JP4048316B2 - 単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法及び製造装置並びに積層構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単結晶シリコン基板上に単結晶酸化亜鉛膜をエピタキシャル成長する方法及びこの方法を実施する装置並びに積層構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多結晶酸化亜鉛(ZnO)は、その誘電的性質、可視光透過性等の多機能性を利用して、表面弾性波素子、焦電素子、圧電素子、ガスセンサー、バリスター、あるいは透明導電膜等に用いられてきた。
酸化亜鉛は、可視光の短波長端に相当する禁制帯幅を持った直接遷移型の半導体であるので、結晶完全性の高い酸化亜鉛単結晶が成長できれば、高耐圧電子デバイス用半導体、発光受光デバイス用半導体としても使用可能である。
したがって、結晶完全性の高い酸化亜鉛単結晶膜が成長できれば、半導体電子デバイス、発光受光デバイス、誘電的性質を利用した種々のデバイスを酸化亜鉛単結晶チップに集積した高機能デバイスを製造することが可能になる。
【0003】
このため近年、酸化亜鉛単結晶の成長方法の研究が種々行われている。
例えば、サファイヤ基板上に、分子線エピタキシー法により酸素(O)ラジカルと亜鉛(Zn)分子線を用いて酸化亜鉛単結晶膜をエピタキシャル成長した報告(岩田 他、セラミックデータブック2000別冊p190−194参照)がされている。
この方法は、サファイヤ基板面と酸化亜鉛(0001)面のマッチングが良いことを利用してエピタキシャル成長するものであり、基板面の垂直方向にc軸配向した酸化亜鉛単結晶膜が得られる。
しかしながら、サファイヤ基板はコストが高く、また加工が難しいことから、実用化には、他のコストが低くかつ加工性に優れた基板にエピタキシャル成長する方法が求められている。酸化亜鉛単結晶基板上に成長することも可能であるがさらにコストが高い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、シリコン(111)面基板上にシリコン窒化膜を形成し、シリコン窒化膜上に上記の例と同様な方法で酸化亜鉛単結晶膜をエピタキシャル成長する方法が開示されている(特開2001−44499号公報参照)。
この方法は、シリコン(111)面と酸化亜鉛(0001)面のマッチングが良いことを利用してエピタキシャル成長するものであるが、酸素ラジカルがシリコン基板表面を酸化してシリコン基板表面をアモルファス化すると単結晶成長できないので、シリコン表面に極薄いシリコン窒化膜を形成して保護してからエピタキシャル成長するものである。
【0005】
この方法によれば、コストが低く、かつ加工性に優れたシリコン基板を用いることができ、多機能にわたる酸化亜鉛半導体デバイスとシリコン集積回路技術を融合することができ非常に有益である。しかしながらこの方法で得られた酸化亜鉛単結晶膜は、基板面に垂直方向には良好なc軸配向を示すが、膜面内では結晶ドメインが回転しており、結晶ドメイン界面でキャリアが散乱されてキャリア移動度が小さい、ドメイン界面の再結合中心のために発光効率が悪いといった課題がある。
またこの方法は、シリコン窒化膜の膜厚が極めて重要であり、厚すぎるとシリコン基板表面に非晶質シリコン窒化膜が厚く形成されて規則正しい原子配列が得られず、薄すぎるとシリコン基板表面の酸化を防止できない。最適膜厚は10nm程度であり、この厚さを再現性良く基板表面全面に亘って形成するのは極めて難しく、このため、シリコン窒化膜の膜厚制御に多大の工数を必要とし、生産性が上がらないといった課題がある。
また、半導体電子デバイス、発光受光デバイス、あるいはこれらの集積回路を形成する場合には、寄生容量やリーク電流の減少、あるいは素子分離のためにシリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜は電気的に分離されていることが好ましい。しかしながら、この方法では、シリコン窒化膜が極めて薄くなければならないので、シリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜を電気的に分離できないといった課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、低コストかつ加工性に優れたシリコン基板上に成長することができ、基板面に垂直方向及び面内で結晶完全性が高く、かつ、シリコン基板と電気的に絶縁することができる単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法は、単結晶シリコン基板上にフッ化カルシウム単結晶薄膜をエピタキシャル成長し、フッ化カルシウム単結晶薄膜上に酸化亜鉛単結晶膜をエピタキシャル成長することで、フッ化カルシウム単結晶薄膜表面に垂直方向にc軸配向し、かつ、X線回折による極点図形が6回対称となり、面内で結晶ドメインが回転していない酸化亜鉛単結晶膜を得ることを特徴とする。
この構成によれば、シリコン(111)面とフッ化カルシウム(111)面と酸化亜鉛(0001)面との格子整合性が良いので、シリコン基板上に結晶完全性の高いフッ化カルシウム単結晶薄膜をエピタキシャル成長することができ、結晶完全性の高いフッ化カルシウム単結晶薄膜上に酸化亜鉛をエピタキシャル成長するので、基板面に垂直方向にc軸配向しかつ単結晶膜の面内で回転ドメインのない結晶完全性の良好な酸化亜鉛単結晶膜が得られる。また、シリコン基板を使用するので低コストで酸化亜鉛単結晶膜が得られる。また、フッ化カルシウムは絶縁物であり、かつ、厚く積層することができるのでシリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜とを電気的に絶縁分離できる。そして、フッ化カルシウムは可視域を含む幅広い波長範囲の光に対して透明であるため、酸化亜鉛単結晶膜を透過する可視光を単結晶シリコン基板に到達させることができる。
このため、例えば、基板としてシリコン太陽電池を用い、その上にフッ化カルシウム単結晶薄膜を介して酸化亜鉛単結晶膜を用いた紫外光センサーを形成すれば、太陽電池の電力を電源とする、センサー・電源一体型紫外線センサーを作製することも可能である。
本発明によるエピタキシャル成長方法は、分子線エピタキシャル法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法等のいずれのエピタキシャル法でも良く、また、これらの組み合わせであっても良い。
ここで、フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さを15nm以上にすれば結晶完全性の高い酸化亜鉛単結晶膜が得られ、100nm以上の厚さにすれば、シリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜とを、半導体電子デバイス、発光受光デバイスにとって十分な程度に電気的に絶縁分離することができる。さらに、フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さを15nm以上100nm以下程度にすれば、シリコン基板にp型を用い、フッ化カルシウム単結晶薄膜を絶縁膜として、酸化亜鉛単結晶膜をn型半導体としたpin型のダイオードを形成することができる。
【0008】
本発明の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造装置は、超高真空槽内に、少なくとも単結晶シリコン基板を保持し加熱する基板加熱装置と、フッ化カルシウムを入れた坩堝からなりフッ化カルシウム分子線を発生させるフッ化カルシウム分子線源と、亜鉛を入れた坩堝からなり亜鉛分子線を発生させる亜鉛分子線源と、高周波放電ガンを用いて酸素ラジカルを発生させる酸素ラジカル源と、が設けられている。この製造装置を用いて本発明の方法を実施すれば、基板面に垂直方向にc軸配向しかつ単結晶膜の面内で回転ドメインのない結晶完全性の良好な酸化亜鉛単結晶膜が得られる。
【0009】
本発明の積層構造は、単結晶シリコン基板と、単結晶シリコン基板上のフッ化カルシウム単結晶薄膜と、フッ化カルシウム単結晶薄膜上の酸化亜鉛単結晶膜と、からなり、酸化亜鉛単結晶膜は、フッ化カルシウム単結晶薄膜表面に垂直方向にc軸配向しており、かつ、X線回折による極点図形が6回対称であり、該酸化亜鉛単結晶膜の面内で結晶ドメインが回転していないことを特徴とする。
上記構成において、単結晶シリコン基板は、好ましくは、(111)面基板である。フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さは、好ましくは、15nm以上である。フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さが100nm程度で、単結晶シリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜とが電気的に絶縁されることができる。
酸化亜鉛単結晶膜の室温でのフォトルミネッセンスにおいて、好ましくは、欠陥に基づく1.5〜2.5eVの深い準位からの発光が観測されない。
このように、本発明の方法を用いれば、低コストで、従来にない結晶完全性を有し、かつ、基板と絶縁分離された、あるいは基板と電気的に接続できる酸化亜鉛単結晶膜を製造することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法は、単結晶シリコン基板上にフッ化カルシウム単結晶薄膜をエピタキシャル成長し、フッ化カルシウム単結晶薄膜上に酸化亜鉛単結晶膜をエピタキシャル成長することを特徴としている。
図1は、本発明の方法によって形成される、単結晶シリコン基板とフッ化カルシウム単結晶薄膜と酸化亜鉛単結晶膜との積層構造を示す図である。図2は、図1の積層構造を形成するための装置の一例である分子線エピタキシャル装置を模式的に示す図である。
以下、図1及び図2を用いて本発明の実施の形態を説明する。
シリコン(111)面単結晶基板1上にフッ化カルシウム単結晶薄膜2をエピタキシャル成長し、フッ化カルシウム単結晶薄膜2上に酸化亜鉛単結晶膜3をエピタキシャル成長する。フッ化カルシウム単結晶薄膜2を15nm以上の厚さに積層すれば結晶完全性の高い酸化亜鉛単結晶膜3が得られ、100nm以上積層すればシリコン基板1と酸化亜鉛単結晶膜3を電気的に絶縁することができる。
【0011】
エピタキシャル成長方法は、例えば、図2に示した分子線エピタキシャル装置を用いることができる。図2に示すように、超高真空槽4内において、基板加熱装置5に設置されたSi基板1の表面に、フッ化カルシウムを入れた坩堝6を加熱してフッ化カルシウム分子線を照射して所望の厚さのフッ化カルシウム単結晶薄膜2をエピタキシャル成長する。酸化亜鉛単結晶膜3は、フッ化カルシウム単結晶薄膜2上に、亜鉛を入れた坩堝7を加熱して亜鉛分子線を照射すると共に、高周波放電ガンを使用した酸素ラジカル源8から酸素ラジカルを照射してエピタキシャル成長する。なお、図2において、9は排気系を示し、10,11はそれぞれ、RHEED(高エネルギー電子線回折装置)の電子銃及びスクリーンを示している。
【0012】
上記説明では分子線エピタキシャル装置を例にとったが、他のエピタキシャル成長方法、例えば、電子ビーム蒸着法、またはフッ化カルシウムターゲットと酸化亜鉛ターゲットを用いたレーザーアブレーション法でも良く、またこれらのエピタキシャル成長法の組み合わせでも良い。また、坩堝の加熱方法は、抵抗加熱でも電子ビーム加熱でも良い。
なお、上述した酸素ラジカル源は、高周波放電ガンを使用した酸素ラジカル源を例にとって説明したが,電子サイクロトロン共鳴ガンを使用した酸素ラジカル源でも良い。
【0013】
上記方法によれば、シリコン(111)面とフッ化カルシウム(111)面と酸化亜鉛(0001)面とのマッチングが良いので、シリコン基板上に結晶完全性の高いフッ化カルシウム単結晶薄膜をエピタキシャル成長することができ、結晶完全性の高いフッ化カルシウム単結晶薄膜上に酸化亜鉛をエピタキシャル成長するので、基板面に垂直方向にc軸配向しかつ面内で結晶ドメインの回転のない結晶完全性の良好な酸化亜鉛単結晶膜が得られる。また、シリコン基板を使用するので低コストで酸化亜鉛単結晶膜が得られる。
【0014】
ここで、フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さを15nm以上にすれば結晶完全性の高い酸化亜鉛単結晶膜が得られ、100nm以上の厚さにすれば、シリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜とを、半導体電子デバイス、発光受光デバイスにとって十分な程度に電気的に絶縁分離することができる。さらに、フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さを15nm以上、100nm以下程度にすれば、シリコン基板にp型を用い、フッ化カルシウム単結晶薄膜を絶縁膜として、酸化亜鉛単結晶膜をn型半導体としたpin型のダイオードを形成することができる。
【0015】
次に,本発明の実施例を説明する。
結晶成長装置として、高周波放電ガンを用いた酸素ラジカル源と亜鉛坩堝およびフッ化カルシウム坩堝を備えた図2の分子線エピタキシャル装置を用いた。高周波放電ガンへ供給される酸素ガス流量は0.3ccmで,高周波放電電力は350Wとした。基板としてシリコン(111)面単結晶基板を用いた。
シリコン単結晶基板を有機溶媒で洗浄後,フッ酸を用いた標準的なエッチングによって最表面を水素原子で終端して分子線エピタキシャル装置に装着した。この基板を1×10-7Paの真空中で800℃に昇温して5分保つと、超構造7×7の反射電子線回折パターンを示す清浄表面が得られた。
この清浄表面を持った基板を650℃に降温してフッ化カルシウム坩堝からフッ化カルシウム分子線を照射した。フッ化カルシウム膜の成長速度は1.0nm/minとした。フッ化カルシウムとシリコンの格子定数がほぼ等しいため、成長開始に伴う電子線回折パターンの変化はストリーク・ツー・ストリークで、堆積の第1層目から平坦な単結晶フッ化カルシウム膜が得られた。厚さ3nmから100nmの範囲のフッ化カルシウム薄膜を成長して比較した。
原子間力顕微鏡で測定したこれら薄膜の2乗平均表面粗さは、0.4nm程度で、以降の酸化亜鉛膜の堆積にとって十分に平坦であった。
【0016】
次に、この基板の温度を250℃に下げ,先ず酸素ラジカルを、その後に亜鉛坩堝から亜鉛分子線を追加照射して酸化亜鉛膜の成長を開始した。酸化亜鉛膜の成長速度は3.3nm/minとした。厚さ10nmの酸化亜鉛膜を成長してから酸素ラジカルの照射を停止して一旦成長を中断した。その後、亜鉛分子線のみを照射しながら750℃まで昇温して10分間保って熱処理を施し、次いで500℃に降温した。この熱処理の間に、酸化亜鉛膜の表面からの電子線回折パターンはスポットライクからブロードなストリークに変化した。この変化は、凹凸に成長した酸化亜鉛の表面がほぼ平坦になったことを示している。
その後、再び酸素ラジカルの照射を追加して厚さ600nmの酸化亜鉛膜を再成長した。このときの成長速度は6.7nm/minとした。再成長の開始に伴いブロードなストリークであった電子線回折パターンは徐々にシャープなストリークに変化し、高品質な単結晶酸化亜鉛膜がエピタキシャル成長していることが判った。
【0017】
図3はこのようにして作製した面積が2cm2 の酸化亜鉛膜における、{10−11}を極点としたX線回折の極点図である。比較のために、シリコン基板に直接、酸化亜鉛膜をエピタキシャル成長した場合、すなわち、フッ化カルシウム薄膜を挿入しない試料についても示した。別途測定したθ−2θ法のX線回折では、いずれの酸化亜鉛膜からも(0001)面による反射ピークのみが観測された。しかし、フッ化カルシウム薄膜を挿入しない場合には、図3の極点図形における回折ピーク分布がリング状になっている。このことは、酸化亜鉛膜の結晶構造が膜面内の回転ドメインを含むc軸配向膜になっていることを意味し、従来技術による報告結果と一致している。一方、フッ化カルシウム薄膜を挿入した場合は、フッ化カルシウム薄膜の厚さの増加とともに極点図形が6回対称に近づき、厚さが15nmを超えたあたりでほぼ完全に6回対称スポットのみになった。このことは、フッ化カルシウム薄膜の挿入によって酸化亜鉛膜中の回転ドメインの発生を防止できること、その効果はフッ化カルシウム薄膜の厚さが15nm以上となった場合に十分発揮されることを示している。
【0018】
図4は、これらの酸化亜鉛膜における(0001)面X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅とフッ化カルシウム膜厚の関係を示す図である。半値幅の減少は、酸化亜鉛膜におけるモザイク結晶の減少に対応しており、図3からの情報と一致して、厚さ15nm以上のフッ化カルシウム薄膜の挿入が単結晶の酸化亜鉛膜をエピタキシャル成長させるために重要であることを示している。
【0019】
図5及び図6は、厚さ30nmのフッ化カルシウム薄膜を挿入した試料における、酸化亜鉛単結晶膜からのフォトルミネッセンスを示す図であり、図5は発光エネルギーが3.2〜3.5eVにおけるスペクトルの温度変化を示し、図6は発光エネルギーが2.0〜3.5eVの幅広い領域における300Kのスペクトルを示している。
図5に示すように、20Kの低温から60Kまでバンド端近傍の束縛励起子発光のみが観測され、それ以上の温度では自由励起子発光のみが観測されている。また、図6からわかるように、室温でも欠陥に基づく深い準位からの発光は観測されていない。この結果はフッ化カルシウム薄膜を挿入した酸化亜鉛膜には欠陥が少なく、半導体電子デバイスおよび発光受光デバイスの材料として使用できる高品質膜であることを示している。一方、フッ化カルシウム薄膜を挿入しなかった場合には、従来技術で製造された結晶について報告された結果と同様に1.5〜2.5eVに欠陥からの発光が強く観測され、図5のいずれの温度においてもバンド端近傍の発光は微弱であった。この結果は、フッ化カルシウム薄膜を挿入しなかった酸化亜鉛膜は多量の欠陥準位を含んでおり半導体電子デバイスおよび発光受光デバイスの材料としては十分な品質を有していないことを示している。
【0020】
図7は、フッ化カルシウム薄膜の厚さを変えた試料における酸化亜鉛膜とシリコン基板(p型で抵抗率は0.01Ωcm、接合面積は20mm2 )との間の電流−電圧特性を示す図であり、この特性は電気絶縁層となるフッ化カルシウム薄膜を挟んだp型シリコンとn型酸化亜鉛が形成するpin構造に基づくダイオード特性を示しており、また、フッ化カルシウム膜厚の増加とともに電気的絶縁性が顕著になることがわかる。フッ化カルシウム薄膜の厚さを100nm以上にすると、順方向、逆方向ともに漏れ電流がほとんど観測されず、接合面の全域にわたって良好に電気的に絶縁分離されていることが観測され、シリコン基板と酸化亜鉛単結晶膜とを、半導体電子デバイス、発光受光デバイスにとって十分な程度に電気的に絶縁分離することができることがわかる。このことから、単結晶シリコン基板と酸化亜鉛膜を電気的に絶縁する上で必要なフッ化カルシウム薄膜の厚さは100nm程度で十分であると結論できる。
【0021】
【発明の効果】
上記説明から理解されるように本発明によれば、低コストかつ加工性に優れたシリコン基板上に成長することができ、基板面に垂直方向及び膜面内で結晶完全性が高く、かつ、シリコン基板と電気的に絶縁された酸化亜鉛単結晶膜を提供することができる。
したがって、本発明によれば、酸化亜鉛を使った半導体電子デバイス、発光受光デバイス、誘電的性質を利用した種々のデバイスをシリコン半導体による集積回路とワンチップに集積した高機能デバイス用材料として用いれば、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によって形成される、単結晶シリコン基板とフッ化カルシウム単結晶薄膜と酸化亜鉛単結晶膜との積層構造を示す図である。
【図2】図1の積層構造を形成するための装置の一例である分子線エピタキシャル成長装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明の方法によって形成された酸化亜鉛単結晶膜の{10−11}を極点としたX線回折の極点図であり、dはフッ化カルシウムの膜厚である。
【図4】本発明の方法によって形成された酸化亜鉛単結晶膜の(0001)面X線回折ピークのロッキングカーブの半値幅とフッ化カルシウム膜厚dの関係を示す図である。
【図5】厚さ30nmのフッ化カルシウム薄膜を挿入した試料における、酸化亜鉛単結晶膜からのフォトルミネッセンスを示すグラフで、測定温度は20Kから300Kである。
【図6】厚さ30nmのフッ化カルシウム薄膜を挿入した試料における、酸化亜鉛単結晶膜からのフォトルミネッセンスを示すグラフで、測定温度は300Kである。
【図7】フッ化カルシウム薄膜の厚さdを変えた試料における酸化亜鉛膜とシリコン基板(p型で抵抗率は0.01Ωcm、接合面積は20mm2 )との間の電流−電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
1 単結晶シリコン基板
2 フッ化カルシウム単結晶薄膜
3 酸化亜鉛単結晶膜
4 超高真空槽
5 基板加熱装置
6 フッ化カルシウム坩堝
7 亜鉛坩堝
8 酸素ラジカル源
9 排気系
10 電子銃
11 スクリーン
Claims (11)
- 単結晶シリコン基板上にフッ化カルシウム単結晶薄膜をエピタキシャル成長し、このフッ化カルシウム単結晶薄膜上に酸化亜鉛単結晶膜をエピタキシャル成長することで、
上記フッ化カルシウム単結晶薄膜表面に垂直方向にc軸配向し、かつ、X線回折による極点図形が6回対称となり、面内で結晶ドメインが回転していない上記酸化亜鉛単結晶膜を得ることを特徴とする、単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法。 - 前記単結晶シリコン基板は、(111)面基板であることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法。
- 前記エピタキシャル成長は、分子線エピタキシャル法、電子ビーム蒸着法、またはレーザーアブレーション法、またはこれらの組み合わせを用いて行うことを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法。
- 前記フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さが15nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法。
- 前記フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さが100nmで、前記単結晶シリコン基板と前記酸化亜鉛単結晶膜とが電気的に絶縁できることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造方法。
- 超高真空槽内に、少なくとも単結晶シリコン基板を保持し加熱する基板加熱装置と、
フッ化カルシウムを入れた坩堝からなりフッ化カルシウム分子線を発生させるフッ化カルシウム分子線源と、
亜鉛を入れた坩堝からなり亜鉛分子線を発生させる亜鉛分子線源と、
高周波放電ガンを用いて酸素ラジカルを発生させる酸素ラジカル源と、
が設けられている単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造装置であって、
請求項1〜5に記載の方法を実施することを特徴とする、単結晶シリコン基板上の酸化亜鉛単結晶膜の製造装置。 - 単結晶シリコン基板と、該単結晶シリコン基板上のフッ化カルシウム単結晶薄膜と、該フッ化カルシウム単結晶薄膜上の酸化亜鉛単結晶膜と、からなり、該酸化亜鉛単結晶膜は、上記フッ化カルシウム単結晶薄膜表面に垂直方向にc軸配向しており、かつ、X線回折による極点図形が6回対称であり、該酸化亜鉛単結晶膜の面内で結晶ドメインが回転していないことを特徴とする、積層構造。
- 前記単結晶シリコン基板は、(111)面基板であることを特徴とする、請求項7に記載の積層構造。
- 前記フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さが15nm以上であることを特徴とする、請求項7に記載の積層構造。
- 前記フッ化カルシウム単結晶薄膜の厚さが100nmで前記単結晶シリコン基板と前記酸化亜鉛単結晶膜とが電気的に絶縁されることを特徴とする、請求項7に記載の積層構造。
- 前記酸化亜鉛単結晶膜の室温でのフォトルミネッセンスにおいて、欠陥に基づく1.5〜2.5eVの深い準位からの発光が観測されないことを特徴とする、請求項7に記載の積層構造。
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