JP4094206B2 - 電力系統安定化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統安定化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力系統に系統事故が発生すると、事故によって系統の需給アンバランスを生じて、事故の影響が系統内に波及するのを防止するため、系統内の複数の発電機が動揺または脱調する前に、発電機等を系統から切り離すための系統安定化制御が行われる。系統安定化制御は事故直後に過渡安定度演算を行い、過渡安定度維持に切離しが必要な発電機を選択して電源制限(電制)を行う。また、分離系統の発生に伴い周波数安定度演算、さらには電圧安定度演算を行い、系統の周波数や電圧を一定に保つための電制や負荷制限(負制)を行う。従来は、上記の各安定度維持制御をそれぞれ個別に実施している。個別の系統安定化制御の例として、過渡安定度維持制御に関して特開昭61−46123号、特開平10−42740号など、系統周波数維持制御に関して特開平6−113464号、特開平9−46908号などがある。
【0003】
また、系統安定化制御方式には事前演算方式と事後演算方式がある。前者は、予め想定した事故について、電力系統の動特性モデルにしたがって過渡的な状態変化波及推移を予測演算し、この予測結果から電制により安定化できる発電機を予め選定しておき、事故発生時に、予め選定された発電機の中から電制用発電機を決定する。後者は、事故発生後に、事故情報などを取り込み、事故の影響により発電機が動揺または脱調するか否かを予測演算し、この演算結果から制御が必要であると判定したときには、制御すべき発電機を選定し、系統が動揺または脱調に至る前に、選定した発電機を系統から切り離す(特開平6−269123号、特開平8−182199号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
系統安定化制御は、系統に対する制御量(電制量・負制量)が少なく、かつ、系統の動揺を速やかに抑止できることが望ましい。少ない制御量でより速く安定化可能であるということは、系統信頼性の向上および電力発生から供給までのトータルエネルギー効率の向上につながる。
【0005】
しかし、従来の系統安定化制御では、3つの系統安定度維持制御を個別に行っているために、各制御間での協調に欠け、後の制御での安定化が困難になったり、制御量が増大するという問題がある。たとえば、過渡安定度維持制御の後に、周波数安定度維持に最適な電制量の発電機が残っていないことがある。このため、必要な電制量よりも多すぎる電制を実施しなければならなくなり、需給バランスから負制が必要になるなど、制御量(電制量・負制量)が増大して系統運用効率が低下するだけでなく、系統安定化までに時間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、複数の安定度維持制御の協調を考慮し、事故後の系統が最小の制御量で速やかに安定化される信頼性の高い電力系統安定化装置を提供することにある。本発明によれば、系統運用効率の向上が可能になる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、系統事故の発生により過渡安定度維持の制御を行う場合に、周波数安定度および電圧安定度を同時に考慮し、3つの系統安定度の協調が図られるように電制発電機を選定する制御アルゴリズムを創成して成し得たものである。
【0008】
本発明は、事故情報を含む系統運用情報を入力し、系統事故時に前記情報に基づいて求めた系統の過渡安定度から、安定化に必要な電源制限(以下、電制)に適した発電機を系統内から選定し、選定した発電機の遮断指令を出力する電力系統安定化装置において、前記電源制限に必要な発電機(以下、電制発電機)の選定のために、系統の過渡安定度維持に効果のある指標(以下、過渡安定度効果指標)と周波数安定度維持に効果のある指標(以下、周波数安定度効果指標)、または、前記過渡安定度効果指標、前記周波数安定度効果指標及び電圧安定度維持に効果のある指標(以下、電圧安定度効果指標)の各指標値を系統内の発電機毎に算出し、算出した各指標値に基づいて総合化した電制効果指標値を演算し、前記電制効果指標値が最も高い発電機を電制候補として選択する電制候補選択手段を設けている。
【0009】
そして、前記電制候補の発電機を系統から切り離して系統の安定化が可能となると判定される場合は、当該電制候補を前記電制発電機として選択する。一方、系統の安定化が不可能と判定される場合は、追加の電制発電機を選定するために前記電制候補選択手段による前記電制候補の選択を繰り返す。
【0010】
前記電制効果指標値は、前記過渡安定度効果指標と周波数安定度効果指標の積、またはそれらと前記電圧安定度効果指標の積により求める。
【0011】
前記過渡安定度効果指標は、前記電制発電機または前記電制候補に選択済のものを除外する選択絶対条件指標と脱調傾向が高い発電機ほど選択され易くする発電機加速指標の積を含み、前記周波数安定度効果指標は、事故点から作成する想定分離系統内において、電制発電機の合計出力が事故前に事故点に流れていた潮流量を超えないように、かつ、前記潮流量に近い出力の発電機ほど選択され易くする需給バランス指標を含んでいる。
【0012】
また、前記電制候補選択手段は、系統内の全ての発電機について前記電制効果指標値が規定値以下(ゼロ以上の所定値)で、かつ系統の安定化が不可能と判定される場合に、前記周波数安定度効果指標、または前記周波数安定度効果指標及び前記電圧安定度効果指標の各指標値が前記規定値以下にならないように緩和した演算式を用いて、系統内の発電機毎に各指標値を算出し、算出した各指標値に基づいて総合化した電制効果指標値を演算し、緩和した演算式による電制効果指標値が最も高い発電機を電制候補として選択する。
【0013】
本発明の作用を説明する。図2は本発明における電制発電機選択の概要を示している。系統事故が検出されると、事故情報(事故点、事故種別など)を含む系統運用情報に基づいて系統過渡安定度を演算する。すなわち、事故の影響により発電機が動揺または脱調するかを予測演算(過渡安定度演算)し、不安定(動揺または脱調)になると判定される場合は、系統を安定化させるために必要な電制発電機の候補を選択し、再度、過渡安定度演算を行う。この結果、安定化可能となれば、電制候補を電制用発電機に選定して遮断指令を出力する。
【0014】
本発明では、電制候補を選択する場合、過渡安定度維持とともに、周波数安定度維持、さらには電圧安定度維持も考慮した電制効果指標、即ち、数1による統合型電制効果指標を系統内の発電機毎に演算し、この統合型指標が最も高くなる発電機を電制候補として選択する。
【0015】
【数1】
Tn=An・Bn・Cn (or)
Tn=An・Bn
ここで、An:過渡安定度効果指標関数、Bn:周波数安定度効果指標関数、Cn:電圧安定度効果指標関数である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による電力系統安定化装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は電力系統安定化装置の概略のシステム構成を示す。本システムは中央演算装置10、伝送路20、複数の情報収集端末30、複数の制御端末40を備えている。中央演算装置10は伝送路20を介して各情報収集端末30に接続されているとともに、伝送路20を介して各制御端末40に接続されている。
【0017】
情報収集端末30は電力系統に分散して配置されており、電力系統の系統運用情報であるTM(テレメータ)データ、例えば、発電機の端子電圧、有効・無効電力、送電線の有効・無効電力、負荷母線の電圧、消費有効・無効電力などのデータを取り込むとともに、SV(スーバーバイザ)データ、例えば、リレーの動作や遮断器の開閉状態およびその状態変化など、機器構成の変化データを入力し、入力した系統運用情報を伝送路20を介して中央演算装置10に伝送する。なお、各情報収集端末30は、事故発生時にアナログ情報である変圧器(PT)、変流器(CT)や接点入力(保護リレー動作など)を入力することも可能である。
【0018】
中央演算装置10の系統安定化制御演算部101は、各情報収集端末30からの情報を基に、事前演算と事後演算を併用して、電力系統の事故発生時に、複数の制御対象、例えば、系統に分散して配置された複数の発電機を順次選択するための演算を行ない、この積算結果にしたがった制御指令を伝送路20を介して制御端末40に出力する。
【0019】
系統安定化制御演算部101による事前演算は、情報収集端末30からの系統運用情報を基に、予め想定した事故ケースに対し、電力系統の動特性モデルにしたがった過渡安定度計算、安定判定(脱調判定)、安定化対策演算(電制候補選択演算)を行ない、各演算結果にしたがって、安定化対策上制御すべき発電機などを、予め想定した事故ケースに関連づけて事前に登録しておく。
【0020】
系統事故が発生し、安定化制御が必要なときは、事前登録された発電機を電制候補として過渡安定度演算を行い、安定化可能であれば、当該発電機の遮断指令を制御端末40に出力する。安定化不可能であれば、電制候補を再選択して、上記処理を繰り返す。事故後、直に事前演算で登録された発電機を遮断し、それでも制御量が不足しているときは、他の電制発電機を選択して切り離すための制御演算を行うようにしてもよい。
【0021】
本実施例の中央演算装置10は、上述した系統安定化制御演算部101とともに統合型電制指標演算部102を備えていて、事故後の安定度計算の結果、系統が安定化できないと判定される場合に、発電機ごとに電制効果指標Tnを演算し、Tnが最も高い発電機を電制候補に追加する安定化対策演算を実施している。統合型電制指標演算部102は後述する電制効果指標演算アルゴリズムを主体とし、記憶媒体に格納して、従来型の過渡安定度維持の系統安定化装置に容易に付加できる。なお、系統安定化制御演算部101と統合型電制指標演算部102は一体構成されてもよい。
【0022】
本実施例では事故前演算と事故後演算を併用する系統安定化制御方式としている。しかし、事故前演算を行わない制御方式に対しても、発電機ごとに電制効果指標Tnを演算して電制候補を選択する本発明の方法は適用可能である。また、事故前演算による制御方式の決定にも適用可能である。
【0023】
制御端末40は、制御設備単位あるいは制御設備のある電気所単位に配置されており、中央演算装置10において演算された制御指令として、事前演算による制御指令と事後演算による制御指令が伝送路20を介して入力されるようになっている。そして、演算装置10から制御指令が入力された制御端末40では、系統安定化制御として、指定の発電機を系統から切り離す電制を行なったり、特定の負荷を系統から切り離す負制を行なったりするとともに、変電所などに設置された電力用コンデンサ(SC)や分路リアクトル(ShR)の入り切り制御を同時に行なうようになっている。制御端末40によって発電機が系統から切り離される制御が行なわれると、系統が安定化されることになる。
【0024】
図3は、電力系統安定化演算装置の処理フローの一例を示す。まず、情報収集端末30から系統運用情報(TMデータ、SVデータ)を順次入力し、入力した系統運用情報を基に過渡安定度計算に必要な系統モデルを作成する(S10‐1)。次に、予め想定された事故地点に対し、事故シーケンス(分離系統モデル)を仮定して過渡安定度計算(S10‐2)、脱調判定(S10‐3)、安定化対策演算(S10‐4)が行なわれる。
【0025】
ここでの事故シーケンスとしては、事故の発生する事故点、事故点における事故インピーダンス、事故の発生する様相、遮断器の再閉路方式、遮断器の再閉路の成功/失敗、線路開放の有無および各事象の発生タイミングなどが考慮される。具体的に仮定される事故シーケンスは、例えば、3サイクル遮断(超高圧系統を想定し、保護リレーの動作を仮定)とする設定や、あるいは事故発生個所を線路の負荷側至近端とする設定が可能である。
【0026】
ステップS10‐2の過渡安定度計算では、電力系統の動特性シミュレーションが行なわれる。一例として、Y法アルゴリズムを説明する。制御系の内部状態を表現する微分方程式と、各発電機を互いに接続する回路網の連立方程式を組み合わせた数2によりインターフエース計算を行なう。
【0027】
【数2】
dx/dt=Ax+Bu
YE=I
u=g(y,E)
I=h(y,E)
ただし、x:状態ベクトル、u:入力信号、A,B:定数、I:ノードインジェクション電流、E:ノード電圧、Y:ノードアドミッタンス行列である。上記方程式を解くことで、例えば発電機の状態として位相角が求められ、この位相角と基準発電機との位相角差を求めることができる。
【0028】
ステップS10‐3における脱調判定では、過渡安定度計算結果(ここでは、位相角差)が用いられ、系統に接続されている発電機の脱調判定が行なわれる。脱調する発電機がある場合、安定度計算結果は不安定となるので、制御対象の選択が行なわれる。脱調判定方法の一例として、過渡安定度計算結果による波形データを基に、基準発電機に対する各発電機の内部位相角差による安定判別方法を説明する。
【0029】
過渡安定度計算において、動特性を示す微分方程式を用いて時間ごとの過渡状態を演算し、各発電機の内部位相角が求められる。ここで、基準発電機と各発電機の内部位相角差を求めることにより、各発電機が事故により安定度的にどのような影響を受けているかを判定できる。すなわち、基準発電機に対する位相角差が増大し発散傾向にあるときには、当該発電機は脱調傾向にあり、安定化対策を行なわなければ発電機の同期運転ができなくなり、大規模な停電を引き起こすことになる。
【0030】
本実施例では、発電機が脱調しているか否かの判定に、発電機の位相角差に対する一定のしきい値を用いる。また、各時間刻みの位相角差を基に波形を認識し、波形データの極大値、極小直より振幅を求め、各振幅ごとに発散傾向(不安定)か収束傾向(安定)か否かを判定することもできる。また、各発電機の位相角差の代わりに、各発電機の角速度や加速エネルギーを用いて脱調判定を行なうことも可能である。
【0031】
S10‐3で、脱調判定結果が不安定と判定されたときには、系統安定化上必要となる制御対象を選択するための演算が行なわれる(S10‐4)。系統安定化上必要な制御対象としては、発電機、需要家などの負荷、あるいは変電所などに設置された電力用コンデンサ(SC)や分路リアクトル(ShR)などがあるが、以下では発電機を選定する場合について説明する。
【0032】
S10‐4の電制用発電機の選定は、まず、発電機毎の電制効果指標Tnを後述するように演算し、指標が最も高くなる発電機を電制候補とする。次に、その電制候補を系統から切り離したシーケンスの各発電機について、上述の過渡安定度計算を行いその結果が安定であれば、つまり、事故後の系統内の各発電機に脱調が生じなければ、それまでの電制候補を電制用発電機とする。
【0033】
S10‐3で、脱調判定の結果が安定と判定されたときには、計算結果登録が行われる(S10‐5)。それぞれの想定事故ケースに対して、S10‐4で求めた電制用発電機が対応するように関連づけられてテーブルに登録される。
【0034】
次に、情報収集端末30からの情報を基に電力系統で事故が発生したか否かの判定が行なわれる(S20)。ここでは、各情報収集端末30からのアナログ情報(PT、CTなど)や接点入力(リレー動作など)を基に、事故発生の有無、事故様相(事故ケース)などが判定される。なお、ステップS20において、併せて事故点標定演算を行い、事故点標定装置によらずに事故点を求めることも可能である。
【0035】
ステップS20において、事故が発生したと判定されたときには、ステップS10‐5で登録された電制用発電機の遮断指令が出力されるとともに、ステップS30からの事後演算に移る。事故が発生していないときにはステップS1O‐1に戻り、新しく入力されたデータにしたがってステップS10、S20の処理が繰り返される。
【0036】
事故後の演算では、事前演算の結果と事故点、事故様相の情報を反映して過渡安定度演算が行われる(S30)。ここでの安定度演算は、上述と同様に位相角差を求め、安定か不安定か、つまり脱調が生じるか否かを判定する(S40)。なお、事前登録された発電機が直ちに遮断される場合は、遮断後のシーケンスでの過渡安定度演算が行われる。また、事前登録された事故ケースと同一のものがない場合は、事故後の系統運用情報による過渡安定度演算が行われる。
【0037】
安定度計算結果の判定が“安定”とならなければ、電制効果指標Tnを系統内の全ての発電機(1〜n)を対象に、数1により算出する(S50)。そして、Tnが規定値より大きくなる発電機があるか判定し(S60)、あれば、Tnが最大となる発電機Gnを電制候補として選択し(S70)、ステップS30に戻る。なお、既に電制済みの発電機や、電制候補に上げられている発電機は、後述のように、Tn=規定値となる運用指標が含まれているので、再度選択されることはない。なお、規定値は0以上の所定値で、通常は0より大きな値が設定されている。
【0038】
ステップS60で、すべての発電機の電制効果指標が規定値となった場合には、電制効果指標演算式の切り替えを行い(S100)、次に述べるように条件緩和を行う。指標Bn、Cnの関数は、数3で示されるように、0になりうる関数として定義されている。これに対して、数4の関数を用意し、指標が0にならないようにする。
【0039】
【数3】
Bn=αB (αB≧0)
Cn=αC (αC≧0)
【0040】
【数4】
Bn’=1+Bn
Cn’=1+Cn
この数4のタイプの関数を用いると、数1の電制効果指標Tnは数5のTn’に切り替えられる。
【0041】
【数5】
Tn’=An・Bn’・Cn’
ステップS100で電制効果指標の計算式を切り替えた後、S50〜S60と同様に、S110〜S120で電制効果指標T1’〜Tn’を演算し、指標が最大となった発電機をS70で電制候補へ追加していく。ここで、S120で電制効果指標Tn’がすべて規定値以下となった場合には、電制不足メッセージを表示し(S130)、ステップS80へ計算結果を出力する。
【0042】
上記の電制選択アルゴリズムで電制効果指標値Tnがすべて規定値以下となる場合には、追加される電制候補がなくなる。たとえば、過渡安定度維持の指標値Anが大きくなったとしても、周波数安定度、電圧安定度の指標値Bn、CnがゼロになるとTnがゼロとなるために、電制発電機が選択されなくなり、過渡安定度維持の制御も困難になる。そこで、上記の切り替えによって電制候補発電機の選択条件を緩和し、系統安定化のための制御量を確保する。
【0043】
上記のような効果指標の切り替えによっても、周波数安定度および電圧安定度維持はある程度考慮されるので、従来の個別制御に比べて系統安定化の信頼性は向上する。
【0044】
ここで、電制効果指標Tnを構成する指標An、Bn及びCnの各数式と内容について説明する。過渡安定度効果指標An、周波数安定度効果指標Bn、電圧安定度効果指標Cnは数8で表され、それぞれ1ないし複数の指標(≧0)の積で重み付けされる指標である。
【0045】
【数6】
An=A1n×A2n×A3n×・・・
Bn=B1n×B2n×・・・
Cn=C1n×・・・
過渡安定度効果指標の中で、主要な指標を以下に説明する。選択絶対条件A1nは制御対象から除いて置くための指標で、発電量が定格より十分小さい、系統事故発生後の発電量の出力変化が小さい、または既に電制または電制候補となっている発電機を対象とし、該当する発電機はA1n=0とし、それ以外のものはA1n=1とする。
【0046】
発電機加速指標(発電機位相角差)A2nは過渡安定度維持に最も影響を与える必須の指標である。系統の状態は、発電機の回転子が系統の基本周波数から同期ずれを起こすと、系統自体の基本周波数に影響を与える。逆に、系統事故などで系統動揺が起こると、発電機の振舞いが系統の動揺にふられて定常状態にならず、安定度が失われていく。従って、系統の安定化のためには同期ずれが大きな発電機を切り離す必要がある。発電機加速指標A2nは、この発電機回転子と系統周期の同期ずれ量に対応した大きさの重み付けをもつ値となる。A2nの具体的な値は、安定度計算が打ち切られるまでに、系統状態に対する発電機位相角差が電制候補しきい値δ0を超えた場合、その超過した時の系統状態に対する発電機位相角差に比例した値となる。
【0047】
電制優先指標A3nは運用条件や発電機特性上から、発電機毎に電制優先順位を設定した指標で、設定パラメータα3n(≧0)から、A3n=1+α3nと算出される。たとえば、起動に時間のかかる発電機の優先順位は低くなる。
【0048】
周波数安定度効果指標Bnのなかで、最も周波数安定度に影響を与える指標として、想定分離系統内需給バランス指標B1nがある。系統の周波数は、系統を構成する発電量および負荷量の需給量の均衡がとれているときに基本周波数(50Hz/60Hz)の定常状態になるよう運用される。しかし、系統事故で系統が分断されたり、負荷脱落がおきると、系統の需給量に不均衡が生じ、周波数が変動する。
【0049】
系統状態を基本周波数で周波数安定化させるためには、対象系統の需給バランスをとる必要がある。故障地点から算出する想定分離系統について、分離系統内の需給不均衡が生じないように電制を実施しておけば、分離系統発生後の周波数制御での制御量を減少させることが可能である。分離系統内の需給不均衡量は、故障発生前に分離系統から本系統に流れていた潮流量となるため、電制発電機の出力合計が故障発生前に故障地点で流れていた潮流を超えないように、かつ、この潮流量と電制量が近くなる発電機が選択されるように、数7で定義した指標を計算する。
【0050】
【数7】
B1n=a×h(絶対条件時) (or)
B1n’=1+a×h(優先条件時)
ただし、PG(SHD(N−1)+Gk)<ΔPの場合、
h=ΔP/(ΔP−PG(SHD(N−1)+Gk))
また、PG(SHD(N−1)+Gk)>ΔPの場合、
h=(ΔP−PG(SHD(N−1)+Gk))/ΔP
ここで、a:分離系統内需給バランス優先パラメータ、Gk:N回目選択ステップで電制候補になった発電機、SHD(N−1):(N−1)選択ステップまでに選択済みの電制発電機集合、SUB(S):想定分離系統S内の発電機集合、PG(X):発電機集合Xが保持する発電量(MW)、ΔP:分離系統から本系統に流れていた潮流である。
【0051】
図4の系統モデルを参照し、上述の定義に従って想定分離系統内需給バランス指標B1nの計算例を説明する。系統の事故発生地点F点から図示の想定分離系統Sの発電機集合は数8で表される。
【0052】
【数8】
SUB(S)={A,B,C,D,E}
今、第1回目の電制候補として、SHD(1)={A}によりAが選択されていたとする。このとき、発電機Bの需給バランス指標を求めるには、まず、PG({A,B})、すなわち、発電機AとBの合計発電量が、事故発生地点F点の事故発生前の事前潮流量ΔPより小さいか比較する。図示例では、100+300<500の関係にあるので、分離系統内の電制量が事前潮流量を超えない場合となり、B1nは数9のように算出される。aは設定パラメータである。
【0053】
【数9】
一方、分離系統内の電制量が事前潮流を超える場合は、B1nは数10により算出される。
【0054】
【数10】
B1n=a×(事前潮流量―分離系統内電制量)/(事前潮流量)
指標B1n以外にも周波数安定度のために考慮できる指標として、想定分離系統内瞬動予備力優先指標、想定分離系統内発電機タイプ優先指標、想定分離系統内電制機出力分散指標があり、本実施例では分離系統内瞬動予備力優先指標B2nを用いている。
【0055】
たとえば、発電機の瞬動予備力は周波数変動に対する調整力を意味する。B2nは分離系統における瞬動予備力合計がある規定値以上残るように、電制発電機を選択することを目的とした指標で、数11で計算する。
【0056】
【数11】
B2n=i×Gn(絶対条件時) (or)
B2n’=1+i×Gn(優先条件時)
ただし、GF(SUB(S)−SHD(N−1)−Gk)>CONSTの場合、Gn=1
また、GF(SUB(S)−SHD(N−1)−Gk)<CONSTの場合、Gn=0
ここで、i:分離系統内瞬動予備力優先パラメータ、CONST:定数(設定パラメータ)、Gk:N回目選択ステップで電制候補になった発電機、SHD(N−1):(N−1)回目選択ステップまでに選択済みの電制発電機集合、SUB(S):想定分離系統S内の発電機集合、GF(X):発電機集合Xが保持するガバナフリー量(%)である。
【0057】
電圧安定度効果指標Cnのなかで、最も電圧安定度に影響を与える指標として、無効電力余裕量優先指標C1nがある。発電機の無効電力余裕量は電圧降下を防止して電圧を維持できる調整量を意味し、指標C1nはこの調整量を系統内に残しておくことを目的とする。対象系統内の無効電力余裕量の合計値がある規定値以上となるように指標C1nを以下のように求める。
【0058】
発電機の無効電力余裕量は、発電機可能出力曲線(MELカーブ)を使用し、発電機可能出力曲線(MELカーブ)と故障発生前の有効出力から最大無効出力を求め、求めた最大無効出力から故障発生前の無効電力を差し引き、無効電力余裕量とする。この条件は、以下により定式化する。
【0059】
Gk:N回目選択ステップで電制候補になった発電機、SHD(N−1):(N−1)回目選択ステップまでに選択済みの電制発電機集合、SUB(S):対象系統S内の発電機集合、RQ(X):発電機集合Xが保持する無効電力余裕量(%)、q:対象系統内無効電力余裕量優先パラメータ、CONST:定数(設定値)として、数12より求める。
【0060】
【数12】
Cn=q×Gn(絶対条件時) (or)
Cn’=1+q×Gn(優先条件時)
ただし、RQ(SUB(S)−SHD(N−1)−Gk)>CONSTの場合、Gn=1
また、RQ(SUB(S)−SHD(N−1)−Gk)<CONSTの場合、Gn=0
図5に、電制効果指標値及び電制発電機候補の管理テーブルを示す。図示例は、対象系統にある発電機G1〜Gnから、電制候補発電機を選択する過程を示している。本実施例では、過渡安定度効果指標AnにA1n,A2n,A3n、周波数安定度効果指標BnにB1n,B2n、電圧安定度効果指標CnにC1nを用い、電制効果指標Tnはこれら各指標の積として算出される。図示のように、発電機G1はA1n=0、T1=0で、既に、電制候補となっている。今回の演算では、発電機G2の電制効果指標T2が120と最も高く、電制候補に選択される。
【0061】
図6に、本実施例と従来例の系統安定化制御の比較例を示す。(a)は対象となる系統モデル(事故シーケンス)で、P点で系統事故(地絡)が発生した場合を検討する。(b)は制御結果の比較表を示す。
【0062】
従来の系統安定化制御では、事故発生時、まず、過渡安定度演算制御、次いで周波数安定度演算制御が個別に行われる。P点の事故で、過渡安定度維持に必要な電制量が300MWと算出されたとすると、F発電所の発電機G1(400MW)が最適な電制用発電機に選択される。
【0063】
次に、進展故障により、P点で系統が分断すると、点線で示す分離系統内では需給不均衡量が+300MW(発電量超過分)となるので、更に300MWの電制が必要になる。しかし、G1は電制済みのため、次に電制量の小さいF発電所のG2(700MW)が電制される。この結果、分離系統内では、需給不均衡量が−400MWとなって供給不足を生じるため、次の周波数安定度維持制御で、B変電所の負荷制限(400MW)が実施される。結局、従来の制御方式では、過渡安定度維持制御によるF発電所G1及び周波数安定度維持制御によるF発電所G2の電制が2回行われ、制御量の合計が1100MW、また、周波数安定度維持制御によるB変電所の負制が1回行われ、制御量400MWとなる。
【0064】
これに対し、本実施例の系統安定化制御では、最初のP点における事故発生時の統合型電効果指標の演算から、最適な電制候補としてF発電所のG2(700MW)が選択される。これは、P点における事故前の事前潮流量が700MWであり、過渡安定度としては300MWで安定化できることから、F発電所G2に対する想定分離系統内需給バランス指標Bnの値が大きくなり、統合電制効果指標TnとしてはG2の値が最も大きくなるためである。この結果、進展故障により、P点で系統が分断しても、分離系統の需給バランスが保たれているため、系統内の各発電機に脱調を生じるものがなく、本例この後の電制や負制が必要なくなる。この結果、従来方式に比べて、制御量、制御回数を大幅に低減できる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の電力系統安定化制御装置によれば、系統の周波数安定度、さらには電圧安定度と協調性のある過渡安定度維持の制御が可能となり、系統安定化のための制御量や制御回数を大幅に低減できる。また、系統の安定化にとって多観点から最適な制御対象を選択できるので、システムの信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による電力系統安定化装置の構成図。
【図2】本発明の系統安定化制御の概要を示す説明図。
【図3】本発明による系統安定化制御の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図4】想定分離系統内需給バランス指標の算出方法を示す系統図。
【図5】電制効果指標値及び電制発電機候補の管理テーブルのデータ構成図。
【図6】系統安定化制御の本実施例と従来例を比較する説明図。
【符号の説明】
10…中央演算装置、20…伝送路、30…情報収集端末、40…制御端末、101…系統安定化制御演算部、102…統合型電制効果指標演算部。
Claims (5)
- 事故情報を含む系統運用情報を入力し、系統事故時に前記情報に基づいて求めた系統の過渡安定度から、安定化に必要な電源制限(以下、電制)に適した発電機を系統内から選定し、選定した発電機の遮断指令を出力する電力系統安定化装置において、
前記電源制限に必要な発電機(以下、電制発電機)の選定のために、系統の過渡安定度維持に効果のある指標(以下、過渡安定度効果指標)と周波数安定度維持に効果のある指標(以下、周波数安定度効果指標)、または、前記過渡安定度効果指標、前記周波数安定度効果指標及び電圧安定度維持に効果のある指標(以下、電圧安定度効果指標)の各指標値を系統内の発電機毎に算出し、算出した各指標値に基づいて総合化した電制効果指標値を演算し、前記電制効果指標値が最も高い発電機を電制候補として選択する電制候補選択手段を設け、
前記電制候補の発電機を系統から切り離して系統の安定化が可能となると判定される場合に、当該発電機を前記電制発電機として選択し、系統の安定化が不可能と判定される場合に、追加の電制発電機を選定するために前記電制候補選択手段による前記電制候補の選択を繰り返すことを特徴とする電力系統安定化装置。 - 請求項1において、
前記電制効果指標値は、前記過渡安定度効果指標と周波数安定度効果指標の積、またはそれらと前記電圧安定度効果指標の積により求めることを特徴とする電力系統安定化装置。 - 請求項1または2において、
前記過渡安定度効果指標は、脱調傾向が高い発電機ほど選択され易くする発電機加速指標の積を含み、
前記周波数安定度効果指標は、事故点から作成する想定分離系統内において、電制発電機の合計出力が事故前に事故点に流れていた潮流量を超えないように、かつ、前記潮流量に近い出力の発電機ほど選択され易くする需給バランス指標を含んでいることを特徴とする電力系統安定化装置。 - 請求項1、2または3において、
前記電制候補選択手段は、系統内の全ての発電機について前記電制効果指標値が規定値以下で、かつ系統の安定化が不可能と判定される場合に、
前記周波数安定度効果指標、または前記周波数安定度効果指標及び前記電圧安定度効果指標の各指標値が前記規定値以下にならないように緩和した演算式を用いて、系統内の発電機毎に各指標値を算出し、算出した各指標値に基づいて総合化した電制効果指標値を演算し、前記電制効果指標値が最も高い発電機を電制候補として選択することを特徴とする電力系統安定化装置。 - 請求項1、2、3または4において、
前記電力系統安定化装置が、系統事故の発生前に想定事故毎の系統の過渡安定度から安定化に必要な電制発電機を予め選定して記憶されている場合は、系統事故の発生後に、該当事故に対して記憶されている電制発電機の遮断後または遮断前に、系統事故後の系統運用情報に基づいて系統の過渡安定度を求め、該過渡安定度から系統の安定化が不可能と判定されるときは、追加の電制発電機を選定するために前記電制候補選択手段による前記電制候補の選択を行うことを特徴とする電力系統安定化装置。
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