JP3934582B2 - 試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅家屋、ビル等の外壁、自動車ボディー等は、外観を保護したり美観を与えたりするために、塗膜がその表面に形成されていることが多い。このような塗膜は、長期間屋外に曝されるうちに、太陽光、水、温度変化等の作用のために次第に劣化して外観が低下してくる。
【0003】
塗膜の劣化は、通常、耐候性として評価される。この耐候性評価は、沖縄やフロリダ等で曝露することにより行われることが多い。これらの地域は高温多湿で紫外線量が多く、塗膜にとって過酷な環境である。このような曝露には、多大な年月が必要とされるため、短時間で耐候性評価ができる装置として、種々の促進耐候性試験装置が開発されている。
【0004】
しかし、これまでの促進耐候性試験装置では、試験により充分な耐候性を有すると判断された塗膜が、実際には経時でワレや変色等の不具合を起こすというように実際の曝露結果との相関関係が充分でないことがあった。
【0005】
このような問題を解決するため、本発明者らが自然界における曝露試験の結果を詳細に検討したところ、自然曝露における塗膜劣化は、塗膜表面の表層劣化を主体として進行していることが確認された。これに対して従来の促進耐候性試験装置では、深層劣化が同時に生じることが明らかとなった。このような相違点のために、自然曝露との充分な相関関係が得られないのではないかと推測される。
【0006】
効果的に劣化を促進させる方法として、プラズマを用いた方法を挙げることができる。従来から、有機材料の試験方法が開示されており、例えば、平行平板型の電極を有するタイプのプラズマ発生装置を用いて、試験が行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような通常のプラズマ発生装置を用いても、表層劣化のみを選択的に生じさせることはできず、上述したような問題を解決することはできない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−178727号公報(第2−5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、塗膜の表面からの劣化を選択的に発生させることによって、自然曝露との相関性が高い試験方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ラジカル化された酸素原子を被処理物に照射することによって上記被処理物表面の劣化を促進する試験方法であって、上記照射は、真空度0.4〜10torr、酸素流入量50〜500ml/分の条件下で行われることを特徴とする試験方法である。
【0010】
上記ラジカル化された酸素原子は、20〜200Wの電源を用いたリモートプラズマ装置によって発生させたものであることが好ましい。
上記試験方法は、被処理物の表層劣化を選択的に生じさせるものであることが好ましい。
上記試験方法は、リモートプラズマ装置より選択的にラジカル化された酸素原子を照射するために、プラズマ発生部とラジカル照射部との間にフィルターを設けたものであることが好ましい。
上記試験方法は、促進耐候性試験を行う方法であることが好ましい。
【0011】
上記被処理物は、有機材料であることが好ましい。
上記有機材料は、プラスチック又はゴムであることが好ましい。
上記被処理物は、その表面に塗膜が形成されているものであることも好ましい。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の試験方法は、中性の酸素ラジカルを選択的に被処理物の表面に照射することによって被処理物の表層からの劣化のみを選択的に生じさせる方法であり、自然曝露との相関性が高い試験を安定して行うことができるものである。
【0013】
塗膜の自然曝露試験の結果、及び、従来の試験方法による試験の結果を詳細に検討したところ、いくつかの特徴的な点が明らかになった。そのうちの一つが、自然曝露試験においては、顔料粒子が表面に露出しているということである(図1参照)。このことから、自然曝露試験によって表面樹脂が消失する表面劣化による塗膜劣化が支配的であると考えられる。これに対して、従来の促進試験装置、例えば、短波長を強調したランプ方式による試験を行った劣化塗膜においては、1μm以下のピンホールが塗膜に存在しており(図2参照)、深層劣化が同時に生じていると考えられる。このように、自然曝露試験と、従来の促進試験装置による試験とでは、劣化のメカニズムが相違していると考えられ、この点が従来の促進試験では自然曝露との相関性が充分ではなかった一つの原因ではないかと考えられる。
【0014】
このような相違が生じるのは、従来の劣化促進装置による試験のように短波長の強力な紫外線等による劣化促進を行うと、劣化因子が被処理物表面にとどまることができず、被処理物内部においても劣化が促進されるのに対して、自然界の穏やかな劣化条件では、劣化因子が被処理物表面のみに作用するため、表層劣化が支配的になるものと思われる。
【0015】
このような自然曝露試験と従来の促進試験装置による試験とのその他の相違点としては、塗膜中の酸化チタン量と色差との関係も挙げることができる。酸化チタン量が相違する3種類の塗膜に対して、それぞれ自然曝露試験を5年行ったときの色差を測定すると、チタン量が多い塗膜ほど色差、すなわち塗膜劣化が大きくなった(図3参照)。これは、自然曝露における塗膜劣化においては、酸化チタンによる光触媒の作用の影響が大きいことを反映しているものと推測される。すなわち、自然条件下で照射された紫外線によって表層近くの酸化チタンが活性化され、光触媒反応が生じ、これによって表面劣化を主体とした塗膜劣化が生じているものと推測される。
【0016】
これに対して、従来の試験であるメタルハライド式促進耐候性試験装置によって同様の塗膜に対して照射を行った場合、酸化チタンの量を増加させるほど色差が小さくなり、塗膜劣化が少なくなっている(図3参照)。このような試験結果は、自然曝露試験とは逆の結果である。このような逆の結果が得られるのは、メタルハライド式促進耐候性試験装置による試験では、強力な紫外線の照射によって表層での酸化チタンによる劣化だけではなく、深層劣化も生じているためであると考えられる。すなわち、塗膜中の酸化チタンの量を増加させると、酸化チタンの隠ぺい力によって、紫外線が塗膜内部に到達することが著しく阻害される。このため、深層劣化が著しく阻害され、結果的に酸化チタン量が増加するほど劣化が生じにくいという結果が得られるものと推測される。このような相違点が生じるような従来の促進耐候性試験装置では、塗膜の劣化を充分に予測することは困難である。
【0017】
以上の点に基づくと、表層劣化が支配的であるような試験を行うことができれば、自然曝露との相関性が高く、被処理物の寿命をより正確に測定することができる試験方法を提供できることが判明した。本発明は、このような知見によってなされたものであり、特定条件のリモートプラズマ装置によって、ラジカルを選択的に被処理物に照射させることによって、自然曝露で起こっている表面からの劣化機構(表層劣化)を同様に、リモートプラズマ装置で、塗膜表面の劣化を再現させることができるものである。
【0018】
本発明の試験方法においては、ラジカル化された酸素原子を被処理物に照射することによって被処理物表面の劣化を促進するものである。すなわち、上記特許文献1に記載された方法によって劣化促進を行った場合は、ラジカル種のみならず、電子やイオンが、被処理物表面に照射されると熱因子が助長されて、表面温度が著しく上昇するため、このような方法では、自然曝露との充分な相関性を得ることができない。しかし、ラジカル種によって選択的な劣化促進を行った場合は、表層劣化が選択的に生じるため、自然曝露との高い相関性を有する劣化促進試験を行うことができる。また、ラジカル種のなかでも、ラジカル化された酸素原子は比較的安定であることから、取り扱いが容易であり、効率よく本発明の試験を行うことができる。
【0019】
本発明においては、照射時における真空度及び酸素流量を適切な範囲内に限定することが必要である。これらを限定することによって、ラジカル化された酸素原子による表面劣化を効率的に発生させることができ、より自然曝露に近い環境での試験を行うことができる。
【0020】
上記真空度は、下限0.4torr、上限10torrの範囲内でなければならない。上記真空度とは、本発明の試験を行っている状態での真空度、即ち、20〜200Wの電源を用いてプラズマを発生させ、リモートプラズマ装置内部に酸素ガスが酸素流入量50〜500ml/分で導入されている状態での真空度を意味する。0.4torr未満の高真空であると、ラジカル化された酸素原子が安定であるため促進が極めて早く進行し、誤差を生じやすく、良好な塗膜の劣化促進を行うことができない。10torrを超えると、プラズマが不安定化するため、制御が困難になる。上記下限は、0.6torrであることがより好ましく、1.0torrであることが更に好ましい。上記上限は、5torrであることがより好ましく、2torrであることが更に好ましい。
【0021】
ラジカル源のガスとしては、種々のガス、例えば、CF4、H2等を使用することもできるが、酸素ガスを使用することが望ましい。上記酸素ガスは、50〜500ml/分の流量で装置内に導入されるものであり、これによって、装置内の真空度の低下が約1.0torr以下となるように調整されることが好ましい。酸素ガスの流量が50ml/分未満であると、プラズマ内の酸素分子の絶対量が少ないため、電子によって励起させる酸素分子が不足し、その結果、生成する中性ラジカル量が減少するという問題が生じ、500ml/分を超えると、真空ポンプの排出量が多くなり、その結果、酸素ガスの流速が大きくなり、ラジカルの被塗物への到達量が多くなり、制御しにくくなるという問題が生じる。
【0022】
上記ラジカル化された酸素原子を効率よく発生させるには、リモートプラズマ装置を使用することができる。上記リモートプラズマ装置としては、被処理物を設置する試料台とは独立して、プラズマを持続的に発生する機構、及び、電極に印加した電力により被処理物に入射する中性ラジカルの密度を任意の値に制御することができる機構を備えたものを挙げることができる。
【0023】
上記プラズマ発生装置における電源としては、特に限定されず、例えば、高周波(一般的に13.56MHz)、マイクロ波(一般的に2450MHz)等を用いることができる。上記電源における出力は、20〜200Wである。20W未満であると、出力が弱いため、被処理物とプラズマ発生装置との距離を接近させる必要が生じ、ラジカルのみによる選択的な処理を行うことが困難になる。また、200Wを超えると、出力が強すぎるため、イオンや電子も被塗物に到達し、被塗物が加熱され、表面からの選択的な処理を行うことができない。
【0024】
また、被処理物の温度が上昇すると、熱劣化による劣化因子が影響を与えることとなるため、自然曝露との相関性が低下する。特に、被処理物の温度が50℃を超えると、実際の自然現象(気温)から大きく逸脱することと、高分子樹脂の熱挙動の影響が大きくなり、相関性の低下が著しいため、上記各条件を設定することによって、被処理物の温度を40℃以下にすることが好ましい。
【0025】
図4は、本発明で使用することができるリモートプラズマ装置の一例を示したものである。リモートプラズマ装置は、距離を置いてプラズマ発生部1とプラズマ照射部とを備えている。この距離は、15〜60cmに調節可能である。電源の出力に応じて、最適な距離に調節することによって、表層劣化を選択的に進行させることができる。なお、ここでいう照射距離とは、プラズマ発生部1とラジカルが照射される試料台3との距離を意味する。プラズマ発生部1には、パワーソースとして高周波電源2が接続されており、被処理物に照射する中性ラジカルの密度を任意の値に制御することができる。また、プラズマ発生部1の上端には、管7が接続されている。一方、試料台3には真空ポンプ4が接続されており、装置内を減圧状態にすることができるようになっている。
【0026】
プラズマ発生部1とラジカル照射部の間には、フィルター9を設けてもよい。上記フィルターは、粒子の進行方向に設けられた多数の孔を有する導電体である。導電体が電子やイオン種等の帯電した粒子をトラップすることにより、ラジカル種のみが選択的にフィルターを通過するため、ラジカル化されたラジカル種のみを被処理物にて照射することができる。フィルターはアースをとることで、帯電した電気を装置外部に逃がすことも可能である。
【0027】
本発明の試験方法の対象となる被処理物は、特に限定されないが、通常、その表面が経時で劣化する有機材料からなるものに適用される。このような有機材料として、成形体やフィルム等有機材料のみで構成されたもの、すなわち、有機材料の基材そのものである場合、又は、金属素材、プラスチック、無機素材、木材等の種々の基材表面に塗料やコーティング剤から形成された塗膜が形成されているもの等を挙げることができる。その結果、基材の耐候性とともに、耐久性の尺度として用いることができる。更に、材料開発時の原料選定にも活用できる。
【0028】
上記有機材料としては、特に限定されず、例えば、プラスチック、ゴム等からなるものを挙げることができる。上記プラスチックとしては、各種の汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。上記ゴムとしては、特に限定されず、天然ゴム;スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素系ゴム等の合成ゴムを挙げることができる。
【0029】
上記塗膜はフリーフィルムであってもよい。本発明の試験方法では、リモートプラズマ装置を使用するため、塗膜が形成されている基材の種類による試験への影響がなく、その選択の自由度が特開平9−178727号公報に記載された方法よりも高い。
【0030】
本発明の試験方法では、まず、上記リモートプラズマ装置のラジカル照射部に適合した大きさの被処理物をサンプルとして試料台に設置する。次に装置内を減圧にする。装置内が減圧状態になったことを確認した後、装置内に酸素ガスを流入量50〜500ml/分で導入させ、酸素ガスを流入している状態での装置内の真空度を0.4〜10torrにすることにより、効率的にプラズマを発生させて処理を行うことができる。すなわち、先の図4において、真空ポンプ4を稼働させて装置内を減圧状態にした後、ガスが矢印5の方向に導入され、最終的に中性ラジカルが試料台3上のサンプルに対して矢印6の方向に照射される。
【0031】
本発明の試験方法において、試験時間となるラジカルの照射時間は、任意に設定することができる。ただし、過剰に長時間の処理を行うと、被処理物の温度が上昇して、熱劣化による因子が被処理物の劣化に影響を与えるため、被処理物が照射前後の温度差が3℃以下となるような範囲内で処理を行うことが好ましい。
【0032】
本発明の試験方法により処理された被処理物表面の劣化度は、外観を目視により判定することの他、被処理物表面に塗膜が形成されている場合、光沢保持率や色差を測定することにより判断することができる。
【0033】
本発明の試験方法は、従来の促進耐候性試験装置を用いた方法に比べて、実際の曝露結果との相関関係が高い。このことは酸化チタン量と塗膜劣化の関係の測定結果から明らかとなった。すなわち、酸化チタン量が相違する複数種類の塗膜に対して本発明の試験方法による塗膜劣化を生じさせたところ、酸化チタン量が多くなるほど塗膜劣化が促進されるという結果が得られた。このような結果は、自然曝露による塗膜劣化と近似した結果である。
【0034】
上記結果が得られた理由として、自然曝露では、ラジカル反応による表面からの劣化反応が支配的に起こっているのではないかと推察され、本発明ではラジカル化された酸素原子を選択的に照射するものであることから、ラジカル反応による表面からの劣化反応が支配的に起こり、自然曝露との相関性が高いと推測される。
【0035】
本発明の試験方法は、装置の電源の出力、装置内部の真空度及び酸素導入量を特定範囲に規定するものである。これにより、被処理物の表面温度の上昇等を抑制することによって塗膜劣化に対する影響を抑えることができ、また、ラジカルの照射量を安定化させることができるため、試験において被処理物の表面からの劣化を選択的に発生させることができる。従って、本発明の試験方法は、より自然曝露との相関性が高い試験方法であり、特に促進耐候性試験方法として好適に使用することができる。
【0036】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0037】
(サンプルの作製)
含浸シーラー及び耐透水性シーラーからなる下塗り層が形成され、所定の大きさにカットされたフラットボードに、酸化チタンと硫酸バリウムとをトータルPWCとして23%となる配合比で含み、アイボリー色に調色したアクリル水性エマルション塗料組成物を100g/m2の条件でスプレーを用いて塗布した。これを5分間セッティングした後、100℃で5分間乾燥し、表面に塗膜が形成されている被処理物であるサンプルを得た。
【0038】
(屋外曝露試験)
上記サンプルについて、屋外曝露による耐候性を直接曝露試験(JIS Z 2381 屋外曝露試験方法通則、及び、K 5600−7−6等による)に基づき、日本ペイント株式会社沖縄第二曝露場において、1994年9月〜1999年9月の間行った。曝露場の位置等は以下の通りである。
位置:北緯約26度20分、東経約127度45分
住所:沖縄県中頭郡嘉手納町字水釜373−309
上記試験中、5年経過後における表面を電子顕微鏡によって撮影した。結果を図1に示した。これによって、表層劣化が生じていることが明らかである。
【0039】
(従来の装置による促進耐候性試験方法)
上記サンプルについて、ダイプラ・ウィンテス社製のメタルハライドランプ式促進耐候性試験装置であるDaipla Metal Weather(以下DMWと記す)を使用し、JIS K 5400 9.8(促進耐候性)等を参照して促進耐候性試験を行った。試験は、温度63℃、湿度40%の条件下、60mW/cm2の光源を用いて、4時間の光照射を行い、次いでシャワーを10秒間行った後、温度30℃、湿度98%の湿潤条件下に4時間保った。これを1サイクルとしたものを所定時間、繰り返し行った。256時間照射後の塗膜の表面を電子顕微鏡によって撮影した。結果を図2に示した。図2から、従来の装置による劣化促進試験方法では、表層劣化だけではなく、深層劣化も生じていることが明らかである。
【0040】
(ラジカル化された酸素原子を被処理物に照射することによる試験方法)
図4に記載した構造を有するリモートプラズマ装置内の試料台3上に、サンプルを設置し、真空ポンプ4を用いて減圧状態とした。次に酸素ガスを一定流量で矢印5の方向に流し続けた。高周波電源2(13.56MHz)を用いてプラズマを発生させ、発生したラジカル化された酸素原子をサンプルに照射した。
【0041】
実施例及び比較例
(各出力による真空度と表面温度上昇)
装置において、酸素流入量350ml/分、プラズマ発生部1と試料台3との距離150mm、照射時間60分とし、高周波電源2(13.56MHz)の電源の高周波電力を25、50、100、300W、真空度を0.4、0.6、0.8、1.0torrと変化させた場合のサンプルの上昇温度(℃)を測定した。結果を図5に示した。
図5から、真空度が0.4torrの場合には、サンプルの温度上昇が見られる場合があった。高周波電力が300Wの場合には、真空度が0.8、1.0torrであっても、サンプルの温度上昇が顕著に見られた。
【0042】
(照射距離350mmでの各出力による表面温度上昇)
装置において、酸素流入量350ml/分、真空度を1.0torr、プラズマ発生部1と試料台3との距離350mmとし、高周波電源2(13.56MHz)の電源の高周波電力を50、100、300Wと変化させた場合のサンプルの上昇温度(℃)を測定した。ラジカルの照射時間と上昇温度との関係の結果を図6に示した。
図6から、高周波電力が100、300Wの場合には、距離を350mmに設定しても高出力の為、サンプルの温度上昇が顕著に見られた。
【0043】
(照射距離150mmでの各出力による表面温度上昇)
装置において、酸素流入量350ml/分、真空度を1.0torr、プラズマ発生部1と試料台3との距離150mmとし、高周波電源2(13.56MHz)の電源の高周波電力を50、100、300、600Wと変化させた場合のサンプルの上昇温度(℃)を測定した。ラジカルの照射時間と上昇温度との関係の結果を図7に示した。
図7から、高周波電力が300、600Wの場合には、サンプルの温度上昇が顕著に見られた。このため、温度上昇による劣化が生じ、表層劣化のみを選択的に生じさせることができない。
【0044】
(照射距離150mmでの各出力による色差)
図4に示したリモートプラズマ装置において、酸素流入量350ml/分、真空度を1.0torr、プラズマ発生部1と試料台3との距離150mmとし、高周波電源2(13.56MHz)の電源の高周波電力を15、50、300Wと変化させた場合の色差の経時的な変化を測定した。ラジカルの照射時間と色差との関係を図8に示した。なお、色差は、ミノルタ社製の色差計CR−300を用いて測定した。
図8から、高周波電源の出力が300Wであると、短い照射時間であっても、急速に色差が大きくなるため、誤差が大きくなりやすく、正確に塗膜の劣化状態を予測することが困難になっている。また出力が15Wであると、色差がほとんど変化せず、試験の効果が非常に乏しい。
【0045】
(酸素流量の違いによる色差変化)
図4に示したリモートプラズマ装置において、真空度1.0torr、プラズマ発生部1と試験台3との距離150mmとし、出力50Wの高周波電源(13.56MHz)として、酸素流量を30、350、600ml/min、と変化させた場合の色差の経時的な変化を測定した。ラジカルの照射時間と色差との関係を図9に示した。
図9から、流量が600ml/minの場合は、短い照射時間であっても、急速に色差が大きくなるため、誤差が大きくなりやすく、正確に塗膜の劣化状態を予測することが困難になっている。また、流量が30ml/minの場合は、色差がほとんど変化せず、試験の効果が非常に乏しい。
【0046】
(真空度の違いによる色差変化)
図4に示したリモートプラズマ装置において、酸素流量350ml/min、プラズマ発生部1と試験台3との距離150mmとし、出力50Wの高周波電源(13.56MHz)として、真空度を0.3、1.0、12.0torrと変化させた場合の色差の経時的な変化を測定した。ラジカルの照射時間と色差との関係を図10に示した。
図10から、真空度が0.3torrの場合は、短い照射時間であっても、急速に色差が大きくなるため、誤差が大きくなりやすく、正確に塗膜の劣化状態を予測することが困難になっている。また、真空度が12.0torrの場合は、色差がほとんど変化せず、試験の効果が非常に乏しい。
【0047】
(酸化チタン量による色差変化)
酸化チタン量を16.7、44.4、72.2質量%である3種類の塗膜に対して、上述した条件での沖縄5年曝露、上記酸素ラジカル照射50分(上記リモートプラズマ装置を使用して、50Wの交周波電源(13.56MHz)、プラズマ発生部と試料台との距離150mm、酸素流量400ml/min、真空度1.2torr)をそれぞれ行った。また、従来の促進耐候性試験方法として、岩崎電機社製のメタルハライドランプ式促進耐候性試験装置であるSuper UV Tester(以下SUVと記す)を使用し、JIS K 5400 9.8(促進耐候性)等を参照して促進耐候性試験を行った。試験は、温度63℃、湿度40%の条件下、100mW/cm2の光源を用いて、4時間の光照射を行い、次いでシャワーを10秒間行った後、温度30℃、湿度98%の湿潤条件下に4時間保った。これを1サイクルとしたものを1200時間行った。それぞれ、劣化後の塗膜の色差を測定した。結果を図3に示す。
【0048】
図3から明らかなように、本発明の試験方法による試験結果は、自然曝露による試験結果と同様に、酸化チタンの含有量が多くなるほど色差が大きくなっているが、SUVによる促進耐候性試験では、逆の結果が得られている。このことから、本発明の試験では、自然曝露との相関性が高いことが明らかとなる。
【0049】
(プラスチック成形体での試験)
ポリプロピレンの板状成形体に対して試験を行った。測定は、装置において、酸素流入量300ml/分、真空度1Torr、プラズマ発生部1と試料台3との距離150mmとし、高周波電源2(13.56MHz)の電源の高周波電力を200Wとして行った。ラジカルの照射時間とサンプル表面の光沢保持率(GR)との関係を図11に示した。なお、光沢保持率は、試験前後のサンプルの光沢値を、BYK社製のグロス計であるmicro−TRI−glossを用いて、入反射角60°で測定し、試験後の光沢値を試験前の光沢値で割ったものに100をかけて求められる。
【0050】
図11から、ポリプロピレンの板状成形体に対してラジカル化された酸素原子の照射を行った場合にも表面劣化が生じ、好適な試験を行うことができることが明らかである。
【0051】
(ゴム成形体での試験)
天然ゴム、スチレンブタジエンゴム及びフッ素系ゴムの板状成形体に対して試験を行った。試験条件は、上述したプラスチック成形体での試験と同一とした。ラジカルの照射時間と色差との関係を図12に、ラジカルの照射時間と光沢保持率との関係を図13にそれぞれ示した。
【0052】
図12及び図13から、ゴムの板状成形体に対してラジカル化された酸素原子の照射を行った場合にも表面劣化が生じ、好適な試験を行うことができることが明らかである。また、図12及び図13においては、3種類のゴムの耐久性は、フッ素ゴムが最も優れ、天然ゴムが最も劣るとの結果が得られている。上記結果は、自然界における曝露において一般的に知られているゴムの安定性と相関性を示している。
【0053】
【発明の効果】
本発明によって、自然曝露との相関性が高い試験方法を提供することができる。なお、本出願は、国等の委託研究の成果に係る特許出願[経済産業省「次世代住宅技術開発(資源循環型住宅技術開発に係るものに限る。)資源循環型高耐久塗料・塗装システムの開発」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの]である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に用いたサンプルの塗膜に対して5年間の自然曝露による塗膜劣化試験を行った後の塗膜表面の電子顕微鏡写真を表す図である。
【図2】 実施例に用いたサンプルの塗膜に対してダイプラ・ウィンテス社製のメタルハライドランプ式促進耐候性試験装置による塗膜劣化試験を行った後の塗膜表面の電子顕微鏡写真を表す図である。
【図3】 被処理塗膜中の酸化チタン含有量と劣化後の色差の関係を示す図である。
【図4】 本発明に用いられるリモートプラズマ装置の一例を表す図である。
【図5】 各出力による真空度と表面温度上昇との関係を表す図である。
【図6】 照射距離350mmでの各出力による表面温度上昇を表す図である。
【図7】 照射距離150mmでの各出力による表面温度上昇を表す図である。
【図8】 各出力における色差の経時的変化を表す図である。
【図9】 各酸素流量における色差の経時的変化を表す図である。
【図10】 各真空度における色差の経時的変化を表す図である。
【図11】 プラスチック成形体での試験を行ったときのラジカル照射時間とサンプル表面の光沢保持率(GR)との関係を示す図である。
【図12】 ゴム成形体での試験を行ったときのラジカル照射時間とサンプル表面の色差との関係を示す図である。
【図13】 ゴム成形体での試験を行ったときのラジカル照射時間とサンプル表面の光沢保持率(GR)との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 プラズマ発生部
2 高周波電源
3 試料台
4 真空ポンプ
5 ガスの流れ
6 中性ラジカルの流れ
7 管
8 電流の流れる方向
9 フィルター
Claims (7)
- ラジカル化された酸素原子を被処理物に照射することによって前記被処理物表面の劣化を促進する試験方法であって、
前記照射は、真空度0.4〜10torr、酸素流入量50〜500ml/分の条件下で行われ、
ラジカル化された酸素原子は、20〜200Wの電源を用いたリモートプラズマ装置によって発生させたものであり、
リモートプラズマ装置は、被処理物を設置する試料台とは独立してプラズマを持続的に発生する機構を備えたものであり、
プラズマ発生部と試料台の距離は、15〜60cmに調節可能なものである
ことを特徴とする試験方法。 - 試験方法は、被処理物の表層劣化を選択的に生じさせるものである請求項1記載の試験方法。
- リモートプラズマ装置より選択的にラジカル化された酸素原子を照射するために、プラズマ発生部とラジカル照射部との間にフィルターを設けた請求項1又は2記載の試験方法。
- 試験方法は、促進耐候性試験を行う方法である請求項1、2又は3記載の試験方法。
- 被処理物は、有機材料である請求項1、2、3又は4記載の試験方法。
- 有機材料は、プラスチック又はゴムである請求項5記載の試験方法。
- 被処理物は、その表面に塗膜が形成されているものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の試験方法。
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