JP3797582B2 - 円筒体内面のめっき方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、兵器砲の砲身や反応筒などのような円筒体の内面にめっきを施す方法に関するもので、特に、その軸線方向に膜厚が変化するめっき層を形成することが求められる円筒体内面のめっき方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
兵器砲身においては、その寿命を向上させるために、内面に保護層が設けられる。その場合の保護層としては、電解によって形成されるクロム層が最も適していることが知られている。そして、特開平7−167590号公報には、大口径(例えば口径155mm)の兵器砲身において、熱的負荷から保護するために、熱的に大きな負荷を受ける装填室及びその装填室に連なる口径部の領域に、めっき処理によって厚さ100〜200μmの厚い電解クロム層を形成する方法が開示されている。その方法は、電解クロム層を設けるべき領域に相当する長さの電極を砲身の軸心部に配置し、それら電極及び砲身をめっき液中に浸漬して、それらの間に通電することにより砲身内面の目標領域にめっきをする、というものである。その場合のめっき厚さは均一とされている。
【0003】
ところで、兵器砲身の場合には、上述のような熱的負荷のほかにも、弾丸の弾帯との摺動摩擦が加わり、さらに使用環境による腐食も生ずるので、それらからの保護のために、その内面の全域にわたって保護層を設けることが求められる。しかしながら、砲身内面の全域にわたって厚さ100〜200μmの厚いクロムめっき膜を設けると、そのめっき膜は、砲身の砲口側の前部領域において機械的衝撃力によりしばしば剥離し、破壊される。そして、その後、その箇所からガス抜けや乱流が生じ、砲身の腐食や弾帯の摩耗が加速されてしまう。
一方、実験の結果、めっき膜の剥離に対する抵抗は、膜厚を薄くした方が大きくなることが確かめられている。
そこで、砲身の中でも特に大きな熱的負荷を受ける部分、すなわち装填室及びその装填室に隣接する口径部領域のクロム層は厚く、機械的な衝撃力を受ける砲口側の前部領域のクロム層は薄くする、ということが行われている。
【0004】
そのように砲身などの円筒体の内面にその軸線方向の位置によって膜厚の異なるめっき層を形成する場合、従来は、まず、砲身の全長に相当する長さの電極を用いて砲身内面の全域を薄くめっきし、次いで、厚いめっき層を必要とする部位に対応する長さの電極を用いてその部位の内面を厚くめっきするようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、そのような方法では、めっき液に二度浸漬されることになるので、最初のめっき時に、他の部位がめっき液によって腐食されることのないようにするために、めっきしようとする部位以外をラッカーなどによって覆うことが必要となる。また、めっきされる部位とされない部位との境界に電流が集中し、その境界領域にめっき金属が異常析出するので、めっき後、機械加工などによって平坦化することが必要となる。さらに、最初に形成されためっき層の上に重ねてめっき層が形成されるので、その重ね合わせ面がしばしば剥離するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、一度のめっき処理によって円筒体の内面に軸線方向に膜厚が変化するめっき層を形成することのできる円筒体内面のめっき方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明では、被めっき体である円筒体の内面とその軸心部に配置されるめっき処理用の電極の外周面との間に位置するめっき液の温度を、あるいは温度及び流速を、軸線方向に沿って変化させ、その状態でめっき処理するようにしている。
そのようにめっき液の温度を、あるいは温度及び流速を、軸線方向に沿って変化させるためには、めっき処理用の電極として、内部にめっき液を流通させる軸線方向の流通孔と、その流通孔を外周面に連通させる半径方向の吐出孔とを有する孔付き電極を用い、外部からその孔付き電極の流通孔にめっき液を供給するようにすればよい。その場合、外部から温度の異なるめっき液を供給するようにすれば、吐出孔より下流側におけるめっき液の温度を、それより上流側におけるめっき液の温度とは異ならせることができる。また、外部から供給されるめっき液をポンプなどによって圧送するようにすれば、半径方向の吐出孔より下流側に流速の大きい流れが形成される。
【0008】
【作用】
同じ電流密度では、めっき液の温度が上昇すると、電着速度、すなわちめっき析出速度が低下する。したがって、上述のように軸線方向に沿ってめっき液の温度を変化させるようにすると、軸線方向に膜厚が変化するめっき層が形成される。
また、めっき析出面の電流密度が増すと、電着速度も増大する。そして、その電流密度は、めっき液の流速によって変化することが知られている。したがって、上述のように被めっき体である円筒体とその円筒体にめっき処理を施す電極との間に位置するめっき液の温度及び流速を軸線方向に沿って変化させると、そのときのめっき処理により円筒体の内 面に形成されるめっき層の膜厚が軸線方向において変化することになる。
このようにして、めっき液の温度を、あるいは温度及び流速を、軸線方向に沿って異ならせることにより、円筒体の内面に軸線方向に膜厚が変化するめっき層を一度のめっき処理によって形成することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図中、図1は本発明による円筒体内面のめっき方法の一例を示す概略断面図である。
この図から明らかなように、めっきを施そうとする円筒体1の内面2には、先端側(図で左端側)に小径部3が、また、基端側(図で右端側)に大径部4がそれぞれ設けられている。その小径部3と大径部4との間は、めっき処理時にその部分に電流が集中することのないように、滑らかにつながれている。小径部3は、その内面に薄いめっき層5を形成する部分であり、大径部4は、その内面に厚いめっき層6を形成する部分である。
【0010】
円筒体1の内面2に、そのように軸線方向に厚さが変化するめっき層5,6を形成しようとするときには、円筒体1の全長よりもやや長い図示されているような孔付き電極7を用いる。その電極7には、先端側の中心部に、軸線方向に延びる流通孔8が設けられている。その流通孔8の長さは、薄いめっき層5を形成する部位の長さ、すなわち円筒体1の小径部3の長さよりもやや長い長さとされている。そして、その流通孔8は、基端側の底部において、半径方向に形成された複数の吐出孔9,9,…により、電極7の外周面と連通するようにされている。その吐出孔9は、電極7の基端側に向かってわずかに傾斜するものとされている。
【0011】
そのように形成された孔付き電極7を、その吐出孔9が円筒体1の小径部3と大径部4との間の境界部に対向するようにして円筒体1の軸心部に配置し、それらをめっき槽10内のめっき液中に浸漬する。その場合、円筒体1はあらかじめ脱脂しておく。また、めっき槽10の外部には、ポンプ11と、めっき槽10内のめっき液と同じめっき液を貯えた温度調節装置付きタンク12とを設け、そのポンプ11の吸入口とタンク12内とをパイプ13によって接続しておく。通常どおり、そのめっき槽10の外部には、めっき用電源装置である直流電源14も設けられている。
【0012】
そして、めっき液中に浸漬した電極7の流通孔8の先端とポンプ11の吐出口とをパイプ15によって接続し、ポンプ11を作動させる。すると、タンク12内のめっき液が電極7の流通孔8に圧送され、吐出口9,9,…から噴出する。上述のように、その吐出口9,9,…は円筒体1の基端側に向かって傾斜している。したがって、吐出口9,9,…から噴出しためっき液は、円筒体1の大径部4内周面と電極7の外周面との間を基端側に向かって流れる。こうして、電極7の吐出孔9より下流側に、流速の大きいめっき液の流れが形成される。そのときには、その流れに伴って、円筒体1の小径部3側に位置するめっき液にも基端側に向かう流れが生ずるが、その流速は小さい。
【0013】
その状態で、導線16を介して電極7を直流電源14の正極に接続するとともに、導線17を介して円筒体1をその電源14の負極に接続し、それら電極7と円筒体1との間に通電する。すると、めっき液中の金属イオンが円筒体1の内面2に析出する。したがって、めっき液として例えばクロムめっき浴の基本をなすサージェント液を用いれば、そのめっき液中のクロムイオンが析出して、円筒体1の内面2に電解クロム層が形成される。
【0014】
その場合、上述のようにして円筒体1の大径部4の部位には小径部3側よりも流速の大きいめっき液の流れが形成されている。そのようにめっき液が流れるときの電流密度は、層流の場合は流速vの平方根に比例し、乱流の場合はv2/3〜vに比例することが知られている(川崎元雄ら著「実用電気めっき」、日刊工業新聞社、1980年発行、p.177)。したがって、円筒体1の内面2と電極7との間に生ずる電流密度は、大径部4における電流密度の方が小径部3における電流密度よりも大きくなる。すなわち、円筒体1の小径部3は小さい電流密度でめっきされ、大径部4は大きい電流密度でめっきされることになる。そして、図2から明らかなように、クロムめっきの普通浴における電流密度と電着速度(めっき速度)との関係は、同じめっき浴温度では、電流密度が大きいほどめっき速度も大きくなる、という関係にある。したがって、その電流密度の差により、円筒体1の小径部3の内面には薄いめっき層5が形成され、大径部4の内面には厚いめっき層6が形成される。
【0015】
このように、孔付き電極7を用いてその電極7の中間部からめっき液を噴出させ、めっき液の流速を円筒体1の軸線方向に沿って変化させることにより、円筒体1の内面2に膜厚の異なるめっき層5,6を一度のめっき処理で形成することが可能となる。そして、その場合、円筒体1の内面2に設ける小径部3と大径部4との径をあらかじめ適切に設定しておけば、それらのめっき層5,6の内面を均一の径とすることができる。
【0016】
また、タンク12に設けられている温度調節装置を用いてそのタンク12内のめっき液の温度をめっき槽10内のめっき液の温度よりも低くしておき、その低温めっき液を電極7の吐出孔9から吐出させるようにすれば、円筒体1の大径部4側に位置するめっき液の温度は小径部3側に位置するめっき液の温度よりも低くなる。
そして、図2に示されているように、同じ電流密度では、めっき液の温度が低いほどめっき速度は大きくなる。したがって、上述のようにして円筒体1の小径部3側に位置するめっき液の温度と大径部4側に位置するめっき液の温度とを異ならせれば、めっき液温度の高い部位である円筒体1の小径部3の内面には薄いめっき層5が形成され、めっき液温度の低い部位である大径部4の内面には厚いめっき層6が形成される。
【0017】
このような原理からして、めっき液の温度及び流速のいずれか一方に差を持たせるのみでも、薄いめっき層5と厚いめっき層6とを同時に形成することができる。そして、主としてめっき液の温度を異ならせることとすれば、ポンプ11としては電極7の吐出孔9からめっき液を供給することができるものでありさえすればよいことになるので、小型のものを用いることが可能となる。しかしながら、特にめっき層5,6の膜厚比を大きくすることが求められる場合には、それぞれの部位におけるめっき液の温度及び流速の両方を異ならせるようにすることが望ましい。上述の例のように、孔付き電極7を用い、ポンプ11によりその電極7の流通孔8に低温のめっき液を圧送して吐出孔9,9,…から噴出させるようにすれば、めっき液の温度及び流速の両方を円筒体1の軸線方向に沿って変化させることも容易であり、膜厚比の大きいめっき層5,6を一度のめっき処理によって形成することが可能となる。
【0018】
なお、上述の実施形態においては、円筒体1の軸線方向に2段階に膜厚が変化するめっき層5,6を形成する場合について説明したが、電極7に長さの異なる複数の流通孔8とそれらの流通孔8を軸線方向の異なる位置においてそれぞれ電極7の外周面に連通させる吐出孔9,9,…とを設け、それらの流通孔8にそれぞれ温度の異なるめっき液を圧送するようにすれば、その膜厚を更に多段に変化させるようにすることもできる。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、軸線方向に膜厚が変化するめっき層を一度のめっき処理によって形成することが可能となるので、従来のような最初のめっき処理時における防食作業やめっき処理後の機械加工などが不要となり、その処理作業を大幅に簡易化することができる。また、めっき層を重ね合わせることなく、そのように膜厚の異なるめっき層を形成することができるので、剥離に極めて強いめっき層とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による円筒体内面のめっき方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】 そのめっき方法の原理を説明するための、電流密度に応じためっき液温度とめっき速度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 円筒体
2 円筒体内面
5 薄いめっき層
6 厚いめっき層
7 孔付き電極
8 流通孔
9 吐出孔
10 めっき槽
11 ポンプ
12 温度調節装置付きタンク
14 直流電源(めっき用電源装置)
Claims (4)
- 円筒体の軸心部にその円筒体の軸線方向に延びる電極を配置し、その電極と前記円筒体とをめっき液中に浸漬して、それら電極及び円筒体間に通電することにより、前記円筒体の内面にめっきを施す方法において;
前記円筒体の内面と前記電極の外周面との間に位置するめっき液の温度を、軸線方向に沿って変化させ、その状態でめっき処理することにより、一度のめっき処理によって前記円筒体の内面に軸線方向に膜厚が変化するめっき層を形成することを特徴とする、
円筒体内面のめっき方法。 - 前記電極として、内部にめっき液を流通させる軸線方向の流通孔と、その流通孔を外周面に連通させる半径方向の吐出孔とを有する孔付き電極を用い、外部からその孔付き電極の流通孔に温度の異なるめっき液を供給することにより、前記半径方向の吐出孔より下流側におけるめっき液の温度を変化させることを特徴とする、
請求項1記載の円筒体内面のめっき方法。 - 円筒体の軸心部にその円筒体の軸線方向に延びる電極を配置し、その電極と前記円筒体とをめっき液中に浸漬して、それら電極及び円筒体間に通電することにより、前記円筒体の内面にめっきを施す方法において;
前記円筒体の内面と前記電極の外周面との間に位置するめっき液に、軸線方向に沿い温度及び流速が変化する流れを形成し、その状態でめっき処理することにより、一度のめっき処理によって前記円筒体の内面に軸線方向に膜厚が変化するめっき層を形成することを特徴とする、
円筒体内面のめっき方法。 - 前記電極として、内部にめっき液を流通させる軸線方向の流通孔と、その流通孔を外周面に連通させる半径方向の吐出孔とを有する孔付き電極を用い、外部からその孔付き電極の流通孔に温度の低いめっき液を圧送することにより、前記半径方向の吐出孔より下流側に、温度が低く流速の大きいめっき液の流れを形成することを特徴とする、
請求項3記載の円筒体内面のめっき方法。
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