JP4057870B2 - 酸素ガスバリアー材および多層成形物 - Google Patents
酸素ガスバリアー材および多層成形物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性に優れた酸素ガスバリアー材に関する。さらに、本発明は、生分解性に優れた酸素ガスバリアー材からなる層を含む多層成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素ガスバリアー性を有するフィルムや包装材は、アルミニウム箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどを材料として製造されてきた。
【0003】
アルミニウム箔は、酸素ガスバリアー性は優れているものの、単独ではピンホールが生じやすいため、ラミネートフィルムの中間層として利用されている。しかし、アルミニウム箔を利用したフィルムは不透明であるため、内容物が見えにくく、また、フィルムの焼却後に残渣として残ってしまうという問題もある。
【0004】
ポリ塩化ビニリデンは、高湿下においても酸素ガスバリアー性に優れた材料である。しかし、ポリ塩化ビニリデンを含むフィルムを一般廃棄物として焼却する場合には、塩化水素ガスやダイオキシンの発生の原因となるという問題がある。
【0005】
完全けん化の未変性ポリビニルアルコールは、吸湿量が少ない場合には、高い酸素ガスバリアー性を有している。しかし、基質材料として利用されることの多いポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどとの接着性が低いという問題がある。
【0006】
また、特許文献1には、α−オレフィン単位を有するポリビニルアルコールが酸素ガスバリアー性に優れていることが開示されている。
【0007】
しかし、これらの酸素ガスバリアー性を有する材料は、いずれも生分解性を有しておらず、食品リサイクル法が施行された現在、食品の包装材としてこれらの材料を使用することには問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−204217号公報(第2頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生分解性に優れた酸素ガスバリアー材を提供することを目的とする。さらに、本発明は、生分解性に優れた酸素ガスバリアー材からなる層を含む多層成形物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
酸素ガスバリアー性に優れた水酸基を多く有するポリビニルアルコールが、酸素ガスバリアー性に優れていることは公知である。したがって、水酸基を多く含むグルコース基などからなる糖類、デンプン、セルロースなどは、優れた酸素ガスバリアー性を有するものと推察されるが、糖類、デンプン、セルロースなどには熱可塑性がなく、柔軟な製膜性がない。
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、デンプンの主鎖中の少なくとも一部に、式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基、式(2):−CH2−(C=O)−CHR1−O−で表わされる基および式(3):−((O−R2)x−(O−(C=O)−R3)y)m−Oz−で表わされる基からなる群から選択された少なくとも1種の基を導入してなる加水分解縮重合デンプン(式(2)中、R1は水素原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示し、式(3)中、R2は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;R3は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示す)が、熱可塑性および酸素ガスバリアー性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、デンプンの主鎖中の少なくとも一部に、式(1)、式(2)および式(3)で表わされる基からなる群から選択された1種以上の基を導入してなる加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材からなる層を少なくとも1層含む多層成形物に関する。
【0013】
本発明の酸素ガスバリアー材は、生分解性に優れた材料である。したがって、本発明の酸素ガスバリアー材によれば、酸素ガスバリアー性および生分解性に優れた多層成形物を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の酸素ガスバリアー材は、デンプンの主鎖中の一部に式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基、式(2):−CH2−(C=O)−CHR1−O−で表わされる基、式(3):−((O−R2)x−(O−(C=O)−R3)y)m−Oz−で表わされる基からなる群から選択された少なくとも1種の基を導入してなる熱可塑性加水分解縮重合デンプンからなる。式(2)中、R1は水素原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示し、式(3)中、R2は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;R3は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;zは1または2;mは1〜3100の整数を示す。加水分解縮重合デンプンは、式(10):−G−Mn−で表わされる繰返し単位を有する。Gは、グルコースの1位および4位の水酸基を除去した2価の基を示す。Mは、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基;nは1以上の整数;nが2以上の整数の場合、複数のMは相互に同一であっても異なってもよい。
【0015】
酸素ガスバリアー材の酸素ガスバリアー性は、酸素透過量(OTR)(単位:cc/m2・day・atm、以下、この単位を「CC」と略記する)によって評価することができる。酸素透過量は、たとえば、試験体を温度20℃、相対湿度60%の条件下に3日間放置したのち、測定することができる。本発明の酸素ガスバリアー材は、好ましくは15CC未満、より好ましくは10CC未満の酸素透過量を示す。酸素ガスバリアー材の厚さを大きくすることにより、酸素透過量を低減させることができる。
【0016】
式(1)で表わされる基、すなわち、炭酸基を形成する化合物としては、炭酸ガス、または、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムなどの加熱されることにより炭酸ガスを放出する炭酸化物などを使用することができる。
【0017】
式(2)中のR1としては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1以上(通常は3以下)のアルキル基;フェニル基などの炭素数6以上(通常は8以下)のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1以上(通常は3以下)のアルコキシ基がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、加水分解縮重合デンプンの酸素ガスバリアー性が高くなることから、たとえば、R1は、炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。
【0018】
式(2)で表わされる基としては、たとえば、ジメチルケトン基(R1が水素原子)、エチルメチルケトン基(R1がメチル基)、メチルメトキシメチルケトン基(R1がメトキシ基)が好ましい。
【0019】
式(2)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(11):X−O−CH2−CH(OH)−CHR1−O−Yで表わされる化合物(XおよびYは、それぞれ、水素原子またはアシル基を示す)がある。たとえば、グリセリン、1−メチルグリセリンなどの1−アルキルグリセリン、1−メトキシグリセリンなどの1−アルコキシグリセリン、または、これらのエステルがある。グリセリンまたはそのエステルは、デンプンの主鎖中に導入されてジメチルケトン基(式(2)中のR1が水素原子)を形成する。1−アルキルグリセリンおよびそのエステルは、デンプンの主鎖中に導入されてα−アルキルメチルケトン基(式(2)中のR1がアルキル基)を形成する。1−アルコキシグリセリンおよびそのエステルは、デンプンの主鎖中に導入されてアルコキシメチルメチルケトン基(式(2)中のR1がアルコキシ基)を形成する。エステルとしては、たとえば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪族有機酸などのグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリドなど)がある。エステルを使用する場合、反応により遊離する有機酸(とくに低分子量の有機酸)が、最終製品の特性に悪影響を与えないように配慮することが好ましい。
【0020】
式(3)中のR2としては、たとえば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基などの炭素数1以上(通常は12以下)の直鎖状のアルキレン基;フェニレン基、ビフェニレン基、ビフェニレンアルキレン基(たとえば、ビフェニレンメチレン基、2,2−ビフェニレンプロピレン基)などの炭素数6以上(通常は15以下)のアリーレン基がある。
【0021】
式(3)中のR3としては、たとえば、メチレン基、1,1−エチレン基、1,1−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,1−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基などの炭素数1以上(通常は12以下)のアルキル基を有するアルキレン基;フェニレン基、ビフェニレンアルキレン基(たとえば、ビフェニレンメチレン基、2,2−ビフェニレンプロピレン基)などの炭素数6以上(通常は15以下)のアリーレン基がある。
【0022】
デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、たとえば、R2およびR3は、それぞれ、炭素数4以下のアルキレン基であることが好ましい。また、mは1〜10であることが好ましい。さらに、R3がアリーレン基である加水分解縮重合デンプンより、アルキレン基である加水分解縮重合デンプンの方が、柔軟性および生分解性が高い傾向がある。
【0023】
式(3)で表わされる基としては、式(4):−(O−(C=O)−R3)m−で表わされる基(x=0、y=1、z=0)、式(5):−(O−(C=O)−R3)m−O−で表わされる基(x=0、y=1、z=1)、式(6):−(O−R2)m−で表わされる基(x=1、y=0、z=0)、式(7):−(O−R2−O−(C=O)−R3)m−で表わされる基(x=1、y=1、z=0)、式(8):−(O−R2)m−O−で表わされる基(x=1、y=0、z=1)および式(9):−(O−R2−O−(C=O)−R3)m−O−で表わされる基(x=1、y=1、z=1)がある。
【0024】
式(4)で表わされる基としては、脂肪族エステル基(R3がアルキレン基)、芳香族エステル基(R3がアリーレン基)があり、モノエステル基(m=1)、ジエステル基(m=2)、トリエステル基(m=3)、ポリエステル基(mが2〜10の整数)がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、炭素数が4以下の脂肪族モノアルキレンエステル基であることが好ましい。
【0025】
式(4)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(12):H−(C=O)−R3−(O−(C=O)−R3)m-1−OHで表わされる化合物がある。
【0026】
式(4)で表わされる基のうち、脂肪族モノエステル基(R3がアルキレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシアセトアルデヒド、ヒドロキシエチルアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド、グリセルアルデヒドなどのヒドロキシアルキルアルデヒドがある。式(4)で表わされる基のうち、芳香族モノエステル基(R3がアリーレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシメチルベンジルアルデヒド、ヒドロキシエチルベンジルアルデヒド、ヒドロキシプロピルベンジルアルデヒドなどのヒドロキシアルキルアリールアルデヒドがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、ヒドロキシアセトアルデヒド、ヒドロキシエチルアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド、グリセルアルデヒドなどの炭素数が4以下のヒドロキシアルキルアルデヒドであることが好ましい。
【0027】
式(4)で表わされる基のうち、ジエステル基(m=2)、トリエステル基(m=3)、ポリエステル基(mが2〜10の整数)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシアセトアルデヒドモノ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドジ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドトリ乳酸エステル、ヒドロキシアセトアルデヒドポリ乳酸エステルなどのヒドロキシアルキルアルデヒドと脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのエステルがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、ヒドロキシアセトアルデヒドモノ乳酸エステルであることが好ましい。
【0028】
式(5)で表わされる基としては、脂肪族エステルエーテル基(R3がアルキレン基)、芳香族エステルエーテル基(R3がアリーレン基)があり、モノエステルエーテル基(m=1)、ジエステルエーテル基(m=2)、トリエステルエーテル基(m=3)、ポリエステルエーテル基(mが2〜10の整数)がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、炭素数が4以下のモノアルキレンエステルエーテル基であることが好ましい。
【0029】
式(5)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(13):H−(O−(C=O)−R3)m−OHで表わされる化合物がある。
【0030】
式(5)で表わされる基のうち、脂肪族エステルエーテル基(R3がアルキレン基)を形成する化合物としては、たとえば、α−オキシプロピオン酸(乳酸)、β−オキシプロピオン酸、α−オキシブタノイック酸、β−オキシブタノイック酸、γ−オキシブタノイック酸などのヒドロキシアルキルカルボン酸およびその縮重合物(たとえば、ポリα−オキシプロピオン酸)がある。式(5)で表わされる基のうち、芳香族モノエステルエーテル基(R3がアリーレン基)を形成する化合物としては、たとえば、ヒドロキシメチルベンジルカルボン酸、ヒドロキシエチルベンジルカルボン酸、ヒドロキシプロピルベンジルカルボン酸などのヒドロキシアルキルアリールカルボン酸がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、α−オキシプロピオン酸(乳酸)、β−オキシプロピオン酸、α−オキシブタノイック酸、β−オキシブタノイック酸、γ−オキシブタノイック酸などの炭素数が4以下のヒドロキシアルキルカルボン酸であることが好ましい。
【0031】
式(6)で表わされる基としては、モノアルキルエーテル基(R2がアルキレン基、m=1)、ジアルキルエーテル基(R2がアルキレン基、m=2)、トリアルキルエーテル基(R2がアルキレン基、m=3)、ポリアルキルエーテル基(R2がアルキレン基、mが2〜3100の整数、とりわけ4〜3100の整数)、モノアリールエーテル基(R2がアリーレン基、m=1)、ジアリールエーテル基(R2がアリーレン基、m=2)、トリアリールエーテル基(R2がアリーレン基、m=3)、ポリアリールエーテル基(R2がアリーレン基、mが2〜10の整数)がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、炭素数が4以下のモノアルキルエーテル基であることが好ましい。
【0032】
式(6)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(14):H−(O−R2)m−Hで表わされる化合物がある。
【0033】
式(6)で表わされる基のうち、アルキルエーテル基(R2がアルキレン基、m=1)を形成する化合物としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコールなどのアルコールがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどの炭素数が4以下のアルキルアルコールであることが好ましい。
【0034】
式(7)で表わされる基としては、モノアルキレンエステル基(R2がアルキレン基、m=1)、ジアルキレンエステル基(R2がアルキレン基、m=2)、トリアルキレンエステル基(R2がアルキレン基、m=3)、ポリアルキレンエステル基(R2がアルキレン基、mが2〜10の整数)、モノアリーレンエステル基(R2がアリーレン基、m=1)、ジアリーレンエステル基(R2がアリーレン基、m=2)、トリアリーレンエステル基(R2がアリーレン基、m=3)、ポリアリーレンエステル基(R2がアリーレン基、mが2〜10の整数)がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、R2およびR3の炭素数が、それぞれ、4以下のモノアルキレンエステル基であることが好ましい。
【0035】
式(7)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(15):H−(R2−O−(C=O)−R3)m−OHで表わされる化合物がある。
【0036】
式(7)で表わされる基のうち、アルキルエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=1)、ジアルキルエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=2)、トリアルキルエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=3)、ポリアルキルエステルエーテル基(R2がアルキレン基、mが2〜10の整数)としては、たとえば、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、ジ乳酸エチルエステル、トリ乳酸エチルエステル、ポリ乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル、ジ乳酸プロピルエステル、トリ乳酸プロピルエステル、ポリ乳酸プロピルエステル、乳酸ブチルエステル、ジ乳酸ブチルエステル、トリ乳酸ブチルエステル、ポリ乳酸ブチルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸エチルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸プロピルエステル、α−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、ジα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、トリα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステル、ポリα−ヒドロキシブタノイック酸ブチルエステルなどのヒドロキシ酸のアルキルエステルがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステルであることが好ましい。
【0037】
式(8)で表わされる基としては、モノアルキルジエーテル基(R2がアルキレン基、m=1)、ジアルキルジエーテル基(R2がアルキレン基、m=2)、トリアルキルジエーテル基(R2がアルキレン基、m=3)、ポリアルキルジエーテル基(R2がアルキレン基、mが2〜10の整数)、モノアリールジエーテル基(R2がアリーレン基、m=1)、ジアリールジエーテル基(R2がアリーレン基、m=2)、トリアリールジエーテル基(R2がアリーレン基、m=3)、ポリアリールジエーテル基(R2がアリーレン基、mが2〜10の整数)がある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、炭素数が4以下のモノアルキルジエーテル基であることが好ましい。
【0038】
式(8)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(16):H−R4−(C=O)−OHで表わされる化合物、式(17):H−(O−R2)m−OHがある。−R4−CH2−がR2に相当する。
【0039】
式(8)で表わされる基、すなわち、アルキルエーテル基を形成する化合物としては、たとえばプロピオン酸、ブタノイック酸(酪酸、イソ酪酸)、ペンタノイック酸、ヘキサノイック酸、ラウリル酸、オレイル酸、ステアリル酸などの脂肪族カルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコールコポリマーがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、プロピオン酸、ブタノイック酸(酪酸、イソ酪酸)などの炭素数が4以下のアルキルカルボン酸であることが好ましい。
【0040】
式(9)で表わされる基としては、モノアルキレンエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=1)、ジアルキレンエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=2)、トリアルキレンエステルエーテル基(R2がアルキレン基、m=3)、ポリアルキレンエステルエーテル基(R2がアルキレン基、mが2〜10の整数)、モノアリーレンエステルエーテル基(R2がアリーレン基、m=1)、ジアリーレンエステルエーテル基(R2がアリーレン基、m=2)、トリアリーレンエステルエーテル基(R2がアリーレン基、m=3)、ポリアリーレンエステルエーテル基(R2がアリーレン基、mが2〜10の整数)などがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、R2およびR3の炭素数が、それぞれ、4以下のモノアルキレンエステルエーテル基であることが好ましい。
【0041】
式(9)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、式(18):H−R2−O−(C=O)−R5−(C=O)−O−Hで表わされる化合物がある。R5は、−R5−CH2−が式(3)中のR3に相当する。
【0042】
式(9)で表わされる基を形成する化合物としては、たとえば、シュウ酸モノメチルエステル、シュウ酸モノエチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノプロピルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、コハク酸エチルエステル、コハク酸プロピルエステル、コハク酸ブチルエステル、フマール酸エチルエステル、コハク酸プロピルエステル、フマール酸ブチルエステル、アジピン酸エチルエステル、アジピン酸プロピルエステル、アジピン酸ブチルエステルなどのジカルボン酸アルキルエステルがある。デンプンに由来する水酸基が緻密構造をとる場合に、酸素分子の拡散速度が低くなり、優れた酸素ガスバリアー性が得られることから、シュウ酸モノメチルエステル、シュウ酸モノエチルエステルなどのR2およびR3の炭素数が、それぞれ、4以下のアルキルジカルボン酸エステルであることが好ましい。
【0043】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物または式(3)で表わされる基を形成する化合物(式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)または式(9)で表わされる基を形成する化合物)とを、反応させることにより製造することができる。
【0044】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、デンプンの主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の1種または2種以上を導入されてなることができる。式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の2種以上を導入されてなる加水分解縮重合デンプンとしては、式(1)で表わされる基と式(2)または式(3)で表わされる基とを有する加水分解縮重合デンプン;式(2)で表わされる基と式(3)で表わされる基とを有する加水分解縮重合デンプン;式(2)で表わされる2種以上の基を有する加水分解縮重合デンプン;式(3)で表わされる2種以上の基を有する加水分解縮重合デンプン;式(1)で表わされる基、式(2)で表わされる基および式(3)で表わされる基を有する加水分解縮重合デンプンがある。
【0045】
デンプンとしては、一般に使用されるデンプンを原料として使用することができる。デンプンは、たとえば、大麦、ライ麦、カラス麦、小麦、米およびとうもろこしなどの穀類、じゃがいもおよびタピオカなどのいも類から生産されている。原料となるデンプンの種類は、とくに限定されないが、とうもろこしデンプンは経済性に優れる点で好ましい。
【0046】
デンプンの分子量は、たとえば約20,000,000と非常に巨大で、種類により異なる。
【0047】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、たとえば、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物、式(2)で表わされる基を形成する化合物および式(3)で表わされる基を形成する化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物とを、水の存在下、100〜350℃で反応させること、または、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、反応させることにより製造することができる。反応温度が低すぎると、反応率が低下し、高すぎると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する場合がある。
【0048】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下(たとえば、温度100〜350℃、好ましくは135〜155℃、反応最高圧力7.48〜29.4MPa、好ましくは15.7〜23.5MPaの条件下)で、反応させることにより、デンプンの主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を導入することができる。存在させる炭酸ガスは、式(1)で表わされる基を形成する化合物としても作用する。炭酸ガスは、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa以上の条件下で超臨界状態となり、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa未満の条件下および温度31.1℃未満、圧力7.48MPa以上の条件下で亜臨界状態となる。超臨界状態または亜臨界状態の炭酸ガスは、デンプンの加水分解反応を促進するとともに、式(1)で表わされる基を形成する化合物として、加水分解したデンプンとの脱水縮重合反応に寄与し、また、架橋剤として架橋反応にも寄与する。炭酸ガスの使用量は、水を基準として、たとえば、好ましくは0.1〜3重量%とすることができる。炭酸ガスは、デンプンの分解反応の際、触媒的に作用するので、微量でも効果を発揮する。
【0049】
反応最高圧力は、たとえば、76〜300kg/cm2(=7.5〜29.4MPa)、好ましくは160〜240kg/cm2(=15.7〜23.5MPa)とすることができる。低圧すぎると、反応率が低下する。高圧すぎると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する場合がある。反応時間は、たとえば1〜10分間、好ましくは3〜5分間とすることができる。長時間すぎると、得られる加水分解縮重合デンプンが着色し、分子量が著しく低下、脆化する場合がある。短時間すぎると反応率が低下し、充分な性能を有する加水分解縮重合デンプンが得られない場合がある。
【0050】
水の使用量は、たとえばデンプン100重量部(水分を除く)に対してデンプン中に含まれる水分(通常12〜13重量%)と併せて30〜80重量部、好ましくは50〜70重量部とする。水の使用量が少ないとデンプンの反応率が低下する。水の使用量が多すぎると脱水縮重合反応率が低下し、分子量の回復が少なくなり、得られる加水分解縮重合デンプンの分子量が低下する傾向がある。また、加水分解縮重合デンプンを回収するための脱水に必要なエネルギーが大きくなり経済的に好ましくない。
【0051】
デンプンは水の存在下で、高圧かつ高せん断力下、加熱することにより加水分解させることができる。デンプンの加水分解を高圧で短時間に行なわせ、その後引き続き脱水縮重合反応を行なわせるために、デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との反応には、脱水用ベント付き押出し機形式の連続反応機を使用することが好ましい。反応機としては、押出し機、たとえば、2ベント付き押出し機、または3ベント付き押出し機を使用することが好ましい。使用するスクリューは、好ましくは、供給部のみ食い込みをよくするため2軸とし、この後からダイまでは1軸で構成される。たとえば、3ベント付き押出し機は、好ましくは、スクリュー供給部、せん断混練り圧縮部、解放ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部から構成される。
【0052】
反応機として押出し機を使用する場合、たとえば、100〜250kg/cm2(=9.8〜24.5MPa)のノズル前圧力で押出すことが好ましい。
【0053】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、架橋剤により架橋されていることができる。
【0054】
架橋剤としては、たとえば、リン酸類、多価カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類、エポキシ、酸無水物、イソシアネート、シラン化物などを使用することができる。架橋剤としては、たとえば、トリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸;アジピン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、フタル酸カルシウム、コハク酸カルシウムなどの多価カルボン酸塩;乳酸などのヒドロキシカルボン酸;乳酸カルシウムなどのヒドロキシカルボン酸塩;炭酸ガス;重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウムなどの重炭酸塩;モノグリシジルエーテルなどのエポキシ;無水コハク酸、無水マレイン酸などの酸無水物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン2,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート;ビニルトリメチルシランなどのシラン化物;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリスアクリロイル−s−トリアジンがある。架橋剤は、1種を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0055】
加水分解縮重合デンプンに架橋剤を添加し、加熱(たとえば100〜180℃)して混練することにより、加水分解縮重合デンプンを架橋することができる。架橋剤の添加量は、架橋する前の加水分解縮重合デンプンを基準として、0.01〜3重量%が好ましい。架橋剤の添加量が少ないと、加水分解縮重合デンプンの水膨潤性を抑制し、耐水性を向上させる効果が小さい傾向があり、加水分解縮重合デンプンが水に溶解してしまい、水膨潤性が無限大となる場合がある。架橋剤の添加量が多すぎると、加水分解縮重合デンプンの熱可塑性および流動性が低下し、加工性が低下する場合がある。
【0056】
押出し機を使用し、デンプンと、式(1)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、炭酸ガス)とを、水の存在下で反応させる場合、ならびに、デンプンと、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、水および炭酸ガスの存在下で反応させる場合、たとえば、ノズル前圧力を160kg/cm2(=15.7MPa)以上に維持し、大気中に瞬時に押出して急激な脱水を起こさせることにより、グルコース単位のヒドロキシメチル基間の炭酸ガスの架橋を表面などの一部を主体に起こさせることができる。この部分的な炭酸架橋により、充分な架橋密度を有し、軟化点以上でチキソトロピー性を示す加水分解縮重合デンプンを得ることができる。この架橋反応は、ヒドロキシメチル基間における脱水による架橋反応であるため、より急激に脱水されるほど、すなわち、より高圧からより急激に減圧されるほど、加水分解縮重合デンプンの架橋密度が高くなり、水膨潤性が低く、耐水性が高くなり、加水分解縮重合デンプンが膠着しにくくなる。
【0057】
たとえば、押出し機のダイスに接触するホットカッターにより切断して得られる架橋された加水分解縮重合デンプンのペレットは、若干の冷却用空気を吹き付けられながら落下して、たとえば1m下に設置された受け皿に留まった状態でも、膠着しないので、そのまま圧送エジェクターにより搬送することができる。また、このペレットを使用し、インフレーション装置により、製膜中に、たとえばダイスから1m後方の風船状フィルムを両側から加圧密着させても、膠着しない。架橋された加水分解縮重合デンプンが、膠着しにくいのは、架橋により、可逆的チキソトロピー性を有するようになったためと考えられる。
【0058】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを、前記各条件下で反応させることによって、デンプンの主鎖の加水分解反応と、加水分解されたデンプンと式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との脱水縮重合とが、連続しておこり、デンプンの主鎖中の一部に式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基が導入される。デンプンの主鎖の加水分解反応とともに、デンプンの分岐が切断されて、デンプンの分子量が減少する。これに伴い、デンプンが直鎖状に近くなり、さらに式(1)、式(2)または式(3)で表わされる柔軟な線状有機基が導入されることによって、吸湿性が著しく大きいというデンプンの欠点が改良されるとともに、熱可塑性および柔軟性が付与されるものと考えられる。すなわち、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の導入により、剛直なグルコース連鎖からなるデンプンの主鎖中の一部に蝶番のような柔軟な部分が存在することになり、主鎖が柔軟になる。柔軟性を増した主鎖は、小さな糸毬状になりやすい。糸毬状になった主鎖は、ほかの主鎖との絡みが少なくなり、結果として主鎖間の滑りがよくなる。この現象が、加水分解縮重合デンプンの熱可塑性として現れるものと考えられる。
【0059】
式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物の一部は、グルコース単位の水酸基、とりわけヒドロキシメチル基の水酸基と脱水反応し、側鎖を形成し、加水分解縮重合デンプンの熱可塑性を向上させる。
【0060】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、たとえば、重量平均分子量が30000〜500000、好ましくは50000〜200000であることができる。分子量が低い加水分解縮重合デンプンは、機械的物性が低い傾向があり、高い加水分解縮重合デンプンは、流動性が低く、成形しにくい場合がある。
【0061】
加水分解縮重合デンプンの分子量は、デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物とを反応させる際の反応温度を高くすることにより、または、反応圧力を高くすることにより、低くなる傾向がある。
【0062】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達した水分率が1〜6重量%であることが好ましい。
【0063】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、25℃の水中に1時間浸漬後の膨潤率が、好ましくは0〜100%、より好ましくは0〜80%である。前記膨潤率が高い加水分解縮重合デンプンは耐水性が低く、また、ペレットが膠着しやすい傾向があり、酸素ガスバリアー性に劣る。前記膨潤率が低い加水分解縮重合デンプンは、流動性が低い傾向があるが、酸素ガスバリアー性は高く、好ましい。前記膨潤率は、たとえば、加水分解縮重合デンプンのグルコース単位のヒドロキシメチル基間を架橋することにより、低くすることができる。
【0064】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、チキソトロピー性を有することが好ましい。たとえば、架橋された加水分解縮重合デンプンは可逆的チキソトロピー性を示す。架橋された加水分解縮重合デンプンは、単に軟化点以上に加熱しただけでは、架橋が切れないので、表面張力を小さくするために球状になるということがなく、原形を維持するが、この状態で僅かな荷重を加えると容易に流動、変形する。変形は荷重を取り除くと維持され、可逆的チキソトロピー性を示す。
【0065】
本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、デンプンが粒子として存在しないため、透明性に優れている。本発明で使用する加水分解縮重合デンプンは、たとえば、ホットプレスにより作成した1mm厚さのシートについて分光光度計により求められるヘイズが30以下と優れた値を示す。ヘイズは、たとえば、スガ試験機(株)製 HGM−2DPにより、Tt(全光線透過率(%))およびTd(拡散透過率(%))を測定し、ヘイズ(%)=Td÷Tt×100として算出することができる。本発明で使用する加水分解縮重合デンプンのシートは、水中に浸漬すると、部分的な膨潤性の差により、屈折率の部分差が生じ、光散乱を起こし、徐々に白濁してくるが、乾燥することにより、屈折率の局部差がなくなり、再度透明となる。
【0066】
デンプンの主鎖中の一部に式(1)で表わされる基が導入されたことは、赤外分光光度計による測定において、デンプンには認められない炭酸基に特有のCO伸縮振動による1,745〜1,755cm-1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。
【0067】
デンプンの主鎖中の一部に式(2)で表わされる基が導入されたことは、赤外分光光度計による測定において、式(2)で表わされる基に特有のCO伸縮振動による1,715〜1,725cm-1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。この吸収帯はデンプンおよび式(2)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、グリセリン)には認められない。
【0068】
デンプンの主鎖中の一部に式(4)、式(5)、式(7)および式(9)で表わされる基(y=1)が導入されたことは、得られた加水分解縮重合デンプンから、溶媒(たとえば、オルトクレゾール)で、未反応の式(4)、式(5)、式(7)および式(9)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、ポリ乳酸)を抽出したのち、赤外分光光度計による測定において、デンプンには認められないエステル基に特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm-1の吸収帯が測定されることにより、確認することができる。また、R3が1,1−エチレン基である場合(たとえば、前記式(5)で表わされる基を形成する化合物としてポリα−オキシプロピオン酸を使用する場合)には、得られた加水分解縮重合デンプンから、未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、NMR測定において、ポリα−オキシプロピオン酸のメチル基に特有のピークが測定されることにより、確認することができる。
【0069】
デンプンの主鎖中の一部に式(6)、式(7)、式(8)または式(9)で表わされる基(x=1)が導入されたことは、得られた加水分解縮重合デンプンから、溶媒(たとえば、沸騰水)で、未反応の式(6)、式(7)、式(8)および式(9)で表わされる基を形成する化合物(たとえば、n−プロピルアルコール)を抽出したのち、NMR測定において、たとえば、R2が1,3−プロピレン基である場合には、デンプンには認められないプロピルアルコールのメチレン基に特有のピークが測定されることにより、確認することができる。
【0070】
熱可塑性の点より、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基が、デンプンのグルコース単位100モルに対して、合計の化学式量で、50〜100、とりわけ70〜100となる割合で導入されてなる加水分解縮重合デンプンが好ましい。式(1)、式(2)および式(3)で表わされる基の導入量が少ないと、加水分解縮重合デンプンの熱可塑性が低く、多いと最終製品から式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物がブリードアウトする場合がある。
【0071】
加水分解縮重合デンプンの主鎖中への式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の導入量が、赤外分光光度計で僅かに観察される量、すなわち、数%でも、その効果が現れる。感度の低い光度計ではショルダーとして観察されることもある。式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基の主鎖中への導入量が多くなるにつれて、加水分解縮重合デンプンの熱可塑性が向上する。式(1)、式(2)および式(3)で表わされる基の導入量が少ないと、加水分解縮重合デンプンが硬くなり、多いと柔らかくなる傾向がある。
【0072】
デンプンと、式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物との反応率は、加水分解縮重合デンプンのTGA・DSC分析によって測定される減量率および水分含有量から、未反応の式(1)、式(2)または式(3)で表わされる基を形成する化合物の量を算出することにより、推測することができる。
【0073】
一例として、70重量%のデンプンおよび30重量%のグリセリンを配合し、製造した加水分解縮重合デンプンについて、分解開始温度(270℃近辺)まで一定の速度で定率減量を行なった。この減量率が水分減量率を含め、約15重量%であった。加水分解縮重合デンプンの恒量平衡に達した水分含有率が4〜5重量%であることから、約10重量%の未反応のグリセリンが残存し、残りの約20重量%のグリセリンが反応し、デンプンの主鎖中の一部に導入されるか、または、側鎖を形成したものと推測される。
【0074】
本発明の酸素ガスバリアー材には、一般に使用されるポリマー用添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、たとえば、アンカー剤、着色剤(顔料、染料)、抗菌剤、防臭剤、防腐剤、防虫剤、静電防止剤、耐光剤、耐熱剤、ブロッキング防止剤などの添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用することができ、または、2種以上を併用することもできる。これらの添加剤の使用に関しては用途により、食品としての特性、薬品としての特性、廃棄時の生分解性などに悪影響のないように配慮すべきである。
【0075】
本発明の酸素ガスバリアー材に脂肪族有機酸およびそのグリセリドなどの可塑剤を加えることにより、熱可塑性を向上させることができる。可塑剤の配合量を増加させることにより、さらに熱可塑性を向上させることができる。一般的には可塑剤の配合量が多くなるにつれて酸素ガスバリアー性が低下する傾向があるが、本発明の酸素ガスバリアー材の中でも、デンプンに由来するヒドロキシメチル基どうしが架橋している加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材は、部分的な架橋構造のために水分を吸収して膨潤することによる密度低下が小さく、高い酸素ガスバリアー性を維持することができる。
【0076】
とりわけ、デンプンに由来するヒドロキシメチル基どうしが架橋している加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材は、撥水性を示す。撥水性でない酸素ガスバリアー材を表面コーティング層に使用する場合には、空気中の水分を含有することによりデンプンに由来する水酸基が形成していた緻密構造の密度が低下し、酸素ガスバリアー性が低下することになる。しかし、デンプンに由来するヒドロキシメチル基どうしが架橋している酸素ガスバリアー材は、部分的な架橋構造のために水分を吸収して膨潤することによる密度低下が小さく、高い酸素ガスバリアー性を維持することができる。
【0077】
本発明の加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材は、フィルム、シート、パイプ、棒などの押出成形品、モールド成形品、ブロー成形品および射出成形品の原料として使用することができる。
【0078】
本発明の酸素ガスバリアー材を用いて、フィルムおよびシート成形品を製造するときには、たとえば、Tダイ法により押出し成形することにより、フィルムおよびシートを製造することができる。Tダイ法でフィルムまたはシートを製造する場合、得られるフィルムまたはシートの厚さは、押出し量と引き取り速度とを調節することにより、制御することができる。本発明の酸素ガスバリアー材のフィルムおよびシートは、インフレーション法によっても製造することができる。インフレーション法によってフィルムまたはシートを製造する場合には、操業上、粘度が、見かけ溶融粘度(MI)値で1〜10、とりわけ1〜5の酸素ガスバリアー材を用いることが好ましい。
【0079】
MI値は、180℃、荷重2.16kgの条件下で、2mm径のノズルから酸素ガスバリアー材を流出させ、10分間の流出量(g)を測定することにより求められる値である。
【0080】
本発明の酸素ガスバリアー材のフィルムまたはシートを製造する場合、押出し温度は、酸素ガスバリアー材の融点の上下20℃以内の範囲とすることが好ましく、たとえば、140〜180℃とすることが好ましい。
【0081】
Tダイ法またはインフレーション法で得られた本発明の酸素ガスバリアー材のフィルムまたはシートを延伸することにより、延伸フィルムまたは延伸シートを製造することができる。本発明の酸素ガスバリアー材のフィルムおよびシートを延伸する際の温度は、ガラス転移点以上、その30℃上までの範囲とすることが好ましい。
【0082】
本発明の酸素ガスバリアー材の未延伸シートを、たとえば、真空モールド成形することにより、モールド成形品を製造することができる。たとえば、厚さ0.2〜2mmのシートを赤外線ヒーターなどでガラス転移点以上に加熱し、真空モールド成形金型の上に移動し、金型から吸引することによりシートを金型の形に成形することができる。
【0083】
広く知られている生分解性樹脂であるポリ乳酸は、未延伸状態における引張破断伸度が常温(たとえば、25℃)で2〜3%と非常に小さく脆弱で実用に耐えず、また、真空モールド成形しても、変形の大きい部分は延伸されるが、金型の縁の部分は殆ど延伸されないため、未延伸部分が残り、この部分が脆弱で実用に耐えない。これに対して、本発明の加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材の未延伸シートは、引張破断伸度が常温で20%以上あり、未延伸部分も実用に供しても問題のない機械的物性を有する。
【0084】
本発明の酸素ガスバリアー材は、包装材などに有用である。
【0085】
ほかのポリマーと本発明の酸素ガスバリアー材で、多層成形物の少なくとも1層を共押し出し成形することにより、酸素ガスバリアー性を有する多層成形物とすることができる。本発明の酸素ガスバリアー材からなる層の厚さが大きいほど、多層成形物の酸素ガスバリアー性は高くなる。酸素ガスバリアー材からなる層の厚さは、2μm以上であることが好ましい。
【0086】
本発明の酸素ガスバリアー材を多層成形物の層として使用する場合には、基質材料と酸素ガスバリアー材との接着性を向上させるために、加水分解縮重合デンプンと基質材料のポリマーとのブレンドポリマーを接着層として使用することができる。
【0087】
基質材料は、とくに限定されず、たとえば、ポリ乳酸およびその変成物、ポリブチルサクシネートおよびその変成物、ポリカプロラクトンおよびその変成物、ポリビニルアルコールおよびその変成物ならびにポリヒドロキシブチルアジペートテレフタレートおよびその変成物、または、これらの混合物などの生分解性樹脂を用いることができる。
【0088】
接着層として使用する加水分解縮重合デンプンと基質材料(たとえば、生分解性樹脂)とのブレンドポリマーには、加水分解縮重合デンプンが好ましくは5〜95重量%、より好ましくは20〜80重量%含有される。加水分解縮重合デンプンの含有量が多くなると、生分解速度が大きくなり、機械的特性として柔らかくなる傾向がある。加水分解縮重合デンプンの含有量の好ましい範囲は目的とする生分解速度と柔らかさで異なり、適宜選択することができる。
【0089】
加水分解縮重合デンプンと基質材料(たとえば、生分解性樹脂)が相分離する場合には、両者のブレンドはミキシング機構を有する混練り機で行なうことが好ましい。ミキシングは充分に行なうことが好ましい。ブレンドが不足すると得られるブレンドポリマーの機械的物性が低下する原因となる。ブレンド効果の測定は、試料切片をヨウ素で染色し、マイクロX線アナライザーで染色したヨウ素の分布を撮影し、画像解析により、分散相面積相当の円の直径を算出し、規定することができる。
【0090】
加水分解縮重合デンプンと基質材料(たとえば、生分解性樹脂)とのブレンドポリマーは、分散相の平均直径が、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下に(通常は10μm以下に)、ミクロにブレンドされる。このようにミクロブレンドされたブレンドポリマーは、加水分解縮重合デンプンとブレンドする前の基質材料(たとえば、生分解性樹脂)よりも、融点が若干低下し、ブロードになる傾向がDTA・DSCにより認められた。基質材料として生分解性樹脂を使用したときのブレンドポリマーを、家庭用コンポスト機で生分解するとまず加水分解縮重合デンプンのみが生分解され、生分解性樹脂が3次元ネット構造をしていることが観察された。生分解性樹脂の生分解速度が大きくなる原因は、加水分解縮重合デンプンの生分解により、生分解性樹脂の表面積が著しく拡大されたためと推測される。
【0091】
たとえば、ポリ乳酸などのポリエステル系の生分解性樹脂は粘度の温度依存性が大きく、作業性がわるいという欠点がある。これに対して、本発明で使用する加水分解縮重合デンプンと生分解性樹脂とのブレンドポリマーは、理由は定かではないが、ポリエステル系の生分解性樹脂を含有する場合でも、粘度の温度依存性が小さく、取り扱いやすいという利点がある。
【0092】
一般にポリ乳酸などのポリエステル系の生分解性樹脂は、防湿して保管し、乾燥チッ素雰囲気中で使用しなければならない。これに対して、本発明で使用する加水分解縮重合デンプンと生分解性樹脂とのブレンドポリマーは粘度の水分依存性が小さく使用前に乾燥させる必要がなく、経済的である。
【0093】
加水分解縮重合デンプンと基質材料とのブレンドポリマーを多層成形物の接着層として使用する場合には、たとえば、ブレンドポリマーをコーティングする方法またはブレンドポリマーを直ラミネートする方法を用いてブレンドポリマーの層を形成させ、続けて加水分解縮重合デンプンをコーティングする方法または加水分解縮重合デンプンを直ラミネートする方法を用いて加水分解縮重合デンプンの層を形成させることにより、ブレンドポリマーを接着層として使用することができる。この接着層の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。ブレンドポリマーを接着層として使用した多層成形物から、加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材を剥離し、その剥離面を観察すると微細な破壊跡が観察されることから、ブレンドポリマーからなる接着層の効果を確認することができる。
【0094】
たとえば、基質材料が生分解性樹脂である場合には、ブレンドポリマーを接着層として使用し、基質材料上に本発明の酸素ガスバリアー材の層を形成させることにより、基質材料と同様に生分解性を有し、かつ酸素ガスバリアー性を有するフィルム状多層成形物を得ることができる。
【0095】
【実施例】
以下、本発明の詳細を実施例にて説明する。
【0096】
酸素透過量は、試験体を温度20℃、相対湿度60%の条件下に3日間放置したのち、測定した。
【0097】
撥水性は、加水分解縮重合デンプンからなる酸素ガスバリアー材の層上に滴下したイオン交換水液滴の接触角を測定することにより、調べた。接触角が小さいほど親水性であることを示し、接触角が180°であるとき、完全に撥水性であることを示す。
【0098】
実施例1
<式(2)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
とうもろこしデンプン100重量部、グリセリン50重量部、ブタンジオール10重量部およびデンプン中に含まれる通常12〜13重量%の水分と併せてイオン交換水70重量部を混合し、45mmトリプルベント付き1軸押出し機に供給した。各ベント口からは、それぞれ開放、水封ポンプ、油拡散ポンプで脱水した。押出し機のスクリューは、供給、混練り、圧縮、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、圧縮の過程を経るように設計し、通常の2軸押出し機に劣らない混練り効果を得られるようにした。
【0099】
スクリューの混練り効果は、無色透明ポリプロピレン100重量部にカーボンブラック含有ポリエチレン2重量部を混合し、混練り後、顕微鏡観察によりカーボンブラックの存在部分を比較することにより確認した。ポリエチレンはポリプロピレン中に約30μm程度の大きさでほぼ均一に分散されていることが光学顕微鏡観察により確認された。
【0100】
加熱最高温度150℃、圧力230kg/cm2(=22.5MPa)でデンプンを加水分解し、加水分解されたデンプンとグリセリンとを、引き続き、急激に開放し脱水縮重合させた。全滞留時間を3分、原料の供給速度を50kg/時間とした。生成した加水分解縮重合デンプンを100メッシュのフィルターで濾過後、直径1mmのノズルから押出し、ホットカッターでペレットに成形した。得られた加水分解縮重合デンプンぺレットは、MI値(180℃)が5と良好な熱可塑性を示した。
【0101】
得られた加水分解縮重合デンプンペレットより厚さ20μmのフィルムを作成し、フーリエ変換赤外分光光度計によるFT−IR測定を行なったところ、デンプンには認められない式(2)で表わされる基特有のCO伸縮振動による1,724.9cm-1の吸収帯が確認された。赤外分光光度計によるFT−IR測定の測定結果を図1に示す。比較のため得られた加水分解縮重合デンプンの赤外分光光度計によるFT−IR測定の測定結果と原料として使用したとうもろこしデンプンのフーリエ変換赤外分光光度計によるFT−IR測定の測定結果とを図2に対比して示す。
【0102】
図1および図2中、加水分解縮重合デンプンの3294cm-1の吸収は水素結合したO−H、2929cm-1の吸収はCH2基のC−H、1724.9cm-1の吸収はジメチルケトン基のC=O、1646cm-1の吸収は結晶水の存在を示す。図2中、とうもろこしデンプンの3295cm-1の吸収は水素結合したO−H、2929cm-1の吸収はCH2基のC−H、1645cm-1の吸収は結晶水の存在を示す。とうもろこしデンプンでは、ジメチルケトン基のC=Oの存在を示す1724.9cm-1付近の吸収はない。
【0103】
FT−IR測定には、パーキンエルマー社製フーリエ変換赤外分光光度計を使用した。
【0104】
<多層成形物の製造1>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの酸素透過量は3.7CCであった。一方、厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの酸素透過量は123CCであり、本発明の酸素ガスバリアー材を含むフィルムの酸素ガスバリアー性は非常に優れていることがわかった。
【0105】
<多層成形物の製造2>
MI値が2のポリブチレンサクシネートを内外層に,得られた加水分解縮重合デンプンを中間層にし、射出成形で内径15mm、中間層の厚さ0.1mm、外径16mmのパリソンを製造し、180℃で外径75mmにブロー成形した。厚さ0.21mmの底部の酸素透過量は3.3CCであり、酸素ガスバリアー性に優れていた。
【0106】
実施例2および3
<式(2)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
滞留時間を3分(実施例2)および5分(実施例3)としたほかは実施例1と同様にして、ペレットを成形したところ、実施例1と同様に、熱可塑性を有する式(2)で表わされる基が導入された加水分解縮重合デンプンであることが確認された。
【0107】
<シートの成形>
スリット0.5mmのTダイ押出し装置を使用してダイ温度160℃で押出し、膜厚約100μmの未延伸シートを製造した。得られたシートの酸素透過量は、いずれも0.057CCであり、酸素ガスバリアー性に優れていた。また引張破断強度および引張破断伸度は、以下の通りであり、実用に耐えられる強度を示した。温度20℃、相対湿度60%で24時間放置したのちの恒量水分率は、以下の通りであった。
【0108】
<フィルムの成形>
実施例3の未延伸シートを90℃のチャンバー温度で4倍延伸し、膜厚25μmの1軸延伸フィルムを製造した。得られたフィルムの酸素透過量は0.26CCであり、酸素ガスバリアー性に優れていた。引張破断強度は9.9N/mm2、引張破断伸度は25%で実用に耐えられる強度を示した。
【0109】
実施例4
<式(1)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
グリセリンの代りに炭酸ガスを発生する重炭酸ソーダ10重量部を用いて反応させたほかは、実施例1と同様にした。得られた加水分解縮重合デンプンは、赤外分光光度計による測定において、炭酸基特有のCO伸縮振動による1,745〜1,755cm-1の吸収帯が新たに発現することより、デンプンの主鎖中の一部に式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。この吸収帯は、デンプンには認められない。得られた加水分解縮重合デンプンのMI値は23であった。また、膨潤率は20%であった。
【0110】
<多層成形物の製造3>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。フィルム表面の接触角は92°であった。得られた多層フィルムに水滴を付着させ、水滴が付着した状態で測定した多層フィルムの酸素透過量は1.9CCであった。
【0111】
実施例5
<式(5)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
グリセリンの代りに、モノマーユニットに換算して同モル相当のポリα−オキシプロピロン酸を使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られた加水分解縮重合デンプンからオルトクレゾールで未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、赤外分光光度計による測定において、エステル基特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm-1の吸収帯が新たに発現したことにより、デンプンの主鎖中の一部に(O−(C=O)−CH(CH3))m−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。この吸収帯はデンプンには認められない。また、得られた加水分解縮重合デンプンから未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのちのNMR分析により、ポリα−オキシプロピオン酸のメチル基の存在を示すピークが検出された。
【0112】
<多層成形物の製造4>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの酸素透過量は12.3CCであった。
【0113】
実施例6
<式(6)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
グリセリンの代りに、同モルのイソプロピルアルコールを使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られた加水分解縮重合デンプンから沸騰水で未反応のイソプロピルアルコールを抽出したのち、NMR分析により、デンプンには認められないイソプロピルアルコールのメチル基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−C(CH3)H−CH2−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。
【0114】
<多層成形物の製造5>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの酸素透過量は9.5CCであった。
【0115】
実施例7
<式(5)および式(6)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
グリセリンの代りに、半分のモル数のn−プロピルアルコールと、モノマーユニットに換算して半分のモル数に相当するポリα−オキシプロピオン酸を使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られた加水分解縮重合デンプンから沸騰水で未反応のn−プロピルアルコールを抽出し、つぎにオルトクレゾールで未反応のポリα−オキシプロピオン酸を抽出したのち、NMR分析により、デンプンには認められないn−プロピルアルコールのメチレン基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−CH2−CH2−CH2−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。また、得られた加水分解縮重合デンプンは、赤外分光光度計による測定において、エステル基特有のCO伸縮振動による1,730〜1,740cm-1の吸収帯が新たに発現したことより、デンプンの主鎖中の一部に(O−(C=O)−CH(CH3))m−O−で表わされる基が導入されていることを確認することができた。
【0116】
<多層成形物の製造6>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの酸素透過量は14.9CCであった。
【0117】
実施例8〜11
<架橋反応>
実施例1で製造した加水分解縮重合デンプンに、トリポリリン酸ナトリウムを添加量を変えて添加し、1軸混練押出し機を使用し、130℃で混練し、ドライカッターでペレットを製造した。製造したペレットの水膨潤性を測定した結果は次の通りであった。水膨潤性の小さいペレット程,ホットカッターで造粒した際も膠着することがなかった。また、実施例1と同様にしてシートを製造した。
【0118】
<多層成形物の製造7〜10>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、実施例8〜11で得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。乾燥状態で測定した酸素透過量は全て20CC以下であった。多層フィルムに水滴を付着させた状態で測定した酸素透過量を次に示した。酸素透過量は、膨潤率に相関して大きくなった。
【0119】
実施例12
<モールド成形品の製造>
実施例8の加水分解縮重合デンプンを使用して厚さ0.1mmの未延伸シートを製造し、赤外線ヒーターで90℃(ガラス転移点以上)に加熱したのち、常温の真空モールド成形金型の上に移動し、金型の底部から真空ポンプで吸引することにより、シートを金型通りの形に成形し、刃付き金型でトリミングし、モールド成形品を製造した。金型の形状は底辺および開口部の陵のRは5mm、開口面が一辺5cm、底辺が一辺3cmの正方形で、深さを、それぞれ、2cm、4cmおよび6cmとした3個の金型が1cm間隔で並んだ金型を使用し、深さの違いによる絞りの違いを目視判定したところ、いずれの深さでも、このシートが破れたり、極端な肉薄部分が発生したりすることもなく、良好であった。底部の厚さは27μmであった。この底部の酸素透過量は0.31CCであり、酸素ガスバリアー性に優れたものであった。
【0120】
実施例13
<式(8)で表わされる基を有する酸素ガスバリアー材>
実施例1と同様にして、グリセリンの代りに、同モル数のn−ブタンジオールを使用して反応させたほかは実施例1と同様にした。得られた加水分解縮重合デンプンから沸騰水で未反応のn−ブタンジオールを抽出し、NMR分析により、デンプンには認められないn−ブタンジオールのメチレン基の存在を示すピークが検出され、デンプンの主鎖中の一部にO−CH2−CH2−CH2−CH2−O−で表わされる基が導入されたことを確認することができた。
【0121】
<多層成形物の製造11>
厚さ30μmのポリ乳酸延伸フィルムの上に、得られた加水分解縮重合デンプンとポリ乳酸とを50:50の重量比でブレンドしたポリマーからなる層を、0.5μmの厚さに直ラミネートし、さらにその上に、得られた酸素ガスバリアー材からなる層を3μmの厚さに直ラミネートして、多層フィルムを製造した。得られた多層フィルムの酸素透過量は11.6CCであった。
【0122】
軟化点、破壊温度
実施例1〜11および実施例13で得られた各酸素ガスバリアー材を、セイコー電子(株)製DSC6200およびセイコー電子(株)製SSC5200により分析した結果、軟化点は42〜80℃、破壊温度は278〜299℃であった。
【0123】
生分解性
実施例1〜11および実施例13で得られた各酸素ガスバリアー材からなるシートを、市販の家庭用コンポスト機に投入し、8時間ごとに定期的に一部サンプリングし、サンプルの減量を測定した。この減量率で、シートの生分解性を評価した。コンポスト処理温度を40〜50℃に保持し、コンポストの種菌用栄養分に小麦粉を使用した。いずれのサンプルについても、48時間後には、加水分解縮重合デンプンのサンプリングが不能となり、良好な生分解性を示した。
【0124】
【発明の効果】
本発明によれば、熱可塑性および生分解性に優れた酸素ガスバリアー材を製造することができる。本発明の酸素ガスバリアー材は、食品用の包装材などに使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で製造した加水分解縮重合デンプンのフーリエ変換赤外分光光度計による測定結果を示すチャートである。
【図2】本発明の実施例1で製造した加水分解縮重合デンプンおよび原料として使用したとうもろこしデンプンのフーリエ変換赤外分光光度計による測定結果を示すチャートである。
Claims (1)
- デンプンの主鎖中の少なくとも一部に、式(1):−O−(C=O)−O−で表わされる基、式(2):−CH 2 −(C=O)−CHR 1 −O−で表わされる基および式(3):−((O−R 2 ) x −(O−(C=O)−R 3 ) y ) m −O z −で表わされる基からなる群から選択された1種以上の基を導入してなる加水分解縮重合デンプン(式(2)中、R 1 は水素原子、炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基または炭素数1以上のアルコキシ基を示し、式(3)中、R 2 は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;R 3 は、炭素数1以上のアルキレン基または炭素数6以上のアリーレン基;xは0または1;yは0または1;x+yは1または2;mは1〜3100の整数;zは0または1を示す)からなる酸素ガスバリアー材からなる層を少なくとも1層含む多層成形物。
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