JP3835124B2 - 自動変速機のマニュアル変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、手動変速可能な手動変速モードを有する自動変速機の、マニュアル変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機のシフトレバーなどの変速指示部に、通常のP−R−N−Dレンジなどの自動変速モードの外に、運転者がシフトレバーやシフトスイッチでダウン/アップシフトを指示できる手動変速モードが設けられ、運転者の意思でギヤ段をアップダウンさせることが出来るものが知られている。
【0003】
こうした手動変速モードの場合、エンジンが過回転(オーバーレブ)してしまうことを防止するために、手動変速でエンジンがオーバーレブしてしまう前に、自動的にアップシフトする制御が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、運転者が手動変速モードを選択しているにもかかわらず、運転者の意思に無関係に、自動的にアップシフトするために、運転者に違和感を与え、運転フィーリングが悪化する不都合がある。
【0005】
また、通常、オーバーレブの危険性が生じた場合、エンジンに対する燃料供給をカットしてエンジン回転を低下させる、所謂フューエルカット制御が行われる。このフューエルカット制御中に、オーバーレブに伴うアップシフト判断が行われ、更に、アップシフト動作中に、エンジン回転数が低下してフューエルカット制御が中止されると、運転者の要求トルクが、フューエルカット制御にはいる前と同様に高い状態(即ち、高いアクセル開度)を維持していた場合、急激にエンジントルクが上昇し、アップシフト動作に伴うクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素に滑りが生じ、大きなシフトショックが生じる危険性がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑み、手動変速モードにおいて、オーバーレブの危険性が生じた場合でも、運転者に違和感を出来るだけ生じさせることなく、アップシフトを行うことが出来るばかりか、当該アップシフト動作を円滑に行うことが出来る、自動変速機のマニュアル変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、運転者がアップシフト及びダウンシフトを指示する必要のない自動変速モード及び運転者がアップシフト及びダウンシフトを指示することの出来る手動変速モードを有するシフト指示手段(70)が設けられた、自動変速機の制御装置において、
前記手動変速モード時に、エンジン回転数(Ne)が所定限界回転数以上になっているか否かを判定するオーバーレブ判定手段(27)を設け、
前記オーバーレブ判定手段により、エンジン回転数が所定限界回転数以上になっているものと判定された場合に、運転者によるエンジン回転数低下処置(スロットル開度の低下動作、アップシフト動作など)の実行を所定時間(Time up Guard)だけ待ち、前記所定時間内に運転者によるエンジン回転数低下処置が取られなかった場合に、強制的にアップシフトの変速を実行するオーバーレブ変速制御手段(53、PRO1)を設けて構成される。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、エンジン回転数低下処置は、運転者によるアップシフト動作で構成される。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1記載の発明において、エンジン回転数低下処置は、運転者によるスロットル開度の低下動作で構成される。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1記載の発明において、前記オーバーレブ判定手段により、エンジン回転数が所定限界回転数以上になっているものと判定された場合に、エンジンへの燃料供給をカットするフューエルカット制御手段(27)を設けて構成される。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4記載の発明において、前記オーバーレブ変速制御手段による強制的なアップシフトに際して、前記フューエルカット制御手段によるエンジンへの燃料供給カットが中止された際に、エンジントルク(Et)をフューエルカット時のトルクから運転者のリクエストトルクまで所定勾配(Tend Sweep、時間Last Sweep timeに対応した勾配)でスイープアップさせるトルクリミテーション制御を行う、トルクリミテーション制御手段(27、53、PRO2)を設けて構成される。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5記載の発明において、前記トルクリミテーション制御手段によるトルクリミテーション制御は、複数種類のスイープアップの勾配(Tend Sweep、時間Last Sweep timeに対応した勾配)で行うことを特徴として構成される。
【0012】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、オーバーレブ変速制御手段により、エンジン回転数が所定限界回転数以上になった場合でも、所定時間だけ強制的なアップシフト動作が遅延され、運転者によるエンジン回転数低下処置が取られるのを待つことから、運転者がエンジンがオーバーレブ状態になっていることを認識して、自らの意思でアクセルを戻したり、変速レバーを操作してアップシフトをするなどのエンジン回転数低下処置をとることが可能となり、エンジンがオーバーレブ状態となる前に強制的に自動アップシフトを行う場合に比して、違和感無く運転動作を継続することが出来る。
【0013】
請求項2の発明によれば、運転者がオーバーレブ状態に気づいて自らの意思でアップシフト動作を行うことにより、オーバーレブ状態が解除されるので、強制的なアップシフト動作に比して、違和感のない手動変速モードでの運転動作を行うことが出来る。
【0014】
請求項3の発明によれば、運転者がオーバーレブ状態に気づいて自らの意思でスロットル開度を低下させることにより、オーバーレブ状態が解除されるので、強制的なアップシフト動作に比して、違和感のない運転動作を行うことが出来る。
【0015】
請求項4の発明によれば、フューエルカット制御が行われることにより、エンジンの出力軸回転が所定限界回転数以上に増加しないように制御されるため、信頼性の高い制御システムの提供が可能となる。
【0016】
請求項5の発明によれば、フューエルカット制御が中断された後の、エンジントルクEtの急激な上昇がトルクリミテーション制御により防止され、強制的なアップシフト動作におけるシフトショックの発生を未然に防止することが出来る。
【0017】
複数のスイープアップの勾配をトルクリミテーション制御に使用することにより、アップシフト動作における摩擦係合要素(例えば、ブレーキB2)の係合状態に合わせたきめの細かな制御が可能となり、より滑らかなアップシフト動作が実現される。
【0018】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
5速自動変速機1は、図2に示すように、トルクコンバータ4、3速主変速機構2、3速副変速機構5及びディファレンシャル8を備えており、かつこれら各部は互に接合して一体に構成されるケースに収納されている。そして、トルクコンバータ4は、ロックアップクラッチ4aを備えており、エンジンの回転はエンジンクランクシャフト13から、トルクコンバータ内の油流を介して又はロックアップクラッチによる機械的接続を介して主変速機構2の入力軸3に入力する。そして、一体ケースにはクランクシャフトと整列して配置されている第1軸3(具体的には入力軸)及び該第1軸3と平行に第2軸6(カウンタ軸)及び第3軸(左右車軸)14a,14bが回転自在に支持されており、また該ケースの外側にバルブボディが配設されている。
【0021】
主変速機構2は、シンプルプラネタリギヤ7とダブルピニオンプラネタリギヤ9からなるプラネタリギヤユニット15を有しており、シンプルプラネタリギヤ7はサンギヤS1、リングギヤR1、及びこれらギヤに噛合するピニオンP1を支持したキャリヤCRからなり、またダブルピニオンプラネタリギヤ9は上記サンギヤS1と異なる歯数からなるサンギヤS2、リングギヤR2、並びにサンギヤS2に噛合するピニオンP2及びリングギヤR2に噛合するピニオンP3を前記シンプルプラネタリギヤ7のピニオンP1と共に支持する共通キャリヤCRからなる。
【0022】
そして、エンジンクランクシャフト13からトルクコンバータ4を介して連動している入力軸3は、第1の(フォワード)クラッチC1を介してシンプルプラネタリギヤ7のリングギヤR1に連結し得ると共に、第2の(ダイレクト)クラッチC2を介してシンプルプラネタリギヤ7のサンギヤS1に連結し得る。また、ダブルピニオンプラネタリギヤ9のサンギヤS2は、第1のブレーキB1にて直接係止し得ると共に、第1のワンウェイクラッチF1を介して第2のブレーキB2にて係止し得る。更に、ダブルピニオンプラネタリギヤ9のリングギヤR2は、第3のブレーキB3及び第2のワンウェイクラッチF2にて係止し得る。そして、共通キャリヤCRが、主変速機構2の出力部材となるカウンタドライブギヤ18に連結している。
【0023】
一方、副変速機構5は、第2軸を構成するカウンタ軸6の軸線方向リヤ側に向って、出力ギヤ16、第1のシンプルプラネタリギヤ10及び第2のシンプルプラネタリギヤ11が順に配置されており、またカウンタ軸6はベアリングを介して一体ケースに回転自在に支持されている。前記第1及び第2のシンプルプラネタリギヤ10,11は、シンプソンタイプからなる。
【0024】
また、第1のシンプルプラネタリギヤ10は、そのリングギヤR3が前記カウンタドライブギヤ18に噛合するカウンタドリブンギヤ17に連結しており、そのサンギヤS3がカウンタ軸6に回転自在に支持されているスリーブ軸12に固定されている。そして、ピニオンP3はカウンタ軸6に一体に連結されたフランジからなるキャリヤCR3に支持されており、また該ピニオンP3の他端を支持するキャリヤCR3はUDダイレクトクラッチC3のインナハブに連結している。また、第2のシンプルプラネタリギヤ11は、そのサンギヤS4が前記スリーブ軸12に形成されて前記第1のシンプルプラネタリギヤのサンギヤS3に連結されており、そのリングギヤR4は、カウンタ軸6に連結されている。
【0025】
そして、UDダイレクトクラッチC3は、前記第1のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR3と前記連結されたサンギヤS3,S4との間に介在しており、かつ該連結されたサンギヤS3,S4は、バンドブレーキからなる第4のブレーキB4にて係止し得る。更に、第2のシンプルプラネタリギヤのピニオンP4を支持するキャリヤCR4は、第5のブレーキB5にて係止し得る。
【0026】
ついで、図2及び図3に沿って、本5速自動変速機の機構部分の作用について説明する。
【0027】
D(ドライブ)レンジにおける1速(1ST)状態では、フォワードクラッチC1が接続し、かつ第5のブレーキB5及び第2のワンウェイクラッチF2が係止して、ダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2及び第2のシンプルプラネタリギヤ11のキャリヤCR4が停止状態に保持される。この状態では、入力軸3の回転は、フォワードクラッチC1を介してシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1に伝達され、かつダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2は停止状態にあるので、両サンギヤS1、S2を逆方向に空転させながら共通キャリヤCRが正方向に大幅減速回転される。即ち、主変速機構2は、1速状態にあり、該減速回転がカウンタギヤ18,17を介して副変速機構5における第1のシンプルプラネタリギヤのリングギヤR3に伝達される。該副変速機構5は、第5のブレーキB5により第2のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR4が停止され、1速状態にあり、前記主変速機構2の減速回転は、該副変速機構5により更に減速されて、出力ギヤ16から出力する。
【0028】
2速(2ND)状態では、フォワードクラッチC1に加えて、第2のブレーキB2(及び第1のブレーキB1)が作動し、更に、第2のワンウェイクラッチF2から第1のワンウェイクラッチF1に作動が切換わり、かつ第5のブレーキB5が係止状態に維持されている。この状態では、サンギヤS2が第2のブレーキB2及び第1のワンウェイクラッチF1により停止され、従って入力軸3からフォワードクラッチC1を介して伝達されたシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1の回転は、ダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2を正方向に空転させながらキャリヤCRを正方向に減速回転する。更に、該減速回転は、カウンタギヤ18,17を介して副変速機構5に伝達される。即ち、主変速機構2は2速状態となり、副変速機構5は、第5のブレーキB5の係合により1速状態にあり、この2速状態と1速状態が組合されて、自動変速機1全体で2速が得られる。なおこの際、第1のブレーキB1も作動状態となる。
【0029】
3速(3RD)状態では、フォワードクラッチC1、第2のブレーキB2及び第1のワンウェイクラッチF1並びに第1のブレーキB1はそのまま係合状態に保持され、第5のブレーキB5の係止が解放されると共に第4のブレーキB4が係合する。即ち、主変速機構2はそのままの状態が保持されて、上述した2速時の回転がカウンタギヤ18,17を介して副変速機構5に伝えられ、そして副変速機構5では、第1のシンプルプラネタリギヤのリングギヤR3からの回転がそのサンギヤS3及びサンギヤS4の固定により2速回転としてキャリヤCR3から出力し、従って主変速機構2の2速と副変速機構5の2速で、自動変速機1全体で3速が得られる。
【0030】
4速(4TH)状態では、主変速機構2は、フォワードクラッチC1、第2のブレーキB2及び第1のワンウェイクラッチF1並びに第1のブレーキB1が係合した上述2速及び3速状態と同じであり、副変速機構5は、第4のブレーキB4を解放すると共にUDダイレクトクラッチC3が係合する。この状態では、第1のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR3とサンギヤS3,S4が連結して、プラネタリギヤ10,11が一体回転する直結回転となる。従って、主変速機構2の2速と副変速機構5の直結(3速)が組合されて、自動変速機全体で、4速回転が出力ギヤ16から出力する。
【0031】
5速(5TH)状態では、フォワードクラッチC1及びダイレクトクラッチC2が係合して、入力軸3の回転がシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1及びサンギヤS1に共に伝達されて、主変速機構2は、ギヤユニットが一体回転する直結回転となる。この際、第1のブレーキB1が解放されかつ第2のブレーキB2は係合状態に保持されるが第1のワンウェイクラッチF1が空転することにより、サンギヤS2は空転する。また、副変速機構5は、UDダイレクトクラッチC3が係合した直結回転となっており、従って主変速機構2の3速(直結)と副変速機構5の3速(直結)が組合されて、自動変速機全体で、5速回転が出力ギヤ16から出力する。
【0032】
更に、本自動変速機は、加速等のダウンシフト時に作動する中間変速段、即ち3速ロー及び4速ローがある。
【0033】
3速ロー状態は、フォワードクラッチC1及びダイレクトクラッチC2が接続し(第2ブレーキB2が係合状態にあるがワンウェイクラッチF1によりオーバランする)、主変速機構2はプラネタリギヤユニット15を直結した3速状態にある。一方、第5のブレーキB5が係止して副変速機構5は1速状態にあり、従って主変速機構2の3速状態と副変速機構5の1速状態が組合されて、自動変速機1全体で、前述した2速と3速との間のギヤ比となる変速段が得られる。
【0034】
4速ロー状態は、フォワードクラッチC1及びダイレクトクラッチC2が接続して、主変速機構2は、上記3速ロー状態と同様に3速(直結)状態にある。一方、副変速機構5は、第4のブレーキB4が係合して、第1のシンプルプラネタリギヤ10のサンギヤS3及び第2のシンプルプラネタリギヤ11のサンギヤS4が固定され、2速状態にある。従って、主変速機構2の3速状態と副変速機構5の2速状態が組合されて、自動変速機1全体で、前述した3速と4速との間のギヤ比となる変速段が得られる。
【0035】
なお、図2において点線の丸印は、コースト時エンジンブレーキの作動状態を示す。即ち、1速時、第3のブレーキB3が作動して第2のワンウェイクラッチF2のオーバランによるリングギヤR2の回転を阻止する。また、2速時、3速時及び4速時は、第1のブレーキB1が作動して第1のワンウェイクラッチF1のオーバランによるサンギヤS1の回転を阻止する。
【0036】
また、R(リバース)レンジにあっては、ダイレクトクラッチC2及び第3のブレーキB3が係合すると共に、第5のブレーキB5が係合する。この状態では、入力軸3の回転はダイレクトクラッチC2を介してサンギヤS1に伝達され、かつ第3のブレーキB3によりダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2が停止状態にあるので、シンプルプラネタリギヤのリングギヤR1を逆転方向に空転させながらキャリヤCRも逆転し、該逆転が、カウンタギヤ18,17を介して副変速機構5に伝達される。副変速機構5は、第5のブレーキB5に基づき第2のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR4が逆回転方向にも停止され、1速状態に保持される。従って、主変速機構2の逆転と副変速機構5の1速回転が組合されて、出力軸16から逆転減速回転が出力する。
【0037】
図1は、電気制御系を示すブロック図で、21は、マイクロコンピュータ(マイコン)からなる電子制御部(ECU)で、電子制御部21には、エンジン回転数センサ26、エンジン制御部27及びシフト指示手段であるシフトレバー装置70が接続している。制御部21は、オーバーレブ変速制御部53、変速実行部62、手動変速制御部63及び自動変速制御部65を有している。
【0038】
シフトレバー装置70は、図中右方に形成された、P−R−N−D−3−2レンジからなる自動変速モード部70a及び、現在選択されているギヤ段に対してアップシフトを指示する「+」レンジと現在選択されているギヤ段に対してダウンシフトを指示する「−」レンジとからなる手動変速モード部70bを有しており、自動変速モード部70aと手動変速モード部70bは、Dレンジと、+レンジと−レンジとの中間の待機位置70cとの間を接続する接続溝70dで接続されている。運転者が操作自在な変速レバー70eは自動変速モード部70aと手動変速モード部70bとの間を接続溝70dを介して図中左右方向にも移動自在に設けられている。また、自動変速モード部70aでは、運転者が所望のレンジに変速レバー70eを図中上下方向に移動させることにより位置決めし、自動変速制御部65を介して変速実行部62が図示しない変速マップなどに基づいて自動変速制御を行う。この場合、運転者は、アップシフト及びダウンシフトを電子制御装置9に対して指示する必要はない自動変速モードとなる。
【0039】
また、変速レバー70eは、手動変速モード部70bでは、図示しない付勢手段により待機位置70cに保持されており、運転者が車両の走行状態からギヤ段を、現在選択されているギヤ段に対してダウンシフトしたい場合には変速レバー70eを−レンジ側に移動させ、運転者が車両の走行状態からギヤ段を、現在選択されているギヤ段に対してアップシフトしたい場合には変速レバー70eを+レンジ側に移動させる。変速レバー70eは、付勢手段により待機位置70cに付勢されているので、運転者が変速レバー70eを+又は−レンジに移動させても、直ちに待機位置70cに戻るように駆動される。
【0040】
手動変速モード部70bで変速レバー70eが、+又は−レンジに移動させられると、シフトレバー装置70からは手動シフト信号S1が手動変速制御部63に出力され、手動変速制御部63はこれを受けて、変速実行部62に対して、ギヤ段を現在選択されているギヤ段に対して1段アップ又はダウンシフトさせるように指令し、変速実行部62は当該指令を実行する。
【0041】
ついで、図4に沿って、シフトレバー装置70の変速レバー70eが手動変速モード部70bにあり、運転者のスロットル操作により、エンジン回転数Neが所定の回転数(レブリミット回転数)付近にまで増大した場合について説明する。
【0042】
まず、エンジン制御部27がエンジン回転数センサ26からの信号により、エンジン回転数Neが、所定の回転数(レブリミット回転数)以上になったと判断すると、時点T1で、エンジンに対する供給燃料を遮断する、フューエルカット制御を開始する。すると、エンジンの出力トルクEtは、時点T1から所定量低下し、エンジンの出力軸回転がそれ以上増加しないように制御される。この状態を、本発明ではオーバレーブ状態であるとする。
【0043】
この状態では、運転者は、シフトレバー装置70の変速レバー70eを、手動変速モード部70bで(+)側に操作してアップシフトすることが望ましいが、運転者が必ずしもアップシフトを行うとは限らないので、制御部21は、フューエルカット制御が開始された時点で、図5に示す自動アップシフト制御プログラムPRO1を実行する。
【0044】
自動アップシフト制御プログラムPRO1は、ステップS1で運転者が変速レバー70eを操作して手動変速でアップシフトしたたか否かを判定し、運転者が変速レバー70eを操作して手動変速でアップシフトした場合には、ステップS7に入り、変速実行部62に対して、直ちにアップシフト動作を指令し、アップシフトを行う。これにより、エンジン回転数Neは、アップシフトにより低下するので、オーバーレブの状態は解除される。
【0045】
運転者が変速レバー70eを操作して手動変速でアップシフトしていない場合には、ステップS2に入り、現在のエンジン回転数Neが、所定の回転数(レブリミット回転数)以上になっているか否かを判定し、現在のエンジン回転数Neが、レブリミット回転数未満の場合には、ステップS6でタイマCnt Limtを0にして、自動アップシフト制御プログラムPRO1を終了する。
【0046】
ステップS2で、現在のエンジン回転数Neが、レブリミット回転数以上の場合には、ステップS3に入り、フューエルカット制御が開始された時点T1からタイマCnt Limtをスタートさせる。その後、ステップS4で、再度現在のエンジン回転数Neが、所定の回転数(レブリミット回転数)以上を継続しているか否かを判定し、エンジン回転数Neが、レブリミット回転数未満に下がった場合(運転者が、スロットルを操作して、エンジン回転数を低下させたり、変速レバー70eを操作してアップシフトした場合など)には、オーバーレブ状態は解除されるので、自動アップシフト制御プログラムPRO1を終了する。また、エンジン回転数Neが、相変わらずレブリミット回転数以上の場合には、ステップS5に入り、タイマCnt Limtが、所定制限時間Time Up Guardを越えているか否かを判定する。
【0047】
即ち、オーバーレブ変速制御部53は、タイマCnt Limtが、所定制限時間Time Up Guardに達するまでの間、運転者がアクセルを戻してスロットル開度を低下させたり、変速レバー70eを操作してアップシフトをするなどの、何らかのエンジン回転数を低下させる処置を取ることを待つ。こうすることにより、運転者がフューエルカット制御の開始により、エンジンがオーバーレブの状態になっていることを認識して、自らの意思でアクセルを戻したり、変速レバー70eを操作してアップシフトをするなどの対応する処置が可能となり、強制的に自動アップシフトを行う場合に比して、違和感無く運転動作を継続することが出来る。
【0048】
なお、フューエルカット制御は、タイマCnt Limitを開始して、運転者のエンジン回転数低下処置を待つ制御とは独立しており、必ずしも、運転者のエンジン回転数低下処置を待つ制御中にフューエルカット制御が行われている必要はない。
【0049】
しかし、運転者が何らの対応処置を取らないまま、タイマCnt Limtが所定制限時間Time Up Guardを越えた場合には、このまま放置すると、エンジンの耐久性が低下する恐れがあるため、ステップS5からステップS7に入り、制御部21は変速実行部62に対してアップシフトを指令し、変速実行部62は、図4の時点T2で、強制的に自動アップシフト動作を開始し、エンジン回転数がオーバーレブ状態となることを防止する。
【0050】
アップシフト動作は、例えば、1速から2速へのアップシフトの場合、ブレーキB2が係合されることにより行われる。ブレーキB2は、図4に示すように、制御部21の変速判断に基づき、第2のブレーキB2用油圧サーボ(図示せず)への油圧PBが所定圧Ps1になるように所定信号圧が出力される。
【0051】
該所定圧Ps1は、油圧サーボの油圧室を満たしてガタ詰めを行うために必要な油圧に設定されており、所定時間tSAの間保持される。所定時間tSAが経過すると、係合側油圧PBはスイープダウンし、係合側油圧PBが所定低圧Ps2になると該スイープダウンが停止され、該所定低圧Ps2に保持される。該所定低圧Ps2は、計時tが所定時間tSB経過するまで保持される。
【0052】
次に、変速実行部62は、図4に示すように、係合側油圧PBを、予め設定されている所定勾配からなる油圧δPFによりスイープアップし、時点T3まで所定時間のスイープアップが続けらた後、油圧δPFよりもなだらかな勾配の油圧δPIで時点T5まで所定時間のスイープアップが続けられ、時点T5で変速実行部62による変速終了判断がなされ、ブレーキB2の係合が完了し油圧はより高い保持圧PLに保持され、1→2アップシフト変速が完了する。
【0053】
なお、エンジントルクEtは、時点T1のフューエルカット制御開始により、所定量強制的に低下されるが、自動アップシフト制御プログラムPRO1のステップS5で、運転者が何らのエンジン回転数低下処置も取らずにスロットル開度を維持し続けて、タイマCnt Limitがタイムアップして自動アップシフトがおこなわれた場合には、運転者が操作するスロットルの開度は下がっておらず、従って、運転者の要求エンジントルク(リクエストトルク)は、図4の点線で示すように、時点T1から変化しない状態が継続することとなる。
【0054】
こうした場合、フューエルカット制御を行わない通常のアップシフトの場合には、変速機の出力トルクTtは、時点T1から変化することはなく、摩擦係合要素(例えば、ブレーキB2)への油圧がスイープアップされる時点T6から低下が開始され、変速による回転変化が開始される時点T3以降から上昇する。この時、変速終了判断がなされる時点T5までの間にシフトショックが生じることを防止するために、エンジントルクEt(リクエストトルクと一致している)を、所定量TDだけ低下させるトルクリダクショ制御が従来から行われている。トルクリダクション制御により、図4に示すように、変速機の出力トルクTtの大きな変動が防止され、シフトショックの発生を防止することが出来る。
【0055】
しかし、エンジンの出力トルクEtが、フューエルカット制御により低下している場合には、運転者のリクエストトルクとの乖離DFが大きくなり、時点T3でトルクリダクション制御が行われたとしても、依然として大きな差DF1が存在することとなる。その状態で、エンジン回転数Neが、アップシフトにより低下して、所定の回転数(レブリミット回転数)よりも低く設定された回転数まで低下した時点T4で該フューエルカット制御が停止されると、該時点T4から再度エンジンに燃料が供給されるようになる。すると、エンジンの出力トルクEtは、時点T4からトルクリダクション制御による、リクエストトルクよりも所定量TDだけ少ない目標エンジントルクEt1に向けて急激に増大し、変速機出力トルクTtは、トルクTt1に示すように、大きく変動し、大きな変速ショックが生じる。
【0056】
こうした事態の発生を防止するために、オーバーレブ変速制御部53及びエンジン制御部27は、図6に示す、トルクリミテーション制御プログラムPRO2を実行して、フューエルカット制御が停止されて、燃料が再度エンジンに供給された際に、エンジントルクEtが滑らかに上昇するようにエンジントルクEtを制御する。
【0057】
即ち、トルクリミテーション制御プログラムPRO2は、ステップS11で、フューエルカット制御が行われていることを確認し、ステップS12で更に、アップシフトの変速判断がなされているか否かを判断する。図4の場合、時点T1でフューエルカット制御が開始され、時点T2でアップシフトの変速判断がなされているので、ステップS13に入り、時点T4で、フューエルカット制御の停止を確認したところで、ステップS14にはいる。
【0058】
ステップS14では、現在の時点が、アップシフトの変速終了判断が出される時点T5以前であるか否かを判定し、アップシフトの変速終了判断が出される時点T5以前の場合には、ステップS15に入り、変速終了判断が行われる時点T5までの時間を演算して、時点T5でエンジンの出力トルクEtが、トルクリダクション制御により運転者のリクエストトルクよりも所定量TDだけ低下した目標エンジントルクEt1となるように、スイープアップの勾配Tend Sweepを演算し、エンジン制御部27は、フューエルカット制御が停止された時点T4から変速終了判断が出される時点T5まで、該演算された勾配Tend Sweepでエンジンの出力トルクEtをゆっくりと上昇させる。
【0059】
すると、変速機の出力トルクTt3は、図4一点鎖線で示すように、フューエルカット制御終了時からなだらかに上昇する形となり、急激なトルク変動が防止され、シフトショックの発生は防止される。
【0060】
こうして、勾配Tend Sweepでのスイープアップを行って、時点T5で、エンジントルクが目標エンジントルクEt1に達して、アップシフト動作における摩擦係合要素の変速終了判断がなされる(ステップS16)と、ステップS17に入り、エンジン制御部27は、タイマCntをスタートさせ、ステップS18及びS19で、エンジントルクEtを、現在の運転者のリクエストトルクにまで、所定の時間last Sweep timeでスイープアップさせて、円滑にエンジントルクEtを運転者のリクエストトルクに到達させる。これにより、変速機の出力トルクTt3は、図4一点鎖線で示すように、アップシフトにおいても円滑に変化する形となり、急激なトルク変動が防止され、シフトショックの発生は防止される。
【0061】
また、手動変速指令を出力する手動変速指令出力手段は、変速レバー70eに限らず、変速スイッチなどの電気的なスイッチにより構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用しうる自動変速機の機構部分を示すスケルトン図。
【図2】その摩擦係合要素の作動を示す図。
【図3】本発明に係わる電子制御部を示すブロック図。
【図4】オーバーレブに際したフューエルカット制御における、エンジントルク、エンジン回転数、摩擦係合要素の油圧及び変速機の出力トルクを示すタイムチャート。
【図5】自動アップシフト制御プログラムの一例を示すフローチャート。
【図6】トルクリミテーション制御プログラムの一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1……制御装置(電子制御部)
27……トルクリミテーション制御手段、フューエルカット制御手段
オーバーレブ判定手段(エンジン制御部)
53……トルクリミテーション制御手段、オーバーレブ変速制御手段
(オーバーレブ変速制御部)
70……シフト指示手段(シフトレバー装置)
PRO1……オーバーレブ変速制御手段
(自動アップシフト制御プログラム)
PRO2……トルクリミテーション制御手段
(トルクリミテーション制御プログラム)
Ne……エンジン回転数
Et……エンジントルク
Claims (6)
- 運転者がアップシフト及びダウンシフトを指示する必要のない自動変速モード及び運転者がアップシフト及びダウンシフトを指示することの出来る手動変速モードを有するシフト指示手段が設けられた、自動変速機の制御装置において、
前記手動変速モード時に、エンジン回転数が所定限界回転数以上になっているか否かを判定するオーバーレブ判定手段を設け、
前記オーバーレブ判定手段により、エンジン回転数が所定限界回転数以上になっているものと判定された場合に、運転者によるエンジン回転数低下処置の実行を所定時間だけ待ち、前記所定時間内に運転者によるエンジン回転数低下処置が取られなかった場合に、強制的にアップシフトの変速を実行するオーバーレブ変速制御手段を設けて構成した、自動変速機のマニュアル変速制御装置。 - 前記エンジン回転数低下処置は、運転者によるアップシフト動作である、請求項1記載の自動変速機のマニュアル変速制御装置。
- 前記エンジン回転数低下処置は、運転者によるスロットル開度の低下動作である、請求項1記載の自動変速機のマニュアル変速制御装置。
- 前記オーバーレブ判定手段により、エンジン回転数が所定限界回転数以上になっているものと判定された場合に、エンジンへの燃料供給をカットするフューエルカット制御手段を設けて構成した、請求項1記載の自動変速機のマニュアル変速制御装置。
- 前記オーバーレブ変速制御手段による強制的なアップシフトに際して、前記フューエルカット制御手段によるエンジンへの燃料供給カットが中止された際に、エンジントルクをフューエルカット時のトルクから運転者のリクエストトルクまで所定勾配でスイープアップさせるトルクリミテーション制御を行う、トルクリミテーション制御手段を設けて構成した、請求項4記載の自動変速機のマニュアル変速制御装置。
- 前記トルクリミテーション制御手段によるトルクリミテーション制御は、複数種類のスイープアップの勾配で行うことを特徴とする、請求項5記載の自動変速機のマニュアル変速制御装置。
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