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JP3887680B2 - ミシンの上糸張力制御方法及び装置 - Google Patents
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ミシンの上糸張力制御方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くのミシンにおいては、糸調子により上糸に張力を付与している。その張力は、上糸の種類、縫製速度、形成するステッチ等の諸条件によって最適値が異なるので、作業者は糸調子を手動で操作し、これらの諸条件に応じて張力を調節している。従って、この調節には経験と熟練と手間とを要し、また、諸条件が運転中に変化する場合には対応が困難であった。なお、これらの諸条件のうち縫製速度については、縫製速度に応じて糸調子を自動的に調節する技術が開発されている(特開昭54−60047号公報)。しかし、その他の条件について考慮された従来技術は見当らない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、特に問題となるのは、ステッチ長の長いステッチとステッチ長の短いステッチとが運転中に切り替わる場合である。例えば刺繍ミシンは、ジグザク状に縫う所謂サテンステッチを主として形成するものであるから、作業者は糸調子を操作して上糸の張力をサテンステッチに合わせて弱くする。ところが、刺繍ミシンは、運転中に切り替わって、線状に縫う所謂歩きステッチを形成することもある。その場合、上糸の張力がサテンステッチ用に弱いままだと、上糸が送られ過ぎて、歩きステッチが被加工地からループ状に浮き上がることがあった。つまり、ステッチ長の長いサテンステッチのときは張力を弱くした方がよいが、ステッチ長の短い歩きステッチのときは張力を強くした方がよいのである。従って、歩きステッチが浮き上がるような場合には、作業者は糸調子を操作して上糸の張力を歩きステッチに合わせて強くする必要があり、面倒であった。
【0004】
本発明の目的は、上記課題を解決し、ステッチ長の長いサテンステッチとステッチ長の短い歩きステッチとが運転中に切り替わる場合でも、自動的に上糸に最適の張力を付与して、きれいなステッチを形成できるミシンの上糸張力制御方法及び装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のミシンの上糸張力制御方法は、ミシンの制御装置に入力されたステッチ形成用のデータをミシンによる1針縫製動作毎に順次その次の1針からカウントする複数針分ずつ先読みし、先読みした複数針分のデータから、次に形成するステッチがステッチ長の長いサテンステッチかステッチ長の短い歩きステッチかを該ステッチの直前で判別し、その判別に基づいて、次に形成するステッチが前記サテンステッチのときは上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが前記歩きステッチのときは上糸の張力を強くし、前記上糸の張力の変更は、縫針の針先が下死点付近にあり、天秤も下降していて上糸が緩んでいるときに行うというものである。
【0006】
本発明のミシンの上糸張力制御装置は、上糸に張力を調節可能に付与する張力付与手段を備えたミシンにおいて、ミシンの制御装置に入力されたステッチ形成用のデータをミシンによる1針縫製動作毎に順次その次の1針からカウントする複数針分ずつ先読みする先読み手段と、先読み手段で先読みした複数針分のデータから、次に形成するステッチがステッチ長の長いサテンステッチかステッチ長の短い歩きステッチかを該ステッチの直前で判別する判別手段と、判別手段での判別に基づいて、張力付与手段を自動操作することにより、次に形成するステッチが前記サテンステッチのときは上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが前記歩きステッチのときは上糸の張力を強くする自動操作手段とを備え、前記自動操作手段は、縫針の針先が下死点付近にあり、天秤も下降していて上糸が緩んでいるときに、前記上糸の張力の変更を行うものとした。
【0008】
【作用】
本発明のミシンの上糸張力制御方法及び装置によれば、ステッチ長の長いサテンステッチとステッチ長の短い歩きステッチとが運転中に切り替わる場合でも、ミシンの制御装置に入力されたステッチ形成用のデータをミシンによる1針縫製動作毎に順次その次の1針からカウントする複数針分ずつ先読みし、先読みした複数針分のデータから、次に形成するステッチがステッチ長の長いサテンステッチかステッチ長の短い歩きステッチかを該ステッチの直前で判別し、その判別に基づいて、次に形成するステッチが前記サテンステッチのときは上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが前記歩きステッチのときは上糸の張力を強くし、前記上糸の張力の変更は、縫針の針先が下死点付近にあり、天秤も下降していて上糸が緩んでいるときに行うので、常にきれいなステッチを形成できる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明を刺繍ミシンの上糸張力制御方法及び装置に具体化した一実施例について、図面を参照して説明する。まず、図1は、上糸張力制御装置を組み込んだ刺繍ミシンの要部を概略的に示している。ミシンヘッド1の上方に設けられた糸道装置の取付台2の正面には、張力付与手段としての糸調子3が取り付けられている。
【0010】
この糸調子3は、図2に示すように、取付台2の取付筒部4に固定された中空の調子軸5と、調子軸5の途中部の外周に装着された糸取りばね6と、調子軸5の手前部の外周に装着された前後一対の調子皿7,8と、前側の調子皿7を後側の調子皿8へ付勢する円錐コイル状の調子ばね9と、調子軸5の手前部の外周に螺合されて調子ばね9の圧縮量を調節する調子ナット10とから構成されている。上方から糸調子3に送られる上糸11は、調子皿7,8の間に巻き掛けられた後、糸取りばね6に引掛けられて、さらに下方へ送られる。
【0011】
調子ナット10には同ナットと共に回転する調節軸28が取り付けられ、該調節軸28は調子軸5の中空部に挿通されて後方へ延び、その端部には糸調子3の自動操作手段としてのロータリーソレノイド、パルスモータ等の回転駆動器12の回転軸13がジョイント14によって接続されている。
【0012】
ミシンヘッド1は、周知の通り、前記糸取りばね6から送られる上糸11を上方へ折り返すフック状の上糸ガイド15、上糸ガイド15から送られる上糸11を通す天秤16、天秤16を経た上糸11を通す縫針17等を備えている。また、ミシンテーブル18の針板19の下方には、下糸20を繰り出して上糸11に絡ませる釜21が設けられている。
【0013】
ミシンテーブル18のすぐ上方に設けられた駆動枠22には被加工地23を張った刺繍枠24が取り付けられ、駆動枠22は駆動手段25のX軸用パルスモータ26及びY軸用パルスモータ27によってX−Y軸方向に駆動される。
【0014】
上記刺繍ミシンの制御装置30は、CPU31、メモリ32、入出力インターフェイス33等で構成されたマイクロコンピュータ34と、例えばキーボード、フロッピーディスクドライブ、ICカードリーダ、CD−ROMドライブ等のデータ入力装置35とを備えている。ステッチ形成用のデータが記憶されたフロッピーディスク、ICカード、CD−ROM等をデータ入力装置35に挿することで、そのデータを制御装置30に入力するようになっている。また、制御装置30の入力側には、主軸モータ36で駆動されるミシン主軸37の回転角を検出するエンコーダ38が接続され、制御装置30の出力側には前記X軸用パルスモータ26及びY軸用パルスモータ27が接続されている。
【0015】
さらに、本実施例の制御装置30は、図3に示すように、入力されたステッチ形成用のデータを順次10針分ずつ先読みする先読み手段と、先読み手段で先読みした10針分のデータから次に形成するステッチがサテンステッチか歩きステッチかを判別する判別手段とを兼ね備えている。
【0016】
制御装置30の出力側には前記回転駆動器12が接続され、この回転駆動器12は、判別手段での判別に基づいて、調節軸28を介し調子ナット10を自動的に回転させることにより、上糸11の張力を調節する。すなわち、次に形成するステッチがサテンステッチのときは、調子ばね9の圧縮量を少なくして調子皿7の付勢を弱めることにより上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが歩きステッチのときは、調子ばね9の圧縮量を多くして調子皿7の付勢を強めることにより上糸の張力を強くするのである。この調節と並行して、制御装置30はX軸用パルスモータ26及びY軸用パルスモータ27の制御を通じて刺繍枠24を駆動し、ミシンヘッド1はミシン主軸37の回転と同期して1針ずつステッチを形成する。1針縫い終る毎に、図3に示す通り、先読み手段が次の10針分のデータを先読みする。
【0017】
以上のように構成された本実施例の上糸張力制御方法及び装置は、例えば次のように作動する。図4に示すように、被加工地23において針落ち点N1からN11までがサテンステッチSであり、針落ち点N12からN27までが歩きステッチWであり、針落ち点N28からN37までがサテンステッチSであるような刺繍例を想定する。図5は、この刺繍例における縫針17の針先の運動と、刺繍枠24の移動と、上糸11の張力との関係を示している。
【0018】
▲1▼ 縫針17が針落ち点N1に落ちるより前に、先読み手段及び判別手段としての制御装置30はステッチ形成用のデータを10針分先読みし、次に形成するステッチがサテンステッチSであることを判別している。そして、図2(a)に示すように、回転駆動器12は、判別手段での判別に基づいて調子ナット10を自動的に回転させ、上糸11の張力を弱くしている。この状態で、縫針17が針落ち点N1に落ち、縫針17の針先が上死点付近に来る毎に刺繍枠24が移動するため、針落ち点N1からN11までのサテンステッチSが形成される。なお、縫針17が針落ち点N2に落ちた後は、制御装置30は針落ち点N12以降の歩きステッチWのデータを先読みし始めるが、同時点ではそのデータを記憶するだけで、針落ち点N11を過ぎるまでは上糸の張力を変えない。
【0019】
▲2▼ 次に、縫針17が針落ち点N11を過ぎると、制御装置30は、先読みして記憶している前記データから、次に形成するステッチが歩きステッチWであることを判別する。そして、図2(b)に示すように、回転駆動器12は、判別手段での判別に基づいて調子ナット10を自動的に回転させ、上糸11の張力を強くする。この状態で、縫針17が針落ち点N12に落ち、縫針17の針先が上死点付近に来る毎に刺繍枠24が移動するため、針落ち点N12からN27までの歩きステッチWが形成される。なお、縫針17が針落ち点N18に落ちた後は、制御装置30は針落ち点N28以降のサテンステッチSのデータを先読みし始めるが、同時点ではそのデータを記憶するだけで、針落ち点N28に至るまでは上糸の張力を変えない。
【0020】
▲3▼ 次に、縫針17が針落ち点N27を過ぎると、制御装置30は、先読みして記憶している前記データから、次に形成するステッチがサテンステッチSであることを判別する。そして、回転駆動器12は、判別手段での判別に基づいて調子ナット10を自動的に回転させ、上糸11の張力を弱くする。この状態で、縫針17が針落ち点N28に落ち、縫針17の針先が上死点付近に来る毎に刺繍枠24が移動するため、針落ち点N28からN37までのサテンステッチSが形成される。
【0021】
上記▲1▼から▲2▼へ、また▲2▼から▲3▼への上糸張力の変更は、針落ち点N12又はN28において、縫針17の針先が下死点付近にあるときに行う。つまり、針先が下死点にあるときは、天秤16も下降していて上糸11が緩んでいる。この瞬間に、回転駆動器12は調子ナット10を自動的に回転させて、上糸11の張力を切替え、それから天秤16を引き上げるようにするのである。
【0022】
なお、制御装置30が先読みするデータは10針分に限定されず、適宜変更できる。また、本実施例ではサテンステッチと歩きステッチとの間で切替わる毎に、必ず上糸張力を変更するが、サテンステッチ又は歩きステッチのデータが所定針分以上続かない場合には、上糸張力を変更しないように設定し、回転駆動器12が頻繁に作動し過ぎるのを防ぐこともできる。
【0023】
次に、図6は糸調子3の自動操作手段の変更例を示している。この変更例では、調子軸5から後方へ延びる調節軸40の端部に、プッシュソレノイド、流体圧シリンダ等の押圧駆動器41の押圧軸42が当接している。この押圧駆動器41は、判別手段での判別に基づいて自動的に作動及び停止する。すなわち、次に形成するステッチがサテンステッチのときは、図6(b)に示すように作動して調子軸5を前方へ押圧し、調子ばね9による調子皿7の付勢を弱めて上糸11の張力を弱くする。また、次に形成するステッチが歩きステッチのときは、図6(a)に示すように停止して調子軸5を後方へ戻し、上糸の張力を強くするようになっている。
【0024】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)張力付与手段として糸調子以外の装置を使用すること。
(2)刺繍ミシン以外の各種ミシンにおいて具体化すること。
【0025】
【発明の効果】
本発明のミシンの上糸張力制御方法及び装置は、上記の通り構成されているので、ステッチ長の長いサテンステッチとステッチ長の短い歩きステッチとが運転中に切り替わる場合でも、自動的に上糸に最適の張力を付与して、きれいなステッチを形成できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る上糸張力制御装置を組み込んだ刺繍ミシンの要部の概略説明図である。
【図2】同制御装置における張力付与手段としての糸調子と自動操作手段としての回転駆動器の側面図である。
【図3】同制御装置による上糸張力制御方法を示すフローチャートである。
【図4】同刺繍ミシンによる刺繍例を模式的に示す平面図である。
【図5】同刺繍例における縫針の針先の運動と刺繍枠の移動と上糸の張力との関係を示すタイムチャートである。
【図6】自動操作手段の変更例を示す側面図である。
【符号の説明】
3 張力付与手段としての糸調子
11 上糸
12 自動操作手段としての回転駆動器
30 先読み手段及び判別手段としての制御装置
41 自動操作手段としての押圧駆動器
S サテンステッチ
W 歩きステッチ

Claims (2)

  1. ミシンの制御装置に入力されたステッチ形成用のデータをミシンによる1針縫製動作毎に順次その次の1針からカウントする複数針分ずつ先読みし、
    先読みした複数針分のデータから、次に形成するステッチがステッチ長の長いサテンステッチかステッチ長の短い歩きステッチかを該ステッチの直前で判別し、
    その判別に基づいて、次に形成するステッチが前記サテンステッチのときは上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが前記歩きステッチのときは上糸の張力を強くし、
    前記上糸の張力の変更は、縫針の針先が下死点付近にあり、天秤も下降していて上糸が緩んでいるときに行うことを特徴とするミシンの上糸張力制御方法。
  2. 上糸に張力を調節可能に付与する張力付与手段を備えたミシンにおいて、
    ミシンの制御装置に入力されたステッチ形成用のデータをミシンによる1針縫製動作毎に順次その次の1針からカウントする複数針分ずつ先読みする先読み手段と、
    先読み手段で先読みした複数針分のデータから、次に形成するステッチがステッチ長の長いサテンステッチかステッチ長の短い歩きステッチかを該ステッチの直前で判別する判別手段と、
    判別手段での判別に基づいて、張力付与手段を自動操作することにより、次に形成するステッチが前記サテンステッチのときは上糸の張力を弱くし、次に形成するステッチが前記歩きステッチのときは上糸の張力を強くする自動操作手段と
    を備え、
    前記自動操作手段は、縫針の針先が下死点付近にあり、天秤も下降していて上糸が緩んでいるときに、前記上糸の張力の変更を行うものであるミシンの上糸張力制御装置。
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