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JP4058769B2 - 鉄道車両ブレーキディスク用複合材料 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両に用いられる摩擦によって機械的に制動力を得るディスクブレーキ用アルミニウム合金複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両や自動車および自動二輪車などの機械的制動方式には、ブロックブレーキ、ドラムブレーキおよびディスクブレーキなどがあり、近年は車両の高速化や大積載化に伴い、ディスクブレーキが多用されるようになってきた。このディスクブレーキとは、ブレーキディスクとブレーキライニング(摩擦材)との摩擦によって制動力を得る装置で、鉄道車両の場合を例にあげれば、ドーナツ形の円盤状の摺動面と、その摺動面を後背部で支持し車輪などの回転部分に取りつける基部とによって構成され、走行時回転している摺動面にブレーキライニングを押し付けることにより制動力を得る。この摺動面を有する円盤形状の部品をブレーキディスクと称する。
【0003】
ブレーキディスクに用いられる材料は、制動時の摩擦による摩耗と、急激な温度上昇があるため、耐摩耗性、耐熱性、耐熱亀裂性が要求される。この熱亀裂とは、制動ごとに生ずる熱応力の繰り返しのために発生する熱疲労亀裂のことである。
【0004】
従来、このブレーキディスクには鋳鉄、鍛鋼、ステンレス鋼などの一体ものが使用されてきた。しかしながら、車両の高速化、地球環境保護のための省エネルギー対策としての軽量化、バネ下重量低減による乗り心地改善、等の要求からブレーキディスクにもアルミニウムやアルミニウム合金を使う動向が見られようになってきた。アルミニウムやアルミニウム合金は、鋳鉄や鍛鋼に比して、耐摩耗性、耐熱性、耐熱亀裂性のいずれをとっても劣るが、熱伝導度が良好なため発生した摩擦熱が速やかに放散するので、摺動面の温度上昇を鋼製のブレーキディスクよりはるかに低く抑えることが可能である。このため、耐熱性や耐熱亀裂性は、材料強度から推測されるほどには低下しない。しかし、強度が低いので耐摩耗性は大幅に劣り、アルミニウムやアルミニウム合金そのものをブレーキディスクに適用することは困難であるとされてきた。
【0005】
このようにアルミニウムが良好な熱伝導を有し、かつ軽量であることを活かしたブレーキディスクとして、アルミニウム合金のディスクまたはドラムの摺動面に、耐摩耗性のすぐれた 2〜4 %C、10〜30%Crの鉄合金をプラズマ溶射や鋳ぐるみ法にて被覆させたブレーキ部材の発明が特開昭60-89558号公報に示されている。しかしながらこの場合、被覆したFe-C-Cr合金層と基部のアルミニウム合金との弾性率や熱膨張係数の違いから、繰り返し使用によってその境界面で剥離を生じてくるという問題がある。
【0006】
また、アルミニウムそのものの耐摩耗性を向上させる方法として、特開昭59-173234号公報には、自動車や二輪車用を対象に粒子状や繊維状のAl23 、SiC、Si34 等のセラミックスを分散させたブレーキロータ(ディスク)の発明が提示されている。しかし、このような複合材料は、耐摩耗性にはすぐれているが曲げ性や靱性は劣り、また高価である。さらに、特開平8-176712号公報には、Al-Mg系アルミニウム合金の鋳造材にセラミックス粒子を分散させたブレーキディスクが、制動時にディスクが高温に曝されても耐え得る材料として提案されている。そのほか同様な提案が、特開平2-25538号公報、特開平3-47945号公報、特開平4-173936号公報にみられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記に提案されたブレーキディスク用アルミニウム合金材料は、鋳造によって製造されるものであり、高温強度に劣るという心配がある。
【0008】
本発明の目的は、高温強度、耐摩耗性、熱間鍛造性および切削加工性などに優れた鉄道車両のブレーキディスク用アルミニウム合金複合材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルミニウム合金複合材料の高温特性、耐摩耗性について研究を重ね、アルミニウム合金マトリックス中にAl-Fe金属間化合物を析出させると高温特性が向上すること、およびセラミックス粒子を分散させると耐摩耗性が向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
本発明の要旨は、次の(1)〜(3)のいずれかに示すブレーキディスク用複合材料にある。
【0011】
(1)Feを5.0〜10.0重量%と、Vを0.2〜3.0重量%とを含有し、残部Alおよび不純物からなり、かつ平均粒径が5μm以下のAl−Fe系金属間化合物が析出したアルミニウム合金マトリックスに、平均粒径が1〜20μmのセラミックス粒子が5〜30重量%分散していることを特徴とする高温強度に優れた鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
(2)Vの一部に代えて、Mo、Zr、Ti、Cr、MnおよびNiの中から選ばれた1種または2種以上を、Vと合計で0.2〜3.0重量%含有することを特徴とする、上記(1)の鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
【0012】
(3)セラミック粒子は、SiC、Al23、AlNおよびSi34の中から選ばれた1種または2種以上の粒子であることを特徴とする、上記(1)又は(2)の鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の複合材料におけるアルミニウム合金成分の量を限定した理由について説明する。
【0014】
Fe:
Feは、アルミニウムマトリックスにAl-Fe-X系金属間化合物を形成し、これらが微細かつ多量に分散することによって、常温強度および高温強度を高める効果がある。金属間化合物の平均粒径が5μmを超えると強度の向上効果がほとんどなくなる。Fe含有量が5.0重量%未満では金属間化合物粒子の量が不足して強度が十分でない。また、10.0重量%を超えると強度を高める効果が飽和するとともに延性および靱性が低下する。したがって、Fe含有量を5.0〜10.0重量%とした。
【0015】
V:
Al-Fe-V系金属間化合物を形成し、金属間化合物の熱的安定性を高める。また、一部はAl-V系金属間化合物として分散する。この結果、強度、特に高温強度を高める。の含有量は、0.2重量%未満ではその効果がなく、3.0重量%を超えるとそれらの効果が飽和するとともに延性および靭性が低下する。したがって、の含有量は、0.2〜3.0重量%とした。
Ti、Mo、Zr、Cr、MnおよびNi:
Vに加えて、Ti、Mo、Zr、Cr、MnおよびNiの中から選ばれた1種または2種以上を含有させることができる。これらの元素は、Al - Fe - V系金属間化合物のV成分の一部と置換してなる金属間化合物を形成し、金属間化合物の熱的安定性を高めることができる。この結果、強度、特に高温強度を高める。これらの元素の含有量は、Vと合計して、0.2重量%未満ではその効果がなく3.0重量%を超えるとその効果が飽和するとともに延性および靭性が低下する。したがって、Ti、Mo、Zr、Cr、MnおよびNiの中から選ばれた1種または2種以上を含有させるときの含有量は、Vと合計して、0.2〜3.0重量%とした。
【0016】
セラミックス粒子:
セラミックス粒子は、アルミニウム合金マトリックスに分散され、耐摩耗性を向上させる。また、SiCおよびAlNのセラミックス粒子は、熱伝導(それぞれ120 W/mK、150 W/mKとアルミニウム合金に近似している)を低下させずに耐摩耗性を向上させる。セラミックス粒子としては、ビッカース硬さが500以上であるセラミックス粒子であればよく、たとえばSiC、Al23、AlN、Si34などの粒子が用いられる。
【0017】
セラミック粒子の含有量は、5.0重量%未満では耐摩耗性を向上させる効果が得られず、30.0重量%を超えると材料の熱間鍛造性および機械加工性(切削加工性)が劣化してブレーキディスクの製造が困難となる。したがって、セラミック粒子の含有量は、5.0〜30.0重量%とした。
【0018】
セラミックス粒子の平均粒径は、1.0μm未満では粒子が凝集を起こし、耐摩耗性および靱性を低下させる。また、20.0μmを超えると材料の機械加工性(切削加工性)を低下させる。したがって、セラミックス粒子の平均粒径は1.0〜20.0μmとした。望ましくは5.0μm未満である。
【0019】
次ぎに、本発明のブレーキディスク用アルミニウム合金複合材の製造方法について説明する。
【0020】
本発明のブレーキディスク用アルミニウム合金複合材は、公知の粉末冶金法またはスプレーフォーミング法によって製造され、Al-Fe金属間化合物を微細に析出させ、セラミックス粒子を均一に分散させる。
【0021】
粉末冶金法は、所定の組成を有するアルミニウム合金粉末と、セラミックス粒子を所望の割合で配合し、十分に混合する。均一な混合状態を得るためには、アルミニウム合金粉末は微細であることが望ましく、通常100μm以下の粉末が使用される。次いで、混合粉末を容器(缶ともいう)に充填し、混合粉末を400〜500℃の温度に加熱しながら容器の内部を真空排気、あるいは不活性ガスで置換して、アルミニウム合金粉末およびセラミックス粒子の表面に吸着しているガスおよび水分を除去する脱ガス処理をおこなう。続いて、容器内に充填されている上記の混合粉末を、容器とともにホットプレスすることにより固化成形し、混合粉末を99%以上の緻密度にする。固化成形後、そのままあるいは適当な大きさに切断して、鍛造および機械加工(切削加工)を行い、ブレーキディスクに仕上げる。
【0022】
スプレーフォーミング法は、所定の組成を有するアルミニウム合金を溶製し、溶湯を流下させながら窒素ガスを吹き付け液滴化し、溶湯を流下させる下方に回転する円板を設け、その上に液滴を半凝固状態で堆積させる。このとき、窒素ガス中にセラミックス粒子を含ませ、アルミニウム合金と共に堆積させ、プレフォームを製作する。
【0023】
本発明のアルミニウム合金複合材料とは、上記固化後の成形体、鍛造後の成形体、機械加工後の成形体など、製造の途中工程にある半製品および最終製品を意味する。
【0024】
【実施例】
表1に示すNo.1〜No.13およびNo.15〜No.22のアルミニウム合金複合材料は、粉末冶金法により製作した。すなわち、エアアトマイズ法によってアルミニウム合金粉末を製造し、これを100μmに分級した。これとSiC等のセラミックス粒子を強制撹拌羽根付きクロスロータリーミキサーによって15分間混合し、混合粉末を外径90mm、高さ200mmの容器に充填した後、480℃の温度で1時間真空脱ガス処理を施して封缶し、これを内径90mmの閉塞金型に装填し、400℃の温度で、500Tonの押圧力でホットプレス固化成形した。更に、400℃の温度で一軸の自由鍛造によって固化成形体の高さが1/2になるまで鍛錬加工(鍛錬比2.0)を行い、試験体を製作した。なお、SiC等のセラミックス粒子は市販のものを使用したので、その「平均粒径」は、公称寸法を意味する。
【0025】
【表1】
Figure 0004058769
【0026】
表1に示すNo.14のアルミニウム合金複合材料は、スプレーフォーミング法によって作製した。すなわち、所定成分のアルミニウム合金を溶製し、溶湯を流下させながら窒素ガスを吹き付け液滴化し、溶湯を流下させる下方に回転する円板を設け、その上に液滴を半凝固状態で堆積させる。このとき、窒素ガス中にSiC粒子を含ませ、アルミニウム合金と共に堆積させた。得られたプリフォーム(堆積鋳造物)は、直径約180mm、高さ約300mmであった。得られたプリフォームから直径100mm、高さ100mmの円柱を切り出し、400℃で一軸の自由鍛造によって高さが1/2(50mm)になるまで鍛錬加工(鍛錬比2.0)を行い、試験体を製作した。
【0027】
No.23およびNo.24のアルミニウム合金複合材料は、従来公知のコンポキャスティング法によって製造した。すなわち、所定の成分のアルミニウム合金が固液共存状態となるようにNo.23材料では約730℃、No.24材料では約615℃に保ち、撹拌しながらSiC粒子を添加、混合し、内径150mm、深さ50mmの金型に鋳造した。続いて、その鋳塊を400℃の温度で高さが40mmになるまで鍛錬加工(鍛錬比1.25)を行い、試験体を製作した。
【0028】
得られた試験体から、顕微鏡観察試片、引張試験片、摩耗試験片を採取し試験に供した。
【0029】
Al-Fe系金属間化合物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察から求めた。
【0030】
引張試験は、上記試験体からJIS 4号引張試験片を製作し、常温および300℃の温度で行った。
【0031】
摩耗試験は、ピン・ディスク式摩耗試験機を使用し、ディスク側を本発明の複合材料(直径60mm)、ピン側に市販の銅系ブレーキパッド材料(直径5mm)を使用した。試験条件は、面圧を1MPa、摩擦速度:5m/s、潤滑なし、摩擦時間10分間とした。摩耗量は、ディスクの摩耗深さを表面あらさ計で測定した。それらの試験結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
Figure 0004058769
【0033】
表1および表2から、本発明のNo.1〜No.14の材料は、本発明で定める成分範囲と、所定のセラミックス粒子が存在するので、300℃における引張強さが210MPa以上、摩耗量が0.05mm以下と、引張性質および摩耗特性に優れている。これらの材料は、粉末冶金法およびスプレーフォーミング法によって製造されたので、Al-Fe系金属間化合物の平均粒径は0.2〜0.4μmと微細になり、特に高温引張特性に優れている。
【0034】
これに対して比較例のNo.15の材料は、SiCの分散量が3重量%と少ないため、摩耗量が0.2mmと多い。No.16の材料は、SiCの分散量が35重量%と多いため、鍛錬加工時に割れが発生した。しかし、割れのない部分から試験片を切り出し試験した結果、引張り伸びが300℃で9%と低い。No.17の材料は、SiC粒子の粒径が0.5μmと小さく、SiC粒子が凝集して均一分散ができなかった。したがって、摩耗量が0.1mmと多い。No.18の材料は、SiC粒子の粒径が30μmと大きいため、切削加工性が悪い。しかし、摩耗量は0.05mm以下と少ないが、ピン材の摩耗が多く、ブレーキ材として適当ではない。
【0035】
No.19の材料は、Fe含有量が4.0重量%と少ないため、常温および300℃の引張強さが270MPaおよび197MPaと低い。No.20の材料、Fe含有量が12.0重量%と多く、常温および300℃の伸びが5%および12%と小さい。
【0036】
No.21の材料は、Fe以外の添加元素を含有しないため、常温および300℃の引張強さが274MPaおよび195MPaと低い。No.22の材料は、Zrを1.0重量%、Vを3.0重量%含有し、その合計含有量が3.0重量%を超えるため、常温および300℃の引張り伸びが6%および12%と小さい。
【0037】
No.23の材料は、発明例のNo.2の材料をコンポキャスティング法によって製造したものであり、Al-Fe金属間化合物粒子の平均粒径が10μmと大きく、鍛錬加工時に割れが発生した。しかし、割れのない部分から試験片を切り出し、試験を行った結果、常温および300℃の引張強さは183MPaおよび107MPaと低く、伸びも1%および4%と低い。No.24の材料は、JISに5083合金として規定されているAl-Mg系アルミニウム合金に、コンポキャスティング法によってSiC粉末を分散させて製造した。したがって、Al-Fe金属間化合物粒子が存在しないので、300℃における引張強さは117MPaと低い。
【0038】
【発明の効果】
本発明によるアルミニウム複合材料は、マトリックスのアルミニウム合金中にAl-Fe金属間化合物粒子を微細に析出させ、さらにセラミックス粒子を分散させたものである。したがって、高温強度と耐摩耗性にきわめて優れている。この複合材料を鉄道車両のブレーキディスクに使用すると、車両のバネ下重量の低減を可能として、車両の高速化が可能となる。

Claims (3)

  1. Feを5.0〜10.0重量%と、Vを0.2〜3.0重量%とを含有し、残部Alおよび不純物からなり、かつ平均粒径が5μm以下のAl−Fe系金属間化合物が析出したアルミニウム合金マトリックスに、平均粒径が1〜20μmのセラミックス粒子が5〜30重量%分散していることを特徴とする高温強度に優れた鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
  2. Vの一部に代えて、Mo、Zr、Ti、Cr、MnおよびNiの中から選ばれた1種または2種以上を、Vと合計で0.2〜3.0重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
  3. セラミック粒子は、SiC、Al23、AlNおよびSi34の中から選ばれた1種または2種以上の粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄道車両ブレーキディスク用複合材料。
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