JP3798066B2 - コレステロール強化油脂およびその調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コレステロール強化油脂及びその調製方法に関するものである。本発明によって調製された油脂は、コレステロールのほかDHA(ドコサヘキサエン酸)も強化されており、しかも風味、食感にもすぐれているため、それ自体で食用油脂として使用できることはもちろんのこと、各種飲食品に添加して油脂成分のほかコレステロール、DHAの強化に使用することができる。
飲食品としては、乳幼児、老人、病気中ないし病気予後の患者用の各種飲料、食品のほか、健常者の通常のないしは保健用の各種飲料、食品が広く包含される。本発明は、特に乳幼児用の調製乳に有用である。ここでいう調製乳とは、粉末状に調製したものおよびそれを溶解して液状にしたものもしくは初めから液状に調製したものをいう。
【0002】
【従来の技術】
コレステロールは成人病の原因物質となるため、近年、食品中から除く努力がなされている。しかし、本来、コレステロールは生体に必要不可欠な栄養素であり、細胞膜の構成成分やホルモン・胆汁酸の原料として生体内で利用されている。成人の場合でも、過剰摂取が生体に対して悪影響を及ぼしているのであり、適正なレベルのコレステロール摂取は必要である。
【0003】
乳児の場合、脳や神経系の発達が著しいために、コレステロールの必要性は成人より高いと考えられる。乳児にとっては母乳が唯一の栄養素補給源である。
母乳は大量のコレステロールを含むため、乳児がコレステロール不足になることを防止している。ちなみに、母乳中のコレステロール含有量は通常の場合、12.6±4.8mg/100ml(Picciano他:Clin.Pediatr.,17,359(1978))、日本人母乳の場合、11.7±1.95mg/100ml(米久保他、小児保健研究、46,349(1987))である。
【0004】
これに対して、従来の乳児用調製乳中には、3〜4mg/100mlのコレステロールしか含まれておらず、その含有量は母乳の約1/3以下である。乳児用調製乳中の油脂やタンパク質の組成を変えることでコレステロール含量を少しは高めることはできる。しかし、コレステロール含量を母乳レベルまで高めるには、これだけでは困難である。
油脂に置換コレステロールを添加することによりコレステロールの強化が一応はできるが、市販コレステロールは主としてラノリン由来であった。
魚油のコレステロールを濃縮して利用する方法としては、特開昭61−261398号公報に炭酸ガスなどの超臨界ガスを用いる方法が記載されている。
また、近年、母乳に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)を強化するため、乳児用調製乳に通常の分子蒸留処理した精製魚油を添加している。日本人母乳中には、DHAが脂肪酸組成として0.63±0.24%含まれている(米久保他、小児保健研究、46,349(1987))。
しかしながら、コレステロールのほかDHAも強化でき、しかも風味、外観、物性等もそこなうことのない、安全性の高い油脂は、従来知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術の現状に鑑みてなされたものであって、上記した従来技術にあって油脂に直接コレステロールを添加する方法は、市販コレステロールが主としてラノリン由来であることから、安全性を考慮しなければならず、また、これを溶解するのに高温を必要とし、結果的に油脂の劣化を起こす欠点があった。
魚油のコレステロールを濃縮して利用する方法は、超臨界ガスを用いる方法であるため、製造工程の操作が煩雑で、また、コストが高い欠点があった。
また、分子蒸留を用いる方法は、通常230℃〜260℃で分子蒸留処理するために、コレステロールも除去されてしまう。
したがって、本発明の目的は、これらの問題点を解決し、DHAと同時にコレステロールも強化できる油脂であって、しかも、風味、品質等を変化させることなく各種飲食品に対して添加使用することのできる新規な油脂を新たに提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、特に工業的な面から分子蒸留法に着目し、常法にしたがって魚油を分子蒸留したところ、上記のようにDHA含量は保持されるもののコレステロール含量は激減してしまい、コレステロールとDHAとを同時に強化するという所期の目的は達成されない。そこで、技術常識をあえて無視して魚油を低温で分子蒸留したところ、コレステロール含量及びDHA含量が保持されるという有用新知見は得られたが、今度は風味が低下してしまって食用には供せないものとなり、やはり所期の目的は達成されない。
【0007】
このようにコレステロール含量及びDHA含量を保持することと、風味の良好な油脂を調製することとは、本来両立し得ないものであるが、本発明はあえてこの困難な問題に挑戦し、両者を両立させるだけでなく、更に飲食品の面から風味、食感、外観等についても満足できる、従来未知の全く新規な油脂を、しかも工業的に製造するシステムを開発するという新規技術課題を新たに設定した。
【0008】
上記のように、本来併立させることがきわめて困難な上記した3つの要件を同時に満足させるため鋭意研究を行い、適用できないとされていた魚油の低温分子蒸留に再度着目し、従来の技術常識にあえて対抗して各種処理条件を徹底的に検討した結果、全く予期せざることに、特定の低温域で分子蒸留を行うことにより、DHA含量の保持はもとより、コレステロール含量も保持されると同時に、風味も良好になるという有用新知見を得た。
そして更に検討した結果、分別操作により、DHAと同時にコレステロールも濃縮されることも新たに見出した。
そのうえ、これらの処理によって油脂の風味が変化したり劣化したりすることがないので、食用油脂として単独で又は添加物ないし強化剤としても自由且つ広範に使用できるという有用新知見も得た。
すなわち、これらの処理によって従来併立せしめることができなかった3つの要件をすべて同時に満足しうる油脂の創製に成功し、本発明の完成に至ったものである。
【0009】
本発明の基本的技術思想は次のとおりである。
本発明の第1は魚油を、130℃〜200℃で分子蒸留処理することを特徴とするコレステロール強化油脂および調製方法である。
本発明の第2は、分別操作によりコレステロールおよびDHAをさらに強化した請求項1記載のコレステロール強化油脂および調製方法である。
本発明の第3は、本発明1および2で得られたコレステロール強化油脂を配合してなる乳児用調製乳等の各種飲食品である。以下本発明を具体的に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる魚油としては、一般に使用されている魚油でよく、例えば、マグロ油、カツオ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、スケトウダラ油等が使用され、また、これらの混合油または濃縮油を用いることができるが、乳児用調製乳へはDHA含有量が高いマグロ油やカツオ油が好ましい。
【0011】
本発明に用いる分子蒸留は、従来の条件230℃〜260℃より低温で行うことが必要で、130℃〜200℃である。好ましくは、140℃〜180℃である。130℃未満では不純物が除去できず風味が悪く、200℃を超えるとコレステロールの含量が急に減少する。
また、真空度は一般の分子蒸留の条件に準じ、具体的には1×10-3〜1×10-2mmHgであることが好ましい。この範囲未満では不純物が除去できず風味が悪く、超えるとコレステロールの含量が減少する。
本発明にしたがって魚油を分別処理するには、分別処理の常法が使用され、ドライ分別及び溶剤分別のいずれの方法も広く使用されるが、さらに成分含量の高い油脂を得る場合には、より濃縮効果の高い溶剤分別が好適である。
【0012】
このようにして得た本発明に係る油脂は、コレステロール、DHAの含量が高いだけでなく、風味、食感、外観等においていささかも問題点はなく、それ自体食用に供することができることはもちろんのこと、各種の飲料、食品に自由に配合して、コレステロール、DHAの強化に使用することができる。
【0013】
本発明に係る油脂は、例えば、乳幼児用調製乳その他乳製品に添加使用して、コレステロール、DHA強化製品を製造することができ、健常者はもとより、乳幼児、病弱者、老人等の飲食品として有利に利用できる。
【0014】
本発明に係る油脂を用いて調製乳を調製するには、例えば次のようにして行えばよい。
すなわち、脱脂乳、牛乳カゼイン、牛乳脱塩ホエイタンパク質、乳糖、オリゴ糖、ショ糖およびデキストリンを温湯に溶解混合後、ビタミン・ミネラル類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、L−アスコルビン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸第一鉄もしくはピロリン酸第二鉄、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムもしくは塩化マグネシウム、硫酸銅、硫酸亜鉛など)を溶解した水溶液を加え、水相部とする。
この溶液に、バターオイル、モノグリセリド、大豆レシチン、ビタミンA、D、Eなどを添加したコレステロール強化油脂を加え、ホモミキサーにて混合し、ホモジナイザーで均質化する。得られた乳化液を常法により殺菌、濃縮、噴霧乾燥して調製粉乳とする。この調製粉乳を温湯に溶解し約6〜8倍に希釈して調乳にする。
【0015】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0016】
【実施例1】
マグロ頭部およびカツオ頭部より煮取法により採取した原油を通常の条件で精製し、マグロ精製油およびカツオ精製油を得た。この油脂のDHA含量およびコレステロール含量を表1に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
このマグロ精製油20Kgを攪拌しながら−20℃まで冷却し、24時間後に吸引濾過し、マグロ分別液体部を9.51Kg得た。また、カツオ精製油30Kgをアセトン300リットルに溶解し、攪拌しながら−40℃まで冷却し、24時間後に吸引濾過し、カツオ分別液体部を10.49Kg得た。この油脂のDHA含量およびコレステロール含量を表2に示した。
【0019】
【表2】
【0020】
得られたマグロ精製油4Kgを日本真空製分子蒸留装置(CEH−300BII加熱温度170℃ 流量:20リットル/時間 真空度5×10-3mmHgパス回数2回)にかけ、コレステロール強化油脂3.80Kgを得た。この油脂の品質を表3に示した。風味の評価は10人のパネラーによる官能テストによった。すなわち、油脂を20ミリリットルのビーカーにとり口に含んで風味の官能テストを行った。10人中9人以上が風味良好としたものを良好とした。
【0021】
【実施例2】
実施例1で得られたカツオ分別液体部のうち4Kgを日本真空製分子蒸留装置(CEH−300BII 加熱温度150℃ 流量:20リットル/時間 真空度5×10-3mmHgパス回数2回)にかけ、コレステロール強化油脂3.83Kgを得た。この油脂の品質を表3に示した。
【0022】
【比較例1】
実施例1で得られたマグロ精製油4Kgを用いて加熱温度170℃を100℃に変えた以外は実施例1に準じて分子蒸留処理し、コレステロール強化油脂3.87Kgを得た。この油脂はこの油脂の品質を表3に示した。
【0023】
【比較例2】
実施例1で得られたカツオ分別液体部4Kgを用いて加熱温度260℃に変えた以外は実施例2に準じて分子蒸留処理し、コレステロール強化油脂3.75Kgを得た。この油脂の品質を表3に示した。
【0024】
【表3】
【0025】
以上の結果より、低温で分子蒸留した魚油は風味が悪く、高温で分子蒸留した魚油はコレステロール含量が低いことがわかる。よって、本発明の分子蒸留条件の範囲の温度で処理した油脂はコレステロール含量が高く、かつ不純物が除去され風味が良いことが確認された。
【0026】
【実施例3】
実施例1で調製したコレステロール強化油脂を用いて、表4の配合割合でラード、大豆油、パーム核油、パームオレインおよびコレステロール強化油脂を40℃で融解混合し母乳脂代替脂を調製した。この代替脂のコレステロール含量を表4に示した。
【0027】
【実施例4】
実施例2で調製したコレステロール強化油脂を用いて、表4の配合で実施例3に準じて母乳脂代替脂を調製した。この代替脂のコレステロール含量を表4に示した。
【0028】
【表4】
【0029】
【比較例3】
比較例1で調製したコレステロール強化油脂を用いて、表4の配合で母乳脂代替脂を調製した。この代替脂のコレステロール含量を表4に示した。
【0030】
【比較例4】
比較例2で調製したコレステロール強化油脂を用いて、表4の配合で母乳脂代替脂を調製した。この代替脂のコレステロール含量を表4に示した。
表4より実施例3、4は比較例3、4より多くのコレステロールを含有し、かつ風味が優れていることが確認された。
【0031】
【実施例5、実施例6】
比較的多くのコレステロールを含有し、かつ風味が優れている実施例3、4における配合油を用いて乳児用調製粉乳を調製した。
所定量の脱脂乳、脱塩ホエイタンパク質、カゼイン、乳糖などの乳成分を溶解し、必要量のビタミン類、ミネラル類を添加する。この溶解液を清浄化後、殺菌、濃縮する。この濃縮液に対して実施例3もしくは実施例4の配合油の所定量を殺菌して加える。それぞれ実施例5もしくは実施例6に相当する。こうして調製した液を均質化後、噴霧乾燥して粉末状のものを得る。または、液状の状態で製品化した。
【0032】
実施例5では、表5に示されたように、コレステロール含量が配合油からの分と乳成分からの分を合わせて、粉末状で42mg/100g、液状で5、9mg/100mlのものが得られ、従来品の32mg/100g、4.5mg/100mlに比較して、1.3倍強、日本人レベルの1/2までに高めることが可能である。ドコサヘキサエン酸(DHA)含量を日本人の母乳レベル以上に高められる。
【0033】
実施例6では、表5に示されたように、コレステロール含量が配合油からの分と乳成分からの分を合わせて、粉末状で46mg/100g、液状で6.4mg/100mlのものが得られ、実施例5と同様、従来品の32mg/100g、4.5mg/100mlに比較して1.4倍強、日本人レベルの1/2強までに高めることが可能である。また、ドコサヘキサエン酸(DHA)含量を日本人の母乳レベル以上に高められる。
【0034】
【表5】
【0035】
実施例5もしくは実施例6の乳児用調製粉乳または液状にしたものを各20名の健康な正常乳児に与えて哺育したとき、母乳栄養児に近い血中コレステロールレベル、および母乳栄養児以上のリン脂質中のDHAレベルを得ることができた。その結果を表6、表7に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0008】
【発明の効果】
本発明により、DHA含量が高く、不純物が除去され、風味良好なコレステロール強化油脂が得られる。
本発明に係るコレステロール強化油脂は、育児用調製粉乳その他乳製品を含む各種飲食品に添加使用して、これらのコレステロール、DHA強化を行うことができる。
Claims (1)
- 分別によりDHA及びコレステロールを強化した魚油を、140〜180℃で分子蒸留処理することを特徴とする、コレステロール及びDHA強化食用油脂の調製方法。
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