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JP3814005B2 - 耐酸性グルコースイソメラーゼによるグルコースからフラクトースへの変換方法 - Google Patents
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JP3814005B2 - 耐酸性グルコースイソメラーゼによるグルコースからフラクトースへの変換方法 - Google Patents

耐酸性グルコースイソメラーゼによるグルコースからフラクトースへの変換方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、pH4〜6の酸性下で、グルコースからフラクトースを酵素的に製造する方法を提供する。より詳細には、耐酸性グルコースイソメラーゼを酸性下で、かつ嫌気的条件下及び/又は還元剤の存在下でグルコースに作用させることを特徴とする、グルコースをフラクトースに変換する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フラクトースは天然に存在する糖の中で最も甘味の強い糖であり、甘味料として使用されている。フラクトースは、現在、澱粉を原料として製造されるグルコースをグルコースイソメラーゼで異性化して製造されており、一般に、異性化糖と呼ばれ、フラクトース42〜45%を含む液糖として市販されている。
【0003】
澱粉から異性化糖の製造において、α-アミラーゼによる澱粉の液化はpH6〜7で行われ、 グルコアミラーゼによる液化澱粉の糖化はpH4.5付近で行われ、 そして、 グルコースイソメラーゼによるグルコースの異性化はpH7〜8で行われている。糖はアルカリ性側で不安定で、分解して、 着色物質を生成したり、プシコース、ダイフラクトース、有機酸などの副産物を生成する。このため、酸性下、少なくともグルコアミラーゼの反応pH(pH4〜5)で使用できるグルコースイソメラーゼの開発が要望されてきた。
【0004】
しかしながら、これまでに知られている殆どのグルコースイソメラーゼは、最適pHが7〜8にあり、pH6以下では不安定で、pH5の酸性下では殆ど作用しない酵素であった[図1および図2の−●−は、市販されているストレプトマイセス・ルビジノサス(Streptomyces rubiginosus)のグルコースイソメラーゼのpH安定性と作用pHを示している]。
【0005】
一方、W. D. Cotterらは、USP-3,623,9538において、グルコースイソメラーゼによるグルコースの異性化反応を、pH6.5〜7.5で、亜硫酸イオンまたは亜硫酸水素イオンを存在させて行うことにより、反応時の着色が防止され、酵素も安定化されると記述している。
【0006】
しかしながら、ここで用いられているグルコースイソメラーゼは前記のストレプトマイセス・ルビジノサスの生産する酵素であり、上述したようにこの酵素はpH5では殆ど作用しない酵素である。
【0007】
また、酵素の有効利用と異性化糖生産を能率的に行うため、グルコースイソメラーゼを固定化酵素として、これをカラムに詰め、連続的に異性化糖を製造することも行われているが、これまでの異性化糖の製造はpH7〜8で反応が行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
発明者は、澱粉から異性化糖の製造をより経済的、かつ効率的に行うため、グルコアミラーゼと同じpHで作用するグルコースイソメラーゼを求めて自然界から微生物の検索を行ってきた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
その結果、本発明者は新たに土壌中より分離し、ストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)と同定した微生物がpH5付近においても効率的にグルコースをフラクトースに異性化する耐酸性のグルコースイソメラーゼを生産することを認め、特許を出願した(特願平3-59344)。
【0010】
しかし、更に鋭意研究を重ねた結果、前述したようなpH4〜6で安定な耐酸性のグルコースイソメラーゼは、酸性下、特にpH6以下で酸化失活しやすいこと、その失活は可逆的であり、嫌気的条件に保つことにより、活性が回復することを認めた。そして、これらの酵素を嫌気下で使用すれば、pH5においても、これまでの異性化糖製造の反応pH(pH7〜8)の活性と大差ない活性(80%程度)でグルコースをフラクトースに異性化できることを認め、本発明を完成した。更に、ストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)以外の菌株について酸性域での活性を示すことを指標として、土壌からスクリーニングすることにより、上記したような性質を示す耐酸性のグルコースイソメラーゼを得ることができる。本発明には、このようにして得られ、pH4〜6の酸性下で安定であるが、pH4〜6で可逆的に酸化失活する性質を有する酵素であれば使用することができる。
【0011】
例えば、本発明に使用できる酵素の1例として、上述したストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)由来のグルコースイソメーゼについてその詳細を記載する。本酵素は、pH4〜12の範囲で安定であるが、最適pHは7〜8にあり、pH5での活性は、pH7での活性の20%程度である(図2参照)。
【0012】
しかし、この活性の差の要因としては、特に酸性下で加速される可逆的酸化失活が含まれており、実際は、pH5.0においても、pH7.0での活性の70〜80%もあることがわかった。
【0013】
このような酸性下での可逆的失活は、pH6以下、特に、pH5.5以下の酸性側で著しく、pH6以上、特にpH7付近では殆どおこらないことを認めた(表1を参照)。
【0014】
また、この酸性下でおこる酸化失活は、該酵素を空気との接触を断つような嫌気的条件、例えば、反応液を、トルエンのような水に不溶の有機溶媒で重層し、空気との接触を断つと、基質であるグルコースあるいはこれから生成するフラクトースの還元力により次第に還元され活性を回復する。更に、適当な還元剤を存在させ、より嫌気的条件を保てば、より短時間に活性が回復する。従って、これを考慮して、グルコースの異性化反応を行えば、pH4〜6の酸性下でも効果的にグルコースをフラクトースに異性化できることがわかった。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0015】
即ち、本発明は、耐酸性グルコースイソメラーゼを酸性下で、かつ嫌気的条件下及び/又は還元剤の存在下でグルコースに作用させることを特徴とする、グルコースをフラクトースに変換する方法である。更に詳細には、pH4〜6の酸性下で安定であるが、pH4〜6で可逆的に酸化失活する性質を有する耐酸性グルコースイソメラーゼを、pH4〜6の酸性下、かつ嫌気的条件下及び/又は還元剤の存在下でグルコースと接触させることを特徴とするグルコースをフラクトースに変換する方法である。
【0016】
本発明でいう、pH4〜6の酸性下で安定な酵素とは、 図1および後述するように、本発明で使用できる酵素の一例として挙げたストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)由来のグルコースイソメーゼの性質「f)pH安定性」に記載しているように、グルコースイソメラーゼ液を室温(約25℃)で3時間インキュベート後、pH7に戻して活性を測定したとき、pH4〜7で活性の低下が殆ど認められない酵素をいう。
【0017】
そして、pH4〜6で可逆的に酸化失活する酵素とは、空気と接触するような好気的条件では、pH4〜6の酸性下で急速に活性が低下するが、嫌気的条件に保てば活性が可逆的に回復する酵素をいう。
【0018】
以下、本発明の内容を更に詳細に説明する。
例えば、本発明に使用できる、pH4〜6の酸性下で安定であるが、pH4〜6で可逆的に酸化失活する性質を有する耐酸性グルコースイソメラーゼの一例として、ストレプトマイセス・エスピー G−27(FERM P-12036)より生産されるグルコースイソメラーゼが挙げられる。次いで、本酵素の主な酵素化学的性質について記載する。
【0019】
a)作用:酸性下でD−グルコースをD−フラクトースに変換する。
【0020】
b)基質特異性:D−グルコースとD−フラクトースの相互変換を行う他、D−キシロース、L−アラビノースとD−リボースをそれぞれ対応するケトースに異性化する。しかしD−マンノース、D−ガラクトース、D−アラビノースなどには実質的に作用しない。
【0021】
c)作用pH:4〜8である。
【0022】
d)最適pH:7付近に認められるが、pH5付近でもよく作用し、約30%の活性を示す。
【0023】
e)最適温度:0.1Mグルコースを基質としpH8、10分反応での最適温度は85〜 87℃である。
【0024】
f)安定pH:0.1M緩衝液(酢酸又はリン酸緩衝液)の下で、室温(約25℃)で時間放置後、残存活性を測定した。その結果、pH4〜12の範囲で安定であった。
【0025】
g)熱安定性:酵素水溶液を各温度で加熱した結果、80℃、85℃では、30分間加熱しても失活は認められず、むしろ活性の増加が認められた。又、90℃、 10分間の加熱では約30%失活した。
【0026】
h)Km値:グルコースに対するKmは約0.083M、D−キシロースに対するKmは約 0.13Mで、本酵素はD−キシロースよりもD−グルコースに対してより親和性が大きい。
【0027】
i)賦活剤:Co2+、Mg2+、Mn2+などにより賦活される。その活性の強さは、5× 10-3MにおいてCoCl2を100%としたとき、MgSO4約42%、MnSO4約17%であった。
【0028】
j)阻害剤:5×10-3MのHgCl2、AgNO3、CuSO4、CaCl2などにより阻害された。
【0029】
k)精製法:硫酸アンモニウムによる分画、DEAE−セファロースカラムクロマトグラフィー及びセファデックスG−150ゲルろ過などにより電気泳動的に単一まで精製することができる。
【0030】
l)活性測定法:0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)、0.01M MgSO4及び0.2Mのグルコースを含む溶液0.5mlに、適量の酵素を加え、水で全量を1.0mlとし、 60℃で反応させる。そして生成したフラクトースをシステイン−カルバゾール法で定量する。この条件で、1分間に1マイクロモルのフラクトースを生成する酵素量を1単位とした。
【0031】
本酵素は、現在、工業的に広く使用されているストレプトマイセス・ルビジノサス(Streptomyces rubiginosus)のグルコースイソメラーゼ(以下、酵素Aという)〔Y. Takasaki, アグリカルチャル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.),33巻,1523頁(1969)〕及びストレプトマイセス・フェオクロモゲネス(Streptomyces phaeochromogenes)のグルコースイソメラーゼ(以下、酵素Bという)〔N.Tsumuraら,アグリカルチャル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.),29巻,1192頁(1965)〕に比べ、以下に記載する酵素的性質の差異が認められた。
【0032】
すなわち、
(1) 本酵素の最適pHは7付近にあるが、図1に示す通り、pH5以下でもよく作用する。一方、酵素Aの最適pHは8.5付近にあり、pH6における活性はpH8.5のときの約30%である。そして、pH5以下では不安定で実質的に作用しない。又、酵素Bの最適pHはよりアルカリ側のpH9.3〜9.5に認められており、そして同様にpH5以下では実質的に作用しない。
【0033】
(2) 本酵素の最適温度は85〜87℃にあり、酵素A及び酵素Bに比べ5〜7℃高い。
【0034】
(3) 本酵素は85℃で30分加熱しても失活が認められないが、酵素Aは80℃、10分の加熱で約30%失活し、酵素Bは70℃、10分の加熱で80〜85%失活する。
【0035】
(4) 本酵素は、D−グルコースの他、D−キシロース、D−リボース、L−アラビノースなどにも作用し、それぞれ対応するケトースに異性化する。すなわち、本酵素は巾広い基質特異性を示すのに対し、酵素AはD−グルコースとD−キシロースのみに作用し、酵素BはD−グルコース、D−キシロースとL−アラビノースに作用する。
【0036】
(5) 酵素A及び酵素Bは、D−グルコースに対するKm値がD−キシロースに対するKmより大きく、D−グルコースよりもD−キシロースに対する親和性の方が大きいのに対し、本酵素は、D−グルコースに対するKmは約0.083M、D−キシロースに対するKmは約0.13Mであり、D−キシロースよりもD−グルコースに対してより親和性が大きい。
【0037】
(6) 酵素A及び酵素BはMg2+により最も強く賦活されるのに対し、本酵素は Mg2+よりCo2+によって強く賦活される。
【0038】
本酵素の理化学的性質のうち、主な性質について、公知のグルコースイソメラーゼと比較した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003814005
【0040】
以上のとおり、本酵素は作用pH、熱安定性などの性質において、公知のグルコースイソメラーゼに比べ重要な差異が認められ、耐酸性と耐熱性に優れた新規なグルコースイソメラーゼと考えられる。
【0041】
本酵素はストレプトマイセス・エスピー G-27より生産されうる。本菌株の菌学的性質は下記の通りである。尚、本菌株は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に第12036号(FERM P-12036)として寄託されている。
【0042】
A.形態
(1) 基生菌糸は樹枝状に分岐し発育、液体・固体をとわず、いかなる培地においても、断裂しない。
(2) 気菌糸は単純分枝で、直状の長い胞子連鎖を形成する。培養が長期となると先端部でゆるく波状になるが、らせん状は稀である。
(3) 胞子柄は基生菌糸から形成されるが、認められるほど長くない(10μm以下)。分枝は菌糸の主軸に対し20〜40℃、分枝数は通常1〜3本。
(4) 胞子嚢、菌核、球状体は形成しない。
(5) 胞子は気菌糸上にのみ生じ、出来る方向は求心的。胞子の表面は平滑で、卵円形又は円筒系、1.0×1.5〜2.0μm、通常50個以上の直状の連鎖となる。
(6) 基生菌糸、気菌糸の幅はそれぞれ1.0〜1.5μm。
【0043】
Figure 0003814005
Figure 0003814005
【0044】
Figure 0003814005
Figure 0003814005
【0045】
以上の菌学的諸性質についてバージェイス・マニュアル・オブ・ディタミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology)(第7版)及びThe Actinomycetes(2巻、152〜292頁)を参照し、本菌をストレプトマイセス・エスピー G-27(Streptomyces sp. G-27)と同定した。
【0046】
本菌を培養して耐酸性グルコースイソメラーゼを生産するには、窒素源として、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、ブイヨン、カゼイン、大豆粕、酵母、酵母エキスなど、通常、微生物の培養に使用される有機窒素源、あるいは塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源を単独又は有機窒素源に補足して使用される。
【0047】
炭素源としては、キシロース、又はその原料であるキシラン及びその派生物が使用される。この他、ソルビトール、グリセリン、マンノース、グルコース、シュークロースなども有効である。
【0048】
以上の窒素源と炭素源の他に、補足する培地成分としてリン酸塩、マグネシウム塩、コバルト塩、マンガン塩などが添加される。
【0049】
培養は、pH5〜9、好ましくはpH5.5〜8、温度25〜50℃、好ましくは30℃で1〜4日間程度行われる。グルコースイソメラーゼは菌体内に生産される酵素であるので、培養後、ろ過又は遠心分離により菌体を回収し、そのまま、又は適当な固定化処理を行なって使用するか、超音波又は自己消化法により該酵素を抽出し使用される。抽出された酵素は必要により、濃縮し、硫酸アンモニウム、アセトン、メタノール、エタノールなどで沈殿し、乾燥保存する。
【0050】
本酵素を用い、グルコースからフラクトースを生成する反応は、20〜60%のグルコース溶液又はグルコース含有液、例えば、澱粉糖化液が使用され、pH4.5〜8、温度50〜90℃で行うことができる。すなわちアスペルギルス・ニガー又はリゾープス属のグルコアミラーゼを用い、pH4.5〜5.5で糖化された糖化液を、実質的にpHを調整することなく、そのまま異性化原料として使用するか、又は、澱粉液化液又はデキストリン含有液を原料とし、グルコアミラーゼが作用する条件(pH4.5〜5.5、温度55〜60℃)で、グルコアミラーゼによる糖化と本発明の酵素による異性化を同時に行うことができる。
【0051】
又、澱粉を原料とし、α−アミラーゼによる液化、グルコアミラーゼによる糖化と本発明の酵素による異性化の、3つの反応を、pH5〜6、温度55〜60℃で同時に行い、澱粉から直接、異性化糖を製造することも可能である。
【0052】
上記したストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)より得られるような、pH4〜6の酸性下で安定であるが、pH4〜6で可逆的に酸化失活する性質を有する耐酸性グルコースイソメラーゼを用いて、上記のような方法でグルコースからフラクトースを生成する反応を行うことができるが、本発明に使用する酵素としてはストレプトマイセス・エスピー G−27(Streptomyces sp. G-27)由来の耐酸性グルコースイソメラーゼに限定されない。即ち、pH4〜6の酸性下で安定であるが、pH4〜6で可逆的に酸化失活する性質を有する酵素であれば本発明を適用することができる。これらの酵素のように、pH4〜6で可逆的に酸化失活するグルコースイソメラーゼの活性を回復する為には、嫌気的条件下/及び又は還元剤の存在下での反応が効果的である。
【0053】
嫌気的条件としては、簡単には、反応液を、水に溶解しない有機溶媒、例えば、トルエンを重層して、空気との接触を断つだけでも達成できる。このことにより、基質であるグルコースあるいは生成フラクトースの還元力により、次第に活性が回復される。
【0054】
また、基質溶液を脱気したり、基質溶液に窒素ガスのような不活性ガスを注入したり、基質溶液を減圧下で貯蔵したり、基質溶液を加温するなどして、溶存酸素を除去したり、酸素が入り込まないようにすればより効果的である。
【0055】
更に、固定化酵素バイオリアクターを用いて連続的に異性化反応を行う場合には、基質の貯槽から固定化酵素床までの配管とポンプに空気層がないようにするか、或いはできるだけ少なくして、基質溶液が酵素と接触するまでの間に酸素が溶け込まないよう配慮する。
【0056】
これらの嫌気的条件をつくる方法を、単独または適宜組み合わせて行えば、基質グルコースにより、同酵素の活性は次第に回復し、活性が長時間にわたり維持される。
【0057】
また、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、システイン、グルタチオンなどの還元剤を添加することにより短時間に活性が回復し、保持される。より好ましくは亜硫酸水素ナトリウムが使用できる。
【0058】
これらの還元剤の添加量は通常0.1〜2mM程度であり、更に基質溶液をできるだけ脱気し、溶存酸素を少なくし、減圧下で貯蔵するのが望ましい。 反応系への還元剤の添加時期としては特に限定されないが、基質溶液に含有させることも可能であり、更に基質溶液がグルコースイソメラーゼと接触する直前に添加するようにすれば、還元剤の添加量を少なくし、効果も大きい。
【0059】
従って、本発明をより効果的に実施するには、これらの条件を適宜組み合わせ、できるだけ空気を遮断し嫌気的状態を保てるよう装置上の工夫を行うことにより、効率的に本発明を実施することができる。
【0060】
尚、特に記載しない限り、異性化した反応物の糖組成の分析は高速液体クロマトグラフィーによるか、又は、フラクトースはシステインーカルバゾール法による比色定量により、グルコースはグルコースオキシダーゼを用いる酵素法により、そして全糖量はアンスロン法又はフェノール−硫酸法による比色定量法により行なった。
【0061】
次に、実施例により本発明の内容を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものでない。
【実施例】
実施例1
コーン・スティ−プ・リカー 1.2%(固形分換算)、魚肉エキス0.1%、CoCl2 1×10-3M、D−キシロース 0.6%、グリセリン 0.4%からなる培地(pH6.5)50mlを200ml容三角フラスコに入れ、常法により殺菌後、ストレプトマイセス・エスピー G−27(FERM P-12036)を接種し、30℃で3日間振盪培養した。
【0062】
培養後、遠心分離して菌体区分を集め、水洗滌後、20KC超音波細胞破砕機で破砕し、抽出液を得た。該抽出液の一定量を採り、生産されたグルコースイソメラーゼを測定した結果、培地1ml当たり約1.5単位生産された。
【0063】
該抽出液に硫安を70%飽和になるよう加え、生成する沈殿を集め、セロファンチューブに入れ、蒸溜水で透析してのち、膜濃縮し、セファデックG−150カラムクロマトグラフィーにより精製した酵素液を使用し、以下の実験を行った。
【0064】
(1) pH安定性
ストレプトマイセス・エスピー G−27(FERM P-12036)由来のグルコースイソメラーゼと市販のストレプトマイセス・ルビジノサス(Streptomyces rubiginosus)由来のグルコースイソメラーゼ[Y. Takasaki他, Agriculture Biological Chemistry, vol.33, 1527-1534 (1969)及び同誌, Vol.30, 1247-1253(1966)記載のストレプトマイセス・エスピー YT−No.5(Streptomyces sp.YT-5)と同じ菌株]を、それぞれ0.05単位と、各pHの50mM酢酸またはリン酸緩衝液を全量0.4mlで、室温(約25℃)で3時間放置後、0.4Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えて、pH7.0に戻し、残存活性を測定した。その結果を図1に示す。
【0065】
図1から明らかなように、市販酵素は、pH6以下で不安定であったのに対し、本発明で使用する酵素は、pH4〜11の幅広いpHで安定であり、特に、pH4〜6の酸性域での安定性が顕著であった。
【0066】
(2) グルコース異性化反応に対するpHの影響
ストレプトマイセス・エスピー G−27由来の耐酸性グルコースイソメラーゼと(1)記載の市販グルコースイソメーラーゼの活性に対するpHの影響を測定した。
【0067】
反応は、各pHの0.1M酢酸またはリン酸緩衝液、各グルコースイソメラーゼ 0.05単位、グルコース 0.1M、MgSO4 5mMの下、全量0.4mlを、内径14mm、長さ100mmの試験管に入れ、60℃で30分間反応を行った。
【0068】
図2から明らかなように、ストレプトマイセス・エスピー G−27由来の酵素の最適pHは7付近にあり、pH5では、pH7での活性の20%程度の活性であった。一方、前記市販の酵素はpH5.0において殆ど活性は示さなかった。
【0069】
実施例2
ストレプトマイセス属由来の耐酸性グルコースイソメラーゼの固定化酵素を用いた連続反応を詳細に検討した結果、上記(2)で記載した、pH7と比較したpH5での活性値(約20%)は、この酵素のこのpHでの実際の活性値を示すものでなく、酸性下で促進される可逆的酸化失活が含まれていることを見い出した。
【0070】
そこで、本実験では、酸性下で失活した活性を回復し、保持するため、試験管に入れた反応液の液面をトルエンで重層した上、還元剤を添加して反応を行った。
【0071】
実施例1の(2)の実験において、反応時のpHを5.0、5.5、6.0、6.5及び7.0とし、通常の反応(対照)と空気との接触を断つため液面をトルエンで重層し、更に、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムを1mM添加して反応を行った。得られた結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
Figure 0003814005
【0073】
表2から明らかなように、特に、pH6以下において、嫌気的条件下の反応の効果が顕著に認められた。
【0074】
表中において酸化による失活率は以下のようにして求めた。
【0075】
【式1】
Figure 0003814005
【0076】
実施例3
嫌気性を高めるため、各種還元剤を添加して異性化反応を行った。反応は、グルコース40%、マレイン酸緩衝液(pH5またはpH7)50mM、MgSO4 5mM、グルコースイソメラーゼ 0.086単位、各種還元剤 1mM、全量 2.0 mlを、内径13mm、長さ100mmの試験管に入れ、トルエン0.5mlを重層し、60℃て行った。経時的に一定量を採り、生成フラクトースを定量した。
【0077】
図3から明らかなように、pH5.0の反応において、トルエンを重層して空気を遮断し、更に、各種の還元剤を添加して行った結果、いずれの還元剤を使用した場合も、反応初期から顕著な効果が認められた。なかでも亜硫酸水素ナトリウムが良好であった。しかし、還元剤無添加の場合でも、時間の経過とともに活性の回復が認められた。一方、pH7.0の反応では、図4から明らかなように、いずれの還元剤も添加効果は認められなかった。
【0078】
比較的良好であった亜硫酸水素ナトリウムについて、濃度を変えて試験した。反応は、グルコース40%、マレイン酸緩衝液(pH5及びpH7)50mM、MgSO4 5mM、グルコースイソメラーゼ 0.086単位、亜硫酸水素ナトリウムを0.5、1、2又は4mM、全量2.0mlを、内径13mm、長さ100mmの試験管に入れ、トルエン0.5mlで重層し、60℃で行った。得られた結果を図5に示す。
【0079】
図から明らかなように、最適濃度は1〜2mMであった。
【0080】
実施例4
ストレプトマイセス属由来のグルコースイソメラーゼ(実施例1で使用の酵素)について、空気酸化の影響について検討した。
酢酸緩衝液(pH5.0)またはリン酸緩衝液(pH7.0)50mMとグルコースイソメラーゼ 4.3×10-3単位、全量0.2mlを内径13mm、長さ100mmの試験管に入れ、室温(25℃)で、静置または振盪(200rpm)した。0時間目と1時間目で、それぞれ、0.4Mリン酸緩衝液(pH7.0)を0.3ml加えて、pH7に調整後、残存活性を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
Figure 0003814005
【0082】
表3から明らかなように、pH7.0では、静置、振盪とも1時間後、殆ど活性の低下が認められなかったが、pH5.0では、静置でも1時間後、約10%の活性低下があり、振盪した場合は、約32%の活性が低下した。このことから、空気中の酸素が活性低下に関与しているものと考えられた。しかし、この低下した活性は、同酵素を嫌気下で保つことにより回復した。
【0083】
実施例5
耐酸性グルコースイソメラーゼ固定化酵素を用いて実験した。実施例1により調製された耐酸性グルコースイソメラーゼを含むストレプトマイセス属菌体を凍結乾燥し、乾燥菌体当たり、10%量のゼラチンを加え、少量の水とともに、60℃で加温して、ペースト状とした後、注射器で0.5%グルタルアルデヒド/アセトン溶液に滴下し、10分放置後、固定化菌体を集め、30℃で1夜風乾した。このようにして得られた固定化酵素約24.6単位を、内径13mm、長さ80mmのカラムに詰めた。
【0084】
基質としては、グルコース40%、MgSO4 50mMとマレイン酸緩衝液(pH5またはpH7)50mMからなる組成のものを用いた。基質の貯槽からポンプ(チューブポンプを使用)を経て固定化酵素床までの間をビニールチューブで接続し、途中空気層がないようすべて基質溶液で満たし、60℃で反応を行った。流量は、各pHとも異性化率が45%前後となるよう調節した。
【0085】
その結果、pH7.0での反応の流量は約0.62ml/時であり、pH5.0での反応の流量は約0.41ml/時であった。約1ケ月間運転後の結果を図6に示す。この結果から、異性化率が半減する期間は、pH7.0の場合で約6ケ月、pH5.0の場合で約2ケ月と算出された。
【0086】
図7は、カラムの操作日数に対して、生成したフラクトースの積算量を図示したものである。この結果から、pH5での活性は、pH7.0の約60%と計算された。
【0087】
実施例6
実施例5において、より嫌気的状態を維持するため、基質液に1mMの亜硫酸水素ナトリウムを添加して使用して異性化反応を行った。カラムには、約19.6単位の固定化グルコースイソメラーゼを充填し、反応は60℃で行った。流量は異性化率が約45%になるよう調整した。
【0088】
その結果、流量は、pH5.0の場合で0.24ml/時、pH7.0の場合で0.32ml/時であった。図8は、カラムの操作日数に対して、生成したフラクトースの積算量を図示したものである。
【0089】
この結果から、pH5での同酵素の活性は、pH7.0の場合の約75%と計算され、還元剤を添加することにより嫌気性が向上したことにより、pH5.0での活性を顕著に向上させることができた。
【0090】
実施例7
実施例6において、基質液のpHをpH4.5、5.0、6.0、6.5と7.0に変え、異性化率約10%となるよう流量を調整し、60℃で反応を行った。流量から算出したそれぞれのpHでの活性値を表4と図9に示す。
【0091】
【表4】
Figure 0003814005
【0092】
実施例1の(2)の結果(図2)のように試験管を用い、液面が空気と接触しているこれまでの活性測定では、pH7.0、6.0、5.5、5.0及び4.5での活性は、それぞれ、約100%、約81%、約42%、約20%と約6%であったのに対し、固定化酵素を用い嫌気的状態で反応を行うと、それぞれのpHで、100%、93%、86%、72%及び67%と高い活性が得られた。
【0093】
【発明の効果】
本発明は、pH4〜6の酸性域で可逆的に酸化失活するストレプトマイセス属耐酸性グルコースイソメラーゼを、pH4〜6の酸性下、かつ嫌気的条件下及び/又は還元剤の存在下で反応することにより、活性を回復、保持して,pH4〜6の酸性下でグルコースをフラクトースに効果的に変換する方法に関し、これにより、グルコアミラーゼによる液化澱粉の糖化と同じpHでグルコースをフラクトースに異性化を行うことを可能にする。また、酸性下での反応により、従来、異性化糖の製造において問題となっていた糖液の着色を少なくし、プシコース、ダイフラクトース、有機酸などの副産物の生成も抑制し、商業的に有利に異性化糖を製造することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の(1)の各グルコースイソメラーゼのpH安定性を示す。
【符号の説明】
図中で−○−は耐酸性グルコースイソメラーゼを示し、−●−はストレプトマイセス・ルビジノサス由来のグルコースイソメラーゼを示す。
【図2】実施例1の(2)の各グルコースイソメラーゼの活性に対するpHの影響を示す。
【符号の説明】
図中で−○−は耐酸性グルコースイソメラーゼを示し、−●−はストレプトマイセス・ルビジノサス由来のグルコースイソメラーゼを示す。
【図3】実施例3の耐酸性グルコースイソメラーゼを用いたpH5.0での反応において、各種還元剤の影響を示す。
【符号の説明】
図中で−△−は亜硫酸水素ナトリウム、−+−は亜硫酸ナトリウム、−○−は2−メルカプトエタノール、−×−はグルタチオン、−●−はチオ硫酸ナトリウム、−◇−はシステイン、−□−は無添加の場合を示す。
【図4】実施例3の耐酸性グルコースイソメラーゼを用いたpH7.0での反応において、各種還元剤の影響を示す。
【符号の説明】
図中で−△−は亜硫酸水素ナトリウム、−+−は亜硫酸ナトリウム、−○−は2−メルカプトエタノール、−×−はグルタチオン、−●−はチオ硫酸ナトリウム、−◇−はシステイン、−□−は無添加の場合を示す。
【図5】実施例3の耐酸性グルコースイソメラーゼを用いたpH5.0での反応における亜硫酸水素ナトリウム添加の影響を示す。
【符号の説明】
図中で−●−は無添加でpH7.0で反応した場合を示し、−○−は無添加でpH5.0で反応した場合を示している。−×−は2mM、−△−は1mM、−+−は4mM、そして、−□−は0.5mMの亜硫酸水素ナトリウムを添加した場合を示す。
【図6】実施例5の固定化耐酸性グルコースイソメラーゼを用いた連続異性化反応の操作日数と異性化率の結果を示す。
【符号の説明】
図中で、−○−はpH5.0の結果を、−●−はpH7.0の結果を示す。
【図7】実施例5の固定化耐酸性グルコースイソメラーゼを用いた連続異性化反応の操作日数と生成したフラクトースの積算量の結果を示す。
【符号の説明】
図中で、−○−はpH5.0の結果を、−●−はpH7.0の結果を示す。
【図8】実施例6の固定化耐酸性グルコースイソメラーゼを用い、亜硫酸水素ナトリウム存在下で行った連続異性化反応の操作日数と異性化率の結果を示す。
【符号の説明】
図中で、−○−はpH5.0の結果を、−●−はpH7.0の結果を示す。
【図9】実施例7の基質液のpHと活性の結果を示す。
【符号の説明】
図中で、−○−は実施例1の(2)に示した液面が空気と接触している場合の結果であり、−●−は固定化酵素を用いた嫌気性条件下での結果を示す。

Claims (4)

  1. 酸性下で可逆的に酸化失活する下記の理化学的性質を有するストレプトマイセス・エスピー G 27 (FERM P-12036) 由来の新規グルコースイソメラーゼを、酸性下で、かつ嫌気的条件下及び/又は還元剤の存在下で、該酵素活性を回復せしめつつ、グルコースに作用せしめることを特徴とする、グルコースをフラクトースに変換する方法。
    a)作用:酸性下でD−グルコースをD−フラクトースに変換する。
    b)基質特異性:D−グルコースとD−フラクトースの相互変換を行う他、D−キシロース、L−アラビノースとD−リボースをそれぞれ対応するケトースに異性化する。しかしD−マンノース、D−ガラクトース、D−アラビノースなどには実質的に作用しない。
    c)作用 pH :4〜8である。
    d)最適 pH :7付近である。
    e)最適温度: 0.1 Mグルコースを基質とし pH8.0 10 分反応での最適温度は 85 87 ℃である。
    f)安定 pH pH 4〜 12 である。
    g)熱安定性:酵素水溶液を各温度で加熱した結果、 85 ℃、 30 分間の加熱では失活は認められず、 90 ℃、 10 分間の加熱では約 30 %失活した。
    h) Km 値:グルコースに対する Km は約 0.083 M、D−キシロースに対する Km は約 0.13M で、本酵素はD−キシロースよりもD−グルコースに対してより親和性が大きい。
    i)賦活剤: Co 2+ Mg 2+ Mn 2+ などにより賦活される。その活性の強さは、5× 10 −3 M において CoCl 100 %としたとき、 MgSO 42 %、 MnSO 17 %である。
    j)阻害剤:5× 10 −3 M HgCl AgNO CuSO CaCl などにより阻害される。
  2. 酸性下が pH4.5 6.0 の範囲であり、新規グルコースイソメラーゼの活性回復が、 pH7.0 の相対活性比として 67 %〜 93 %である請求項1記載の方法。
  3. 新規グルコースイソメラーゼがストレプトマイセス属由来である請求項1又は2記載の方法。
  4. 還元剤が亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、システイン、グルタチオンより選ばれる1種以上である請求項1乃至3記載の方法。
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