JP4008481B2 - 腎臓の薬物排泄機能に関与する有機アニオントランスポーター - Google Patents
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腎臓における薬物の取り込みは、トランスポーターによるものがあると考えられてきたが、未だ十分には解明されていなかった。腎臓におけるトランスポーターを解明することにより腎臓での薬物の腎臓からの再吸収と排泄経路、腎毒性、腎臓における薬物相互作用を解明することができる。
本発明者らは、各種のトランスポーターをクローニングしてきており、これらの知見に基づいて腎臓のトランスポーター、特に有機アニオントランスポーターを探索してきた。
また、本発明は、前記した有機アニオントランスポーターをコードする遺伝子、より詳細には、配列表の配列番号3又は4に記載された塩基配列、又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る塩基配列を有する遺伝子に関する。本発明は、前記した遺伝子にハイブリダイズし得る塩基配列を有する10〜150塩基、好ましくは15〜100、より好ましくは15〜50、さらには15〜30塩基からなるオリゴヌクレオチドにも関する。また、本発明は、前記遺伝子の発現を検出又は同定する方法、より詳細には、前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記遺伝子の発現を検出又は同定する方法に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の遺伝子が発現している細胞に、被検物質を接触させて、被検物質の当該細胞への取り込みを測定することからなる当該細胞への取り込み量の多い物質をスクリーニングする方法に関する。
また、本発明は、前記した本発明の遺伝子が発現している細胞、より詳細には前記した本発明の有機アニオントランスポーターを安定に発現し得る動物細胞株に、被検物質を接触させて、腎臓における本発明の有機アニオントランスポーターを介した薬物の排泄と再吸収経路、腎毒性、及び/又は腎臓における薬物相互作用を検定する方法に関する。
また、本発明は、前記した本発明の有機アニオントランスポーターに対する抗体にも関する。さらに、本発明は、前記した本発明の遺伝子を含有するキャリアー、及び製薬上許容される担体を含有してなる薬物の代謝を促進するための医薬組成物、及び、これを患者に投与してヒト腎臓に特異的に本発明の有機アニオントランスポーターを発現させて、当該有機アニオントランスポーターを介して薬物の排泄を促進させる方法にも関する。
また、ラットoatp−M1を特異的に発現させたラットを用い、このトランスポーターを介した薬物の排泄経路などをインビボ(in-vivo)に検討できるようになる。
即ち、LST−2の塩基配列をもとにESTデータベース検索を行い、BF900225という部分配列(411bp)を得、この配列をもとに作製したプライマーを用いて各種臓器のRT−PCRを行ったところ、腎臓に存在していることが明らかとなった。そこで腎臓より得られたcDNAを用いて5’及び3’RACE法を行った。これにより得られた塩基配列はシークエンスの結果、5’側の配列が欠けていることが予想されたので、5’RACE産物である1881bp(コーディング領域の8bpから1880bpにあたる配列)をプロープとしてヒト肝臓ライブラリーを70万個スクリーニングした。ハイブリダイゼーションは25%ホルムアミド,4×SSC,1%SDS,5×デンハード溶液を用いて42℃、一晩行った。洗浄は2×SSC,1%SDSを用いて50℃、60分間行った。その結果、30個程のクローンが得られ、そのうち13個のシークエンスを行ったところ、724アミノ酸からなる新規トランスポーターの単離に成功した。これをヒトOATP−M1と命名した。また、本発明のOATP−M1は、他のOATP(Organic anion trasporting polypeptide)ファミリーのトランスポーターと同様に12回膜貫通型で、細胞内に5個のリン酸化部位、細胞外に4個の糖鎖結合を持つことが想定された。
相同性はヒトOATP−Eと最も高く40.4%であった。さらに、上記フラグメントを用い、50%ホルムアミド,5×SSC,1%SDSを用いて42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行い、0.2×SSC,1%SDSを用いて50℃、60分間洗浄し、ノザンプロット解析を行った。その結果図1に示すように主として腎臓に、わずかに気管に発現し、胎児では腎臓の他、肝臓、肺に発現することが明らかとなった。
その取り込みの作用機作を明らかとするために、ナトリウム非依存性試験を行った。即ち、まず、Na依存性をみるためにNaClをコリンClに、NaHCO3をコリンbicarbonateに置換したクレブス−ヘンセレイト緩衝液(142mM NaCl,23.8mM Na2O3,4.83mM KCl, 0.96mM KH2PO4,1.20mM MgSO4,12.5mM HEPPS,5.0mM glucose and 1.53mM CaCl2 adjusted to pH7.3)を用いて取り込み実験を行った。図4に示すように、取り込みはナトリウム非依存的であることを確認した。
また、上記クレブス−ヘンセレイト緩衝液を用いて30分間前培養した後、RI化合物の入った緩衝液を加え30分間取り込みをさせた。取り込みの停止は緩衝液の吸引後、Cold Choline baffer+1%BSAを加えることで行った。その後Cold Choline bafferで3回以上洗浄し、250μlの1N−NaOHで一晩細胞を溶解後、250μlの水を加えてそのうちの400μlをカウントした。残りは蛋白補正用として使用した。補正はBio−Radのprotein assay kit(modified lowly method)を用いてBSAを対照として行った。その結果、図5に示すように外因性化合物としてはジゴキシンにおいて取り込みが見られた。
腎臓は薬物排池の主要臓器であり豊富な血流を受けることから必然的に高濃度の薬物に曝され、薬剤性障害の発現しやすい状況にある。これまで、抗癌剤シスプラチン、アミノグリコシド系抗生物質ゲンタマイシンや、グリコベプチド系抗生物質バンコマイシンなど、腎障害を誘発する薬物の腎移行特性や腎毒性発現のメカニズムについて生理学的に研究されてきた。今回、本発明者らは腎臓に特異的に発現しており腎臓からのアニオン性薬物の再吸収と排泄に重要な役割を担う多選択性有機アニオントランスポーターを単離しその動物細胞安定発現細胞株を構築した。そして、この系を用いることでトランスポーターを介した薬物の再吸収と排泄経路の同定を動物実験をする前に予測することが可能となり、腎毒性の検討、腎臓における薬物相互作用のインビトロでの評価・予測系の開発を可能とするとともに医薬品適正使用に向けた応用が可能となる系と考えられた。
本発明の好ましい有機アニオントランスポーターとしては、配列表の配列番号1又は2に記載されたアミノ酸配列、又はその一部のアミノ酸配列が欠失し、その一部が他のアミノ酸で置換され、若しくは他のアミノ酸が付加されてた、又はこれらの欠失、置換、付加が組み合わされてなるアミノ酸配列を有するものであって、腎臓に発現し、腎臓の薬物排泄機能に関与する有機アニオントランスポーターが挙げられる。配列表の配列番号1のアミノ酸配列は、ヒト由来の本発明の有機アニオントランスポーターであり、配列番号2のアミノ酸配列は、ラット由来の本発明の有機アニオントランスポーターである。
また、本発明が開示した塩基配列を利用してゲノム中からPCR法などにより本発明の遺伝子をクローニングすることもできる。
また、本発明の有機アニオントランスポーター、又はその一部のアミノ酸配列を抗原として用いて、マウスやウサギなどの動物に感作させた後、これを定法に従って細胞融合法などにより抗体を製造することができる。抗体としてはポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体としてもよい。また、必要により、キメラ抗体やヒト型抗体に加工することもできる。
この場合のプロモーターとしては、ヒトゲノムからのプロモーターをそのまま使用することもできるが、他のプロモーターを使用することもできる。本発明の遺伝子は胎児期や癌化により発現すると考えられることから、本発明の他が常に発現している細胞を得ようとする場合には、ゲノムからのものではなく他の発現用のプロモーターを使用するほうが好ましい。
本発明は、このようにして形質転換され、安定に本発明の有機アニオントランスポーターを発現する動物細胞株を提供するものである。このような動物細胞としては、永久細胞株(permanent cell line)としてMDCK(Madin-Darby canine kidney)を挙げることができる。
本発明は、前記した本発明の遺伝子が発現している細胞に、被検物質を接触させて、被検物質の当該細胞への取り込みを測定する方法を提供する。この方法における本発明の遺伝子が発現している細胞としてはヒト癌細胞などの動物の癌細胞を使用することができるが、前記した形質転換細胞を使用することもできる。この方法としては、取り込み量を測定できる方法であれば特に制限はないが、被検物質を放射性元素などで標識化し、標識化された被検物質を本発明の遺伝子が発現している細胞に接触させて、細胞内の被検物質の量を定量して行うことができる。
本発明の有機アニオントランスポーターは、腎臓細胞に特異的に発現しているものであることを特徴にしている。したがって、本発明の有機アニオントランスポーターによってのみ特異的に取り込まれる物質をスクリーニングすることができれば、当該物質の腎臓での代謝過程を検討することができる。
また、前記した本発明の安定発現動物細胞株を用いることにより、被検物質の腎臓における本発明の有機アニオントランスポーターを介した薬物の排泄経路、腎毒性、及び/又は腎臓における薬物相互作用を、インビトロで検定することができ、薬物などの物質の腎臓での挙動を解明することが可能となる。本発明の有機アニオントランスポーターは、ヒト以外の動物にも発現していることから、ヒト以外の動物に当該動物の遺伝子を挿入して、本発明の有機アニオントランスポーターを強制的に発現させて、生体における被検物質の腎臓における本発明の有機アニオントランスポーターを介した薬物の再吸収と排泄経路、腎毒性、及び/又は腎臓における薬物相互作用を、インビボで検定することも可能となる。
したがって、本発明は、このような実験動物を提供するものでもある。
本発明の医薬組成物は、遺伝子を導入することにより、腎臓からの排泄を促進するものであり、過剰に投与された薬物の排泄のみならず、毒物の排泄を促進する解毒剤的な使用をすることもできる。
LST−2の塩基配列をもとにESTデータベース検索を行い、BF900225という部分配列(411bp)を得、この配列をもとに作製したプライマーを用いて各種臓器のRT−PCRを行ったところ、腎臓に存在していることが明らかとなったので腎臓より得られたcDNAを用いて5’及び3’RACE法を行った。これにより得られた塩基配列はシークエンスの結果、5’側の配列が欠けていることが予想されたので、5’RACE産物である1881bp(コーディング領域の8bpから1880bpにあたる配列)をプロープとしてヒト腎臓ライブラリーを70万個スクリーニングした。ハイブリダイゼーションは25%ホルムアミド,4×SSC,1%SDS,5×デンハルト溶液を用いて42℃で一晩行った。洗浄は2×SSC,1%SDSを用いて50℃、60分間行った。その結果、30個程のクローンが得られ、そのうち13個のシークエンスを行ったところ、724アミノ酸からなる新規トランスポーターの単離に成功した。
上記ヒト腎臓ライブラリーをスクリーニングした同じフラグメントを用いて、ラットの腎臓ライブラリーを50万個スクリーニングし、18個ほどのクローンを得、またラットoatp−M1の単離に成功した。
上記フラグメントを用い、50%ホルムアミド,5×SSC,1%SDSを用いて42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行い、0.2×SSC,1%SDSを用いて50℃で60分間洗浄し、ノザンプロット解析を行った。その結果、主として腎臓、胎児では腎臓の他、肝臓、肺に発現することが明らかとなった。
この結果を図1に図面に代わる写真で示す。図中のβーアクチンは,ブロットを確認するためのコントロールであり、左側の数字は分子量(kb)を示す。
ラットoatp−M1の全長を用いて上記ヒトノザンと同様にハイブリダイズを行い、ノザンブロット解析したところ、主として腎臓に発現していることが明らかとなった。
この結果を図2に図面に代わる写真で示す。図中のβーアクチンは,ブロットを確認するためのコントロールであり、左側の数字は分子量(kb)を示す。
OATP−M1を強制発現させたMDCK(Madin-Darby canine kidney)細胞を樹立するため、5’UTRを5bp,3’UTRを13bp,coding2175bpを含む2193bpの配列を動物細胞発現ベクターpcDNA3.1に入れた。これをFuGENE6を用いてMDCK細胞にトランスフェクションした。遺伝子が入っている細胞のみがG418に耐性となるためG418を培地中に750μg/mLの濃度で10日間飼育および選択を行い24個のG418耐性株を得た。これらの細胞から全RNAを抽出してノザンブロットを行った結果、3個のクローン(C5,14,23)がM1を発現していることがわかった。また、これらのクローンで基質のスクリーニングを行い、T3を最も運ぶのはクローンC14であった。
この結果を図3に示す。図3の横軸は濃度(μM)を示し、縦軸は甲状腺ホルモン(T3)の取り込み量(pmol/mgタンパク質)を示す。黒丸部印は各測定点における平均値を示す。
取り込みの作用機作を明らかとするために、ナトリウム非依存性試験を行った。即ち、まず、Na依存性をみるためにNaClをコリンClに、NaHCO3を炭酸コリンに置換したクレブス−ヘンセレイト緩衝液(142mM NaCl,23.8mM Na2O3,4.83mM KCl, 0.96mM KH2PO4,1.20mM MgSO4,12.5mM HEPPS,5.0mM glucose, 1.53mM CaCl2, pH7.3)を用いて取り込み実験を行った。その結果、取り込みはナトリウム非依存的であることを確認した。
この結果を図4に示す。図4のKHはクレブス−ヘンセレイト緩衝液の場合を示し、Na(−)はコリンClの場合を示し、Cl(−)は炭酸コリンの場合を示す。縦軸は取り込み量(Fmol/mgタンパク質)を示す。
クレブス−ヘンセレイト緩衝液を用いて30分間前培養した後、RI化合物の入った緩衝液を加え30分間取り込みをさせた。取り込みの停止は緩衝液の吸引後、冷コリン緩衝液+1%BSAをことで行った。冷コリン緩衝液で3回以上洗浄し、250μlの1N−NaOHで一晩細胞を溶解後、250μlの水を加えそのうちの400μlでカウントした。残りは蛋白補正用として使用した。補正はバイオ−ラッドのプロテインアッセイキットを用いてBSAを対照として行った。その結果、外因性化合物としてはジゴキシンにおいて取り込みが見られた。
ジゴキシンの取り込み結果を図5に示す。図5の横軸は濃度(μM)を示し、縦軸はジゴキシンの取り込み量(pmol/mgタンパク質)を示す。黒丸部印は各測定点における平均値を示す。
Claims (4)
- 配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、又は配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、甲状腺ホルモン及び/又はジゴキシンの輸送能を有する蛋白質を安定に発現する組み換えMDCK細胞株。
- 請求項1に記載のMDCK細胞株に被検物質を接触させる工程及び被検物質の当該細胞への取り込みを測定する工程を含む、配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、又は配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、甲状腺ホルモン及び/又はジゴキシンの輸送能を有する蛋白質によって輸送される物質をスクリーニングする方法。
- 被検物質が標識化されている請求項2に記載の方法。
- 請求項1に記載のMDCK細胞株に甲状腺ホルモン及び/又はジゴキシンと被検物質を接触させる工程、及び被検物質の当該細胞への取り込みを測定する工程を含む、配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、又は配列番号1若しくは配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、甲状腺ホルモン及び/又はジゴキシンの輸送能を有する蛋白質の甲状腺ホルモン及び/又はジゴキシンの輸送能を調節する物質をスクリーニングする方法。
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