JP4010190B2 - 電気車の駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流を直流に変換するコンバータとその直流を交流に変換するインバータとからなる電気車の駆動装置に係り、特にインバータにより交流モータを可変速駆動したとき、コンバータによる整流に起因する整流脈動に伴うビート現象を抑制するに好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
中間に直流ステージを有するコンバータ・インバータの電力変換器において、コンバータの交流電源が特に単相の場合、例えば交流架線を走行する鉄道の電気車の場合、直流に変換された直流電圧には整流に起因する交流電源周波数の2倍の脈動周波数成分が含まれる。なお、その脈動周波数成分は直流ステージに設けられる平滑コンデンサの容量を大きくすれば低減できるが、完全には低減できず、それによる平滑コンデンサの体格の増大で装置としての小型軽量化が阻害される。
そして、上記脈動の有した直流電圧をインバータにより可変周波数・可変電圧の交流に変換し、それを交流モータ等の負荷に給電した場合、インバータ出力電圧およびモータ電流には、インバータ動作周波数成分の他に上記脈動周波数とインバータ動作周波数の差の成分及び和の成分が含まれることになる。それら成分のうち、動作周波数と脈動周波数が接近すると低周波成分となる前記差の成分は、モータにおいて低周波数に対するインピーダンスが小さいため、この成分によって大きな脈動電流が流れ、モータ発生トルクが脈動するといったビート現象が発生する。
このビート現象の発生原理及びその抑制方式が例えば特開昭64−77492号公報に記載されている。同公報によるビート現象の抑制方式は、インバータの直流入力電圧の脈動度合を検出し、この脈動度合に対して動作周波数に応じた補償ゲイン,補償位相差で周波数脈動度合を求め、この周波数度合に応じてインバータ周波数を調整することでビート現象を抑制するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報記載によるビート現象抑制方式は、高いビート現象抑制効果を得るために、インバータの動作周波数に応じて補償ゲイン,補償位相差の調整が必要となる。また、ビート現象を常に最適な状態にまで抑制するためにはインバータの動作周波数の他にモータ出力の変化なども考慮することが必要となる。しかしながら、インバータの動作周波数,モータ出力を考慮して補償ゲイン,位相差を調整することは実施上複雑(煩雑)となるという課題がある。
また、近年、電気車を駆動する誘導電動機の制御装置として、例えば特開平5−83976号公報に記載するベクトル制御のインバータが用いられるようになってきているが、ベクトル制御の持つ特徴を活かして上記ビート現象を抑制することに関する記載はなく、又、その他の刊行物にもその技術に関するものは見当たらない。
【0004】
本発明の課題は、インバータの動作周波数,モータ出力等が変化しても、複雑なゲイン調整,位相差調整を必要とせずに、インバータ直流入力電圧に含まれる脈動成分に起因するビート現象を抑制するに好適な電気車の駆動装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、架線からの単相交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ、該コンバータの直流側に接続する平滑コンデンサ、該コンデンサの直流を可変電圧可変周波数の交流に変換し、その変換出力を電気車を駆動する交流モータに供給するインバータ、該インバータ出力の瞬時電流を検出する手段、該検出した電流を回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分(励磁電流成分、トルク電流成分)をベクトル演算する手段、該演算された2軸の電流成分がそれぞれの2軸に相当する電流指令に一致するように電圧指令を生成する手段と、前記インバータの交流出力の周波数の指令を発生する手段と、該周波数の指令と前記電圧指令とに基づき前記インバータの出力電圧をパルス幅制御する手段を有する制御装置からなる電気車の駆動装置において、
2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれるコンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて前記インバータの交流出力の周波数の指令を調整するフィードバック補償手段と、
インバータ入力の直流電圧に重畳するコンバータの整流に伴う脈動電圧を前記直流電圧に対する脈動度合いとして求め、その度合いに応じた周波数度合いを補償周波数として検出し、その補償周波数に基づいて前記整流脈動によって発生するビート現象が抑制される方向にインバータの交流出力の周波数の指令を調整するフィードフォワード補償手段を備える。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態であり、図2で示す電力変換器の内インバータを制御するための制御装置の機能ブロック図を示す。図2は、鉄道の電気車における電力変換器の主回路の構成図を示す。
先ず、図2について説明する。架線9に給電された単相交流電源11からの入力をパンタグラフ10,リアクトル12を介して整流し直流に変換するコンバータ13と、コンバータ13の直流側に接続されコンバータ13が整流した直流電圧を平滑する平滑コンデンサ14と、平滑コンデンサ14によって平滑された直流電圧edを入力電圧とし、3相交流モータ16(ここでは誘導電動機を示す)に可変周波数・可変電圧の交流を供給するインバータ15からなる。尚、同図には、後述する制御装置に用いるための検出器として、平滑コンデンサの電圧edを検出する電圧検出器141、インバータから交流モータへの3相出力電流(U〜W各相電流iu〜iw)を検出する電流検出器151〜153、及びインバータの3相出力電圧(Vu〜Vw)を検出する電圧検出器161、交流モータの回転周波数frを検出する速度検出器154が設けられていることを示している。図1の制御装置の構成は、上記特開平5−83976号公報に記載されるベクトル制御方式を基本としている。31は運転指令発生手段であり、駆動する交流モータの回転座標系において直交する2軸の電流成分の励磁電流指令Id*,トルク電流指令Iq*を発生する。21は電流ベクトル演算手段であり、検出したインバータの各相の瞬時出力電流iu,iv,iwを、インバータの基本周波数finv0で後述する(2)式に基づき回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分に分解して励磁電流成分Id,トルク電流成分Iqをベクトル演算する。32は電流制御手段であり、上記Id及びIqがそれぞれの指令Id*及びIq*に一致するように、インバータの出力電圧(実効値)V及びすべり周波数fsの各指令を演算する。34はインバータ補償周波数発生手段であり、上記演算したトルク電流成分Iqに基づきインバータ補償周波数fcを発生する。35,36は加算器であり、35により交流モータの回転周波数frとすべり周波数fsを加算してインバータ基本周波数finv0を演算し、さらに36によりインバータ基本周波数finv0にインバータ補償周波数fcを加算してインバータ動作周波数finvの指令を演算する。90はインバータ動作周波数finvを基にインバータ出力電圧の位相指令θ0(=2πfinvt,t:時間)を演算する位相演算手段である。33はPWMパルス発生手段であり、インバータの出力電圧の指令Vとインバータ位相指令θ0に基づき周知のパルス幅変調制御を行い、PWM信号を発生する。このPWM信号によりインバータ15を動作させる。
ここで本実施形態の特徴部は、34,36の構成にあり、これを従来のベクトル制御装置の基本構成に追加したものである。
【0007】
上記制御構成における本実施形態の詳細な説明をする前に、本実施形態における原理を説明する。
ベクトル制御は、励磁電流とトルク電流を独立に制御するものであり、周知のことであるが、先ずはじめに、3相の交流モータの各相瞬時電流iu,iv,iwを上記2つのベクトル成分に分解する方法について説明する。
(1)式は、ビート現象を発生していないとき(fc=0,finv=finv0)の交流モータの3相の瞬時相電流を表し、ここにIMはモータ電流の実効値を、tは時間を、φはモータ電流の力率角である。
【数1】
上記3相の瞬時電流を2πfinv0の位相で回転する回転座標系で直交するd−q2軸成分(Id,Iq)に座標変換すると、(2)式で表せる。ここに、δはインバータ出力電圧ベクトルとトルク電流成分との位相差である。
【数2】
上記(2)式の演算の結果得られるIdとIqは、finv0成分の励磁電流ベクトルおよびトルク電流ベクトルの大きさを表し、Id=−IM・sin(φ−δ),Iq=IM・cos(φ−δ)となる。
次に、インバータ入力の直流電圧に周波数がf0の脈動電圧が重畳した場合について説明する。インバータの交流出力電圧には、インバータ基本周波数finv0成分の他に、インバータ基本周波数finv0と直流電圧の脈動周波数f0の和の周波数成分finv0+f0、及び差の周波数成分finv0−f0の周波数成分が発生する。このため、モータ電流iu,iv,iwにもインバータ基本周波数finv0の他にfinv0+f0及びfinv0−f0の周波数成分が発生する。モータのインピーダンスは低い周波数になればなるほど低くなることを考慮すると、finv0−f0の周波数成分がビート現象を発生する主原因である。そこで、脈動周波数成分を含むモータ電流をfinv0及びfinv0−f0によって表すと以下の様になる。ここに、finv0成分の電流実効値をIM、finv0−f0成分の電流実効値をIBとする。
【数3】
ただし、θ0は、直流電圧脈動成分の位相、φ0は、finv0−f0の周波数成分に対するモータの力率角である。
上記(3)式の3相の瞬時電流を2πfinv0の位相で回転する回転座標系で直交するd−q2軸成分(Id,Iq)に座標変換すると、(4)式で表せる。
【数4】
その結果、Id及びIqには、それぞれfinv0成分の励磁電流およびトルク電流のベクトルの大きさを示すIM・sin(φ−δ),IM・cos(φ−δ)の他にf0の周波数成分がd,q軸の電流成分それぞれ含まれることが分かる。
すなわち、モータの電流をId,Iqという回転座標に変換して検出することで、基本波成分の電流は直流信号として現れるので、それに重畳する脈動周波数成分を取り出すことは容易となる。
本実施形態では、検出した3相のモータ電流を回転座標系に変換したId,Iqの少なくとも何れかよりf0の電流成分を取り出し、この成分が小さくなる方向にインバータの動作周波数(出力周波数)finvを制御することで、モータ電流がfinv0−f0の周波数でビートする現象を抑制するようにしたものである。
【0008】
図1において、上記原理に基づく本実施形態の特徴部の構成を説明する。インバータ補償周波数発生手段34では、電流ベクトル演算手段21より得られるトルク電流成分Iqよりf0の周波数成分を抽出し、これに基づき補償周波数fcを演算する。そして、このfcをインバータ基本周波数finv0に加えてインバータ出力周波数(動作周波数)finvを生成し、この出力周波数に基づいてインバータの出力周波数を制御する。この結果、モータ電流に含まれる脈動周波数成分に対するフィードバック系が形成され、運転状態によらず常にビート現象を抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、Iqでフィードバック系を形成しているが、Idにもf0成分が検出されるので、Idでフィードバック系を形成しても良いことは勿論である。
また、ビート現象はインバータの動作周波数が脈動周波数を通過するときに発生するので、インバータ基本周波数finv0への補償周波数fcの加算は脈動周波数近傍の帯域のみ行うようにしてもよい。
【0009】
図3は、図1のインバータ補償周波数発生手段34における詳細な構成の一例を示す。同図に示した実施形態では、脈動成分検出器61によりトルク電流成分Iqに含まれる周波数f0の成分を検出した後、その出力を減算器41によって目標値0から減じ、減算器41の出力を補償器62に入力する。同補償器62は入力が零となる様にすなわち脈動成分が零となる様にインバータ補償周波数fcを発生する。なお、脈動成分検出器の具体的構成としては、例えばf0近傍の周波数成分のみを検出するバンドパスフィルタがあげられる。また、補償器62は、比例要素,比例積分要素等によって構成される補償要素である。
【0010】
図4は、図1のインバータ補償周波数発生手段34の別の構成例を示す。同図に示した構成では、減算器42によってトルク電流成分Iqを目標値0から減じ、減算器42の出力を脈動成分補償器63に入力する。63は、例えば(5)式に示す伝達関数によって示される特性を有する補償要素とする。ここに、式中のKsは補償ゲイン、sは微分演算子である。
【数5】
(5)式で示される補償要素は、周波数f0近傍についてのみ高いゲインを有する補償要素であるために、Iqに含まれるfinv0成分はIM×cos(φ−δ)で表せる直流成分であることからfinv0に関わる成分には影響を与えることなく、脈動周波数f0の成分のみを補償できる。このことから同図の構成は、図3に示した補償手段の構成よりも少ない構成で同等の効果を得ることができる。なお、補償要素の伝達関数は周波数f0近傍のゲインが高ければ良いので、(5)式に限らず、脈動周波数f0近傍についてのみ高いゲインを有する補償要素であれば、(5)式の伝達関数にこだわることはない。
以上に述べた図3,図4の実施形態においては、トルク電流成分Iqの脈動成分に着目して制御を行っているが、励磁電流成分Idの脈動成分に着目してビート現象抑制制御を行っても良い。
【0011】
図5は、図1のインバータ補償周波数発生手段34の別の構成を示す。同構成では、電流ベクトル演算手段21の出力であるId及びIqをトルク演算手段64に入力し、Id及びIqからモータの発生トルクを演算(T=K・Id・Iq、K:定数)する。この演算結果を例えばバンドパスフィルタの様に、脈動周波数の成分である周波数f0のみを通過させる脈動検出器65によってトルク脈動を検出し、トルク脈動成分の目標値である0から減算器43によって減じ、トルク脈動を補償する補償器66に入力する。ここで、補償器66は、比例要素,積分要素等からなる補償系であり、入力が零になるようにすなわちトルク脈動が零となる様にインバータ補償周波数fcを出力する。
同図の構成によるものでは、トルク脈動を制御対象としているので、より高いモータのトルク脈動抑制効果を得ることができるといった利点がある。
【0012】
図6は、図1のインバータ補償周波数発生手段34の別の構成を示す。同構成は、図5と同様にトルク演算手段67によってId,Iqよりモータの発生するトルクを演算し、これを減算器44によって目標値0から減じ(演算したトルクの位相を逆相にするため)、それを図4と同様に例えば(5)式の伝達関数によって示される補償要素を有する脈動成分補償器68に入力し、脈動周波数成分のみを抽出してそれをインバータ補償周波数fcとして出力するものである。同図の構成によれば、図5の構成よりも少ない構成要素で同様の効果を得ることができる。
なお、上記補償要素の伝達関数は、(5)式に限らず、周波数f0近傍についてのみ高いゲインを有する伝達関数であれば良いことは勿論である。
なお、図5,図6ではIq,Idよりトルクを演算して行ったが、トルクはモータの出力に比例するので、同図におけるトルクの代わりにIq,Idから電力を演算して行ってもよいことは勿論である。
【0013】
以上に図1の制御装置におけるインバータ補償周波数発生手段34の実施形態のいくつかを説明したが、ここで、図3の構成を用いたときの本実施形態における効果をシミュレーションにより検証した動作波形より説明する。シミュレーションの条件の設定は、交流モータ:3相100kW4極誘導電動機、インバータ入力の直流電圧:1800V、それに重畳する脈動電圧・周波数:100V・120Hz、モータの回転周波数fr:110Hz、すべり周波数fs:5Hz、モータ電流(インバータ出力電流):150Aとする。
【0014】
図7は、従来の制御装置によるもので図1の制御装置においてインバータ補償周波数発生手段34を備えていない。同図(a)はインバータ入力電圧波形を示しており、同入力には60Hzの交流電源をコンバータにより整流したときの脈動周波数成分が存在していることを表している。同図(b)はモータ相電流(インバータ出力電流)波形を示しており、インバータの動作周波数115Hz(finv=fr+fs)成分の電流が動作周波数と直流電圧の脈動周波数との差の周波数5Hz(=finv−f0)であるビート周波数成分に重畳していることがわかる。このビートによりモータ電流の動作周波数成分の最大値がビートによる電流成分だけ大きくなることがわかる。同図(c)(d)は、(b)のモータ相電流を回転座標系に座標変換した励磁電流成分とトルク電流成分を示す。これより各電流成分に脈動周波数成分が重畳していることが分かる。同図(e)は、モータの出力トルクを示す。出力トルクにも脈動周波数成分が重畳していることがわかる。
【0015】
図8は、本発明を適用した場合の動作波形であり、同図(a)〜(e)は図7(a)〜(e)の事象に対応する。同図(a)に示すようにインバータ入力電圧に整流脈動が存在しているにも拘わらず、モータ相電流は同図(b)のように動作周波数成分のみで整流脈動によるビート周波数成分は抑制されていることがわかる。それにより同図(c)(d)(e)のように励磁電流,トルク電流,モータの出力トルクの各成分Id,Iq,Tは、脈動の極めて少ない直流量となっている。この直流量は動作周波数成分のものであるので、同波形からも本発明により整流脈動に伴うビート現象が抑制されることがよくわかる。
このように本発明では、トルク電流成分に含まれる脈動周波数成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによって、モータ電流およびトルク脈動の発生が抑制され、ビート現象の発生が抑制されていることが確認できる。
また、本発明は、インバータ出力周波数を調整することによってビート現象を抑制する方式であるため、インバータの出力電圧が複数のパルスから構成され出力電圧を調整できる動作領域はもとより、鉄道車両用インバータの様にインバータの出力電圧一周期に含まれるパルスが幅180°(1パルス)であり、インバータの出力電圧を操作することができない動作領域(1パルスモード)においてもインバータの周波数を調整することにより、ビート現象を抑制することが可能である。
【0016】
図9は、本発明の別の実施形態を示す制御装置の構成図である。同図の構成は図1に示した制御構成において、直流電圧検出手段141によって検出した直流電圧edによって補償周波数fc2を発生する補償周波数発生手段38と、補償周波数発生手段38の出力を加算器35の出力であるインバータ動作周波数指令finv0に加える加算器37を追加したものである。ここで、補償周波数発生手段38の機能は、インバータ入力の直流電圧に重畳する脈動電圧を直流電圧に対する脈動度合いとして求め、その度合いに応じた周波数度合いを補償周波数fc2として出力するものである。
尚、その詳細は、特開昭64−77492号公報の特に4頁左下欄14〜右下欄13行及び同欄の ( 2 ) 式に記載される。この同公報を引用して本願の実施形態に当てはめ、再記する。直流電圧edの直流分をE、その脈動分をΔE 0 、その脈動周波数をf 0 とすると、インバータ周波数指令f inv0 に加算する補償周波数fc2は、次式で表される。
【数6】
fc=f inv0 ・ΔE 0 /E=K・f inv0 ・ sin( 2πf 0 ・t + α ) …(6)
ここに、K:入力電圧edの脈動率、α:ΔE 0 の検出時の所定の位相差
このように、直流電圧edの脈動成分ΔE 0 をインバータ周波数に反映させるというフィードフォワード補償機能と、インバータ出力電流における脈動周波数成分をフィードバック補償するという両者を合わせ持つ構成とすることで、より精度の高い安定したビート抑制効果を得ることができる。
【0017】
図10は、本発明の別の実施形態を示す制御装置の構成図である。図1の構成と異なるところは、インバータ出力周波数を補償する方式の代わりに、インバータの位相指令を直接補償する方式である。それは、加算器39によって加算器35の出力であるインバータ周波数指令finv0を基にインバータの位相θ0を演算する位相演算手段90の出力と、トルク電流成分Iqに含まれる脈動周波数成分に基づいて補償位相θcを出力する補償位相演算手段40の出力を加算し、この結果をPWMパルス発生手段33に入力する。なお、補償位相演算手段40は、図3〜図6に示した補償要素の何れかにより構成される。PWMパルス発生手段33は、電流制御手段32の発生するインバータ出力電圧実効指令V及び加算器39の出力であるインバータ出力電圧位相指令θに基づいてインバータを駆動するPWMを発生する構成である。
このように、インバータの出力位相を直接に補償することによっても前述の実施形態の場合と同様のビート現象抑制効果が得られる。
【0018】
これまでに記載した本発明の実施形態では、制御対象機がベクトル制御装置であったが、本発明はこれに限られるものではない。
図11は、電圧/周波数一定制御いわゆるV/F制御の装置で本発明を実施した例を示す。同図の構成において図1と符号が同じものは説明を省略する。50はすべり周波数指令発生手段で、同手段より出力されるすべり周波数指令fsと検出されたモータ回転周波数frとを加算して基本波周波数finv0を生成する。その周波数の位相を基準として電流ベクトル演算手段21よりモータ相電流iu〜iwを回転座標系で座標変換し、トルク電流成分Iqを演算する。52はV/F一定制御手段で、基本周波数finv0に比例した電圧指令Vを出力する。34はインバータ補償周波数発生手段で、上記演算したトルク電流成分Iqに基づきインバータ補償周波数fcを発生する。このfcと基本周波数finv0とを加算してインバータ動作周波数(出力周波数)の指令finvを生成する。33はPWMパルス発生手段で、インバータの出力電圧の指令Vと位相指令θ0に基づき周知のパルス幅変調制御を行いPWM信号を発生する。このPWM信号によりインバータ15を動作させる。ここで、インバータ補償周波数発生手段34は、図3〜図6の何れかで示されるもので構成する。ただし、図5,図6の構成を適用する場合には、電流ベクトル演算手段21により励磁電流成分も演算してその結果を用いるものとする。
本実施形態のV/F制御では、モータにおける励磁電流成分及びトルク電流成分がそれらの指令値になるように制御する制御系を有していないために、電流ベクトル演算手段21で演算されたトルク電流成分又は励磁電流成分は真のものとはならない。これは実際のモータの回転座標系におけるd−q軸とはずれることによるものである。この軸ずれはモータの周波数が低いほど大きくなることが分かっている。しかし、ビート現象が発生する周波数帯域は前述したように100Hz近辺であることを考えれば、この領域での軸ずれはわずかとなるので演算されるIq,Idの精度の低下も少ない。
そこで、本実施形態では、インバータ入力の直流電圧に重畳する整流に伴う脈動周波数近辺の領域のみインバータ補償周波数fcを基本周波数finv0に加算するようにすることで図1の実施形態で得られるものとほぼ同程度のビート現象の抑制効果が得られる。
このように本発明は、適用するインバータの制御方式がベクトル制御,V/F制御を問わず実施できるところにも特徴を有している。
以上、本発明の実施形態として、トルク電流成分Iq,励磁電流成分IdないしはモータトルクTの脈動成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによってビート現象の抑制する方式を示したが、インバータの直流入力電力の瞬時値すなわちインバータの直流電圧の瞬時値と直流入力電流の瞬時値の積は、モータトルクTの瞬時値と比例することから、インバータの直流入力電力の瞬時値の脈動成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによってもビート現象の抑制をはかることができることは明らかである。
【0019】
図12は、本発明の別の実施形態を示す制御装置の構成図である。第1図の構成と異なるところは、21で検出したトルク電流成分Iqの脈動周波数成分に基づきインバータ出力周波数を補償する方式の代わりに、インバータの出力電圧の指令Vを補償する方式である。70は補償電圧発生手段であり、検出したトルク電流成分Iqに基づきインバータ出力電圧の補償電圧Vcを発生する。71は加算器で電流制御手段で生成された電圧指令Vに補償電圧Vcを加算して出力電圧指令を出力する。ここで、補償電圧発生手段70の詳細な構成は、図3,第4図に示した制御回路を適用する。例えば図3に示したものを適用する場合には脈動成分検出回路61でトルク電流成分Iqに含まれる脈動周波数f0の成分を検出し、補償器62においてf0の成分が0となるように補償電圧Vcを出力する比例,積分等の補償要素で構成する。
本実施形態によれば、インバータの出力電圧が飽和しない領域では図1と同様の効果が得られる。
【0020】
図13は、本発明の別の実施形態を示す制御装置の構成図である。図1の構成と異なるところは、インバータ出力電圧より周波数を補償することにある。72は電圧ベクトル演算手段であり、検出したインバータの各相の瞬時出力電圧Vu〜Vwを回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電圧成分Vd,Vqをベクトル演算する。この得られた少なくとも一方の電圧成分(同図の実施形態ではVq)を入力として73のインバータ補償周波数発生手段により脈動周波数成分を補償する補償周波数fcを発生させ、インバータの動作周波数finv0に加算する。
ここで、インバータ補償周波数電圧発生手段73の詳細な構成は、図3,第4図に示した制御回路を適用する。例えば図3に示したものを適用する場合には脈動成分検出回路61でVqに含まれる脈動周波数f0の成分を検出し、補償器62においてf0の成分が0となるように補償周波数fcを出力する比例,積分等の補償要素で構成する。
本実施形態によれば、図1と比べ脈動周波数成分補償として特別にインバータの出力電圧の検出器や電圧ベクトル演算手段を設ける必要があるが、ビート現象を発生するインバータ出力電圧の正負極側の電圧アンバランスを直接的に検出して補償をかけるので、精度と応答性が優れるという効果がある。
なお、図13の実施形態はVqの脈動周波数成分に基づいて周波数を補償するものであるが、その代わりに位相θ0を補償するようにしてもよい。
【0021】
図14は、本発明の別の実施形態を示す制御装置の構成図である。図13の構成と異なるところは、Vqの脈動周波数成分に基づきインバータ出力周波数を補償する方式の代わりに、インバータの出力電圧の指令Vを補償する方式である。74は補償電圧発生手段であり、検出したVqに基づきインバータ出力電圧の補償電圧Vcを発生する。75は加算器で電流制御手段で生成された電圧指令Vに補償電圧Vcを加算して出力電圧指令を出力する。ここで、補償電圧発生手段74の詳細な構成は、図3,第4図に示した制御回路を適用する。例えば図3に示したものを適用する場合には脈動成分検出回路61でVqに含まれる脈動周波数f0の成分を検出し、補償器62においてf0の成分が0となるように補償電圧Vcを出力する比例,積分等の補償要素で構成する。
本実施形態によれば、インバータの出力電圧が飽和しない領域では図13と同様の効果が得られる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、インバータの入力電圧の整流脈動に起因する交流モータ電流の脈動を回転座標系における電流成分として検出することにより、整流脈動に起因する成分だけを精度よく取り出せ、それをフィードバック補償するので、インバータの動作周波数,モータ出力等に変化があっても、複雑なゲイン調整,位相調整を必要とせずに、インバータ入力電圧に含まれる脈動分に起因するビート現象を抑制することができる。また、これによりインバータ入力の直流電圧に脈動があってもビート現象を抑制するので平滑コンデンサの容量を小さくできるという効果も得られる。
したがって、本発明は、交流電源をコンバータで整流した直流を電源として交流モータを可変速駆動するインバータであって、特に整流脈動が大きくなる交流電源が単相である交流軌道の鉄道の電気車への利用は勿論のこと、単相受電での家電製品でモータをインバータで制御する例えば空調機,冷蔵庫,洗濯機等への利用にも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を鉄道の電気車に適用した電力変換器の主回路構成図である。
【図3】図1の実施形態における本発明特徴部の具体的構成図である。
【図4】図1の実施形態における本発明特徴部の他の具体的構成図である。
【図5】図1の実施形態における本発明特徴部の他の具体的構成図である。
【図6】図1の実施形態における本発明特徴部の他の具体的構成図である。
【図7】従来方式の制御による各部の動作波形図である。
【図8】本発明により制御した時の各部の動作波形図である。
【図9】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置のブロック図である。
【図10】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【図11】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【図12】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【図13】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【図14】本発明の別の実施形態を示す電力変換器の制御装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
9…架線、11…単相交流電源、13…コンバータ、14…平滑コンデンサ、15…インバータ、141…電圧検出器、151〜153…電流検出器、161…電圧検出器、154…速度検出器、16…3相交流モータ
21…電流ベクトル演算手段、31…運転指令発生手段、32…電流制御手段、33…PWMパルス発生手段、34…インバータ補償周波数発生手段、35,36…加算器、90…位相演算手段
41…減算器、42…減算器、61…脈動成分検出器、62…補償器、63…脈動成分補償器、64…演算手段、65…脈動検出器、66…補償器、67…トルク演算手段、68…脈動成分補償器
37…加算器、38…補償周波数発生手段、39…加算器39、40…補償位相演算手段、50…すべり周波数指令発生手段、52…V/F一定制御手段、70…補償電圧発生手段、71…加算器、72…電圧ベクトル演算手段、73…インバータ補償周波数発生手段、74…補償電圧発生手段、75…加算器
Claims (1)
- 架線からの単相交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ、該コンバータの直流側に接続する平滑コンデンサ、該コンデンサの直流を可変電圧可変周波数の交流に変換し、その変換出力を電気車を駆動する交流モータに供給するインバータ、該インバータ出力の瞬時電流を検出する手段、該検出した電流を回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分(励磁電流成分、トルク電流成分)をベクトル演算する手段、該演算された2軸の電流成分がそれぞれの2軸に相当する電流指令に一致するように電圧指令を生成する手段と、前記インバータの交流出力の周波数の指令を発生する手段と、該周波数の指令と前記電圧指令とに基づき前記インバータの出力電圧をパルス幅制御する手段を有する制御装置からなる電気車の駆動装置において、
前記2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれる前記コンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて前記インバータの交流出力の周波数の指令を調整するフィードバック補償手段と、
前記インバータ入力の直流電圧に重畳する前記コンバータの整流に伴う脈動電圧を前記直流電圧に対する脈動度合いとして求め、その度合いに応じた周波数度合いを補償周波数として検出し、その補償周波数に基づいて前記整流脈動によって発生するビート現象が抑制される方向に前記インバータの交流出力の周波数の指令を調整するフィードフォワード補償手段を備えることを特徴とする電気車の駆動装置。
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