JP4087932B2 - 集束繊維シート接着用組成物および補強方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集束繊維シートを対象物に接着するための組成物に関するものである。またその組成物を用いたコンクリート構築物等の対象物の補強物の補強方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート橋梁などコンクリート構築物の補強工法として、従来の鋼板接着による補強工法に代えて、炭素繊維をエポキシ樹脂で集束させた集束炭素繊維シートをコンクリート構造物の補強すべき面にエポキシ樹脂接着剤を用いて1層または多層に接着し、硬化させる工法が採用されるようになってきている。この工法によれば、従来の鋼板接着による補強工法に比し格段に軽量化が図られかつ作業性が良く、しかもコンクリート構築物の曲げ耐力、疲労寿命、変形靱性の工場が期待できる。
【0003】
この目的のエポキシ樹脂接着剤の代表的な例は、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂主剤と硬化剤とからなる二液型のエポキシ樹脂接着剤である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の二液型のエポキシ樹脂接着剤を用いてコンクリート面に集束炭素繊維シートを接着した場合には、必ずしも初期の補強が充分にはなされず、信頼性に欠けることがあった。
【0005】
そこで本発明者らは、その原因を追求すべく、従来の二液型のエポキシ樹脂接着剤を用いてコンクリートブロックに集束炭素繊維シートを接着し、その上に他のコンクリートブロックを接着してから、これを破壊する試験を行って、破壊がコンクリートで生ずるかあるいは接着個所で生ずるかにつき観察したところ、接着個所で破壊する割合が多いこと、またその破壊後の炭素繊維シートの状態の観察では、炭素繊維シートが素線間剥離を起こしていることが判明した。
【0006】
本発明者らは、この原因がエポキシ樹脂接着剤が集束炭素繊維シートの素線間に充分には浸透しないためではないかと考え、エポキシ樹脂主剤や硬化剤の選択、さらには相当量の反応性希釈剤の併用により、接着剤の粘度を低下させて浸透性不足を解消しようと試みたが、このような手段による低粘度下では浸透性は若干しか向上せず、しかもたとえ浸透が図られても破壊試験を行ったときには依然として素線間剥離が見られ、根本的な解決策にはなりえなかった。
【0007】
加えて従来のエポキシ樹脂接着剤を用いたときには、集束炭素繊維シートが剛性を有するため、コンクリート面に接着剤を塗布してから集束炭素繊維シートを貼り、その上から接着剤を塗布し、さらにその上から集束炭素繊維シートを接着しても、集束炭素繊維シートが柔軟化せず、コンクリート面と集束炭素繊維シートとの間や、集束炭素繊維シートと集束炭素繊維シートとの間に隙間が空くという問題点があることも判明した。
【0008】
いずれにせよ、従来のエポキシ樹脂接着剤によっては、集束炭素繊維シート接着による補強工法の有利さが必ずしも充分には生かされていないのが実状である。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、集束繊維シートをコンクリート等の対象物に強固にかつその対象物の表面に沿うように接着するためのエポキシ樹脂系の組成物を提供すること、およびその組成物を用いた対象物(殊にコンクリート構築物)の補強方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の集束繊維シート接着用組成物は、補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させた集束繊維シートを対象物に接着するための組成物であって、該組成物が、主要成分がエポキシ樹脂主剤(A)および硬化剤(B)からなると共に、さらに必須成分として非重合性の有機溶剤(C)を含浸し、かつ組成物全体に占める有機溶剤(C)の割合が1〜20重量%であり、該有機溶剤(C)が、複素環式アルコール、脂肪族飽和アルコール、環状エーテル、脂肪族エーテル、脂肪族飽和ケトン、芳香族炭化水素、エチレングリコールのモノエーテル、飽和脂肪酸のエステル、脂肪族ニトロ化合物、カーボネートのいずれか又はこれらの2種以上を含むものであることを特徴とするものである。
本発明の補強方法は、補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させた集束繊維シートを、上記の組成物を用いて対象物に接着することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の集束繊維シート接着用組成物およびそれを用いた補強方法を詳細に説明する。まず、集束繊維シートについて説明する。
〈集束繊維シート〉
集束繊維シートは、補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させたシートである。ここで補強繊維としては、炭素繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、ガラス繊維、有機高強力繊維(アラミド繊維等)などがあげられ、これらの繊維はロービング、ロービングクロス、ストランドマット、ヤーン、ファブマットをはじめとする適量の形態で取り扱われる。集束のための樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、アリル樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられ、場合によっては熱可塑性の樹脂を併用することもある。これらの中では、素線径がたとえば7〜10μm程度の炭素繊維にエポキシ樹脂が付着または含浸されてシート状に集束整列されている集束炭素繊維シートが特に重要である。
【0012】
図1は、本発明に用いるに好適な強化シートの例を示す分解斜視図である。該強化シートは、補強繊維1の素線が密に並べられ、樹脂が付着又は含浸されて集束されている集束繊維シートS、殊に集束炭素繊維シート、の片面にばらけ防止(仮止め)のための目の粗いクロス2が接着され、さらにその上からシート相互間の粘着を防止するための離型シート(離型紙など)3が被覆されている形態のシートである。集束繊維シートSに離型シート3が被覆されている場合は、コンクリート構築物等の対象物の面上に塗布された接着用組成物の上に、集束繊維シートSの側を貼り付けた後、離型シート3を取り除く。離型シート3を取り除いた後、クロス2の上から接着用組成物を塗布して、補強繊維1の周りの空隙及びクロス2の空隙に接着用組成物を更に含浸させることができる。
【0013】
〈集束繊維シート接着用組成物〉
本発明においては、上記の集束繊維シートを対象物に接着するための組成物として、主要成分がエポキシ樹脂主剤(A)および硬化剤(B)からなると共に、さらに必須成分として特定量の非重合性の有機溶剤(C)を含有するものを用いる。有機溶剤(C)を特定量含有させる点が、本発明のポイントとなる特徴点である。必須成分として特定量の有機溶剤(C)のほか、任意成分としてエポキシ基含有反応性希釈剤(D)やカプリング剤(E)を配合することも可能である。
組成物全体、即ちエポキシ樹脂主剤(A)と硬化剤(B)と有機溶剤(C)とエポキシ基含有反応性希釈剤(D)とカプリング剤(E)とその他の添加剤との合計量、に占めるエポキシ樹脂主剤(A)と硬化剤(B)との合計量の割合は、50〜99重量%であることが好ましい。
【0014】
ここでエポキシ樹脂主剤(A)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、含プロムエポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが例示され、これらを2個以上組み合わせて用いることもできる。これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系樹脂が重要である。
【0015】
硬化剤(B)としては、
・脂肪族第一アミン(脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、芳香環含有脂肪族ポリアミン、脂環ポリアミン、環状ポリアミン等)、芳香族第一アミン、第三アミン硬化剤、含リンまたは含ハロゲンアミン硬化剤、変性ポリアミンなどのアミン系硬化剤、
・ポリアミノアミド系硬化剤、
・脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、ハロゲン系酸無水物などの酸または酸無水物系硬化剤、
などの硬化剤があげられ、そのほか、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、イミダゾール類、アミンイミド、ルイス酸またはブレンシュテッド酸塩、レゾール型フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート、ブロックイソシアネートなども用いることができる。
【0016】
有機溶剤(C)として、非重合性の有機溶剤が用いられる。非重合性とは、エポキシ樹脂主剤(A)および硬化剤(B)と反応する基或いはビニル基を有さないことを意味する。有機溶剤(C)が非重合性であれば、組成物の反応性、液安定性が損なわれない。
有機溶剤(C)として、たとえば、
・ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフタ、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、
・n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、n−フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、
・エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコール系またはグリコール誘導体系溶剤、
・アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン等のケトン系溶剤、
・酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、
・ジnーブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、
・ニトロメタン等の含窒素溶剤、
・ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、
・メチレンクロライド、トリクロルメタン、テトラクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、1,1−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,2,3−トリクロルプロパン、1,2−ジクロルプロパン、1−クロルブタン、1,2−ジプロムエタン、モノクロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、プロムベンゼン、o−ジプロムベンゼン、1,1,2−トリクロル−1,2,2−トリフルオルエタン等の含ハロゲン溶剤、
などが用いられ、これらは2種以上を混合して用いることも多い。
【0017】
有機溶剤(C)の沸点に特に限定はないが、常圧(1気圧)で約50〜200゜C、特に約100〜200゜Cの沸点を持つことが好ましく、余りに低いと揮発性過多となったり引火点が低くなり、一方余りに高いと揮発性不足になるので、沸点が極端に低いものや極端に高いものを用いるときは、他の有機溶剤と混合使用してバランスをとることが好ましい。
【0018】
また有機溶剤(C)として、エポキシ樹脂主剤(A)および硬化剤(B)を溶解し、組成物の粘度を低下させ易く、また、揮発し易く、更に繊維の表面を覆っている被膜を溶解させ易いものとして、更に、作業環境の観点から、できるだけ臭気の小さいものを選ぶことが望ましい。これらの点から、本発明において使用する有機溶剤(C)としては、フルフリルアルコール等の複素環式アルコール、ブタノール等の脂肪族飽和アルコール、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、ブチルエーテル等の脂肪族エーテル、メチルイソブチルケトン等の脂肪族飽和ケトン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルセロソルブ等のエチレングリコールのモノエーテル、メチルセロソルブアセテート等の飽和脂肪酸のエステル、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、ジエチルカーボネート等のカーボネートのいずれか、又はこれらの2種以上を含むものとする。それらはいずれも前記範囲の沸点を持つ非重合性のものである。
なお、塗布された接着用組成物中の有機溶剤(C)は、その大半が蒸散し、硬化したエポキシ樹脂中に殆ど残留しない。
【0019】
任意成分としてのエポキシ基含有反応性希釈剤(D)としては、オレフィンオキサイド、オクチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、3−(ペンタデシル)フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジペンテンモノオキサイド、α−ピネンオキサイド、tert−カルボン酸のグリシジルエステル等のモノエポキシ化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオベンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、等の低粘度ポリエポキシ化合物;などが例示できる。
【0020】
任意成分としてのカプリング剤(E)としては、シラン系カプリング剤、チタネート系カプリング剤、アルミニウム系カプリング剤、ジルコニウム系カプリング剤、クロム系カプリング剤、有機リン酸系カプリング剤などが例示できる。
【0021】
組成物全体に占める有機溶剤(C)の割合は、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%に設定される。有機溶剤(C)の割合が余りに少ないときは、組成物の集束繊維シートに対する浸透性や対象物に対する接着強度が不足し、一方有機溶剤(C)の割合が余りに多いときは、該溶剤の揮発による収縮が過多となる。
【0022】
任意成分であるエポキシ基含有反応性希釈剤(D)は、組成物全体に占める割合が0〜40重量%(好ましくは0〜30重量%、殊に1〜20重量%)となるようにし、任意成分であるカプリング剤(E)は0〜7重量%(好ましくは0から5重量%、殊に0.1〜3重量%)となるようにすることが望ましい。
【0023】
硬化剤(B)の割合は、その種類および使用するエポキシ樹脂主剤(A)との関係で大きく異なるが、エポキシ当量/活性水素当量の比に基づく必要量に;実験的に定めた最適量を参考にして決めればよく、一般にはエポキシ樹脂主剤(A)100重量部に対し10〜100重量部とすることが多い。
【0024】
上記のような量的範囲において、可使時間、硬化時間、接着性、集束繊維シートの素線間への浸透性、接着強度が好ましいものとなる。
【0025】
組成物中には、本発明の趣旨を損なわない範囲において、可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル型可塑剤等)、軟化剤(石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン系樹脂、ポリイソブチレン低重合物、ロジン類、フェノール類、タール類、オイル類等)をはじめとする粘度低下ないし相溶性向上のための添加剤を含有させることができる。そのほかにも、エポキシ樹脂接着剤に用いられる種々の添加剤を含有させることもできる。
【0026】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂主剤(A)と硬化剤(B)とのニ液型とし、使用の直前に両者を混合するか、ニ頭ガン等を用いて使用と同時に両者を混合するのが通常であり、必須成分としての有機溶剤(C)、任意成分としてのエポキシ基含有反応性希釈剤(D)やカプリング剤(E)あるいはその他の添加剤は、エポキシ樹脂主剤(A)と硬化剤(B)とのどちらかまたは双方(殊にエポキシ樹脂主剤(A)側)に予め混合しておく。ただし、硬化剤(B)の種類あるいは用途によっては一液型とすることもできる。
【0027】
〈対象物〉
上記の組成物を用いて集束繊維シートを接着する対象物としては、コンクリート面、金属面、FRP面、セラミックス面、プラスチックス面などが例示される。特に重要な対象物は、構築物、殊にコンクリート構築物である。
【0028】
〈対象物補強方法〉
対象物(殊に構築物)を補強するにあたっては、補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させた集束繊維シート(殊にエポキシ樹脂で集束させた炭素繊維シート)を、上記の組成物を用いて対象物に接着する。
【0029】
その際、まず対象物側に本発明の液状の組成物を塗布し、その上から集束繊維シートを貼り、集束繊維シートの上から組成物を1回または数回塗布し、必要に応じて次の集束繊維シートを貼ってから組成物を1回または数回塗布する作業を繰り返すのが通常である。仕上げは必ずしも必要ではないが、美観の点からモルタル仕上げや樹脂塗装仕上げなどの仕上げ処理をすることもできる。
【0030】
〈作用〉
本発明の集束繊維シート接着用組成物を用いて集束繊維シート(殊にエポキシ樹脂で集束させた炭素繊維シート)を対象物(殊にコンクリート面)に接着すると、単に集束繊維シート自身が強化物となりかつ集束繊維シートが対象物面に接着するだけでなく、組成物中の有機溶剤(C)が集束繊維シートに浸透し、繊維の表面を覆っている被膜が一部除去されると共に組成物と置換して強固な素線間接着が図られる。そして組成物による接着力は極めて強力であるので、たとえば対象物がコンクリートである場合、破壊試験を行っても、コンクリートの表層よりもコンクリート内部で破壊する割合が多くなり、所期の補強が達成される。
【0031】
加えて、組成物中の有機溶剤(C)が集束繊維シートに浸透することにより集束繊維シートが柔軟になる上、接着作業中に気泡も生じがたいので、対象物面に集束繊維シートが密着して沿うようになって隙間を生じなくなり、補強効果が最大限に発揮される。
また本発明の組成物を用いれば、上向き姿勢で接着作業を行っても、集束繊維シートに組成物が浸透するので、施工性が良好であるという利点もある。
【0032】
そして、組成物中にさらにエポキシ基含有反応性希釈剤(D)を含有させるときは、接着強度の低下を抑制しながら低粘度化の調整が容易になるので作業性が向上し、またカプリング剤(E)を含有させるときは、接着強度がより向上する。
【0033】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
実施例1〜13
〈集束繊維シート〉
エポキシ樹脂を集束剤として用いて、炭素繊維ストランドを一方向に引き揃えてシート化した目付量300g/m2の市販の集束炭素繊維シートを準備した。なお、この集束炭素繊維シートには、ばらけ防止(仮止め)のために片面にはガラス繊維製の粗いクロスが接着してあり、さらにその上から粘着防止のために離型紙が被覆されている。
【0034】
〈集束繊維シート接着用組成物の調製〉
エポキシ樹脂主剤(A)としての液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業株式会社製の「EP−4100」)90部に、表1に示す有機溶剤(C)を10部宛混合し、さらにカプリング剤の(E)の一例としてのシラン系カプリング剤1部を配合して、A液となした。また硬化剤(B)として、脂肪族ポリアミン系硬化剤(トリエチレンテトラミン(TETA))とポリアミド系硬化剤(播磨化成工業株式会社製の「ニューマイド1750ー10」)との重量比で1:1の混合物を準備し、B液とした。そしてA液100部とB液36.1部とを使用直前に混合して組成物を調製し、以下の試験に供した。
なお、A液中の有機溶剤(C)の濃度は9.9重量%で、組成物全体に占める有機溶剤(C)の割合は、7.27重量%であった。
【0035】
〈ラップ強度の測定〉
1.離型フィルム上に上記混合後の組成物を塗布し、上記の集束炭素繊維シートを貼り付ける。
2.離型フィルムを除去し、貼り付けられた集束炭素繊維シートに上記組成物を上塗りする。
3.その上からもう1枚の集束炭素繊維シートを100mm長さだけ重ね合わせ、その上から上記と同じ組成物を塗布する。
4.そのまま養生して、半硬化状態になったところで繊維方向に巾12.5mmに切断する。
5.室温×70%RHの条件で7日間養生後、両端側にアルミタブを接着し、試験片とする。
6.JIS K 7073(炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法)に準じ、速度2mm/minの条件で破断荷重値を測定し、試験片巾と炭素繊維換算厚みで除して強度を求める。
【0036】
〈接着強度の測定〉
1.コンクリート面上に上記の組成物を塗布し、塗布した前記組成物の上に集束炭素繊維シートを貼り付けた後、硬化させる。
2.貼り付けた集束炭素繊維シートの上面をサンドペーパーで面荒らしし、エポキシ樹脂接着剤で4cm角の鋼製アタッチメントを接着する。
3.接着剤硬化後、ダイアモンドカッターで4隅をコンクリート層に届くように切り込みを入れ、建研式接着試験機をセットして、アタッチメントを引き剥がす。
4.アタッチメントが剥がれたときの荷重を読み取り、接着面積で除して接着強度を求めると共に、どの部分で破壊したか(コンクリート母材が破壊したか、コンクリートと集束炭素繊維シートとの界面で破壊したか)を確認する。
【0037】
用いた有機溶剤(C)の種類とともに、測定結果を表1に示す。表1中、混合溶剤1はトルエン(沸点110゜C)/メチルエチルケトン(沸点79.6゜C)/n−ブタノール(沸点117.7゜C)の重量比で1:1:1の混合物、混合溶液2はトルエン/n−ブタノール/メチルイソブチルケトン(沸点115.9゜C)の重量比で1:1:1の混合物、混合溶剤3はトルエン/メチルイソブチルケトン/メチルセロソルブアセテート(沸点144゜C)の重量比で1:1:1の混合物である。
【0038】
〈集束炭素繊維シートに対する浸透性試験〉
先に述べた集束炭素繊維シート(1プライ、目付量300g/m2)を200mm×200mmの大きさに裁断し、温度15℃において、上記の組成物各600gを用いて下記の手順により接着操作を行った。
【0039】
1.コンクリート面にローラー刷毛で組成物を塗布する。
2.1枚目の炭素繊維シートを貼り、離型紙を除去する。
3.その上から組成物を塗布し、5分間、放置する。
4.再度その上から組成物を塗布する。
5.ゴムベラで押え、5分間、放置する。
6.その上から組成物を塗布する。
7.上記2〜6の操作をさらに2回繰り返す。
【0040】
浸透性の評価は、実用性の観点から、○(有効)、△(やや劣る)、×(劣る)の3段階で判定した。○は、組成物が集束炭素繊維シート内に確実に含浸し、内部の気泡は認められず、また切断面を観察するとシートの繊維は毛状にならず組成物の含浸が充分になされていることが確認できる場合である。
【0041】
【表1】
【0042】
コンクリート構築物の補強工法における集束炭素繊維シートの接着剤の要求特性は、ラップ強度が35500Kgf/cm2以上、接着強度が母材破壊である。しかるに、表1のデータからも裏付けられるように、有機溶剤(C)の適量の配合はそのような要求特性を充分に満たしていることがわかる。なおデータは省略してあるが、A液に代表的なエポキシ基含有反応性希釈剤(D)の一例としてのブチルグリシジルエーテル(阪本薬品工業株式会社製の「BGE−C」)を追加配合したときは、表1と同等またはそれを若干上回る結果が得られた。
【0043】
比較例1〜6
〈集束繊維シート〉
集束繊維シートとして、実施例1〜13と同じものを用いた。
【0044】
〈集束繊維シート接着用組成物の調製〉
エポキシ樹脂主剤(A)としての液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業株式会社製の「EP−4100」)85部に、後述のエポキシ基含有反応性希釈剤(D)15部およびカプリング剤(E)の一例としてのシラン系カップリング剤1部を配合して、A液となした。また硬化剤(B)として、脂肪族ポリアミン系硬化剤[トリエチレンテトラミン(TETA)]とポリアミド系硬化剤(播磨化成工業株式会社製の「ニューマイド 1750−10」)との重量比で1:1の混合物を準備し、B液とした。A液100部とB液34.5〜39.1部(組成物中のエポキシ当量/活性水素当量の比を調節するため、エポキシ基含有反応性希釈剤(D)の種類に合わせて変量)とを使用直前に混合して組成物を調製し、以下の試験に供した。
【0045】
〈エポキシ基含有反応性希釈剤(D)〉
エポキシ基含有反応性希釈剤(D)としては、モノエポキシ化合物である下記の市販品を用いた。
・BGE−C(坂本薬品工業株式会社製)
・PGE (坂本薬品工業株式会社製)
・Eponitto A−6(日東化成株式会社製)
・EX−111(長瀬化成株式会社製)
・Heloxy WC−8(ローヌブーラン社製)
【0046】
〈試験結果〉
以下実施例と同様にして、浸透性、ラップ強度、接着強度を測定した。結果を表2に示す。表2中、B液[硬化剤(B)]の配合量は、エポキシ樹脂主剤(A)とエポキシ基含有反応性希釈剤(D)との合計量100部に対するものである。なお、比較例1は、エポキシ基含有反応性希釈剤(D)を配合しなかった場合であり、硬化剤(B)の配合量はエポキシ樹脂主剤(A)100部に対するものである。
【0047】
【表2】
【0048】
表2から、有機溶剤(C)を使用することなくエポキシ基含有反応性希釈剤(D)のみを配合した場合は、集束繊維シートに対する接着剤の要求特性を備えることが難しいことがわかる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の集束繊維シート接着用組成物を用いて集束繊維シート(殊にエポキシ樹脂で集束させた炭素繊維シート)を対象物(殊に構築物、なかんずくコンクリート面)に接着すれば、強力かつ信頼性ある接着がなされ、所期の補強目的が達成できる。接着作業に際しては気泡が生じがたく、また対象物面に集束繊維シートが密着して沿うようになって隙間を生じなくなり、補強効果が最大限に発揮される。さらには、上向き姿勢で接着作業を行っても、集束繊維シートに組成物が浸透するので、施行性が良好である。有機溶剤(C)の使用はコスト的にも負担にならず、またその配合量は特定量で少量であるので、硬化時に過度の収縮を起こさないし、エポキシ樹脂の硬化物中に殆ど残留しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の補強方法に用いる強化シートの例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
S・・集束繊維シート、1・・補強繊維、2・・クロス、3・・離型シート
Claims (4)
- 補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させた集束繊維シートを対象物に接着するための組成物であって、該組成物が、主要成分がエポキシ樹脂主剤(A)および硬化剤(B)からなると共に、さらに必須成分として非重合性の有機溶剤(C)を含有し、かつ組成物全体に占める有機溶剤(C)の割合が1〜20重量%であり、
該有機溶剤(C)が、複素環式アルコール、脂肪族飽和アルコール、環状エーテル、脂肪族エーテル、脂肪族飽和ケトン、芳香族炭化水素、エチレングリコールのモノエーテル、飽和脂肪酸のエステル、脂肪族ニトロ化合物、カーボネートのいずれか又はこれらの2種以上を含むものであることを特徴とする集束繊維シート接着用組成物。 - 補強繊維に樹脂を付着または含浸させて集束させた集束繊維シートを、請求項1に記載の組成物を用いて対象物に接着することを特徴とする補強方法。
- 集束繊維シートが、炭素繊維からなる補強繊維にエポキシ樹脂を付着または含浸させたシートである請求項2記載の補強方法。
- 対象物が構築物である請求項2記載の補強方法。
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| JP31249097A JP4087932B2 (ja) | 1997-11-13 | 1997-11-13 | 集束繊維シート接着用組成物および補強方法 |
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| JP31249097A JP4087932B2 (ja) | 1997-11-13 | 1997-11-13 | 集束繊維シート接着用組成物および補強方法 |
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| JPH11140416A JPH11140416A (ja) | 1999-05-25 |
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-
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- 1997-11-13 JP JP31249097A patent/JP4087932B2/ja not_active Expired - Lifetime
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