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JP4013576B2 - 廃プラスチックからの有用物回収方法 - Google Patents
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JP4013576B2 - 廃プラスチックからの有用物回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用化学原料である有用物を回収する有用物回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、石油化学工業の発展とプラスチック合成、加工技術の進歩に伴い、種々なプラスチック製品が大量に生産され、これに伴って使用済みのプラスチック製品を産業廃棄物や一般廃棄物として排出される廃プラスチックの量も、急速に増加してきた。例えば平成11年の我が国における廃プラスチックの量は年間900万トンを超えるに至った。更に、この廃プラスチックの量の増加傾向は続いており、廃プラスチックの処分問題は深刻化しつつある。
現在、このような廃プラスチックの60%前後は単純焼却や埋立によって処分されている。しかしながら、燃焼熱カロリーの高い廃プラスチックを通常のゴミ焼却場で焼却処分すると、異常燃焼し、焼却炉の炉体等を傷めるという問題がある。そして、廃プラスチックを単純焼却することで、大気中に放出される炭酸ガスが増加し、地球温暖化という観点からも問題がある。
【0003】
一方、廃プラスチックを埋立によって処分する場合には、廃プラスチックは軽くてかさばるため、廃棄物の中でも大きな容積を占め、埋め立て地などの廃棄物最終処分場の用地不足が切迫化してきた現在、将来に亘ってこのような処分方法を続けることは困難である。
従って、廃棄物処理という地球環境の観点からも、また資源(原油)の枯渇という地球資源の観点からも廃棄されたプラスチックをもう一度再利用(リサイクル)することが非常に重要になってきた。
この廃プラスチックのリサイクル方法は、▲1▼廃プラスチックをそのまま再利用するマテリアルリサイクル、▲2▼廃プラスチックをモノマーへ解重合したり、化学的に分解して有用化学原料として回収するケミカルリサイクル、▲3▼廃プラスチックを熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクルなどに大別できる。これら複数のリサイクル方法のうちで、ケミカルリサイクルは、廃プラスチックから新たな合成樹脂や化成品を新規に合成することから、広範囲な用途に利用でき特に注目されている。
【0004】
そこで、上記したケミカルリサイクルの方法を適用して、光ディスクなどに良く用いられているポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックを化学的に分解して、モノマー等の有用化学原料を回収する廃プラスチックからの有用物回収方法が盛んに研究されており、いくつかの文献に示されている。
例えば、「長野県精密工業試験所研究報告 No.7(1994)、No.11(1998)」に、ポリカーボネート樹脂にアンモニアガスを接触させると、化学的な分解が起こり、有用物であるビスフェノールAが得られることが示されている。
【0005】
また、「高分子化学 第20巻 第214号(1963)」に、ポリカーボネート樹脂にアンモニア水を加え、溶液を撹拌すると、化学的な分解が起こり、有用物であるビスフェノールAが得られることが示されている。
更に、特公平6−25086号公報に開示されたスクラップポリエステルからの二価フェノール回収方法では、ポリカーボネート樹脂にアンモニア水と有機溶媒として塩化アルキルを加え、この溶液を撹拌すると化学的な分解が起こり、これにより有用物であるビスフェノールAが得られることが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックを化学的に分解して、モノマー等の有用化学原料を回収する場合に、前記した「長野県精密工業試験所研究報告 No.7(1994)、No.11(1998)」に記載された回収方法に基づいて、ポリカーボネート樹脂にアンモニアガスを接触させて、化学的な分解を起こし、ビスフェノールAを得る方法を実験してみると、ポリカーボネート樹脂がビスフェノールAに分解するのに4日も必要であり、ポリカーボネート樹脂の分解時間が長すぎ、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックを大量に処理してリサイクルするには不適であった。
【0007】
また、前記した「高分子化学 第20巻 第214号(1963)」に記載された回収方法に基づいて、ポリカーボネート樹脂にアンモニア水を加えて、溶液を撹拌し、化学的な分解を起こし、ビスフェノールAを得る方法を実験してみると、ポリカーボネート樹脂がビスフェノールAに分解するのに1日も必要であり、これまたポリカーボネート樹脂の分解時間が長すぎ、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックを大量に処理してリサイクルするには不適であった。
また、前記した特公平6−25086号公報に記載の回収方法に基づいて、ポリカーボネート樹脂にアンモニア水と塩化アルキルを加えて、溶液を撹拌し、化学的な分解を起こし、ビスフェノールAを得る方法を実験してみると、ポリカーボネート樹脂の分解時間は、上記した2つの回収方法に比べて短く、2時間程度と大幅に短縮されるが、更なる分解時間の短縮化が臨まれているのが現状である。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものであり、本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックを大量にリサイクル処理するために、ポリカーボネート樹脂の分解時間を大幅に短くすることができる廃プラスチックから有用物を回収できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用物を回収する有用物回収方法において、前記廃プラスチック分解剤としてn−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミンのいずれか1つの第1級アミンを加え、溶媒不存在下で前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を化学的に分解する第1工程と、前記第1工程で分解して生成された分解生成物を前記有用物として回収する第2工程と、からなることを特徴とする廃プラスチックからの有用物回収方法である。
これにより、廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂の分解時間を大幅に短縮することができ、この結果、廃プラスチックを大量に且つ効率的にリサイクル処理することが可能になる。
【0009】
本発明の関連技術は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用物を回収する有用物回収方法において、前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を溶解する、または膨潤させる溶媒と、分解剤として下記の一般式1で表される第1級アミンとが存在する溶液中にて、前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を化学的に分解する工程と、分解生成物を有用物として回収する工程とからなることを特徴とする廃プラスチックからの有用物回収方法である。
R−NH … (1)
(式中Rは炭素数1〜5の直鎖のアルキル基)
これによれば、溶媒を用いてポリカーボネート樹脂を溶解、または膨潤させるようにしているので、廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂の分解時間を更に大幅に短縮することができ、この結果、廃プラスチックを大量に且つ更に効率的にリサイクル処理することが可能になる。
【0010】
また、例えば前記第1級アミンがn−プロピルアミンであり、前記n−プロピルアミンの量が、前記廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量から計算した炭酸エステル基のモル数の6倍モル以上の量である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る廃プラスチックからの有用物回収方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の廃プラスチックからの有用物回収方法を実施する時の化学反応の過程を説明するための説明図である。
本発明の一例は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用物を回収する有用物回収方法において、前記廃プラスチックと、分解剤として下記の一般式(1)で表される第1級アミンとが存在する溶液中にて、前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を化学的に分解して、分解生成物を有用物として回収することを特徴とする廃プラスチックからの有用物回収方法である。
R−NH2 … (1)
(式中Rは炭素数1〜5の直鎖のアルキル基)
【0012】
また、本発明の関連技術は、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用物を回収する有用物回収方法において、前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を溶解する、または膨潤させる溶媒と、分解剤として下記の一般式(1)で表される第1級アミンとが存在する溶液中にて、前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を化学的に分解して、分解生成物を有用物として回収することを特徴とする廃プラスチックからの有用物回収方法である。
R−NH … (1)
(式中Rは炭素数1〜5の直鎖のアルキル基)
これにより、有用物である有用化学原料として高純度のビスフェノールAが主として得られる。
【0013】
即ち、図1に示したように、廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂のエステル部分に分解剤である第1級アミンが作用し、化学的な分解が起こり、ビスフェノールAと尿素誘導体とが分解生成物として主として得られる。
このとき上記一般式(1)に示される第1級アミンの内、Rが炭素数1〜5の比較的炭素数の少ない直鎖のアルキル基の構造を有する第1級アミンを用いると分解時間が短くなることを見いだした。尚、図1中のnは正の整数を示す。具体的には直鎖、枝分かれしたアルキル基を有する種々な第1級アミンを検討した結果、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン(ノーマルプロピルアミン)、n−ブチルアミン(ノーマルブチルアミン)、n−アミルアミン(ノーマルアミルアミン)が分解時間を短縮するのに最も効果があった。さらに好ましくはRが炭素数3の直鎖のアルキル基であるn−プロピルアミンのとき、分解時間が最も短くなることを見いだした。
また、ポリカーボネート樹脂と上記炭素数1〜5の直鎖のアルキル基を有する一級アミンの反応系にポリカーボネート樹脂を僅かに溶解する、または膨潤させる有機溶媒、例えばトルエンなどの芳香族炭化水素を加えると、さらに分解時間を短縮できることがわかった。
【0014】
<実施例1〜14および比較例1〜7>
まず、ポリカーボネート樹脂に第1級アミンだけを加えて無溶媒で且つ室温で分解反応を行ったときの実施例1〜4および比較例1−7を下記の表1に示す。ここでは第1級アミンとしてアルキル基の炭素数が違ったもの、アルキル基の直鎖や枝分かれが異なったものを用いており、下記表1に第1級アミンのアルキル基の炭素数の違い、アルキル基の直鎖・枝分かれ構造の違いによるポリカーボネート樹脂の分解時間の違いを示した。
次に、別の実験としてポリカーボネート樹脂に、第1級アミンおよびポリカーボネート樹脂をわずかに溶解する、または膨潤させる有機溶媒としてトルエンを加えて、室温で分解反応を行ったときの分解時間の違いを実施例5〜9として下記の表2に示す。更には、実施例10〜14に、上記トルエンに代えて溶媒として有害物質で環境負荷の大きな塩化アルキルの1つでポリカーボネート樹脂に対する溶解性の高いジクロロメタンを用いた時の分解時間の結果も併せて表2に示した。
【0015】
以下に示す工程は、上記実施例および比較例の具体的な実験手順である。
まず、実施例1、3〜4および比較例1〜7では、ポリカーボネート樹脂を含む廃プラスチックの実験用サンプルとして粘度平均分子量(Mw)が約15000のポリカーボネート樹脂のペレット(三菱エンジニアリングプラスチック社製ユーピロンH4000)を用いて実験した。
また、実施例2ではポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックの例として、周知のCD(コンパクトディスク)、DVDディスクなどの光ディスクを粉砕したものを用いて実験を行った。
そして、上記ポリカーボネート樹脂のペレット3gを50mlのねじ口瓶容器に入れた。さらに、ポリカーボネート樹脂中の繰り返し単位の分子量から計算した炭酸エステル基のモル数の10倍モルの所定の第1級アミンを加えた。さらに表2に示す溶媒を加える実験では5mlの所定の溶媒を加えた。
【0016】
そして、上記ねじ口容器の蓋をして密閉し、マグネチックスターラーで撹拌を開始した。この時の反応温度は室温程度とした。反応熱により溶液の温度がやや上昇する場合には、冷却の操作は行わなかった。反応時間が経過するにつれてポリカーボネート樹脂のペレットの粒形状は徐々に小さくなるのが観察できた。そして、ポリカーボネート樹脂のペレットの粒が反応溶液中で消失するまで反応を続け、このペレットが完全に消失した時点で反応を終了し、これまでに要した時間を分解時間とした。
上記反応溶液は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量分布測定を行った結果、ポリカーボネート樹脂が低分子にまで分解されていることを確認した。
【0017】
さらにガスクロマトグラフ・質量分析計(GC・MS)を用いて分析を行った結果、分解生成物としてビスフェノールAおよびポリカーボネート樹脂の重合末端基であるtert―ブチルフェノールおよび尿素誘導体が生成していることを確認した。
なお、実施例2の粉砕したCD及びDVDの破片を用いた場合も上記実験と同様の手順で行った。ただし分解しないで残っている保護膜の紫外線硬化樹脂およびアルミニウムなどの金属膜、レーベルインク顔料などの無機物は、分解反応後、反応溶液を濾紙で濾過して除去した。
【0018】
【表1】
Figure 0004013576
【0019】
【表2】
Figure 0004013576
【0020】
溶媒を用いていない場合の分解時間を示す表1から明らかなように、アルキル基の構造が枝分かれしている場合(比較例1〜5)や、アルキル基の構造が直鎖の場合であって且つアルキル基の炭素数が6以上の場合(比較例6、7)には、ポリカーボネート樹脂の分解時間は3時間以上となって全て長く、好ましくない。これに対して、アルキル基の炭素数が5以下で、且つアルキル基が直鎖の構造を持つ第1級アミンを用いた場合には(実施例1〜4)、分解時間は2時間以内となって大幅に短くなった。特に、第1級アミンとしてn−プロピルアミン(実施例1及び2)、n−ブチルアミン(実施例3)を用いた場合には、分解時間は0.2時間以内となって非常に短縮できることが判明した。
【0021】
次に、溶媒を用いた場合の分解時間を示す表2から明らかなように、トルエンやジクロロメタンを用いることにより、表1で示した無溶媒の場合よりも、更に分解時間を短くできることが判明した(実施例1、3、4に対する実施例7〜9及び12〜14)。
また、溶媒と共に、第1級アミンとしてメチルアミン水溶液やエチルアミン水溶液を用いた場合にも(実施例5、6及び実施例10、11)、分解時間は0.4時間以内となって、十分に短くできることが判明した。
更には、溶媒として有機溶媒であるトルエンを用いた場合(実施例5〜9)と、溶媒として環境負荷の大きなジクロロメタンなどの塩化アルキルを用いた場合(実施例10〜14)とを比較すると、分解時間の差は非常に小さくなっている。従って、環境負荷の大きなジクロロメタンなどの塩化アルキルを用いなくても、ポリカーボネート樹脂を僅かに溶解する、または膨潤させる有機溶媒を用いることで、十分に短時間でポリカーボネート樹脂を分解できることが判明した。
【0022】
<比較例8〜10>
ここで、上記n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミンは、常温常圧で液体の第1級アミンであるが、常温常圧で気体である例えばメチルアミン(沸点:−3.6℃)やエチルアミン(沸点:16.6℃)等の第1級アミンを、気体の状態でポリカーボネート樹脂と接触させて分解することも考えられるが、この場合には分解に長時間を要してしまって実用的ではなかった。
そこで、この常温常圧で気体の第1級アミンを水に溶解して水溶液として用い、且つ併せて溶媒を用いることにより、上記表2の実施例5、6及び実施例8、9に示すようにポリカーボネート樹脂の分解時間は大幅に短くなくなり、有用であることが判明した。
【0023】
また、この常温常圧で気体の第1級アミンの水溶液を単独(溶媒なし)で用いた場合にも、分解時間を大幅に短縮できるか否かについて、実験により検討した。また、従来方法で用いられたアンモニア水溶液についても併せて検討した。実験結果は、比較例8〜10として下記の表3に示す。具体的な実験手順は、先に表1で示した実施例の実験手順の場合と同じである。
まず、ポリカーボネート樹脂のペレット3gを50mlのねじ口瓶容器に入れた。そして、常温常圧で気体である第1級アミンは、濃度25〜30重量%の水溶液を用いた。また、アンモニアは濃度28重量%の水溶液を用いた。
【0024】
次に、ねじ口容器の蓋をして密閉し、マグネチックスターラーで撹拌を開始した。反応温度は室温で行った。反応熱により溶液の温度がやや上昇する場合は、冷却の操作は行わなかった。そして、反応時間が経過するにつれてポリカーボネート樹脂のペレットの粒形状は徐々に小さくなるのが観察できた。そして、ポリカーボネート樹脂のペレットの粒が反応溶液中で消失するまで反応を続け、ペレットが完全に消失した時点で反応を終了し、それまでに要した時間を分解時間とした。
反応溶液は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量分布測定を行い、ポリカーボネート樹脂が低分子にまで分解されていることを確認した。
さらにガスクロマトグラフ・質量分析計(GC・MS)で分解生成物がビスフェノールAおよびポリカーボネート樹脂の重合末端基であるtert―ブチルフェノールおよび尿素誘導体が生成していることを確認した。
【0025】
【表3】
Figure 0004013576
【0026】
表3と表1とより明らかなように、n−プロピルアミンやn−アミルアミンを単独で用いた場合(溶媒なし)には、実施例1、2、4に示すように、分解時間を大幅に短縮することができた。
これに対して、表3に示す比較例8〜10に示すように、メチルアミン水溶液やエチルアミン水溶液、或いはアンモニア水溶液を単独で用いた場合には分解時間は19時間以上にもなって非常に大きな値となり、好ましい効果が得られないことが判明した。換言すれば、常温常圧において液体である第1級アミン、例えばn−プロピルアミンやn−アミルアミン等を用いて、この溶液中でポリカーボネート樹脂を化学的に分解することにより、分解時間を大幅に短縮できることが判明した。
【0027】
<実施例15〜22及び比較例11〜16>
次に、第1級アミンとして入取が容易で比較的安価なn−プロピルアミンについてその添加量に関して実験を行ったので、その評価結果について説明する。
図2は第1級アミンとしてn−プロピルアミンを用いた時の化学反応の過程を説明するための説明図である。
図2に示すように、ポリカーボネート樹脂のエステル部分にn−プロピルアミンが作用すると化学的な分解が起こり、ビスフェノールAと尿素誘導体であるジノルマルプロピル尿素とが分解生成物として主として得られる。
このときn−プロピルアミンの量を、ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量から計算した炭酸エステル基のモル数の6倍モル以上の量に設定することにより、後述するように分解時間をより大幅に短くすることができる。
【0028】
また、ポリカーボネート樹脂とn−プロピルアミンの反応系にポリカーボネート樹脂を溶解する溶媒、例えばジクロロメタンなどの塩化アルキル、または膨潤させる有機溶媒、例えばトルエンなどの芳香族炭化水素を加えると、さらに分解時間を短縮できることがわかった。
実験に際しては、まず、ポリカーボネート樹脂や粉砕したコンパクトディスクに、n−プロピルアミンだけを加えて無溶媒で且つ室温で分解反応を行ったときの実施例および比較例の分解時間を表4に示す。この表4についてはn−プロピルアミンの量の違いによるポリカーボネート樹脂の分解時間の違いを示した。また、比較例としてアンモニア水のみを用いた場合について、ポリカーボネート樹脂の分解時間を測定したので、その結果についても表4に示した。
【0029】
次に、ポリカーボネート樹脂や粉砕したコンパクトディスクに、n−プロピルアミンおよびポリカーボネート樹脂を溶解する、または膨潤させる有機溶媒としてジクロロメタン、またはトルエンを加え、室温で分解反応を行ったときの実施例及び比較例の分解時間を表5に示す。この表5では溶媒存在下でのn−プロピルアミンの量の違いによるポリカーボネート樹脂の分解時間の違いを示した。また比較例として、アンモニア水にポリカーボネート樹脂を溶解する、または膨潤させる有機溶媒としてジクロロメタン、またはトルエンを加え、室温で分解反応を行った場合について、ポリカーボネート樹脂の分解時間を測定したので、その結果についても表5に示した。
具体的な実験手順は、先に表1で示した実施例の実験手順の場合と同じである。
【0030】
まず、ポリカーボネート樹脂のペレット3gを50mlのねじ口瓶容器に入れ、さらにポリカーボネート樹脂中の繰り返し単位の分子量から計算した炭酸エステル基のモル数の所定倍モルのn−プロピルアミンを加えた。さらに、溶媒を加える実験では5mlの所定の溶媒を加えた。
上記ねじ口容器の蓋をして密閉し、マグネチックスターラーで撹拌を開始した。反応温度は室温で行った。反応熱により溶液の温度がやや上昇する場合は、冷却の操作は行わなかった。反応時間が経過するにつれてポリカーボネート樹脂のペレットの粒形状は徐々に小さくなるのが観察できた。そして、ポリカーボネート樹脂のペレットの粒が反応溶液中で消失するまで反応を続け、ペレットが完全に消失した時点で反応を終了し、これまでに要した時間を分解時間とした。
反応溶液は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量分布測定を行い、ポリカーボネート樹脂が低分子にまで分解されていることを確認した。
【0031】
さらにガスクロマトグラフ・質量分析計(GC・MS)で分解生成物がビスフェノールAおよびポリカーボネート樹脂の重合末端基であるtert―ブチルフェノールおよび尿素誘導体であるジノルマルプロピル尿素が生成していることを確認した。
なお、実施例16、20の粉砕したコンパクトディスク(CD)の場合も上記実験と同様の手順で行った。ただし分解しないで残っている保護膜の紫外線硬化樹脂およびアルミニウムなどの金属膜、レーベルインク顔料などの無機物は、分解反応後、反応溶液を濾紙で濾過して除去した。
また、比較例13、15、16の分解剤としてアンモニア水を使用した場合についても上記実験と同様の手順で行った。
【0032】
【表4】
Figure 0004013576
【0033】
【表5】
Figure 0004013576
【0034】
溶媒を加えていない表4から明らかなように、n−プロピルアミンの量が、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量から計算した炭酸エステル基のモル数の6倍モル以上の量の場合(実施例15〜18)には、分解時間は0.35時間以下になって、この分解時間を大幅に短くできることが判明した。
これに対して、ポリカーボネート樹脂の量が6倍モルより少ない場合(比較例11、12)及びポリカーボネート樹脂の量が6倍モルよりも大きくても分解剤としてアンモニア水をもいた場合(比較例13)には、分解時間は24時間以上となり、好ましくない結果であることが判明した。
【0035】
また、溶媒を加えた表5から明らかなように、溶媒としてトルエンやジクロロメタンを添加した場合(実施例19〜22)には、上記実施例15〜18と比較して明らかなように、分解時間を更に短縮できることが判明した。
この場合、実施例19と実施例21とから明らかなように、環境負荷が大きくなるという欠点を有するが、溶媒としてジクロロメタンを用いることにより、より大幅に分解時間を短縮できることが判明した。
また、ポリカーボネート樹脂の量が6倍モルよりも少ない場合(比較例4)、或いは6倍モルよりも多くても分解剤としてアンモニア水を用いた場合(比較例15、16)には、分解時間は2時間以上となって好ましくないことが判明した。
本発明の実施例ではポリカーボネート樹脂の廃棄物の実際の例として、不要となり回収されたCDの粉砕物を用いたが、再利用(リサイクル)の対象となるポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックは、CD、DVDなどの光ディスクに限らず、ポリカーボネート樹脂のみで形成されたプラスチック製品は勿論のこと、ポリカーボネート樹脂を主成分とするプラスチック製品にも適用可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の廃プラスチックからの有用物回収方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
炭素数が1〜5の直鎖のアルキル基を有する第1級アミンを用いて廃プラスチック中のポリカーボネート樹脂を化学的に分解することにより、従来に比べて分解処理に要する時間を大幅に短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の廃プラスチックからの有用物回収方法を実施する時の化学反応の過程を説明するための説明図である。
【図2】第1級アミンとしてn−プロピルアミンを用いた時の化学反応の過程を説明するための説明図である。

Claims (1)

  1. ポリカーボネート樹脂を主成分とする廃プラスチックから有用物を回収する有用物回収方法において、
    前記廃プラスチック分解剤としてn−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−アミルアミンのいずれか1つの第1級アミンを加え、溶媒不存在下で前記廃プラスチック中の前記ポリカーボネート樹脂を化学的に分解する第1工程と、
    前記第1工程で分解して生成された分解生成物を前記有用物として回収する第2工程と、
    からなることを特徴とする廃プラスチックからの有用物回収方法。
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