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JP3901495B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金製リール - Google Patents
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JP3901495B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金製リール - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金製リール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品実装用フィルムキャリアテープに半導体装置等の電子部品を実装する際に使用され、前記フィルムキャリアテープを巻回するアルミニウム又はアルミニウム合金製のリールに関し、特に、耐摩耗性を向上させると共に、摩耗により発生する金属屑粉を容易に除去できるようにするために磁性層を表面に設けたアルミニウム又はアルミニウム合金製リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子部品実装用フィルムキャリアテープとしては、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、T−BGA(Tape Ball Grid Array)テープ、CSP(Chip Size Package)テープ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)テープ等がある。例えば、TAB方式で電子部品としての集積回路(IC)及び高密度集積回路(LSI)等の半導体チップが実装されるキャリアテープとして、50乃至100μm厚の有機樹脂フィルム上に、10乃至15μmの接着層を介して厚さが10乃至20μmの銅箔を貼付したものがある。
【0003】
このフィルムキャリアテープは、その製造工程において、リールに巻き取られ、実装工程において、リールから巻き解かれる。このフィルムキャリアテープを巻き取るためのリールとして、リールの変形を防止し、リール寿命を延長し、即ち、取り替え寿命を延長するために、ある程度の剛性(強度及び耐力)が要求される。また、リールにテープを巻き付ける際及びリールからテープを巻き解く際に、テープがリール内面に摺動するため、リール内面が摩耗しやすく、このため、リール材料としては、耐摩耗性が要求される。更に、実装工程において、チップ上にレジストを焼き付ける際に、リール温度が上昇するため、リールには、レジスト焼き付け温度程度の耐熱性が要求される。更にまた、銅箔のエッチングに際し、銅のエッチング液(酸、アルカリ、塩化鉄等)に腐食しないことが必要で有る。更にまた、リール用素材としては、TABテープが薄い(30乃至300μm)ため、製品精度(加工精度)が高いことが必要である。
【0004】
そこで、このフィルムキャリアテープを巻回するためのリール材料としては、軽量であると共に、加工性が優れているアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム材という)が注目されている。このアルミニウム材は、軽量であるから、リールの大型化が容易であり、半導体装置の生産性が向上し、ランニングコストが低下する。
【0005】
しかしながら、アルミニウム材は鋼材等に比して耐摩耗性が劣るため、これをリールに適用すると、リールが摩耗しやすく、そうすると、リールにがたつきが生じ、テープ及び緩衝材の巻き擦れが発生し、テープに疵が発生したり、製造ラインにおいて摩耗粉が発生するという問題点がある。このような摩耗粉が発生すると、それが、例え、直径30μmの埃及び塵でも、チップ上又はテープ上に付着してチップ上又はテープ上の回路配線をショートさせてしまうという問題点がある。
【0006】
また、TAB半導体装置の製造ラインにおいて、リール内面の摩耗が発生すると、摩耗によりリールとテープとのクリアランスが変化し、TABテープの中心線がずれ、テープ上に実装された半導体チップ上の電極と、リード線とをワイヤボンディングしようとしたときに、電極とリード線との接点がずれるという問題点もある。また、極端な場合には、TABテープのアンコイル及びリコイルが不可能になる。
【0007】
そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金製リールの耐摩耗性を改善するため、表面をアルマイト(硬質アルマイト処理)処理してアルマイト皮膜を形成する技術が提案されている(特開平11−245988号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このアルマイト皮膜を設けたリールは、アルマイト皮膜の耐熱温度が100℃以下であるため、耐熱性が低いという問題点がある。TABテープを巻回したリールは、レジストの焼き付け及び乾燥工程において、リール温度が150乃至250℃まで上昇するため、アルマイト皮膜(陽極酸化皮膜)にクラックが発生し、極端な場合には皮膜の破壊及び剥離が生じる。このため、リールのガタツキが生じ、テープ及び緩衝材の巻き擦れによる製品疵の発生及び摩耗粉の発生を防止することができなかった。
【0009】
そこで、本願出願人は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のリール本体の表面に、耐摩耗性層として、Ni又はNi合金からなる磁性層を電気めっきにより形成したアルミニウム又はアルミニウム合金製リールを提案し、出願した(出願番号:特願2001−079340号、出願日:平成13年3月19日)。この先行出願は本発明の出願時に未公開である。この先行出願に係る発明は、リール本体の表面にNi又はNi合金の電気めっき層を形成することにより、耐熱性を損ねることなく耐摩耗性を向上させると共に、その使用の過程で、テープの摺動によりリールに摩耗が生じても、剥離するものはNi又はNi合金からなる磁性層であるので、発生した摩耗粉は、磁石により吸着除去することができ、チップ上又はテープ上に摩耗粉が残存することを回避できる。この先行出願に係る発明はその所期の目的は達成したものの、本願発明者等が更に研究を進めた結果、Niめっき皮膜にふくれが発生しやすく、耐食性が低いという問題点があることが判明した。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性、耐熱性及び耐食性が優れたアルミニウム又はアルミニウム合金製リールを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金製リールは、長尺状フィルムを巻回するアルミニウム又はアルミニウム合金からなるリール本体と、このリール本体の表面に無電解めっきにより形成された耐食性付与層と、この耐食性付与層の上に電気めっきにより形成された磁性金属又は合金からなる磁性層と、を有し、前記磁性層と前記耐食性付与層との間の水中での自然電位差が500mV以下であることを特徴とする。
【0013】
また、前記磁性層は、Ni又はNi合金層であることが好ましい。更に、前記耐食性付与層は、Ni、Ni合金、Co及びCo合金からなる群から選択された1種、例えば、NiP合金であることが好ましい。更にまた、前記耐食性付与層の厚さは例えば3μm以上である。更に、前記磁性層の上に上層耐食性付与層を形成することが好ましく、この上層耐食性付与層としては、クロメート処理皮膜、リン酸塩処理皮膜、ZrO皮膜、SiO膜、TiO膜又はクロム酸化物皮膜(CrO膜)を形成することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施例に係るアルミニウム又はアルミニウム合金製リールの層構成を示す断面図である。リール本体としてのアルミニウム材11の表面上に、Ni−Pめっき層12が無電解めっきにより形成されており、このNi−Pめっき層12上に、Niめっき層13が電気めっきにより形成されている。
本発明者等が、リール表面に形成したNi又はNi合金(以下、これをNiで総称する)磁性層のふくれの発生原因について鋭意実験研究を重ねた結果、磁性層が電気めっきにより形成されたことが要因であることを見出した。その第1の原因としては、図5(a)に下地アルミニウム材1の上にNiめっき層2が電気めっきにより形成された状態を示すように、Niめっき層2には、ピンホール3,4が少なからず存在していることが挙げられる。このピンホール3,4は、Niめっき層2を貫通するもの(ピンホール3)と貫通しないもの(ピンホール4)とがあるが、貫通ピンホール3はNiめっき層2が薄いほど、多くなる。第2の原因としては、電気めっきの場合には一般的に成膜速度は速いものの膜厚分布性が悪く、図4(a)に示すように、Niめっき層2は均一な膜厚とはならないことである。即ち、図4(a)にアルミニウム材からなるリールの一部の構成部材の断面を示すように、下地のアルミニウム材1がL字形に屈曲している場合、このアルミニウム材1の表面にNiめっき層2を電気めっきにより形成すると、コーナ外側で膜厚が厚くなり、コーナ内側で膜厚が薄くなり、更に、電気めっき装置における対極に近い部位で膜厚が厚くなり、対極から離れている部位で膜厚が薄くなる。
【0015】
そして、リールが塩酸ミスト及び硫酸ミスト等の腐食環境に晒されている場合、この皮膜に生じたピンホール3を介して、酸素、水分及び腐食促進イオンが下地のアルミニウム材1まで拡散し、母材のアルミニウム材が腐食する。即ち、図5(b)に図5(a)の破線にて示す部分を拡大して示すように、リール表面に吸着したCl及びSO 2−と、Niめっき層2が反応してNi酸化物5が生成する。一方、リール表面の吸着水がピンホール3を介して下地アルミニウム材1まで浸透する結果、Niめっき層2とアルミニウム材1とのガルバニック電位差により、アルミニウム材1にガルバニック腐食が発生する。更に、リールが塩酸ミスト及び硫酸ミスト等の腐食環境に晒されている場合、塩素及び硫酸イオンによりpHが低下するために腐食が促進される。
【0016】
そして、図5(c)に示すように、この腐食生成物7はNiめっき層2と下地アルミニウム材1との間に生成する。この腐食生成物7は腐食が進行すると体積膨張し、図5(d)に示すように、Niめっき層2を押し上げ、Niめっき層2が浮き上がってふくれとなり、最終的にはアルミニウム材1から剥離する。即ち、図4(a)に示すように、コーナ内側をはじめ、膜厚が薄い部位ほど、Niめっき層2のふくれ8が発生しやすい。加えて、アルミニウム合金の腐食生成物である白錆が、ピンホール3、めっきの割れ部、及び剥離部からリール表面に滲み出てくる。
【0017】
このようにして、Niめっきアルミニウム又はアルミニウム合金製リールの腐食メカニズムを本発明者等は知見した。本発明においては、この問題点を解消するために、図1に示すように、下地のアルミニウム材11の表面に、先ず、Ni−Pめっき層12を無電解めっきにより形成し、このNi−Pめっき層12の上に、Niめっき層13を電気めっきにより形成する。
【0018】
Ni−Pめっき層12は、無電解めっきにより形成するので、電気めっきに比較して膜厚分布が一定となり易い。特に、図4(b)に示すように、めっき液の攪拌が悪い部位例えばコーナ内側において、若干膜厚変動の可能性があるが、基本的には膜厚変動は少なく、膜厚分布を均一にすることができる。従って、電気めっきのようなコーナ内側からの腐食が優先して発生するという現象は認められなかった。
【0019】
そして、無電解めっきによりNi−Pめっき層12を形成すると、このNi−Pめっき層12においては、貫通していないピンホール15は存在するものの、貫通ピンホール14が著しく減少する。このため、電気めっきに比較してCl 及びSO 2− 等の腐食イオンが下地アルミニウム材11まで到達する確率が小さく、アルミニウム材11に腐食が発生し難い。よって、めっき層にフクレ現象が発生することを回避でき、リールの耐食性を向上させることができる。
【0020】
一方、フィルムキャリアテープは、リール表面のNiめっき層13に摺動するが、このNiめっき層13は耐摩耗性を有するため、テープの摺動によるめっき層の摩耗を防止することができる。また、仮に、テープの摺動により、Niめっき層13が摩耗したとしても、この摩耗粉は、強磁性を有しているので、磁石に容易に磁力吸着し、フィルムキャリアテープ上及びチップ上から除去することができる。
【0021】
なお、このNiめっき層13は、従来と同様に、貫通ピンホール14を有するが、前述のごとく、このNiめっき層13と下地アルミニウム材11との間には、Ni−Pめっき層12が存在しているので、腐食性イオンが下地アルミニウム材11まで到達することは殆どなく、耐食性が向上する。即ち、めっき層を2層設けることでNiめっき層13にピンホールが発生したとしても、Ni−Pめっき層12では上述したようにピンホールの発生は著しく少なく、また各めっき層は別工程で生成されるため、両めっき層の間で同一位置にピンホールが発生し、ピンホールが貫通するという確率は極めて小さく、ピンホールの縁切りができる。従って、リール表面から下地アルミニウム材11まで貫通するピンホールが無くなるので、下地アルミニウム材11への酸素イオン及び腐食促進イオンの拡散を遅らせることができ、耐食性を向上させることができる。更に、前述のごとく、電気めっきにより形成されたNiめっき層13は、電流分布が存在するために、膜厚分布が不均一であり、薄い部分が存在するが、無電解めっきにより形成されたNi−Pめっき層12は、膜厚分布が略均一であり、Niめっき層13の薄い部分を補う。
【0022】
従って、本発明のアルミニウム又はアルミニウム合金製リールは、耐摩耗性が優れていると共に、耐食性も優れている。
【0023】
Niめっき層13は、磁性金属又は磁性合金からなる磁性層である。この磁性層として使用できる金属又は合金としては、Niの他に、Fe及びCo等の金属と、それらの合金があり、この合金としては、例えば、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、Co−Ni合金、Ni−P合金等がある。
【0024】
Ni−P層12は、磁性層と、下地アルミニウム材11との間に介在して、アルミニウム又はアルミニウム合金製リールの耐食性を高める耐食性付与層として形成される。このような耐食性付与層のめっき種としては、Ni、Coの他、Au、Sn、Pt、Pd等の単一金属めっき、並びにNi−P、Ni−B、Ni−W、Co−P、Co−Bのような二元系めっき、Co−Ni−Pをはじめとする三元系めっき、分散めっき、及び多層めっきのような複合めっきも使用することができる。
【0025】
なお、無電解Ni系及びCo系めっき層は、膜厚制御が容易であると共に、めっき浴が比較的安定しており、コストが低い。また、めっき層を、リールの細部、凹部及び穴部にも均一に成膜させることができ、所謂めっきの付き回り性が良い。更に、無電解Niめっき層及び無電解Coめっき層は、電気めっきにより形成する磁性金属層(Ni,Fe,Co)との間の密着性が優れていると共に、これらと自然電位が近いという利点がある。但し、Ni、Coはめっき浴が不安定である。Ni及びCoの三元系めっき及び複合めっきは浴管理が難しく、製造コストが上昇する。Cu及びRdは電位が貴である。また、Au、Sn、Pt、Rd等はNi電気めっき層に対する密着性が低く、電位が貴であり、高価である。Zn、Zn−Ni等は、電位が卑である。
【0026】
磁性層と、無電解めっき層との間の自然電位差は、500mV以下、好ましくは200mV以下であることが望ましい。この自然電位差は、25℃における電極反応における金属の標準電極電位から求まる。この標準電極電位は、以下のとおりである。
Fe⇔Fe2+:−440mV
Co⇔Co2+:−277mV
Ni⇔Ni2+:−250mV
Cu⇔Cu2+:337mV
Zn⇔Zn2+:−762mV
【0027】
無電解めっき層が、無電解Cuめっき層である場合は、Cuの標準電極電位が磁性金属層の成分であるNiやCo、Feよりも貴であるため、腐食環境が厳しい場合、電位が卑である磁性金属層との間にガルバニック反応が生じ、磁性金属層が優先的に腐食することがある。その結果、磁性層がNiである場合は、Niが少しずつ溶出した結果、最終的には下地の無電解めっき層のCuが露出する。Cuは磁性を有しないので、磁性を有しない酸化物が摩耗粉に混入する。そうすると、摩耗粉を磁石により除去することができない。
【0028】
耐食性付与層が亜鉛置換めっきの場合は、Znの標準電極電位が磁性金属層の成分であるNiやCo、Feよりも卑であるため、電位が貴である磁性金属層との間に、ガルバニック反応が生じ、耐食性付与層が優先的に腐食することが考えられる。その結果、亜鉛酸化物が生成し、めっき層のふくれ及び割れが発生し、磁性金属膜が剥離する虞がある。
【0029】
このような場合でも、各々のめっき膜厚を厚くすることで、腐食環境がマイルドな環境下例えば、フィルムキャリアテープの検査ラインで使われるリールとして利用できる。しかしながら、磁性層と無電解めっき層との自然電位差は、基本的に小さい方が望ましく、500mV以下、好ましくは200mV以下であることが望ましい。
【0030】
次に、本発明の他の実施例について図2を参照して説明する。図2に示すように、下地アルミニウム材11と、耐食性付与層としての無電解Ni−Pめっき層12との間に、密着性付与層として、ジンケート層又はアルマイト層14が形成されている。
【0031】
このように、無電解Ni−Pめっき層12と下地アルミニウム材11との間に、ジンケート層又はアルマイト層14を設けることにより、無電解Ni−Pめっき層12と下地アルミニウム材11との間の密着性を向上させることができる。
【0032】
次に、図3を参照して、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例においては、磁性層であるNiめっき層13の上に、上層耐食性付与層として、クロメート皮膜17が形成されている。このクロメート皮膜17は化成処理により形成することができ、このクロメート皮膜17を形成することにより、耐食性が向上する。
【0033】
上層耐食性付与層としては、クロメート皮膜の他に、酸化クロム皮膜、リン酸クロム皮膜、及び水酸化クロム皮膜等のクロム系皮膜、リン酸亜鉛皮膜、リン酸カルシウム皮膜、リン酸鉄皮膜、及びリン酸マンガン皮膜等のリン酸塩処理皮膜に加え、酸化ニッケル皮膜、水酸化ニッケル皮膜、水ガラス処理皮膜、ノンクロメート処理(塗布型の樹脂系皮膜、反応型のチタン系又はジルコニウム系皮膜)、又はそれらの混合皮膜がある。更に、上層耐食性付与層としては、湿式めっき皮膜、乾式めっき皮膜、窒化物皮膜、ほう化物皮膜、炭化物皮膜、炭窒化物皮膜、塗装膜、ゾルゲル処理などの極薄皮膜、機械加工による応力付与層、又は磁性金属若しくは合金及び多結晶膜の複合膜とすることもできる。
【0034】
このように、磁性層の上に、上層耐食性付与層を形成することにより、下地アルミニウム材への酸素及び腐食促進イオンの拡散を遅らせることができると共に、上層耐食性付与層が磁性金属層のピンホールを埋めることになり、アルミニウム材への酸素及び腐食促進イオンの拡散を更に遅らせることができる。この上層耐食性付与層が有機材料又は無機材料の絶縁層である場合は、腐食反応(電気化学的反応)を抑制することができる。更に、上層耐食性付与層が化成処理皮膜の場合は、膜厚が薄く、分布が均一であり、一様に被覆することができることから、電気めっきにより形成した磁性層の薄膜部位を補うことができると共に、磁性を損なうことがない。更にまた、上層耐食性付与層が、クロム系皮膜の場合は、膜厚の制御が容易であり、自己修復作用があり、磁性金属層との密着性が優れており、薄膜では色調に変化を及ぼさないため、傷付き、摩耗又は摩滅が生じても、むらにならないという利点がある。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。下記表1は、膜構成と、磁性金属層と下層耐食性付与層との間の電位差、及び塩水噴霧試験結果を示す。塩水噴霧試験はJIS C 0024環境試験方法(電気・電子)塩水噴霧サイクル試験方法に準じて、複合サイクル腐食試験(CCT)を実施した。下地アルミニウム材は、JISのA6061であり、めっき処理に先だってアセトン脱脂、アルカリ脱脂、酸洗を施して清浄化した後、ジンケート処理を行った。このアルミニウム材の表面上に、耐食性付与層(下層)を無電解めっきにより形成した。その後、耐食性付与層(下層)上に、磁性層を電解めっきにより形成した。更に、磁性層の上に、耐食性付与層(上層)を形成したものもある。
【0036】
【表1】
Figure 0003901495
【0037】
下層耐食性付与層は以下のように作製した。無電解Ni−P、Ni−B、Ni−B−Pについては日本カニゼン社製めっき液「カニゼン」、「カニボロン」を用い、標準条件にて処理した。無電解Co−Pについては硫酸コバルト0.05mol/dm、次亜リン酸0.2mol/dm、硫酸アンモニウム0.5mol/dm、酒石酸ナトリウム0.5mol/dmからなる90℃の液に浸漬して作製した。また、無電解Ni−Co−Pについては、上記無電解Co−P液に硫酸ニッケル0.05mol/dmを添加した90℃の液に浸漬して作製した。また、無電解Cuについては硫酸銅30g/dm、ロシェル塩100g/dm、ホルムアルデヒド30cm/dm、炭酸ナトリウム30g/dm、水酸化ナトリウム50g/dmからなる室温の液に浸漬して作製した。また、亜鉛置換めっきについては、アトテックジャパン社製「トライボンAC」を用い、標準条件にて処理した。
【0038】
磁性層は以下のように作製した。電気Niめっきは、硫酸ニッケル300g/dm、塩化ニッケル45g/dm、ホウ酸30g/dmからなる所謂ワット浴を用い、50℃にて5A/dmの電流密度にて処理した。電気Ni−Znめっきは上記ワット浴に硫酸亜鉛100g/l、硫酸50ml/lを添加し、50℃にて5A/dmの電流密度にて処理した。電気Ni−Coめっきは硫酸ニッケル240g/dm、塩化ニッケル45g/dm、硫酸コバルト15g/dm、ホウ酸30g/dm、ギ酸ニッケル50g/dm、ホルマリン2.5ml/dmからなる所謂ワイスベルグ浴を用い、60℃にて5A/dmの電流密度にて処理した。電気Ni-Feめっきは硫酸ニッケル100g/dm、塩化ニッケル50g/dm、ホウ酸50g/dm、硫酸第一鉄15g/dm、錯化剤30g/dmからなる液を用い、60℃にて5A/dmの電流密度にて処理した。電気Coめっきは硫酸コバルト300g/dm、ホウ酸30g/dmからなる単純浴を用い、60℃にて3A/dmの電流密度にて処理した。電気Feめっきは硫酸第一鉄500g/dm、ホウ酸30g/dmからなる単純浴を用い、60℃にて20A/dmの電流密度にて処理した。
【0039】
更に、上層耐食性付与層は以下のように作製した。クロメート処理は日本パーカライジング社製「アロジン600」を用い、標準条件にて処理した。ジルコニウム塩処理は日本パーカライジング社製「アロジン404」を用い、標準条件にて処理した。リン酸塩処理は日本パーカライジング社製「グラノジン313」を用い、標準条件にて処理した。
【0040】
また、磁性金属層、下層耐食性付与層の自然電位は、30℃の脱気イオン交換水中にて飽和甘コウ電極を照合電極として測定した。また、耐食性試験は、JIS C 0024環境試験方法(電気・電子)塩水噴霧サイクル試験方法に準拠して、複合サイクル腐食試験(CCT)を実施した。試験条件として、塩水噴霧2時間、恒温高湿(30℃、RH80%)で2時間の計4時間を1サイクルとする複合サイクル腐食試験(CCT)を行い、目視による白錆発生までのサイクルを測定した。
【0041】
この表1から明らかなように、試験No.1の場合は、磁性層(Ni層)のみであるので、複合サイクル腐食試験(CCT)における白錆発生時間が8サイクルと極めて短いものであった。これに対し、磁性層とアルミニウム材との間に下層耐食性付与層を設けた試験No.2〜14の場合は、白錆発生までの時間が延長された。しかし、試験No.2、3の場合は、磁性金属層と下層耐食性付与層との間の電位差が500mV以上と高いため、白錆が20サイクル以下で発生した。試験No.1乃至3が本発明の範囲から外れる比較例である。試験No.4乃至14が本発明の実施例である。
【0042】
試験No.5乃至7は、磁性層が厚さ10μmのNiめっき層であり、このNiめっき層とアルミニウム材との間にNi−Pめっき層を設け、このNi−Pめっき層の厚さを2μm、3μm、10μmと変化させた場合のものであるが、Ni−Pめっき層の厚さが厚くなるにつれて、耐食性が向上していることがわかる。
【0043】
表1から理解されるように、Ni−P無電解めっき層が3μm以上の場合に白錆発生時間が170サイクル以上と著しく高くなる。従って、無電解めっき層の厚さを3μm以上とした。
【0044】
また、試験No.12乃至14のように、下層耐食性付与層として、厚さが10μmのNi−P層を設け、その上に、磁性層として、厚さが10μmのNi層を設け、更に、その上に上層耐食性付与層としてクロメート皮膜層、リン酸塩皮膜層、ZrO層、SiO層、TiO層又はCrO層等を形成した場合は、極めて優れた耐食性を示した。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、耐摩耗性及び耐食性の双方が優れたアルミニウム又はアルミニウム合金製リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す層構成の断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す層構成の断面図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す層構成の断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、めっき方法の相違によるめっき膜厚分布の相違を示す図である。
【図5】(a)乃至(d)は腐食の発生メカニズムを示す図である。
【符号の説明】
1,11:下地アルミニウム材
2,13:Niめっき層
3,4,14,15:ピンホール
7:腐食生成物
12:Ni−Pめっき層

Claims (7)

  1. 長尺状フィルムを巻回するアルミニウム又はアルミニウム合金からなるリール本体と、このリール本体の表面に無電解めっきにより形成された耐食性付与層と、この耐食性付与層の上に電気めっきにより形成された磁性金属又は合金からなる磁性層と、を有し、前記磁性層と前記耐食性付与層との間の水中での自然電位差が500mV以下であることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  2. 前記磁性層は、Ni又はNi合金層であることを特徴とする請求項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  3. 前記耐食性付与層は、Ni、Ni合金、Co及びCo合金からなる群から選択された1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  4. 前記耐食性付与層は、NiP合金であることを特徴とする請求項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  5. 前記耐食性付与層の厚さは3μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  6. 前記磁性層の上に上層耐食性付与層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
  7. 前記上層耐食性付与層が、クロメート処理皮膜、リン酸塩処理皮膜、ZrO皮膜、SiO皮膜、TiO皮膜又はクロム酸化物皮膜のいずれかであることを特徴とする請求項に記載のアルミニウム又はアルミニウム合金製リール。
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