JP3966023B2 - ポリエステル熱接着繊維およびクッション材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル熱接着繊維およびこれを用いてなるクッション材に関する。
【0002】
さらに詳しくは、車輌用などの比較的高い温度環境下に晒される機会の多い用途に対し、耐熱性を有するクッション材などに用いられるポリエステル熱接着繊維およびクッション材に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、ルーフィング資材、自動車用内装材、カーペット基材、緩衝材などに用いる繊維クッション材として使用される不織布繊維構造体において、該繊維構造体の構成繊維(以下、母材繊維という)相互間を接着する目的で熱接着繊維が広く使用されるようになってきている。
【0004】
繊維クッション材の母材繊維としては比較的安価で優れたポリエステル繊維が多く使用されており、該母材繊維を接着する熱接着繊維もリサイクルの容易性から、ポリエステル系素材を用いたものが多く使用されている。
【0005】
例えば、ポリエステル熱接着繊維が芯成分がポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、鞘成分がイソフタル酸(以下、IPAという)成分を共重合した低融点PETとする芯鞘型複合繊維では、該熱接着繊維を接着する温度に合わせて、低融点ポリエステルのIPA成分の共重合率を設計する。
【0006】
一般にIPAの共重合率が多くなると該共重合PETの示差走査熱量計(以下、DSCという)で測定される融解温度は低下する。なお、融解温度とはこの場合、DSCで測定される吸熱ピークに該当する温度をいう。例えば、共重合成分のないホモPETの融解温度をDSCで測定すると250〜260℃の範囲に吸熱ピークが確認されるが、IPA20モル%共重合PETでは該吸熱ピークは210℃程度まで低下するとともに、吸熱ピークが観測される温度領域が広くなる傾向がある。更に、IPA40モル%共重合PETでは、融解温度は110℃程度まで低下するが、融解する温度領域が広くなり過ぎるとともに、融解の際の吸熱量が低下し、融解ピークが観測できなくなる。この場合、DSCでは融解温度の測定が不可能になるので、融解温度は融点顕微鏡などで測定する。
【0007】
一方で、例えばPETを母材としたクッション材を熱接着原綿で熱接着処理する場合、母材の耐熱性を考慮して、220℃以下の温度で熱処理される。このような熱接着温度に対応すべく、特開昭58−41912号公報、特開平2−139466号公報、特開平6−280147号公報等では、IPA40モル%共重合PETを熱接着成分とすることで融解温度を110℃程度に低下させて使用する方法がとられている。しかし、前述した通り、IPAを40モル%共重合させると融解温度は低下するが、該温度領域も広くなり、融解開始温度も大幅に低下し、70℃近辺より徐々に融解を開始する。
【0008】
このように、ポリエステル熱接着原綿は実用的な接着温度で接着を可能とするために、一般的にIPAを30〜50モル%共重合した共重合PETが広く使用されているが、該熱接着成分の融解開始温度も70〜80℃に低下しているために、熱接着されたクッション材を90〜100℃の環境に晒すと、接着点の一部が再融解し、接着点が外れてクッション材が変形するなどの欠点を有している。
【0009】
従って、例えば自動車の天井材用途などのように、90〜100℃の環境に晒される用途等では単純なIPA共重合PETで構成されるポリエステル熱接着原綿ではクッション材の耐熱性の面で使用できなかった。
【0010】
該耐熱性を改善すべく、特開平7−119011号公報、特開2000−160430号公報などで、特殊共重合ポリエステルが提案されているが、いずれも特殊な成分を共重合成分に用いる必要があり、原材料コストやポリマーの複雑な製造工程を要し、製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術では達成できなかった耐熱性を有するクッション材に用いるポリエステル熱接着繊維とクッション材を安価かつ容易に提供せんとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。
【0013】
すなわち、本発明のポリエステル熱接着繊維は、融解温度が180〜220℃のポリエーテルエステルブロック共重合体(ポリマA)と、融解温度が180℃以下のポリエステル(ポリマB)が、重量混合比率A/B=10/90〜80/20の範囲内で溶融混合された重合体が用いられて構成されてなることを特徴とするポリエステル熱接着繊維。
【0014】
また、本発明のクッション材は、母材繊維が上述の本発明にかかるポリエステル熱接着繊維により接着されてなるクッション材である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のポリエステル熱接着繊維を詳細に説明する。
【0016】
本発明の熱接着繊維は、融解温度が180〜220℃のポリエーテルエステルブロック共重合体(以下、ポリマAという)と、融解温度が180℃以下のポリエステル(以下、ポリマBという)とが、重量混合比率A/B=10/90〜80/20で溶融混合されてなる重合体より構成されるポリエステル熱接着繊維である。
【0017】
本発明において、融解温度とはDSCで測定される融解曲線において、確認できる吸熱ピークに該当する温度をいう。
【0018】
また、DSCで測定される融解曲線において、吸熱ピークが確認できないものは融点顕微鏡で測定した温度をいう。
【0019】
融解温度が180〜220℃のポリマAに用いられるポリエーテルエステルブロック重合体としては、芳香族ポリエステルセグメントをハードセグメントとし、ポリアルキレンオキシドセグメントをソフトセグメントとするブロック共重合体を主たる対象として例示することができる。具体的には、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどを短鎖ジオール、平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールを長鎖ジオールとするブロック共重合体である。
【0020】
融解温度が180℃以下のポリマBはPET、PBT、あるいはPPTに少なくとも1種類以上の化合物を共重合したものが好ましく、共重合成分としては、IPA、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリブチレンレングリコール等が好ましい。特に原料の価格や製造方法の容易さから主たる構成成分がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるIPA共重合PETがより好ましい。共重合成分は本発明の効果が損なわれない範囲であれば2種類以上を用いてもよい。
【0021】
本発明者らの知見によれば、クッション材を接着する成分としてポリマBが、90〜100℃領域での接着点の再溶融を抑制する成分としてポリマーAが作用していると考えられる。ポリマAの融解温度が180℃より低いと、再溶融を抑制する機能が低下して、本発明の目的である熱接着されたクッション材の接着点の再融解が防止できないので好ましくない。
【0022】
また、特に厚みのあるクッション材などを製作する場合、該布帛の中心部へは熱が伝わりにくく、220℃の温風ヒーターで加熱しても、加熱時間が短いと該布帛の中心部の温度はヒーターの設定温度より20〜40℃も低い温度までしか上がらず、クッション材の接着状態が著しく低下する。一般にポリエステル素材を熱処理する設備は、母材ポリエステルを溶融しないレベルとして220℃程度まで温度を上げることが可能であるが、生産性を考慮して、加熱時間は2〜5分程度である。このような条件での生産において接着性を低下させないためには、ポリマAの融解温度は220℃以下でなければならない。よって、ポリマAの融解温度は180〜220℃の範囲内であることが肝要であり、好ましくは185〜215℃である。
【0023】
ポリマBの融解温度が180℃を越えると、クッション材の接着を抑制してしまい、接着性が低下してしまうので好ましくない。よって、ポリマBの融解温度は180℃以下であることが肝要であり、好ましくは160℃以下である。
【0024】
特に原料の価格や製造方法の容易さからIPA共重合PETを用いる場合、融解温度を180℃以下にするには、IPA共重合率を25〜50モル%にすることで可能となるが、より好ましくは、30〜40モル%である。、
ポリマAとポリマBは二酸化チタンなどの艶消し剤や滑剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0025】
ポリマAとポリマBの重量混合比率は10/90〜80/20である。ポリマA成分の比率が10%未満になると、接着点の再溶融を抑制するポリマA成分の比率が低すぎて、本発明の目的である熱接着されたクッション材の接着点の再融解が防止できないので好ましくない。また80%を越えると、低温での接着性能を有するポリマB成分の比率が低下しすぎ、熱接着時の接着性が低下してしまうので好ましくない。ポリマAとポリマBの重量混合比は、より好ましくは20/80〜60/40である。なお、ここでいう重量比率とはポリマAとポリマBの重量比率であって、本発明の効果を損なわない範囲であれば、更に他の成分のポリマーが混合されていてもよい。
【0026】
なお、2種類のポリエステル系ポリマを溶融混合すると相互のポリエステル間でエステル交換反応を生じるて、両成分のランダム共重合体が生成することが知られている。しかし本発明では混合ポリマ系における双方のポリエステル系成分をランダム共重合化させないことにより効果を発揮する。
【0027】
本発明の熱接着繊維はポリマAとポリマBの溶融混合ポリマー(以下、熱接着成分という)の少なくとも一部が繊維横断面の周囲において露出しているものが好ましく、同心または偏芯の芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型などの複合繊維とすることができる。同心の芯鞘型にすると製糸性がよく、偏芯型にすると潜在捲縮性となるので、用途に応じて適切な複合形態を選択するのがよい。
【0028】
芯鞘形態とする場合、該熱接着成分を鞘成分として、芯成分には融解温度が220℃以上のポリエステルを用いることが、該熱接着繊維を用いたクッション材の強度特性の点から好ましい。芯成分のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく用いることができる。また、資源の再利用、環境保護の視点から再生ポリエステルを用いることができる。更に、芯成分は本発明の効果が損なわれない範囲内で、2種類以上の混合ポリマーで形成されてもよく、芯成分をバイメタル複合形態などにしてもよい。芯成分には二酸化チタンなどの艶消し剤や滑剤などの添加剤を添加してもよい。芯鞘複合比率は20/80〜80/20が好ましく、より好ましくは40/60〜60/40である。
【0029】
本発明の熱接着原綿(繊維)の横断面の形状は円形であっても異形であってもよい。本発明の熱接着繊維は紡糸を行った後、延伸することなく用いてもよく、あるいは延伸して用いてもよく、所望に応じて捲縮を付与してもよい。また、所望の繊維長に切断し得ることができる。本発明の熱接着繊維の単繊維繊度は50dtex以下が好ましく、より好ましくは10dtex以下である。
【0030】
本発明のクッション材は、本発明の熱接着繊維により母材繊維が接着されてなるものであり、該クッション材に含まれる熱接着繊維の重量比率は、用途によって選択することができ、また本発明の効果が損なわれない範囲であれば、本発明の熱接着繊維以外の熱接着繊維と併用してもよい。
【0031】
本発明のクッション材に用いる母材繊維はコスト、リサイクル性の面でポリエステル繊維が好ましい。該母材繊維は用途によっても相違するが、一般的には、例えば、クッション性や嵩高が要求されるものであれば6〜17dtexのポリエステル繊維、あるいは、ソフトな風合いが要求されるものであれば1〜6dtexのポリエステル繊維を母材繊維として使用するのがよい。また、資源の再利用、環境保護の視点から再生ポリエステルからなる母材繊維を用いてもよい。更には2種類以上の母材繊維を使用してもよい。これら母材繊維は、母材繊維/熱接着繊維の混合比は、20/80〜80/20重量%の範囲内で混合されるのがよい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0033】
なお、本発明で定義する各特性値は以下の方法で求めたものである。
(1)融解温度:
a.示差走査型熱量計(DSC)で窒素気流下、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0034】
b.上記のDSCで融解温度が確認できないものは、融点顕微鏡を用い、10℃/分の昇温速度下で融解開始温度と融解完了温度を観測し下式で求めた。
【0035】
融解温度(℃)=(融解開始温度+融解完了温度)/2
(2)耐熱性評価:
クッション材を130mm×25mm×10mmの形状に切り出して得たテストサンプルを、90℃の熱風乾燥機に1時間放置(静置)した後、室温(約25℃)で30分間放置(静置)し、サンプルの厚みLi(mm)を測定した。
【0036】
熱処理前のサンプルの厚み10(mm)から耐熱性を下式で求めた。
【0037】
耐熱性={(Li−10)/10×100}(%)
耐熱性の優劣は、耐熱性20%未満を良好、耐熱性20%以上を不良として判
定した。
実施例1〜4
ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、ソフトセグメントに平均分子量が1400のポリテトラメチレングリコールを用いた、ポリエーテルエステルブロック共重合体で、ポリエーテル成分/ポリエステルエステル成分の重量比率を表1に示す割合で共重合させた極限粘度[η]=0.85のポリマAと、イソフタル酸を表1に示す量で共重合させた極限粘度[η]=0.62のIPA共重合PETチップ(ポリエステルB)を表1に示す重量混合割合で、チップ状で混合した。
【0038】
次いで、該混合チップポリマーを鞘成分に用い、極限粘度[η]=0.65のポリエチレンテレフタレートを芯成分に用いて、芯鞘比率50/50で290℃で紡糸口金より吐出し、1500m/分で未延伸糸を巻き取った。次いで該未延伸糸を80℃温浴中で3.3倍に延伸後、機械捲縮を付与した後、51mmに切断した。
【0039】
次に、母材繊維として6.6dtex、繊維長64mmの中空断面立体捲縮を有するポリエチレンテレフタレート短繊維を用い、得られた熱接着原綿と重量比率50/50で混綿し、カード開繊後、ウエッブを積層して目付800g/m2 となし、厚み10mmまで圧縮しながら200℃の熱風で2分間熱成型した後、冷却してクッション材を作製した。得られたクッション材の耐熱性評価結果を表1に示した。耐熱性は良好であった。
比較例1〜4
ポリエーテル成分/ポリエステルエステル成分の重量比およびポリマA/ポリマBの混合比率を表2に示す通りに行った以外は実施例1〜4と同じ方法で熱接着原綿を得た。得られた熱接着原綿を用いて実施例1〜4と同様にして作製したクッション材の耐熱性評価結果を表2に示す。耐熱性は不良であった。特に、比較例2、4については、クッション材を作成する段階で、クッション材が接着不良を生じたため耐熱性の評価ができなかった。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、車輌用などの比較的高い温度環境下に晒される機会の多い用途に対し、高温耐熱性を有するクッション材に用いるポリエステル熱接着繊維およびクッション材を提供できる。
Claims (4)
- 融解温度が180〜220℃のポリエーテルエステルブロック共重合体(ポリマA)と、融解温度が180℃以下のポリエステル(ポリマB)が、重量混合比率A/B=10/90〜80/20の範囲内で溶融混合された重合体が用いられて構成されてなることを特徴とするポリエステル熱接着繊維。
- ポリマBがイソフタル酸を25〜50モル%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル熱接着繊維。
- ポリエステル熱接着繊維が、芯鞘型の複合繊維構造を呈しており、該複合繊維の鞘成分が、融解温度が180〜220℃のポリマAと、融解温度が180℃以下のポリマBが、重量混合比率A/B=10/90〜80/20の範囲内で溶融混合された重合体からなるものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル熱接着繊維。
- 母材繊維が熱接着繊維により接着されて構成されているクッション材であって、該熱接着繊維が、融解温度が180〜220℃のポリマAと、融解温度が180℃以下のポリマBが、重量混合比率A/B=10/90〜70/30の範囲内で溶融混合された重合体が用いられて構成されてなるものであることを特徴とするクッション材。
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