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JP3905271B2 - 半導体装置 - Google Patents
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JP3905271B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置に関し、特に、高電圧、大電流のスイッチング制御を行うことができる半導体デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
与えられた電源から電気自動車などのモータを駆動するための所望の電流、電圧を生成するためにインバータ装置が用いられる。このインバータは、スイッチング素子とそれに逆並列に接続された還流用ダイオードとを一対とした構成を含んでいる。
【0003】
このようなインバータに用いられるスイッチング素子は、電流導通時の電圧降下が小さいこと、すなわちオン電圧が小さいという特性を要求される。また、そのスイッチング素子はインバータの高速動作を実現するために、高速なスイッチング動作を要求されるとともに、スイッチング動作に伴うスイッチング損失が少ないことが要求される。加えて、スイッチング素子の単位面積当たりに流すことが可能な電流、すなわち可制御電流密度の向上を図り、スイッチング素子の小型化及び1ウエハから得られるチップ数の増大に伴うスイッチング素子のコスト低減のための努力がなされている。
【0004】
これらの要請に答え得る素子として、絶縁ゲートトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transisto)がある。IGBTは、パワーMOSFETとバイポーラトランジスタとを1チップに複合した半導体素子であり、MOSゲートによる高速スイッチング性能とバイポーラトランジスタ動作による高耐圧、高導通特性を兼ね備えている。特に、ゲートをトレンチ構造にて構成したトレンチIGBTはオン電圧と高速スイッチング性能とに対する要求を良好に両立できる素子として注目を浴びている。
【0005】
図6は従来のトレンチIGBTの構造を立体的に示す模式的な斜視図である。また図7は従来のトレンチIGBTの構造を模式的に示す上面図である。図6において正面として表される素子断面は図7に示す直線AA’に沿った断面であり、一方、図6において側面として表される素子断面は図7に示す直線BB’に沿った断面である。
【0006】
素子の半導体部分には大きくは表面から裏面に向けてpベース層4、n-エピタキシャル層6、n+バッファ層8、p+コレクタ層10が形成される。さらにpベース層4の表面側には、n+エミッタ領域12が形成される。このn+エミッタ領域12は表面にpベース層4が露出する部分を残すように形成される。トレンチ14は半導体部分の表面からn+エミッタ領域12、pベース層4を削り、n-エピタキシャル層6に達する深さにまで形成される。そのトレンチ14内にゲート酸化膜16を介してゲート電極18が埋設される。半導体部分の表面にはpベース層4とn+エミッタ領域12に接触するエミッタ電極20が設けられる。なお、トレンチ14の上には層間絶縁膜22が配され、その上にエミッタ電極20が形成され、これによりゲート電極18とエミッタ電極20との絶縁が確保される。
【0007】
この構成において、n+エミッタ領域12、pベース層4、n-エピタキシャル層6及びゲート電極18がMOSFETを構成し、ゲート電極18に正電圧を印加するとpベース層4のゲート電極18に接する領域にチャネルが形成され、n+エミッタ領域12からn-エピタキシャル層6へ電子が流入する。
【0008】
また、pベース層4、n-エピタキシャル層6、n+バッファ層8、p+コレクタ層10がpnpバイポーラトランジスタを構成する。このpnpバイポーラトランジスタにおいては、上記MOSFET部分の動作によりn-エピタキシャル層6、n+バッファ層8の導電率が低下することによりp+コレクタ層10からpベース層4へ正孔が流れる。
【0009】
例えば、従来の定格600V系のトレンチIGBTは、p+基板の一主面に厚さ10〜15μm、キャリア濃度1×1017cm-3程度のn+バッファ層8を形成し、その上に厚さ50〜70μm、キャリア濃度2×1014cm-3程度のn-エピタキシャル層6を形成する。さらにn-エピタキシャル層6の表面側に深さ3〜6μmのpベース層4を熱拡散にて形成し、そのpベース層4内にn+エミッタ領域12を拡散により形成する。このn+エミッタ領域12の拡散深さは0.5〜1μm程度である。トレンチ14はpベース層4より1〜3μm程度深い深さ、幅1μm、長さ1mmであり、このトレンチ14が平行に4μm間隔で配列され、その内側にゲート酸化膜16を介してゲート電極18が設けられる。ゲート酸化膜16の膜厚は80〜100nmである。この従来のトレンチIGBTは電流密度250A/cm2にてオン電圧1.4V程度である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
大電流を制御する用途の半導体素子の構成としては、電流の流通路の断面積を大きくすることが考えられる。しかしこの方法では、設計上、流通路断面積を大きく確保しても、製造上等のばらつき、不均一により流通路内に電流が集中する箇所が生じ、当該箇所にて素子が破壊されるという問題があった。
【0011】
例えば、上記従来のトレンチIGBTは電流密度400A/cm2の状態でインダクタンス負荷のスイッチングを行ったところ、ターンオフできなくなり、配線が溶融しチップが破壊されてしまった。
【0012】
特にこのような破壊が生じる電流密度は、チップ温度が高くなると低下する傾向がある。例えば上記従来のトレンチIGBTはチップ温度125℃では電流密度100A/cm2で破壊されてしまった。
【0013】
本発明は上記問題点を解消するためになされたもので、常温、高温を問わず大電流スイッチング動作時に破壊されず信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
図8、図9は従来のIGBTにおいてターンオフ時に破壊を生じる機構を説明するものであり、図8、図9はそれぞれ、図7の直線AA’、直線BB’に沿った断面である。ゲート電極18をターンオフすると第1導電型ベース層(図8、図9においてpベース層4)と第2導電型ベース層(同図においてn-エピタキシャル層6)との間は逆バイアスされ、それら領域の境界の両側には空乏層30が広がる。空乏層30が形成される結果、第1導電型ベース層とトレンチ14のゲート電極絶縁膜(同図においてゲート酸化膜16)との境界面においては反転層32が形成される。第2導電型ベース層に蓄積された少数キャリアはこの反転層32が形成されるゲート電極絶縁膜境界面(伝導境界面)に沿って流れてエミッタ電極20に達する。同図において、この少数キャリアの流れが矢印にて示されている。ここで、この伝導境界面に形成されるチャネルのコンダクタンスは、実効的なターンオフタイミングの微妙なずれや製造上のばらつき等の要因に依存し、必ずしも当該伝導境界面の各部において一様とはならない。その結果、図9に示すように、第2導電型ベース層から第1導電型ベース層への電流が集中する箇所が生じると、その部分では寄生トランジスタの動作によりラッチアップが起こり、電流集中が促進され素子が破壊され得る。伝導境界面のある箇所に集中する電流は、当該伝導境界面を介して集まる。よって、伝導境界面がカバーする第2導電型ベース層の範囲、すなわち伝導境界面の水平方向の長さが大きいほど、集中する電流量は大きくなると考えられる。
【0015】
本発明は、このような機構によって生じると考えられる第1導電型ベース層の特定箇所への電流集中を抑制することにより、半導体装置の破壊を回避するという課題を解決し、上記目的を達成するものである。
【0016】
まず本発明に係る、コレクタ電極に接続される第1導電型コレクタ層と、前記第1導電型コレクタ層上に形成された第2導電型ベース層と、前記第2導電型ベース層上に形成されエミッタ電極に接続される第1導電型ベース層と、前記第1導電型ベース層の表面から形成され前記第2導電型ベース層の途中まで達する深さを有するトレンチと、前記第1導電型ベース層の表面に前記トレンチに沿って選択的に形成され、前記エミッタ電極に接続される第2導電型エミッタ領域と、前記トレンチ内に絶縁膜を介して埋込形成され、前記第1導電型ベース層を介して前記第2導電型エミッタ領域と前記第2導電型ベース層との間で流れる電流を制御するゲート電極とを有し、前記エミッタ電極と前記コレクタ電極との間の電流制御を行う半導体装置は、前記トレンチの側壁の前記絶縁膜と前記第1導電型ベース層とが接して形成される各伝導境界面の前記トレンチに沿った水平長が、前記エミッタ電極と前記コレクタ電極との間の目標とする可制御電流密度に応じた上限値以下に形成されるものである。
【0017】
本発明によれば、伝導境界面のトレンチに沿った水平長が所定値以下となるように構成される。これにより、伝導境界面におけるターンオフが不均一であっても、当該伝導境界面内のある点に集中する電流に上限が課せられる。伝導境界面のトレンチに沿った水平長の所定値は、当該半導体装置をどの程度の電流の制御に用いるかに応じて定められ、基本的に制御可能な電流密度が大きくなるほど、伝導境界面の水平長を小さく定めるのが好適である。伝導境界面の水平長を抑制する一つの態様は、トレンチ自体の長さを制御する方法である。この方法では例えば基板上にトレンチそれぞれを長く一本に形成するのではなく、分断された複数本の短いトレンチに形成される。
【0018】
本発明に係る半導体装置は、前記トレンチの側壁に接触して設けられ前記伝導境界面を分断する分離領域を有するものである。
【0019】
本発明によれば、トレンチ自体を短く形成することなしに伝導境界面の水平長を抑制することができる。本発明によれば、トレンチの側壁に接触して分離領域が形成される。この分離領域は、それが接するゲート電極絶縁膜部分における反転層の形成を阻害するものであり、これにより共通のトレンチの側壁に面して形成される伝導境界面が複数の部分に分断される。この分離領域をトレンチに沿って所定間隔以下に配置することにより、伝導境界面のトレンチに沿った水平長が抑制され、当該半導体装置の破壊を回避しつつ目標とする電流密度までの電流制御が可能となる。
【0020】
本発明の好適な態様は、前記分離領域が、第1導電型低抵抗領域である半導体装置である。本態様によれば、分離領域が例えば第1導電型不純物を多量に導入するこにより形成された低抵抗領域であるので、トレンチに接する部分に反転層が形成されず、伝導境界面の分離がなされる。
【0021】
本発明に係る半導体装置においては、前記第2導電型ベース層が、前記第1導電型コレクタ層に接する側に第2導電型低抵抗層を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、第1導電型コレクタ領域の少数キャリアが第2導電型ベース層内部へ注入されることを抑制することができる。これにより、ターンオフ時に伝導境界面を介してエミッタ電極へ流れる電流量が抑制されるので、電流集中による破壊が起こりにくくなる。
【0023】
本発明に係る半導体装置においては、前記第2導電型ベース層が、前記第1導電型コレクタ層に接する側に当該第2導電型ベース層における少数キャリアのライフタイムを低減させる少数キャリア抑制層を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、第1導電型コレクタ領域の少数キャリアが第2導電型ベース層内部へ注入されることが少数キャリア抑制層によって抑制される。これにより、ターンオフ時に伝導境界面を介してエミッタ電極へ流れる電流量が抑制されるので、電流集中による破壊が起こりにくくなる。
【0025】
本発明の好適な態様は、前記少数キャリア抑制層が、陽子又はヘリウムイオンの少なくとも一方を照射して再結合中心を導入することにより形成される半導体装置である。イオン注入をすることにより、再結合中心となる格子欠陥が導入される。特に陽子、ヘリウムは電子線に比べてその飛程が短い。そのため、第1導電型コレクタ層が配置される基板裏面からそれらイオンを注入することにより、第2導電型ベース層の第1導電型コレクタ層に接する側に格子欠陥をもっぱら分布させることができ、第1導電型コレクタ層の少数キャリアの第2導電型ベース層への注入を効果的に抑制することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明に係るトレンチIGBTの構造を立体的に示す模式的な斜視図である。また図2は本発明に係るトレンチIGBTの構造を模式的に示す上面図である。図1において正面として表される素子断面は図2に示す直線AA’に沿った断面であり、一方、図1において側面として表される素子断面は図2に示す直線BB’に沿った断面である。また図3は本発明に係るトレンチIGBTの構造を模式的に示す断面図であり、図2に示す直線BB’に沿った断面である。
【0028】
+コレクタ層50を構成するp+基板(厚さ500μm,キャリア濃度1×1018cm-3以上)の上には、第2導電型ベース層を構成するn+バッファ層52(厚さ10〜15μm)及びn-エピタキシャル層54(厚さ55〜70μm,キャリア濃度2×1014cm-3程度)がそれぞれエピタキシャル成長法により形成される。なお、n+バッファ層52は、キャリア濃度1×1017cm-3程度の低抵抗層である。一方、n-エピタキシャル層54のキャリア濃度は2×1014cm-3程度である。
【0029】
pベース層56(厚さ3〜6μm,キャリア濃度1×1017cm-3オーダー)はn-エピタキシャル層54の表面には不純物を熱拡散することにより形成される。このpベース層56の表面にフォトレジスト膜が形成され、このフォトレジスト膜をパターニングして、n+領域を形成するためのマスクが形成される。n+領域は、このマスクの上から不純物をイオン注入することにより形成される。n+領域の拡散深さは0.5〜1μm程度である。
【0030】
+領域のパターンは、幅数μm、長さ1mm程度の細長いストライプ形状のn+エミッタ領域58を含んでいる。大電流制御を可能とするために、本素子内にはIGBTが多数並列に配置される。これに対応して、n+エミッタ領域58も複数並列に配置される。さらにn+領域は互いに隣り合うn+エミッタ領域58間を橋渡しするコンタクト領域60を含んでいる。このコンタクト領域60は、もっぱらn+エミッタ領域58とエミッタ電極72との電気的接触を確保するために設けられている。
【0031】
+エミッタ領域58の長手方向の中心線に沿ってトレンチ62が形成される。このトレンチ62は、pベース層56より1〜3μm程度深い深さを有し、またその幅は1μm、長さはn+エミッタ領域58と同じく1mm程度に形成される。トレンチ62をn+エミッタ領域58の中心線に沿って形成することにより、各n+エミッタ領域58はトレンチ62に隣接する2つの領域に分割される。トレンチ62の内側にはゲート酸化膜64を介して、ゲート電極66が埋設される。なお、ゲート酸化膜64の膜厚は80〜100nmである。なお、ゲート電極66は例えば4μm間隔程度となるように構成される。
【0032】
本IGBTでは、このトレンチ62と同程度の深さのp+分離領域68がトレンチ62の長手方向と垂直に形成される。このp+分離領域68は幅1〜5μmであり、例えば高エネルギーイオン注入法や熱拡散法などを用いて形成される。p+分離領域68は低抵抗(例えばキャリア濃度1×1018cm-3以上)に構成される。このp+分離領域68は例えば50〜200μm間隔でトレンチ62と直交するように配置される。また、p+分離領域68はトレンチ62の側面、すなわちゲート酸化膜64に接するように形成されている。
【0033】
その後、トレンチ62の上には、トレンチ62を覆うようにストライプ状の層間絶縁膜70が設けられる。この層間絶縁膜70は次に当該膜上に設けられるエミッタ電極72と当該膜下に形成されたゲート電極66との絶縁を確保するためのものである。
【0034】
この層間絶縁膜70の次にエミッタ電極72が形成される。エミッタ電極72は層間絶縁膜70の隙間に露出するpベース層56、n+エミッタ領域58及びp+分離領域68に電気的に接触し、それらを共通電位に保つ電極である。上述のように層間絶縁膜70を設けたことにより、エミッタ電極72はpベース層56等、半導体層が露出する部分だけでなく、ゲート電極66が配置される領域にも積層することができる。つまり基本的にエミッタ電極72はpベース層56、n+エミッタ領域58及びp+分離領域68を包含する領域全面に形成され、これによりエミッタ電極72に対する微細なパターニングが不要となる。
【0035】
なお、n+エミッタ領域58は少なくとも部分的に層間絶縁膜70に覆われ、層間絶縁膜70の隙間に露出するn+エミッタ領域58の面積は少なくなる。上述したコンタクト領域60はこれを補うために設けられている。
【0036】
図4は、ターンオフ特性の測定に用いた測定回路であり、負荷としてインダクタンスを有している。当該測定回路を用いて、本実施形態に係るトレンチIGBT及び従来のトレンチIGBTの試験を行った。その試験結果を模式的に示すグラフが図5である。図において横軸は時間であり、縦軸はエミッタ−コレクタ間の電流である。ゲート駆動用パルス電源80が時刻t0にてトレンチIGBT82のゲート電極66に電圧を印加してゲートをターンオンすると、電源84に接続されたトレンチIGBT82のエミッタ−コレクタ間が導通状態となる。エミッタ端子にはインダクタンス86が接続されているため、エミッタ−コレクタ間に流れる電流は過渡過程において次第に増加していく。その過渡過程のあるタイミングでゲートをターンオフしたときの電流の振る舞いが図5に示されている。図5において、実線が本実施形態に係るトレンチIGBT、また点線がp+分離領域68を有さない点を除いて本実施形態と基本的に同様に構成された従来のトレンチIGBTの振る舞いを示す。
【0037】
従来のIGBTに対しては電流の密度があるレベル(例えば温度125℃の高温時において約100A/cm2)に達したタイミングt1にてターンオフを試みた。しかし、従来素子では電流は若干減少した後、増加に転じ、素子が破壊されてしまった。このターンオフの失敗のメカニズムは以下のように理解される。すなわち、n-エピタキシャル層54に蓄積された正孔が、ターンオフ時にpベース層56とゲート酸化膜64との境界面の反転層を伝ってエミッタへ吸収される過程において、当該境界面の正孔が通りやすい部分に、当該境界面を伝って広い範囲から正孔電流が集中する。その正孔電流の集中により寄生トランジスタのラッチアップが生じ、電流を遮断することができなくなったと考えられる。
【0038】
これに対し、本実施形態に係るIGBTに対してはより大きな電流密度(例えば温度125℃の高温時において約150A/cm2)となるタイミングt2においてもターンオフ動作が可能であった。これは、ゲート酸化膜64とpベース層56との境界面のある部分に正孔電流が集中することをp+分離領域68が防止するからであると考えられる。すなわち、n-エピタキシャル層54に蓄積された正孔が、ターンオフ時にpベース層56とゲート酸化膜64との境界面の反転層を伝ってエミッタへ吸収される過程において、当該正孔はp+分離領域68とゲート酸化膜64とが接する境界面部分を越えて移動することを妨げられる。これにより、pベース層56とゲート酸化膜64との境界面に正孔が通りやすい部分があっても、そこに正孔電流が集中しにくくなり、よって寄生トランジスタのラッチアップも生じにくくなる。ちなみに、図3には、正孔の流れが矢印で示されている。
【0039】
なお、本実施形態に係るトレンチIGBTでは、従来と同様に電流密度250A/cm2においてオン電圧1.4Vという特性、また従来とほぼ同様の素子耐圧(750〜800V)が得られた。このように、p+分離領域68を設けることにより、ターンオフ特性の改善が実現される一方、他の特性は損なわれることはなかった。
【0040】
本実施形態の大きな特徴であるp+分離領域68は、すでに述べたように高エネルギーイオン注入装置を用いて形成することができる。その場合、例えば、加速エネルギーを変化させイオン注入を行うことにより、幅の広がりを抑制しつつ、トレンチとほぼ同じ程度の深さから表面近傍まで好適な濃度で不純物が分布するp+分離領域68を実現することができる。このように、従来のプロセスを大幅に変更することなくp+分離領域68を形成することができる。
【0041】
本IGBTのターンオフ特性の改善効果は、pベース層56とゲート酸化膜64との境界に形成される正孔のチャネル面がp+分離領域68によって水平方向に関して複数の部分チャネル面に分割されることに基づくものである。これにより、チャネル面のある箇所に集中し得る正孔電流量は、その箇所を含む部分チャネル面を流れうる正孔電流量に制限される。よって、p+分離領域68の配置間隔を小さくし、部分チャネル面を小さくするほど、ある箇所に集中し得る正孔電流は抑制され、ターンオフ特性の改善効果は高くなることが期待される。その一方で、p+分離領域68の配置間隔を小さくすると、n+エミッタ領域58、pベース層56、n-エピタキシャル層54及びゲート電極66にて構成されるNMOSトランジスタの面積が低下する。その結果、オン状態においてエミッタ電極72側から十分な電子を注入しにくくなり、オン電圧が上昇する。よって、ターンオフ特性だけでなく、オン電圧特性をも考慮するとp+分離領域68の配置間隔には好適な範囲が存在し得る。例えば、上述した本実施形態においては、オン電圧の劣化を回避するためにはp+分離領域68の配置間隔は50μmより大きくすべきであり、好ましくは100μmとすべきである。一方、その間隔を500μm程度以上とすると、ターンオフ特性の改善効果が薄れる。
【0042】
なお、ここでは、n-エピタキシャル層54とp+コレクタ層50との間にn+バッファ層52を配置した。このn+バッファ層52は、p+コレクタ層50からの正孔の注入を抑制し、ターンオフ時間の短縮を図るためのものである。また、n+バッファ層52に代えて、陽子やヘリウムイオンの注入により再結合中心が導入された層をn-エピタキシャル層54のp+コレクタ層50側に設け、少数キャリアである正孔のライフタイムを短くすることによっても、ターンオフ時間の短縮が図られる。さらにこの再結合中心導入層とn+バッファ層52との双方を設ける構成も好適である。
【0043】
上記実施形態では、p+分離領域68を隣接するトレンチ62間にわたるように形成した。これは、もっぱら層間絶縁膜70の間に露出するp+分離領域68を設け、エミッタ電極72との電気的接触を確保することを意図したものである。本質的にはp+分離領域68はトレンチ62側壁とpベース層56とが接触する境界面を分断しさえすればターンオフ特性の改善効果を十分に達成し、必ずしもpベース層56自体が分断される必要はないと考える。また、p+分離領域68をトレンチ62に垂直に配置することも本質的なことではなく、これを斜めに配置することも可能である。
【0044】
【発明の効果】
本発明の半導体装置によれば、大電流導通状態でターンオフ動作を行った場合の素子の破壊が防止され、確実にターンオフが実現されるという効果が得られる。この効果はチップ温度が高くなっても得られる。また、電気自動車など大きな出力が必要なモータを駆動するために用いられる半導体装置において、スイッチング時に発生する大きなサージ電圧などによる破壊を防止できる効果もある。このように本発明に係る半導体装置を用いることにより、信頼性の高いスイッチング回路を実現することができる。特に本発明によれば電気自動車など厳しい環境下で使用されるインバータを構成するのに好適な半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態であるトレンチIGBTの構造を立体的に示す模式的な斜視図である。
【図2】 実施形態であるトレンチIGBTの構造を模式的に示す上面図である。
【図3】 実施形態であるトレンチIGBTの構造を模式的に示す断面図である。
【図4】 ターンオフ特性の測定に用いた測定回路の模式図である。
【図5】 実施形態であるトレンチIGBTと従来のトレンチIGBTとに関するターンオフ特性の試験結果を説明する模式図である。
【図6】 従来のトレンチIGBTの構造を立体的に示す模式的な斜視図である。
【図7】 従来のトレンチIGBTの構造を模式的に示す上面図である。
【図8】 従来のトレンチIGBTのトレンチに垂直な方向の断面の模式図である。
【図9】 従来のトレンチIGBTのトレンチに平行な方向の断面の模式図である。
【符号の説明】
50 p+コレクタ層、52 n+バッファ層、54 n-エピタキシャル層、56 pベース層、58 n+エミッタ領域、62 トレンチ、64 ゲート酸化膜、66 ゲート電極、68 p+分離領域、70 層間絶縁膜、72 エミッタ電極。

Claims (4)

  1. コレクタ電極に接続される第1導電型コレクタ層と、前記第1導電型コレクタ層上に形成された第2導電型ベース層と、前記第2導電型ベース層上に形成されエミッタ電極に接続される第1導電型ベース層と、前記第1導電型ベース層の表面から形成され前記第2導電型ベース層の途中まで達する深さを有するトレンチと、前記第1導電型ベース層の表面に前記トレンチに沿って選択的に形成され、前記エミッタ電極に接続される第2導電型エミッタ領域と、前記トレンチ内に絶縁膜を介して埋込形成され、前記第1導電型ベース層を介して前記第2導電型エミッタ領域と前記第2導電型ベース層との間で流れる電流を制御するゲート電極とを有し、前記エミッタ電極と前記コレクタ電極との間の電流制御を行う半導体装置において、
    前記トレンチの長手方向と垂直に形成され、前記第1導電型ベース層の表面から前記第2導電型ベース層の途中まで達する深さを有し、前記トレンチの側壁の前記絶縁膜と前記第1導電型ベース層とが接して形成される伝導境界面を分断するように設けられ、前記エミッタ電極と電気的に接触する第1導電型の分離領域を有し、
    前記分離領域によって分断された前記伝導境界面の前記トレンチに沿った水平長は、50μm以上200μm以下であるとなるように設定されていることを特徴とする半導体装置。
  2. 請求項1に記載の半導体装置において、
    前記第2導電型ベース層は、前記第1導電型コレクタ層に接する側に第2導電型低抵抗層を含むことを特徴とする半導体装置。
  3. 請求項1又は2に記載の半導体装置において、
    前記第2導電型ベース層は、前記第1導電型コレクタ層に接する側に当該第2導電型ベース層における少数キャリアのライフタイムを低減させる少数キャリア抑制層を有することを特徴とする半導体装置。
  4. 請求項に記載の半導体装置において、
    前記少数キャリア抑制層は、陽子又はヘリウムイオンの少なくとも一方を照射して再結合中心を導入することにより形成されることを特徴とする半導体装置。
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