JP4017744B2 - 固体型ポリマー電解質膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムおよびリチウムイオン二次電池に適用可能な高強度で耐熱性を有する安全性の優れた固体型ポリマー電解質膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の発達にともない、小型・軽量、かつエネルギー密度が高く繰り返しの充電回数が多い二次電池の開発が望まれている。この種の電池として水溶液電解液でなく非水電解液を使用するリチウムおよびリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムおよびリチウム合金を負極として用いる溶液型のリチウム二次電池の場合、充放電繰り返しに伴い負極上に糸状のリチウム結晶体(デンドライト)が生じ短絡等を起こすことから、それを抑制し、しかもセパレータとしての特性を有する固体状のポリマー電解質の開発が望まれている。
【0004】
また、リチウム二次電池のデンドライトの問題を解消し商品化されたリチウムイオン二次電池においては、電極の短絡防止に用いているセパレータ自身の電解液の保持力は十分でなく電解液の液漏れを起こし易いことから、外装として金属缶の使用が不可欠となっている。これにより、電池の製造コストが高くなるだけでなく、電池の軽量化も十分に出来ない状況にある。このような背景から、リチウムイオン二次電池においても電解液の液漏れをなくし、電池の軽量化を目指す観点から、セパレータとしての機能も有する安全性の高いポリマー電解質の開発が望まれている。
【0005】
この様な背景から、高いイオン伝導度と安全性を両立させたポリマー電解質系の検討が精力的に行われている。そのアプローチの一つは、ポリマーに液体成分(溶媒もしくは可塑剤)を含有させず、ポリマーと電解質のみで固体型の電解質を作製しようとするいわゆる真性ポリマー電解質のアプローチである。このタイプの電解質は、液体成分が含有されていないために、比較的強度のある膜を得ることが出来るが、イオン伝導度の限界が10-5S/cm程度と低く、しかも電極活物質層との接合が十分に取れない等の理由により、古くから検討が行われているにも関わらず未だに実用化に達していないのが現状である。
【0006】
一方、前記の真性ポリマー電解質のイオン伝導度の低さ、界面接合の不十分さ等の欠点を補う系として精力的に検討されているのが、真性ポリマー電解質に液体成分(溶媒もしくは可塑剤)を添加したいわゆるゲル電解質と称されるものである。この系の場合、ゲル電解質膜のイオン伝導度は含有する液体成分の量に依存しており、かなりの量の液体成分を含有させることにより、実用的に十分と考えられる10-3S/cm以上のイオン伝導度を示す系がいくつか報告されるようになっている。しかし、これらの系のほとんどは、液体成分の添加に伴い膜の力学的特性が急激に損なわれ、固体電解質が本来持つべきセパレータとしての安全機能が消失したものとなっていた。
【0007】
このような状況のもと、米国特許第5,296,318号には、ゲル電解質膜の強度とイオン伝導度が両立するとされる系が記載されている。これは、弗化ビニリデンとヘキサフロロプロピレン共重合体をポリマーとして用いたゲル電解質膜であり、ゲル電解質としては特質すべき力学特性を示す系として注目されている。しかし、この系ですら、二次電池用のセパレータ機能の一つの指標である突刺し強度は、汎用のセパレータより一桁低く、しかもそのゲル電解質膜の力学的耐熱温度(メルトフロー温度)は、100℃強と通常のポリオレフィン系セパレータより50℃ほど低いものであり、必ずしもリチウムイオン二次電池の安全性を保障できるものとはなっていないのが現状である。
【0008】
このような背景のもと、ゲル電解質膜で不十分とされている力学的特性を補う目的で、種々の支持体を補強材として併用するゲル電解質が提案されている。例えば、特開平9-22724号公報には、ポリオレフィン等の合成繊維不織布を塗工型のポリマーゲル電解質製膜時の支持体として併用する技術が記載されている。粘度の高いポリマー溶液を含浸させ、しかも高いイオン伝導度実現するには、目の粗い不織布が必要とされる。しかし、ポリオレフィン系不織布を用いた場合、ポリオレフィン繊維自身の強度が十分でないため、膜厚を薄くすることが困難であった。また、得られた電解質膜の力学的耐熱性もポリオレフィン不織布に支配されるため高々160℃程度であった。
【0009】
また、米国特許5,603,982号には、電解液とモノマーを溶液状態で透気度の高いポリオレフィン等の不織布に含浸させ、その後そのモノマーを重合させ固体電解質とする手法が記載されている。この手法の場合、不織布に含浸させる溶液の粘度が低いため、液の含浸は容易に実施することは出来るが、不織布の液保持力が十分でないために、その膜を上下からガラス等の平板基材で挟み込み、モノマーの重合を実施する必要があった。この手法の場合も、その製造工程が複雑なだけでなく、ポリオレフィン系不織布を採用しているため、薄膜化を実現することは困難であった。
【0010】
不織布より薄膜化を実現できる系として、不織布ではなくポリオレフィン系の微多孔膜を支持体として用いる系も幾つか提案されている。しかし、前記の不織布とは異なり、サブミクロン以下の孔径を有する微多孔膜中へ、ポリマー溶液からなる高粘度ドープを含浸させることは困難で、工程的に容易と考えられるポリマー溶液の塗工法を採用することは出来ない状況にある。この問題を回避する手法として、特開平7-220761号公報には、電解液と紫外線硬化樹脂からなる低粘度溶液をポリオレフィン微多孔膜へ含浸させ、ついで紫外線を照射しを樹脂を硬化させる手法が記載されている。しかし、含浸し易い低粘度の溶液を採用しても、疎水的なポリオレフィン微多孔膜へ溶液を含浸させることは困難で、微多孔膜の親水化処理が必要であるばかりでなく、紫外線照射による樹脂の効果時に、膜の両面からフッ素樹脂処理をしたガラス板で挟みこむ必要があり、その生産工程は複雑なものであった。また、このような微多孔膜にゲル電解質を含浸させた場合、十分な伝導度が得られないことも指摘されている(アブラハムら、J.Electrochem.Soc.,142,NO.3,1995)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように高いイオン伝導度とセパレータとしての安全機能とを両立させたポリマー電解質の開発の試みが種々行なわれているが、実用的に十分な高いイオン伝導度を示し、しかもセパレータとしての十分な力学特性を示し、かつ、現状のポリオレフィン系セパレータより高い耐熱性を有する薄膜化が可能な安全性の優れた実用的なポリマー電解質膜は未だに見出されていないのが現状である。
【0012】
このような状況に鑑み鋭意検討した結果、実用的な高いイオン伝導度と、セパレータとしての強い短絡防止強度と、短絡防止に関しての高い耐熱性とを兼ね備えた安全性に優れた固体型ポリマー電解質膜を開発する方法を見出し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、イオン伝導度と、強度と、耐熱性の三者を兼ね備えた、安全性の高いリチウムイオン二次電池用の固体型ポリマー電解質膜とその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、全芳香族ポリアミド重合体であるアラミド繊維からなる不織布、織物、あるいはアラミド繊維の隙間に全芳香族ポリアミドの重合体である合成パルプが分散する構造の通気性のある紙様のシートであり、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の多孔質薄膜とリチウムイオン伝導性ポリマー電解質との複合体からなり、イオン伝導度が25℃にて5×10-4S/cm以上であり、突刺し強度が300g以上であり、かつ膜の力学的な耐熱温度が300℃以上であるリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜であり、該リチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜におけるリチウムイオン伝導性ポリマー電解質の含有量が30〜85重量%であることが好ましく、該ポリマー電解質は、リチウムイオン伝導性ポリマー電解質で、そのイオン伝導度が25℃において5×10-4S/cm以上であることが好ましく、それはポリマー樹脂100重量部に対してリチウム塩を溶解した非水電解液を100重量部以上保持したゲル状の電解質であること、該ポリマー樹脂が、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)を主成分とするPVdF共重合体であること、該多孔質薄膜が、平均膜厚が50μm以下で、突き刺し強度が200g以上で、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の高強度・高透気度の多孔質薄膜であること、その高強度・高透気度の多孔質薄膜は、全芳香族ポリアミド重合体であるアラミド繊維からなる不織布、織物、あるいはアラミド繊維の隙間に全芳香族ポリアミドの重合体である合成パルプが分散する構造の通気性のある紙様のシートであること、又は該高強度・高透気度の多孔質薄膜は、全芳香族ポリアミド重合体からなる目付け量12〜30g/m2の不織布状のシートであることが好ましく、さらには該複合体は、多孔質薄膜とポリマー電解質との含浸一体化複合体であることが好ましい。
【0014】
かかる好ましい固体ポリマー電解質膜は、好ましくは平均膜厚が50μm以下で、突刺し強度が200g以上で、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の高強度・高透気度の多孔質薄膜支持体に、ポリマー樹脂100重量部に対してリチウム塩を溶解した非水電解液を100重量部以上保持したゲル状の電解質を含浸させ、複合一体化させることにより製造することができる。
【0015】
【発明の実施形態】
以下、本発明の固体型ポリマー電解質及びその製造方法に関して説明する。
本発明の固体型ポリマー電解質膜は、25℃にて5×10-4S/cm以上の実用上十分な高いイオン伝導度を示し、かつ電池に適用するに十分な300g以上の突刺し強度を示し、かつ300℃以上の力学的な耐熱温度を有する実用的なイオン伝導度と安全性を兼ね備えたポリマー電解質膜である。ここで、イオン伝導度は、固体状のポリマー電解質膜を20mmφのSUS電極で挟み、交流インピーダンス法により10ミリ(m)Hz〜65KHzの範囲でインピーダンスの周波数依存性を解析し、10KHzの値を求めたものである。この値が、5×10-4S/cmよりも低いと、電池として組み上げた際のインピーダンスが高くなり、高レート充放電の際の容量が低下し好ましくなくなる。
【0016】
本発明の固体型ポリマー電解質膜の場合、突刺し強度が300g以上と高いことも特徴である。突刺し強度は、現状の溶液型リチウムイオン二次電池のセパレータの短絡防止強度を表す指標としてセパレータの評価に利用されている物性であり、本発明においては、下記の条件にて測定した値を突刺し強度とした。
【0017】
支持体を11.3mmφの固定枠にセットし、先端部半径0.5mmの針を支持体の中央に垂直に突き立て、50mm/分の一定速度で針を押し込み、支持体に穴が開いた時の針にかかっている力を突刺し強度とした。
【0018】
この値が300g未満の場合、このポリマー電解質膜の突刺し強度が十分でなくなり、電池として組み上げる際に、電極同士の短絡発生確率が上がるとともに、電池として組み上げた際の安全性(短絡防止特性)が十分に確保されず好ましくなくなる。
【0019】
また、本発明のポリマー電解質膜は、300℃以上の力学的な耐熱性有している点が特徴である。ここで、力学的な耐熱温度は、以下の条件で測定した値を意味している。
【0020】
膜厚約45μm、幅5mm、長さ25mmの短冊状のポリマー電解質膜に1gの荷重をかけ、10℃/分の速度で温度を昇温させ熱機械的特性分析(TMA)を実施し、膜が破断するか、あるいは膜が10%伸びる温度を力学的な耐熱温度とした。
【0021】
この温度が300℃未満では、電池の異常反応等により、電池の内部温度が急激に上がった際に電極間の短絡を十分に防止できず、安全上好ましくなくなる。
【0022】
本発明の、固体型ポリマー電解質膜は、強度、耐熱性に特徴のある多孔質支持体薄膜と実用的に十分なイオン伝導度を有するポリマー電解質を複合化することにより作製することができる。その際の固体型ポリマー電解質膜中のポリマー電解質の含有量は、30〜85重量%の範囲が好ましい。ポリマー電解質含有量が30重量%未満では、多孔質支持体と複合化した際に十分なイオン伝導度が得られず好ましくない。また、その含有量が85重量%より多くなると、複合膜の強度が低下したり、あるいは、ポリマー電解質膜の膜厚が増加し好ましくなくなる。
【0023】
次に、本発明の多孔質支持体に含浸複合化させるポリマー電解質について説明する。本発明に利用するポリマー電解質としては、リチウムイオン伝導性のポリマー電解質で、そのイオン伝導度が25℃において5×10-4S/cm以上のものが利用される。ポリマー電解質の伝導度がこれよりも低い場合、支持体に含浸させた際に5×10-4S/cm以上の実用上十分なイオン伝導度が確保されず好ましくない。
【0024】
ポリマー電解質の種類としては、液体成分を含有していない真性ポリマー電解質、液体成分を含有したゲル状電解質のどちらも採用することが出来るが、イオン伝導度を考慮した場合、ゲル電解質がより好適に採用される。ゲル電解質用のポリマー樹脂としては、ポリエチレンオキサイド(PEO)、PEOとポリプロピレンオキサイド(PPO)との共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PANとPMMAの共重合体、アクリロニトリルとスチレンの共重合体(NSR)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)の共重合体、プルラン等の他糖ポリマー、およびエチレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリレート系の重合体・共重合体等を挙げることが出来るがこれに限定されるものではない。但し、製膜工程の容易さから、流動(溶液)状態のポリマーからアラミド支持体に直接含浸塗工できるタイプのポリマーがより好適に用いられる。
【0025】
特に、好ましいゲル電解質用のポリマー樹脂として、含浸塗工が可能でしかも耐酸化性の優れたPVdFを主成分とするPVdF共重合体を挙げることが出来る。好適に用いられる共重合成分としては、ヘキサフロロプロピレン(HFP)、パーフロロメチルビニルエーテル(FMVE)、クロロトリフロロエチレン(CTFE)、弗化ビニルおよびテトラフロロエチレン(TFE)が挙げられ、これらの共重合成分とVdFの原もしくは原共重合体が本発明のポリマー材料としては好適である。また、これら共重合成分の好適な共重合割合としては3〜10モル%の範囲が挙げられる。
【0026】
これらゲル電解質用のポリマー樹脂に含浸させる電解液としてはリチウム塩を溶解した非水溶媒(可塑剤)が好適に用いられる。その際、ポリマー樹脂に対する電解液の含浸量は、ポリマー100重量部に対して、電解液100重量部以上が必要である。電解液の量がこれよりも少ないと、多孔質支持体と複合化した際に十分なイオン伝導度を確保できず好ましくない。
【0027】
使用する非水溶媒(可塑剤)としてはリチウムおよびリチウムイオン二次電池に一般的に用いられているプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、γーブチロラクトン(γーBL)、スルフォラン、アセトニトリル等を挙げることが出来る。前記非水溶媒は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。特に、PC、EC、γ-BL、DMC,DEC,MECおよびDMEから選ばれる少なくとも1種以上の液体が好適に用いられる。
【0028】
この非水溶媒に溶解する好適なリチウム塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六弗化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウ四弗化リチウム(LiBF4)、六弗化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフロロスルフォン酸リチウム(CF3SO3Li)、リチウムパーフロロメチルスルフォニルイミド[LiN(CF3SO2)2]およびリチウムパーフロロエチルスルフォニルイミド[LiN(C2F5SO2)2]等が挙げられるがこれに限定されるものではない。溶解するリチウム塩の濃度としては、0.2から2Mの範囲が好適に用いられる。
【0029】
次に、本発明に用いる多孔質支持体薄膜について説明する。本発明の多孔質支持体薄膜としては、平均膜厚が50μm以下で、突刺し強度が200g以上で、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の高強度・高透気度薄膜が好適に用いられる。平均膜厚が50μm以上になれば、高強度の支持体を得ることは容易となるが、得られるポリマー電解質複合膜の膜厚が厚くなり、電池として組み上げた際の体積エネルギー密度を低下させ好ましくない。
【0030】
本発明の支持体の突刺し強度としては、200g以上のものが好適に用いられる。この値が、200gより低い支持体を用いた場合は、ポリマー電解質を含浸させ複合化した後でも300g以上の突刺し強度を実現することが困難となり、電池として組み上げた際の安全性(短絡防止特性)が十分でなくなり好ましくない。
【0031】
本発明の支持体の透気度は、ガーレー法(100ccの空気が1in2の面積を2.3cmHgの圧力で透過するに要する時間)により測定した値を示している。本発明の多孔質支持体薄膜としては、この値が、10sec/100cc・in2以下の高い透気度を示す支持体が好適に用いられる。この値が、10sec/100cc・in2よりも大きい透気度の低い支持体を用いた場合、工業的に最も有利と考えられるポリマー溶液からの塗工法によるポリマー電解質の含浸複合化が困難となるとともに、複合化したポリマー電解質のイオン伝導度も十分に高めることが困難になり好ましくない。
【0032】
本発明の高強度・高透気度の多孔質薄膜支持体用の材料としては、強度と耐熱性の観点から全芳香族のポリアミドが用いられる。その支持体形状としては、全芳香族ポリアミドの重合体であるアラミド繊維からなる不織布、織物、あるいは、そのアラミド繊維の隙間に全芳香族ポリアミドの重合体である合成パルプが分散する通気性のある紙様のシート、あるいは、全芳香族ポリアミドの重合体であるアラミド樹脂からなる孔が多数開いた通気性のあるフィルム等を挙げることが出来る。前記した支持体としての必要特性を満足しておれば、これらの内どの形状のものも本発明に利用することが可能であるが、透気度を考慮した場合、不織布状のシートが最も好適に用いられる。その目付け量としては、12〜30g/m2の範囲が好適に用いられる。目付け量が12g/m2未満の場合、透気度の高い支持体を得るのは容易となるが、突刺し強度として200g以上のものを得ることが困難となり、結果的に短絡防止強度の優れた固体型電解質膜を得ることが出来なくなる。一方、目付け量が30g/m2よりも多くなると、突刺し強度を満足することは容易となるが、平均膜厚50μm以下の支持体を得ることが困難となる。また、無理に密度を上げ薄膜化すると、透気度が低下し結果的にイオン伝導度の高い複合膜を得ることが困難になり好ましくない。
【0033】
全芳香族ポリアミド重合体の分子構造としては、メタ系、パラ系を問わず本発明に利用可能である。ここでメタ系とは、m−フェニレンイソフタルアミドを主たる構成単位とする全芳香族ポリアミドが代表的なものとして挙げられ、パラ系とは、p−フェニレンテレフタルアミドを主たる構成単位とする全芳香族ポリアミドが代表的なものとして挙げられる。
【0034】
次に、本発明の固体型ポリマー電解質膜の製造方法について説明する。本発明の固体型ポリマー電解質膜は、平均膜厚が50μm以下で、突刺し強度が200g以上で、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の高強度・高透気度の多孔質薄膜支持体に、ポリマー樹脂100重量部に対してリチウム塩を溶解した非水電解液を100重量部以上保持したゲル状の電解質を含浸させることにより製造させる。この際、ゲル電解質を含浸複合化する方法は特に限定するものではないが、工業的な生産が容易な流動(溶液)状態のポリマーを直接多孔質薄膜支持体に含浸塗工する方法がより好まれる。そのような手法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
【0035】
▲1▼ゲル電解質用のポリマー樹脂と電解液とを混合加熱溶解し、その溶液状態のドープを多孔質薄膜支持体に直接塗工・含浸させ、冷却固化することで複合化する方法。
【0036】
▲2▼ゲル電解質用のポリマー樹脂と電解液とポリマーを溶解する揮発性の溶媒とを混合溶解し、その溶液状態のドープを多孔質薄膜支持体に直接塗工・含浸させ、ついで揮発性溶媒を乾燥除去することで複合化する方法。
【0037】
▲3▼ゲル電解質用のポリマー樹脂とそのポリマーを溶解し水に相溶する溶媒と相分離剤(ゲル化剤もしくは開孔剤)とを混合溶解し、その溶液状態のドープを多孔質薄膜支持体に直接塗工・含浸させ、ついでその膜を水系の凝固浴に浸漬しポリマーを凝固後、水洗・乾燥を行なった複合膜を電解液に浸漬し、ポリマー樹脂をゲル化させ複合膜とする方法。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の内容を実施例を用い詳細に説明する。
【0039】
[実施例1]
<アラミド支持体>
太さ1.25deの結晶化させたm−アラミド短繊維に太さ3deの非結晶化m−アラミド長繊維をバインダーとして添加し、乾式抄造法により目付け量19g/m2で製膜しカレンダーロールをかけ不織布状のシートを得た。得られた支持体の特性は以下の通りであった。平均膜厚36μm、密度0.53g/cm3、空隙率62%、透気度0.04sec/100cc・in2、突刺し強度330g。
【0040】
<ゲル電解質の複合化>
ゲル電解質用のポリマー樹脂としてPVdFにヘキサフロロフロピレン(HFP)を5モル%共重合したPVdF共重合体用いた。このポリマー100重量部に対して、1MのLiBF4を溶解したPC/EC(1/1重量比)電解液を300重量部添加し、さらに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を添加し混合溶解し、ポリマー濃度12重量%のドープを調製した。得られたドープを前記のアラミド支持体に含浸・塗工し、50℃にてTHFを乾燥除去することで、固体型ポリマー電解質膜を作製した。
【0041】
[比較例1]
アラミド支持体を用いずに、実施例1で用いたゲル電解質用のドープをシリコンコートの離型フィルム上に塗工し、ゲル電解質からなる単独膜を作製した。
【0042】
[比較例2]
比較例1において、ゲル電解質用ポリマー樹脂100重量部に対して、電解液の添加量を100重量部とした以外は、比較例1と同様にして製膜を行ない、ゲル電解質からなる単独膜を作製した。
【0043】
[比較例3]
実施例1において、ゲル電解質用ポリマー樹脂100重量部に対して、電解液の添加量を80重量部として変えただけで、あとは実施例1と同様にしてアラミド支持体と複合化した固体型ポリマー電解質を作製した。
【0044】
[比較例4]
実施例1において、アラミド支持体製膜時の目付け量を10g/m2とした以外は、実施例1と同様にして乾式抄造法によりアラミド支持体を作製した。得られた支持体の諸特性は以下の通りであった。平均膜厚20μm、密度0.51g/cm3、空隙率63%、透気度0.01sec/100cc・in2、突刺し強度85g。
【0045】
この支持体を用い、実施例1と同様にしてゲル電解質との複合膜を作製した。
【0046】
[実施例2]
実施例1において、ゲル電解質用のポリマー樹脂としてPVdFに対してHFPを8.7モル%共重合したポリマーを用い、ポリマー樹脂100重量部に対する電解液の添加量を250重量部とした以外は実施例1と同様に製膜を行ない、アラミド支持体との複合固体型ポリマー電解質を作製した。
【0047】
[比較例5]
実施例2において、アラミド支持体を用いずに、比較例1同様の手法を用い、ゲル電解質からなる単独膜を作製した。
【0048】
[比較例6]
アラミド支持体として太さ1.25deの結晶化したm−アラミド短繊維とm−アラミドフィブリット(合成パルプ状粒子)を7/3(重量比)の割合で配合し、希薄水性スラリーを調製し、目付け量37g/m2に抄き湿紙とした。得られた湿紙をカレンダーロールにかけ、紙状のシートを得た。得られた支持体の諸物性は以下の通りであった。平均膜厚58μm、密度0.62g/cm3、空隙率51%、透気度29sec/100cc・in2、突刺し強度630g。
【0049】
このアラミド支持体に実施例2のゲル電解質用ポリマードープの含浸を実施したところ、アラミド支持体内部まで十分にポリマーを含浸することが出来ず、良好な複合電解質膜を作製出来なかった。
【0050】
[実施例3]
ゲル電解質用のポリマー樹脂としてポリアクリロニトリル(PAN)を用い、PAN12重量部、EC55重量部、PC27重量部、LiBF48重量部を120℃にて素早く混合溶解し、塗工用のドープを調製した。得られたドープを120℃の状態で実施例1のアラミド支持体上に含浸塗工し、ついで室温まで冷却しドープをゲル化させ、アラミド支持体との複合固体型ポリマー電解質を作製した。
【0051】
[比較例7]
実施例3において、アラミド支持体を使用せず、PANゲル電解質単独膜を作製した。
【0052】
[実施例4]
ゲル電解質用のポリマー樹脂として、PVdFに対しパーフロロビニルエーテル(FMVE)を5.3モル%共重合したPVdF共重合体を用い、このポリマー樹脂72重量部に対しジメチルアセトアミド(DMAc)262重量部、平均分子量400のポリエチレングリコールを66重量部添加し、60℃にて加熱混合溶解し塗工用のドープを調製した。得られたドープを実施例1のアラミド支持体上に含浸塗工後、この膜をDMAcの50%水溶液に浸漬し膜の凝固を実施した。ついで、膜の水洗・乾燥を行ない、アラミド支持体/PVdF共重合体からなるドライ複合膜を作製した。ついで、得られたドライ複合膜を1MのLiBF4を溶解したPC/EC(1/1重量比)に浸漬し、電解液を含浸させ複合固体型ポリマー電解質とした。
【0053】
[実施例5]
ゲル電解質用のポリマー樹脂として、PVdFに対しFMVEを9.0モル%共重合したPVdF共重合体を用い、あとは実施例4と同様にして複合固体型ポリマー電解質を作製した。
【0054】
以上の実施例および比較例の電解質膜についての測定結果を表1に示す。表1の中で、含浸量は、固体型ポリマー電解質膜重量に対する電解液の含浸量を表している。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1〜5で明らかなように、実施例1で示した平均膜厚、突刺し強度、透気度を満足したアラミド支持体をゲル電解質含浸の支持体として用いることにより、膜厚45μmと薄膜で、しかも400g以上の突刺し強度と5×10-4S/cm以上のイオン伝導度を示し、かつ400℃以上の力学的耐熱性を有する固体型ポリマー電解質膜が種々のポリマー系および複合化方法で実現できることが分かった。
【0057】
これに対し、アラミド支持体を併用しなかった場合は、イオン伝導度的には十分なものを得ることは可能であるが、何れの系においても数十g程度の突刺し強度しか得られず、しかも耐熱温度も100℃前後と安全性が優れたものを得ることは出来なかった(比較例1,2,5および7)。
【0058】
また、実施例1で示した諸物性を満足するアラミド支持体を用いた場合でも、イオン伝導度の低いゲル電解質を含浸複合化させた場合は、満足するイオン伝導度を実現できないことが分かった(比較例3)。
【0059】
また、アラミド支持体として、目付け量が低く、突刺し強度が十分でないものを用いた場合、ゲル電解質を複合化しても突刺し強度が十分に増加せず、短絡防止の面で安全性の高い固体型ポリマー電解質膜を作製するのは困難であった(比較例4)。また、アラミド支持体の目付け量を高くした場合、突刺し強度は満足できるが、支持体自身の膜厚が厚くなり、薄膜が困難となるとともに膜の透気度が低下するため、その支持体膜中にゲル電解質ドープを十分含浸できなくなった(比較例6)。
【0060】
以上の結果が示すように、耐熱性の優れた全芳香族ポリアミドを素材として用いた特定の諸物性をしめすアラミド支持体にゲル電解質含浸複合化することにより、イオン伝導度、短絡防止強度、耐熱性の三者を兼ね備えた固体型ポリマー電解質膜を作製出来ることを見出した。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述してきたように本発明によれば、高いイオン伝導度と、強い短絡防止強度と、高い力学的耐熱性とを兼ね備えた、ポリマー二次電池用途に有用な安全性の優れた固体型ポリマー電解質膜を提供することが可能となった。
Claims (9)
- 全芳香族ポリアミド重合体であるアラミド繊維からなる不織布、織物、あるいはアラミド繊維の隙間に全芳香族ポリアミドの重合体である合成パルプが分散する構造の通気性のある紙様のシートであり、かつ透気度が10sec/100cc・in2以下の多孔質薄膜とリチウムイオン伝導性ポリマー電解質との複合体からなり、イオン伝導度が25℃にて5×10-4S/cm以上であり、突刺し強度が300g以上であり、かつ膜の力学的な耐熱温度が300℃以上であるリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該固体型ポリマー電解質膜におけるリチウムイオン伝導性ポリマー電解質の含有量が30〜85重量%であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該リチウムイオン伝導性ポリマー電解質のイオン伝導度が25℃において5×10-4S/cm以上であることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該リチウムイオン伝導性ポリマー電解質が、ポリマー樹脂100重量部に対してリチウム塩を溶解した非水電解液を100重量部以上保持したゲル状の電解質であることを特徴とする請求項1〜3記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該ポリマー樹脂が、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)を主成分とするPVdF共重合体であることを特徴とする請求項4記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該多孔質薄膜が、平均膜厚が 50 μ m 以下で、突き刺し強度が 200g 以上で、かつ透気度が 10sec/100cc ・ in 2 以下の高強度・高透気度の多孔質薄膜であることを特徴とする請求項1〜5記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該高強度・高透気度の多孔質薄膜が、目付け量 12 〜 30g/m 2 の不織布状のシートであることを特徴とする請求項6記載のリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜。
- 該複合体が、多孔質薄膜とリチウムイオン伝導性ポリマー電解質との含浸一体化複合体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用固体ポリマー電解質膜。
- 平均膜厚が 50 μm以下で、突刺し強度が 200g 以上で、かつ透気度が 10sec/100cc ・ in 2 以下の高強度・高透気度の多孔質薄膜に、ポリマー樹脂 100 重量部に対してリチウム塩を溶解した非水電解液を 100 重量部以上保持したゲル状の電解質を含浸させることを特徴とするリチウムイオン電池用固体型ポリマー電解質膜の製造方法。
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