10を得た(第1成長工程)。
【0054】
次に,図3及び図4に示すごとく,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸としてβ(本例ではβ=90°)回転したところ,即ち<1−100>方向に第2傾斜方向253を有し,かつ{0001}面から傾斜角度γ(本例ではγ=90°)傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして作製した。そして,この第2種結晶2を上記第1種結晶と同様にして成長させ,図5に示すごとく該第2種結晶2の上記第2成長面25上にSiC単結晶を成長させ第2成長結晶20を作製し,最終的なSiC単結晶とした(連続成長工程)。
本例においても,実施例1と同様にマイクロパイプ欠陥,転位等が非常に少なく,高品質のSiC単結晶を得ることができた。
【0055】
(実施例3)
本例では,実施例1の第1成長工程及び第2成長工程における傾斜角度α及びγを共に90°としてSiC単結晶を作製した例を示す。
まず,実施例1と同様のSiC単結晶を準備した。そして,上記SiC単結晶の{0001}面から<11−20>方向である第1傾斜方向153へ傾斜角度α(α=90°)傾いた面を第1成長面15として露出するように上記SiC単結晶を切断し,さらにこの第1成長面15を加工,研磨した。また,実施例1と同様にして第1成長面15の表面を化学洗浄して付着物を除去し,RIE(Reactive Ion Etching),犠牲酸化により,切断・研磨に伴う加工変質層を除去し,これを第1種結晶1とした。なお,第1種結晶1の厚みは2mmである。続いて,さらに実施例1と同様にして第1成長結晶10を得た(第1成長工程)。
【0056】
次に,図3及び図4に示すごとく,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸としてβ(本例ではβ=90°)回転したところ,即ち<1−100>方向に第2傾斜方向253を有し,かつ{0001}面から傾斜角度γ(本例ではγ=90°)傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして作製した。そして,この第2種結晶2を上記第1種結晶と同様にして成長させ,図5に示すごとく該第2種結晶2の上記第2成長面25上にSiC単結晶を成長させ第2成長結晶20を作製し,最終的なSiC単結晶とした(連続成長工程)。
本例においても,実施例1及び2と同様にマイクロパイプ欠陥,転位等が非常に少なく,高品質のSiC単結晶を得ることができた。
【0057】
(実施例4)
本例においては,N=4,即ち成長工程を4回行ってSiC単結晶を作製した例を示す。
まず,実施例1と同様のSiC単結晶を準備した。
第1成長工程においては,実施例1〜3と同様にして上記SiC単結晶より{0001}面から<11−20>方向である第1傾斜方向153へ傾斜角度α(本例ではα=90°)傾いた面を第1成長面15として露出させた第1種結晶1を作製し,該第1種結晶1の第1成長面15上にSiC単結晶を成長させて第1成長結晶10を得た。
【0058】
次に,n=2である第2成長工程においては,実施例1〜3と同様に,<11−20>方向である第1傾斜方向153から<0001>を回転軸としてβ(本例ではβ=90°)回転したところ,即ち<1−100>方向に第2傾斜方向253を有し,かつ{0001}面から傾斜角度γ(本例ではγ=90°)傾いた面を第2成長面25として露出させた第2種結晶2を第1成長結晶10から作製する。そして,該第2種結晶2の第2成長面25上にSiC単結晶を成長させて第1成長結晶20を得た。
【0059】
次に,n=3である第3成長工程においては,<1−100>方向である第2傾斜方向153から<0001>を回転軸として90°回転したところ,即ち<11−20>方向に第3傾斜方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度3°傾いた面を第3成長面として露出させた第3種結晶を第2種結晶2と同様にして作製した。なお,このときの第3種結晶の厚みは2mmとした。そして,この第3種結晶を上記第1及び第2種結晶と同様に成長させ,第3成長結晶を作製した。
第3成長結晶は,マイクロパイプ欠陥,転位等が非常に少なく,高品質であった。
【0060】
次に,n=4である第4成長工程においては,<11−20>方向である第3傾斜方向から<0001>を回転軸として90°回転したところ,即ち<1−100>方向に第4傾斜方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度3°傾いた面を第4成長面として露出させた第4種結晶を第3種結晶と同様にして作製した。なお,このときの第4種結晶の厚みは2mmとした。そして,この第4種結晶を上記第1〜第3種結晶と同様に成長させ,第4成長結晶を作製した。
第4成長結晶は,マイクロパイプ欠陥,転位等が非常に少なく,第3成長結晶と同等以上に高品質であった。
【0061】
(実施例5)
本例では,エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製する例を示す。
本例のエピタキシャル膜付きSiCウエハ4の製造方法は,図8に示すごとく,SiC単結晶より成膜面35を露出するSiCウエハ3を作製し,該SiCウエハ3の上記成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜する。
【0062】
まず,実施例3で得られた高品質のSiC単結晶20を準備した。このSiC単結晶20の{0001}面から<11−20>方向へ5°傾いた面,{1−100}面,及び{11−20}面を成膜面として露出した,3種類のSiCウエハを作製した。このSiCウエハの成膜面に,上記実施例1における第1種結晶の作製時と同様に加工,研磨,化学洗浄,RIE,犠牲酸化等の表面処理を施した。
【0063】
そして,図8にしめすごとく,化学気相堆積法により上記SiCウエハ3の成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜し,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。具体的には,原料ガスとしてSiH4ガス及びC3H8ガスを5ミリリットル/分にて,またキャリアガスとしてH2ガスを10リットル/分にてそれぞれ反応管に導入し,SiCウエハを保持しているサセプタの温度を1550℃,雰囲気圧を10kPaとして成膜を行った。
【0064】
本例におけるエピタキシャル膜30中のマイクロパイプ欠陥,転位,インクルージョン等の欠陥密度は非常に小さく,高品質のエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜5にかかる,第1成長面の面方位を示す説明図。
【図2】実施例1〜5にかかる,第1成長結晶の成長方向及び転位の方向を示す説明図。
【図3】実施例1〜5にかかる,第1傾斜方向と第2傾斜方向の関係を示す説明図。
【図4】実施例1〜5にかかる,第2成長面の面方位を示す説明図。
【図5】実施例1〜5にかかる,第2成長結晶の成長方向を示す説明図。
【図6】実施例1〜5にかかる,昇華再析出法によるSiC単結晶の成長方法を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる,SiC単結晶の主要な面方位を示す説明図。
【図8】実施例5にかかる,エピタキシャル膜付きSiCウエハの説明図。
【符号の説明】
1...第1種結晶,
15...第1成長面,
151...法線ベクトル(第1成長工程),
153...第1傾斜方向,
10...第1成長結晶,
2...第2種結晶,
25...第2成長面,
251...法線ベクトル(第2成長工程),
253...第2傾斜方向,
20...第2成長結晶,
3...SiCウエハ,
35...成膜面,
30...エピタキシャル膜,
4...エピタキシャル膜付きSiCウエハ,
Claims (7)
- 六方晶のSiC単結晶よりなるSiC種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造する製造方法において,該製造方法はN回(NはN≧2の自然数)の成長工程を含み,各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表した場合,
n=1である第1成長工程においては,{0001}面から傾斜角度60°〜90°傾いた面を第1成長面として露出させた第1種結晶を作製して,該第1種結晶の上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
n=2,3,...,Nである連続成長工程においては,第n成長面の法線ベクトルを{0001}面に投影したベクトルの方向を第n傾斜方向とした場合に,第(n−1)傾斜方向から<0001>を回転軸として45°〜135°回転したところに第n傾斜方向を有し,かつ{0001}面から傾斜角度10°〜90°(ただし,10°を除く)傾いた面を第n成長面として露出させた第n種結晶を第(n−1)成長結晶から作製して,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させ第n成長結晶を作製し,
上記連続成長工程の第n成長工程においては,上記第n成長面と{0001}面との傾斜角度が60°〜90°である成長工程を1回以上有することを特徴とするSiC単結晶の製造方法。 - 請求項1において,上記第n成長面(n=1,2,...,N)と{0001}面との傾斜角度は,70°未満であることを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
- 請求項1において,n=N(ただし,N=2を除く)である第N成長工程においては,上記第N成長面と{0001}面との傾斜角度が20°以下であることを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記各種結晶上でのSiC単結晶の成長には昇華再析出法を用いることを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記各種結晶の厚みは,1mm以上であることを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
- 請求項3に記載の製造方法により作製されたSiC単結晶より成膜面を露出するSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
- 請求項6において,上記成膜面は,{0001}面からオフセット角度0.5°〜20°の面,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面であることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
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