JP4088752B2 - 樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に射出成形による成形品を作るための樹脂組成物、より詳細には、生分解性、透明性および耐熱性を兼ね備える樹脂組成物、並びにその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境保護の見地から、自然環境中で分解する生分解性樹脂およびその成型品が求められている。中でも、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂の研究・開発が活発に行われている。特に、ポリ乳酸は融点が高い(170〜180℃)等の特性があり、また、ポリ乳酸によって作られ特殊な加工がなされていない普通の成形品は透明であるといった特徴があり、用途によっては実用化され始めた。しかしながら、前記成形品は、耐熱性に乏しいという問題点を有していた。前記成形品を構成するポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)が60℃前後のため、その温度を越えると変形してしまうのである。そこで、前記成形品が熱で変形しないようにするため、様々な検討がなされてきた。
【0003】
例えば、ポリ乳酸などの生分解性樹脂に無機フィラーを添加することが検討されている。無機フィラーとして、耐熱性を有するマイカ等の使用が検討されている。これは、いわばコンクリートに鉄筋を入れるようなもので、樹脂に耐熱性を有する固い無機フィラーを添加することで機械特性を改善し固くして、熱で変形しにくくするのである。また他の方法として、例えば、成形中または成形後の熱処理によってポリ乳酸を結晶化させることが検討されている(例えば、特開平4−325526号公報など)。ポリ乳酸によって作られ特殊な加工が施されていない普通の成形品は、ポリ乳酸が非晶質であるため、熱変形しやすかったのであるが、ポリ乳酸を結晶化させることで固くなり、熱変形しにくくなるのである。
【0004】
これらの方法を用いることにより、耐熱性が必要な用途においても、ポリ乳酸またはそれを含む組成物の実用化が始まろうとしている。しかしながら、それは透明性を必要としない用途に限られている。これらの方法で耐熱性を確保すると、透明で無くなるかまたは透明性が極端に低下してしまうからである。マイカ等の無機フィラーはポリ乳酸にとっては光学的に異物であり、光を散乱させてしまい、ポリ乳酸組成物は白濁となる。また、ふつう、ポリ乳酸を熱処理で結晶化させると、結晶サイズがミクロンオーダーからサブmm程度となり、ポリ乳酸の結晶自体が光散乱の要因となっていまい、やはり白濁となってしまう。
【0005】
これまで、耐熱性と透明性の両立を目指した検討がされてはいるが、実用的に十分ではない。例えば、乳酸系ポリマーにテルペンフェノール共重合体を混合して、Tgを65℃にまで高め、耐熱性を改善する技術がある(特開2000−7903号公報)。しかしながら、電気製品の筐体や構造材の用途では、概して80℃までの耐熱性が必要であり、前記技術では耐熱性がまだ不十分である。前記公報においては、80℃における弾性率などの樹脂の機械的特性については記載されていないが、一般にTg以上の温度では樹脂の機械的特性が極端に低下することが知られていることから、前記公報に記載の樹脂は、80℃まで温度を上げると、実用的な機械特性を維持することが困難である。
以上から、従来、成形品を作るための、ポリ乳酸を代表とする生分解性樹脂を含む樹脂組成物(以下、生分解性樹脂組成物)においては、透明性と耐熱性とを兼ね備える実用的な組成物は無かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、80℃という比較的高温での耐熱性と透明性とを兼ね備えている、成形品を作るための生分解性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、80℃という比較的高温での耐熱性、透明性および生分解性を有する成形品を提供することも目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、80℃における弾性率が5.0×107Pa以上の特定組成の生分解性樹脂組成物であれば、かかる樹脂組成物を用いて電気製品の筐体や構造材などの用途に使用する成形品を製造した場合、実用的な耐熱性を有する成形品が得られることを知見した。また、厚さ1mmの板状成形体のヘイズが60%以下となる特定組成の生分解性樹脂組成物であれば、透明性を有する用途にも十分に利用できることを知見した。つまり、本発明者は、上記弾性率とヘイズを満たす特定組成の生分解性樹脂組成物の創製に成功し、かかる生分解性樹脂組成物を用いて射出成形などの方法によって製造される成形品は、透明性が高く、室温付近で使用している間はもちろん、80℃程度の高温でも透明性を維持しており、かつ、80℃程度の高温でも実質的に変形しない耐熱性を有するということを知見した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1) 樹脂組成分としてのポリ乳酸からなる生分解性樹脂と、シランカップリング剤による処理でビニル基又はアクリル基が導入されて表面が疎水化処理されたフィラーとしての溶融石英ガラスと、加水分解抑制剤としてのカルボジイミド化合物とを含み、前記溶融石英ガラスの含有率が5〜50重量%、前記カルボジイミド化合物の含有率が5重量%以下であって、弾性率(粘弾性測定により測定された弾性率の弾性成分:以下、同様)が80℃において5.0×107Pa以上であり、かつ、1mm厚でのヘイズが60%以下であることを特徴とする成形品用樹脂組成物、
(2) フィラーの屈折率が生分解性樹脂の屈折率に対して±0.05以内である、前記(1)に記載の樹脂組成物
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(3) 前記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物から製造された成形品に関し、更には、
(4) 生分解性樹脂を含む樹脂組成物の耐熱性の向上および透明性の確保のための、屈折率が生分解性樹脂の屈折率に対して±0.05以内のフィラーの使用
に関するものであってよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる樹脂組成物は、弾性率が80℃において約5.0×107Pa程度以上、好ましくは、約8.0×107Pa程度以上、より好ましくは約1.0×108Pa程度以上であることを特長とする。ここで、上記80℃における弾性率は、樹脂組成物を用いて試験片を作製し下記測定条件で弾性率を測定し、測定温度が80℃のときの弾性率を読み取る。
試験片;長さ50mm×幅7mm×厚さ1mm
測定装置;粘弾性アナライザー RSA−II(レオメトリック社製)
測定ジオメトリー;Dual Cantilever Bending
周波数;6.28(rad/s)
測定開始温度;0℃
測定最終温度;160℃
昇温速度;5(℃/分)
歪;0.05%
【0013】
本発明にかかる樹脂組成物は、1mm厚でのヘイズが約60%程度以下、好ましくは約58%程度以下、より好ましくは約50%程度以下であることを特長とする。ここで、前記ヘイズ値は、本発明にかかる樹脂組成物から1mm厚の板状成形体を作製し、かかる板状成形体のヘイズ値を、JIS K 7105に従って、ヘーズ・透過反射率計(村上色彩研究所製)にて測定する。
本発明において透明性とは、上述のように測定されるヘイズが約60%程度以下と小さいことをいう。光線透過率が高ければ透明性が高いことはもちろんだが、本発明の樹脂組成物は、必ずしも光線透過率が高くなくても良い。すなわち、本発明にかかる樹脂組成物を意図して着色した場合、あるいは意図せずともそのほかの添加剤によって色がついた場合、全光線透過率は小さくなるが、透明性の指標であるヘイズへの影響が無視できる範囲、つまり、ヘイズが上記範囲内であれば、光線透過率は小さくてもよい。
【0014】
本発明にかかる樹脂組成物には、樹脂組成分として生分解性樹脂が含まれている。本発明でいう生分解性樹脂とは、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物、最終的に水と二酸化炭素に分解する樹脂である(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)。
こうした生分解性樹脂としては、例えばデンプン、デキストラン、チキン等の多糖誘導体;例えばコラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等のペプチド等;例えばポリアミノ酸;例えばポリビニルアルコール;例えばナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド;例えばポリエステル等の生分解性樹脂が挙げられる。
【0015】
このような生分解性樹脂の中で、生分解性ポリエステルを用いることが好ましい。かかる生分解性ポリエステルとしては、例えば微生物によって代謝されるポリエステル系の樹脂を挙げることができ、中でも成形性、耐熱性、耐衝撃性をバランスよく有している脂肪族系ポリエステルを用いるのが好ましい。
上記脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリシュウ酸エステル、ポリコハク酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、中でも、脂肪族ポリエステルとして、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを用いるのが好ましい。ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、乳酸、リンゴ酸、グルコール酸等のオキシ酸の重合体またはこれらの共重合体が挙げられるが、本発明では、ポリ乳酸(ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル)を用いる。
【0016】
本発明にかかる樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂のうち1種類のみが単独で含有されていても良いし、2種類以上の生分解性樹脂が含有されていても良い。2種類以上の生分解性樹脂が含有されている場合、それらの樹脂は共重合体を形成していてもよいし、混合状態をとっていてもよい。この場合、少なくとも生分解性ポリエステルが含有されていることが好ましい。具体的には、例えば、生分解性ポリエステルと、ポリアミノ酸もしくはナイロン等の生分解性ポリアミドなどのアミノ基または/およびアミド結合を有する生分解性樹脂との共重合体または混合物などが好適な例として挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる生分解性樹脂は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、生分解性ポリエステルは、▲1▼ラクチド法、▲2▼多価アルコールと多塩基酸との重縮合、または▲3▼分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合などの方法により製造することができる。
特に、ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルは通常、環状ジエステルであるラクチド及び対応するラクトン類の開環重合による方法、いわゆるラクチド法により、また、ラクチド法以外では、乳酸の通接脱水縮合法により得ることができる。また、上記ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルを製造するための触媒としては、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物を例示することができ、中でも錫系触媒、アルミニウム系触媒を用いるのが好ましく、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナートを用いるのが特に好適である。
ラクチド開環重合により得られるポリL−乳酸が、上記ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルの中でも好ましい。かかるポリL−乳酸は加水分解されてL−乳酸になり、かつその安全性も確認されているためである。しかし、本発明で使用するポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルはこれに限定されることはなく、従ってその製造に使用するラクチドについてもL体に限定されない。
【0018】
本発明にかかる樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂以外の樹脂が含有されていても良い。例えば、上記ISO規定に記載されている分解速度は持たないが、10〜20年という長期間でゆっくりと分解していくような樹脂が本発明にかかる樹脂組成物に含まれていてもよい。前記樹脂として、例えば、分解速度を緩和したポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0019】
本発明にかかる樹脂組成物においては、上述のような生分解性樹脂以外に、屈折率が前記生分解性樹脂の屈折率に対して±約0.05以内のフィラーを含むことが好ましい。フィラーを含有させることにより、樹脂組成物の耐熱性を改善することができるとともに、上述のような特定の屈折率を有するフィラーを用いることで、フィラーが生分解性樹脂に対して異物とならず、樹脂組成物の透明性を確保することができる。
【0020】
こうしたフィラーとしては、上述のような特定の屈折率を有することに加えて、高温での耐熱性を持つものが好ましい。ここで言う高温での耐熱性とは、80℃程度の使用時における高温状態だけでなく、例えば180℃程度の樹脂組成物を作製するときの熱混練での高温状態における耐熱性を意味する。さらに、フィラーは剛直であることが好ましい。
かかる剛直で耐熱性に優れているフィラーとしては、無機系フィラーが好適な例として挙げられる。無機系フィラーとしては、例えば、無機性の結晶あるいは非晶のものを用いることができる。例えば、無機系フィラーの材質としては、ガラス、水晶、サファイア、エメラルド等を例示できる。このほか、ダイアモンドといった無機性炭素の結晶も例示できる。
フィラーは、上述のような特定の屈折率および耐熱性に加えて、さらに、吸湿性の無いこと、水溶性でないことという条件も満たすことが好ましい。例えば、塩化ナトリウムの結晶は、透明で耐熱性も有するが、水溶性であるから、水に容易に溶解しないような処理を施したものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明において、用いる生分解性樹脂の種類に応じて、前記生分解性樹脂の屈折率に対して±約0.05以内の屈折率を有するフィラーを適切に選択することは、当業者であれば容易に行うことができる。本発明では、生分解性樹脂として、ポリ乳酸を用い、フィラーとしては、溶融石英ガラス、ケイソウ土もしくは蛍石、またはこれらの混合物の中で、特に溶融石英ガラスを用いるが、このフィラーは屈折率の整合性の点で適する。また、このフィラーは、材質がガラスであることから、公知技術により比較的容易にその屈折率を変えることができ、用いる生分解性樹脂の屈折率に整合させたフィラーを用意できる。屈折率を調整する方法は、何ら限定されるものではなく、公知の技術を適宜用いればよい。
【0022】
本発明で用いるフィラーは、無色であっても有色であってもよいが、無色の樹脂組成物を得たい場合、また色付きの樹脂組成物を得たい場合の両方を考慮すれば、無色のフィラーが好ましい。色付きの樹脂組成物が必要な場合、固有の色を有するフィラーを用いることもできる。本発明にかかる樹脂組成物を着色するため、本発明で用いるフィラーを公知の方法で予め着色しておいてもよい。とくに、ガラスは各種の公知方法で容易に色をつけられるので、色付きの樹脂組成物を得たい場合に、フィラーとして好適に用いられる。
【0023】
本発明で用いるフィラーの大きさは特に限定されず、任意の大きさのものを使用することができるが、例えば、粒径が約1〜500μm程度、より好ましくは約5〜100μm程度、さらに好ましくは約10μm程度である。粒径が小さすぎるとフィラーが凝集するという問題が懸念され、また、例えばmmオーダーのように大きすぎると樹脂組成物の機械特性が改善しにくくなることから、上記範囲が好ましい。
また、本発明で用いるフィラーの形状は、球形はもちろん、だ円、針状または板状など、任意の形状であってよい。
さらに、本発明においては、フィラーの樹脂組成物における含有割合は、後述する実施例の結果から、5重量%以上とし、より好ましくは約10重量%程度以上である。また、その上限は、本発明にかかる樹脂組成物において、主成分が生分解性樹脂となるよう、50重量%とすべきである。
【0024】
本発明で用いるフィラーは、その表面が疎水化処理されている。本発明において好適に用いられる生分解性樹脂である脂肪族ポリエステルは疎水性であるため、フィラーの表面を疎水化処理することにより、フィラーの分散性が向上し、生分解性樹脂とフィラーとが均一に混じりあい、本発明にかかる樹脂組成物の透明性を高めることができるという利点がある。特に、前記疎水化処理により、フィラーの表面にビニル基が導入されることが好ましい。ビニル基が導入されたフィラー、特にビニル基が導入されたガラスフィラーを含有させることにより、樹脂組成物の透明性を維持しながら、樹脂組成物の耐熱性をより改善できる。
【0025】
本発明で用いるフィラーの表面を疎水化処理する方法は、シランカップリング剤による公知の処理方法である。特に、本発明においてガラスフィラーを用いるので、前記方法によりフィラー表面を疎水化処理する。
上記疎水化処理において、使用されるシランカップリング剤としては特に限定されず、公知のものを用いてよいが、下記式(1);
【化1】
(式中、Xは有機官能基を表し、Rは炭化水素残基を表す。)
で示されるシラン化合物からなるシランカップリング剤が好ましい。
上記式(1)中のXで示される有機官能基は、疎水性基が好ましい。また、上記式(1)の中のRで示される炭化水素残基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレンもしくはテトラメチレン等の直鎖状又は分岐鎖状C1〜6アルキレン基等のアルキレン基;例えば、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロペンテンもしくはシクロオクテン等のC4〜10シクロアルケン残基等のシクロアルケン残基;例えば、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロペンテン等のC4〜10シクロアルケン−C1〜6アルキル基等のシクロアルケン−アルキル残基等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
なお、チタネートカップリング剤による表面疎水化処理も考えられるが、このようなチタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等を挙げることができる。
【0027】
本発明において、表面疎水化処理方法は特に限定されない。一般的な表面疎水化処理方法として、フィラーを分散化した水溶液に、上記カップリング剤を直接又は有機溶剤に希釈して添加してもよいし、ヘンシェルミキサーまたはVブレンダー等でフィラーを強制撹拌しているところに、適量の上記カップリング剤を直接又は有機溶剤で希釈して添加してもよい。また乾燥炉から出てきたフィラーに直接カップリング剤をスプレーしてもよい。
【0028】
本発明にかかる樹脂組成物には、その中に含まれている生分解性樹脂の加水分解を抑制する加水分解抑制剤が含有されている。かかる加水分解抑制剤としては、生分解性樹脂の加水分解を抑制することができれば、特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂中の活性水素と反応性を有する化合物が挙げられる。前記化合物を加えることで、生分解性樹脂中の活性水素量が低減し、活性水素が触媒的に生分解性樹脂を構成する高分子鎖を加水分解することを防ぐことができる。ここで、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。より具体的には、生分解性樹脂中の例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、またはアミド結合:−NHCO−等における水素が挙げられる。
【0029】
前記加水分解抑制剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキソゾリン系化合物などが挙げられるが、特にカルボジイミド化合物が生分解性高分子化合物と溶融混練でき、少量の添加で生分解性樹脂の加水分解をより抑制できるために、本発明ではカルボジイミド化合物を用いる。
前記カルボジイミド化合物は分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミドまたはナフチルカルボジイミドなどを例示することができ、これらの中でも、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0030】
上記イソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートまたは3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
上記オキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)または2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0032】
上述のような加水分解抑制剤は、公知の方法に従って容易に製造することができ、また市販品を適宜使用することができる。
本発明で用いる加水分解抑制剤の種類または添加量により、本発明にかかる樹脂組成物の生分解速度を調整することができるので、目的とする製品に応じ、配合する加水分解抑制剤の種類および配合量を決定すればよい。具体的には、加水分解抑制剤の添加量は、5重量%以下、好ましくは約1重量%である。また、前記加水分解抑制剤は、上記化合物を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
【0033】
本発明にかかる樹脂組成物には、樹脂組成物の透明性や耐熱性、または加水分解抑制剤を含有させた場合はその加水分解抑制作用を損なわない限りにおいて、所望により、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、充填剤または抗菌抗カビ剤など、従来公知の各種添加剤が配合されていても良い。
【0034】
本発明にかかる樹脂組成物を原料となる各成分から製造する方法としては、原料である生分解性樹脂、所望によりフィラーや加水分解抑制剤などを混合し、押出機を用いて溶融混練するという方法が挙げられる。このほか、上記製造方法としては、いわゆる溶液法を用いることもできる。ここでいう溶液法とは、各成分を分散溶解できる任意の溶媒を用いて、原料となる各成分及び溶媒を良く撹拌し、スラリーを作り、溶媒を乾燥除去する方法である。しかし、本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、これら制限されるものではなく、これら以外の従来知られている方法を用いることができる。
【0035】
上述した本発明にかかる樹脂組成物を用いて、成形品を製造することができる。該本発明にかかる成形品は、本発明にかかる樹脂組成物を用いて公知の成形方法により製造することができる。具体的に、本発明にかかる成形物の成形方法としては、例えば、押出成形または射出成形等が挙げられ、中でも特に射出成形が好ましい。より具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば単軸押出機、多軸押出機またはタンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えばインラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機または二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。
本発明にかかる成形品の成形条件は、成形方法に応じて公知の条件に従えばよい。ポリ乳酸を主成分として含む本発明にかかる樹脂組成物を用いて、例えばウォークマンなどの小型オーディオ機器の筐体を射出成形により製造する場合、射出成形の条件としては、投入口温度約160℃程度、中間温度約170℃程度、ノズル温度約175℃程度、射出圧約2200kg/cm2程度、型締圧約120kg/cm2程度、金型温度約50〜80℃程度を例示できる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されないことはいうまでもない。
<実施例1>
生分解性樹脂として、ポリ乳酸(三井化学株式会社製 商品名H100J)を用いた。このポリ乳酸は、分子量が20万で、屈折率は室温で1.452である。
また、フィラーとして、ガラスフィラー(株式会社龍森製 商品名CRS1057)を用いた。これは、屈折率が1.458の溶融石英ガラスからなる、平均粒径がおよそ6μmの球形のガラスフィラー(株式会社龍森製 商品名PLR−6)の表面に、シランカップリング剤処理によりビニル基を導入したものである。
さらに、加水分解抑制剤として、カルボジイミド(日清紡績株式会社製 商品名カルボジライト10B)を用いた。
これらの混合割合は、ポリ乳酸100重量部に対して、ガラスフィラーが10重量部、加水分解抑制剤が1重量部である。これらを混合後、加熱混練し、ペレット化し、本発明にかかる樹脂組成物を得た。
【0037】
<実施例2,3>
ガラスフィラーの含有量を、実施例2では20重量部、実施例3では30重量部としたこと以外は、実施例1と全く同様にして本発明にかかる樹脂組成物を得た。
【0038】
<比較例1>
フィラーとして、表面にビニル基が導入されているガラスフィラーの代わりに、表面にメチル基が導入されているガラスフィラー(株式会社龍森製 商品名CRS1100)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして樹脂組成物を得た。
<実施例4>
フィラーとして、表面にビニル基が導入されているガラスフィラーの代わりに、実施例4では、表面にアクリル基が導入されているガラスフィラー(株式会社龍森製 商品名CRS1175)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして本発明にかかる樹脂組成物を得た。
【0039】
<比較例2>
ガラスフィラーを含有しなかったこと以外は、実施例1と全く同様にして樹脂組成物を得た。
【0040】
<耐熱性、透明性の試験>
上述のようにして得られた実施例1〜4および比較例1〜2の樹脂組成物のそれぞれについて、下記のようにして耐熱性および透明性の試験を行った。
樹脂組成物5gを、ホットプレス機にて180℃で溶融させ、厚さ1(〜0.9)mm、直径約7cmの板を得た。
この板から機械加工により試験片を切り出して、弾性率を測定した。弾性率の測定方法は次のとおりである。
試験片;長さ50mm×幅7mm×厚さ1mm
測定装置;粘弾性アナライザー RSA−II(レオメトリック社製)
測定ジオメトリー;Dual Cantilever Bending
周波数;6.28(rad/s)
測定開始温度;0℃
測定最終温度;160℃
昇温速度;5(℃/分)
歪;0.05%
なお、この測定方法は、引張弾性測定と曲弾性測定とが加味された複素弾性率測定によるものである。この測定によって、貯蔵弾性率と損失弾性率とが得られる。
上記測定において、測定温度が80℃のときの貯蔵弾性率を読み取り、樹脂組成物の耐熱性を示す指標とした。
【0041】
樹脂組成物の透明性を示す指標として、上記試験片のヘイズをJIS K 7105に従って、ヘーズ・透過反射率計(村上色彩研究所製)にて測定した。
また、参考として樹脂組成物の透明性を示す他の指標として、全光線透過率についても測定した。全光線透過率は、JIS K 7105に従って、ヘーズ・透過反射率計(村上色彩研究所製)にて測定した。測定の際の試験片としては、樹脂組成物をホットプレス機にて180℃で溶融させ、厚さ1mm、直径約30mmの樹脂板を作製し、さらに、前記樹脂板の表面を平滑にするために、ごく薄いガラス板(t=0.12〜0.17mm)で前記樹脂板の表面をカバーしたものを用いた。
【0042】
上記耐熱性および透明性試験の結果を下記表に示す。
【表1】
【0043】
弾性率が80℃において5.0×107Pa以上、かつ、前記樹脂組成物からなる1mm厚の板状成形体のヘイズが60%以下という条件を満たす実施例1〜4の樹脂組成物からなる成形品は、耐熱性が十分であり、熱で変形しにくい。また、かかる成形品はヘイズが低いことから、実施例1〜4の樹脂組成物は透明性が要求される用途にも十分に使用することができる。一方、比較例1〜2の樹脂組成物を用いて得られた成形品は、透明性又は耐熱性に劣る。
【0044】
〔耐加水分解性試験〕
実施例1〜4の樹脂組成物から得られる上記厚さ1(〜0.9)mm、直径約7cmの板の耐加水分解性を、加速試験による方法で評価した。80℃、湿度80%の条件で48時間エージングし、分子量を測定した。このエージングでも、分子量の顕著な低下は観察されなかった。室温付近で使用する場合は、本加速試験より穏和な条件であるため、実施例1〜4の樹脂組成物の耐加水分解性は問題無いと判断できる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、80℃という比較的高温での耐熱性と透明性とを兼ね備えている生分解性樹脂組成物を提供することができる。また、かかる樹脂を用いれば、80℃という比較的高温での耐熱性、透明性および生分解性を有する成形品を提供することができる。
Claims (3)
- 樹脂組成分としてのポリ乳酸からなる生分解性樹脂と、シランカップリング剤による処理でビニル基又はアクリル基が導入されて表面が疎水化処理されたフィラーとしての溶融石英ガラスと、加水分解抑制剤としてのカルボジイミド化合物とを含み、前記溶融石英ガラスの含有率が5〜50重量%、前記カルボジイミド化合物の含有率が5重量%以下であって、粘弾性測定により測定された弾性率の弾性成分が80℃において5.0×107Pa以上であり、かつ、1mm厚でのヘイズが60%以下であることを特徴とする成形品用樹脂組成物。
- 前記フィラーの屈折率が前記生分解性樹脂の屈折率に対して±0.05以内である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物から製造された成形品。
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