JP3789692B2 - 高密度光メモリシステム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度光メモリシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光メモリは記憶容量が大きく、アクセススピードも速いので、CDやDVDに活用され、コンピュータのメモリとしても利用されている。
【0003】
これらはいずれも、0又は1の情報を基板のピットの有無に対応させて記録し、また読み出す方式である。このため、光の波長とその記録可能面積により記憶容量が自ずと決まっていた。
【0004】
ここでは、この2値符号に替えて、多値符号を用い、記憶容量を増大させようとするものである。
【0005】
ところで、多値信号の光記録方式も既に提案されているが、従来の方式は単純にピットの深さ方向を多段階にして、深さをパラメータに活用しようとするものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の多値信号の光記録方式では、ピットのエッジや深さの制御が難しく、多値検出精度を上げるのは容易ではないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を除去し、多値検出精度を向上させることができる高密度光メモリシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕高密度光メモリシステムにおいて、多段階の深さのピットを有する複屈折記録膜と、前記多段階の深さのピット情報を直交偏光間の位相差として読み出すための読み出し手段を具備することを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記複屈折記録膜は複屈折率が0.1以上の材料からなることを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記読み出し手段は、前記複屈折記録膜に直交主軸に対し45°の直線偏光又は円偏光を入射し、膜面からの反射光を干渉計でもって、光路間における直交する偏光主軸間の位相差をアナログ的に検出することを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、読み出し光学系の集光レンズの開口数NAを0.8以上とすることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例を示すピットの深さに対する干渉計出力の計算値を示す図であり、横軸はピットの深さ(μm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0014】
本発明の高密度光メモリは、複屈折記録膜(以下、単に複屈折膜という)と多値符号化を用いた高密度光メモリであり、多値符号化技術を用いた高密度光記録技術の開発を目指したものであり、複屈折膜(一例としてフッ素化ポリイミド)に多段階の深さのピットを設けて、深さの情報を直交偏光間の位相差として読み出す方式としたものである。
【0015】
複屈折膜により2つの直交偏光成分が受けた位相差を干渉計を用いて検出した時の、ピットの深さに対する光強度の計算結果を図1に示す。
【0016】
読み取り光学系の集光レンズのNAが小さいと回折による影響が大きいが、NA0.8のレンズを使用することによりほぼ単調減少の特性が得られ、多値記録が可能であることが分かる。
【0017】
また、記録用ピット幅W=0.6μm、深さ0.44μmのピットをSi基板上に形成した。そのピットの断面図を図2に示す。さらに、この基板にポリイミドを塗布して、参考文献〔(1)S.Ando,T.Sawada,and Y.Inoue,:Electron.Lett.,vol.29,no.24,p.2143,(1993).〕に開示されているのと同じ方法で複屈折膜を形成し、複屈折率0.12を得ることに成功した。
【0018】
以下、本発明の詳細な例について説明する。
【0019】
まず、複屈折膜を用いた多値光記録の原理について説明する。
【0020】
〔1〕複屈折膜を用いた多値光記録の原理
〔1.1〕光の電磁界分布および偏光状態
空間を伝搬してくるコヒーレントなビーム光(無限に続く定常状態の正弦波振動)は、進行方向に垂直な振動を伴うE(電界)およびH(磁界)で構成されている。
【0021】
ここで、EおよびHの方向が時間に無関係に一定の場合には、その方向は波動の伝搬する空間内で一定に保たれ、EおよびHはそれぞれ直交する一対の平面内(この平面を振動面という)に存在するようになる(つまり、振動の方向が一方向となる)。このとき観測者が、進行してくる光を見たときEおよびHのベクトルの先端が直交して見える。このような光を直線偏光という。ここで、直線偏光を図3に示すように直交主軸x,yに分解する。
【0022】
そこで、この直線偏光を空間に固定した任意の直交座標(x,y)を用いて、
Ex =Ax cos(ωt+Ψx ) …(1.1)
Ey =Ay cos(ωt+Ψy ) …(1.2)
Ax =|E0 |cosθ,Ay =|E0 |sinθ …(1.3)
φx =φy =φ …(1.4)
のように表すことができる。ここでθは振動面がx軸となす角である。すなわち、任意の直線偏光は、直交する二つの直線偏光の和として表すことができ、それらの二つの直線偏光は同一の位相と一定の振幅比を持つ。ここで、さらに直線偏光成分Ex ,Ey において次のような関係があるときEの先端が楕円を描くようになる。このような光波を楕円偏光という。
【0023】
Ax /Ay =const. …(1.5)
φy −φx =Δφ=const. …(1.6)
特別な場合として、Δφ=0およびΔφ=πの時、直線偏光となる。
【0024】
また、Δφ=±π/2の時、円偏光となる。つまり、任意の楕円偏光が直交する二つの直線偏光成分の和として表示される。
【0025】
ここで、位相差Δφに対する偏光状態の変化を図4に示す。つまり、図4(a)は直線偏光(Δφ=0)、図4(b)は右回り楕円偏光(Δφ=0〜π/2)、図4(c)は右回り円偏光(Δφ=π/2)、図4(d)は右回り楕円偏光(Δφ=π/2〜π)、図4(e)は直線偏光(Δφ=π)のそれぞれを示している。
【0026】
ここでは、位相差Δφが変化することにより偏光状態も変化することを利用して信号の多値化を行った。
【0027】
媒質中に光を入射させたときに、光が異なる2つの屈折光に分かれて媒質中を伝搬するとき、この現象を光学的異方性あるいは複屈折性という。屈折光は、振動方向が互いに直交している2つの偏光に分かれて結晶中を伝搬する。
【0028】
この複屈折は、互いに直交している2つの偏光の媒質内の位相速度、すなわち屈折率が異なるために生じる。このような物質を異方性媒質という。逆に複屈折を示さない物質を等方性媒質という。複屈折性を示す物質(異方性媒質)の屈折光は、その入射角度によって伝搬の方向と位相速度が変わる。
【0029】
以下に、上で述べた複屈折性を示す物質の一例としてフッ素化ポリイミドの特徴を下に示す。
【0030】
▲1▼薄い黄色い膜で丈夫である。
【0031】
▲2▼柔軟性がある。
【0032】
▲3▼赤外線で高透過性を示す。
【0033】
▲4▼温度・湿度に対して安定である。
【0034】
▲5▼0.08〜0.12位の非常に大きな複屈折率を持つ。
【0035】
フッ素化ポリイミドにも色々な種類があるが、ここで一例として使用したのはOPI−2005(日立化成製)であり、この材料は、複屈折率約0.13と、大きな複屈折率を持っている。
〔1.2〕多値光記録の原理
図5は本発明に係る複屈折膜基板での反射を示す模式図である。
【0036】
この図において、1は複屈折膜を保持するための基板、2は複屈折膜、3は入射光としての直線偏光、4は反射光としての楕円偏光である。
【0037】
多値信号を用いた光伝送及び光記録は、従来から利用されている光振幅(あるいは光強度)に加えて、光の電磁波としての特徴である位相に着目する。
【0038】
そこで、光の位相を利用するために、複屈折膜(ポリイミド)2を光ディスクの複屈折記録膜2として採用した。この光ディスクの基板1に深さの異なるピットをあけておき、そこに複屈折膜2に直交主軸に対して45°の直線偏光3を入射させると、入射光は複屈折のある膜(ポリイミド)を記録膜として採用したので、図5中▲1▼方向と▲2▼方向の屈折率が異なるため、直交する主軸方向の波に位相差が生じ、反射することが分かる。この時、▲1▼方向の位相変化をφe ,▲2▼方向の波の位相変化をφo とすると、
φe =k0 ne 2L …(1.7)
φo =k0 no 2L …(1.8)
と表せる。但し、k0 は真空中の波数、Lはピットの深さとする。
【0039】
すなわち、▲1▼方向の波と▲2▼方向の波で、
Δφ=φe −φo =k0 (ne −no )2L …(1.9)
だけ位相がずれることになる。このため、〔1.1〕で述べたように光の性質から反射光が円偏光になったり、楕円偏光4になったりするわけである。さらに位相差Δφは、ピットの深さによって変化することが、上記(1.9)式から分かる。
【0040】
よって、反射光を偏光ビームスプリッタと波長板を用いた干渉計によって位相差Δφをアナログ的に検出できる。これにより、情報を多値化することができる。
【0041】
〔1.3〕位相差を検出する干渉計の原理
上記した入射光と反射光の位相差を検出するためのマッハツェンダー干渉計の原理及び構成を図6に示す。ここで、図6(a)は入射の場合、図6(b)は反射の場合を示している。
【0042】
これらの図において、11はレーザ光源〔He−Neレーザ又は半導体レーザ〕、12はハーフミラー、13はウエッジ基板、14,15は全反射ミラー、16は1/2波長板、17は偏光ビームスプリッター(PBS)、18は光記録媒体(光ディスク)、19は光検出器である。
【0043】
まず、入射させる光は、図6(a)に示すように、x偏光〔(ここでは、レーザ光源(He−Neレーザ)11〕である。但し、被測定物に入射させる光は、スポットサイズが0.6μmになるようにビームエクスパンダーにより調整した。入射させた光は、まずハーフミラー12により2つの光路に分けられる。
【0044】
2つに分けられた光の一方は、そのまま全反射ミラー14を介して偏向ビームスプリッター(PBS)17に入射させる。もう一方の光は、1/2波長板16を通過させることにより偏向方向を90°回転(y偏光になる)させて、PBS17に入射させる。
【0045】
このようにして、2つの光路からきたx偏光とy偏光の合成波を光ディスク18に入射(45°の直線偏光又は円偏光)させる。
【0046】
次に、図8(b)に示すように、複屈折膜で反射して位相変化を受けた光がマッハツェンダー干渉計の中に再び戻ってくる。その反射光(x′偏光とy′偏光の合成波)は、PBS17によって再び干渉計の中に戻ってくる。一方のx′偏光は、そのままレーザ光源11側と光検出器19側へ戻ってくる。
【0047】
一方、y′偏光は、λ/2波長板16を通過して、x′偏光へと変換されレーザ光源11側と光検出器19側へと戻ってくる。戻ってきたx′偏光を干渉させる。この干渉により複屈折膜中で直交する2つの偏光成分が受けた位相差を知ることができる。
【0048】
ここで干渉計の中にウエッジ基板13が挿入されているのは、2つの光路差を制御できるようにするためである。
【0049】
〔2〕複屈折膜の製作方法
複屈折膜の製作工程を図7に示す。
【0050】
(1)まず、最初に、図7(a)に示すように、3インチのSiウエハ21を5cm×5cmにクリーブし、電子ビーム(EB)描画装置および反応性イオンエッチング装置により、ピットパターンを含むSiO2 膜22を形成する。
【0051】
(2)その後、図7(b)に示すように、製作した基板上にポリイミド膜23をスピンコートにより成膜する。
【0052】
(3)次に、図7(c)に示すように、成膜したポリイミド膜23をオーブンにより加熱(80℃で4分30秒)後、ポリイミド膜23′を基板から剥離する。
【0053】
(4)次に、図7(d)に示すように、剥離したポリイミド膜23′を複屈折を持つように金属フレーム24により1軸方向を固定し、オーブンで5℃/minの割合で300℃まで温度を上昇させ、その後1時間加熱する。なお、図7(d)における黒色の矢印はポリイミド膜23′の収縮方向を示している。
【0054】
(5)次に、図7(e)に示すように、製作した複屈折膜の裏面に反射膜としてAl膜25を蒸着する。
【0055】
〔2.1〕ピット形成プロセス
〔2.1.1〕製作条件
複屈折膜製作用の基板の製作工程を、図8に示す。
【0056】
(1)まず最初に、図8(a)に示すように、3インチのSiウエハ31を用意する。
【0057】
(2)次いで、図8(b)に示すように、3インチのSiウエハ31上にSiO2 膜32をスパッタ成膜する。
【0058】
(3)次に、図8(c)に示すように、真空蒸着器によりCr膜33を蒸着し、レジスト膜34をコーティングする。
【0059】
(4)次に、図8(d)に示すように、電子ビーム(EB)描画装置により、ピットパターン35を形成する。
【0060】
(5)次に、図8(e)に示すように、Cr膜33をエッチングする。
【0061】
(6)次に、図8(f)に示すように、レジスト膜34を剥離する。
【0062】
(7)その後、図8(g)に示すように、RIE装置でSiO2 膜32をエッチングする。
【0063】
(8)最後に、図8(h)に示すように、Cr膜33を剥離する。
【0064】
このようにして、例えば、図2に示すような断面を示す基板を得ることができる。また、深さの異なるピットパターンは、図8(c)〜図8(h)を繰り返すことによって得られる。
【0065】
〔3〕次に、反射波の回折パターンについて説明する。
【0066】
〔3.1〕 回折現象
最低次モードの光軸に垂直な断面内の強度分布は釣り鐘状のいわゆるガウス分布となり、そのエネルギーの87%程度がスポットサイズ内に局在する。光ディスクにおける情報の高密度記録および再生のために、レンズにより波長程度のスポットサイズに集光する。
【0067】
その際、ピットからの反射の際に集光レンズの外側へも回折する。そのため、この回折現象によって減衰した信号が光検出器に検知される。ここでは、ピットでの回折現象が光検出器での光強度にどのような影響を与え、実際にどのようなピットを形成すれば多値化が可能であるのかを解析した。
【0068】
図9は空間内伝搬の模式図である。
【0069】
〔3.2〕回折波の遠視野像
光ビーム(スポットサイズw:0.633μm,波長λ:0.633μm)をピット内に入射させると、回折現象により次式(3.1)で表される反射光となる。
【0070】
【数1】
【0071】
反射光は、空間内を次式(3.2)に従い伝搬する。
【0072】
【数2】
【0073】
製作したプログラムにより遠視野像での回折パターンを計算した。図1に解析結果を示す。(図10に解析モデルを示す)。なお、伝搬距離L=100μmとした。図1はピット幅一定の時、回折効果と複屈折膜による位相差の効果の両方を考慮した光検出器出力をピット深さに対してとったグラフである。
【0074】
〔3.3〕回折波の検出
一般に光ディスクの光信号検出系は、対物レンズの開口内に放射された回折光を集光し、その強度をフォトディテクタで電気信号に変換する。
【0075】
いま、図11に示すように、参照対物レンズ41の開口数をNAとすると、光検出器42の出力特性に関与するのは対物レンズ41の光軸から±sin-1(NA)以内の角度に入射する成分のみである。実際に、光検出器I1 ,I2 に入射する光電力は、次式(3.5),(3.6)で表される。
【0076】
【数3】
【0077】
複屈折膜により2つの直交偏光成分が受けた位相差を干渉計を用いて検出するときの、ピットの深さに対する光強度を解析した。解析結果は、前記した図1に示されている。なお解析結果は、ピット幅l=0.6μm(現在、CD等で使用されているピット幅)複屈折率Δn=0.1で行い、波長で規格化した。
【0078】
この結果から、対物レンズ41のNAが小さいと回折による影響が大きいが、NAが0.8のレンズを使用することにより、単調減少の特性が得られ、多値記録が可能であることが分かる。また、この解析結果から読み取り誤差に一番強いと思われる深さ0.15,0.60,0.85μmに設定して基板を製作した。
【0079】
〔3.4〕複屈折のないピットでの回折パターン
複屈折のないピットでの回折パターンを計算して、NA=0.8のレンズを用いて集光した場合の光検出器への入射光電力を計算した。その結果を、図12に示す。この図12において、横軸はピット深さ(μm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0080】
その結果から、複屈折なしのピットにおいては、深さにより強度分布がそれほど変化しないことが分かった。つまり、複屈折の効果は、複屈折をもつピットと複屈折をもたないピットを測定して比較すると分かる。
【0081】
〔4〕干渉計による偏光状態の測定
〔4.1〕干渉計による偏光状態の測定(1)
マッハツェンダー干渉計により、複屈折膜の測定を行った。
【0082】
最初に入射面に複屈折膜を設置せず、全反射ミラーを置いて検出器側で干渉縞が観測できることを確認した。
【0083】
次に、ウエッジ基板で光路長を変化させ、干渉縞の移動を確認した。
【0084】
次に、複屈折膜を設置して直交偏光間位相差を測定した。その際、完成した複屈折膜の片側の面にアルミニウムを蒸着した。
【0085】
アルミニウムを蒸着した複屈折膜をSi基板に張り付けて、測定を行った。
【0086】
まず、測定に際して、片側の光路(1/2波長板側)のみに光を通し、PBSからの出射光をビームエクスパンダーを通して、レンズに入射させ、光検出器によりガウス分布を測定する。
【0087】
この時、測定したガウス分布のスポットサイズが0.633μm程度になるようビームエクスパンダーを調整する。
【0088】
次に、被測定物を設置して、光検出器によりパワーの強度変化を確認(ピットに光が入射すると、強度変化が生じる)する。そこで、2つの光路を干渉させて、光検出器での強度が最大になるようにウエッジ基板により調整する。そして、ピットの存在する付近をスキャン〔手動式マイクロメータ(分解能1μm)により〕させ干渉光の強弱を測定する。その結果を図13、図14に示す。これらの図13、図14において、横軸は位置(mm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。図15はピットパターンのモデルとして用いた溝パターンを示している。なお、この図15において、黒色の矢印は、走査方向を示している。
【0089】
この結果と解析結果を比較すると、ほぼ一致していることが分かる。また、複屈折を持たないピットにおいても光検出器での強度変化が生ずるため、この測定結果が複屈折による効果であるかどうかを次の方法により確認した。
【0090】
ウエッジ基板を用いて、光検出器での強度を最大にして測定を始めたが、複屈折による効果を確認するため、光検出器での強度を最大の約70%、60%(位相をずらしていることに相当する)に設定して測定を開始した。
【0091】
位相と干渉後の強度分布のグラフを図16に示す。この図16において、横軸は位相差、縦軸は正規化されたパワーである。また、それぞれの測定結果を、図17と図18に示す。これらの図17、図18において、横軸は位置(mm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0092】
この結果から、位相変化により光検出器出力が変化していることが確認された。
【0093】
しかしながら、この測定方法では、ピット幅0.6μmと比較して、スキャンのステップ幅が1μmと大きく、分解能が不十分である。
【0094】
そこで、D80ステッピングモーターコントローラ(駿河精機製)を用いての40nmステップ幅のスキャンで再度測定を行うことにした。
【0095】
〔4.2〕スポットサイズの測定
複屈折膜への入射光のスポットサイズは、ピットでの回折現象がスポットサイズに大きく依存するため、設計値通りの0.6μmに設定しなければならない。そこで、光軸合わせおよび高さ調整などを行い、複屈折膜への入射光のスポットサイズの測定を以下の方法により行った。
【0096】
複屈折膜への入射光Ψ(x′,y′)を知るには、スポットサイズwを測定しなければならない。測定方法を、図19に示す。レンズから十分な距離Lだけ離れた所の光強度分布を光検出器により順次測定する。この結果から、スポットサイズWを知ることができる。
【0097】
また、レンズで集光されたビームのビームウェストでのスポットサイズwと遠視野像でのスポットサイズW(空間周波数軸上でのスポットサイズ)とには、次なる関係がある。
【0098】
w=2/W (4.1)
これにより実際に複屈折膜への入射光のスポットサイズは、w=1.14μmと求められた。この値は、本来複屈折膜へ入射すべきスポットサイズ0.633μmに比べて、2倍ほど大きくなっている。しかしながら、測定で使用しているビームエクスパンダーには限界があり、これが最小のスポットである。これからの測定では、このビームを使用することにした。
【0099】
〔4.2.1〕集光用レンズに要求されるNAの値
フレネル数をN、測定領域までの距離をZ、ビームのスポットサイズをwとすると次なる関係がある。
【0100】
N=w2 /λZ …(4.2)
上式に、w=1μm、λ=0.633μm、フランホーファ領域になるための条件N=1を代入するとZ=0.79μmとなり、この距離以上離してスポットサイズの測定をする必要がある。また、ピットに入射される光のスポットサイズwを0.633μmにするにはどれぐらいのビーム径の光をレンズに入射させるべきかを計算した。
【0101】
次に、レンズのNA(開口数)には、次なる関係がある。
【0102】
NA=sinθ=λ/(πw0 ) …(4.3)
w0 =λ/2よって、NA=sinθ=2/π …(4.4)
また、図20より次なる関係がある。
【0103】
NAmax =sinθmax =D/√[L2 +(D)2 ] …(4.5)
NA=sinθ=W/√[L2 +W2 ] …(4.6)
本測定で使用したレンズ51は、NA=0.8,2D=6mmであるので上記式(4.5)に代入すると、L=2.25mmとなる。次に、上記式(4.6)に先程述べたL=2.25mmを代入して、入射ビームのスポットサイズWB を求めると2WB =3.7mmとなり、レンズ51へ入射させるべきビーム径が求められた。そこで、レンズ51へ入射させるベきビーム径を得るため、ビームエクスパンダーによりビーム径を大きくしてレンズ51に入射させた。
【0104】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0105】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0106】
(A)光の位相の検出に利用するもので、複屈折膜を用いて、多段階の深さのピットを設け、その多値情報を得ることができる。
【0107】
(B)その多値情報は、複屈折膜に直交主軸に対し45°の直線偏光又は円偏光を入射し、膜面からの反射光を干渉計でもって、ピットからの反射光の直交する偏光間の位相差をアナログ的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すピットの深さに対する干渉計出力の計算値を示す図である。
【図2】ピット幅W:0.6μm,深さ0.44μmのピット製作用基板の断面図である。
【図3】直線偏光の直交主軸分解図である。
【図4】位相差Δに対する偏光状態の変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例を示す複屈折膜基板での反射を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例を示す測定用干渉計の構成図である。
【図7】本発明の実施例を示す複屈折膜の製作工程図である。
【図8】本発明の実施例を示す複屈折膜製作用の基板の製作工程図である。
【図9】光ビームの空間内伝搬の模式図である。
【図10】解析モデルを示す図である。
【図11】光検出器での検出を示す図である。
【図12】複屈折がないピットでの回折による光検出器への入射光電力を示す図である。
【図13】干渉計による偏光状態の測定結果(I)を示す図である。
【図14】干渉計による偏光状態の測定結果(II)を示す図である。
【図15】ピットパターンのモデルとして用いた溝パターンを示す図である。
【図16】位相変化と干渉後の強度分布の関係を示す図である。
【図17】測定結果(70%)を示す図である。
【図18】測定結果(60%)を示す図である。
【図19】スポットサイズの測定方法を示す図である。
【図20】レンズに入射させるべきビーム径の説明図である。
【符号の説明】
1 複屈折記録膜を保持するための基板
2 複屈折記録膜
3 直線偏光
4 楕円偏光
11 レーザ光源〔He−Neレーザ又は半導体レーザ〕
12 ハーフミラー
13 ウエッジ基板
14,15 全反射ミラー
16 1/2波長板
17 偏光ビームスプリッター(PBS)
18 光記録媒体(光ディスク)
19 光検出器
21,31 Siウエハ
22,35 ピットパターンを含むSiO2 膜
23,23′ ポリイミド膜
24 金属フレーム
25 Al膜
32 SiO2 膜
33 Cr膜
34 レジスト膜
41 対物レンズ
42 光検出器
51 レンズ
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度光メモリシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光メモリは記憶容量が大きく、アクセススピードも速いので、CDやDVDに活用され、コンピュータのメモリとしても利用されている。
【0003】
これらはいずれも、0又は1の情報を基板のピットの有無に対応させて記録し、また読み出す方式である。このため、光の波長とその記録可能面積により記憶容量が自ずと決まっていた。
【0004】
ここでは、この2値符号に替えて、多値符号を用い、記憶容量を増大させようとするものである。
【0005】
ところで、多値信号の光記録方式も既に提案されているが、従来の方式は単純にピットの深さ方向を多段階にして、深さをパラメータに活用しようとするものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の多値信号の光記録方式では、ピットのエッジや深さの制御が難しく、多値検出精度を上げるのは容易ではないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を除去し、多値検出精度を向上させることができる高密度光メモリシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕高密度光メモリシステムにおいて、多段階の深さのピットを有する複屈折記録膜と、前記多段階の深さのピット情報を直交偏光間の位相差として読み出すための読み出し手段を具備することを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記複屈折記録膜は複屈折率が0.1以上の材料からなることを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記読み出し手段は、前記複屈折記録膜に直交主軸に対し45°の直線偏光又は円偏光を入射し、膜面からの反射光を干渉計でもって、光路間における直交する偏光主軸間の位相差をアナログ的に検出することを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕記載の高密度光メモリシステムにおいて、読み出し光学系の集光レンズの開口数NAを0.8以上とすることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例を示すピットの深さに対する干渉計出力の計算値を示す図であり、横軸はピットの深さ(μm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0014】
本発明の高密度光メモリは、複屈折記録膜(以下、単に複屈折膜という)と多値符号化を用いた高密度光メモリであり、多値符号化技術を用いた高密度光記録技術の開発を目指したものであり、複屈折膜(一例としてフッ素化ポリイミド)に多段階の深さのピットを設けて、深さの情報を直交偏光間の位相差として読み出す方式としたものである。
【0015】
複屈折膜により2つの直交偏光成分が受けた位相差を干渉計を用いて検出した時の、ピットの深さに対する光強度の計算結果を図1に示す。
【0016】
読み取り光学系の集光レンズのNAが小さいと回折による影響が大きいが、NA0.8のレンズを使用することによりほぼ単調減少の特性が得られ、多値記録が可能であることが分かる。
【0017】
また、記録用ピット幅W=0.6μm、深さ0.44μmのピットをSi基板上に形成した。そのピットの断面図を図2に示す。さらに、この基板にポリイミドを塗布して、参考文献〔(1)S.Ando,T.Sawada,and Y.Inoue,:Electron.Lett.,vol.29,no.24,p.2143,(1993).〕に開示されているのと同じ方法で複屈折膜を形成し、複屈折率0.12を得ることに成功した。
【0018】
以下、本発明の詳細な例について説明する。
【0019】
まず、複屈折膜を用いた多値光記録の原理について説明する。
【0020】
〔1〕複屈折膜を用いた多値光記録の原理
〔1.1〕光の電磁界分布および偏光状態
空間を伝搬してくるコヒーレントなビーム光(無限に続く定常状態の正弦波振動)は、進行方向に垂直な振動を伴うE(電界)およびH(磁界)で構成されている。
【0021】
ここで、EおよびHの方向が時間に無関係に一定の場合には、その方向は波動の伝搬する空間内で一定に保たれ、EおよびHはそれぞれ直交する一対の平面内(この平面を振動面という)に存在するようになる(つまり、振動の方向が一方向となる)。このとき観測者が、進行してくる光を見たときEおよびHのベクトルの先端が直交して見える。このような光を直線偏光という。ここで、直線偏光を図3に示すように直交主軸x,yに分解する。
【0022】
そこで、この直線偏光を空間に固定した任意の直交座標(x,y)を用いて、
Ex =Ax cos(ωt+Ψx ) …(1.1)
Ey =Ay cos(ωt+Ψy ) …(1.2)
Ax =|E0 |cosθ,Ay =|E0 |sinθ …(1.3)
φx =φy =φ …(1.4)
のように表すことができる。ここでθは振動面がx軸となす角である。すなわち、任意の直線偏光は、直交する二つの直線偏光の和として表すことができ、それらの二つの直線偏光は同一の位相と一定の振幅比を持つ。ここで、さらに直線偏光成分Ex ,Ey において次のような関係があるときEの先端が楕円を描くようになる。このような光波を楕円偏光という。
【0023】
Ax /Ay =const. …(1.5)
φy −φx =Δφ=const. …(1.6)
特別な場合として、Δφ=0およびΔφ=πの時、直線偏光となる。
【0024】
また、Δφ=±π/2の時、円偏光となる。つまり、任意の楕円偏光が直交する二つの直線偏光成分の和として表示される。
【0025】
ここで、位相差Δφに対する偏光状態の変化を図4に示す。つまり、図4(a)は直線偏光(Δφ=0)、図4(b)は右回り楕円偏光(Δφ=0〜π/2)、図4(c)は右回り円偏光(Δφ=π/2)、図4(d)は右回り楕円偏光(Δφ=π/2〜π)、図4(e)は直線偏光(Δφ=π)のそれぞれを示している。
【0026】
ここでは、位相差Δφが変化することにより偏光状態も変化することを利用して信号の多値化を行った。
【0027】
媒質中に光を入射させたときに、光が異なる2つの屈折光に分かれて媒質中を伝搬するとき、この現象を光学的異方性あるいは複屈折性という。屈折光は、振動方向が互いに直交している2つの偏光に分かれて結晶中を伝搬する。
【0028】
この複屈折は、互いに直交している2つの偏光の媒質内の位相速度、すなわち屈折率が異なるために生じる。このような物質を異方性媒質という。逆に複屈折を示さない物質を等方性媒質という。複屈折性を示す物質(異方性媒質)の屈折光は、その入射角度によって伝搬の方向と位相速度が変わる。
【0029】
以下に、上で述べた複屈折性を示す物質の一例としてフッ素化ポリイミドの特徴を下に示す。
【0030】
▲1▼薄い黄色い膜で丈夫である。
【0031】
▲2▼柔軟性がある。
【0032】
▲3▼赤外線で高透過性を示す。
【0033】
▲4▼温度・湿度に対して安定である。
【0034】
▲5▼0.08〜0.12位の非常に大きな複屈折率を持つ。
【0035】
フッ素化ポリイミドにも色々な種類があるが、ここで一例として使用したのはOPI−2005(日立化成製)であり、この材料は、複屈折率約0.13と、大きな複屈折率を持っている。
〔1.2〕多値光記録の原理
図5は本発明に係る複屈折膜基板での反射を示す模式図である。
【0036】
この図において、1は複屈折膜を保持するための基板、2は複屈折膜、3は入射光としての直線偏光、4は反射光としての楕円偏光である。
【0037】
多値信号を用いた光伝送及び光記録は、従来から利用されている光振幅(あるいは光強度)に加えて、光の電磁波としての特徴である位相に着目する。
【0038】
そこで、光の位相を利用するために、複屈折膜(ポリイミド)2を光ディスクの複屈折記録膜2として採用した。この光ディスクの基板1に深さの異なるピットをあけておき、そこに複屈折膜2に直交主軸に対して45°の直線偏光3を入射させると、入射光は複屈折のある膜(ポリイミド)を記録膜として採用したので、図5中▲1▼方向と▲2▼方向の屈折率が異なるため、直交する主軸方向の波に位相差が生じ、反射することが分かる。この時、▲1▼方向の位相変化をφe ,▲2▼方向の波の位相変化をφo とすると、
φe =k0 ne 2L …(1.7)
φo =k0 no 2L …(1.8)
と表せる。但し、k0 は真空中の波数、Lはピットの深さとする。
【0039】
すなわち、▲1▼方向の波と▲2▼方向の波で、
Δφ=φe −φo =k0 (ne −no )2L …(1.9)
だけ位相がずれることになる。このため、〔1.1〕で述べたように光の性質から反射光が円偏光になったり、楕円偏光4になったりするわけである。さらに位相差Δφは、ピットの深さによって変化することが、上記(1.9)式から分かる。
【0040】
よって、反射光を偏光ビームスプリッタと波長板を用いた干渉計によって位相差Δφをアナログ的に検出できる。これにより、情報を多値化することができる。
【0041】
〔1.3〕位相差を検出する干渉計の原理
上記した入射光と反射光の位相差を検出するためのマッハツェンダー干渉計の原理及び構成を図6に示す。ここで、図6(a)は入射の場合、図6(b)は反射の場合を示している。
【0042】
これらの図において、11はレーザ光源〔He−Neレーザ又は半導体レーザ〕、12はハーフミラー、13はウエッジ基板、14,15は全反射ミラー、16は1/2波長板、17は偏光ビームスプリッター(PBS)、18は光記録媒体(光ディスク)、19は光検出器である。
【0043】
まず、入射させる光は、図6(a)に示すように、x偏光〔(ここでは、レーザ光源(He−Neレーザ)11〕である。但し、被測定物に入射させる光は、スポットサイズが0.6μmになるようにビームエクスパンダーにより調整した。入射させた光は、まずハーフミラー12により2つの光路に分けられる。
【0044】
2つに分けられた光の一方は、そのまま全反射ミラー14を介して偏向ビームスプリッター(PBS)17に入射させる。もう一方の光は、1/2波長板16を通過させることにより偏向方向を90°回転(y偏光になる)させて、PBS17に入射させる。
【0045】
このようにして、2つの光路からきたx偏光とy偏光の合成波を光ディスク18に入射(45°の直線偏光又は円偏光)させる。
【0046】
次に、図8(b)に示すように、複屈折膜で反射して位相変化を受けた光がマッハツェンダー干渉計の中に再び戻ってくる。その反射光(x′偏光とy′偏光の合成波)は、PBS17によって再び干渉計の中に戻ってくる。一方のx′偏光は、そのままレーザ光源11側と光検出器19側へ戻ってくる。
【0047】
一方、y′偏光は、λ/2波長板16を通過して、x′偏光へと変換されレーザ光源11側と光検出器19側へと戻ってくる。戻ってきたx′偏光を干渉させる。この干渉により複屈折膜中で直交する2つの偏光成分が受けた位相差を知ることができる。
【0048】
ここで干渉計の中にウエッジ基板13が挿入されているのは、2つの光路差を制御できるようにするためである。
【0049】
〔2〕複屈折膜の製作方法
複屈折膜の製作工程を図7に示す。
【0050】
(1)まず、最初に、図7(a)に示すように、3インチのSiウエハ21を5cm×5cmにクリーブし、電子ビーム(EB)描画装置および反応性イオンエッチング装置により、ピットパターンを含むSiO2 膜22を形成する。
【0051】
(2)その後、図7(b)に示すように、製作した基板上にポリイミド膜23をスピンコートにより成膜する。
【0052】
(3)次に、図7(c)に示すように、成膜したポリイミド膜23をオーブンにより加熱(80℃で4分30秒)後、ポリイミド膜23′を基板から剥離する。
【0053】
(4)次に、図7(d)に示すように、剥離したポリイミド膜23′を複屈折を持つように金属フレーム24により1軸方向を固定し、オーブンで5℃/minの割合で300℃まで温度を上昇させ、その後1時間加熱する。なお、図7(d)における黒色の矢印はポリイミド膜23′の収縮方向を示している。
【0054】
(5)次に、図7(e)に示すように、製作した複屈折膜の裏面に反射膜としてAl膜25を蒸着する。
【0055】
〔2.1〕ピット形成プロセス
〔2.1.1〕製作条件
複屈折膜製作用の基板の製作工程を、図8に示す。
【0056】
(1)まず最初に、図8(a)に示すように、3インチのSiウエハ31を用意する。
【0057】
(2)次いで、図8(b)に示すように、3インチのSiウエハ31上にSiO2 膜32をスパッタ成膜する。
【0058】
(3)次に、図8(c)に示すように、真空蒸着器によりCr膜33を蒸着し、レジスト膜34をコーティングする。
【0059】
(4)次に、図8(d)に示すように、電子ビーム(EB)描画装置により、ピットパターン35を形成する。
【0060】
(5)次に、図8(e)に示すように、Cr膜33をエッチングする。
【0061】
(6)次に、図8(f)に示すように、レジスト膜34を剥離する。
【0062】
(7)その後、図8(g)に示すように、RIE装置でSiO2 膜32をエッチングする。
【0063】
(8)最後に、図8(h)に示すように、Cr膜33を剥離する。
【0064】
このようにして、例えば、図2に示すような断面を示す基板を得ることができる。また、深さの異なるピットパターンは、図8(c)〜図8(h)を繰り返すことによって得られる。
【0065】
〔3〕次に、反射波の回折パターンについて説明する。
【0066】
〔3.1〕 回折現象
最低次モードの光軸に垂直な断面内の強度分布は釣り鐘状のいわゆるガウス分布となり、そのエネルギーの87%程度がスポットサイズ内に局在する。光ディスクにおける情報の高密度記録および再生のために、レンズにより波長程度のスポットサイズに集光する。
【0067】
その際、ピットからの反射の際に集光レンズの外側へも回折する。そのため、この回折現象によって減衰した信号が光検出器に検知される。ここでは、ピットでの回折現象が光検出器での光強度にどのような影響を与え、実際にどのようなピットを形成すれば多値化が可能であるのかを解析した。
【0068】
図9は空間内伝搬の模式図である。
【0069】
〔3.2〕回折波の遠視野像
光ビーム(スポットサイズw:0.633μm,波長λ:0.633μm)をピット内に入射させると、回折現象により次式(3.1)で表される反射光となる。
【0070】
【数1】
【0071】
反射光は、空間内を次式(3.2)に従い伝搬する。
【0072】
【数2】
【0073】
製作したプログラムにより遠視野像での回折パターンを計算した。図1に解析結果を示す。(図10に解析モデルを示す)。なお、伝搬距離L=100μmとした。図1はピット幅一定の時、回折効果と複屈折膜による位相差の効果の両方を考慮した光検出器出力をピット深さに対してとったグラフである。
【0074】
〔3.3〕回折波の検出
一般に光ディスクの光信号検出系は、対物レンズの開口内に放射された回折光を集光し、その強度をフォトディテクタで電気信号に変換する。
【0075】
いま、図11に示すように、参照対物レンズ41の開口数をNAとすると、光検出器42の出力特性に関与するのは対物レンズ41の光軸から±sin-1(NA)以内の角度に入射する成分のみである。実際に、光検出器I1 ,I2 に入射する光電力は、次式(3.5),(3.6)で表される。
【0076】
【数3】
【0077】
複屈折膜により2つの直交偏光成分が受けた位相差を干渉計を用いて検出するときの、ピットの深さに対する光強度を解析した。解析結果は、前記した図1に示されている。なお解析結果は、ピット幅l=0.6μm(現在、CD等で使用されているピット幅)複屈折率Δn=0.1で行い、波長で規格化した。
【0078】
この結果から、対物レンズ41のNAが小さいと回折による影響が大きいが、NAが0.8のレンズを使用することにより、単調減少の特性が得られ、多値記録が可能であることが分かる。また、この解析結果から読み取り誤差に一番強いと思われる深さ0.15,0.60,0.85μmに設定して基板を製作した。
【0079】
〔3.4〕複屈折のないピットでの回折パターン
複屈折のないピットでの回折パターンを計算して、NA=0.8のレンズを用いて集光した場合の光検出器への入射光電力を計算した。その結果を、図12に示す。この図12において、横軸はピット深さ(μm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0080】
その結果から、複屈折なしのピットにおいては、深さにより強度分布がそれほど変化しないことが分かった。つまり、複屈折の効果は、複屈折をもつピットと複屈折をもたないピットを測定して比較すると分かる。
【0081】
〔4〕干渉計による偏光状態の測定
〔4.1〕干渉計による偏光状態の測定(1)
マッハツェンダー干渉計により、複屈折膜の測定を行った。
【0082】
最初に入射面に複屈折膜を設置せず、全反射ミラーを置いて検出器側で干渉縞が観測できることを確認した。
【0083】
次に、ウエッジ基板で光路長を変化させ、干渉縞の移動を確認した。
【0084】
次に、複屈折膜を設置して直交偏光間位相差を測定した。その際、完成した複屈折膜の片側の面にアルミニウムを蒸着した。
【0085】
アルミニウムを蒸着した複屈折膜をSi基板に張り付けて、測定を行った。
【0086】
まず、測定に際して、片側の光路(1/2波長板側)のみに光を通し、PBSからの出射光をビームエクスパンダーを通して、レンズに入射させ、光検出器によりガウス分布を測定する。
【0087】
この時、測定したガウス分布のスポットサイズが0.633μm程度になるようビームエクスパンダーを調整する。
【0088】
次に、被測定物を設置して、光検出器によりパワーの強度変化を確認(ピットに光が入射すると、強度変化が生じる)する。そこで、2つの光路を干渉させて、光検出器での強度が最大になるようにウエッジ基板により調整する。そして、ピットの存在する付近をスキャン〔手動式マイクロメータ(分解能1μm)により〕させ干渉光の強弱を測定する。その結果を図13、図14に示す。これらの図13、図14において、横軸は位置(mm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。図15はピットパターンのモデルとして用いた溝パターンを示している。なお、この図15において、黒色の矢印は、走査方向を示している。
【0089】
この結果と解析結果を比較すると、ほぼ一致していることが分かる。また、複屈折を持たないピットにおいても光検出器での強度変化が生ずるため、この測定結果が複屈折による効果であるかどうかを次の方法により確認した。
【0090】
ウエッジ基板を用いて、光検出器での強度を最大にして測定を始めたが、複屈折による効果を確認するため、光検出器での強度を最大の約70%、60%(位相をずらしていることに相当する)に設定して測定を開始した。
【0091】
位相と干渉後の強度分布のグラフを図16に示す。この図16において、横軸は位相差、縦軸は正規化されたパワーである。また、それぞれの測定結果を、図17と図18に示す。これらの図17、図18において、横軸は位置(mm)、縦軸は正規化されたパワーを示している。
【0092】
この結果から、位相変化により光検出器出力が変化していることが確認された。
【0093】
しかしながら、この測定方法では、ピット幅0.6μmと比較して、スキャンのステップ幅が1μmと大きく、分解能が不十分である。
【0094】
そこで、D80ステッピングモーターコントローラ(駿河精機製)を用いての40nmステップ幅のスキャンで再度測定を行うことにした。
【0095】
〔4.2〕スポットサイズの測定
複屈折膜への入射光のスポットサイズは、ピットでの回折現象がスポットサイズに大きく依存するため、設計値通りの0.6μmに設定しなければならない。そこで、光軸合わせおよび高さ調整などを行い、複屈折膜への入射光のスポットサイズの測定を以下の方法により行った。
【0096】
複屈折膜への入射光Ψ(x′,y′)を知るには、スポットサイズwを測定しなければならない。測定方法を、図19に示す。レンズから十分な距離Lだけ離れた所の光強度分布を光検出器により順次測定する。この結果から、スポットサイズWを知ることができる。
【0097】
また、レンズで集光されたビームのビームウェストでのスポットサイズwと遠視野像でのスポットサイズW(空間周波数軸上でのスポットサイズ)とには、次なる関係がある。
【0098】
w=2/W (4.1)
これにより実際に複屈折膜への入射光のスポットサイズは、w=1.14μmと求められた。この値は、本来複屈折膜へ入射すべきスポットサイズ0.633μmに比べて、2倍ほど大きくなっている。しかしながら、測定で使用しているビームエクスパンダーには限界があり、これが最小のスポットである。これからの測定では、このビームを使用することにした。
【0099】
〔4.2.1〕集光用レンズに要求されるNAの値
フレネル数をN、測定領域までの距離をZ、ビームのスポットサイズをwとすると次なる関係がある。
【0100】
N=w2 /λZ …(4.2)
上式に、w=1μm、λ=0.633μm、フランホーファ領域になるための条件N=1を代入するとZ=0.79μmとなり、この距離以上離してスポットサイズの測定をする必要がある。また、ピットに入射される光のスポットサイズwを0.633μmにするにはどれぐらいのビーム径の光をレンズに入射させるべきかを計算した。
【0101】
次に、レンズのNA(開口数)には、次なる関係がある。
【0102】
NA=sinθ=λ/(πw0 ) …(4.3)
w0 =λ/2よって、NA=sinθ=2/π …(4.4)
また、図20より次なる関係がある。
【0103】
NAmax =sinθmax =D/√[L2 +(D)2 ] …(4.5)
NA=sinθ=W/√[L2 +W2 ] …(4.6)
本測定で使用したレンズ51は、NA=0.8,2D=6mmであるので上記式(4.5)に代入すると、L=2.25mmとなる。次に、上記式(4.6)に先程述べたL=2.25mmを代入して、入射ビームのスポットサイズWB を求めると2WB =3.7mmとなり、レンズ51へ入射させるべきビーム径が求められた。そこで、レンズ51へ入射させるベきビーム径を得るため、ビームエクスパンダーによりビーム径を大きくしてレンズ51に入射させた。
【0104】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0105】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0106】
(A)光の位相の検出に利用するもので、複屈折膜を用いて、多段階の深さのピットを設け、その多値情報を得ることができる。
【0107】
(B)その多値情報は、複屈折膜に直交主軸に対し45°の直線偏光又は円偏光を入射し、膜面からの反射光を干渉計でもって、ピットからの反射光の直交する偏光間の位相差をアナログ的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すピットの深さに対する干渉計出力の計算値を示す図である。
【図2】ピット幅W:0.6μm,深さ0.44μmのピット製作用基板の断面図である。
【図3】直線偏光の直交主軸分解図である。
【図4】位相差Δに対する偏光状態の変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例を示す複屈折膜基板での反射を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例を示す測定用干渉計の構成図である。
【図7】本発明の実施例を示す複屈折膜の製作工程図である。
【図8】本発明の実施例を示す複屈折膜製作用の基板の製作工程図である。
【図9】光ビームの空間内伝搬の模式図である。
【図10】解析モデルを示す図である。
【図11】光検出器での検出を示す図である。
【図12】複屈折がないピットでの回折による光検出器への入射光電力を示す図である。
【図13】干渉計による偏光状態の測定結果(I)を示す図である。
【図14】干渉計による偏光状態の測定結果(II)を示す図である。
【図15】ピットパターンのモデルとして用いた溝パターンを示す図である。
【図16】位相変化と干渉後の強度分布の関係を示す図である。
【図17】測定結果(70%)を示す図である。
【図18】測定結果(60%)を示す図である。
【図19】スポットサイズの測定方法を示す図である。
【図20】レンズに入射させるべきビーム径の説明図である。
【符号の説明】
1 複屈折記録膜を保持するための基板
2 複屈折記録膜
3 直線偏光
4 楕円偏光
11 レーザ光源〔He−Neレーザ又は半導体レーザ〕
12 ハーフミラー
13 ウエッジ基板
14,15 全反射ミラー
16 1/2波長板
17 偏光ビームスプリッター(PBS)
18 光記録媒体(光ディスク)
19 光検出器
21,31 Siウエハ
22,35 ピットパターンを含むSiO2 膜
23,23′ ポリイミド膜
24 金属フレーム
25 Al膜
32 SiO2 膜
33 Cr膜
34 レジスト膜
41 対物レンズ
42 光検出器
51 レンズ
Claims (4)
- (a)多段階の深さのピットを有する複屈折記録膜と、
(b)前記多段階の深さのピット情報を直交偏光間の位相差として読み出すための読み出し手段を具備することを特徴とする高密度光メモリシステム。 - 請求項1記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記複屈折記録膜は複屈折率が0.1以上の材料からなることを特徴とする高密度光メモリシステム。
- 請求項1記載の高密度光メモリシステムにおいて、前記読み出し手段は、前記複屈折記録膜に直交主軸に対し45°の直線偏光又は円偏光を入射し、膜面からの反射光を干渉計でもって、光路間における直交する偏光主軸間の位相差をアナログ的に検出することを特徴とする高密度光メモリシステム。
- 請求項1記載の高密度光メモリシステムにおいて、読み出し光学系の集光レンズの開口数NAを0.8以上とすることを特徴とする高密度光メモリシステム。
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|---|---|---|---|
| JP27366699A JP3789692B2 (ja) | 1999-09-28 | 1999-09-28 | 高密度光メモリシステム |
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| JP27366699A JP3789692B2 (ja) | 1999-09-28 | 1999-09-28 | 高密度光メモリシステム |
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| JP2001101664A JP2001101664A (ja) | 2001-04-13 |
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