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JP3822181B2 - 低水素系仮付け用溶接棒 - Google Patents
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JP3822181B2 - 低水素系仮付け用溶接棒 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、造船、橋梁および建築等の構造物で仮付け溶接に用いられる低水素系溶接棒に係わり、良好な溶接作業性を維持しつつ、電撃防止装置付き溶接機においても優れた再アーク性と電撃防止装置なしの溶接機における耐サイドアーク性が得られる低水素系仮付け用溶接棒(以下、仮付け棒と称する。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
仮付け棒は、耐割れ性や機械的性質が優れていることから、高張力鋼や低温用鋼を使用する重要構造物や厚板を使用する大型構造物などの仮付け溶接に多く適用されている。断続的に溶接を行う仮付け溶接は溶接途中でアークを中断させ再度アークを発生させる場合、被覆筒を砕いて心線を鋼板に接触させてアークを発生させるが、被覆が部分的に欠けていると溶着金属にピット、ブローホール等の溶接欠陥が発生し易いので、溶接により形成された被覆筒を鋼板に軽く接触させることでアークが容易に発生することが望ましい。
【0003】
また、通常の溶接機は無負荷電圧が約60〜90Vであるが、感電防止のために電撃防止装置が使用されている。この電撃防止装置はアークの発生と共に電撃防止が解除され、アーク発生から約1秒で約60〜90Vから約10〜25Vに下げる役割がある。しかし、電撃防止装置は安全性のため無負荷電圧が低いので再アークの発生が非常に困難である。また再アーク性のみを考慮して鉄粉等の導電性の高い原材料に頼ると、無負荷電圧が高い通常の溶接機を使用した場合に、溶接棒の被覆部からアークが発生し易いことが知られている。
【0004】
このような状況に対し、仮付け棒の再アーク性を良好にするため被覆筒の導電性向上を目的に被覆剤中の鉄粉に関する提案が種々されている。例えば、鉄粉の平均粒径、比表面積を限定し、この鉄粉を特定量被覆剤に添加をすることにより再アーク性を向上する技術があるが(例えば、特許文献1参照)、電撃防止装置のない溶接機では溶接棒の被覆部からアークが発生する。すなわち、耐サイドアーク性が劣化してしまう。また、被覆剤中に金属炭酸塩、金属弗化物、鉄粉、セルロース、デキストリンの添加量と、更にセルロースとデキストリンの合計を規定することによって電撃防止装置付き溶接機での再アーク性を向上する技術があるが(例えば、特許文献2参照)、デキストリンはセルロースに比べると炭化温度が低く炭化物が多く形成されるため再アーク性は大幅に改善できるが、被覆の導電性が劣ることから耐棒焼性が劣化して、アーク状態の劣化、ビード形状不良およびピットやブロホールが生じる。また、心線の比抵抗、或いは心線と溶接棒ホルダーとの接触抵抗を限定することによって被覆剤の金属粉添加量にかかわりなく再アーク性を向上できる技術がある(例えば、特許文献3)。しかし、その効果は薄く、耐サイドアーク性は劣るので再アーク性と耐サイドアーク性両方の改善とはならない。
【0005】
このように従来の仮付け棒では再アーク性が良好で、かつ耐サイドアーク性をも満足することは非常に困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−226779号公報
【特許文献2】
特開2000−107889号公報
【特許文献3】
特開平09−15029号公報
【特許文献4】
特開平10−2581号公報
【特許文献5】
特開平10−296485号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶接作業性が良好で、電撃防止装置付き溶接機での再アーク性が極めて良好であり、かつ電撃防止装置のない溶接機での耐サイドアーク性をも満足する仮付け棒を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、優れた再アーク性と耐サイドアーク性を同時に満足させるためには、鋼心線と被覆筒との絶縁抵抗及び鋼心線と被覆剤との絶縁抵抗とを制御することが重要であることを知見し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
質量%で、金属炭酸塩を20〜50%、金属弗化物を0.5〜3.5%、鉄粉を22〜55%、白樺粉を含む有機物を0.5〜3.5%含有する被覆剤を鋼心線に被覆率を30〜40%として塗布し、更に鋼心線と被覆筒先端との絶縁抵抗が0.02MΩ以下、鋼心線と被覆剤との絶縁抵抗が0.01〜0.20MΩ以下であることを特徴とする低水素系仮付け用溶接棒。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、優れた再アーク性が得られ、かつ耐サイドアーク性が良好な仮付け溶接棒について鋭意研究を行った。その結果、再アーク性は、鋼心線と被覆筒との絶縁抵抗(以下、絶縁抵抗Cと称す。)に大きく依存し、また耐サイドアーク性については鋼心線と被覆剤との絶縁抵抗(以下、絶縁抵抗Fと称す。)に大きく依存することから再アーク性と耐サイドアーク性を同時に満足させるには、これらの絶縁抵抗C、Fの値が極めて重要な影響を与えることを見出した。
【0012】
絶縁抵抗Cは0.02MΩ以下で低いほど再アーク性が良好であるが、0.02MΩを超えると電撃防止装置付きの溶接機を用いたときの再アーク性が劣ることがわかった。また絶縁抵抗Fが0.01〜0.20MΩであると、電撃防止装置なしの溶接機を使用したときでも被覆からスパークする心配はなく、耐サイドアーク性は良好となる。しかし、絶縁抵抗Fの値が0.20MΩを超えると耐サイドアーク性は良好であるが、被覆の導電性が劣り耐棒焼け性が劣化して、アーク状態の劣化、ビード形状不良およびピットやブロホールが生じるようになる。また絶縁抵抗Fの値が0.01MΩ未満であると耐サイドアーク性が劣化する。
【0013】
なお、本発明にいう絶縁抵抗Cの測定方法を図1に示す。まず、鋼板上で溶接棒1の鋼心線径2.6mmの場合110A、3.2mmの場合150A、4.0mmの場合200A、5.0mmの場合260Aの溶接電流で約10秒間溶接を行い、溶接棒1先端に被覆筒2を作る。次いで、前記溶接で生じた被覆筒2を角度90°のL形の銅板3に対して45℃の角度で当接する。そして溶接棒1のホルダー側に絶縁抵抗計6からのアース端子4を接続し、L形の銅板3にライン端子5を接続する。絶縁抵抗計6から負荷電圧を500Vかけて絶縁抵抗Cの絶対値を計測する。
【0014】
また、絶縁抵抗Fの測定方法については図2に示す。測定治具は長手方向に凹部分を有する銅板7に薄く延ばしたスチールウール8を凹部分に密着させて、そのスチールウール8の上に溶接棒1をセットする。次に、溶接棒1を絶縁テープ9で固定し、溶接棒1のホルダー側に絶縁抵抗計6からのアース端子4を接続し、銅板7にライン端子5を接続する。絶縁抵抗計6から負荷電圧を500Vかけて絶縁抵抗Fの絶対値を計測する。
【0015】
また、絶縁抵抗C、絶縁抵抗Fは使用原材料の物性から個々の添加量によって大きく変化することから使用原材料の添加量を限定する必要があり、また、被覆率も絶縁抵抗C、Fへ影響するため限定する必要がある。
【0016】
被覆筒の導電性を高めるため被覆剤中に鉄粉を含有させることを基本とするが、鉄粉を55質量%(以下、%と称す。)超えて含有させると絶縁抵抗Cが低くなり再アーク性は改善されるが、絶縁抵抗Fも低くなるため耐サイドアーク性は劣化する。また、アークの吹き付けが弱くなり溶け込み深さが浅くなる。鉄粉の添加量が22%未満であると絶縁抵抗Cが高くなり電撃防止装置付き溶接機を用いたときの再アーク性が劣化する。したがって鉄粉添加量は22〜55%であることが必要である。
【0017】
次に再アーク性および耐サイドアーク性を向上させるための手段として白樺粉やセルロース等の有機物の添加が有効であり、これらは絶縁物であるので絶縁抵抗Fが高くなり耐サイドアーク性を向上させる。また溶接時のアーク熱により被覆筒とその近傍で燃焼し炭化物を生成するため絶縁抵抗Cが低くなり再アーク性も向上する。しかし有機物が3.5%を超えると拡散性水素量が増加し低水素系溶接棒として成り立たなくなり、またアークの吹き付けが強くなりすぎスパッタ発生量が多くなる。0.5%未満であると再アーク性および耐サイドアーク性ともに向上させることができない。
【0018】
なお、前記有機物に白樺粉を用いることにより、繊維が太くかつ長いので炭化物の生成量を調整して絶縁抵抗Fが高くなり耐サイドアーク性をさらに良好にする。そして、3.5%の範囲で単独または他の有機物と併用して用いることができる。
【0019】
また、金属炭酸塩、金属弗化物等の非金属物が多いほど、絶縁抵抗Cが高くなるが、諸溶接作業性を満足させるには欠かせない原材料である。
【0020】
金属炭酸塩は、アーク中で分解しCO2ガスを発生して溶着金属や溶融スラグを大気から保護し、窒素、酸素、水素の侵入を阻害すると共にアーク力を確保し、スラグの流動性、粘性を調整するもので20〜50%必要である。金属炭酸塩が20%未満であるとガス発生量が少なく大気中の水素等を巻込みやすく拡散性水素量が増加し、50%を超えるとアークが強くなりすぎスパッタ発生量が増加する。金属炭酸塩としては、例えば炭酸石灰、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムや炭酸ナトリウム等を用いることができる。
【0021】
金属弗化物は、スラグの溶融点を下げ、流動性の良好なスラグを得るため0.5〜3.5%必要である。0.5%未満では、満足なスラグの流動性が得られず、スラグ被包性が劣ることからビード形状が劣化し、3.5%を超えると流動性が過度に良くなり、スラグ被包性が劣りビード形状が劣化する。金属弗化物としては、例えば、蛍石、永晶石や弗化ソーダを用いることができる。
【0022】
更に、被覆剤の被覆率も絶縁抵抗C、Fに対し重要になる。被覆率が30%未満であると絶縁抵抗Fが低くなり耐サイドアーク性が劣化し、また、鋼心線を含めた金属分が多くなることからスラグ剤やアーク安定剤等が不足しビード形状が劣化する。被覆率が45%を超えると被覆筒先端と心線部の距離が長くなり絶縁抵抗Cが高くなるため再アーク性が劣化することになる。
【0023】
なお、本発明の仮付け棒は、前記被覆剤の他に機械的性質および溶接作業性を考慮してフェロシリコン、金属マンガンおよびフェロチタンなどの脱酸剤を20%以下、ルチールおよび珪灰石などのアーク安定剤を5%以下、珪砂、長石および酸化マグネシウムなどのスラグ生成剤を3%以下、また固着剤中の珪酸カリウムおよび珪酸ナトリウムなどを8%以下の範囲で含むことができる。
【0024】
【実施例】
次に実施例により本発明の効果をさらに詳細に述べる。
【0025】
表1に示す各種組成の被覆剤を、直径4.0mm、長さ400mmのJISG3523 SWY11の鋼心線に塗装した後、最高温度400℃で乾燥して20種類の溶接棒を試作し、各種試験を実施した。
【0026】
【表1】
Figure 0003822181
【0027】
絶縁抵抗Cの測定は前述の図1に示した方法で各試作溶接棒1本に付き繰り返し4回、合計20本測定した。
【0028】
また、絶縁抵抗Fの測定は前述の図2に示した方法で各試作溶接棒1本に付き繰り返し4回、合計20本測定した。それらの測定結果を表1に示す。
【0029】
絶縁抵抗Cを測定した各溶接棒を、電撃防止装置の付いた溶接機を用いて再アーク性を調査した。試験方法は、鋼板(板厚9mm,490N/mm2級)をT型に組んだ試験体のすみ肉部へ軽く接触させ、溶接電流200Aで直ちにアークが発生したものを合格とし、合格本数が8割の16本以上を○とし、12〜15本を△、11本以下を×とした。
【0030】
また、絶縁抵抗Fを測定した各溶接棒を、電撃防止装置のない溶接機を用いて耐サイドアーク性を調査した。再アーク性を調査した試験板と同一の試験板の角部分へ被覆剤部を軽く接触させ、アークが発生しないものを合格とし、合格本数が20本を○とし、1本でも被覆からアークが発生したものを×とした。それらの試験結果を表2にまとめて示す。
【0031】
次に溶接作業性の調査は、前述の鋼板をT型に組み、溶接電流200Aでの水平すみ肉および立向下進で溶接をしてアーク状態、スラグ状態、ビード形状、耐棒焼け性などを調査した。その判定は、各溶接姿勢の総合判定とし、良好なものは○印、劣るものを×印とした。これらの調査結果も表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0003822181
【0033】
表2中溶接棒No.1〜10が本発明例、溶接棒No.11〜20は比較例である。本発明である溶接棒No.1〜10は、金属炭酸塩、金属弗化物、鉄粉および有機物の量が適正で、鋼心線への被覆率、絶縁抵抗Cおよび絶縁抵抗Fも本発明の要件を満足しており、電撃防止装置付き溶接機での再アーク性および電撃防止装置のない溶接機での耐サイドアーク性も良好で、かつ溶接作業性も良好であり、極めて満足な結果であった。
【0034】
比較例中の溶接棒No.11は、被覆剤中の金属炭酸塩が多いのでアークが強くなりスパッタが多発した。また、被覆率が高いので絶縁抵抗Cが高く再アーク性が劣化し、さらに絶縁抵抗Fも高いので耐棒焼け性が劣化した。
【0035】
溶接棒No.12は、被覆剤中の金属炭酸塩が少ないのでガス発生量が不足し別途実施した拡散性水素量を測定した結果、拡散性水素量が多かった。また、被覆率が低いので絶縁抵抗Fが低くなり耐サイドアーク性が劣化した。更に鋼心線を含めた金属分が多くスラグ生成量が少なくなったのでビード形状が劣化した。
【0036】
溶接棒No.13は、被覆剤中の金属弗化物が多いのでスラグ流動性が過度に良くなりスラグ被包性が悪くなってビード形状が劣化した。また、被覆剤中の有機物が多いのでアークの吹き付けが強くなりすぎスパッタ発生量が多くなった。また、別途実施した拡散性水素量を測定した結果、拡散性水素量が多かった。
【0037】
溶接棒No.14は、有機物に白樺粉を含んでいないのでスラグ被包性が悪くなってビード形状が劣化した。また、被覆剤中の有機物が少ないので絶縁抵抗Cが高くなり再アーク性がやや劣り、絶縁抵抗Fが低くなり耐サイドアーク性も劣化した。
【0038】
溶接棒No.15は、被覆剤中の鉄粉が多いので絶縁抵抗Fが低くなりサイドアーク性が劣化し、アーク吹き付けも弱くなり溶け込み深さが浅くなった。また、被覆剤中の金属弗化物が多いのでビード形状が劣化した。
【0039】
溶接棒No.16は、被覆剤中の鉄粉が少ないので絶縁抵抗Cが高くなり再アーク性が劣化した。また、被覆剤中の金属弗化物が少ないのでビード形状が劣化した。
【0040】
溶接棒No.17は、被覆剤中の金属炭酸塩が多いのでアークが強くなりスパッタ発生量が多かった。
【0041】
溶接棒No.18は、被覆剤中の有機物が少ないので絶縁抵抗Cが高く再アーク性が劣化した。更に絶縁抵抗Fが低く耐サイドアーク性も劣化した。
【0042】
溶接棒No.19は、被覆剤中の鉄粉が多いので絶縁抵抗Fが低くなりサイドアーク性が劣化し、アーク吹き付けも弱くなり溶け込み深さが浅くなった。
【0043】
溶接棒No.20は、被覆剤中の鉄粉が少ないので絶縁抵抗Cが高くなり再アーク性が劣化した。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の低水素系仮付け用溶接棒によれば溶接作業性を満足しつつ、電撃防止装置の付いた溶接機においても再アーク性が優れ、かつ無負荷電圧の高い溶接機においても良好な耐サイドアーク性が得られるので、仮付け溶接の作業能率の向上に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼心線と被覆筒先端との絶縁抵抗Cを測定する方法の説明図である。
【図2】鋼心線と被覆剤との絶縁抵抗Fを測定する方法の説明図である。
【符号の説明】
1 溶接棒
2 被覆筒
3 L形の銅板
4 アース端子
5 ライン端子
6 絶縁抵抗計
7 銅板
8 スチールウール
9 絶縁テープ

Claims (1)

  1. 質量%で、金属炭酸塩を20〜50%、金属弗化物を0.5〜3.5%、鉄粉を22〜55%、白樺粉を含む有機物を0.5〜3.5%含有する被覆剤を鋼心線に被覆率を30〜40%として塗布し、更に鋼心線と被覆筒先端との絶縁抵抗が0.02MΩ以下、鋼心線と被覆剤との絶縁抵抗が0.01〜0.20MΩ以下であることを特徴とする低水素系仮付け用溶接棒。
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