JP3963800B2 - コンクリートの試験方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、未硬化のフレッシュコンクリートの試験方法および試験装置に関するもので、特に準高流動コンクリートあるいは軟練りのコンクリートの評価試験に用いる。
【0002】
【従来の技術】
未硬化のフレッシュコンクリートのワーカビリティーを評価するための試験方法としては、スランプコーンを用いたJIS A 1101のスランプ試験方法が最も普及している。
【0003】
一方、近年、比表面積の大きい微粉体を用いた流動性が高く自己充填性に優れた高流動コンクリートの施工実績が増えているが、高流動コンクリートは流動性が高すぎて従来のスランプ試験では対応できないため、高流動コンクリートについてはスランプフロー試験方法が利用されている。
【0004】
スランプフロー試験は、上記JIS A 1101のスランプ試験方法におけるスランプコーンを使用し、試料の広がりの直径を基準とするスランプフロー値(mm)と、ストップウォッチにより500mm到達時間(t−500)が測定される。
【0005】
また、スランプフロー試験方法の改良型として、L形フロー試験方法があり、スランプフロー試験方法とともに、高流動コンクリートの試験方法として規格化されている。
【0006】
L形フロー試験方法では、図3に示すような鉛直部22と水平部23を有するL型試験器21を用い、鉛直部22に高流動コンクリートの試料を、通常、2層に各5回突いて充填した後、鉛直部22と水平部23を区画する仕切板24を引き上げ、開口から5cmおよび10cm区間の通過時間をセンサで計測するとともに、流動が停止したときの鉛直部22の沈下量と先端までの移動量を計測する。
【0007】
この他、スランプフロー試験方法の改良型としては、例えば特開平9−218196号公報に記載されるフレッシュコンクリートの評価方法のように、スランプフロー試験における平板に同心円状の複数のバリアを設け、スランプフロー値や各バリアまでの到達時間を測定するようにしたものが発明されている。
【0008】
また、特開平9−250980号公報には、高流動コンクリートのコンシステンシー試験方法として、上述した従来のスランプフロー試験と、スランプコーンの外周位置に帯環の周方向等分割位置ごとに垂直脚平を設けたバリアを設置して行うバリアスランプフロー試験を併用し、それらの対比からワーカビリティーに関連するコンシステンシーの評価を行う方法が記載されている。
【0009】
なお、フレッシュコンクリートの挙動をビンガム流体の挙動としてモデル化した場合、スランプ値やスランプフロー値は主として降伏値τf の評価に用いられ、時間的要素を含むスランプフロー試験における500mm到達時間やV漏斗試験が塑性粘度ηplの評価に用いられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
最近、コンクリートに求められる性能がますます高度化・多様化している中で、上述の高流動コンクリートは粉体量の増加によるコストアップ、収縮量の増加等の問題が指摘されており、厳しい品質管理が求められる。
【0011】
これらの問題点を低減可能と思われるスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリートは、自己充填性はないが、バイブレーターなどによる若干の振動を受けることにより良好な流動性を持つとともに、振動条件下においても優れた材料分離抵抗性が期待されている。
【0012】
しかし、従来のスランプ試験方法はスランプ21cm以下のコンクリートの評価に適しているとされ、また、スランプフロー試験方法やL形フロー試験方法、それらの改良方法はスランプフローが600mm以上の高流動コンクリートの評価に適しているとされるが、間に位置する上述のスランプフローがおそよ450±50mm程度の準高流動コンクリート(通常21〜25cm程度のスランプ値をとる)あるいは準高流動コンクリートに達しない比較的スランプが大きい軟練りのコンクリート(スランプ値15cm以上)についてはフレッシュコンクリートの性状を適正に評価できる試験方法がなかった。
【0013】
すなわち、従来のスランプ試験方法では、高流動コンクリートの場合と同様、流動性が高すぎてスランプ値としての測定が困難または不可能となる。
【0014】
また、スランプフロー試験方法では、例えばフローが500mmに到達しなければt−500の測定自体ができない他、500mmにやっと到達する範囲では極端に精度が落ち、スランプフロー値についても高流動コンクリートの領域ではわずかな性能の差がスランプフローに敏感に表れるのに対し、スランプフローがおよそ450±50mm程度の準高流動コンクリートの場合、性能の差がスランプフロー値の差として顕著ではなく、やはり極端に精度が落ちるという問題がある。
【0015】
本願発明は、従来、適正に評価できる試験方法がなかった準高流動性コンクリートや軟練りのコンクリートのワーカビリティーあるいはコンシステンシーといったフレッシュコンクリートの性状を、適正にかつ効率よく評価できる試験方法および試験装置を提供することを目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係るコンクリートの試験方法は、スランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートまたは準高流動コンクリートの試験方法であって、筒状のタンク部と、前記タンク部の下部側面に形成された開口部で連通する水平からの傾きが20°〜26°の傾斜フロー部と、前記開口部を開閉可能に仕切り前記傾斜フロー部を前記タンク部の下部と区画する仕切板とを備えた傾斜フロー試験器の前記タンク部に、該タンク部の上部より未硬化のフレッシュコンクリートの試料を投入し、前記タンク部の底面から所定の高さに達するまで詰め込み、前記仕切板を開放することにより、前記開口部から前記傾斜フロー部に前記試料を流下させ、その際の前記試料の傾斜面での流下速度を測定することにより、該試料のワーカビリティーを評価することを特徴とするものである。
【0017】
基本的な原理はL形フロー試験方法と同様であるが、L形フロー試験方法が通常のスランプフロー試験方法と同様に水平面でのコンクリートの流動や広がりを計測するのに対し、本願発明の試験方法は傾斜面での主として流下速度の測定によりワーカビリティーを評価する。
【0018】
これは、評価される試料の対象を、従来、適正な評価が困難であった軟練りのコンクリートや準高流動コンクリートとしていることに関連し、高流動コンクリートと比べ相対的にフレッシュコンクリートとしての流動性が低いこれらのコンクリートの試料について、傾斜面を利用することで、みかけ上、流動性を増幅させた形で計測を行うものである。この試験方法によれば、主としてワーカビリティー評価の要素の一つである塑性粘度(ηpl)の評価を、従来のV漏斗試験やスランプフロー試験方法に比べ、より的確に行うことが可能となる。
【0019】
請求項2は、請求項1に係るコンクリートの試験方法において、前記傾斜フロー部に設けたセンサにより、前記傾斜フロー部の傾斜面を流下する前記試料の所定区間における移動時間を計測して、前記流下速度を求めることを特徴とするものである。
【0020】
請求項1に係るコンクリートの試験方法では、流下速度の測定方法は特に限定されないが、スランプフロー試験方法で用いられるストップウォッチによる計測では信頼性が低く、従来、L形フロー試験器に取り付けられているような速度センサにより計測することで、高い精度の計測結果を得ることができる。
【0021】
このようなセンサは、例えば離れた2点または数点をコンクリートが通過するとき(通常、流下するコンクリートの先端位置で測定する)の時間差によって、速度を求めるものが一般的である。
【0022】
本願の請求項3に係る傾斜フロー試験器は、スランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートまたは準高流動コンクリートの試験に用いるための傾斜フロー試験器であって、試料が投入される筒状のタンク部と、前記タンク部の下部側面に形成された開口部で連通する傾斜フロー部と、前記開口部を開閉可能に仕切り前記傾斜フロー部を前記タンク部の下部と区画する仕切板と、前記仕切板の開放により前記タンク部に投入された試料が前記傾斜フロー部の傾斜面を流下する際の流下速度を測定するセンサを備えており、前記傾斜フロー部の水平からの傾きを20°〜26°で可変としてあることを特徴とするものである。
【0023】
基本的な原理はL形フロー試験器と同様であるが、L形フロー試験器の水平部に所定の傾斜を設けた形態を有する。
【0024】
すなわち、L形フロー試験器の鉛直部に相当する筒状のタンク部に、試料を投入し、仕切板を持ち上げることで試料が傾斜フロー部を流下するようになっており、適用対象とするスランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートや準高流動コンクリートの試料について、傾斜により流動を促すことで、L形フロー試験器に比べて感度を高め、より高い精度でコンクリートのワーカビリティーの評価が可能となる。
【0026】
ワーカビリティーの評価に関しては、塑性粘度の他、コンクリート降伏値(τf)なども重要な要素となり、一概に決定できない面もあるが、本願発明が対象とするスランプフローがおそよ450±50mmの準高流動コンクリート(スランプ値は、通常21〜25cm程度)、スランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートの場合において、傾きが20°より小さい場合は流下速度が十分でないために感度が悪くなり(計測結果のバラツキが大きくなる)、また26°より大きい場合は流下速度が速過ぎて正確な計測が困難となる可能性がある。
【0028】
準高流動コンクリートやスランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートを対象とする場合、傾斜フロー部の水平からの傾きは、上述のように20°〜26°の範囲で選択するのが望ましく、請求項3に係る発明では、さらに試料が投入されるタンク部と傾斜フロー部の接合部分をピン構造とするなどして、傾斜フロー部の傾きを可変としているため、例えば適用対象をさらに細かく限定して最適な傾斜での測定を行うといったことが可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の傾斜フロー試験器1の一実施形態を示したもので、筒状のタンク部2と所定の角度θで傾斜する傾斜フロー部3を有し、タンク部2にフレッシュコンクリートの試料を数層に分けて突き固めながら投入し、把手部4aを握って仕切板4を引き上げることで試料が傾斜フロー部3を流下するようになっている。
【0030】
本実施形態では、傾斜フロー部3は上面が開口した溝形断面になっており、中間位置にコンクリートの流下速度を測定するためのフロー速度測定器8が着脱式に取り付けられている。また、傾斜フロー部3の先端部は閉塞され、流下したコンクリートが内側に溜まるようになっているが、先端部は開放されていてもよい。
【0031】
フロー速度測定器8は、従来のL形フロー試験器で使用されているものと同様のもので、所定間隔をおいて配置された複数の非接触対物センサ9が流下するコンクリートの先端位置の通過時間を捉え、センサ9間の距離と時間差により流下速度を計測することができる。
【0032】
図中、5はタンク部2および傾斜フロー部3を支持するための支柱であり、タンク部2の両側面に溶接した筒状の上部支持部6を固定ねじ6aで支柱5にねじ式に止め付け、その下方で筒状の下端支持部7を固定ねじ7aにより支柱5に止め付け、傾斜フロー部3の始端部下面を支持している。これらの支持高さを調整することで、傾斜フロー部3の傾斜θを変えることができる。
【0033】
次に、この傾斜フロー試験器を使用した実験例について説明する。
【0034】
実験に用いた材料と物性は以下の通りである。
【0035】
セメント:普通ポルトランドセメント(比重ρ=3.16)
細骨材:山砂(比重ρ=2.62)
粗骨材:石灰質砕石(比重ρ=2.70)
混和剤:AE減水剤
実験に使用したコンクリートは、目標スランプを15〜21cmとし、水セメント比(W/C)を40〜55%、単位水量を155〜199kg/m3 と変化させた。
【0036】
配合を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
コンクリートの練り混ぜは、容量100リットルのパン型強制練りミキサを用いて行った。練混ぜ方法は、粗骨材、細骨材(1/2)、セメント、細骨材(1/2)の順に投入し、1分間攪拌した後、水および混和剤を投入した。これを1分30秒攪拌してから排出した。
【0039】
試験方法としては、上述した図1の傾斜フロー試験器1を用い、タンク部2のコンクリート投入口に10リットルのコンクリート試料を3層10回突き詰めてから静かに仕切板4のゲートを開き、流下速度を測定した。また、並行して従来法によるスランプ値およびスランプフロー値を測定した。
【0040】
実験結果は、表1に併記した通りである。また、図2に水セメント比と流下速度(傾斜フロー速度)の関係を示した。
【0041】
傾斜角度が26°の時の流下速度は高速のため、実験に用いた装置では測定不可能であった。
【0042】
一般に、水セメント比(W/C)が小さくなると粘性が大きくなり、流動性は低下する傾向にある。図2において、水セメント比(W/C)が小さくなるにつれて流下速度が小さくなっていることから、傾斜フロー試験が流動性の一般的傾向を示していることが確認できる。
【0043】
傾斜角度については、スランプ値と傾斜フローとの単回帰分析を行った結果、水セメント比(W/C)およびスランプに関係なく、傾斜角度が20°の場合は、相関が低いことが分かる。一方、傾斜角度が23°の場合は、決定係数R2 が0.989および0.9583となり、流下速度15〜40cm/secにおいて高い相関が確認できる。
【0044】
この実験結果においては、傾斜フロー試験によりフレッシュコンクリートの粘性の評価が可能であり、上記の条件の下、傾斜角度については23°が適していることが分かった。
【0045】
【発明の効果】
本願発明の試験方法、試験装置によれば、従来のスランプ試験やスランプフロー試験では的確な評価ができなかった準高流動コンクリートや軟練りのコンクリートのワーカビリティーの評価を、傾斜フローの適用により効率よく、より適正によく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明に係る傾斜フロー試験器の一実施形態を示す側面図である。
【図2】 実験結果における水セメント比と流下速度(傾斜フロー速度)との関係を示すグラフである。
【図3】 従来例としてのL形フロー試験器を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…傾斜フロー試験器、2…タンク部、3…傾斜フロー部、4…仕切板、5…支柱、6…上部支持部、6a…固定ねじ、7…下端支持部、7a…固定ねじ、8…フロー速度測定器、9…センサ、
21…L形フロー試験器、22…鉛直部、23…水平部、24…仕切板
Claims (3)
- スランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートまたは準高流動コンクリートの試験方法であって、筒状のタンク部と、前記タンク部の下部側面に形成された開口部で連通する水平からの傾きが20°〜26°の傾斜フロー部と、前記開口部を開閉可能に仕切り前記傾斜フロー部を前記タンク部の下部と区画する仕切板とを備えた傾斜フロー試験器の前記タンク部に、該タンク部の上部より未硬化のフレッシュコンクリートの試料を投入し、前記タンク部の底面から所定の高さに達するまで詰め込み、前記仕切板を開放することにより、前記開口部から前記傾斜フロー部に前記試料を流下させ、その際の前記試料の傾斜面での流下速度を測定することにより、該試料のワーカビリティーを評価することを特徴とするコンクリートの試験方法。
- 前記流下速度は、前記傾斜フロー部に設けたセンサにより、前記傾斜フロー部の傾斜面を流下する前記試料の所定区間における移動時間を計測して求めることを特徴とする請求項1記載のコンクリートの試験方法。
- スランプ値が15cm以上の軟練りのコンクリートまたは準高流動コンクリートの試験に用いるための傾斜フロー試験器であって、試料が投入される筒状のタンク部と、前記タンク部の下部側面に形成された開口部で連通する傾斜フロー部と、前記開口部を開閉可能に仕切り前記傾斜フロー部を前記タンク部の下部と区画する仕切板と、前記仕切板の開放により前記タンク部に投入された試料が前記傾斜フロー部の傾斜面を流下する際の流下速度を測定するセンサを備えており、前記傾斜フロー部の水平からの傾きを20°〜26°で可変としてあることを特徴とする傾斜フロー試験器。
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