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JP6669375B2 - ターボチャージャ用のコンプレッサインペラ及びその製造方法 - Google Patents
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ターボチャージャ用のコンプレッサインペラ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラ及びその製造方法に関する。
自動車や各種産業用の原動機に使用されている内燃機関には、内燃機関の排ガスによってタービンホイールを回転させて、タービンホイールと同軸上に連結されたコンプレッサインペラを回転させることにより吸気を圧縮するターボチャージャを備えたものがある。そして、近年、内燃機関の性能向上及び環境負荷の軽減を目的として、内燃機関の排ガスの一部をターボチャージャにおける吸気流路の上流側に循環させる低圧排ガス循環(LPL−EGR、Low-pressure Loop Exhaust Gas Recirculation)システムが採用されている。このLPL−EGRシステムでは、コンプレッサは排ガスを含んだ吸気を圧縮することから、当該排ガスが有する腐食成分がコンプレッサインペラに接触するため、コンプレッサインペラが腐食するおそれがあるとともに、コンプレッサインペラの高速回転に伴って摩耗も急激に進行するおそれが有る。そこで、コンプレッサインペラの母材に化成皮膜処理、陽極酸化皮膜処理、金属メッキや各種コーティングを施して母材表面を改質して、コンプレッサインペラの腐食及び摩耗を防止することが行われている。例えば、特許文献1に開示の構成では、インペラの母材表面に耐食性と耐摩耗性を担保するコーティング層を備えた構成が開示されている。
特開2016−169613号公報
しかしながら、コンプレッサインペラは超高速回転時に微小振動することから、コンプレッサインペラの皮膜は微小振動による破損を防止するために母材との密着性及び柔軟性とを兼ね備えることがさらに要求される。そして、コンプレッサインペラの皮膜が耐食性及び耐摩耗性に加え、密着性及び柔軟性を十分に備える構成とするには、改善の余地がある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、耐食性、耐摩耗性、密着性及び柔軟性を兼ね備えた皮膜を有するターボチャージャ用のコンプレッサインペラを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、
該母材の表面を被覆するバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜と、
を備え、
上記細孔には非晶質シリカが封入されている、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラにある。
本発明の他の態様は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材を電解液に浸漬して、該母材の表面に陽極酸化皮膜処理を施して、上記母材の表面を覆うバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜を形成するアルマイト皮膜形成工程と、
上記細孔に非晶質シリカを封入するシリカ封入工程と、
を含むターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法にある。
上記一の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラによれば、母材の表面に形成されたアルマイト皮膜のバリア層により、当該コンプレッサインペラに耐食性が付与される。さらに、アルマイト皮膜の多孔質層における多数の細孔にシリカが封入されていることによって、当該コンプレッサインペラに耐摩耗性が付与される。そして、アルマイト皮膜は、アルミニウム合金からなる母材に対して密着性に優れており、柔軟性を合わせ持つ。そのため、当該コンプレッサインペラが高速回転して微小振動しても、コンプレッサインペラの表面に破損や亀裂が発生することが防止されている。
上記他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法によれば、上記作用効果を奏するターボチャージャ用のコンプレッサインペラを製造することができる。そして、
本発明によれば、耐食性、耐摩耗性、密着性及び柔軟性を兼ね備えた皮膜を有するターボチャージャ用のコンプレッサインペラを提供することができる。
実施例1における、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの斜視図。 実施例1における、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの皮膜構成を説明するための模式図。 実施例1における、クロム酸アルマイトの形成状態を説明するための模式図。 実施例1における、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法を表したフロー図。 実施例1における、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法を説明するための模式図。 実施例1の評価試験における比較例1、2の結果を表す図。 実施例1の評価試験における比較例3の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例2の結果を表す図。 実施例1の評価試験における比較例3の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例1の評価試験における比較例3の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例1の評価試験における試験例1の結果を表す図。 実施例2の評価試験における比較例4、5の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例3、4の結果を表す図。 実施例2の評価試験における比較例4の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例3の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例3の結果を表す図。 実施例2の評価試験における比較例4の結果を表す図。 実施例2の評価試験における比較例4の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例3の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例3の結果を表す図。 実施例2の評価試験における試験例4の結果を表す図。 実施例3の評価試験における比較例6、7の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例5、6の結果を表す図。 実施例3の評価試験における比較例6の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例5の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例5の結果を表す図。 実施例3の評価試験における比較例6の結果を表す図。 実施例3の評価試験における比較例6の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例5の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例5の結果を表す図。 実施例3の評価試験における試験例6の結果を表す図。
上記アルマイト皮膜は、クロム酸アルマイトからなることが好ましい。この場合は、アルマイト皮膜における母材への密着性及び柔軟性が一層高まる。さらに、アルマイト皮膜の多孔質層において細孔がアルマイト皮膜の厚さ方向に対して斜めに延びて樹状に形成されるため、当該細孔に封入されたシリカが放出されにくく、シリカを細孔内に安定的に存在させることができる。また、クロム酸アルマイトによれば、クロム酸アルマイト形成による寸法変化が比較的小さい。そのため、母材の形状を維持しやすく、コンプレッサインペラ1の成形精度を高めることができる。
上記シリカは非晶質シリカである。これにより、シリカを溶液中に分散させやすくなり、アルマイト皮膜の細孔にシリカを封入することが容易となる。
上記アルマイト皮膜の厚さが3〜8μmの範囲内であることが好ましい。アルマイト皮膜の厚さが3μmよりも小さい場合は、耐食性を充分に確保することができない。また、アルマイト皮膜の厚さを8μmよりも大きくするには、皮膜形成に時間がかかるとともに耐食性もそれほど上昇しないため、コスト面で不利となる。
上記多孔質層にはシリカを主成分とするシリカ含有層が積層されていることが好ましい。この場合には、排ガスに含まれる異物や排ガス浄化装置におけるセラミック製の触媒担体から剥離したセラミックの微粒子等がLPL−EGRを介して、コンプレッサインペラに衝突しても、コンプレッサインペラの最外表に形成されたシリカ含有層が当該衝突の衝撃を吸収することにより、コンプレッサインペラの耐摩耗性を大きく向上させ、加えてコンプレッサインペラの破損を防止することができる。
また、上記ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法において、上記シリカ封入工程では、上記母材をコロイダルシリカ液に浸漬して、電気泳動により上記コロイダルシリカ液に含まれるコロイダルシリカを上記複数の細孔に封入することが好ましい。この場合には、アルマイト皮膜の多孔質層における細孔にシリカを確実に封入することができる。そして、アルマイト皮膜形成工程及びシリカ封入工程を一貫ラインで行うことが容易となるため、製造工程における作業効率を向上することができる。
上記コロイダルシリカにおけるコロイド粒子の粒径D50は5〜55nmの範囲内であることが好ましい。この場合は、コロイダルシリカのコロイド粒子が十分小さくなるため、シリカ封入工程においてコロイダルシリカがアルマイト皮膜の細孔に封入されやすくなる。
なお、コロイド粒子の粒径は、粒子写真において観察される粒子の形状から導出することができる。粒子写真において観察される粒子の形状が球形である場合はその直径を粒径とする。一方、粒子の形状が球形でなく、多面体状や不特定形等である場合には、円投影法で求められる円相当径を粒径とする。
本発明のさらに他の態様は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、
該母材の表面を被覆するバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜と、
を備え、
上記細孔には非晶質シリカが封入されており、
上記アルマイト皮膜は、硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなる、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラにある。
上記さらに他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラでは、アルマイト皮膜が硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなることにより、アルマイト皮膜における母材への密着性及び柔軟性が一層高まる。また、比較的安価にアルマイト皮膜を形成できるため、コスト面で有利となる。さらに、硫酸アルマイトは成膜速度が速いため、製造期間の短縮化が図られる。また、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜は比較的透明性が高く、染色物質の吸着性が高いことから染色性に優れる。そして、シュウ酸アルマイトはある程度の柔軟性を有するため、アルマイト皮膜にクラックが比較的発生しにくい。また、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜は高い耐食性を示す。
上記さらに他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラでは、上記シリカは非晶質シリカである。これにより、シリカを溶液中に分散させやすくなり、硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜の細孔にシリカを封入することが容易となる。
上記さらに他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラでは、上記硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜の厚さが3〜8μmの範囲内であることが好ましい。アルマイト皮膜の厚さが3μmよりも小さい場合は、耐食性を充分に確保することができない。また、アルマイト皮膜の厚さを8μmよりも大きくするには、皮膜形成に時間がかかるとともに耐食性もそれほど上昇しないため、コスト面で不利となる。
上記さらに他の態様のターボチャージャ用のコンプレッサインペラでは、硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜における上記多孔質層にはシリカを主成分とするシリカ含有層が積層されていることが好ましい。この場合には、排ガスに含まれる異物や排ガス浄化装置におけるセラミック製の触媒担体から剥離したセラミックの微粒子等がLPL−EGRを介して、コンプレッサインペラに衝突しても、コンプレッサインペラの最外表に形成されたシリカ含有層が当該衝突の衝撃を吸収することにより、コンプレッサインペラの耐摩耗性を大きく向上させ、加えてコンプレッサインペラの破損を防止することができる。
(実施例1)
上記ターボチャージャ用のコンプレッサインペラの実施例について、図1〜図16を用いて説明する。
図1に示す本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1は、図2に示すように、母材10とアルマイト皮膜20とを備える。
母材10は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
アルマイト皮膜20は、母材10の表面11を被覆するバリア層21と、バリア層21に積層されるとともに複数の細孔23を有する多孔質層22とを含む。
そして、細孔23にはシリカ30が封入されている。
本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1は、図示しないターボチャージャにおいて、タービンホイールが一端に接続されたロータシャフトの他端に接続されて、コンプレッサハウジング内で給気を圧縮するように構成されている。図1に示すようにコンプレッサインペラ1は大小の羽根1a、1bをそれぞれ複数組(本例では6組)備えており、大小の羽根1a、1bが軸心1cを中心に交互に配列している
図2に示す母材10はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、後述のアルマイト皮膜が形成可能であれば、特に限定されない。例えば、母材10は高力アルミニウム合金とすることができ、本実施例ではAl−Cu系アルミニウム合金A2618(2.3Cu1.6Mg1.1Fe1Ni0.18Si0.07Ti)を採用した。
図2に示すアルマイト皮膜20の種類は、例えば、クロム酸アルマイト、シュウ酸アルマイト、硫酸アルマイト、リン酸アルマイトなどとすることができる。中でも、アルマイト皮膜20はクロム酸アルマイトからなることが好ましい。クロム酸アルマイトは、図3に示すように、細孔23がアルマイト皮膜20の厚さ方向Xに対して斜めに延びて樹状に形成される。これにより、当該細孔23にシリカ30を封入したときにシリカ30が安定的に保持されることとなる。なお、図2において、母材10、アルマイト皮膜20、バリア層21、多孔質層22及び細孔23の大きさ及び形状は実際のものとは異なり、説明の都合上、便宜的に示したものである。
図2に示すように細孔23にはシリカ30が封入されている。細孔23に封入されるシリカ30の種類は、限定されないが、例えば、非結晶すなわちアモルファスのシリカを採用することができる。本実施例では、後述のシリカ封入工程S3において細孔23に封入するシリカとしてコロイダルシリカを採用している。当該コロイダルシリカにおけるコロイド粒子の粒径D50は5〜55nmとすることができ、好ましくは20〜40nmである。
図2に示すように、シリカ30が封入された細孔23は封孔処理にされて開口部31が閉じられている。封孔処理は特に限定されず、加圧水蒸気による封孔処理、沸騰水中の封孔処理、酢酸ニッケル封孔処理及び重クロム酸封孔処理を含む無機物もしくは有機物の添加による封孔処理などとすることができる。
図2に示すように、本実施例では、多孔質層22にシリカ含有層41が積層されている。シリカ含有層41は、シリカを主成分とする。シリカ含有層41の厚さは特に限定されないが、4〜20μmとすることができる。本実施例では、シリカ含有層41は後述のシリカ封入工程S3において多孔質層22に積層されたコロイダルシリカを主成分とし、封孔工程S4において形成された水和物が混合されたものと推定される。
次に、本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1の製造方法について、詳述する。
図4に示すように、本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1の製造方法は、アルマイト皮膜形成工程S2、シリカ封入工程S3を含む。本実施例では、アルマイト皮膜形成工程S2の前に準備工程S1を含み、シリカ封入工程S3の後に封孔工程S4を含む。
まず、図4に示す準備工程S1において、コンプレッサインペラ1の母材10を作製する。準備工程S1では、図5(a)に示すように、コンプレッサインペラ1の母材10の素材となる高力アルミニウム合金を用意する。そして、当該素材を機械加工することによりコンプレッサインペラ1の外形に成形して母材10を作製する。機械加工の方法は限定されないが、NCターニングセンタやマニシングセンタによる切削、研削等を採用できる。成形した母材10は寸法検査を行い、バランス取りを行って高精度に成形して仕上げる。
その後、図4に示すアルマイト皮膜形成工程S2において、図5(b)に示すように、陽極酸化皮膜処理により母材10の表面11にアルマイト皮膜20を形成する。アルマイト皮膜形成工程S2では、まず、母材10の表面11に付着した油脂分や汚れを除去するための脱脂及び洗浄を行う。本実施例では脱脂は、酸性脱脂剤を40〜60ml/L、硫酸を30〜50ml/L、温度55℃の条件下で120秒間処理する。その後、必要に応じて母材10の表面11をマスキングした後、図示しない治具に固定し、再度脱脂及び洗浄を行う。そして、アルカリエッチング及びスマット処理及び洗浄を行って、母材10の表面11の汚れや異物を完全に除去する。
そして、治具に固定した母材10を電解液で満たした電解槽(図示せず)に浸漬し、同じく電解槽に浸漬した陰極と(図示せず)母材10に電圧を印加する。本実施例では、電解液として5〜10%w/vの無水クロム酸(CrO)水溶液を使用した。電圧の印加により、図5(b)に示すように、母材10を陽極として母材10の表面11に陽極酸化皮膜、すなわちアルマイト皮膜20が形成される。そして、アルマイト皮膜20は、母材10の表面11を覆うバリア層21と、バリア層21から多孔質状に成長してバリア層21に積層されてなる多孔質層22とを含んでいる。当該多孔質層22はアルマイト皮膜20の厚さ方向Xに延びる細孔23を複数含んでいる。なお、アルマイト皮膜20の厚さは、3〜8μmとすることができ、好ましくは5〜8μmであり、本実施例では、5〜7μmの範囲内としている。なお、予め、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さを設定しておき、これに応じて印加電圧の大きさや印加時間を設定することができる。なお、本実施例では、目標皮膜厚さを5〜7μmとして、印加電圧を40V、通電時間を60分程度とした。
なお、アルマイト皮膜20は母材10のアルミニウム成分を原料とするため、陽極酸化皮膜処理において、図5(a)に示す処理前の母材10の表面11を侵食しながら成長する。従って、図5(b)に示す処理後の母材10の表面11は、図5(a)に示す処理前の母材10の表面11よりも後退した位置にある。しかしながら、上述の如く、アルマイト皮膜20の厚さは、数μmオーダーであるため、母材10の形状変化は無視できる程度に十分小さい。そのため、アルマイト皮膜20を形成しても母材10の成形精度を維持することができる。
次に、図4に示すシリカ封入工程S3において、図5(c)に示すように、細孔23にシリカ30を封入する。シリカ封入工程S3では、まず、母材10を電解槽から引き揚げて、アルマイト皮膜20の表面を洗浄する。その後、母材10をコロイダルシリカ液に浸漬し、コロイダルシリカ液に浸漬された陰極と母材10とに電圧を印加する。コロイダルシリカは液中において負電荷に帯電しているため、コロイダルシリカが電気泳動により陽極となる母材10に引き寄せられる。その結果、コロイダルシリカはアルマイト皮膜20の細孔23に浸入することとなり、図5(c)に示すようにシリカ30が細孔23に封入された状態となる。本実施例では、コロイダルシリカ液として、日本エンギス社製Hyprez liquid 20(コロイド粒子の粒径D50=20nm)を使用している。また、本実施例では、電気泳動における印加電圧を60V、印加時間を1分、温度条件を室温としている。
本実施例では、図4に示すシリカ封入工程S3において、図5(c)に示す細孔23にシリカ30を封入するとともに、アルマイト皮膜20にシリカ30からなるシリカ層40を形成する。シリカ層40は、シリカ封入工程S3における電気泳動によって母材10に引き寄せられたシリカ30が多孔質層22の外表面に堆積することにより、アルマイト皮膜20の多孔質層22の外表側を覆うように積層されてなる。シリカ層40の厚さは、特に限定されないが、本実施例では4〜15μmの範囲内としている。
その後、図4に示す封孔工程S4において、封孔処理を行い、図5(d)に示すように、細孔23の開口部31を閉じる。本実施例では、封孔工程S4において、シリカ封入後の母材10を洗浄した後、封孔処理として70〜80℃の酢酸ニッケル水溶液中に8分間浸漬する。その後、60〜70℃の湯で2分間洗浄し乾燥させる。これにより、封孔処理により生じた水和物によって開口部31が封孔される。さらに、封孔処理により生じた水和物はシリカ層40に混入して多孔質層22の外表面にシリカを主成分とするシリカ含有層41が形成される。そして、母材10を治具から取り外して、本実施例のコンプレッサインペラ1を完成させる。本実施例においては、準備工程S1の後、アルマイト皮膜形成工程S2、シリカ封入工程S3及び封孔工程S4を一貫ラインで行っている。
第1の評価試験)
試験例1、試験例2、比較例1〜3を用いて下記の第1の評価試験を行った。
試験例1及び試験例2として、試験片に実施例1の上記製造方法における各工程S1〜S4を行ったものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
比較例1及び比較例2として、未処理の試験片を用意した。
比較例3として、試験片に実施例1の上記製造方法における各工程S1、S2を行って、アルマイト皮膜20を形成したものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
各試験片は、Al−Cu系アルミニウム合金A2618(2.3Cu1.6Mg1.1Fe1Ni0.18Si0.07Ti)からなり、実施例1における母材10と同じ素材である。各試験片は外径56mm、厚さ3mmの略円板状である。なお、各試験片は、判別容易のために互いの外形を若干変更されたものが含まれている。
まず、各試験片の外観を評価した。図6〜図9に示すように、各試験片の全体と試験片の主面の中央部p5及び下方部p3の拡大図を観察した。図7(a)〜(c)に示す比較例3では、図6(a)〜(f)に示す比較例1及び比較例2に比べて、若干黄味がかって観察された。一方、図8(a)〜(c)に示す試験例1、図9(a)〜(e)に示す試験例2では、比較例1〜3に比べて、若干白味がかって観察された。
次に硬度を評価した。硬度の評価は、ビッカーズ硬さ(HV)を試験力0.1kgfで測定することにより行った。測定箇所は、図6(a)、図6(d)、図7(a)、図8(a)及び図9(a)に示すように、各試験片の表面の上下左右部p1〜p4と中央部p5の合計5カ所とした。そして、測定箇所p1〜5ごとに3回測定し、平均値を算出した。なお、試験例2については、測定箇所p2〜p5において硬度の高い箇所p21、p31、p41、p51と、硬度の低い箇所p22、p32、p42、p52のそれぞれについて測定を行った。硬度測定の結果を下記の表1に示す。
表1に示すように、アルマイト皮膜20を有しない比較例1、2の試験片では、各測定箇所におけるビッカーズ硬さの平均値は145〜150HV0.1の範囲内であった。一方、アルマイト皮膜20を有する比較例3及び試験例1の試験片では、各測定箇所におけるビッカーズ硬さの平均値が186〜208HV0.1の範囲内であって、比較例1、2よりも硬度が大きいことが示された。また、試験例2において、硬い部分であるp21、p31、p41、p51におけるビッカーズ硬さの平均値も184〜200HV0.1の範囲内であって、比較例1、2の場合よりも硬度が高いことが示された。そして、試験例1は比較例3と同程度のビッカーズ硬さを有するため、多孔質層22の細孔23にシリカ30を封入してもアルマイト皮膜20の硬さが維持されることが確認できた。
なお、試験例2において、柔らかい部分であるp22、p32、p42、p52におけるビッカーズ硬さの平均値は81〜123HV0.1の範囲内であって、比較例1、2の場合よりも硬度が低くなっていた。これは、試験例2では、アルマイト皮膜20の多孔質層22の上に比較的硬度の低い物質からなるシリカ含有層41が積層されているため、見かけ上、硬度が低くなったものと推察される。
次に、比較例3について図10(a)に示す試験片のQ位置における断面画像を撮影し、図10(b)〜図10(e)に示した。同様に、試験例1についても図11(a)〜(e)、図12(a)、図12(b)にQ位置とQ位置における断面画像とを示した。そして、それぞれのアルマイト皮膜20の厚さt1を測定した。
比較例3では、図10(e)に示すように、母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、アルマイト皮膜20の厚さt1は5μmであった。
試験例1では、図11(b)に示すQ1位置において、図12(a)に示すように、母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、アルマイト皮膜20の厚さt1、t3はそれぞれ4μm、3μmであった。さらに、シリカ含有層41の厚さt2、t4はそれぞれ9μm、15μmであった。また、図11(b)に示すQ2位置では図12(b)に示すように、アルマイト皮膜20の厚さt1は4μmであった。さらに、シリカ含有層41の厚さt2は4μmであった。そして、シリカ含有層41は比較的凹凸の差が大きい状態となっていた。
図10〜図12に示すように、本実施例におけるアルマイト皮膜形成工程S2により、厚さ3〜5μmのアルマイト皮膜20を形成できることが確認できた。また、本実施例におけるシリカ封入工程S3及び封孔工程S4により、厚さ4〜15μmのシリカ含有層41を形成できることが確認できた。
次に、表面粗さの評価を行った。比較例3及び試験例1、2の表面粗さRaを測定し、測定結果を下記の表2に示した。表2に示すように、試験例1、2では、比較例3の場合に比べて、表面粗さRaが増加していることが示された。これにより、アルマイト皮膜20にシリカ30等が付着していることが推察できる。
次に、比較例3及び試験例1、2における試験片表面のEPMAマッピング分析による成分分布を評価した。また、試験例1については試験片断面のEPMAマッピング分析による成分分布も評価した。EPMAマッピング分析は、島津製作所製電子線マイクロアナライザ(型番EPMA−1720)を用いた。なお、試験片表面の測定エリアは120μm×90μmの矩形領域とし、試験片断面の測定エリアは40μm×30μmの矩形領域とした。
比較例3について、図10(a)に示すS位置におけるSEM(Scanning Electron Microscope)像の取得と試験片表面のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)マッピング分析とを行い、その結果を図13(1)〜(12)に示した。
また、試験例1について、図11(a)に示すS位置におけるSEM像の取得と試験片表面のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)マッピング分析とを行い、その結果を図14(1)〜(12)に示した。
また、試験例1については、図11(a)に示すQ位置におけるSEM像の取得と試験片断面のEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図15(1)〜(12)に示した。下記の通り、図13〜図15における各図の(1)〜(12)は、下記の通り、SEM画像と元素ごとの分析結果を示す。
(1):SEM像
(2):酸素元素Oの分布
(3):ケイ素元素Siの分布
(4):硫黄元素Sの分布
(5):アルミニウム元素Alの分布
(6):マグネシウム元素Mgの分布
(7):ニッケル元素Niの分布
(8):クロム元素Crの分布
(9):鉄元素Feの分布
(10):銅元素Cuの分布
(11):カルシウム元素Caの分布
(12):ナトリウム元素Naの分布
(1)SEM像
図13(1)に示すように、比較例3では表層のアルマイト皮膜20は比較的平滑であったが、図14(1)に示す試験例1では、表層に多数のひび割れ状の亀裂が見られ、比較例3に比べて表面の粗さが大きいことが確認できた。また、図15(1)に示すように、試験例1では、母材10の表面にアルマイト皮膜20が形成されているとともに、その外表側にシリカ含有層41が形成されていることが確認できた。なお、表層の亀裂は母材10には達しておらず、表層のシリカ含有層41に生じていることが確認できた。
(2)酸素元素Oの分布
酸素元素Oの分布について、図13(2)、図14(2)に示すように、比較例3及び試験例1のいずれにおいても、表層に酸素元素Oが多量に存在していた。比較例3における表層の酸素元素Oはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。そして、図15(2)に示すように、試験例1の断面においても、酸素元素Oは母材10の表面11を覆うアルマイト皮膜20に多量に存在していることが確認できた。そして、アルマイト皮膜20の外表側のシリカ含有層41にも酸素元素Oが存在していることが確認できた。シリカ含有層41における酸素元素Oはシリカ含有層41の主成分であるシリカ(SiO)に由来するものと考えられる。
(3)ケイ素元素Siの分布
ケイ素元素Siの分布について、図13(3)に示すように、比較例3では、ケイ素元素Siは極めて微量しか存在していなかった。一方、図14(3)に示すように、試験例1では表層にはケイ素元素Siが多量に存在していた。そして、図15(3)に示すように、試験例1ではケイ素元素Siは、アルマイト皮膜20内に一部存在するとともに、アルマイト皮膜20に積層されたシリカ含有層41に多量に存在していた。これにより、試験例1において、アルマイト皮膜20の多孔質層22にシリカ30が封入されていることが推察されるとともに、シリカ30がシリカ含有層41に含まれていることが推察された。
(4)硫黄元素Sの分布
硫黄元素Sの分布について、図13(4)に示すように、比較例3では、表層に硫黄元素Sは極微量しか存在していなかった。一方、図14(4)及び図15(4)に示すように、試験例1では表層に硫黄元素Sが多量に存在していることが確認できた。これは、硫黄元素Sは電解液由来のものであって、比較例3に比べて表面が粗い試験例1において、硫黄元素Sが表層に残留したものと推察される。
(5)アルミニウム元素Alの分布
アルミニウム元素Alの分布について、図13(5)に示すように、比較例3では、表層にアルミニウム元素Alが多量に存在していることが確認できた。これはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。一方、図14(5)に示すように、試験例1では、表層にはアルミニウム元素Alが実質的に存在してないことが確認でき、図15(5)に示すように、母材10にアルミニウム元素Alが多量に存在していることが確認できた。これは、試験例1において母材10に形成されたアルマイト皮膜20にシリカ30が封入されるとともにシリカ含有層41により被覆されることにより、アルマイト皮膜20が表出しない状態となっていることを示す。
(6)マグネシウム元素Mgの分布
マグネシウム元素Mgの分布について、図13(6)、図14(6)及び図15(6)に示すように、上記アルミニウム元素Alの分布と同様の傾向を示している。マグネシウム元素Mgは母材10に由来するものであって、試験例1において母材10が表出しない状態となっていることを示す。
(7)ニッケル元素Niの分布
ニッケル元素Niの分布について、図13(7)に示すように、比較例3では、表層におけるニッケル元素Niの存在量は微量であったが、図14(7)及び図15(7)に示すように、試験例1では、表層におけるニッケル元素Niの存在量が、比較例3に比べて多かった。これは、本実施例における封孔工程S4で酢酸ニッケル封孔処理を行った際に、処理液の酢酸ニッケル水溶液に由来するニッケル元素Niが開口部31付近に残留したことによると推察される。加えて、アルマイト皮膜形成工程S2において母材10から陽イオンとなって電解液中に溶出したNiの一部が細孔23内に残ったことによるものとも考えられる。
(8)カルシウム元素Caの分布
カルシウム元素Caの分布について、図13(11)に示すように、比較例3では、表層においてカルシウム元素Caは実質的に存在していなかったが、図14(11)に示すように、試験例1では、表層にカルシウム元素Caが存在していた。そして、図15(11)に示すように、カルシウム元素Caがシリカ含有層41に存在していることが確認できた。これは、シリカ含有層41の形成において、コロイダルシリカ液中の微量のカルシウム元素Caがシリカ含有層41内に残留したことに起因すると推察される。
(9)その他の元素の分布
その他の元素の分布については、比較例3及び試験例1においても同等の傾向を示していた。
次に、試験例1における皮膜における含有元素の割合を評価した。図16に示すように、試験例1における図11(a)に示すQ位置での断面において、アルマイト皮膜20の厚さt1は5.1μmであった。アルマイト皮膜20において、母材10に近い皮膜深部A、皮膜深部Aよりも外表側であって厚さ方向の略中央位置の皮膜中央部B、皮膜中央部Bよりも外表側の外表近傍部Cのそれぞれにおける含有元素の割合を、日本電子株式会社製集束イオンビーム−高分解能走査電子顕微鏡(型番JIB−4600F)を使用して検出した。検出は、試験片をFIB加工した後、加速電圧を15kV−1nAとして行った。検出結果を下記の表3に示した。
表3に示すように、アルマイト皮膜20において、外表側に位置する程、Siの含有量が増加していることが分かる。そして、図13〜図15に示すEPMAマッピング分析を勘案すると、試験例1においてシリカ30がアルマイト皮膜20に入り込むとともに、アルマイト皮膜20の外表にシリカ30を含むシリカ含有層41が形成されたことが推察される。
次に、本実施形態のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1における作用効果について、詳述する。
本例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1によれば、母材10の表面11に形成されたアルマイト皮膜20のバリア層21により、コンプレッサインペラ1に耐食性が付与される。さらに、アルマイト皮膜20の多孔質層22における多数の細孔23にシリカ30が封入されていることによって、コンプレッサインペラ1に耐摩耗性が付与される。そして、アルマイト皮膜20は、アルミニウム合金からなる母材10に対して密着性に優れており、柔軟性を合わせ持つ。そのため、コンプレッサインペラ1が高速回転して微小振動しても、コンプレッサインペラ1の表面に破損や亀裂が発生することが防止されている。
また、本例では、アルマイト皮膜20はクロム酸アルマイトからなる。これにより、アルマイト皮膜20における母材10への密着性及び柔軟性が一層高まる。さらに、アルマイト皮膜20の多孔質層22において細孔23がアルマイト皮膜20の厚さ方向Xに対して斜めに延びて樹状に形成されるため、細孔23に封入されたシリカ30が放出されにくく、シリカ30を細孔23内に安定的に存在させることができる。また、クロム酸アルマイトによれば、クロム酸アルマイト形成による寸法変化が比較的小さい。そのため、母材10の形状を維持しやすく、コンプレッサインペラ1の成形精度を高めることができる。
また、本例では、シリカ30は非晶質シリカである。これにより、シリカ30を溶液中に分散させやすくなり、アルマイト皮膜20の細孔23にシリカを封入することが容易となる。
また、本例では、アルマイト皮膜20の厚さt1を3〜8μmの範囲内としている。アルマイト皮膜20の厚さが3μmよりも小さい場合は、耐食性を充分に確保することができない。また、アルマイト皮膜20の厚さを8μmよりも大きくしても耐食性が上昇しないため、コスト面で不利となる。本例では、アルマイト皮膜20の厚さt1を上記範囲内とすることにより、耐食性を充分に確保するとともにコスト面で有利とすることができる。
また、本例では、多孔質層22にはシリカ30を主成分とするシリカ含有層41が積層されている。これにより、排ガスに含まれる異物や排ガス浄化装置におけるセラミック製の触媒担体から剥離したセラミックの微粒子等がLPL−EGRを介して、コンプレッサインペラ1に衝突しても、コンプレッサインペラ1の最外表に形成されたシリカ含有層41が当該衝突の衝撃を吸収することにより、コンプレッサインペラ1の耐摩耗性を大きく向上させ、加えてコンプレッサインペラ1の破損を防止することができる。
本例における上述のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1の製造方法によれば、上記作用効果を奏するターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1を製造することができる。
また、本例では、シリカ封入工程S3において、母材10をコロイダルシリカ液に浸漬して、コロイダルシリカ液に含まれるコロイダルシリカを電気泳動により複数の細孔23に封入する。これにより、アルマイト皮膜20の多孔質層22における細孔23にシリカ30を確実に封入することができる。そして、アルマイト皮膜形成工程S2及びシリカ封入工程S3を一貫ラインで行うことが容易となるため、製造工程における作業効率を向上することができる。さらに、本実施例では、アルマイト皮膜形成工程S2及びシリカ封入工程S3に加えて、封孔工程S4もこれらと一貫ラインで行っており、作業効率が一層向上されている。
また、本実施例では、上記コロイダルシリカにおけるコロイド粒子の粒径D50は5〜55nmの範囲内である。これにより、コロイダルシリカのコロイド粒子が十分小さくなるため、シリカ封入工程S3においてコロイダルシリカがアルマイト皮膜20の細孔23に封入されやすくなる。
なお、本実施例では、封孔工程S4を行うことにより、細孔23に封入されたシリカ30の漏出を防止するとともに、アルマイト皮膜20の表面を化学的に安定させて、耐食性を向上させている。これにより、アルマイト皮膜20の寿命の増大を図っている。
以上のように、本実施例によれば、耐食性、耐摩耗性、密着性及び柔軟性を兼ね備えた皮膜を有するターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1を提供することができる。
(実施例2)
実施例1では、上記製造方法におけるアルマイト皮膜形成工程S2において、電解液として無水クロム酸(CrO)水溶液を使用して、クロム酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したが、これに変えて、本実施例では、アルマイト皮膜形成工程S2において、電解液として硫酸(HSO)水溶液を使用して、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成した。使用する硫酸水溶液の濃度は10〜30%w/vとすることができる。本実施例では、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さを5〜7μmとして、陽極酸化皮膜処理における印加電圧を15V前後、通電時間を20分程度とした。なお、その他の工程等は、実施例1の場合と同様にした。
実施例1におけるクロム酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20は多孔質層22における細孔23は、図3に示したように厚さ方向Xに対して斜めに伸びて樹状に形成されていたが、本実施例の硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20では多孔質層22における図示しない細孔は厚さ方向Xにストレートに伸びて多数形成されている。その他の構成は実施例1の場合と同様となっており、本実施例において、実施例1と同等の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
(第2の評価試験)
次に試験例3、試験例4、比較例4及び比較例5を用いて下記の第2の評価試験を行った。
試験例3、試験例4として、試験片に上記実施例2の硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
比較例4、5として、試験片に実施例2の上記製造方法における各工程S1、S2を行って、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
各試験片は、実施例1における第1の評価試験と同様に、母材10と同じ素材とし、各試験片の形状も第1の評価試験と同様の略円板状である。
なお、未処理の試験片として、上記第1の評価試験における比較例1及び比較例2を参照する。
まず、各試験片の外観を評価した。図17〜図21に示すように、各試験片の全体と試験片の主面の中央部p5及び右方部p2の拡大図を観察した。図17(a)〜(c)に示す比較例4及び図17(d)〜(f)に示す比較例5では、図6(a)〜(f)に示す比較例1及び比較例2と比べて、外観上に大きな違いは観察されなかったが、アルマイト皮膜特有の自然発色が若干見られた。一方、図18(a)〜(c)に示す試験例3及び図18(d)〜(f)に示す試験例4では、比較例1、2、4及び5に比べて、若干白味がかって観察された。
次に硬度を評価した。硬度の評価は、ビッカーズ硬さ(HV)を試験力0.1kgfで測定することにより行った。測定箇所は、図17(a)、図17(d)、図18(a)、及び図18(d)に示すように、各試験片の表面の上下左右部p1〜p4と中央部p5の合計5カ所とした。そして、測定箇所p1〜p5ごとに3回測定し、平均値を算出した。なお、試験例4については、測定箇所p1、p3において図示しない硬度の高い箇所と硬度の低い箇所とのそれぞれについて測定を行った。硬度測定の結果を下記の表4に示す。
表4に示すように、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を有する比較例4、比較例5及び試験例3の試験片では、各測定箇所におけるビッカーズ硬さの平均値が181〜238HV0.1の範囲内であって、第1の評価試験において表1に示した比較例1、2の場合よりも硬度が大きいことが示された。また、試験例4において、p1の硬い部分、p3の硬い部分及びp2におけるビッカーズ硬さの平均値も180〜200HV0.1の範囲内であって、比較例1、2の場合よりも硬度が高いことが示された。そして、試験例3は比較例4,5と同程度のビッカーズ硬さを有するため、多孔質層22の細孔23にシリカ30を封入しても硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20の硬さが維持されることが確認できた。
なお、試験例4において、p1の柔らかい部分、p3の柔らかい部分、p4及びp5におけるビッカーズ硬さの平均値はそれぞれ、101、110、92、124HV0.1であって、比較例1、2の場合よりも硬度が低くなっていた。これは、試験例4では、アルマイト皮膜20の多孔質層22の上に比較的硬度の低い物質からなるシリカ含有層41が積層されているため、見かけ上、硬度が低くなったものと推察される。
次に、比較例4について図19(a)に示す試験片のQ位置における断面画像を撮影し、図19(b)〜図19(e)に示した。同様に、試験例3についても図20(a)〜(e)、図21(a)、図21(b)にQ位置とQ位置における断面画像とを示した。そして、図21(a)、図21(b)において、それぞれのアルマイト皮膜20の厚さt1、シリカ含有層41の厚さt2を測定した。
比較例4では、図19(e)に示すように、母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、アルマイト皮膜20の厚さt1は6μmであった。
試験例3では、図20(c)に示すQ1位置において、図21(a)に示すように、母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、アルマイト皮膜20の厚さt1は5μmであり、アルマイト皮膜20に積層されたシリカ含有層41の厚さt2は6μmであった。また、図20(c)に示すQ2位置では図21(b)に示すように、アルマイト皮膜20の厚さt1は6μmであり、アルマイト皮膜20に積層されたシリカ含有層41の厚さt2は13μmであった。そして、シリカ含有層41は比較的凹凸の差が大きい状態となっていた。
図17〜図21に示すように、本実施例におけるアルマイト皮膜形成工程S2により、厚さ5〜6μmの硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成できることが確認できた。また、本実施例におけるシリカ封入工程S3及び封孔工程S4により、厚さ6〜13μmのシリカ含有層41を形成できることが確認できた。
次に、表面粗さの評価を行った。比較例4、5及び試験例3、4の表面粗さRaを測定し、測定結果を下記の表5に示した。表5に示すように、試験例3、4では、比較例4、5の場合に比べて、表面粗さRaが増加していることが示された。これにより、アルマイト皮膜20にシリカ30等が付着していることが推察できる。
次に、比較例4及び試験例3における試験片表面及び試験片断面のEPMAマッピング分析による成分分布を評価した。EPMAマッピング分析は、第1の評価試験と同様に行った。
比較例4について、図19(a)に示すS位置の試験片表面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図22(1)〜(11)に示した。また、図19(a)に示すQ位置の試験片断面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図23(1)〜(10)に示した。
また、試験例3について、図20(a)に示すS位置の試験片表面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図24(1)〜(11)に示した。さらに、図20(a)に示すQ位置の試験片断面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図25(1)〜(10)に示した。
図22〜図25における各図の(1)〜(11)は、下記の通り、SEM画像と元素ごとの分析結果を示す。
(1):SEM像
(2):酸素元素Oの分布
(3):ケイ素元素Siの分布
(4):硫黄元素Sの分布
(5):アルミニウム元素Alの分布
(6):マグネシウム元素Mgの分布
(7):ニッケル元素Niの分布
(8):鉄元素Feの分布
(9):銅元素Cuの分布
(10):カルシウム元素Caの分布
(11):SEM像(低倍率)
(1)SEM像
図22(1)に示すように、比較例4では表層のアルマイト皮膜20は複数の孔が散見されたが、図23(1)に示すように、母材10の表面にアルマイト皮膜20が形成され、表層のアルマイト皮膜20は比較的凹凸が少なく、膜厚は概ね一定であった。一方、図24(1)に示すように試験例3では、表層に多数のひび割れ状の亀裂が見られるとともに、表層の一部が剥がれて下層が露出していた。そして、図25(1)に示すように試験例3では、母材10の表面にアルマイト皮膜20が形成され、アルマイト皮膜20上にシリカ含有層41が積層されていると推察された。
(2)酸素元素Oの分布
酸素元素Oの分布について、図22(2)及び図23(2)に示すように、比較例4では表層に酸素元素Oが多量に存在していた。比較例4における表層の酸素元素Oはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。また、図24(2)及び図25(2)に示すように、試験例3でも表層に酸素元素Oが多量に存在していた。試験例3における酸素元素Oはシリカ含有層41の主成分であるシリカ(SiO)に由来するものと推察される。
(3)ケイ素元素Siの分布
ケイ素元素Siの分布について、図22(3)及び図23(3)に示すように、比較例3では、ケイ素元素Siは極めて微量しか存在していなかった。一方、図24(3)に示すように、試験例3では表層にケイ素元素Siが多量に存在していた。そして、図25(3)に示すように、試験例3ではケイ素元素Siは、アルマイト皮膜20内に一部存在するとともに、アルマイト皮膜20に積層されたシリカ含有層41に多量に存在していた。これにより、試験例3において、アルマイト皮膜20の多孔質層22にシリカ30が封入されていることが推察されるとともに、シリカ30がシリカ含有層41に含まれていることが推察された。
(4)硫黄元素Sの分布
硫黄元素Sの分布について、比較例4では、図22(4)に示すように、表層に硫黄元素Sが多量に存在しており、図23(4)に示すように、硫黄元素Sがアルマイト皮膜20に存在していることが確認できた。これは、硫黄元素Sがアルマイト皮膜20を形成する硫酸アルマイトに由来するものであると推察される。
一方、試験例3では、図24(4)に示すように、表層には硫黄元素Sの存在量は少なかったが、図25(4)に示すように、表層の内側に硫黄元素Sが多量に存在している。表層の内側の硫黄元素Sは、アルマイト皮膜20を形成する硫酸アルマイトに由来していると推察される。そして、表層の硫黄元素Sは、アルマイト皮膜20上に形成されたシリカ含有層41に電解液(硫酸水溶液)由来の硫黄元素Sが残留したものと推察される。
(5)アルミニウム元素Alの分布
アルミニウム元素Alの分布について、図22(5)及び図23(5)に示すように、比較例4では、表層にアルミニウム元素Alが多量に存在していた。これはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。一方、図24(5)に示すように、試験例3では、ひび割れの隙間にアルミニウム元素Alが存在し、表層の大半には実質的にアルミニウム元素Alが存在していなかった。そして、図25(5)に示すように、試験例3では、母材10にアルミニウム元素Alが多量に存在していることが確認できた。これは、試験例3において表層がシリカ含有層41により被覆されることにより、アルマイト皮膜20が表出しない状態となっていると推察される。
(6)マグネシウム元素Mgの分布
マグネシウム元素Mgの分布について、比較例4では、図22(6)及び図23(6)に示すように、マグネシウム元素Mgは母材10に存在し、表層には微量存在していた。これは、当該マグネシウム元素Mgは、母材10由来のマグネシウム元素Mgであって、母材10がアルマイト皮膜20により覆われていることにより、表層の存在量が低下したものと推察される。図24(6)及び図25(6)に示すように、試験例3でも、同様の状態となっていた。
(7)ニッケル元素Niの分布
ニッケル元素Niの分布について、図22(7)、図23(7)に示すように、比較例4では、表層におけるニッケル元素Niの存在量は微量であったが、図24(7)及び図25(7)に示すように、試験例3では、表層におけるニッケル元素Niの存在量が、比較例4に比べて多かった。これは、本実施例における封孔工程S4で酢酸ニッケル封孔処理を行った際に、処理液の酢酸ニッケル水溶液に由来するニッケル元素Niが開口部31付近に残留したことによると推察される。加えて、アルマイト皮膜形成工程S2において母材10から陽イオンとなって電解液中に溶出したNiの一部が細孔23内に残ったことによるものとも考えられる。
(8)カルシウム元素Caの分布
カルシウム元素Caの分布について、図22(10)及び図23(10)に示すように、比較例4では、表層においてカルシウム元素Caは実質的に存在していなかったが、図24(10)及び図25(10)に示すように、試験例3では、表層にカルシウム元素Caが存在していた。これは、表層のシリカ含有層41を形成する際に、コロイダルシリカ液中の微量のカルシウム元素Caがシリカ含有層41内に残留したことに起因すると推察される。
(9)その他の元素の分布
その他の元素の分布については、比較例4及び試験例3においても同等の傾向を示していた。
次に、試験例4における皮膜における含有元素の割合を評価した。図26に示すように、試験例4の断面において、アルマイト皮膜20の厚さt1は5.927〜6.052μmであった。そして、アルマイト皮膜20において、母材10に近い皮膜深部A、皮膜深部Aよりも外表側であって厚さ方向の略中央位置の皮膜中央部B、皮膜中央部Bよりも外表側の外表近傍部Cのそれぞれにおける含有元素の割合を、第1の評価試験の場合と同様に検出し、検出結果を下記の表6に示した。
表6に示すように、アルマイト皮膜20において、外表側に位置する程、Siの含有量が増加していることが分かる。そして、図22〜図25に示すEPMAマッピング分析を勘案すると、試験例3、4においてシリカ30がアルマイト皮膜20に入り込むとともに、アルマイト皮膜20の外表にシリカ30を含むシリカ含有層41が形成されたことが推察される。
本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1では、アルマイト皮膜20が硫酸アルマイトからなることにより、アルマイト皮膜20における母材10への密着性及び柔軟性が一層高まる。また、比較的安価にアルマイト皮膜20を形成できるため、コスト面で有利となる。さらに、硫酸アルマイトは成膜速度が速いため、製造期間の短縮化が図られる。また、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜は比較的透明性が高く、染色物質の吸着性が高いことから染色性に優れる。
さらに、本実施例では、硫酸アルマイトによる細孔がストレート状に伸びているため、シリカ封入工程S3において電気泳動による多孔質層22の細孔へのシリカ封入が容易となっている。なお、本例においても、実施例1においてアルマイト皮膜20がクロム酸アルマイトからなることにより奏される作用効果を除いて、実施例1と同等の作用効果を奏する。
(実施例3)
実施例2では、上記製造方法におけるアルマイト皮膜形成工程S2において、硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したが、これに変えて、本実施例では、アルマイト皮膜形成工程S2において、電解液としてシュウ酸(C)水溶液を使用して、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成した。使用するシュウ酸水溶液の濃度は3〜8%w/vとすることができる。本実施例では、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さを5〜7μmとして、陽極酸化皮膜処理における印加電圧を60V、通電時間を30分とした。なお、その他の工程等は、実施例1の場合と同様にした。
本実施例のシュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20は、実施例2における硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20の場合と同様に、多孔質層22における図示しない細孔は厚さ方向Xにストレートに伸びて多数形成されている。その他の構成は実施例1、2の場合と同様となっており、本実施例において、実施例12、と同等の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
(第3の評価試験)
次に試験例5、試験例6、比較例6及び比較例7を用いて下記の第3の評価試験を行った。
試験例5、試験例6として、試験片に実施例3のシュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
比較例6、7として、試験片に実施例3の上記製造方法における各工程S1、S2を行って、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を形成したものを用意した。なお、アルマイト皮膜20の目標皮膜厚さは5〜6μmとした。
各試験片は、実施例1における第1の評価試験と同様に、母材10と同じ素材とし、各試験片の形状も第1の評価試験と同様の略円板状である。
なお、未処理の試験片として、上記第1の評価試験における比較例1及び比較例2を参照する。
まず、各試験片の外観を評価した。図27〜図28に示すように、各試験片の全体と試験片の主面中央位置p5及び主面右方位置p2の拡大図を観察した。図28(a)〜(c)に示す比較例6及び図28(d)〜(f)に示す比較例7では、図6(a)〜(f)に示す比較例1及び比較例2と比べて、外観上に大きな違いは観察されなかったが、アルマイト皮膜特有の自然発色が若干見られた。一方、図28(a)〜(c)に示す試験例5及び図28(d)〜(f)に示す試験例6では、比較例1、2、4及び5に比べて、若干白味がかって観察された。
次に硬度を評価した。硬度の評価は、ビッカーズ硬さ(HV)を試験力0.1kgfで測定することにより行った。測定箇所は、図27(a)、図27(d)、図28(a)、及び図28(d)に示すように、各試験片の表面の上下左右部p1〜p4と中央部p5の合計5カ所とした。そして、測定方法は第1の評価試験と同様とし、3回の平均値を算出した。硬度測定の結果を下記の表7に示す。
表7に示すように、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20を有する比較例6、7及び試験例5、6の試験片では、各測定箇所におけるビッカーズ硬さの平均値が186〜240HV0.1の範囲内であって、第1の評価試験において表1に示した比較例1、2の場合よりも硬度が大きいことが示された。
次に、比較例6について図29(a)に示す試験片のQ位置における断面画像を撮影し、図29(b)〜図29(e)に示した。同様に、試験例5について図30(a)にQ1位置を示し、図30(b)〜(e)にQ1位置における断面画像を示した。さらに、試験例5について図31(a)にQ2位置を示し、図31(b)〜(e)にQ2位置における断面画像を示した。そして、図30(e)、図31(e)において、それぞれのアルマイト皮膜20の厚さt1を測定した。
比較例6では、図29(e)に示すように、母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、アルマイト皮膜20の厚さt1は6μmであった。
試験例5では、図30(e)に示すように母材10の表面11を覆うようにアルマイト皮膜20が形成されており、Q1位置におけるアルマイト皮膜20の厚さt1は6μmであった。また、図31(e)に示すようにQ2位置におけるアルマイト皮膜20の厚さt1は6μmであった。なお、シリカ含有層41の厚さは比較的薄くなっていた。
次に、表面粗さの評価を行った。比較例6、7及び試験例5、6の表面粗さRaを測定し、測定結果を下記の表8に示した。表8に示すように、試験例5、6では、比較例6、7の場合に比べて、表面粗さRaが低下しており、アルマイト皮膜20の表面の凹凸がシリカ含有層41により覆われて平滑化されたものと推察される。
次に、比較例6及び試験例5における試験片表面及び試験片断面のEPMAマッピング分析による成分分布を評価した。EPMAマッピング分析は、第1の評価試験と同様に行った。
比較例6について、図29(a)に示すS位置の試験片表面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図32(1)〜(11)に示した。また、図29(a)に示すQ位置の試験片断面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図33(1)〜(10)に示した。
また、試験例5について、図30(a)に示すS位置の試験片表面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図34(1)〜(11)に示した。さらに、図30(a)に示すQ位置の試験片断面において、SEM像の取得とEPMAマッピング分析とを行い、その結果を図35(1)〜(10)に示した。
図32〜図35において各図の(1)〜(11)が示す分析対象元素等は、第2の評価試験の場合と同様である。
(1)SEM像
図32(1)に示すように、比較例4では表層のアルマイト皮膜20は複数の孔が散見されたが、図33(1)に示すように、母材10の表面にアルマイト皮膜20が形成され、表層のアルマイト皮膜20は比較的凹凸が少なく、膜厚は概ね一定であった。また、図34(1)及び図35(1)に示すように試験例5では、表層に多少の凹凸が認められたが膜厚は概ね一定であった。そして、図35(1)に示すように試験例5では、母材10の表面にアルマイト皮膜20が形成され、アルマイト皮膜20上にシリカ含有層41が積層されていると推察された。
(2)酸素元素Oの分布
酸素元素Oの分布について、図32(2)及び図33(2)に示すように、比較例6では表層に酸素元素Oが多量に存在していた。比較例6における表層の酸素元素Oはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。また、図34(2)及び図35(2)に示すように、試験例5でも表層に酸素元素Oが多量に存在していた。試験例5における酸素元素Oはシリカ含有層41の主成分であるシリカ(SiO)に由来するものと推察される。
(3)ケイ素元素Siの分布
ケイ素元素Siの分布について、図32(3)及び図33(3)に示すように、比較例5では、ケイ素元素Siは極めて微量しか存在していなかった。一方、図34(3)に示すように、試験例5では表層にケイ素元素Siが多量に存在していた。そして、図35(3)に示すように、試験例5ではケイ素元素Siは、アルマイト皮膜20内に一部存在するとともに、アルマイト皮膜20に積層されたシリカ含有層41に多量に存在していた。これにより、試験例5において、アルマイト皮膜20の多孔質層22にシリカ30が封入されていることが推察されるとともに、シリカ30がシリカ含有層41に含まれていることが推察された。
(4)硫黄元素Sの分布
硫黄元素Sの分布について、比較例6では、図32(4)に示すように、表層に硫黄元素Sが多量に存在しており、図33(4)に示すように、硫黄元素Sがアルマイト皮膜20に存在していることが確認できた。表層の硫黄元素Sはアルマイト皮膜20を形成する硫酸アルマイトに由来するものであると推察される。
一方、試験例5では、図34(4)に示すように、表層は硫黄元素Sの存在量が少なかったが、図35(4)に示すように、表層の内側には硫黄元素Sが多量に存在していた。表層の内側の硫黄元素Sは、アルマイト皮膜20を形成する硫酸アルマイトに由来していると推察される。そして、表層の硫黄元素Sは、アルマイト皮膜20上に形成されたシリカ含有層41に電解液(硫酸水溶液)由来の硫黄元素Sが残留したものと推察される。
(5)アルミニウム元素Alの分布
アルミニウム元素Alの分布について、図32(5)及び図33(5)に示すように、比較例6では、表層にアルミニウム元素Alが多量に存在していた。これはアルマイト皮膜20を形成するAlOに由来するものと推察される。また、図34(5)に示すように、試験例5でも表層にアルミニウム元素Alが存在し、図35(5)に示すように、試験例5でも母材10にアルミニウム元素Alが多量に存在していた。これは、試験例5において表層に形成されたシリカ含有層41の厚さが、実施例1のクロム酸アルマイトからなるアルマイト皮膜の場合や実施例2における硫酸アルマイトからなるアルマイト皮膜の場合に比べて薄くなっているため、シリカ含有層41の下層のアルマイト皮膜20におけるアルミニウム元素Alが表層から検出されたものと推察される。
(6)マグネシウム元素Mgの分布
マグネシウム元素Mgの分布について、比較例6では、図32(6)及び図33(6)に示すように、マグネシウム元素Mgは母材10に存在し、表層には微量存在していた。これは、当該マグネシウム元素Mgは、母材10由来のマグネシウム元素Mgであって、母材10がアルマイト皮膜20により覆われていることにより、表層の存在量が低下したものと推察される。図34(6)及び図35(6)に示すように、試験例5でも、同様の状態となっていた。
(7)ニッケル元素Niの分布
ニッケル元素Niの分布について、図32(7)、図33(7)に示すように、比較例6では、表層におけるニッケル元素Niの存在量は微量であったが、図34(7)及び図35(7)に示すように、試験例5では、表層におけるニッケル元素Niの存在量が、比較例6に比べて多かった。これは、本実施例における封孔工程S4で酢酸ニッケル封孔処理を行った際に、処理液の酢酸ニッケル水溶液に由来するニッケル元素Niが開口部31付近に残留したことによると推察される。加えて、アルマイト皮膜形成工程S2において母材10から陽イオンとなって電解液中に溶出したNiの一部が細孔23内に残ったことによるものとも考えられる。
(8)カルシウム元素Caの分布
カルシウム元素Caの分布について、図32(10)及び図33(10)に示すように、比較例6では、表層においてカルシウム元素Caは実質的に存在していなかったが、図34(10)及び図35(10)に示すように、試験例5では、表層にカルシウム元素Caが微量存在していた。これは、表層のシリカ含有層41を形成する際に、コロイダルシリカ液中の微量のカルシウム元素Caがシリカ含有層41内に残留したことに起因すると推察される。
(9)その他の元素の分布
その他の元素の分布については、比較例6及び試験例5においても同等の傾向を示していた。
次に、試験例6における皮膜における含有元素の割合を評価した。図36に示すように、試験例6の断面において、アルマイト皮膜20の厚さt1は6.803〜6.845μmであった。そして、アルマイト皮膜20において、母材10に近い皮膜深部A、皮膜深部Aよりも外表側であって厚さ方向の略中央位置の皮膜中央部B、皮膜中央部Bよりも外表側の外表近傍部Cのそれぞれにおける含有元素の割合を、第1の評価試験の場合と同様に検出し、検出結果を下記の表9に示した。
表9に示すように、アルマイト皮膜20において、外表側に位置する程、Siの含有量が増加していることが分かる。そして、図32〜図35に示すEPMAマッピング分析を勘案すると、試験例5、6においてシリカ30がアルマイト皮膜20に入り込むとともに、アルマイト皮膜20の外表にシリカ30を含むシリカ含有層41が形成されたことが推察される。
本実施例のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ1では、アルマイト皮膜20がシュウ酸アルマイトからなることにより、アルマイト皮膜20における母材10への密着性及び柔軟性が一層高まる。また、シュウ酸アルマイトはある程度の柔軟性を有するため、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20にはクラックが比較的発生しにくい。また、シュウ酸アルマイトからなるアルマイト皮膜20は高い耐食性を示す。
さらに、本実施例では、シュウ酸アルマイトによる細孔がストレート状に伸びているため、シリカ封入工程S3において電気泳動による多孔質層22の細孔へのシリカ封入が容易となっている。なお、本例においても、実施例1においてアルマイト皮膜20がクロム酸アルマイトからなることにより奏される作用効果を除いて、実施例1と同等の作用効果を奏する。
本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施例に適用することが可能である。
1 コンプレッサインペラ
10 母材
20 アルマイト皮膜
21 バリア層
22 多孔質層
23 細孔
30 シリカ
31 開口部
40 シリカ層
41 シリカ含有層

Claims (10)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、
    該母材の表面を被覆するバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜と、
    を備え、
    上記細孔には非晶質シリカが封入されている、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  2. 上記アルマイト皮膜は、クロム酸アルマイトからなる、請求項1に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  3. 上記アルマイト皮膜の厚さが3〜8μmの範囲内である、請求項1又は2に項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  4. 上記多孔質層にはシリカを主成分とするシリカ含有層が積層されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  5. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材を電解液に浸漬して、該母材の表面に陽極酸化皮膜処理を施して、上記母材の表面を覆うバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜を形成するアルマイト皮膜形成工程と、
    上記細孔に非晶質シリカを封入するシリカ封入工程と、
    を含むターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法。
  6. 上記シリカ封入工程では、上記母材をコロイダルシリカ液に浸漬して、電気泳動により上記コロイダルシリカ液に含まれるコロイダルシリカを上記複数の細孔に封入する、請求項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法。
  7. 上記コロイダルシリカにおけるコロイド粒子の粒径D50は5〜55nmの範囲内である、請求項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラの製造方法。
  8. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる母材と、
    該母材の表面を被覆するバリア層と、該バリア層に積層されるとともに複数の細孔を有する多孔質層とを含むアルマイト皮膜と、
    を備え、
    上記細孔には非晶質シリカが封入されており、
    上記アルマイト皮膜は、硫酸アルマイト又はシュウ酸アルマイトからなる、ターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  9. 上記アルマイト皮膜の厚さが3〜8μmの範囲内である、請求項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
  10. 上記多孔質層にはシリカを主成分とするシリカ含有層が積層されている、請求項8又は9のいずれか一項に記載のターボチャージャ用のコンプレッサインペラ。
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