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JP3972695B2 - リグノフェノール誘導体の製造方法 - Google Patents
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JP3972695B2 - リグノフェノール誘導体の製造方法 - Google Patents

リグノフェノール誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は木粉等からリグニンを分離精製するリグノフェノール誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保全のため再生可能なバイオマスの利用が脚光を浴びている。木材についても紙,パルプ産業等で利用されてきたセルロースだけでなく、木材に25%〜30%の高い成分比率で含まれているリグニンに関心が寄せられている。しかし、木材においてはその主成分が構造及び性質の異なるリグニンとセルロース等の炭水化物とからなっており、リグニンを分離する必要がある。
従来、木材等からのリグニンの単離法には、▲1▼木粉の95%エタノールによる直接抽出、▲2▼木粉を振動式ボールミルを用いて径約10ミクロンまで微粉砕し、ついで含水ジオキサンによりリグニンを抽出する方法、▲3▼塩酸や硫酸によって加水分解する方法などがある。▲1▼,▲2▼の方法はリグニンの分離される割合が低く、▲3▼の方法はリグニン成分の分離がほぼ完璧に行われるが、リグニン成分の不活性化を伴うため有効利用が難しい問題があった。
【0003】
こうしたなかで、特許第2895087号でリグニンの良溶媒であるクレゾールを利用することによりリグニンの不活性化を抑える発明が開示された。さらに特開2001−261839で第3の方法(本願では以下「ProcessII stepII」という。)と称し、「…濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶区分として得る」内容の粗リグノフェノール誘導体から高純度のリグノフェノール誘導体の製法発明が開示された。この発明は常温で反応させるためエネルギーの節約になることの他に、前記▲3▼の欠点のように縮合によるリグニンの不活性化を伴わないこと、前記▲1▼,▲2▼の欠点のように部分的なリグニンの抽出ではなく木粉中のほぼすべてのリグニンが取り出せるなど優れた技術となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ProcessII stepIIは有機溶媒を多量に使用することによるコスト高と、有害な爆発性危険物を扱っていることなどが実用化するうえで問題であった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するもので、健康や環境により配慮した製法で低コスト化を実現するリグノフェノール誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、請求項1の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、リグニンとフェノール誘導体が反応したリグノフェノール誘導体相をセルロース成分が溶解した酸の相から相分離した後、この相分離したリグノフェノール誘導体相に過剰の水を加えて不溶区分の粗リグノフェノール誘導体を回収し、続いて、該粗リグノフェノール誘導体に酸化防止剤を加え、次いで、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液を加えて反応させ、しかる後、固液分離を行うことにより分離精製されることを特徴とするリグノフェノール誘導体の製造方法にある。
請求項2の発明たるリグノフェノール誘導体の製造方法は、請求項1で、フェノール誘導体が疎水性物質からなり、且つ前記酸化防止剤が水溶性物質からなることを特徴とする。
請求項3の発明たるリグノフェノール誘導体の製造方法は、請求項1又は2で、酸化防止剤及びアルカリの濃度がそれぞれ0.1N〜2Nの範囲内にあることを特徴とする。
請求項4の発明たるリグノフェノール誘導体の製造方法は、請求項3で、酸化防止剤が有機系の酸化防止剤で、且つその量が前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの量と同じかそれ以上であることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るリグノフェノール誘導体の製造方法について詳述する。図1は本発明のリグノフェノール誘導体の製造方法を従来法のProcessII stepIIの反応と対比表示したもので、不溶区分の粗リグノフェノール誘導体を造るところまで同じになっている。
【0008】
粗リグノフェノール誘導体は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、その後、過剰の水を加えて不溶区分として分離する。
詳しくは、特開2001-261839にあるProcessII stepIIの方法の記載と同様、「木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に酸を混合しセルロース分を酸に溶解」させる。リグニンとフェノール誘導体が反応したリグノフェノール誘導体相はセルロース成分が溶解した酸の相から相分離される。その後、この相分離した反応液に過剰の水を加えて不溶区分を遠心分離により回収して粗リグノフェノール誘導体を得る。
【0009】
前記リグノセルロース系材料とはリグニンとセルロースを含有する針葉樹,広葉樹などの植物で、例えば木材,木片,木粉、木質材料としての合板,集成材,パーティクルボード等、さらにそれらの廃材がある。また各種草本植物、農産廃棄物等も該当する。
【0010】
前記フェノール誘導体は、特開2001-261839,特開2001-131201,特開平9-278904号等に記載のフェノール誘導体と同様に、1価のフェノール誘導体,2価のフェノール誘導体,3価のフェノール誘導体などを用いることができる。具体的には、フロログルシノール・ヒドロキシヒドロキノン・ピロガロール等の三価体、カテコール・レゾルシノール・ハイドロキノン等の二価体、フェノールなどを挙げることができる。リグノセルロース系材料がフェノール誘導体により合成されるリグノフェノール誘導体が疎水性の反応なので一価のフェノールをフェノール誘導体として使用するのが好ましく、コスト,安定性,取り扱い易さ等を鑑みればクレゾールがより好ましい。
なお、フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は限定されない。
【0011】
前記酸とはセルロースに対して膨潤性を有する酸で、65重量%以上の硫酸(例えば、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。
【0012】
ここで図1を改めて見ると、リグノセルロース系材料からリグニンを分離しリグノフェノール誘導体の製造する視点に立てば、反応自体は酸を投入して撹拌が止まった時点で終わっており、あとは未反応のセルロースや木粉等のリグノセルロース系材料とリグノフェノール誘導体を分けているだけである。本発明者等はProcessII stepIIのアセトン抽出時に出てくる不溶成分を事前に取り除けば、アセトン抽出も、その後のジエチルエーテルに滴下する操作も必要なくなるという知見をもとに鋭意研究した。
【0013】
そして、前記不溶区分として得られた粗リグノフェノール誘導体を以下のように精製するリグノフェノール誘導体の製造方法を発明した。すなわち、前記粗リグノフェノール誘導体に所定濃度の酸化防止剤を加え、次いで、アルカリ水溶液に溶解させて所定時間反応させ、固液分離して精製するのである。
リグノフェノール誘導体が、アルカリ水溶液に溶けるという性質を有し、且つ一般的なポリフェノールと同様に水・酸・アルカリ・熱・光による酸化を受け、褐色から濃褐色となる性質を有することから、酸化防止剤で処理した後に不純物をアルカリで溶解すれば前記粗リグノフェノール誘導体を精製できることを見出した。先に粗リグノフェノール誘導体をアルカリ水溶液に溶解させてしまうと、不溶区分に対し親和性があると同時に酸化してしまう。この反応は不可逆反応であると考えられ、その後に酸化防止剤をいくら投入してもリグノフェノール誘導体を分離することは困難になる。すなわち、後で酸化防止剤を入れても効果がなく、収率が著しく落ちてしまう。また、このときの物質はFT-IRの結果から見ると縮合による変性が進み、市販のアルカリリグニンと同様、ピークがはっきりしなくなっている。これに対し、リグノフェノール誘導体がアルカリ溶液に溶解しないよう予め粗リグノフェノール誘導体を酸化防止剤に反応させ保護しておいてから、その後、アルカリ水溶液に反応させれば、固液分離することにより精製された所望のリグノフェノール誘導体が得られる。
粗リグノフェノール誘導体に含まれていたセルロース成分(完全に反応しなかった又はしていないセルロース成分)の不純物はアルカリ水溶液に溶解して分離除去される。リグノフェノール誘導体(リグノクレゾール)もアルカリに溶けるが、事前に酸化防止剤があると糖等の不純物は溶けリグノフェノール誘導体(リグノクレゾール)は溶けないと考えられる。
【0014】
前記アルカリには水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化ルビジウム,水酸化セシウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化ストロンチウム,水酸化バリウム等のアルカリ金属,アルカリ土類金属の水酸化物が可能で、アルカリ水溶液とする水系の反応が望ましい。危険性や水への溶解度,反応効率等を鑑みれば水酸化ナトリウム,水酸化カリウムが好ましい。
【0015】
前記酸化防止剤にはフェノール誘導体・芳香族アミン・ホスホン酸エステルなどが用いられる。具体的には亜硫酸ナトリウム,次亜硫酸ナトリウム,亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩,イソケルセチン,EDTA-Ca・Na,EDTA-Na,NDGA,エリソルビン酸,オリザノール,グアヤク脂,クエン酸エステル,セザモール,トコフェノール,BHA,BHT,没食子酸,ルチン等がある。なお、無機系の酸化防止剤はリグノクレゾールの活性基を保護する能力が低く、有機系のものがより好ましい。
酸化防止剤に用いるフェノール誘導体としては粗リグノフェノール誘導体を造る段階でリグノセルロース系材料に添加されるフェノール誘導体と同様のものを用いることができ、フロログルシノール・ヒドロキシヒドロキノン・ピロガロール等の三価体、カテコール・レゾルシノール・ハイドロキノン等の二価体、フェノールなどを挙げることができる。フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は限定されない。
さらに、酸化防止剤の処理とアルカリ処理は水系の反応であるので、反応効率を鑑みれば酸化防止剤は水溶性であるのが好ましく、フェノール誘導体に関していえば前記リグノセルロース系材料に添加されるフェノール誘導体とは異なり、3価のフェノールが好適となる。水に対する溶解度という点を鑑みれば、フロログルシノール・ヒドロキシヒドロキノン・ピロガロール・カテコール・レゾルシノールがより好ましい。その他、水溶性の酸化防止剤で好ましい例としてエリソルビン酸等を挙げることができる。
また、酸化防止剤と共にアスコルビン酸,クエン酸,リン酸等の補助剤を加えると、これらの補助剤が酸化防止剤と共存させることにより効力を強め、また酸化防止剤の使用量を減らすことができより好適となる。
【0016】
前記酸化防止剤とアルカリの濃度について好ましい範囲は、共に0.1N〜2Nで、より好ましくは0.1N〜1Nである。0.1Nよりも少ない場合は色差計結果での変化が少ないことや、精製の効果が薄れる。一方、1N以上ではProcessII stepIIと色が変わらなくなり、保護するのに充分な量になっているからである。またその後の遠心分離による中和操作を行う手間を軽減化できるからである。
酸化防止剤の量はアルカリの量と同じかそれ以上にするのが好ましい。ピロガロールやピロカテコール等の酸化防止剤の量が水酸化ナトリウム等のアルカリの量よりも低い場合には、収率が下がり、縮合による変性が進む傾向が見られるからである。実際、Lot.7(後述)のように酸化防止剤よりアルカリが多い場合には縮合による変性とともに一部のリグノクレゾールも溶解し、収率が下がっている。
【0017】
以下、実施例をもって詳述する。
(1)不溶区分の粗リグノフェノール誘導体の製造
図1中の不溶区分(*)たる粗リグノフェノール誘導体までの反応は公知で、その不溶区分を次のようにして得た。
針葉樹として県内木材加工会社から排出したヒノキの製材おがくず 、広葉樹として宮城県の木粉製造会社から手に入れたブナ木粉を用意し乾燥後、20メッシュのふるいで粒度調整を行った。その木粉1kgと5kgのアセトンをステンレス容器に入れ混合攪拌し、一晩放置した。その後、200meshの金網上で吸引ろ過し、脱脂を行った。そしてそのろ液を取り除いた固形物3kgとアセトン3kgを再びステンレス容器に入れ、脱脂を行う操作を3度行った。
ステンレス容器に上記脱脂木粉3kgを入れた後、1.2kgのp-クレゾールを含むアセトン溶液4.2kgを入れ、混合攪拌し一晩放置し吸引ろ過を行い、その後アセトンを蒸発させる形でp-クレゾールを収着させた木粉を得た。そのときの重量は1.3kgであった。
この収着木粉10kgを攪拌翼をつけたフッ素樹脂内張りの反応装置に入れ、攪拌しながら72%硫酸50kgを加えていく。加えた後も引き続き60分間攪拌を行った。反応後、80リットルの水を予め入れた水槽に反応物を全て空け、反応を停止させた。このとき、水槽の全量は約120リットルであった。
この全液を200リットルのプラスチックタンク2基に分けて入れ、水道水をいっぱいまで加え、攪拌した後放置する。しばらくすると、沈殿が形成される。上澄液をデカンテーションすることにより酸性溶液を中性付近まで水洗いした。中性となったのをpH試験紙で確認してから、ブフナーロートで沈殿物をろ過し、乾燥することにより不溶区分を得た。
【0018】
(2)リグノフェノール誘導体の製造
前記不溶区分20gと表1中に示す所定濃度(ここでは0.1N、0.5N、1.0N)の酸化防止剤200mlを500mlのビーカーに入れ、スターラーで攪拌しながら30分反応させた。酸化防止剤としてピロガロールを用いている。次いで、それぞれの濃度の酸化防止剤に対し所定濃度(ここでは0.1N、0.5N、1.0N)のNaOH溶液を加えて2時間反応させた。反応終了後、遠心分離を行い、上澄液のpHが7になるまで水洗し、40℃で送風乾燥機で48時間乾燥し、重量を測定した。その測定収量は作製したサンプルのLot番号後の括弧内に表示した。酸化防止剤としてピロカテコールを用い、ピロガロールと同様の反応操作を行った結果を表2に示す。
なお、不溶区分20gに対しピロガロール又はピロカテコールの酸化防止剤200mlを使用するが、酸化防止剤の液量は150mlから200mlの範囲が好ましい。150ml未満では、酸化防止剤投入時に均一な懸濁液を作りにくく、200mlを越える場合は濃度が1Nを越えたときと同様、中和操作に手間がかかってしまうからである。
【0019】
【表1】
Figure 0003972695
【0020】
【表2】
Figure 0003972695
【0021】
Lot.4,7,8,13,16,17については、アルカリによる溶解が進み、反応後かなりの重量減少が見られた。アルカリ濃度が酸化防止剤の濃度より高いと、粗リグノフェノール誘導体に酸化防止剤を加えた後、アルカリを加えて反応させても収量が低下した。さらにそれらの精製後のサンプルの表面は焦茶色であった。図2に酸化防止剤としてピロガロールを用いたときの色差計の結果を示す。図2でLot.0、およびLot.19〜Lot.26は表2の下方に数行にわたって記載したそれぞれの条件で作製したサンプルについての測定結果である。Lot.22〜Lot.24の行で右端の括弧内の数値は収量を示す。
【0022】
図2の横軸(a*)は彩度であり、増加するほど赤みがあることを示す。縦軸(b*)は色相であり、増加するほど黄色っぽくなることを意味する。また、各点の横の数値はLot番号とその隣の括弧内がL*値(明度)で、L*値は明るさを示す。Lot.0は、処理前の粗リグノフェノール誘導体の乾燥物で、全ての結果の中でa*は最も大きく、b*値は最も低く、L*も低いものであった。一方、Lot.19は図1中の従来法によって得られたものであるが、Lot.0に比べて赤みが消え、黄色がかり、明るくなっている。ピロガロールの酸化防止剤処理とアルカリ処理を行った結果については、目標とするLot.19の値に近似しており、おおむね良好な結果が得られた。
さらに詳しくみれば、Lot.1、5、9を比較した場合、ピロガロール及びNaOHの濃度が低いLot.1のデータが、最もLot.0に近い値であった。また、Lot.1、2、3については、ピロガロール濃度を上げたLog.3が最もb*値が上昇した.Lot.2、5、8やLot.3、6、9のようにアルカリ濃度を増加させると、a*値が下降する傾向が見られた。Lot.4、22、23では反応時間を変化させたが、それらの色差計の結果にほとんど差異が見られず、反応は非常に短い時間で完了すると考えられる。Lot.9の濃度条件でアルカリ処理した後にピロガロールを加えるという手順を逆にしたLot.24は、a*値b*値ともLot.19に近い値になったが、収率が少なく、L値も下がった。
【0023】
また酸化防止剤としてピロカテコールを用いたときの色差計の結果を図3に示すが、図2と同じ傾向であった。詳しくみれば、Lot.10、14、18で比較した場合、ピロカテコール及びNaOHの濃度が低いLot.10の条件が最もLot.0に近い値であった。Lot10、11、12とLot13、14、15とLot16、17、18で比較すると、同一ピロカテコール濃度の場合はNaOHの濃度が高いほどLot.19の色に近づいた。ただし、Lot13とLot.16は収率が低くL*値も低かった。
【0024】
・FT-IRの結果
図4にフーリエ変換赤外分光装置を用いKBr法による測定(FT-IR)の結果を示す。ヒノキをProcessII stepIIで処理したLot.19とLot.9の簡易精製法になる本製法との間に違いは見られなかった。さらに図4に関し詳しく検討を加えると、Lot.7のようにピロガロールに比べてアルカリの濃度を高くした場合ではピークの大きさ位置は変化がなかったが、ピークの大きさは全般的にはっきりしないものとなった.アセトン残さ(Lot.26)は、アルカリで抽出したリグニンの残さを再びジエチルエーテルで洗浄した場合の不溶解物であるが、プロセスIIstepII(Lot.19)の試料と比較すると1060cm−1 (◎)あたりにピークが見られる。これはセルロース・ヘミセルロースに由来するC-O伸縮のピークであり、抽出残さには、これらの成分を比較的多く含むことが示唆された。さらに、ピークはブロードなものとなった。これは縮合が進むことなどによる変性が進み、官能基の数の減少や結合状態の複雑化が起こっている傾向が強いと思われる。アルカリリグニン(Lot.25)はアセトン残さよりもさらに明確でない様子が見られたが、セルロース・ヘミセルロースのC-H変角運動を示す1363cm−1(□)のピークが見られなくなった。これはリグニンは変性を受けているものの純度が高いことを意味すると思われる。ブナのProcessII stepII(Lot.20)は、1326cm−1付近に(■)にヒノキでははっきりと確認できないシリンギル核に由来するピークが見られる。またヒノキの場合に多く見られる1032cm−1(▽)と1265cm−1(◇)のグアイアシル核に由来するピークの代わりにブナに見られる1140cm−1(▼)と1220cm−1(◆)のシリンギル核に由来するピークの強度が相対的に強くなっている。また、ブナを用いたLot.18の本製法によるFT-IRの結果は、ヒノキのケースと同様、ブナのProcessII stepII(Lot.20)との間で差異が認められなかった。
【0025】
その他、図示を省略するが、示差走査熱量計(DSC)による測定を行った。ProcessII stepIIで製造したリグノフェノール誘導体(リグノクレゾール)と本法のリグノフェノール誘導体(リグノクレゾール)の測定値はバラツキがあるもののほぼ同じであった。
【0026】
このように構成したリグノフェノール誘導体の製造方法によれば、ProcessII stepIIの従来法の優れた特徴として取上げられた▲1▼常温で反応させるためエネルギーの節約になること、▲2▼リグニンの不活性化を伴わないこと、▲3▼部分的なリグニンの抽出ではなく木粉中のほぼすべてのリグニンが取り出せること等の特徴を維持できる。しかも、簡易精製ながら、ProcessII stepIIの従来法と同等のFT-IR,DSCデータをもつ生成物が得られる。すなわち、図1中の不溶区分を酸化防止剤(ピロガロール,ピロカテコール等)とアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム等)を用いて処理することにより,従来の相分離システムから得られたリグノフェノール誘導体(リグノクレゾール等)と同等のものが得られる。本製法のリグノクレゾールが有機溶剤に溶けないことによる物性に違いについて、従来法と物性が若干異なるものの、プラスチックの可塑剤等として使用可能な結果が出ている。さらに、本製法を用いれば生成コストが従来法の約1/3になると試算され、と同時に、従来法に比べ環境負荷を低減できる。
【0027】
加えて、本製法は反応時間が非常に短く、製造時間の短縮化が図られ、生産性向上に大きく貢献できる。実施例でも反応時間に関して酸化防止剤30分、アルカリ水溶液2時間をベースに行ったが、Lot.22および23においてそれぞれの反応時間を1分、5分にしても生成が行われるのを確認している。
【0028】
尚、本発明においては、前記具体的実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上ごとく本発明のリグノフェノール誘導体の製造方法は、アセトンやジエチルエーテル等の有機溶媒,爆発性危険物を使用せずに健康や環境により配慮した製法で、実用化の途を開き、さらに反応が速く実用化するうえで重要な低コスト化,生産性向上等をも実現できるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来法と本発明の製造プロセスの対比図である。
【図2】酸化防止剤としてピロガロールを用いた場合のリグノクレゾールの色差計結果グラフである。
【図3】酸化防止剤としてピロカテコールを用いた場合のリグノクレゾールの色差計結果グラフである。
【図4】リグノクレゾールのFT-IRスペクトルグラフである。

Claims (4)

  1. フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、リグニンとフェノール誘導体が反応したリグノフェノール誘導体相をセルロース成分が溶解した酸の相から相分離した後、この相分離したリグノフェノール誘導体相に過剰の水を加えて不溶区分の粗リグノフェノール誘導体を回収し、続いて、該粗リグノフェノール誘導体に酸化防止剤を加え、次いで、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液を加えて反応させ、しかる後、固液分離を行うことにより分離精製されることを特徴とするリグノフェノール誘導体の製造方法。
  2. 前記フェノール誘導体が疎水性物質からなり、且つ前記酸化防止剤が水溶性物質からなる請求項1記載のリグノフェノール誘導体の製造方法。
  3. 前記酸化防止剤及び前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの濃度がそれぞれ0.1N〜2Nの範囲内にある請求項1又は2に記載のリグノフェノール誘導体の製造方法。
  4. 前記酸化防止剤が有機系の酸化防止剤で、且つその量が前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの量と同じかそれ以上である請求項3記載のリグノフェノール誘導体の製造方法。
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