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JP3889097B2 - ちりめん模様の作成方法および作成装置 - Google Patents
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JP3889097B2 - ちりめん模様の作成方法および作成装置 - Google Patents

ちりめん模様の作成方法および作成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はちりめん模様の作成方法および作成装置に関し、特に、建材などの表面に施すちりめん模様の画像をコンピュータを用いて作成する手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
壁紙や化粧板といった建材の表面には、種々の模様が印刷あるいはエンボス加工によって表現されている。このような印刷物やエンボス製品の表面を装飾する模様としては、天然の木材の表面をモチーフとした木目模様が代表的であるが、細かな皺の集合を表現した「ちりめん模様」も広く利用されている。特に、建材の分野では、いわゆるソフトウッド系の木目柄の表面の質感を表現するために、この「ちりめん模様」のエンボス加工が利用されている。
【0003】
「ちりめん模様」を印刷したり、エンボス加工したりする場合、原稿として用いる原画像が必要になる。このような原画像を得る方法としては、実際のちりめんの生地を写真撮影する方法も考えられるが、通常は、デザイナーが手作業でちりめん模様を描き起こすのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ちりめん模様は、模様の中でも特に細かく込み入った模様である。このため、手作業によるデッサンで描き起こす作業は、非常に時間と労力を必要とする作業になる。しかも、一度描いた模様について、皺の形成態様や込み入り具合などを修正することは非常に困難であり、柄を変更することは実用上不可能である。また、比較的大きな面積をもった壁紙などに用いる場合、単位絵柄を空間的に繰り返し配置して用いるという手法を採ることが多く、この場合、いわゆるリピータブルな絵柄(上辺の模様と下辺の模様とが連続し、右辺の模様と左辺の模様とが連続した絵柄)として、ちりめん模様を描き起こす必要があり、手作業で行う場合には、非常に高度な技術が要求される。
【0005】
そこで本発明は、コンピュータを利用して所望のちりめん模様を作成することのできる手法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、コンピュータが各段階の処理を実行することにより、所定の模様作成面上にちりめん模様を作成する方法において、
コンピュータが、それぞれが有限長の線からなる骨格図形を多数発生させる骨格図形発生段階と、
コンピュータが、模様作成面上に多数の骨格図形を配置する骨格図形配置段階と、
コンピュータが、模様作成面上に多数の画素を定義し、各画素について、それぞれ最も近くに存在する骨格図形との距離を求め、求めた距離値をその画素についての参照距離値と定義する参照距離値定義段階と、
コンピュータが、参照距離値と所定の画素値とを対応づける所定の画素値テーブルに基づいて、各画素にそれぞれ所定の画素値を対応づける画素値付与段階と、
コンピュータが、それぞれ所定の画素値が対応づけられた画素の集合からなる画像を、ちりめん模様を表現する画像として出力する画像出力段階と、
を行うようにしたものである。
【0007】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、骨格図形発生段階で、それぞれ乱数により決定された長さを有する複数n本の線分を、それぞれ乱数により決定された角度をもって相互接続することにより、n本の線分からなる折れ線を形成し、この折れ線を1つの骨格図形とするようにしたものである。
【0008】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、骨格図形配置段階で、模様作成面上に規則的に配置された多数の格子点を定義し、各骨格図形を個々の格子点に配置するか、もしくは、予め設定した最大変位量以下の値をとる変位量を個々の格子点ごとに乱数を用いて決定し、個々の格子点をこの変位量だけ変位させて得られる変位点に各骨格図形を配置するようにしたものである。
【0009】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、各骨格図形にそれぞれ配向ベクトルをを定義し、各骨格図形を配置する際に、予め設定した最大配置角度の範囲内の値をとる配置角度を乱数を用いて決定し、各骨格図形の配向ベクトルが所定の基準方向に対して、上記配置角度をなすように回転させて配置するようにしたものである。
【0010】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、模様作成面として、同一図形を隣接配置することにより二次元平面を埋め尽くすことが可能な図形を輪郭とする有限平面を用い、
コンピュータが、参照距離値定義段階で、この有限平面の輪郭近傍の画素についての距離を求める際に、輪郭外に同一の模様作成面が隣接配置されているものと仮定し、この隣接配置された模様作成面内の骨格図形をも考慮した上で、距離を求めるようにしたものである。
【0011】
(6) 本発明の第6の態様は、上位の第1〜第5の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、画素値付与段階で、参照距離値の変化に対して周期的に変化する画素値を対応づけた画素値テーブルを用いるようにしたものである。
【0012】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係るちりめん模様の作成方法において、
コンピュータが、画素値として、第1の画素値および第2の画素値の二値を用い、参照距離値のとるべき範囲を所定幅をもった複数の区間に分割し、奇数番目の区間については第1の画素値を対応づけ、偶数番目の区間については第2の画素値を対応づける画素値テーブルを用いるようにしたものである。
【0013】
(8) 本発明の第8の態様は、所定の模様作成面上に、ちりめん模様の画像を作成する装置において、
作成すべきちりめん模様を規定するパラメータを入力するパラメータ入力手段と、
所定の数値範囲内の乱数を発生させる乱数発生手段と、
入力したパラメータに発生させた乱数を作用させて、有限長の線からなる骨格図形を発生させる骨格図形発生手段と、
入力したパラメータに発生させた乱数を作用させて、模様作成面上に骨格図形をランダムに多数配置する骨格図形配置手段と、
模様作成面上に多数の画素を定義し、各画素について、それぞれ最も近くに存在する骨格図形との距離を求め、求めた距離値をその画素についての参照距離値と定義する参照距離値定義手段と、
参照距離値と所定の画素値とを対応づける画素値テーブルを有し、この画素値テーブルに基づいて、各画素にそれぞれ所定の画素値を対応づける画素値付与手段と、
それぞれ所定の画素値が対応づけられた画素の集合からなる画像を、ちりめん模様を表現する画像として出力する画像出力手段と、
を設けたものである。
【0014】
以上述べたとおり、本発明に係る方法および装置で作成されたちりめん模様を有する印刷物およびエンボス製品では、模様形成面上に、有限長の線からなる骨格図形多数定義され、模様形成面上の各画素が、最も近くに存在する骨格図形との距離の値によって一義的に定義される画素値を有し、これら多数の画素の集合によって模様が形成されるようになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
§0. 概要手順
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は本発明に係るちりめん模様の作成方法の基本手順を示す流れ図である。これらの各手順は、コンピュータを用いて実行され、実際には、数値データや画像データをメモリ内あるいは記憶媒体内で取り扱う処理になる。この手順の概要は次のとおりである。まず、ステップS1において、骨格図形を発生させる。この骨格図形は、発生させるちりめん模様の「核」ともいうべき図形であり、この「核」に肉付けをするような形式で模様を作成するのが本発明の特徴である。多数の骨格図形を発生させたら、ステップS2において、これらの骨格図形を模様作成面上に配置する。すなわち、多数の骨格図形がそれぞれ所定位置に割り付けられることになる。もっとも、実際の演算処理においては、ステップS1において全骨格図形を発生させた後にステップS2においてこれらを配置する、というプロセスを採る代わりに、骨格図形を1つ発生させるたびに配置を行ってゆく、というプロセスを採る方が処理が簡単になる。続いて、模様作成面上に多数の画素を定義し、ステップS3において、これら各画素に所定の参照距離値を定義する。ここで、ある画素についての参照距離値とは、「その画素の最も近くに存在する骨格図形との距離」として定義される。続くステップS4では、この参照距離値に基づいて、各画素に特定の画素値が付与される。最後のステップS5では、これらの画素からなる画像が、ちりめん模様の画像として出力される。以下、これら各ステップについて詳述する。
【0016】
§1. 骨格図形の発生
まず、ステップS1の骨格図形発生の処理を説明する。本発明における「骨格図形」とは、「有限長の線からなる図形」を意味する。図2に、このような骨格図形の一例を示す。ここに示す骨格図形Fは、4本の線分L1〜L4の端点を相互に接続してなる折れ線からなる図形である。この折れ線の両端点は点D0および点D4であり、中間点D1〜D3において折れ曲がっている。中間点D1〜D3は、それぞれ個々の線分の接続点であり、これら中間点D1〜D3において、線分相互の分岐角度θ1〜θ3が定義できる(この例では、各中間点の左側に位置する線分が伸びる方向(破線の方向)に対して、右側に位置する線分の伸びる方向を反時計回りの角度値で示している)。このような骨格図形Fは、有限長(L1+L2+L3+L4)の線からなる図形であり、本発明で利用するのに適した骨格図形のひとつである。
【0017】
もっとも、本発明を実施する上で利用できる骨格図形は、このような折れ線からなる骨格図形に限定されるものではなく、どのような形態の骨格図形を用いてもかまわない。たとえば、単なる1本の線分を骨格図形として用いてもよいし、図3(a) に示すような有限長の自由曲線を骨格図形として用いてもよい。また、図3(b) に示すような三角形やその他の多角形、あるいは円、楕円、自由曲線による閉じた図形などを用いることも可能である。また、図3(c) に示すように、折れ線を構成する線分の一部が交差していてもかまわない。
【0018】
ただ、コンピュータによる演算処理を効率化する上では、図2に示すような折れ線を骨格図形として用いるのが好ましい。このような折れ線からなる骨格図形であれば、図のようにX軸およびY軸を定義したXY平面上において、5点D0〜D4のXY座標値と相互の接続順序(D0→D1→D2→D3→D4の順)とを示すデータを用意するだけで、この骨格図形を一義的に定義することが可能になる。また、ランダムな骨格図形を多数発生させる場合にも、折れ線からなる骨格図形を用いた方が効率的である。すなわち、それぞれ乱数により決定された長さを有する複数n本の線分を、それぞれ乱数により決定された角度をもって相互接続することにより、n本の線分からなる折れ線を形成することが可能である。たとえば、図2に示すような4本の線分からなる折れ線を形成する場合であれば、乱数により各線分L1〜L4の長さを決定し、乱数により各分岐角度θ1〜θ3を決定すればよい。このように、乱数を利用して多数の骨格図形を発生させるようにすれば、同じ4本の線分からなる折れ線状の骨格図形であっても、その形態や全長は千差万別となる。
【0019】
なお、ここでは、このような折れ線からなる骨格図形についての中心点と配向ベクトルとを、図4に示すように定義する。まず、この骨格図形の正則外接矩形R(一組の対辺がX軸に平行で、もう一組の対辺がY軸に平行な矩形であって、この骨格図形に外接するもの)の中心点C(2本の対角線の交点)を、この骨格図形自身の中心点と定義する。また、この骨格図形を構成する折れ線の始点D0から終点D4へ向かうベクトルVを、この骨格図形の配向ベクトルと定義する。骨格図形Fの中心点Cは、後の配置段階において、この骨格図形Fの位置を示す代表点として利用され、配向ベクトルVは、この骨格図形Fの配向性を示すベクトルとして利用される。
【0020】
§2. 骨格図形の配置
次に、ステップS2の骨格図形配置の処理を説明する。ここでは、ステップS1で発生させた多数の骨格図形を、所定の模様作成面上に配置する処理が実行される。一般に、自然界の模様をコンピュータを用いて人為的に生成する場合、乱数を利用して個々の要素を配置する手法が採られることが多い。しかしながら、本発明のように、ちりめん模様を生成する場合には、「核」となる骨格図形を乱数を利用して全くランダムに配置することは必ずしも適切ではない。実際、骨格図形を全くランダムに配置した状態で以下のプロセスを実施したところ、作成されたちりめん模様には、全体的に粗密のむらが生じ、「均一に分布した皺」を表現する上では好ましくない結果となった。
【0021】
本願発明者は、この骨格図形の配置段階では、ある程度規則的な配置を行うと、「均一に分布した皺」を表現する上では好ましいことを見出だした。そこで、本実施形態では、模様作成面上に規則的に配置された多数の格子点を定義し、各骨格図形を個々の格子点上に配置するようにしている。図5は、模様作成面M上に正方格子を定義し、規則的に配置された多数の格子点Qを定義した状態を示し、図6は、これら各格子点Q上に、ステップS1で発生させた骨格図形Fを配置した状態を示す。個々の骨格図形Fを個々の格子点Q上に配置する際には、上述した骨格図形の中心点Cが格子点Q上にくるようにすればよい。このとき、各骨格図形の向きはある程度ランダムになるようにするとよい。具体的には、各骨格図形の配向ベクトルVの向きが、個々の骨格図形ごとに異なるような配置を行うとよい。たとえば、1つの骨格図形を配置するたびに、−180°〜+180°の範囲内の任意の配置角度φを乱数を利用してランダムに発生させ、骨格図形の配向ベクトルVが所定の基準方向(たとえば、Y軸方向)に対して配置角度φをなすような向きに、骨格図形を回転させて割り付けを行えばよい。また、配置角度φの範囲に制限を加えることにより、全体的に配向性をもったちりめん模様を作成することも可能になる。たとえば、−10°〜+10°の範囲内で任意の配置角度φを乱数を利用してランダムに発生させるようにすれば、個々の骨格図形はいずれもほぼ所定の基準方向(たとえばY軸)を向いて配置されることになり、最終的に得られるちりめん模様も、この基準方向に沿った配向性を有する模様になる。
【0022】
このように、多数の骨格図形を規則的な格子点上に配置すると、全体的に粗密のムラのない「均一に分布した皺」を表現することが可能になる。骨格図形の中心点は、規則的な格子配列をとることになるが、個々の骨格図形の形態や全長はランダムであり、配置角度もランダムに設定することができるため、全体としては、ランダムな印象を与えるちりめん模様が作成できる。ただ、個々の骨格図形の配置をよりランダムにし、自由度の高いちりめん模様を作成したい場合には、乱数を利用して個々の格子点を所定の変位量だけ変位させるようにすることも可能である。図7は、図5に示す正方格子の各格子点Qを、それぞれランダムに決定した所定の変位量だけ変位させて得られる変位点Qを示す図であり、図8は、このような変位点Q上に個々の骨格図形を配置した状態を示す図である。
【0023】
既に述べたように、骨格図形を全くランダムに配置すると、最終的に得られるちりめん模様に粗密のムラが生じてしまう。このため、変位点Qを得るための変位量には制限を設けるようにするのが好ましい。すなわち、予め所定の最大変位量(たとえば、格子間隔の1/2の量)を設定しておき、この最大変位量以下の値をとる変位量を個々の格子点ごとに乱数を用いて決定するようにすればよい。なお、ここでいう変位量には、変位方向の情報をも含ませておき、変位量の絶対値もその方向もランダムになるようにするのが好ましい。具体的には、X軸方向の変位量ΔxとY軸方向の変位量Δyとを組み合わせ、(Δx,Δy)なる形で変位量を定義するようにし、Δx,Δyのそれぞれを別個に乱数を用いて定義するようにすればよい。
【0024】
なお、このようにして多数の骨格図形を配置した結果、隣接配置された骨格図形どうしが平面的に重なりを生じたとしても、以下のプロセスを実行する上では何ら支障はない。また、上述の例では、模様作成面Mとして矩形の領域を定義しているが、実際には、どのような形状の領域を模様作成面Mとして定義してもよく、模様作成面Mは必ずしも平面に限定されるものではない。たとえば、三次元物体の表面に模様をマッピングするような場合は、曲面上に模様作成面Mを定義することも可能である。
【0025】
§3. 参照距離値の定義
続いて、ステップS3の参照距離値の定義処理を説明する。上述したステップS2の処理により、図6あるいは図8に示すように、模様作成面M上に多数の骨格図形Fが配置されたことになる。ただ、ここで配置された骨格図形Fは、単なる幾何学上の概念的な線であり、いわゆる画像として認識できる太さをもった線ではない。この骨格図形Fは、あくまでも「核」として機能する概念上の構成要素であり、最終的に実体のある模様を作成するためには、多数の画素からなる画像を作成しなければならない。
【0026】
そこで、このステップS3では、まず、模様作成面M上に多数の画素を定義する。ここでは、ごく一般的な縦横の行列状に画素配列を定義することにする。全画素数は、作成すべきちりめん模様の解像度などを考慮して適宜決定すればよい。こうして定義した個々の画素について、参照距離値なるものを定義する。ここで、参照距離値は、「その画素の最も近くに存在する骨格図形との距離」として定義される値である。たとえば、図9に示す例を考える。この例では、模様作成面(XY平面)上に、3つの骨格図形F1〜F3が配置された状態が示されている。この模様作成面上には、多数の画素が定義されているが、そのうちの3つの画素P1,P2,P3を例にとって、参照距離値を求めてみよう。まず、画素P1については、図示のとおり、最も近くに存在する骨格図形はF1であり、距離はd1(ここでは、各画素の中心点と骨格図形との距離をとっている)になる。一方、画素P2については、最も近くに存在する骨格図形はF2であり、距離はd2となる。更に、画素P3については、最も近くに存在する骨格図形はF3であり、距離はd3となる。結局、画素P1,P2,P3について、それぞれ参照距離値d1,d2,d3が定義されることになる。
【0027】
このようにして、模様作成面上の画素配列を構成する全画素について、参照距離値が定義されることになる。なお、以後のプロセスを実施する上では、各画素についての参照距離値の情報のみが必要であり、最も近くに存在する骨格図形を特定する情報は必要ない。したがって、たとえば、画素P1については、「その参照距離値はd1である」という情報が得られていれば十分であり、「最も近くに存在する骨格図形はF1である」という情報は必要ない。こうして、ステップS3では、個々の画素にそれぞれ1つずつの参照距離値が定義され、結局、模様作成面上には、参照距離値をスカラー値とする一種のスカラー場が形成されたことになる。後述するように、このスカラー値は、画素値に対応づけられることになる。
【0028】
ところで、壁紙などの比較的大きな面積をもった印刷物やエンボス製品に模様を施す場合、単位絵柄を空間的に繰り返し配置するという手法を採ることが多い。たとえば、一辺30cmの正方形状の単位絵柄からなる模様を作成し、この単位絵柄を3行3列に隣接配置すれば、全体として90cm四方の模様を得ることができる。ただ、このような手法を採る場合、単位絵柄の境界線において模様が不連続になるのを避けるため、いわゆるリピータブルな単位絵柄を作成する必要がある。たとえば、上述のような3行3列の繰り返し配置を行う場合には、上辺の模様と下辺の模様とが連続し、右辺の模様と左辺の模様とが連続するような絵柄を作成する必要がある。
【0029】
このように、最終的にリピータブルな単位絵柄としての性質をもったちりめん模様を作成する場合は、このステップS3において、次のような工夫を行えばよい。まず、模様作成面として、同一図形を隣接配置することにより二次元平面を埋め尽くすことが可能な図形を輪郭とする有限平面を用いるようにする。図5〜図8に示すような矩形の輪郭をもつ模様作成面Mは、このような有限平面の代表である。ただ、二次元平面を埋め尽くすことができる図形は、矩形以外にも、正三角形、二等辺三角形、六角形などがあり、これらの図形を輪郭とする有限平面を模様作成面として用いてもかまわない。そして、このステップS3における参照距離値定義段階で、模様作成面の輪郭近傍の画素についての距離を求める際に、輪郭外に同一の模様作成面が隣接配置されているものと仮定し、この隣接配置された模様作成面内の骨格図形をも考慮した上で、距離を求めるようにするのである。
【0030】
図10は、このような手法の概念図である。図の中央に示す模様作成面M0が、実際にちりめん模様を作成する対象となる模様作成面である。この例では、その周囲に4個の模様作成面M1〜M4が配置されている。これらの模様作成面M1〜M4は、いずれも模様作成面M0と同一のものであり、いずれの模様作成面にも、たとえば図6に示すように多数の骨格図形が全く同一の態様で配置されている。ここで、模様作成面M0の輪郭近傍(図にハッチングを施した領域)の画素についての距離を求める場合、輪郭外に隣接配置された模様作成面M1〜M4の輪郭近傍(図にハッチングを施した領域)内の骨格図形をも考慮した上で、距離を求めるようにするのである。たとえば、模様作成面M0の下辺近傍の画素Pz0(これは、模様作成面M3の下辺近傍の画素Pz3と同一のもの)についての距離を求める場合は、模様作成面M4の上辺近傍に存在する骨格図形Fz4(これは、模様作成面M0の上辺近傍に存在する骨格図形Fz0と同一のもの)をも考慮することになり、もし、画素Pz0に最も近い骨格図形が模様作成面M4の上辺近傍に存在する骨格図形Fz4であった場合には、この骨格図形Fz4との距離を画素Pz0についての参照距離値として定義すればよい。
【0031】
このような手法で、模様作成面M0内の全画素について、それぞれ参照距離値を定義して、二次元スカラー場を形成すれば、この二次元スカラー場はリピータブルな場となる。すなわち、この二次元スカラー場を上下左右に多数隣接配置した場合であっても、境界部分におけるスカラー値の不連続性は生じない。このため、模様作成面M0上に最終的に作成されるちりめん模様も、リピータブルな絵柄となり、上下左右に多数隣接配置した場合であっても、境界部分における模様の不連続は生じなくなる。
【0032】
§4. 画素値の付与
こうして、個々の画素について、それぞれ参照距離値が定義されたら、ステップS4において、各参照距離値に基づいて画素値を付与する処理が行われる。この処理は、予め用意された画素値テーブルに基づいて一義的に行うことができる。画素値テーブルは、参照距離値と所定の画素値との対応づけを定義したテーブルであり、最終的に作成するちりめん模様の色合い、濃淡差などを考慮して用意される。図11は、このような画素値テーブルの一例を示す図である。この例では、横軸に参照距離値、縦軸に画素値がとられ、両者の対応関係が関数の形式で定義されている。本発明における「画素値テーブル」とは、このように、参照距離値と画素値とを対応づけることができるテーブルであればどのような形態のものでもよく、いわゆる表形式のテーブルだけでなく、関数式として定義したテーブルであってもかまわない。
【0033】
画素値として、たとえば0〜255までの8ビットの値を対応づけるようにすれば、最終的に各参照距離値は8ビットの画素値に変換され、模様作成面上には、8ビットの画素値をもつ画素の集合によって表現されたちりめん模様が作成されることになる。この8ビットの画素値を階調値として用いてモノクロ印刷を行えば、256段階の階調変化をもったちりめん模様が得られることになる。もちろん、C,M,Yなどの各色要素ごとに画素値を定義するようにすれば、カラーのちりめん模様を得ることも可能である。また、画素値としては、必ずしも階調値を定義する必要はなく、別に用意したカラーパレット上の色番号を画素値として定義することも可能である。たとえば、任意の256色をカラーパレット上に定義し、この定義した色に0〜255番までの色番号を付与しておき、画素値として0〜255番までの色番号を定義しておくようにすれば、カラーパレット上に用意した色を用いたちりめん模様を作成することができる。
【0034】
図11に示す画素値テーブルでは、画素値の定義の仕方に特に規則性はみられないが、幾重にも重なった多数の皺を強調したちりめん模様を作成する上では、参照距離値の変化に対して周期的に変化する画素値を対応づけた画素値テーブルを用いるのが好ましい。図12は、このような画素値テーブルの一例を示す図である。参照距離値を示す横軸は、4つの区間▲1▼〜▲4▼に分割されており、各区間ごとに全く同じ形態の関数が定義されている。すなわち、参照距離値の変化に対して、周期的に変化するような画素値の関数が定義されていることになる。
【0035】
図13に示す画素値テーブルは、画素値として“0”および“1”の二値のみを用い、参照距離値の変化に対して周期的に変化するような画素値を対応づけた画素値テーブルである。すなわち、参照距離値のとるべき範囲は所定幅をもった複数の区間▲1▼,▲2▼,…に分割され、奇数番目の区間については画素値“0”が対応づけられ、偶数番目の区間については画素値“1”が対応づけられている。このような画素値テーブルを用いて画素値の付与を行うと、白画素および黒画素から構成される二値画像として、非常に鮮明なちりめん模様を得ることができる。図14は、このような二値画像として得たちりめん模様の部分拡大図である(厳密には、各隅部に曲線が現れるが、図示の便宜上、直線からなる単純なパターンとして示した)。中央に核となる骨格図形Fが配置されており、この骨格図形Fを幾重にも取り巻くようなパターン形成がなされていることがわかる。ここに示されている部分は、いわば1つの骨格図形Fの勢力圏内の画素からなるパターンであり、実際には、それぞれ独自の勢力圏をもった多数の骨格図形が隣接して配置されることになるが、各勢力圏の境界部分では、パターンは自然に融合した状態となり、全体として違和感のない自然なちりめん模様が形成される。
【0036】
このような二値画像からなるちりめん模様は、特に、エンボス製品に利用するのに適している。たとえば、図14に示されている白い領域を凸、黒い領域を凹とするようなエンボス加工を行ってこのちりめん模様を表現すれば、いわゆるソフトウッド系の木目柄に適した質感を表現することができる。ここで、白い領域の幅、黒い領域の幅は、いずれも図13に示す画素値テーブルにおける横軸の各分割区間の幅に対応しており、この幅を調整することにより、任意の幅をもったパターン形成が可能になる。
【0037】
§5. 画像の出力
これまで述べてきた一連の処理は、いずれもコンピュータ内部のデータ処理として実行され、ステップS4の画素値付与が完了した段階では、ちりめん模様を表わすラスター画像データがコンピュータ内に作成されたことになる。そこで、最後のステップS5において、このラスター画像データの出力が行われる。この画像出力は、後の印刷工程やエンボス工程に適した形態で行えばよい。たとえば、製版フィルム上に画像を物理的に出力することもできるし、刷版装置へラスター画像データのまま出力することもできる。あるいは、ラスター画像データのまま外部記憶装置へと出力し、一時的に格納しておくこともできる。
【0038】
本発明のひとつの特徴は、このようにして出力された結果を見ながら、修正を施すことが容易にできる点である。たとえば、核となる骨格図形の密度をより高くしたい場合には、図5に示す格子点の密度をより高めた上で、上述の処理をやり直せばよいし、皺を構成する線の幅をより細かくしたい場合には、図13に示す画素値テーブルの分割区間の幅を狭く設定しなおした上で、上述の処理をやり直せばよい。
【0039】
結局、本発明に係る手法で作成されたちりめん模様の画像は、次のような特徴を有することになる。まず、模様形成面上に、有限長の線からなる骨格図形が多数定義される。そして、この模様形成面上には、多数の画素が定義されており、各画素は、最も近くに存在する骨格図形との距離の値によって一義的に定義される画素値を有している。このような特徴をもった画像により形成されるちりめん模様は、コンピュータを用いて作成するのに適し、比較的単純なアルゴリズムで作成が可能になる。また、パラメータの設定が容易であり、要望どおりの態様をもった模様を簡単に得ることができるようになる。
【0040】
§6. ちりめん模様の作成装置
図15は、上述した方法を実施するために用いるちりめん模様の作成装置の基本構成を示すブロック図である。実際には、この装置は、コンピュータを利用して構築されることになるが、ここではその機能に着目し、複数の機能ブロックの集合としてとらえることにする。
【0041】
まず、パラメータ入力手段10は、作成すべきちりめん模様を規定するパラメータを入力する手段であり、オペレータは、このパラメータ入力手段10に対して種々のパラメータを入力することになる。具体的には、模様作成面のサイズを示すパラメータ、格子点の間隔を示すパラメータ、骨格図形の形状を示すパラメータ、骨格図形の配置態様を示すパラメータ、画像の解像度を示すパラメータ、画素値テーブルを定義するパラメータ、などが設定されることになる。
【0042】
乱数発生手段20は、所定の数値範囲内の乱数を発生させる機能を有する。この乱数は、骨格図形の発生処理や配置処理において利用されることになる。骨格図形発生手段30は、パラメータ入力手段10に入力されたパラメータに、乱数発生手段20で発生した乱数を作用させて、有限長の線からなる骨格図形を発生させる機能を有し、具体的には上述の§1で述べた処理を実行する。また、骨格図形配置手段40は、パラメータ入力手段10に入力されたパラメータに、乱数発生手段20で発生した乱数を作用させて、模様作成面上に骨格図形をランダムに配置する機能を有し、具体的には上述の§2で述べた処理を実行する。なお、実際のプログラムを作成する際には、骨格図形発生手段30で1つの骨格図形を発生させたら、続いて、骨格図形配置手段40でこれを配置する処理を行い、再び骨格図形発生手段30で1つの骨格図形を発生させ、骨格図形配置手段40でこれを配置する処理を行う、という手順を繰り返し実行すると、効率の良い処理プロセスが実現できる。
【0043】
参照距離値定義手段50は、模様作成面上に多数の画素を定義し、各画素について、それぞれ最も近くに存在する骨格図形との距離を求め、求めた距離値をその画素についての参照距離値と定義する機能を有し、具体的には上述の§3で述べた処理を実行する。また、画素値付与手段60は、参照距離値と所定の画素値とを対応づける画素値テーブルを有し、この画素値テーブルに基づいて、各画素にそれぞれ所定の画素値を対応づける機能を有する。具体的には上述の§4で述べた処理を実行することになる。画像出力手段70は、それぞれ所定の画素値が対応づけられた画素の集合からなる画像を、ちりめん模様を表現する画像として出力する機能を有し、具体的には上述の§5で述べた処理を実行する。こうして、最終的にちりめん模様を有する画像Gが出力されることになる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明に係るちりめん模様の作成方法を、より具体的な実施例に基づいて説明する。この実施例は、図14にその一部を示すような二値画像からなるちりめん模様を作成する例である。図16は、この実施例の前半段階の手順を示す流れ図、図17はこの実施例の後半段階の手順を示す流れ図である。
【0045】
前半段階の手順は次のとおりである。まず、図16のステップS11において、種々のパラメータの入力が行われる。まず、作成すべき画像のサイズを示す横の寸法width と縦の寸法heightとが入力される。次に、線幅wlが入力される。この線幅wlは、図14に示す例における黒い領域あるいは白い領域の幅に相当する。続いて入力される正方格子の間隔dsは、図5に示すような格子点Qの縦横の間隔である。更に、骨格図形配置角最大値φmax と格子点の変位量最大値dpmax とが入力される。骨格図形配置角最大値φmax は、骨格図形を配置する際の配置角(図4に示す配向ベクトルVと模様作成面上の基準方向とのなす角)の上限を示す値であり、たとえば、φmax =10°に設定した場合、実際の配置角度は−10°〜+10°の範囲内に制限されることになり、かなり配向性の強いちりめん模様が作成されることになる。これに対し、たとえば、φmax =90°に設定すると、配置角度は−90°〜+90°に分布することになり、実質的に配向性をもたない模様が形成されることになる。一方、格子点の変位量最大値dpmax は、図7に示すように、規則的な格子点Qを所定の変位量だけ変位させて変位点Qを定義する際の変位量の上限を示す値であり、X方向の変位量の最大値およびY方向の変位量の最大値を示す値となる。
【0046】
続くステップS12では、縦横方向の格子点の数が演算される。すなわち、横方向の格子点の数nsxは、nsx=width /dsで演算され、縦方向の格子点の数nsyは、nsy=height/dsで演算される(流れ図では、各変数に所定の数値を代入する意味を示す一般的な記号「:=」を用いて演算式を定義している)。次のステップS13では、格子点間隔の厳密な再計算が行われる。すなわち、ステップS11で入力した格子間隔dsは正方格子についてのものであるが、画像サイズwidth ×heightによっては、このような正方格子では厳密に等間隔な格子点配置ができない。そこで、このステップS13において、X軸方向の厳密な格子点間隔dsxをdsx=width /nsxと定義し、Y軸方向の厳密な格子点間隔dsyをdsy=height/nsyと定義しなおしている。このような厳密な定義は、特に、リピータブルな単位画像としてのちりめん模様を作成する場合に重要である。
【0047】
次のステップS14では、着目中の格子点の列番号を示すパラメータisxと、行番号を示すパラメータisyとを、それぞれ初期値1に設定する。したがって、この時点では、まず、1行1列目の格子点が着目されることになる。
【0048】
続くステップS15では、骨格図形が1つ作成される。骨格図形を作成する具体的な手順については、後に図18を参照しながら述べることにする。ここでは、一応、図4に示すような骨格図形Fが1つ作成されたものとする。続くステップS16では、骨格図形の配置角度φt、格子点の変位量dpx,dpyが定義される。まず、配置角度φtは、φt=rnd(−1,+1)*φmax なる演算式で定義される。ここで、rnd(a,b)はa〜bの範囲内の乱数を意味する。たとえば、ステップS11において、φmax =10°に設定した場合、φtは−10°〜+10°の範囲内の任意の角度として定義されることになる。また、X軸方向の変位量dpxは、dpx=rnd(0,1)*dpmax なる演算式で定義され、Y軸方向の変位量dpyは、dpy=rnd(0,1)*dpmax なる演算式で定義される。たとえば、ステップS11においてdpmax =1mmに設定した場合、dpxおよびdpyは、0mm〜+1mmの範囲内の任意の変位量として定義される。次のステップS17では、ステップS15で作成した1つの骨格図形を、ステップS16で定義した条件で配置する処理が行われる。この配置処理の具体的な手順については、後に図19を参照しながら述べることにする。
【0049】
こうして、1つの格子点について、1つの骨格図形が配置されたら、ステップS18およびS19を経て、同じ行の隣接する格子点についての配置を繰り返し実行し、1行の格子点すべてについての配置処理が完了したら、ステップS20〜S22を経て、すべての行について同様の配置処理を繰り返し実行する。以上で、前半段階の処理は完了である。これにより、たとえば図8に示すように、模様作成面M上に多数の骨格図形がランダムに配置されたことになる。
【0050】
一方、後半段階の手順は次のとおりである。まず、図17のステップS23において、種々のパラメータの入力が行われる。ここで入力されるパラメータの一部は、前半段階で入力されたパラメータである。すなわち、作成すべき画像のサイズを示す横の寸法width および縦の寸法height、線幅wlはステップS11で入力されたものと同じである。また、配置された骨格図形の総数nsは、前半段階で定義された格子点の数に等しく、ns=nsx*nsyとして求まる。また、1骨格図形中の線分数nlは、ステップS15(詳細な手順は後述)の骨格図形作成処理で入力されるパラメータであり、たとえば、図2に示す骨格図形Fのように、4本の線分L1〜L4によって骨格図形を構成する場合、nl=4になる。また、骨格図形の座標(x(i),y(i))は、骨格図形を構成する線分の各端点の座標を示すパラメータであり、たとえば、図2に示すような骨格図形Fの場合、配置された状態における始点D0の座標(x(0),y(0))、中間点D1の座標(x(1),y(1))、中間点D2の座標(x(2),y(2))、中間点D3の座標(x(3),y(3))、終点D4の座標(x(4),y(4))が入力されることになる。ステップS23では、このような座標値の組み合わせが、合計ns組入力される。
【0051】
続いて、ステップS24において、着目中の画素の列番号を示すパラメータixと、行番号を示すパラメータiyとが、それぞれ初期値1に設定される。したがって、この時点では、まず、1行1列目の画素が着目されることになる。
【0052】
ステップS25では、着目中の画素(ix,iy)についての参照距離値dmin が定義される。すなわち、この着目画素から最も近い骨格図形に対する距離を求める処理が行われることになる。この処理の詳細については、後に図20の流れ図を参照しながら説明する。続いて、ステップS26では、この着目画素について定義された参照距離値dmin が、どの区間に所属するかが演算される。すなわち、まず、fval =dmin /wlなる演算で実数fval が求められ、これを整数化した値ival が求められる。この値ival は、図13における区間▲1▼,▲2▼,…を示す値であり、線幅wlは、この区間の幅に相当する。続くステップS27において、値ival が奇数か偶数かが判断され、奇数の場合はステップS28においてこの着目中の画素に画素値“0”が付与され、偶数の場合はステップS29においてこの着目中の画素に画素値“1”が付与されることになる。
【0053】
こうして、1つの着目画素について、所定の画素値が付与されたら、ステップS30およびS31を経て、同じ行の隣接する画素についての画素値付与処理を繰り返し実行し、1行の画素すべてについての処理が完了したら、ステップS32〜S33を経て、すべての行の画素について同様の画素値付与処理を繰り返し実行する。こうして全画素について画素値が付与されたら、最後に、ステップS34において、画素データの出力が行われる。
【0054】
続いて、図18に示す流れ図を参照しながら、上述したステップS15(図16)における骨格図形作成処理の詳細な手順を説明する。まず、ステップS41において、1骨格図形中の線分数nlと、線分長の最大値Lmax および最小値Lmin と、最大分岐角度θmax と、をパラメータとして入力する。ここで、線分数nlは、1骨格図形を構成する線分の数を示し、たとえば、図2に示す骨格図形Fは、nl=4なる設定により得られる。また、線分長の最大値Lmax および最小値Lmin は、図2に示す骨格図形Fにおける各線分L1〜L4の長さの最大値および最小値を規定するパラメータであり、最大分岐角度θmax は、図2に示す骨格図形Fにおける線分相互の分岐角度θ1〜θ3の絶対値の最大値を規定するパラメータである(ただし、この実施例では−90°≦θ≦+90°に設定)。
【0055】
次のステップS42では、種々の変数の初期設定がなされる。変数ilは、現在着目中の骨格頂点(骨格図形を構成する線分の端点)の番号を示す変数であり、il=0なる初期設定により、図2に示す骨格図形Fを作成する場合であれば、頂点D0が最初に着目する骨格頂点となる。変数θは、現在の着目中の骨格頂点から伸ばす線分の方向を示す角度変数である。この実施例では、Y軸方向をθ=0°と定義している。また、変数x(il)およびy(il)は、着目中の骨格頂点のX座標値およびY座標値を示す変数であり、この実施例では最初の頂点を原点とするXY座標系を用いている。すなわち、図2に示す骨格図形Fを作成する場合であれば、最初の頂点D0が原点(0,0)に定義されることになる。
【0056】
ステップS43では、骨格頂点の番号を示す変数ilが1だけインクリメントされ、続くステップS44は、新たな骨格頂点の座標値(x(il),y(il))が決定される。すなわち、まず、新たなθの値が、θ+rnd(−1,+1)*θmax なる演算でランダムに決定され、線分の長さLが、L=Lmin +rnd(0,1)*(Lmax −Lmin )なる演算でランダムに決定される。結局、新たな骨格頂点のX座標値x(il)は、旧骨格頂点のX座標値x(il−1)にL*sinθを加えることにより得られ、新たな骨格頂点のY座標値y(il)は、旧骨格頂点のY座標値y(il−1)にL*cosθを加えることにより得られる。
【0057】
以上の処理が、ステップS45を経て、il=nlになるまで繰り返し実行され、1つの骨格図形が作成されることになる。たとえば、図2に示す骨格図形Fは、上述の処理を4回繰り返すことにより作成される。
【0058】
続いて、図19に示す流れ図を参照しながら、上述したステップS17(図16)における骨格図形配置処理の詳細な手順を説明する。まず、ステップS51において、1骨格図形中の線分数nlと、骨格頂点座標列(x(i),y(i))と、骨格図形の配向ベクトルの向きφs(たとえば、図4に示す骨格図形Fであれば、配向ベクトルVとY軸とのなす角度)と、骨格図形の中心点の座標xc,yc(たとえば、図4に示す骨格図形Fであれば、始点D0を原点にとったときの中心点Cの相対座標)と、骨格図形の配置角φtと、格子点座標(px,py)と、格子点の変位量(dpx,dpy)と、がパラメータとして入力される。これらの各パラメータは、いずれも前段までのプロセスで得られている。
【0059】
次のステップS52では、実質回転角度φが、φ=φt−φsなる演算によって求められる。ここで、φtは、ステップS16において定義された配置角であり、φsはステップS15で作成された骨格図形の配向ベクトルの向きを示す角度である。ステップS15で作成された骨格図形は、既にY軸に対して角度φsだけ傾斜しているため、この骨格図形を配置角φtで配置するためには、実質的にφt−φsなる差に相当する角度だけ回転させて配置すればよい。実質回転角度φは、この実質的な回転角度を示すものである。続くステップS53では、実質中心点座標が、qx=px+dpx、qy=py+dpyなる演算によって求められる。ここで、(px,py)は骨格図形を配置すべき格子点Qの座標であり、(dpx,dpy)は各座標軸方向の変位量である。したがって、座標(qx,qy)は変位点Qの座標を示すものであり、骨格図形は、この変位点Qにその中心点Cを重ねるようにして配置すればよいことになる。
【0060】
次のステップS54では、骨格頂点の番号を示す変数ilを初期値0に設定し、ステップS55において、実質回転角度φだけ回転させるための演算を行う。すなわち、実質回転角度φだけ回転させた後の、第il番目の骨格頂点の新たな座標値x(il),y(il)を求める演算が行われる。まず、旧座標値x(il),y(il)から、中心点Cの相対座標値xc,ycを差し引き、中心点Cを基準とした相対座標値に変換する。続いて、この中心点Cを原点とした極座標(r,θ)により、第il番目の骨格頂点の位置を表現する。そして、θの値を、実質回転角度φを加えることにより更新し、回転後の極座標(r,θ)を求める。最後に、x(il)=r*cosθ、y(il)=r*sinθなる演算により、回転後の新たな座標値x(il),y(il)を求める。続く、ステップS56では、実質中心点座標(qx,qy)に、回転後の骨格図形Fの中心点Cを重ねるように配置した場合の第il番目の骨格頂点の座標値が、新たな座標値x(il),y(il)として求められる。
【0061】
このような処理が、ステップS57およびS58を経て、第nl番目の骨格頂点についてまで繰り返し実行され、1つの骨格図形の配置処理が完了する。
【0062】
次に、図20に示す流れ図を参照しながら、上述したステップS25(図17)における参照距離値定義処理の詳細な手順を説明する。ここでは、1つの着目画素についての参照距離値を決定する手順を示す。まず、ステップS61において、画像サイズwidth およびheightと、着目画素の座標(ix,iy:画素の中心位置)と、骨格図形の総数nsと、1骨格図形中の線分数nlと、骨格図形の座標(x(i),y(i))と、がパラメータとして入力される。これらの各パラメータは、いずれも前段までのプロセスで得られている。
【0063】
次のステップS62では、全ns組の骨格図形のうちの着目すべき骨格図形の番号を示す変数isが初期値1に設定され、ステップS63では求めるべき参照距離値dmin の初期値として無限大が設定され、ステップS64において、第is番目の骨格図形が着目される。そして、ステップS65において、第is番目の骨格図形を構成するnl本の線分のうちの着目すべき線分の番号を示す変数ilが初期値1に設定される。
【0064】
続いて、ステップS66において、着目した骨格図形内の着目した線分(すなわち、第is番目の骨格図形を構成する第il番目の線分)と、着目画素との距離distが求められる。この距離distは、点(ix,iy)と線分(x(il−1),y(il−1))−(x(il),y(il))とのユークリッド距離として求めることができる(ユークリッド距離の他、デジタル画像の4近傍距離、8近傍距離、8角形距離などを用いてもかまわない)。ただ、この実施例では、いわゆるリピータブルな単位絵柄として利用できるようなちりめん模様を作成するために、図10に示すように、上下左右に全く同一の模様作成面が隣接配置されているものとして、最も近くに存在する骨格図形との距離を求めるようにしている。もっとも、このステップS66に示す演算は、効率的な演算を行うために若干凝らした手法を用いている。すなわち、図10で説明した概念は、模様作成面M0内の所定の画素についての参照距離値を求めるために、5つの模様作成面M0〜M5上の骨格図形を考慮するような演算を行うというものであったが、このステップS66で行っている演算は、逆に、5つの模様作成面M0〜M5上の同一の画素について、模様作成面M0上の単一の骨格図形との距離を求める演算になっている。ステップS66に示す5つの演算式により、5つの距離値dist0〜dist4が求まることになるが、ここで、dist0は模様作成面M0内の画素と模様作成面M0内の骨格図形との距離を示し、dist1は模様作成面M1内の画素と模様作成面M0内の骨格図形との距離を示し、dist2は模様作成面M2内の画素と模様作成面M0内の骨格図形との距離を示し、dist3は模様作成面M3内の画素と模様作成面M0内の骨格図形との距離を示し、dist4は模様作成面M4内の画素と模様作成面M0内の骨格図形との距離を示す。そして、ステップS67において、dmin ,dist0,dist1,dist2,dist3,dist4の中の最小値が、新たなdmin として定義される。
【0065】
このような処理を、ステップS68およびS69を経て、着目中の第is番目の骨格図形の全線分について繰り返し実行し、更に、ステップS70およびS71を経て、全骨格図形について繰り返し実行する。そして、最後にステップS72において、その時点でのdmin を求める参照距離値として定義する。
【0066】
要するに、この図20の流れ図に示す手順は、1つの画素についての参照距離値を定義するために、この画素と、全骨格図形を構成する全線分との距離をすべて求め、その中の最小の距離を参照距離値とする手順である。特に、リピータブルな単位絵柄を構成するための付加的な演算は、図10にハッチングを施して示した輪郭近傍の画素についてのみ実行すればよいところ、上述の手順では、全画素について実行されることになる。このようないわゆる「総当たり」による演算手法は、決して効率的な手法とは言えないが、アルゴリズムは非常に簡単になるため、CPUの演算処理速度が向上してきている今日では、十分に実用性をもった方法である。
【0067】
最後に、この実施例による手法によって作成されたちりめん模様の具体例を図21および図22に示しておく。図21は、ある程度の配向性をもたせて骨格図形を配置した結果であり(骨格図形配置角の最大値φmax =30°に設定)、図の上下方向に配向性をもったちりめん模様が形成されている。これに対し、図22は、骨格図形を配向性をもたせずに配置した結果であり(φmax =90°に設定)、核となる骨格図形がランダムに勝手な方向を向いたちりめん模様が形成されている。
【0068】
なお、最終的に作成されるちりめん模様の特性と、パラメータとの関係は次のとおりである。
▲1▼個々のちりめん要素の密度→正方格子の間隔ds
▲2▼個々のちりめん要素の大きさ→線分長Lmin ,Lmax
▲3▼個々のちりめん要素の配向性→骨格図形配置角の最大値φmax
▲4▼個々のちりめん要素の均一性→格子点の変位量最大値dpmax
▲5▼個々のちりめん要素の縮れ具合→最大分岐角度θmax 。
【0069】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、コンピュータを利用して所望のちりめん模様を容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るちりめん模様の作成方法の基本手順を示す流れ図である。
【図2】本発明に係るちりめん模様の作成方法において、ちりめん模様の核となる骨格図形の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るちりめん模様の作成方法において、ちりめん模様の核となる骨格図形の更に別な例を示す図である。
【図4】図2に示す折れ線からなる骨格図形についての中心点Cおよび配向ベクトルVの定義方法を示す図である。
【図5】本発明に係るちりめん模様の作成方法において、模様作成面M上に定義された正方格子を示す図である。
【図6】図5に示す正方格子の各格子点Q上に、それぞれ骨格図形Fを配置した状態を示す図である。
【図7】図5に示す正方格子の各格子点Qをランダムに変位させて変位点Qを形成した状態を示す図である。
【図8】図7に示す各変位点Q上に、それぞれ骨格図形Fを配置した状態を示す図である。
【図9】模様作成面(XY平面)上に、3つの骨格図形F1〜F3が配置された状態において、各画素P1〜P3の参照距離値を定義する方法を説明する図である。
【図10】最終的にリピータブルな単位絵柄としての性質をもったちりめん模様を作成する場合の参照距離値の定義方法を説明する図である。
【図11】本発明に係るちりめん模様の作成方法において用いられる画素値テーブルの一例を示す図である。
【図12】本発明に係るちりめん模様の作成方法において用いられる周期的な画素値テーブルの一例を示す図である。
【図13】二値画像からなるちりめん模様を作成する際に用いられる画素値テーブルの一例を示す図である。
【図14】本発明に係る方法により、二値画像として得たちりめん模様の部分拡大図である。
【図15】本発明に係るちりめん模様の作成装置の基本構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の一実施例に係るちりめん模様の作成方法の前半段階の手順を示す流れ図である。
【図17】本発明の一実施例に係るちりめん模様の作成方法の後半段階の手順を示す流れ図である。
【図18】本発明の一実施例に係るちりめん模様の作成方法における骨格図形作成処理の手順を示す流れ図である。
【図19】本発明の一実施例に係るちりめん模様の作成方法における骨格図形配置処理の手順を示す流れ図である。
【図20】本発明の一実施例に係るちりめん模様の作成方法における参照距離値定義処理の手順を示す流れ図である。
【図21】本発明の一実施例に係る方法で実際に作成されたちりめん模様の一例を示す図である。
【図22】本発明の一実施例に係る方法で実際に作成されたちりめん模様の別な一例を示す図である。
【符号の説明】
10…パラメータ入力手段
20…乱数発生手段
30…骨格図形発生手段
40…骨格図形配置手段
50…参照距離値定義手段
60…画素値付与手段
70…画像出力手段
C…骨格図形の中心点
D0〜D4…骨格頂点(線分の端点)
d1〜d3…参照距離値(最も近い骨格図形との距離)
F,F1〜F3…骨格図形
Fz0,Fz3…輪郭近傍の骨格図形
G…ちりめん模様を有する画像
L1〜L4…骨格図形を構成する個々の線分
M,M0〜M4…模様作成面
P1〜P3…画素
Pz0,Pz3…輪郭近傍の画素
Q…格子点
…変位点
R…骨格図形の正則外接矩形
V…骨格図形の配向ベクトル
θ1〜θ3…線分の分岐角度

Claims (8)

  1. コンピュータが各段階の処理を実行することにより、所定の模様作成面上にちりめん模様を作成する方法であって、
    コンピュータが、それぞれが有限長の線からなる骨格図形を多数発生させる骨格図形発生段階と、
    コンピュータが、前記模様作成面上に前記多数の骨格図形を配置する骨格図形配置段階と、
    コンピュータが、前記模様作成面上に多数の画素を定義し、各画素について、それぞれ最も近くに存在する骨格図形との距離を求め、求めた距離値をその画素についての参照距離値と定義する参照距離値定義段階と、
    コンピュータが、前記参照距離値と所定の画素値とを対応づける所定の画素値テーブルに基づいて、前記各画素にそれぞれ所定の画素値を対応づける画素値付与段階と、
    コンピュータが、それぞれ所定の画素値が対応づけられた画素の集合からなる画像を、ちりめん模様を表現する画像として出力する画像出力段階と、
    を有することを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  2. 請求項1に記載の作成方法において、
    コンピュータが、骨格図形発生段階で、それぞれ乱数により決定された長さを有する複数n本の線分を、それぞれ乱数により決定された角度をもって相互接続することにより、n本の線分からなる折れ線を形成し、この折れ線を1つの骨格図形とすることを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  3. 請求項1または2に記載の作成方法において、
    コンピュータが、骨格図形配置段階で、模様作成面上に規則的に配置された多数の格子点を定義し、各骨格図形を個々の格子点に配置するか、もしくは、予め設定した最大変位量以下の値をとる変位量を個々の格子点ごとに乱数を用いて決定し、個々の格子点を前記変位量だけ変位させて得られる変位点に各骨格図形を配置することを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  4. 請求項3に記載の作成方法において、
    コンピュータが、各骨格図形にそれぞれ配向ベクトルを定義し、各骨格図形を配置する際に、予め設定した最大配置角度の範囲内の値をとる配置角度を乱数を用いて決定し、各骨格図形の配向ベクトルが所定の基準方向に対して前記配置角度をなすように回転させて配置することを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の作成方法において、
    コンピュータが、模様作成面として、同一図形を隣接配置することにより二次元平面を埋め尽くすことが可能な図形を輪郭とする有限平面を用い、
    コンピュータが、参照距離値定義段階で、前記輪郭近傍の画素についての距離を求める際に、前記輪郭外に同一の模様作成面が隣接配置されているものと仮定し、この隣接配置された模様作成面内の骨格図形をも考慮した上で、距離を求めることを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の作成方法において、
    コンピュータが、画素値付与段階で、参照距離値の変化に対して周期的に変化する画素値を対応づけた画素値テーブルを用いることを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  7. 請求項6に記載の作成方法において、
    コンピュータが、画素値として、第1の画素値および第2の画素値の二値を用い、参照距離値のとるべき範囲を所定幅をもった複数の区間に分割し、奇数番目の区間については第1の画素値を対応づけ、偶数番目の区間については第2の画素値を対応づける画素値テーブルを用いることを特徴とするちりめん模様の作成方法。
  8. 所定の模様作成面上に、ちりめん模様の画像を作成する装置であって、
    作成すべきちりめん模様を規定するパラメータを入力するパラメータ入力手段と、
    所定の数値範囲内の乱数を発生させる乱数発生手段と、
    前記パラメータに前記乱数を作用させて、有限長の線からなる骨格図形を発生させる骨格図形発生手段と、
    前記パラメータに前記乱数を作用させて、前記模様作成面上に前記骨格図形をランダムに多数配置する骨格図形配置手段と、
    前記模様作成面上に多数の画素を定義し、各画素について、それぞれ最も近くに存在する骨格図形との距離を求め、求めた距離値をその画素についての参照距離値と定義する参照距離値定義手段と、
    前記参照距離値と所定の画素値とを対応づける画素値テーブルを有し、この画素値テーブルに基づいて、前記各画素にそれぞれ所定の画素値を対応づける画素値付与手段と、
    それぞれ所定の画素値が対応づけられた画素の集合からなる画像を、ちりめん模様を表現する画像として出力する画像出力手段と、
    を有することを特徴とするちりめん模様の作成装置。
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