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JP4100759B2 - 化合物半導体装置の製造方法 - Google Patents
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JP4100759B2 - 化合物半導体装置の製造方法 - Google Patents

化合物半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般に化合物半導体装置の製造方法に関するものであり、より特定的には、Ga1-xInxyAs1-yおよびGaNyAs1-y 結晶薄膜を素子の一部に有する化合物半導体装置の製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
近年、V族元素として窒素を含んだIII−V族混晶半導体が新規半導体材料として注目されている。この材料によれば、窒素と構成元素の濃度を適切に選ぶことにより、Si、GaAs、InP、GaP基板上にミスフィット転位を発生させることなく、エピタキシャル成長が可能である。
【0003】
たとえば、特開平6−334168号公報には、Si基板上にIII−V族混晶半導体をエピタキシ成長させ、Si電子素子とのモノリシック化を行なう例が記載されている。特開平6−037355号公報には、GaAs、InP、GaP基板上に、GaInNAs、AlGaNAs、GaNAsをエピタキシ成長させた例が記載されている。特開平9−283857号公報には、GaAs基板上にGaInNAs薄膜結晶をエピタキシ成長させ、半導体レーザを作製した例が挙げられている。
【0004】
GaAs基板上に窒素を含んだIII−V族混晶半導体、たとえばGa1-x Inx y As1-y 、GaNy As1-y を用いて光学素子、電子素子を作製する利点として、以下の点が考えられる。従来までは、GaAs基板に格子整合する混晶半導体は、GaAsよりもバンドギャップが大きいものがほとんどであった。たとえば、AlGaAs、GaInPなどが挙げられる。ここで新しい材料であるGa1-x Inx y As1-y 、GaNy As1-y はGaAsよりバンドギャップを小さくできる利点がある。
【0005】
また、Ga1-x Inx y As1-y では、インジウム組成x、窒素濃度yを、GaNy As1-y では窒素濃度を変えることで、バンドギャップを連続的に変えることができる利点もある。この材料を他の材料と組合せ、多層構造を作製すると、これまでは実現ができなかったGaAsの発光波長よりも長波長の光学素子が作製可能である。たとえば、Gax In1-x y As1-y 、GaNy As1-y を活性層に用いることにより、光ファイバ通信に用いられる波長1.3μm、1.55μmでレーザ発振する半導体レーザが作製可能である。また、赤外光を検出する受光ダイオードが作製可能である。
【0006】
図1に、Ga0.85In0.150.05As0.95を用いた半導体レーザの例(a)と受光ダイオードの例(b)を示す。上記の組成により、半導体レーザでは、光ファイバを用いた光通信に使われる1.3μmでのレーザ光発振が可能である。
【0007】
Ga0.85In0.150.05As0.95は、光が励起される活性層に用いられている。受光ダイオードは、キャリア濃度が高いp型、キャリア濃度が低いn型、キャリア濃度が高いn型を積層したp−i−n構造をGa0.85In0.150.05As0.95材料により構成すると、1.3μmまでの赤外光が検出可能である。
【0008】
これまで、これらのレーザダイオード、受光ダイオードは、InP基板上に作成されてきた。レーザダイオードの場合、InGaAsPが、光が励起される活性層に用いられている。しかし、InP基板は、GaAs基板と比較して、量産性、価格面において劣っているという問題があり、その基板上に作製されるレーザにおいても量産性、価格面において劣る。
【0009】
GaNy As1-y は、GaAsに格子整合しないが、レーザダイオードの活性層に用いる場合、厚みを十分薄くすることでミスフィット転位などの結晶欠陥を発生させずに、ダイオード構造を作製できる。同様に、Gax In1-x y As1-y でも、xとyの組成比が適切に選ばれないと、ミスフィット転位が発生するが、厚みを十分薄くすることで、結晶欠陥の発生が防止できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
これまでに、この材料は、ガス原料を用いた分子線エピタキシ(MBE)(コンドウ他、JJAP35(1996)1273)、有機金属気相成長法(OMCVD)(サトウ他、JJAP36(1997)2671)により成長されているが、窒素濃度を高くすると、光学的特性が劣化することが確認されている。
【0011】
光学特性の良否を判断する方法に蛍光特性(フォトルミネッセンス)を測定する方法がある。Ga1-x Inx y As1-y 、GaNy As1-y の評価には、アルゴンレーザが発生する波長514nmの光を照射し、結晶から出てくる蛍光の強度を測定する方法が一般的である。
【0012】
結晶中に欠陥や不純物が存在すると、蛍光を阻害し、強度が弱くなる。強度を測定することで、光学特性の良否が判断できる。また、蛍光の波長に対する広がり(一般に、ピーク半値幅と呼ばれている。)は、結晶性の良否と相関がある。ピーク半値幅が狭い場合、結晶性がよい。
【0013】
表1に、530℃成長の、インジウムを含まないGaNx As1-x の蛍光強度と窒素組成の相関関係(測定室温)を示す。窒素濃度が高くなるに従い、急激に蛍光の強度が弱くなり、光学特性が劣化することがわかる。窒素濃度が高いと、全く蛍光が確認されない。
【0014】
【表1】
Figure 0004100759
【0015】
表2に、530℃成長のGa0.965 In0.05y As1-y の蛍光強度と窒素組成yの相関関係(測定室温)を示す。
【0016】
【表2】
Figure 0004100759
【0017】
表2から明らかなように、上述と同様の傾向がGaInNAsでも確認されている。
【0018】
表3に、530℃成長のGaNAsの比抵抗と窒素組成の相関関係(測定室温)を示す。
【0019】
【表3】
Figure 0004100759
【0020】
表4に、530℃成長のGaInNAsの比抵抗と窒素組成のと相関関係(測定室温)を示す。
【0021】
【表4】
Figure 0004100759
【0022】
表3および表4から明らかなように、GaNx As1-x 、GaInNAsともに窒素濃度が高くなるに従い、比抵抗が大きくなり、電気特性が劣化する。
【0023】
このように、光学特性、電気的特性が悪い薄膜結晶を、前述の発光素子として用いた場合、素子の動作特性、信頼性を著しく劣化させる。受光素子の場合、受光感度が低くなり、微弱な光の検出ができない。また、発光素子の場合、光の発光強度が弱くなる。また、特に半導体レーザでは連続的なレーザ光発振ができない。発光受光素子、電子素子いずれの場合も、抵抗率が高い層が多層膜中に存在すると、電気的に動作しない場合がある。
【0024】
それゆえに、この発明の目的は、実用に十分な水素不純物が少なく、高い光学特性、電気特性を有するGa1-xInxyAs1-y、GaNyAs1-y結晶を有する化合物半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0025】
この発明の他の目的は、水素不純物が多い場合も、窒素−水素結合を切断する熱処理、水素濃度を低減する熱処理により、結晶の高品質化が計られ、電気特性、光学特性が良好な光学素子を得ることができる製造方法を提供することにある。
【0026】
この発明のさらに他の目的は、水素不純物が少ない場合も、熱処理により窒化物結晶固有の問題を解決し、良好な結晶を提供することができる製造方法を提供することにある。
【0027】
この発明のさらに他の目的は、結晶成長に引続いて、熱処理を行なうことで、結晶成長の省時間と省エネルギにも有利であり、素子の大量生産が可能となる製造方法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明の化合物半導体装置の製造方法は、光ファイバ通信の搬送波に用いる赤外光を出射し、該赤外光を生じる活性層がIII−V族混晶半導体に窒素および砒素を含有させた半導体層から成る化合物半導体装置の製造方法において、GaAs半導体基板を準備する工程と、前記GaAs半導体基板の上に、Ga1−xInAs1−y(0<x≦0.35,0<y≦0.05)および/またはGaNAs1−y(0<y≦0.06)からなる半導体層を活性層としてエピタキシャル成長により形成する工程と、前記活性層をエピタキシャル成長した後に前記GaAs半導体基板を、非酸化性ガス雰囲気中、ヒ素系ガス雰囲気中、リン系ガス雰囲気中、または真空中で、850℃以上1100℃以下で熱処理することにより、前記活性層中の水素濃度を1cmあたり5×1018個以下とする工程と、を備える。
【0029】
上記の方法によれば、GaAs半導体基板の上記半導体層について熱処理条件と水素濃度との関係を把握しておき、Ga1-xInxyAs1-y(0<x≦0.35,0<y≦0.05)および/またはGaNyAs1-y(0<y≦ . 06)中の水素濃度が1cm3あたり5×1018以下になる熱処理条件で熱処理を行うことができる。この結果、製品の水素濃度を上記濃度以下に確実にできるので、これらの半導体層の発光特性を向上し、また電気抵抗を減少させることができる。
【0030】
この発明の参考となる化合物半導体装置の製造方法によれば、まず、GaAs半導体基板を準備する。上記GaAs半導体基板の上に、Ga1-x Inxy As1-y(0<x≦0.35,0<y≦0.05)および/またはGaNy As1-y (0<y≦ . 06)からなる、III−V族混晶半導体に窒素を含有させたものであり、1cm3あたり5×1018個以上の水素を含む半導体層を形成する。上記半導体層を、非酸化性雰囲気、ヒ素系ガス雰囲気、リン系ガス雰囲気、または真空で、500℃以上800℃未満で熱処理し、それによって上記半導体層中の水素不純物と窒素の結合を切断する。
【0031】
この発明の参考となる化合物半導体装置の製造方法によれば、まず、GaAs半導体基板を準備する。上記GaAs半導体基板の上に水素濃度が1cm3あたり5×1018個以下にされた、Ga1-xInxy As1-y (0<x≦0.35,0<y≦0.05)および/またはGaNyAs1-y (0<y≦ . 06)からなる、III−V族混晶半導体に窒素を含有させた半導体層を形成する。上記半導体層を、非酸化性ガス雰囲気中、ヒ素系ガス雰囲気中、リン系ガス雰囲気中、または真空で、500℃以上1100℃未満で熱処理し、それによって、結晶特性と光学特性の改善を行なう。
【0032】
【発明の実施の形態】
特開平9−283857号公報に示されているようにGa1-x Inx y As1-y 薄膜結晶を成長する場合、As原子が基板および薄膜の表面から脱離しやすい。このため、脱離を防止するため、低温での成長が必要である。このような低温では、ヒ素の脱離が防止できるとともに、窒素原料が結晶の表面に吸着しやすくなり、窒素濃度が高くできる利点があるが、半面、不純物も吸着しやすくなり、結晶中の不純物濃度が窒素濃度に比例して高くなる。
【0033】
特に、有機金属気相成長法(OMCVD)では、用いる有機原料ガスのガス分子が水素原子で構成されるものが多い。そのため、薄膜結晶中に水素が混入する問題がある。水素の混入の過程には、原料ガスそのもの、原料ガスが分解する途中の中間生成物、原料から分解した後の水素原子が、薄膜結晶中に取込まれることが考えられる。この水素が不純物として振る舞い、光学的に特性と電気的特性を悪化させたと考えられる。実際に、Ga1-x Inx y As1-y およびGaNy As1-y 結晶中で、水素が上記の特性を劣化させる結果はこれまで報告されていないが、他のIII−V族混晶半導体では調べられた例がある。
【0034】
GaAs結晶中では、水素がドーピング原子と結合し、ドーピング原子が有する正あるいは負の電荷を打消し、電気的に不活性になる例が報告されている(J. I. Pankove, N. M. Johnson: Hydrogen in Semiconductors, 1996, Academic Press)。また、GaP結晶中のN原子が水素と結合していると、光学特性を劣化させる例が報告されている(Jorg Weber他: Mat. Res. Soc. Sym. Proc. vol.104, p.325)。なお、水素原子により光学特性が劣化する機構については、未解明である。
【0035】
この点から、作製したGa1-x Inx y As1-y ,GaNy As1-y 薄膜結晶の光学特性と水素濃度の相関関係を比べると、図2および図3の結果が得られた。図2は、GaNAsの場合であり、図3はGa0.9 In0.1 y As1-y の場合である。それぞれの図は、窒素濃度に対する水素濃度の関係と、それぞれの光学特性を示している。図中の○印は実用上十分な蛍光強度を有する試料を示し、×印は蛍光強度が低く、実用に十分でない試料を示す。現在レーザダイオードに利用されているInP基板上に成長したGa0.25In0.75As0.540.46結晶の蛍光強度と比較して1/20以上の強度を有するものを基準にした。水素と窒素の濃度は、2次イオン質量分光法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy )により測定した。本明細書では、比較となるGaInPAsの強度を20として、それに対するGa1-x Inx y As1-y ,GaNy As1-y 薄膜結晶の蛍光強度を示している。すなわち、蛍光強度が1以上であれば、実用に適していると考えられる。
【0036】
図2および図3中、補助線A1、A2、B1、B2、C1、C2は、それぞれ530℃、550℃、600℃で成長した場合の、窒素濃度と水素濃度の関係を示している。窒素濃度に比例して、水素濃度が上昇する傾向が確認できた。また、成長温度を上げるに従い、水素濃度が下がることが確認できた。これらの図からわかるように、薄膜結晶から実用に十分な蛍光強度を得るためには水素濃度が1cm3 あたり5×1018個以下にする必要がある。
【0037】
蛍光特性が良好でないGa1-x Inx y As1-y ,GaNy As1-y 薄膜結晶については、結晶内に存在する水素の結合状態をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により測定した。以下にその一例として、GaAs基板上に、GaN0.012 As0.988 結晶を0.5μ成長した試料の例を示す。このときの水素濃度は、1cm3 あたり1.5×1019個であった。なお、ここで挙げた組成のGaNAsの測定例は、いくつか実施したものの中の一例である。
【0038】
波数2950cm-1の位置に、明瞭な吸収ピークが確認された。このピークは、結晶中の窒素と水素が原子結合している場合にのみ(N−H結合がある場合)観察される。
【0039】
この試料を、500、550、600、700、800℃で窒素雰囲気内で熱処理した場合の、吸収ピークと蛍光強度の変化を測定した。結果を図4に示す。
【0040】
図4に示されているように、加熱なしの場合と比較して、温度を上げるに従い、吸収ピークが小さくなることがわかる。700℃の熱処理により、吸収ピークがなくなるとともに、十分な蛍光強度が得られることがわかる。すなわち、水素濃度は、1cm3 あたり5×1018個より大きい場合でも、500〜800℃の温度範囲で熱処理を施すことで、結晶中の窒素と水素の原子結合が切断され(N−H結合が切れ)、実用に十分な蛍光強度が得られることがわかる。ガス雰囲気は、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムの限られた非酸化性雰囲気中、アルシンなどのヒ素系ガス中、フォスフィンなどのリン系ガス中、あるいは真空中が好ましい。雰囲気ガスは、上記のガスを混合したものでもよい。熱処理の時間は10秒から24時間がよい。請求項1に定義される構造の最上層が、GaAs、AlGaAs、InGaAsなどのヒ素を含んだ半導体である場合、熱処理による表面からのヒ素抜けを防ぐため、アルシン、ターシャリブチルアルシンなどのヒ素系ガス中で熱処理を施すことが望ましい。同様に、最上層が、GaInP、AlGaInP、AlInP、InGaAsPなどのリンを含んだ半導体である場合、熱処理による表面からのリン抜けを防ぐため、フォスフィン、ターシャリブチルフォスフィンなどのリン系ガス中で熱処理を施すことが望ましい。
【0041】
熱処理後に実施したSIMS分析から、500〜800℃の熱処理では、水素と窒素の結合を切ることができるが、水素濃度を低減することはできない。そのため、結晶中の高濃度の水素が窒素と再結合し、光学特性、電気的特性を再劣化させる。そのため、800〜1100℃での熱処理をすることで、Ga1-x Inx y As1-y 、GaNy As1-y 薄膜結晶中の、水素と窒素の結合を切断し、水素を結晶から除去できる。これにより、信頼性が高い素子が作製され得る。ガス雰囲気は、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムの限られた非酸化性雰囲気中、アルシンなどのヒ素系ガス中、フォスフィンなどのリン系ガス中、あるいは真空中が好ましい。雰囲気ガスは、上記のガスを混合したものでもよい。熱処理の時間は10秒から24時間がよい。
【0042】
この熱処理は、成長炉内で多層構造成長後に、室温まで冷却した後、再加熱する方法と成長炉内で多層構造成長後に引続いて行なう方法とがある。成長炉内で行なう方法により、信頼性が高い半導体装置を効率よく安価に形成できる。
【0043】
これに加えて、Ga1-x Inx y As1-y 、GaNy As1-y は原子半径が大きく異なる元素によって構成される混晶半導体であるため、均一な組成の結晶を得ることが非常に難しい。
【0044】
表5にIII族、V族元素の原子半径を示す。
【0045】
【表5】
Figure 0004100759
【0046】
表5を参照して、他のIII族元素、V族元素と窒素では原子半径が大きく異なる。窒素とインジウムでは原子半径が約2倍も異なる。原子半径が異なる原子により混晶半導体を成長すると、部分的に歪みが発生し、良好な結晶を得ることは難しい。これは、用いている材料の組合せに起因する問題であり、この窒化物材料固有の問題である。水素濃度が5×1018個以下の場合でも、500〜1100℃の熱処理により、結晶性が改善され、特性が良好な素子が作製可能である。
【0047】
本発明に係る化合物半導体装置によれば、実用に十分な水素不純物が少なく、高い光学特性、電気特性を有するGa1-x Inx y As1-y 、GaNy As1- y 結晶を有する光学素子、電子素子が得られる。ここで、実用に十分な水素不純物濃度は5×1018個以下である。
【0048】
また、この発明によれば、水素不純物が多い場合も、窒素−水素結合を切断する熱処理、水素濃度を低減する熱処理により、結晶の高品質化が図られ、電気特性、光学特性が良好な光学素子を得ることができる。
【0049】
また、水素不純物が少ない場合も、熱処理により窒化物結晶固有の問題を解決し、良好な結晶を得ることができる。
【0050】
さらに、結晶成長に引続いて熱処理を行なうことで、結晶成長の省時間と省エネルギにも有利であり、素子の大量生産が可能である。
【0051】
【実施例】
実施例1
成長には、石英製の横型反応炉を用いた。基板として、半絶縁性GaAs(001)基板を用いた。III族のGa,In原料としてトリエチルガリウム(TEG)、トリメチルインジウム(TMIn)を、V族のN,As,P原料としてジメチルヒドラジン(DMHy)、ターシャリブチルアルシン(TBAs)、ターシャリブチルフォスフィン(TBP)を用いた。キャリアガスには水素を用いた。成長炉内の圧力は、76Torrに設定した、成長温度は、530℃、550℃、600℃の3水準で変えた。
【0052】
以下の条件で、GaAs(001)基板に格子整合したGa0.9 In0.10.035 As0.965 結晶を得ることができた。[TBAs]/([TEG]+[TMI])モル供給比=1.8で固定として、成長温度530、550、600℃では、[DMHy]/([DMHy]+[TBAs])モル供給比を、それぞれ0.98,0.982,0.985とすることでGaAs(001)基板に格子整合した。また、それぞれの成長温度で、上記のモル供給比を増減させることによって窒素濃度を調整した。
【0053】
図2,3および図6,7には結果が挙げられていないが、GaAs(001)基板に格子整合した、In濃度がより高いGa0.85In0.150.053 As0.947 結晶は、[TBAs]/[TEG]+[TMI])モル供給比=2で固定として、成長温度530、600℃では、[DMHy]/([DMHy]+[TBAs])モル供給比を、それぞれ0.984,0.987とすることで、GaAs(001)基板に格子整合したGaInNAs結晶が得られた。
【0054】
次に、GaNAs結晶の成長方法は以下のとおりである。[TBAs]/[TEG]モル供給比=5で固定とし、[DMHy]/([DMHy]+[TBAs])モル供給比を0.256−0.9の間で窒素濃度に合わせて変化させた。成長温度は、530,550,600℃の3水準を用いた。
【0055】
図5に、実際に作製した素子構造を示す。(a)は、光学特性評価用ダブルヘテロ(DH)構造を示す図であり、(b)は電気的特性評価用単層構造を示す図である。
【0056】
光学特性の測定には、図5(a)の、半導体レーザの構造を簡略化したGaInNAsおよびGaNAs薄膜結晶の、上下がGaAsで挟まったダブルヘテロ構造(DH構造)を用いた。これを用い、光学特性の変化を、蛍光の強度を測定することにより調べた。簡略化した構造を用いた理由は、図1に示すような実際のレーザ構造を用いると、GaInNAsおよびGaNAs結晶からの蛍光が上下の材料種が異なる層で散乱吸収され、測定が精密に行なえないためである。
【0057】
上下のGaAs層は、100nmとし、GaInNAsおよびGaNAs層は500nmとした。また、電気的特性測定用には、図5(b)に示す、受光ダイオードを簡略化したGaInNAsおよびGaNAs薄膜結晶単層を用いた。これは、実際の構造を用いると、p型とn型が接合を形成する実際の構造では、他の層の特性の変化も計測されるためである。測定は、室温でホール測定法と呼ばれる方法を用いた。GaInNAs層およびGaNAs層の厚みは500nmとした。
【0058】
作製した試料の蛍光強度の測定には、アルゴンレーザで発生する波長514nmの光を照射し、結晶から出てくる蛍光強度をゲルマニウム製検出器により評価した。また、SIMSによる不純物濃度の分析には、セシウムイオンを試料に照射し、スパッタされる水素負イオン(H- )を検出した。絶対濃度は、同時に検出されるAsイオンと比較校正することで算出した。測定系の校正は、別途作製したNイオンをGaAs薄膜に注入した校正試料を用い注意深く行なった。
【0059】
実施の形態で説明した図2と図3を参照して、GaNAsでは、600℃での成長の場合、窒素濃度を1.8×1019〜1.5×1021の範囲で変化させたが、水素濃度は2.9×1017〜1.1×1018と低濃度となっている。この試料の蛍光強度は、InGaAsPの強度を20とすると、GaNAsは2.3〜26となり、どの窒素濃度においても実用可能な蛍光強度が得られている。
【0060】
一方、530℃では、水素濃度と蛍光強度に強い相関がある。窒素濃度が1.8×1019〜1.0×1020と低い範囲では、水素濃度は3.8×1017〜2.7×1018であり、蛍光強度も1.8〜14となった。一方、窒素濃度が1.9×1020〜5.5×1020と高い範囲では、水素濃度が5.9×1018〜1.9×1019となり、蛍光強度も0.09〜0.87と低くなり、実用に十分ではない。
【0061】
GaInNAsをGa0.9 In0.10.035 As0.965 の組成で成長した場合、成長温度530、550、600℃では、窒素濃度が7.2×1020で水素濃度6.2×1019、8.9×1018、8.2×1017となり、それぞれ蛍光強度は0(検出限界以下)、0、2.4となる。したがって、水素濃度が5×1018以下の場合のみ、実用に十分な蛍光強度が得られている。
【0062】
実施例2
実施例1で挙げた成長方法で成長温度を530℃とした場合、Ga1-x Inx y As1-y ,GaNy As1-y ともに結晶中の水素濃度が1cm3 あたり5×1018個以上となる(図2と図3参照)。
【0063】
この条件で、実施例1で説明した測定構造を成長終了後、下記の条件で再加熱し、光学特性と電気的特性の測定を行なった。
【0064】
この熱処理では、表面から、Asが蒸発するのを防止するため、プラズマCVD法により、SiN膜を100nm成長した。SiN膜は、熱処理後に5%フッ酸で除去した。
【0065】
上記の構造を、水素雰囲気中、圧力を76Torrにし、熱処理した。熱処理には、石英製の加熱炉を用いた。以下に、GaN0.012 As0.988 の試料を熱処理した例を示す。熱処理温度が300、500、600、650、700、750、800、850、900、1100℃の10水準で行なった例を示す。室温から最高到達温度までの昇温速度は1分間あたり80℃である。熱処理温度に達した後、温度を10分間保持する。この後、室温まで1分間あたり80℃の降温速度で室温まで冷却する。
【0066】
表6に、熱処理温度に対する、蛍光の強度を示す。
【0067】
【表6】
Figure 0004100759
【0068】
未処理の場合に比較し、300℃以上700℃以下までは、熱処理温度を上げるに従い、蛍光強度が向上する。700℃より高い温度では、蛍光強度が下がるが、未処理の場合に比較して蛍光強度が高い。
【0069】
実施の形態で説明したように、図4は、この試料中の水素−窒素結合、蛍光強度の変化を示す。700℃の熱処理で水素−窒素結合は完全に切断され、実用に十分な蛍光強度が得られることがわかる。表6に示すように、水素濃度は700℃の熱処理では低下せず、800℃以上の熱処理が必要であることがわかる。
【0070】
次に、GaNAs,GaInNAsの2試料を、上記の実験で蛍光強度が最高であった温度700℃で熱処理し、熱処理時間を10秒から2時間まで変化させた。
【0071】
結果を表7に示す。
【0072】
【表7】
Figure 0004100759
【0073】
ここでは、同じ試料を繰返し熱処理し、横軸の熱処理時間は到達温度での積算時間である。用いた装置は、急速加熱が可能なrapid thermal annealing (RTA)装置を用いた。雰囲気は窒素中で、圧力は760Torrとした。
【0074】
表7を参照して、熱処理10秒で実用に十分な蛍光強度が得られる。熱処理時間を増やすに従い、蛍光強度が上がることが確認された。
【0075】
図2および図3で説明した蛍光強度の窒素濃度の関係から、実用に十分な蛍光強度を有しない試料について、700℃の熱処理を施した。その結果、図6(GaNAsの場合)と図7(GaInNAsの場合)を参照して、GaNAs,GaInNAsともに蛍光強度か改善され、実用に十分な特性が得られた。
【0076】
表8に、熱処理温度に対する比抵抗の変化を示す。
【0077】
【表8】
Figure 0004100759
【0078】
測定した試料は、Ga0.9 In0.10.035 As0.965 である。300℃以上800℃以下までは、到達温度を上げるに従い、比抵抗が低下する。800℃より高く、1100℃以下では、温度を上げるに従い、比抵抗はほぼ一定である。
【0079】
実施例3
成長炉での熱処理に関するものである。
【0080】
実施例1に挙げた成長方法により、実施例2に挙げた成長温度530℃で、GaN0.012 As0.988 ,Ga0.9 In0.10.035 As0.965 DH構造を成長した。熱処理をしない状態では、十分な蛍光特性が得られないが、DH構造を成長終了後、降温することなく熱処理を行なった。
【0081】
図8は、素子構造を成長後、再加熱する場合の温度プロファイルを示す。
図9は、素子構造を成長後、降温することなく熱処理する場合の熱処理の時間と温度およびガス供給の変化を示す。DH構造成長終了時には、最上層のGaAs層を成長するため、水素、TMG、TBAsのガスを試料上に供給している。熱処理時には、GaAs層からのAs抜けを防止するために、温度を変化させる際に水素とTBAsのみを供給する。熱処理温度は、700℃と900℃の2種類とした。熱処理温度で10分間保持後、室温まで冷却した。冷却時、300℃でTBAsの供給を停止した。
【0082】
この熱処理後、蛍光強度を測定した。結果を表9に示す。
【0083】
【表9】
Figure 0004100759
【0084】
表9から明らかなように、実用に十分な蛍光強度が得られることがわかった。表9に、SIMSの結果を合わせて示す。700℃では、水素濃度の大きな低下は見られなかったが、蛍光強度は向上している。700℃では、水素−窒素結合により赤外吸収は0であった。900℃では、水素濃度が1桁以上低下し、蛍光強度も改善されている。
【0085】
実施例4
実施例4は、低水素濃度の構造の熱処理に関する。実施例1に挙げた成長方法により、成長温度600℃で、GaN0.012 As0.988 ,Ga0.9 In0.10.035 As0.965 DH構造を成長した。熱処理をしない状態でも、十分な蛍光特性が得られているが、熱処理を施し、結晶性の改善を行なった。このときの成長条件では、水素濃度は5×1018個以下になることが、実施例1で確認されている。
【0086】
実施例2で説明した熱処理を用い、水素雰囲気中でDH構造の熱処理を行なった。結果を表10に示す。
【0087】
【表10】
Figure 0004100759
【0088】
表10から明らかなように、熱処理温度は、500、700、800、900、1100℃の5水準とした。それぞれの温度で、蛍光強度に大きな変化は観察されないが、温度を上げるに従い、蛍光強度の半値幅が小さくなることが確認された。
【0089】
同様の熱処理を、DH構造成長後降温することなく、引続き行なった。実施例1で示した成長方法でDH構造を成長後、実施例3に示した温度、ガス供給方法により熱処理を施した。熱処理温度は、700℃、900℃である。結果を表11に示す。
【0090】
【表11】
Figure 0004100759
【0091】
表11から明らかなように、いずれの場合も、蛍光強度の半値幅が小さくなることが確認された。これは、熱処理により結晶性の改善が進んだためであると考えられる。これにより、より信頼性が高いレーザダイオードなどの作製が可能である。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明によれば、発光素子の発光特性の向上、動作信頼性の向上、受光素子の受光感度の向上、動作信頼性の向上が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ga0.85In0.150.05As0.95を用いた半導体レーザと受光ダイオードの断面図である。
【図2】GaNAsの薄膜結晶の光学特性と水素濃度の相関関係を示す図である。
【図3】GaInNAsの薄膜結晶の光学特性と水素濃度の相関関係を示す図である。
【図4】種々の窒素雰囲気中で熱処理した場合の、吸収ピークと蛍光強度の変化を測定した結果を示す図である。
【図5】(a)は光学特性評価用ダブルヘテロ構造の半導体装置の断面図であり、(b)は電気的特性評価用単層構造の半導体装置の断面図である。
【図6】熱処理後のGaNAsの光学特性の、窒素濃度と水素濃度との関係を示す図である。
【図7】熱処理後のGaInNAsの光学特性の、窒素濃度と水素濃度との関係を示す図である。
【図8】素子構造を成長後、再加熱する場合の温度プロファイルを示す図である。
【図9】素子構造を成長後、降温することなく熱処理する場合の熱処理の時間と温度およびガス供給の変化を示す図である。

Claims (4)

  1. 光ファイバ通信の搬送波に用いる赤外光を出射し、該赤外光を生じる活性層がIII−V族混晶半導体に窒素および砒素を含有させた半導体層から成る化合物半導体装置の製造方法において、
    GaAs半導体基板を準備する工程と、
    前記GaAs半導体基板の上に、Ga1−xInAs1−y(0<x≦0.35,0<y≦0.05)および/またはGaNAs1−y(0<y≦0.06)からなる半導体層を活性層としてエピタキシャル成長により形成する工程と、
    前記活性層をエピタキシャル成長した後に前記GaAs半導体基板を、非酸化性ガス雰囲気中、ヒ素系ガス雰囲気中、リン系ガス雰囲気中、または真空中で、850℃以上1100℃以下で熱処理することにより、前記活性層中の水素濃度を1cmあたり5×1018個以下とする工程と、を備える化合物半導体装置の製造方法。
  2. 前記半導体層中の水素濃度の測定方法として2次イオン質量分光法を用いることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体装置の製造方法。
  3. 前記半導体層中の水素濃度の測定方法としてフーリエ変換赤外分光法で得られる吸収スペクトルを利用することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物半導体装置の製造方法。
  4. 前記熱処理を、前記半導体層を前記GaAs半導体基板の上にエピタキシャル成長させた後、降温することなく、直ちに行なうことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体装置の製造方法。
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