JP4118680B2 - タンパク質の立体構造構築方法 - Google Patents
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Description
本発明は、タンパク質の立体構造作成方法に関し、さらに詳しくは、特定の方法でアライメントおよび参照タンパク質を選定し、それらの情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を構築する方法に関する。
世界中でゲノムの配列の決定が急速に行われてきており、ゲノムのコードするアミノ酸配列も同様に多数決定されてきている。本発明の方法は、アミノ酸配列の立体構造が精度良く得られるものであり、医農薬の分子設計等を中心に生物情報の解析を行う分野(バイオインフォマティックス)において極めて有用である。
背景技術
立体構造が既知のタンパク質に関する情報を利用し、立体構造が未知の目的タンパク質とのアライメントを得て、このアライメント情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を、コンピュータを用いて作成することが可能であり、この手法は、通常ホモロジーモデリング(homology modeling)と呼ばれている。ホモロジーモデリングにより構築される立体構造の精度は、近年目覚ましく向上しているが、未だ解決すべき問題点も多い。
ホモロジーモデリングにおいて、精度の高い真の構造に近い立体構造を得るためには、信頼性の高いアライメントを得ることが先ず重要である。任意の配列が与えられたとき、PDB(Protein Data Bank)やSCOP(Structure Classification of Protein)のような立体構造データベースから類似性の高いタンパク質を単数もしくは複数選び出し、アライメントを与える方法として、従来のアライメントを行うソフト、例えばFASTAおよびPSI−BLAST等のコンピュータソフトを用いる方法がある。FASTAは20種類の天然アミノ酸を意味する20種のアルファベット文字配列のマッチングを行うプログラムであり、PSI−BLASTでは、同じように文字配列のマッチングを行うが、文字が一致しているか否かの情報ではなく、プロファイルと呼ばれる文字の一致の度合いを類縁タンパク質の文字配列上の部位ごとの置換行列として算出し、更に繰り返し計算を行うことによりアライメントを最適化する性質を持っている。これらを用いることにより、ある程度信頼性のあるアライメントを供給すると言われている。
あるアライメントが存在したとき、直ちに立体構造の情報に変換する技術に関しては、モデリングソフトFAMS(Journal of Molecular Graphics and Modeling 18,258−272,2000)等を用いることにより可能であると言われている。しかしながら、上記のようなソフトの出力結果であるアライメントでそのままモデリングソフトを使って立体構造に変換しようとすると、タンパク質の構造形成の単位であるαヘリックスやβシート等の二次構造を分断し、真の構造から大きく外れる可能性が高くなる。また、二次構造のみならず、タンパク質の立体構造の主たる形成要因である疎水性相互作用を司る疎水性のアミノ酸残基等が、溶媒に対して露出してしまった不安定な形が存在したりする。このため、文字配列のみを考慮した方法では、作成されるタンパク質の立体構造に明らかに真の構造とはいえないような状況であった。
また、ホモロジーモデリングにおいて、前記の通り、精度の高い真の構造に近い立体構造を得るためには、信頼性の高いアライメントを得ることが先ず重要である。任意のタンパク質のアミノ酸配列が与えられたとき、PDB(Protein Data Bank)や3次構造構成単位であるドメイン構造データベース(SCOPなど)のような立体構造データベースから類似性の高いタンパク質を単数もしくは複数選び出し、アライメントを与える方法として、例えばFASTAおよびPSI−BLAST等のコンピュータソフト用いる方法がある。FASTAは20種類の天然アミノ酸を意味する20種のアルファベット文字配列のマッチングを行うプログラムであり、高ホモロジー(アミノ酸の一致度約30%以上、FASTAのe値では約0.01以下に相当)の参照タンパク質に対して立体構造構築をすると、信頼性の高いモデルが構築出来るとされている。しかしながら、低ホモロジーの参照タンパク質(アミノ酸の一致度約20%以下)に対しての信頼性は保証していない。
一方、PSI−BLASTでは、同じように文字配列のマッチングを行うが、文字が一致しているか否かの情報ではなく、プロファイルと呼ばれる文字の一致の度合いを類縁タンパク質の文字配列上の部位ごとの置換行列として算出し、更に繰り返し計算を行うことによりアライメントを最適化する性質を持っている。これにより、低ホモロジー領域であってもPSI−BLASTのe値で0.1以上であれば、ある程度信頼性のあるアライメントを供給すると言われている。
このようにFASTAおよびPSI−BLASTは一つの任意配列に対し、別々の参照タンパク質とのアライメントの単数もしくは複数のアライメントを算出してくる。このアライメントは、双方共に文字配列のみを考慮したものであり、立体構造の情報は含まれていない。これらのソフトウエアもしくはその類縁のソフトウエアがアライメントを複数選んできたとき、どのアライメントに従って立体構造を構築すべきかの一般的な指針は今のところ存在しない。
また、あるアライメントが存在したとき、直ちに立体構造の情報に変換する技術に関しては、前記の通り、例えばモデリングソフトFAMSを用いることにより可能であると言われている。しかしながら、上記2つのソフトウエアが算出するアライメントは、モデリングソフトで処理可能な長さ以上のアミノ酸配列断片の挿入(挿入部分配列)を含んでいる場合が数多くあり、この長い挿入領城は現在のところ、モデリングは不可能であるとされていた。
発明の開示
本発明は、上記の状況に鑑みて、ホモロジーモデリングにより、任意のタンパク質の立体構造を、コンピュータを用いて精度良く効率的に構築する方法の提供を目的としてなされたものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、タンパク質のホモロジーモデリングにおいて、任意のアライメントと参照タンパク質の立体構造座標が与えられたとき、適切な立体構造モデル作成のためのアライメントを提供すべく検討を重ねた結果、与えれれたアライメントを、参照タンパク質の二次構造情報等に基づいて修正すれば、タンパク質の二次構造およびその近傍にアミノ酸配列断片の挿入および欠損が入らないようにすることが可能となり、真の構造により近く精度の高い立体構造が構築可能であることを見出した。
また、本発明者らは、タンパク質のホモロジーモデリングにおいて、性質の異なるアライメントソフトウエアを組み合わせて用い、また特定の方法により挿入部分配列の処理を行えば、精度良く立体構造の構築が可能であることを見出した。
更に、本発明者らは、ドメイン区切りが未知の立体構造の配列について、特定の方法で、既知の立体構造データベースを利用して効率的にドメイン区切りができることを見いだした。
更にまた、本発明者らは、任意のアミノ酸配列と参照タンパク質をアライメントするときに、任意のアミノ酸配列を介しても参照タンパク質の探索が可能でることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の第一の態様により、(1)任意の目的タンパク質と立体構造が既知の参照タンパク質とのアライメントを行い、選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を構築する方法において、与えられたアライメントを、参照タンパク質の座標から得られる立体構造情報に基づいて修正し、修正されたアライメント情報に基づいて立体構造を構築することを特徴とするタンパク質の立体構造構築方法が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、(2)アライメントにプロファイルアライメント法を用いた場合は、そのプロファイル情報も考慮し更にアライメントを修正する上記(1)に記載の方法、(3)立体構造情報が、二次構造情報、疎水コア値情報および疎水コア距離情報である上記(1)または(2)に記載の方法、(4)立体構造の構築が、アミノ酸中のCα原子について参照タンパク質の立体構造から座標を取得し、目的関数を最小化するようにCα原子座標を最適化し、最適化されたCαの原子座標に主鎖の他の原子を付加して目的関数を最小化するように主鎖の原子座標を最適化し、最適化された主鎖の原子座標に側鎖の他の原子を付加し目的関数を最小化するように最適化することにより行われる上記(1)〜(3)にいずれかに記載の方法が提供される。
以下、本発明の第一の態様を「アライメント修正法」と呼ぶことがある。
本発明の第二の態様により、(5)任意の目的タンパク質と立体構造が既知の参照タンパク質とのアライメントを行い、選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を構築する方法において、該アライメントを高ホモロジー用アライメントおよびプロファイルアライメント用の2種類のソフトウエアを用いて行い、その結果に基づいて参照タンパク質およびアライメントを選定することを特徴とするタンパク質の立体構造構築方法が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、(6)参照タンパク質およびアライメントの選定が、2種類のソフトウエアで算出された複数のアライメント間で、高ホモロジー用ソフトウエアを用いて再アライメントを行い配列を較べ、互いにホモロジーが高い場合には目的タンパク質との間でe値の高い方の参照タンパク質およびアライメントを排除することにより行われる上記(5)に記載の方法、(7)高ホモロジー用アライメントのソフトウエアがFASTAであり、プロファイルアライメント用のソフトウエアがPSI−BLASTである上記(5)または(6)に記載の方法、(8)複数のアライメントが、ソフトウエアによって候補として選ばれてきた場合、個々に選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質のCα原子座標を算出し、Cα原子座標同士で立体構造のフィッティングを行い、各座標の根平均二乗距離(RMSD)が一定の値以下の場合は同一の立体構造であると判断して、目的タンパク質との間でe値の高い方の参照タンパク質およびアライメントを排除して、さらに参照タンパク質およびアライメントが選定される上記(5)〜(7)のいずれかに記載の方法、(9)根平均二乗距離(RMSD)が3.0Åである上記(8)に記載の方法、(10)立体構造の作成が、選定されたアライメントの情報に基づいて、アミノ酸中のCα原子について選定された参照タンパク質の立体構造から座標を取得し、目的関数を最小化するようにCαの原子座標を最適化し、最適化されたCαの原子座標に主鎖の他の原子を付加して目的関数を最小化するように主鎖の原子座標を最適化し、最適化された主鎖の原子座標に側鎖の他の原子を付加し目的関数を最小化するように最適化することによ行われる上記(5)〜(9)のいずれかに記載の方法が提供される。
本発明の第三の態様より、(11)任意の目的タンパク質と立体構造が既知の参照タンパク質とのアライメントを行い、選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を構築する方法において、アライメントに予め作成された部分アミノ酸配列の座標データベースから得られる長さ以上の挿入部分配列(n)がある場合、(i)目的タンパク質の挿入部分配列を上記データベースから得られる長さに削除して参照タンパク質とのアライメントを行い、(ii)このアライメントを元に削られた目的タンパク質のCα原子座標を構築し、(iii)削られた目的タンパク質の削除部分の末端から一定数のアミノ酸残基を削除し、ここで、削除するアミノ酸残基数は、上記データベースから得られる長さより少ない数とする、(iv)この削られた目的タンパク質と目的タンパク質とのアライメントを基に目的タンパク質のCα原子座標を構築し、(v)挿入部分配列(n)から、削られた目的タンパク質の元の挿入部分配列(n)に相当する部分に残存する削除後の残基数を引いた残基数が、上記データベースから得られる長さ以下となるまで上記操作を繰り返してCα原子座標を構築することを特徴とするタンパク質の立体構造構築方法が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、(12)立体構造の作成が、構築されたCα原子座標について選定された参照タンパク質の立体構造から座標を取得し、目的関数を最小化するようにCαの原子座標を最適化し、最適化されたCαの原子座標に主鎖の他の原子を付加して目的関数を最小化するように主鎖の原子座標を最適化し、最適化された主鎖の原子座標に側鎖の他の原子を付加し目的関数を最小化するように最適化することにより行われる上記(11)に記載の方法が提供される。
以下、本発明の第二および第三の態様をまとめて、「Advanced FAMS」と称することがある。
上記発明の別の態様により、(13)立体構造が既知の参照タンパク質が、ドメイン単位に区切った立体構造データベースより選ばれる上記(1)〜(12)のいずれかに記載の方法が提供される。
本発明の第四の態様により、(14)ドメイン区切りが未知の立体構造の配列について、ドメイン区切りが既知の立体構造の配列に対して配列上の相同性検索を行い、得られたドメイン毎の相同性配列のコンセンサスに基づいて、ドメイン区切りを決定することを特徴とするタンパク質のドメイン区切り方法が提供される。
この発明の好ましい態様により、(15)得られたドメイン毎の相同性配列が識別子を有している場合、更に、識別子のコンセンサスに基づいて、決定されたドメインの識別子を決定する上記(14)に記載の方法が提供される。
この発明の別の態様により、(16)上記(14)または(15)に記載の方法により構築されたドメイン単位に区切った立体構造データベースが提供される。
上記発明の別の態様により、(17)ドメイン単位に区切った立体構造データベースが、上記(16)に記載の立体構造データベースである上記(13)に記載の方法が提供される。
本発明の第五の態様により(18)(i)任意の目的タンパク質について、アミノ酸配列データベースに対して相同性検索を行い、目的タンパク質の配列と相同性を有するアミノ酸配列データベースの配列を検出し、(ii)検出されたアミノ酸配列について、立体構造データベースの配列に対して相同性検索を行い、検出されたアミノ酸配列データベースの配列と相同性を有する立体構造データベースの配列を検出し、(iii)検出された立体構造データベースの配列と目的タンパク質の配列とのアライメントを得て、該立体構造デーベースの配列を参照タンパク質とすることを特徴とするアミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索方法が提供される。
この発明の好ましい態様により、(19)相同性検索が、アライメントソフトを用いて行われる上記(18)に記載の方法、(20)目的タンパク質の配列と相同性を有するアミノ酸配列データベースの配列が複数検出された場合、高ホモロジーアライメントソフトを用いて配列冗長性の排除を行う上記(18)または(19)に記載の方法、(21)配列冗長性の排除が、段階的に可変にした判断基準で行われる上記(20)に記載の方法、(22)検出されたアミノ酸配列データベースの配列が10個となるまで配列冗長性の排除が行われる上記(20)または(21)に記載の方法、(23)検出された立体構造データベースの配列と目的タンパク質の配列とのアライメントが複数得られた場合、各アライメント間の一致部分はそのままとし、不一致部分はそれらのコンセンサスに基づいて確定させ、単一のアライメントを得る上記(18)〜(22)のいずれかに記載の方法、(24)目的タンパク質について、立体構造データベースに対して相同性検索を行い、目的タンパク質と相同性を有する立体構造データベースの配列が検出されなかった場合に行われる上記(18)〜(23)のいずれかに記載の方法が提供される。
この発明の別の態様により、(25)参照タンパク質の選定が、上記(18)〜(24)のいずれかに記載の方法により行われる上記(1)〜(13)および(17)のいずれかに記載の方法が提供される。
本発明の第六の態様により、(26)上記(1)〜(13)、(17)および(25)のいずれかに記載の方法により得られるタンパク質の立体構造を規定する原子座標が提供される。
本発明の第七の態様により、(27)上記(26)に記載の原子座標が記録されていることを特徴とするコンピュータ読みとり可能な記録媒体が提供される。
本発明の第八の態様により、(28)上記(26)に記載の原子座標を含むことを特徴とするデータベースが提供される。
本発明の第九の態様により、(29)上記(26)に記載の原子座標、または、(27)若しくは(28)に記載の記録媒体若しくはデータベースの原子座標を用いて作成されたタンパク質の立体構造と、薬物候補分子の立体構造との相互作用に基づいて、目的とする薬物分子を同定、検索、評価または設計することを特徴とする薬物分子設計方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書において幾つかの用語を使用するが、特に明記しない限り、次の意味を有する。
「目的タンパク質」とは、X線結晶解析やNMR解析等により完全な立体構造が決定されておらず、本発明において立体構造構築の対象とするタンパク質を意味する。このタンパク質のアミノ酸配列を「目的配列」または「目的アミノ酸配列」と称することがある。この目的タンパク質には、部分構造は解析されているが完全な立体構造が得られていないもの、また、既に機能が特定されているもの、機能が推定されているもの、アミノ酸配列は決定されているが機能は全く不明のものも含まれる。「参照タンパク質」とはその立体構造の詳細がX線結晶解析やNMR解析により既に決定されており、アライメントや原子座標の最適化のために参照するタンパク質を意味する。「アライメント」とは、2種類以上のタンパク質のアミノ酸配列の対応関係をつけることを意味し、その方法は以下の各ステップの説明において詳述する。
「原子座標」とは、三次元空間上で立体構造を記述するものである。それは空間上のある点を原点とする互いに垂直な三方向の相対的な距離であり、タンパク質中に存在する水素原子を除く原子一つあたりに3個の数字からなるベクトル量である。
「二次構造」とは、タンパク質立体構造の構成単位である、αヘリックス、βシート、それ以外の二次構造を意味する。二次構造が判別されない領域はループと呼ぶ。「疎水コア」とは、疎水性のアミノ酸残基、例えばAla,Cys,Gln,Ile,Leu,Met,Phe,Pro,Thr,Trp,Tyr,Val等の側鎖で構成される疎水性相互作用の空間を意味し、「疎水コア値」とはそのアミノ酸の周りにいくつ疎水性残基があるかを示す。また、「疎水コア距離」とは疎水性残基と疎水コア間の距離を示し、その距離が大きいほど、その残基は疎水コアから離れていることを示す。疎水コア、疎水コア値、疎水コア距離等の詳細な定義については、Umezawa Y and Umeyama H,Chem.Pharm.Bull.(1988)Vol 36,4652−4658,Kaneko H et al.,Research Communication in Biochemistry and Cell & Molecular Biology(1998)Vol 2,37−54に記載されている。
「プロファイル」とは、アミノ酸配列中の文字について、その文字の位置を特徴付ける情報を付加したものであり、これは行列を意味する。この行列はアミノ酸の総当りの組み合わせであり20*20の要素を持つ。この行列は、アミノ酸の保存の度合い、置換のしやすさ、アミノ酸同士の類似度の情報の意味を併せ持つ。
I.アライメント修正法によるタンパク質の立体構造の構築
先ず、本発明の第一の態様であるアライメント修正法について説明する。第1図は本発明のアライメント修正法による立体構造の構築の一例を示すフローチャートである。
第1図に示す通り、この方法においては、先ず、ステップI−10において目的のタンパク質のアミノ酸配列と参照タンパク質のアミノ酸配列との関係を示したアライメントを用意する。ステップI−20において、適当な立体構造データベースから参照タンパク質の座標を用意する。ステップI−30において、ステップI−20において用意された参照タンパク質座標から二次構造の判別を行う。ステップI−40において、ステップI−20において用意された参照タンパク質座標から疎水コア値、及び疎水距離の計算を行う。ステップI−50において、アライメントの領域が参照タンパク質における疎水コアの領域を含んでいるかどうかを確認する。ステップI−60では、アライメント上の参照タンパク質の配列に沿って、上記の二次構造情報、疎水コア値情報、疎水コア距離情報を並置する。ステップI−70において、アライメントの修正を行う。ステップI−70において得られたアライメントを元にFAMS等のモデリングソフトを用いて立体構造を構築し、ステップI−90においてモデルが完成する。ステップI−100において、出来上がったモデルの疎水コアが形成されているかどうかを検査し、ステップI−110の最終構造に至る。
以下、各ステップについて更に詳細に説明する。
ステップI−10:アミノ酸配列のアライメント
先ず、ステップI−10において目的タンパク質のアミノ酸配列と参照タンパク質のアミノ酸配列との関係を示したアライメントを用意する。
用いられる目的タンパク質のアミノ酸配列としては、データベースに登録されているもの、配列が始めて解析されたもの等如何なる由来の配列であってもよい。また部分構造のみが解析されているタンパク質の配列も完全な立体構造の情報を得るために、本発明における立体構造の構築対象とすることができる。
用いられるデータベースとしては、例えば、″An Internet review:the complete neuroscientist scours the World Wide Web.″Bloom FE,Science 1996;274(5290):1104−9に詳細が記載されているGCRDb(The G−protein−coupled Receptor Database):http://www.gcrdb.uthscsa.edu/、GPCRDB:http://www.gpcr.org/7tm/、ExPASy:http://www.expasy.ch/cgi−bin/sm−gpcr.p1、ORDB:http://ycmi.med.yale.edu/senselab/ordb/、GeneBank:ftp://ncbi.nlm.nih.gov/genbank/genomes/、PIR:http://www−nbrf.georgetown.edu/pir/(National Biomedical Research Foundation(NBRF))、Swiss Plot: http://www.expasy.ch/sprot/sprot−top.html(Swiss Institute of Bioinformatics(SIB),European Bioinfomatics Institute(EBI))、TrEMBL(URL及び管理者ともにSwiss Plotと同じ)、TrEMBLNEW(URL及び管理者ともにSwiss Plotと同じ)、DAD:ftp://ftp.ddbj.nig.ac.jp(日本DNAデータパンク)等のデータベースに登録されているヒト(H.sapiens)、ショウジョウバエ(D.melanogaster)、線虫(C.elagans)、酵母(S.cerevisiae)、シロイヌナズナ(A.thaliana)等を挙げることができる。これらのデータベースは単なる例示であり、タンパク質のアミノ酸配列が登録されているものであれば如何なるデータベースを用いることもできる。
参照タンパク質の選定に用いられる立体構造データベースとしては、例えばPDB(Protein Data Bank):http://www.rcsb.org/pdb/、CCDC(Cambridge Crystallographic Data Centre:http://www.ccdc.cam.au.uk/、SCOP(Structure Classification of Protein):http://scop.mrc−1mb.cam.ac.uk/scop、CATH:http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/cath等を挙げることができる。これらの立体構造データベースは、単独または組み合わせて用いることことができる。上記データベース中、SCOPおよびCATHは、ドメイン単位に区切った立体構造データベース(「以下これを「ドメイン構造データベース」と略称することがある)である。ここで、「ドメイン」とは、タンパク質の立体構造で、3次構造の単位を意味する。SCOPは、3次構造の単位を手作業で判別して、3次構造の区切りを決定して構築されたものである。CATHはほぼ全自動にて3次構造の単位を決めて構築されたものである。ドメイン構造データベースとしては、後述する本発明の方法で構築された立体構造データベースを組み合わせて用いるのが好ましい。
アライメント用ソフトウエアとしては、例えばFASTAもしくはPSI−BLAST(Position−Specific Iterated BLAST)を使うのが好ましい。FASTAは目的配列と一致度の高い配列を立体構造データベースから探索し、最終的な目的配列と参照タンパク質との一致度をe値として算出するプログラムである。FASTAの詳細は″Effective protein sequence comparison.″Pearson WR,(1996)Methods Enzymol;266:227−58に記載されている。
PSI−BLASTはプロファイルアライメントを行うようにプログラムされている。PSI−BLASTの詳細は、″Matching a protein sequence against a collection of PSI−BLAST−constructed position−specific score matrices.″Schaffer AA,Wolf YI,Ponting CP,Koonin EV,Aravind L and Altschul SF,Bioinformatics 1999,12,1000−11に記載されている。
プロファイルアライメントを実行するPSI−BLASTは配列の類似度を検出することについて、現時点で最高の性能を備えたツールである。このプログラムは、プロファイルのデータベース中の有意なアライメント関係のみから情報を引き出し、アミノ酸配列の部位特異的スコア行列を作成する。次にプログラム内部では目的タンパク質の配列の替わりに作成された部位特異的スコア行列と一致度の高い配列をデータベースから探索し、その部位特異的スコア行列はより有意なアライメントが検出されなくなるまで回数を重ねる毎に逐次更新されてゆく。そして最終的な部位特異的スコア行列と参照タンパク質との一致度をe値(E value)として算出する。また、下記に示すようにPSI−BLASTの替わりにRPS−BLAST(Reverse PSI−BLAST)を使用しても同等の効果が得られる。
RPS−BLASTとは、上記のプロセスにおいて、予めアミノ酸配列のみを集めたある大きな配列データベースに対して各々の参照タンパク質のプロファイルを作成しておいて、目的タンパク質がどの参照タンパク質に小さなe値(E value)を持つかで調べる。RPS−BLASTは、PSI−BLASTの実行形態の一つである。RPS−BLASTの詳細は、Altschul SF,Madden TL,Schaffer AA,Zhang J,Zhang Z,Miller W,Lipman DJ.Nucleic Acids Res 1997 Sep 1;25(17):3389−402″Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs.″に記載されてる。
e値(E value)は配列間の適合の間に存在するランダムなバックグラウンドノイズを定量的に記述したものである。それは二つの配列がどれだけマッチしているかを示すものでもありスコアに対し指数関数的に減少する性質を持ち、結果の有意な閾値を設定する方法として有用である。本発明においては、そのアライメントが、通常98%以上、好ましくは99%以上の信頼性を持つとき、目的タンパク質はGPCRsのようなある機能を持ったタンパク質ファミリーであるとして立体構造を作成するように判断するのが適当である。PSI−BLASTにおいては、e値(E value)が、統計的に通常0.1以下、好ましくは0.01以下の値を持つときがそれに相当する。
ステップI−20:参照タンパク質の準備
ステップI−20において、適当な立体構造データベース、例えばPDBから参照タンパク質の座標を用意する。この段階では、参照タンパク質のPDB形式の座標ファイルを用意する。さらに詳細には、タンパク質全域ではなく上記アライメント用ソフトウエアが高ホモロジーと判断したアライメント領域部分のみを抽出した座標ファイルとタンパク質全域の両方を用意する。
ステップI−30:二次構造情報の判別
ステップI−30において、ステップにI−20で用意された参照タンパク質座標から二次構造の判別を行う。二次構造決定はステップI−20で用意されたアライメント領域部分のみを抽出した座標とタンパク質全域の両方に対して適用される。具体的なソフトウエアとしては、DSSP,STRIDE等が好ましいが、基本的にはタンパク質の主鎖のねじれ角と水素結合のパターンから判別される方法を用いる。ここでは、例えば、発明者らが開発したC語で書かれたseq23dプログラムを用いるのが好ましい。但し、水素結合の水素をはさんでの酸素や窒素の距離は2.9Å〜3.5Å程度まで定義に幅があるので、ここではその距離として3.05Å、3.10Å、3.50Åを採用した。
ここで、「DSSP(Dictionary of secondary structures of proteins)」とは、PDBの書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合のパターンと、内部回転角等を解析しαヘリックスとβシートを判定するソフトウエアである。この詳細は、Kabsch,W.& Sander,C.(1983)Dictionary of protein secondary structure:pattern recognition of hydrogen−bonded and geometrical features.Biopolymers,22:2577−2637.に記載されている。「STRIDE(Protein secondary structure assignment from atomic coordinates)」とは、PDBの書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合のパターンと、内部回転角等を解析し二次構造を判定するソフトウエアである。この詳細は、Frishman,D & Argos,P.(1995)Knowledge−based secondary structure assignment.Proteins:structure,function and genetics,23,566−579.に記載されている。
ステップI−40:疎水コア値・疎水コア距離の計算
ステップI−40において、ステップI−20で用意された参照タンパク質座標から疎水コア値、及び疎水コア距離の計算を行う。この段階もステップI−30と同様、ステップI−20において用意されたアライメント領域部分のみを抽出した座標とタンパク質全域の両方に対して適用される。具体的なソフトとしては、例えばBIOCESS(NEC社製)のhpocore,hpodist等が好ましい。
ここで「hpocore」とは、原子座標をBIOCESS独自の書式にしたファイルを入力として、そのファイルに疎水コア値の情報を書き込むソフトウエアである。疎水性残基の側鎖が形成する疎水性相互作用の空間を判別し、各疎水性残基の側鎖がいくつの疎水性残基の側鎖と空間的に接触しているかの数(疎水コア値:0または正の整数)を算出している。また、「hpodist」とは、原子座標をBIOCESS独自の書式にし、且つhpocoreで算出された疎水コア値が既に書き込まれたファイルを入力として、そのファイルに疎水コア距離の情報を書き込むソフトウエアであり、「hpocore」で算出された疎水コア値と、原子座標から各残基がどの程度、疎水性相互作用の空間から離れているかの定量的な距離(疎水コア距離)を算出するソフトウエアである。但し、ここでは発明者がプログラムの自動化に対応できるようにC言語でソースを書き直して使っている。
ステップI−50:参照タンパク質中のアライメント領域の確認
ステップI−50において、アライメントの領域が参照タンパク質における疎水コアの領域を含んでいるかどうかを確認する。ここで、疎水コア領域が含まれていない場合は、このアライメントでは疎水性相互作用を用いてタンパク質が折れたたまれることは不可能であると判定され、以下の操作は行わない。
ステップI−60:二次構造・疎水コア値・疎水コア距離情報のアライメント
ステップI−60では、アライメント上の参照タンパク質の配列に沿って、上記の二次構造情報、疎水コア値情報、疎水コア距離情報を並置する。
ステップI−70:アライメントの修正
ステップI−70において、アライメントの修正を行う。アライメントの情報に二次構造、疎水コア値、疎水コア距離等の情報を加味した状態で、アライメントを修正する。また、参照タンパク質の活性残基の場所が既知の場合は、その情報を含めるのが好ましい。またPSI−BLASTやFASTAによってアライメント実行時にプロファイル情報も得られ、それらの場所はアライメントを動かさない方が元来のプログラムの有益情報を欠落させないことになる。そこで後記実施例1のアライメント修正法の効果に示されているようにして、プロファイル情報を含めることが好ましい。
第2図は、アライメントの修正方法の一例を示すフローチャートである。以下、第2図に基づいて、アライメントの修正方法について詳細に説明する。
1)挿入・欠損の位置がαヘリックスもしくはβシート内にあった場合
挿入・欠損の位置がαヘリックスもしくはβシート内にあった場合でも、その2本のαヘリックス領域の続いた境界、2本のβシート領域の続いた境界、またはαヘリックス領域とβシート領域の続いた境界に存在する場合は修正せずに終了とする。
1−1)αヘリックスの場合
欠損の位置がαヘリックスの末端部から3残基の場合は変更無く終了する。この場合に当てはまらない場合のみ、挿入・欠損に対しN末端側及びC末端側のαヘリックス・βシート以外の領域での疎水コア値を比較する。疎水コア値に大きな差が認められた場合、疎水コア値の小さな方のαヘリックス・βシート以外の領域で且つ最大の疎水コア距離を持つ場所へ、挿入・欠損を移動させる。大きな差が認められない場合、最近傍のαヘリックス・βシート以外の領域で且つ最大の疎水コア距離を持つ場所へ、挿入・欠損を移動させる。
(i)更にはステップI−10において、アライメントを用意する際にアライメントソフト、例えばPSI−BLASTによって、ホモロジーが高いと指定する領域に挿入・欠損の位置が相当する部分か否かを判断する。
(ii)更に参照タンパク質の活性部位の情報が得られている場合には、挿入・欠損の位置が相当する部分か否かを判断する。
上記(i)、(ii)の場合には、相当する領域を避けて且つ疎水コア距離の最大の位置に移動する。移動後、また(i)、(ii)の各項目について判断を行い、相当する領域を避けて且つ疎水コア距離の最大の位置に移動する。この操作を、(i)、(ii)の項目が否になるまで繰り返す。
1−2)βシートの場合
挿入・欠損に対しN末端側及びC末端側のαヘリックス・βシート以外の領域での疎水コア値を比較する。疎水コア値に大きな差が認められた場合、疎水コア値の小さな方のαヘリックス・βシート以外の領域で且つ最大の疎水コア距離を持つ場所へ、挿入・欠損を移動させる。大きな差が認められない場合、最近傍のαヘリックス・βシート以外の領域で且つ最大の疎水コア距離を持つ場所へ、挿入・欠損を移動させる。
(i)更にはステップI−10において、アライメントを用意する際にアライメントソフト、例えばPSI−BLASTによって、ホモロジーが高いと指定する領域に挿入・欠損の位置が相当する部分か否かを判断する。
(ii)更に参照タンパク質の活性部位の情報が得られている場合には、挿入・欠損の位置が相当する部分か否かを判断する。
上記(i)、(ii)の場合には、相当する領域を避けて且つ疎水コア距離の最大の位置に移動する。移動後、また(i)、(ii)の各項目について判断を行い、相当する領域を避けて且つ疎水コア距離の最大の位置に移動する。この操作を、(i)、(ii)の項目が否になるまで繰り返す。
2)挿入・欠損がそれ以外の二次構造にあった場合
近傍のループが存在する場合はループの中央に、挿入・欠損を移動させる。さらに移動後の場所から疎水コア距離の最大の位置に移動する。
3)挿入・欠損がループ内にあった場合
ステップI−10において、アライメントを用意する際にアライメントソフト、例えばPSI−BLASTによって、ホモロジーが高いと指定する領域に含まれるか否かを、また参照タンパク質の活性残基の場所に相当するか否かを判断し、両方とも否になるよう疎水コア距離の最大の位置に移動し、もともと否ならば修正せず終了する。
ステップI−80:モデリング
ステップI−70において得られた修正アライメントを元に、適当なモデリングソフト、例えばFAMSを用いて立体構造を構築し、ステップI−90においてモデルが完成し、ステップI−100において、出来上がったモデルの疎水コアが形成されているかどうかを検査し、ステップI−110の最終構造に至る。
次にモデリング(立体構造の構築)手法の好適な一例として、前記FAMSの各ステップについて説明する。なお、下記のステップI−81〜I−83における計算回数、定数、カットオフ値等は、本発明者が考えている好ましいパラメーターの一例を示すものであり、本発明の範囲を何ら限定するものでない。
ステップI−81:Cα原子の初期座標の構築及び最適化
ステップI−80からのアライメントの結果を受けて、参照タンパク質から挿入および欠損のあるアミノ酸残基についての情報をえる。アライメントにおいて連続して三残基以上のアミノ酸が対応しているギャップの無い領域を選び出し、その領域においては、これらの残基ペアにおいて、目的タンパク質のCα原子は参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。Cα原子が求められなかった場合には、予め作成してある断片のデータベースから座標を当てはめる(第3図参照)。ここで、本明細書においてCα原子とは、各アミノ酸の骨格の中心となる炭素原子を意味する。Cβ原子とは、Cα原子の側鎖側に結合する炭素原子を意味する。また、C原子とは、カルボニル基の炭素原子を意味する。
ステップI−81(1):Cα原子のシミュレーティッドアニーリング法による構築
上記ステップI−81で作成されたCα原子は、シミュレーティッドアニーリングのプロセスを用いて参照タンパク質の座標から構成される関数を用いて最適化される。この目的関数は下記式(1)のとおりである。
ここでUlenは、配列上隣の残基およびCys残基のペアのCα原子間の距離に関するもので下記式(2)のように設定される。
ここでDi,i+1は残基iと残基i+1のCα間距離である。DiSSはジスルフィド結合を形成するCys残基のペア同士の距離である。K1とKSSは定数でありそれぞれ2および5と設定される。
UangはCα原子の結合角の関数であり下記式(3)のとおりである。
ここでθi(rad)はi,i+1,i+2番目の残基Cα原子の角度である。θ0はPDBのX線構造から(100/180)・π(rad)と設定される。Kaは定数であり1とする。
Uposは、Cα原子の位置に関する関数であり、下記式(4)のとおりである。
ここで‖・‖が意味する所はノルムであり、Miは構造を基にしたアライメント上で構造的に等価な位置にあるCα原子間の平均距離である。残基iについてMiの値が求められないとき、Miの値は10と設定される。ここでは、Cα原子の平均座標であり下記式(5)のとおりである。
ここでXjiはj番目の参照タンパク質のi番目の残基のCαの原子座標である。wjiは、j番目の参照タンパク質のi番目の残基の重みである。この重みは目的タンパク質の大体の形を決定するため重要なパラメータであるが、これはローカルスペースホモロジー(LSH)と呼ばれる着目部位の12Å以内の空間的近傍の局所的な値によって決定している(第4図参照)。LSHと構造がよく保存されている部位(SCRs:Structural Conserved Regions)に存在する残基のペアの比率との相関は第5図に示されているように非常に高い。これは、高いLSH値を持つときは統計的にCα原子の位置が参照タンパク質構造と比べて1.0Å以内にあることを意味する。Uvdwは下記式(6)のとおりである。
ここでKvdwは0.01(Di,j<3.2Å)と0.001(Di,j>3.2Å)と設定され6Åをカットオフ値とした。
Cα原子は式(1)に従って、シミュレーティッドアニーリング法を用いて最適化される。この最適化の段階でCα原子の摂動は1.0Å以内になるように設定する。またこのアニーリングの段階は全てのCα原子について、100回づつ計算される。そして、温度に相当するパラメータは、25から0.5回ごとに0.01減らし、そのパラメータは以後一定とする。
この大きな2つの段階、構造情報の取得とCα原子の構築は10回繰り返され、最小の目的関数値をもつCα原子の座標が最適解として算出される。
ステップI−82:主鎖原子座標の構築及び最適化
ステップI−81(1)のCαの原子座標に主鎖の他の原子を付加し、シミュレーティッドアニーリング法によって目的関数を最小化するようにする。まず、Cα原子の立体的な重ねあわせを行い、Cαの原子間距離が2.5Å以下の残基が取り上げられる。Cαを除く主鎖の原子座標はCα原子間距離が最小になるように参照タンパク質の座標から取得しモデル構造とする。
参照タンパク質の中に相当する残基が無い場合、主鎖の原子座標はデータベース中の相当する4残基のタンパク質断片から作成される。この過程の中で、残基iの主鎖原子はi−1番目からi+2番目までのCα原子間の最小のrmsd値を持つ残基から選ばれる。その際N末端の残基では、Cα原子座標の重ね合わせ範囲がi番目からi+3番目までとなり、C末端の残基およびそのひとつ前の残基では同様にi−3番目からi番目までおよびi−2番目からi+1番目までとなる。
主鎖原子の目的関数を基にシミュレーティッドアニーリング法によって主鎖原子座標が最適化される。
目的関数は下記式(7)のとおりである。
となる。
Ubondは下記式(8)のとおりである。
ここでbi0は、標準の結合長でありそれぞれの化学結合の種類によって異なる。Kbは定数であり225とする。
Uangは結合角の関数で、下記式(9)のとおりである。
ここでθiはi番目の結合角であり、化学結合の種類によって異なる。Kaは定数で45と設定される。
Unon−bondは非結合の相互作用の関数で、下記式(10)のとおりである。
ここでεi,jとri,j*は定数で原子の種類によって異なる。
Knonは定数で0.25とし、カットオフは8Åとする。
USSはCys残基が生成するジスルフィド結合の関数で、下記式(11)のとおりである。
ここでKSSCαおよびKSSCβは定数であり7.5である。
Uposは原子の位置に関する関数で、下記式(12)のとおりである。
ここで<WiXi>は下記式(13)のように与えられる。
式(12)の<WiXi>は、目的タンパク質および参照タンパク質の間の構造の重ねあわせから求める。
Kposは定数であり0.3である。
Utorは主鎖のねじれ角のものであり、下記式(14)のとおりである。
ここでφi0とφi0はRamachandranマップ上での最も近いねじれ角のθiおよびψiとする。またωi0は0としてcis−Pro残基の場合のみπ(radian)とする。KtおよびKωは定数であり、それぞれ10および50とする。
UchiはCαのキラリティーに関するものであり、下記式(15)のとおりである。
ここでτiはN−Cα−Cβ−Cで定められるねじれ角でありKchiは50とする。Uhydrはホモロガスなタンパク質中で保存された主鎖の水素結合に関するもので、下記式(16)のとおり定められる。
水素結合は、N原子とO原子の距離が2.9±0.5Åにあるときに設定される。複数の参照タンパク質中で水素結合があるか否かを判定するときは、75%以上の参照タンパク質が存在すると認めた場合に水素結合ありと判定する。Khydrは定数であり0.6である。
次にCβを含む主鎖原子の最適化がシミュレーティッドアニーリングによって行われる。このアニーリングの過程で主鎖とCβの原子の摂動が初期の位置に対して1.0Å以内になるようにする。このアニーリングの段階は主鎖とCβの原子に対して200回行われる。温度に相当するパラメータは50もしくは25から始まり一回毎に0.5倍にしてゆき0.01になるまで続け、その後一定値とする。
主鎖の立体配置を幅広くサンプリングするために、本発明の方法では、好ましくは上記の方法を6回行い、最小の目的関数値を持つ主鎖の原子座標を最適解とする。そして、温度に相当するパラメータは、はじめの2回は50からスタートして3回目から25からスタートすることとする。
ステップI−83:側鎖原子座標の構築及び最適化
側鎖の構築は、大きく2段階に分かれており、「構造保存部位の側鎖構築」(スッテプI−83(1))と「全体の側鎖構築」(スッテプI−83(2))に分けられる。
ステップI−83(1):構造保存部位の側鎖構築
算出された主鎖原子に対して、以前の研究における方法を用いてホモロガスなタンパク質から側鎖のねじれ角を得る。この方法の詳細は、″The role of played by environmental residues in side−chain torsional angles within homologous families of proteins:A new method of side chain modeling.″Ogata K and Umeyama H,Prot.Struct.Funct.Genet.1998,31,255−369に記載されている。
この方法の中でホモロガスなタンパク質の中で保存されている側鎖の割合を算出し、この情報を基にして側鎖のモデリングを行う。側鎖の保存された部位の側鎖の原子座標は固定した主鎖原子に対して置かれる。例えば、ホモロガスなタンパク質中でアルギニン残基のχ1角が保存されていれば、Cγ原子の座標を置くことができ、Phe残基でχ1とχ2角が保存されていれば、全ての側鎖原子を置くことができる。式(7)を用いたシミュレーティッドアニーリングの最適化の過程は、主鎖とCβの原子のみ行われて、原子の摂動は1.0Å以内となるようにした。この主鎖とCβの原子のアニーリングの段階は200回行われる。そして、温度に相当するパラメータは25からスタートして一回毎に0.5倍にしてゆき0.01になるまで小さくなるようにする。式(7)中のUnon−bondは主鎖原子と部分的に作成された側鎖原子について行われる。そのとき側鎖原子の座標は最適化の過程を通じて保存されるようにする。
構造の情報であるMiと水素結合のN−Oのペアは最適化の過程で用いられる。主鎖原子の配置を得るために、上記プロセスを3回繰り返し、目的関数の最小の主鎖原子の座標を算出構造とする。
ステップI−83(2):全体の側鎖の構築
側鎖の構築は固定した主鎖およびCβ原子のもとで行う。これは上記したOgata K and Umeyama H,Prot.Struct.Funct.Genet.1998,31,255−369に開示されている研究成果をもって行われ、それを用いることにより短時間で正確なモデルを与えることができる。次に主鎖構造は低温におけるモンテカルロ法によって最適化され、温度は0.001に設定され式(7)の目的関数Unon−bondを用い、全ての主鎖と側鎖の原子で計算される。そして、N、Cα、C、Cβ原子の最適化の過程で側鎖のねじれ角を最適化された状態を保つように側鎖の座標を再配置する。原子の摂動は0.5Å以内とする。次に側鎖は削除され、上記の側鎖構築が繰り返される。このプロセスは2.4Åの原子同士のぶつかり合いがなくなり、且つN−Cα−Cβ−Cのねじれ角が−120±15°の範囲に収まるまで繰り返される。
ステップI−90:立体構造の完成
上記の通りステップI−70において得られたアライメントを基にステップI−80においてFAMS等のモデリングソフトを用いて立体構造を構築し、モデルが完成する。上記ステップI−80で示す方法をFAMSと称することがある。この方法の詳細は、Koji Ogata and Hideaki Umeyama,″An automatic homology modeling method consisting of database searches and simulated annealing″Journal of Molecular Graphics and Modeling 18,258−272,2000に記載されている。
ステップI−100:立体構造の検査
ステップI−100において、出来上がった立体構造モデルの疎水コアが形成されているかどうかを検査し、ステップI−110の最終構造に至る。
ステップI−110:最終構造の構築
かくして目的タンパク質の立体構造を規定する原子座標を得ることができる。
本発明の方法(アライメント修正法)によれば、ホモロジーモデリングによるタンパク質の立体構造構築において、アミノ酸配列の並置(アライメント)が与えられた場合において、参照タンパク質の座標から立体構造情報を得てアライメントが修正されるため、より正確な立体構造の構築が可能となる。アライメントの修正は、タンパク質の二次構造情報、疎水コア値情報、疎水コア距離情報等に基づいて行われ、これによりタンパク質立体構造の構成単位である二次構造およびその近傍にアミノ酸配列断片の挿入および欠損が入らないモデルを得ることができる。また本発明の方法は、アライメントを修正する際に、タンパク質の立体構造を形成する物理的な疎水性相互作用を考慮した方法であり、疎水性相互作用の働く空間およびその近傍にアミノ酸配列断片の挿入および欠損が入らないようにすることが可能である。
II.Advanced FAMSによる立体構造の構築法
次に、本発明の第二および第三の態様であるAdvanced FAMSについて説明する。
第6図は、本発明のAdvanced FAMSによる立体構造構築方法の一例を示すフローチャートである。以下、第6図の各ステップを例としてこの発明を詳述する。
ステップII−10:目的タンパク質のアミノ酸配列
先ず、立体構造の構築対象となる目的タンパク質のアミノ酸配列を入力する。用いられるアミノ酸配列としては、上記で詳述した通り、データベースに登録されているもの、配列が始めて解析されたもの等如何なる由来の配列であってもよい。また部分構造のみが解析されているタンパク質の配列も完全な立体構造の情報を得るために、本発明における立体構造の構築対象とすることができる。
ステップII−20:高ホモロジー用アライメントソフトによるデータベース検索及び配列アライメント
ステップII−10において入力されたアミノ酸配列を、高ホモロジー用アライメントを行うソフトウエア、例えばFASTAを用いてアライメントを行う。即ち、FASTAにより立体構造データベース、例えばPDBから参照タンパク質を選定し、選定された参照タンパク質のアミノ酸配列とのアライメント(並置)が行われる。
ここでいう参照タンパク質とは立体構造データベースから取得される配列と座標のデータベースでありプロテインデータバンク(PDB)として登録された公共データベースから得られるものである。PDBのデータベースには26243個の立体構造が登録されているが(2000年8月時点)、95%以上の配列の一致度があるものは同じカテゴリーと判断し、カテゴリー中からもっとも長い配列のものを、更に同じ長さの場合はX線の分解能の最も高い構造をそのカテゴリーの代表とした。本発明で用いた立体構造データベースはこの代表を集めたデータベースである。3922個の代表構造を本発明においてPDBデータベースとして用いている。
ここで、高ホモロジー用アライメントソフトFASTAの詳細は、前記の通り、″Effective protein sequence comparison.″Pearson WR,(1996)Methods Enzymol;266:227−58に記載されている。このプログラムは、目的配列と一致度の高い配列を立体構造データベースから探索し、最終的な目的配列と参照タンパク質との一致度をe値として算出する。
e値は配列間の適合の間に存在するランダムなバックグラウンドノイズを定量的に記述したものである。それは二つの配列がどれだけマッチしているかを示すものでもありスコアに対し指数関数的に減少する性質を持ち、結果の有意な閾値を設定する方法として有用である。このステップにおいては、例えばFASTAで算出されたe値が0.01以下の値を持つとき有意なアライメントであると判断している。
ステップII−30:プロファイルアライメントソフトによるデータベース検索及び配列アライメント
ステップII−10において入力されたアミノ酸配列を、低ホモロジー領域のアライメントを行うソフトウエア、即ちプロファイルアライメントを行うソフトウエア、例えばPSI−BLASTを用いてアライメントを行う。PSI−BLASTはプロファイルアライメントを行うようにプログラムされている。PSI−BLASTの詳細は、前記の通り、″Matching a protein sequence against a collection of PSI−BLAST−constructed position−specific score matrices.″Schaffer AA,Wolf YI,Ponting CP,Koonin EV,Aravind L and Altschul SF,Bioinformatics 1999,12,1000−11に記載されている。
プロファイルとして用いるアミノ酸配列としては、例えば、公開データベースであるPIR:http://www−nbrf.georgetown,edu/pir/(National Biomedical Research Foundation(NBRF))等のアミノ酸配列を用いればよい。
このプログラム(PSI−BLAST)は、プロファイルのデータベース中の(ここではPIR中の)有意なアライメント関係のみから情報を引き出し、アミノ酸配列の部位特異的スコア行列を作成する。次にプログラム内部では目的配列の変わりに作成された部位特異的スコア行列と一致度の高い配列をデータベースから探索し、その部位特異的スコア行列は、より有意なアライメントが検出されなくなるまで回数を重ねる毎に逐次更新されてゆく。そして最終的な部位特異的スコア行列と参照タンパク質との一致度をe値として算出する。
前記の通り、e値は配列間の適合の間に存在するランダムなバックグラウンドノイズを定量的に記述したものである。それは二つの配列がどれだけマッチしているかを示すものでもありスコアに対し指数関数的に減少する性質を持ち、結果の有意な閾値を設定する方法として有用である。
下記第1表および第2表に、CASP4(Fourth Community Wide Experiment on the Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction:http://predictioncenter.11nl.gov/casp4/Casp4.html)において、正しいフォールドでモデリングできたもののリストおよび間違ったフォールドでモデリングしたもののリストとe値を示す。正しいフォールドを正しくモデリングできたものが0.1以下である確立は84%で、間違ってモデリングしたものの内0.1以下である確立は44%である。ここで、正しくモデリングできたものとしての定義は、タンパク質のフォールドの仕方と二次構造が正しく予測されているものとしている。従ってRMSD値が大きくても正しいとしているものもある(T0089)。下記第1表および第2表の比較によってe値が0.1以下ならかなり正しいモデリングが可能と言える。
タンパク質フォールドを正しくモデリングした第1表においてe値が3.2(FASTA)と7.1のような大きな数値もあるが、タンパク質フォールドを間違ってモデリングした第2表において0.031、0.042、0.48、0.96のような0.1の近傍のe値が存在するので、0.1のe値の閾値は妥当と考えられる。またe値が5×10−17や7×10−22のような小さい値でも、タンパク質フォールドの評価にエラーを起こすことがあることから、e値がかなり小さいことが正しいフォールドを完全に保証するものではないことに注意する必要がある。なお、第1表および第2表中の「○」又は「◎」は不等式「e<0.1」又は「I.D>20」を満たすことを示す。
ステップII−40:参照タンパク質間の高ホモロジー用アライメントソフトによる再アライメント及び配列的冗長性排除
ステップII−20およびII−30において、高ホモロジー用アライメントソフトウエア(FASTA)およびプロファイルアライメント用ソフトウエア(PSI−BLAST)において算出された複数のアライメント間で、高ホモロジー用アライメントソフトウエア(FASTA)のアライメントを行い、参照タンパク質同士のアミノ酸配列を総当りで比べ冗長性を排除し、目的配列との間でe値の高い方のアライメント及び参照タンパク質を排除している。その際、具体的には、例えばFASTAおよびPSI−BLASTが同じPDBのIDの参照タンパク質をアライメントの対象としている場合には、そのPDBのIDについてFASTAのアライメントを採用し、PSI−BLASTのアライメントを排除する。
このステップにおいてどれだけ冗長性を排除するかが、後のステップにおいて非常に重要となる。本発明では、FASTAのe値がある値以下のもの同士を同じクラスターとして、3922個のPDBデータベースがいくつのクラスターに分けられるかを調査した。その結果を第7図に示す。第7図から明らかな通り、e値が0.01より大きくなるとクラスター数が急激に減少し、構造に多様性が無くなることが分かる。この結果に基づきe値が0.01以下の場合を同じクラスターとして冗長であると判断している。この様に、冗長性の判断において、e値を適切に設定することが重要である。このe値を低く設定しすぎれば、似たような配列が多くなりこのステップを行う意味が無くなる。逆に高く設定しすぎれば、クラスターの数が激減し構造に多様性がなくなる。第7図から、冗長性判断のためe値を0.01以下と設定すればこのようなことが起こらず、適切に判断が可能であることがわかる。
更に詳述すれば、例えばプロファイルアライメントを行うPSI−BLASTのe値0.1以下で立体構造データベースであるPDBに対して検索を行うと、通常の場合、複数のアライメントの候補が得られることが多い。それらに対して全て次のステップII−50にあるCα原子座標の構築を行うことは、大変な時間を要し、且つ同じような立体構造が多数出来ることになる。このようないわば大量に出来る文字配列上「似たようなアライメント」を削除するのがこのステップの目的である。アライメントは目的配列と参照タンパク質の配列との関係を示したものであり、大量に出来たとしても目的配列の部分は同一である。つまりこの場合アライメントが似ているか否かは、参照タンパク質側の配列が似ているか否かで決まる。文字配列上似ているか否かの判定の為に参照タンパク質のアミノ酸配列同士の高ホモロジー用のアライメント例えばFASTAを行う。例えばFASTAでe値が0.01以下であるならば、それは立体構造的に似たようなタンパク質同士の関係があり、それらを参照タンパク質としてモデリングすることは、同じようなタンパク質座標が構築されることを意味する。
そこで参照タンパク質同士は高ホモロジー用アライメントで行い、互いに似ていると判断された場合、どちらを捨てるかの判断は、低ホモロジー用アライメント(プロファイルアライメント)ソフト、例えばPSI−BLASTで「目的配列とより似ていない(e値がより高い)」と判断された方を捨てる。このことによりこのステップの目的が達成できる。
ステップII−50:Cα原子の初期座標の構築・最適化及び立体構造的冗長性排除
ステップII−40からの配列的な冗長性を排除したアライメントの結果を受けて、参照タンパク質との挿入および欠損のあるアミノ酸残基についての情報をえる。アライメントにおいて連続して三残基以上のアミノ酸が対応しているギャップの無い領域を選び出し、その領域においては、これらの残基ペアにおいて、目的タンパク質のCα原子は参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。Cα原子が求められなかった場合には、予め作成してある断片のデータベースから座標を当てはめる(第3図参照)。
ステップII−51:Cα原子のシミュレーティッドアニーリング法による構築 上記ステップ50で作成されたCα原子はシミュレーティッドアニーリングのプロセスを用いて参照タンパク質の座標から構成される関数を用いて最適化される。この目的関数等は前記ステップI−81(1)の通りであり、同様の方法で行われる。
ステップII−52:立体構造的冗長性排除
ステップII−51で算出されたCαの座標を用いて参照タンパク質間の立体構造フィッティングを行う。上記ステップによって複数のアライメントが、候補として選ばれてきた場合、個々に選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質のCα原子座標を算出し、Cα原子座標同士で立体構造をフィッティングを行い、各座標の根平均二乗距離(RMSD)が一定の値以下の場合は同一の立体構造であると判断して、目的タンパク質との間でe値の高い方の参照タンパク質およびアライメントを排除して、さらに参照タンパク質およびアライメントが選定される。この場合、根平均二乗距離(RMSD)の値が3.0Å以下の場合は基本的に同一の立体構造であると判断し、目的配列との間でe値の高い方の参照タンパク質及びアライメントを排除するのが好ましい。ここで参考資料としてCASP4のターゲットについてモデリングの際にCα原子座標のみ算出した場合と側鎖まで構築した場合のずれを示すと下記第3表の通りであり、平均は0.404±0.162Åとなっており、Cαのみでおおよその評価が可能である。
このステップにより、更に不必要な参照タンパク質およびアライメントが排除され、立体構造の構築上有用なもののみが選定される。このステップは上記ステップII−40から得られる参照タンパク質およびアライメントのみならず、他の如何なる手法で得られたものに対しても適用することができる。
ステップII−60:アライメントにアミノ酸配列の挿入部分配列がある場合のCα原子の構築
得られたアライメントに、挿入部分配列がある場合、予め作成された部分アミノ酸配列の座標データベースから適切な配列を読み込みCα原子座標が構築される。データベースから得られる長さ以上の挿入部分配列(n)がある場合、次の通りCα原子座標を構築することができる。
即ち、(i)目的タンパク質の挿入部分配列を上記データベースから得られる長さに削除して参照タンパク質とのアライメントを行い、(ii)このアライメントを元に削られた目的タンパク質のCα原子座標を構築し、(iii)削られた目的タンパク質の削除部分の末端から一定数のアミノ酸残基を削除し(但し、削除するアミノ酸残基数は、上記データベースから得られる長さより少ない数とする)、(iv)この削られた目的タンパク質と目的タンパク質とのアライメントを基に目的タンパク質のCα原子座標を構築し、(v)挿入部分配列(n)から、削られた目的タンパク質の元の挿入部分配列(n)に相当する部分に残存する削除後の残基数を引いた残基数が、上記データベースから得られる長さ以下となるまで上記操作を繰り返し行う。
上記方法の一例を示す第8図を用いてより具体的にこの方法を説明する。即ち、アライメントに挿入部分配列n残基がある場合、モデリングソフト、例えばFAMSの場合では最大24残基の断片部分配列のデータベースを用いて挿入する。モデリングソフトとしてFAMSを用いた場合n>24の場合には、従来ではその挿入部分のモデリングが不可能であったが、第8図の方法によって構築できる。
まず、挿入部分配列n残基の中央部分の配列を除き、挿入部分配列を24残基に削る。この削られたアライメントを基にFAMSのCα原子を構築する機能を用いて、削られた目的配列のCαの座標を構築する。次に、削られた目的配列の座標を参照とするアライメントを作成する。ただし、削られた目的配列の挿入された24残基の部分は真の構造ではなく、あくまで中央部分が削られたものであり、中央部分を次の段階でモデリングしなくてはならない。そのまま、中央部分の構築を行うと挿入部分が歪な形になるので、例えば末端部分を7残基程度両末端では14残基分削る必要がある。
この例では14残基削っているが、この数が24残基以上ではいけない。24残基挿入し14残基削った後、10残基分挿入部分がモデルされている。従って、モデリングを要する挿入部分、即ち、挿入部分配列(n)から、削られた目的タンパク質の元の挿入部分配列(n)に相当する部分に残存する削除後の残基数を引いた残基数(10)は、n−10残基となる。n−10<25であれば、FAMSの機能から立体構造の構築を行う。n−10>24であれば、再び24残基に削って上記操作を繰り替えす。
上記の操作を行うことにより、何残基の挿入部分配列があっても立体構造の構築が可能である。
このステップII−60は、上記ステップから得られる参照タンパク質およびアライメント等を対象とするのみならず、他のいかなる手法で得られたものに対しても適用することができる。
上記で選定されたアライメント、参照タンパク質、Cα原子座標等の情報に基づく立体構造の構築方法は特に限定されないが、例えば次のステップ70〜90の方法で行うのが好ましい。ここで、本明細書の各ステップにおいて記載されている計算回数、定数、カットオフ値等のパラメーターは、本発明者が最も好ましいと考えているものの一例であり、本発明の範囲を何ら限定するものでない。
ステップII−70:主鎖原子座標の構築及び最適化
ステップII−52又はステップII−60のCαの原子に主鎖の他の原子を付加し、シミュレーティッドアニーリング法によって目的関数を最小化するようにする。アライメントにモデリングソフトでの処理が不可能な挿入部分配列がない場合はステップII−52で構築されたCα原子に主鎖の他の原子の付加が行われる。
まず、Cα原子の立体的な重ねあわせを行い、Cαの原子間距離が2.5Å以下の残基が取り上げられる。Cαを除く主鎖の原子座標はCα原子間距離が最小になるように参照タンパク質の座標から取得しモデル構造とする。
参照タンパク質の中に相当する残基が無い場合、主鎖の原子座標はデータベース中の相当する4残基のタンパク質断片から作成される。この過程の中で、残基iの主鎖原子はi−1番目からi+2番目までのCα原子間の最小の根平均二乗距離(RMSD)値を持つ残基から選ばれる。その際N末端の残基では、Cα原子座標の重ね合わせ範囲がi番目からi+3番目までとなり、C末端の残基およびそのひとつ前の残基では同様にi−3番目からi番目までおよびi−2番目からi+1番目までとなる。
主鎖原子の目的関数を基にシミュレーティッドアニーリング法によって主鎖原子座標が最適化される。この目的関数等は前記ステップI−82の通りであり、同様の方法で行われる。
ステップII−80:側鎖原子座標の構築及び最適化
側鎖の構築は、大きく2段階に分かれており、「構造保存部位の側鎖構築」(スッテプII−81)と「全体の側鎖構築」(スッテプII−82)に分けられる。
ステップII−81:構造保存部位の側鎖構築
算出された主鎖原子に対して、以前の研究における方法を用いてホモロガスなタンパク質から側鎖のねじれ角を得る。この方法の詳細は、″The role of played by environmental residues in side−chain torsional angles within homologous families of proteins:A new method of side chain modeling.″Ogata K and Umeyama H,Prot.Struct.Funct.Genet.1998,31,255−369に記載されている。
このステップII−81は前記ステップI−83(1)と同様に行われる。
ステップII−82:全体の側鎖の構築
側鎖の構築は固定した主鎖およびCβ原子のもとで行う。これは上記したOgata K and Umeyama H,Prot.Struct.Funct.Genet.1998,31,255−369に開示されている研究成果をもって行わる。
このスッテプII−82は前記ステップI−83(2)と同様に行われる。
ステップII−90:最終構造の構築
かくしてステップII−10〜II−80を行うことにより、目的タンパク質の立体構造を規定する原子座標を得ることができる。前記ステップII−52迄の過程でアミノ酸配列的および立体構造的に冗長性を排除したアライメントが得られており、効率的な立体構造の構築が可能である。
前記したアライメント修正法は、上記Advanced FAMSに組み合わせて用いることができる。また、上記各ステップは、コンピュータプログラムにより、全自動で実行することができる。かくして、目的タンパク質の配列が与えられれば全自動のホモロジーモデリング(立体構造の構築)が可能となる。
III.ドメイン単位に区切った立体構造データベース
次に、本発明の第四の態様である立体構造配列のドメイン区切り方法およびドメイン単位に区切った立体構造データベースについて説明する。
この発明において、「ドメイン」とは、前記の通り、タンパク質の3次構造の単位を意味する。
本発明のドメイン区切り方法は、ドメイン区切りが未知の立体構造の配列について、ドメイン区切りが既知の立体構造の配列に対して配列上の相同性検索を行い、得られたドメイン毎の相同性配列のコンセンサスに基づいて、ドメイン区切りを決定することを特徴とする方法である。
ドメイン区切りが既知の立体構造の配列としては、前記したドイン単位に区切った立体構造データベース(ドメイン構造データベース)、例えば、SCOP、CATH等の配列が用いられる。相同性の検索は、これらデータベースに対して行い、ドメイン区切りが未知の立体構造の配列と相同性を有する配列を検出する。ここで「相同性」とは、配列の一致度や類似度を意味する。相同性の検索は、適当なアライメントソフト、例えば、前記FASTAやPSI−BLAST等が用いられる。
これらアライメントソフトを用いて検出されたドメイン毎の相同性配列のコンセンサスに基づいて、ドメイン区切りが未知の立体構造の配列について、ドメイン区切りを決定する。ここで、コンセンサスとは、一致意見または合意を意味する。ドメイン区切りのコンセンサスは、多数決法を採用して行えばよい。
また、SCOPに登録されている各ドメインには、その性質を表す識別子(ID)が付与されている。ドメイン区切りと同時に、この識別子(ID)についても、コンセンサスに基づいて新たな識別子を付与するのが好ましい。これにより、新たに決定されたドメインについて、その帰属を推定することができる。
上記方法を用いて、ドメイン区切りが未知の立体構造の配列について、ドメイン立体構造データベースを構築することができる。
SCOP等のドメイン構造データベースの更新頻度は、PDB等の立体構造データベースとの更新頻度より少ない(更新のスピードにタイムラグがある)。このため、PDB等の立体構造データベース中には、ドメイン区切りが決定されていない新規な配列の登録が数多く含まれる。本発明の方法により、これら新規な構造の登録に対しても効率的に対応することができる。
かくして得られるドメイン構造データベースを用いて参照タンパク質を選定することにより、ドメイン単位の立体構造の構築が可能となる。立体構造の構築は、例えば前記した方法により行うことができる。
また、ドメインとは、前記の通り、タンパク質の立体構造で3次構造の単位であり、本発明の方法を用いれば、効率的にドメイン単位の立体構造が得られ、ドメイン間相互作用の研究の良いデータセットの提供も可能となる。
IV.アミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索方法
次に、本発明の第五の態様であるアミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質の探索方法について説明する。
この発明の、参照タンパク質の探索方法は、
(i)任意の目的タンパク質について、アミノ酸配列データベースに対して相同性検索を行い、目的タンパク質の配列と相同性を有するアミノ酸配列データベースの配列を検出し、
(ii)検出されたアミノ酸配列について、立体構造データベースの配列に対して相同性検索を行い、検出されたアミノ酸配列データベースの配列と相同性を有する立体構造データベースの配列を検出し、
(iii)検出された立体構造データベースの配列と目的タンパク質の配列とのアライメントを得て、該立体構造デーベースの配列を参照タンパク質とすることを特徴とする方法である。
先ず、相同性検索に用いられるアミノ酸配列データベースとしては、特に限定されないが、例えば、前記したGCRDb、GPCRD、ExPASy、ORDB、PIR、Swiss Plot、TrEMBL、TrEMBLNEW、DAD等が挙げられる。これらの中で、使いやすさの観点からPIRを用いるのが好ましい。
相同性の検索は、適当なアライメントソフト、例えば、前記したFASTAやPSI−BLASTを用いて行われる。
かくして検出される目的タンパク質の配列と相同性を有する酸配列データベースの配列について、立体構造データベースの配列に対する相同性検索が行われ、アミノ酸配列データベースの配列と相同性を有する立体構造データベースの配列が検出される。用いられる立体構造データベースとしては、特に限定されないが、例えば、前記したPDB、CCDC、SCOP、CATH等が挙げられる。これらのデータベースは単独で用いても、組み合わせて用いても良い。相同性の検索は、上記の通り、適当なアライメントソフトを用いて行えば良い。
かくして、アミノ酸配列データベースの配列を介して、目的タンパク質の配列と立体構造データベースの配列とのアライメントを得ることができる。このアライメントに基づき参照タンパク質が選定される。
用いるアミノ酸配列データベースは、似たような配列が検出されるのを防ぐために、あらかじめ、似ているものを排除しておく(冗長性を排除しておく)ことが好ましい。この場合、排除の基準となる配列の一致度(類似度)は特に限定されないず、配列の検出数、処理の効率に基づいて決定すれば良く、例えば、配列の類似度(一致度)が95%以上のものを省くのが好ましい。
アミノ酸配列データベースから相同性を有する複数(多数)の配列が検出されることがある。この場合、処理の効率化を計るために、これらの配列の冗長性を排除しておくことが好ましい。
冗長性の排除は、高ホモロジーアライメントソフト、例えばFASTAを用いて、閾値を段階的に下げてゆくクラスター解析により行うのが好ましい。具体的には、閾値は初め90%から5%刻みで下げてゆく。クラスターの代表としては、もともとのORF(Open Reading Frame)のシーケンスに対し最も低いe値を持つ配列を採用する。クラスター数が10以下になるクラスター解析の閾値のところでやめる。但し、この数は自動解析に適応する数であれば10にこだわらない。特に、大量なアミノ酸配列データベースの配列に対して自動モデリングを実行する為にはこのようにデータベースの配列数を少なくする必要がある。
検出された立体構造データベースの配列と目的タンパク質の配列とのアライメントが複数得られた場合、各アライメント間の一致部分はそのままとし、不一致部分はそれらのコンセンサスに基づいて確定させ、単一のアライメントを得る。即ち、複数のアライメントのコンセンサス(一致意見)に基づいて、単一のアライメントを算出する。アライメントのコンセンサスは、多数決法等を利用して行えばよい。
このアライメントのコンセンサスを取る場合、前記ドメイン区切りや識別子(ID)の場合と異なり、考慮すべき事項が多く、別のプログラムを用いて行うのが好ましい。この場合、アルゴリズムは、多数の要素の集合から一つを選び出すことに相当し、統計手法として平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値等が考えられる。多数決とは、最頻値に相当するが、中央値、平均値の意味も少し含んでいる。特に大小関係が無い場合は、最頻値を選択するのが好ましい(自然である)。
この発明は、目的タンパク質を立体構造データベースに対して相同性検索を行っても、相同性を有する立体構造データベースの配列が検出されなかった場合に行うのが特に好ましい。即ち、この発明により、ORFの立体構造探索において、通常のアライメントソフト、例えばPSI−BLAST、PRS−BLAST、FASTA等で立体構造の精度が保証された類似のアミノ酸配列(参照タンパク質)を立体構造データベースから探し出せない場合においても、アミノ酸配列データベースを介することにより、参照タンパク質を探し出すことができる。このことは、第35図に示す通り、モデリングにより立体構造が構築可能なORF数が格段に増加したことを意味する。
かくして探索された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて、例えば、前記した方法により立体構造を構築することができる。
V.本発明の特に好ましい態様
上記した本発明の第一〜第五の態様は、ホモロジーモデリングを行うことができる適当なプログラムが動作するコンピュータを用いて、単独で或いは互いに組み合わせて実施することができる。本発明の最も好ましい態様の一例を第9図に示す。この発明の態様における各ステップの詳細は、前記の通りである。これにより、適当なコンピュータを用いて、如何なるORFの配列についても、漏らさずに、網羅的に立体構造の構築(モデリング)が可能である。第9図に示す方法は、特に自動化に適した方法である。これにより、目的タンパク質の配列が与えられれば、大量なアミノ酸配列データベースの如何なる配列に対してもコンピュータを用いた自動モデリングを実行することができる。近年ORFの配列情報は加速度的に増加しており、本発明の方法により、大量のORFの配列情報について、効率的なモデリングが可能となる。
VI.タンパク質の立体構造を規定する原子座標が記録されている記録媒体、データベース
上記方法で得られたタンパク質の立体構造を規定する原子座標をコンピュータが利用可能な所定の形式で適当な記録媒体に格納することにより目的タンパク質の立体構造データベースが構築できる。本発明のデータベースは、好ましくは、上記原子座標とともに参照タンパク質と目的タンパク質のアライメント情報を含む。また、データベースには、所望によりコード番号、参照タンパク質の参照領域の情報、目的タンパク質の情報、Cα原子間距離等が含まれる。
本発明においてデータベースとは、上記原子座標を適当な記録媒体に書き込み、所定のプログラムに従って検索を行うコンピュータシステムをも意味する。ここで適当な記録媒体としては、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気媒体;CD−ROM、MO、CD−R、CD−RW等の光ディスク、半導体メモリ等を挙げることができる。
VII.薬物の分子設計方法
薬物分子設計を行うことができる適当なプログラムが動作するコンピュータで、上記方法で得られた薬物分子の標的となるタンパク質(以下これを「標的タンパク質」と称することがある)の構造座標の全て又は一部、又はそれらが記録されたデータベース若しくは記録媒体の構造座標を使用して、標的タンパク質と相互作用をする薬物分子(拮抗薬または作動薬)を同定、検索、評価又は設計等を行うことができる。
薬物分子の同定、検索、評価又は設計は、本発明の方法で得られた立体構造座標と薬物分子の立体構造座標との相互作用の有無やその程度に基づいて行われる。本明細書において、薬物分子の同定、検索、評価又は設計等を、単に薬物の分子設計ということがある。
タンパク質の立体構造座標と薬物候補分子の立体構造座標との相互作に基づいて分子設計を行う際に用いられるコンピュータとしては、適当なプログラムが動作するように調整されているコンピュータであれば特に制限はない。また、コンピュータの記憶媒体にも特に制限はない。分子設計に用いるプログラムは、例えばモレキュラーシミュレーション社製のコンピュータ・プログラムInsight II等を挙げることができる。特に、この目的のために特別に作成されたLudiやDOCKといったプログラムを単独又は組み合わせて用いることで、より容易に同定、検索、評価又は設計することができる。また、タンパク質の立体構造座標と薬物分子とのドッキング評価は、例えば、NEC社製のBIOCES(バージョン3.10)を用いて行うことができる。
ここで、薬物分子は、既知のものであっても、新たに合成された新規な化学構造を有する薬物分子であっても、その立体構造が得られるものであれば、いずれの薬物分子も本発明の方法で用いることができる。薬物分子の立体構造座標は、X線結晶解析やモデリング等のいずれの方法で得られたものでも良い。3次元構造座標が決定されているものは、適当なデータベース、例えばCCDC(Cambridge Crystallographic Data Centre:http://www.ccdc.cam.ac.uk/)やPDB(Protein Data Bank:http://www.rcsb.org/pdb/)から収得することができる。
更には、特開2000−178209号公報に記載されている方法によっても、薬物分子を設計することができる。この様に、本発明の方法で得られたタンパク質の立体構造座標を用いることで、薬物分子のコンピュータによる分子設計が可能となる。ただし、本発明の分子設計方法は、これらのプログラムや手法を用いるものに限定されるものではない。
薬物の分子設計には、通常、概念的に2つの段階がある。最初の段階は、リード化合物を見つけだすものであり、次の段階はリード化合物の最適化である。どちらの段階も、標的タンパク質の立体構造座標を使用して、それ自体既知の方法により行うことができる。これにより最適な医農薬候補分子を得ることができる。
VIII.分子設計方法により得られる医農薬候補分子のスクリーニング方法
上記方法により同定、検索、評価又は設計された医農薬候補分子は、その分子の性質に応じて、例えばそれ自体既知の化学合成法により得ることができる。しかしながら、薬物分子は、天然化合物、合成化合物のいずれでも良く、また、高分子化合物、低分子化合物のいずれでも良い。得られた医農薬候補分子は、更に、それ自体既知の方法により、試験管内や生体内における薬理学的または生理学的試験によりその活性を調べ、所望の活性を有する医農薬候補分子を選抜することにより実際に医農薬として応用可能なものを得ることができる。
IX.医農薬組成物の製造方法
上記スクリーニング方法により選択された医農薬、例えば医薬分子は、それ自体単独で治療対象となる疾患等の患者に投与することができるが、これらの有効成分の1種又は2種以上を混合して投与することもできる。また、薬理学的に許容される製剤用添加物等を用いて該物質を医薬品組成物として製剤化し、これを投与するのが好ましい。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、マイクロカプセル剤、リポソーム製剤、トローチ、舌下剤、液剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁剤等として経口的に、あるいは無菌の水性液もしくは油性液として製造した注射剤や、座剤、軟膏、貼付剤等として非経口的に使用できる。これらは、例えば、該物質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和し、充填又は打錠等の当業界で周知の方法を用いて製造することができる。これらの医薬組成物における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
農薬分子について、実際に農薬として使用する場合には、担体若しくは希釈剤、添加剤および補助剤等と公知の方法で混合して、通常農薬として用いられている製剤形態(組成物)、例えば粉剤、粒剤、水和剤、乳剤、水溶剤、フロアブル剤等に調製して使用される。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、下記の実施例は、本発明の具体的な認識を得る一助と見なすべきものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。なお、下記の実施例において、立体構造モデルの構築、アライメント、参照タンパク質の探索等は、DELL社製パーソナルコンピュータ(Dimension XPS T450,CPU:PentiumIII 450MHz,Red Hat Linux 7.1J、メモリ:384Mbytes)を用いて行った。
実施例1 アライメント修正法の効果
大腸菌ゲノムの立体構造データベースPDB(2001年3月時点)に対するPSI−BLASTの検索結果、第1位のホモロジーが100%(即ちX線解析などによる立体構造が存在する)だったものの第2位についてアライメント修正プログラムを実行した結果を示す。第2位のアライメントの修正前および修正後の両方に対してアライメントを基にしてCαの原子座標のみモデル構築を行い、第1位で構築した正解のモデル構造に対し立体構造フィッティングを行った。
修正時のパラメータとしては次の2つである。
(i)二次構造判定に用いる最大水素結合長(3.05Å、3.10Åおよび3.50Å)。
(ii)プロファイルの認識方法(ここではPSI−BLASTを用いたがFASTA等でもよい):プロファイルの情報の連続した領域が何残基続いたときに、アライメントを固定するか(0:プロファイル無視、1:1残基以上、2:2残基以上、3:3残基以上のプロファイル情報が続いている場合にアライメント上のその部分を固定する)。
下記第4表に示すように修正後は、98個中74個(75.5%)ものORFについてアライメントがRMSDが良くなるように小さな数値に修正されることが示された。約4分の3が数値上改良されたモデリング精度を示すことは発明者らの提案しているアライメント修正法が有用であることを示す。この表におけるモデリングに使われた参照タンパク質はORFのPSI−BLASTによる通常のPDBデータベース検索においてe値が0.001以下を示すもののみを用いた。
上記第4表中のORF名clpPを例に改良された立体構造を示す(第10図〜第12図参照)。このタンパク質では、修正前のアライメントでは9.542Åなのに対し、二次構造を判定する最大水素結合長を3.1Åとして、二残基以上のプロファイルの情報が連続する場合を固定したアライメント修正後は8.279Åに改善された。第10図〜第12図から明らかな通り、修正後のモデルは正解構造の二次構造を良く予測している。
上記clpPを例にアライメント修正の詳細について述べる。
修正前のアライメントは、第13図に示す通りである。
具体的な修正の中身は第14図〜第18図に示す通りであり、修正部分は3箇所である。
1箇所目と2箇所目の修正前の修正部分を第14図に示す。第14図の5行目はプロファイルの情報を示し、6行目は二次構造情報、7行目は、疎水コア値、および疎水コア距離を示す。第14図では2箇所挿入がある。そして、それぞれβシート(6行目の文字「E」に相当)とαヘリックス(同様に「H」に相当)の中に入っている。本発明のアライメント修正法を適用すると第15図に示す通り2次構造を分断しないように修正される。
3箇所目の修正前は、第16図に示す通りであり、ヘリックスを分断していたのに対し、第17図に示す通りαヘリックスに挿入が入らないようになった。
その結果として、最終的なアライメントは第18図の通りとなる。
このように修正することにより、ORF名clpPについてRMSDが9.542Åから8.279Åになる、だけでなく二次構造を保持した構造を算出し、より真実に近い構造を算出することができる。ここでのプログラムのアルゴリズムはすべて自動化が可能なものとなっている。
実施例2 ドメイン単位に区切った立体構造データベースの効果
ここでは立体構造データベースであるPDBをSCOPにしたがってドメイン単位に区切ったデータベースを利用している。これはドメイン単位にモデルが構築されることを意味する。
大腸菌ゲノムのタンパク質鎖伸張因子でtufBと呼ばれるタンパク質を例にこのデータベースを使用したモデリングの利点を示す。このタンパク質は次に示すアミノ酸配列(SEQ ID No.1)を持つ。
このタンパク質は、上記実施例1のアライメント修正法の効果の表中にも示したが、公開されているPDBに当てたとき第19図に示すアライメントを持ちRMSDが10.527Åであった。配列の相同性が73.3%程度あるときは、通常において立体構造はもっと似ていてRMSDはもっと低くあるべきである。
立体構造を調べてみると第20図および第21図の様になっており3個のドメインの相対対置が異なるのために全体のRMSDを下げていることがわかる。
これを、発明者がSCOPのデータベースを拡張したドメイン区切りしたデータベース中で検索を行うと第22図〜第24図に示す三つのアライメントに分けることが出来る。参照された三つの参照タンパク質(IEXM−Aの三つのドメイン構造タンパク質)がORFのtufBの別々の場所に並置される。
さらにこのアライメントでモデル構築を行い、それぞれ立体構造フィッティングを行うと、正解構造に対してRMSDはそれぞれ1.586Å、1.013Å、3.599Åとなった。ドメイン区切りでモデルを構築することにより、ドメイン同士の相対配置によって悪く評価されてしまいがちな、RMSDを精度良く妥当な数字で評価することが可能となる。同様の傾向はtufBのみならず、同じ大腸菌の中のtufAおよびpyrIにも見られる。
実施例3 Advaneed FAMSによるデータベースサーチの効果
Advanced FAMSで効果的に参照タンパク質が選ばれることを、2000年に行われたCASP4のターゲットでもあったタンパク質FtsA(Thermotoga maritima由来)、T0089について述べる。この立体構造は現在1E4FというPDBコードで公開されているが、この構造含まないデータベースを用いて立体構造予測を行った。
このタンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID No.2)は、次の通りである。
PSI−BLASTサーチの結果、下記第5表の39個のPDBが配列的な相同性があるものとして検出された(プロファイルとして2000年7月時点のPIRを、検索対象として2000年7月時点のPDB用いた、さらにPDBデータベースは95%以上配列相同性のあるものを除いた)。39個のうちe値が0.1以下のものは下記第5表のように7個であった。
この検索結果に対してAdvanced FAMSの機能である配列的及び立体構造的な冗長性を排除した後、下記第6表の3個のPDBが候補として残った。
下記第7表の様に効果的にターゲットを絞ることが出来る。
正解構造であるPDB 1E4Fに対して、立体構造フィッティングを行い正解構造とのRMSDを算出した。下記第7表の中でRMSD値が小さいほど、正解構造に近いことを示す。
上記の結果をみると、7HSCのA鎖を参照タンパク質としてモデリングした構造がもっとも正解と近い構造であることがわかる。これはPSI−BLASTでは7位にヒットしていたものである。Advanced FAMSで3位にヒットしている。Advanced FAMSで最も低いe値を持って1位にヒットしている参照タンパク質を使ってモデリングしたものが正解構造に必ずしも最も近いとは保証されないことに注目すべきである。即ち前記IIで詳述したAdvanced FAMSの手法は正解構造に最も近いモデリング構造を算出する有益な手段ということになる。
この方法を遺伝子配列の集まりであるゲノム等に適用することにより、極めて正解構造に近い構造を網羅的に且つ効率的に算出することが可能となる。
実施例4 アミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索の効果(その1)
アミノ酸配列データベース(PIRなどのデータベース)を介した参照タンパク質探索法を用いることにより効果的に参照タンパク質が選ばれることを、2000年に行われたCASP4のターゲットでもあったタンパク質YBAB(H.influenzae由来)、T0091について述べる。2001年11月現在、立体構造はまだPDBに登録されていない(http://predictioncenter.11nl.gov/casp4/targets/templates/t0091.doc.html)。
この配列に対しアミノ酸配列データベース2001年5月のPIRをプロファイルとして用いたPSI−BLASTを用いて2001年5月時点のPDB中から類似アミノ酸配列を探索した。但し、PDBのシーケンスそのものではなく、PDBのドメイン毎に区分けしたデータベースを使用した。配列中でドメイン区切りの判断は、SCOP(http://scop.mrc−1mb.cam.ac.uk/scop/)によるものである。SCOPにまだ登録されていないPDBについては発明者がFASTAを使ってSCOPに従って分類した。さらにドメイン区分けしたPDBからアミノ酸配列が95%以上の似ているものは省いている。PSI−BLAST検索の1位はe値が0.26であった。e値が低いことはアミノ酸配列の相同性が高いことを意味し、0.1以下であるとフォールドが正しい可能性が高いと考えて良いのだが、上記に得られた参照タンパク質からモデリングしたとしてもモデルの精度について信頼に乏しい。
このような状況下でPIRなどのアミノ酸配列データベースを介してのORFに対する立体構造検索に関する本発明を適用した詳細を以下に示す。
PSI−BLASTを用いて2001年5月時点のPIR(アミノ酸配列が95%以上の似ているものは省いている。183016シークエンス配列)に対し探索し、e値が0.1以下かつアライメント領域長が30残基以上のもの(今回は26配列が該当)のみ取り出した。
次に、検索されてきた26のPIRの配列を10以下の数に絞り込むために、FASTAを用いて閾値を段階的に下げてゆくクラスター解析を行った。大量なORFに対して自動モデリングを実行する為にはこのようにPIRの配列の数を少なくする必要がある。具体的には、閾値は初め90%から5%刻みで下げてゆく。クラスターの代表としては、もともとのORFのシーケンスに対しもっとも低いe値を持つ配列を採用した。クラスター数が10以下になるクラスター解析の閾値のところでやめた。但し、この数は自動解析に適応する数であれば10にこだわらない。ここでは具体的には40%のところでクラスター数が7個になったのでクラスタリングをやめ、それぞれのクラスター内から課題の配列(t0091.seq)に対し最も低いe値をもつアミノ酸配列をクラスターの代表にした。それらは以下の通りである。
このクラスターの代表の7配列について、PSI−BLASTを用いて前述のドメイン単位に加工しなおしたPDBデータベースの配列中から類似タンパク質配列を再探索した。その結果、上記7配列中、次の3配列
に対してe値が0.1以下の配列が上記のドメイン区切り毎の立体構造データベースから検出された。PDBのIDは3つのいずれのアミノ酸配列に対しても1G8K_Gであった。これら3つのアミノ酸配列ついて、ORFの配列とPIRの配列とのアライメントを第25図〜第27図に、PIRの配列とPDBの配列とのアライメントを第28図〜第30図に、それぞれ示す。
CASP4の課題(t0091.seq)の配列とアミノ酸配列データベースPIR中の配列とのアライメント、およびPIRの配列と立体構造の配列とのアライメントから、課題(t0091.seq)のORFの配列と立体構造の配列(1G8K_G)とのアライメントを作成した。
PIRの配列(A86496)を介したアライメントを第31図に、PIRの配列(E70157)を介したアライメントを第32図に、PIRの配列(H64214)を介したアライメントを第33図に、それぞれ示す。
上記3つのアライメントから明らかなように、どのPIRを介しているかによってアライメントが若干異なる。さらに若干異なるアライメントに対する調整として、発明者が開発したC言語のプログラムである多数決法などの方法を利用して第34図に示すような最終アライメントを得た。ここで採用された多数決法プログラムはすべて自動モデリングに対応して書かれている。
このように、ORFの立体構造探索において、PIRなどのアミノ酸配列を介することにより、通常のPSI−BLAST検索では、立体構造の精度が保証された類似のアミノ酸配列を立体構造データベースから探し出せない場合においても、探し出せることが示された。
このことは第35図に示すように立体構造構築可能なORF数が増加したことになる。この場合PSI−BLASTの替わりにRPS−BLASTを利用しても同様のことが言える。
実施例5 アミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索の効果(その2)
アミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索法を用いることにより効果的に参照タンパク質が選ばれることを、2000年に行われたCASP4のターゲットでもあったタンパク質PPX1(Streptococcus mutans由来)、T0087について述べる。立体構造はPDBに1I74として登録されている。
この配列に対しアミノ酸配列データベース2001年5月のPIRをプロファイルとして用いたPSI−BLASTを用いて2001年5月時点のPDB中から類似アミノ酸配列を探索した。但し、PDBの配列そのものではなく、PDBのドメイン毎に区分けしたデータベースを使用した。さらにドメイン区分けしたPDBからアミノ酸配列が95%以上の似ているものは省いている。PSI−BLAST検索の結果0.1以下のe値で検出されたPDBはなかった。このような状況下で本発明を適用した詳細を以下に示す。
PSI−BLASTを用いて2001年5月時点のPIR(アミノ酸配列が95%以上の似ているものは省いている。183016配列)に対し探索し、e値が0.1以下かつアライメント領域長が30残基以上の82個のPIR配列を取り出した。
次に検索されてきた82のPIRの配列を10以下の数に絞り込むために、FASTAを使って段階的クラスター解析を行った。具体的には閾値は初め90%から5%刻みで下げてゆく。クラスターの代表としては、もともとのシーケンスに対しもっとも低いe値を持つ配列を採用した。クラスター数が10以下になるところでやめるべきであるが、35%のところでクラスター数が32個であった。候補が10以下に絞れていないが、これより閾値を下げることはクラスターの間でホモロジーの低いPIRを候補として残すことになる。そこでこの問題をクリアーするため、この35%の時点でクラスタリングをやめ、32個のクラスターの中でe値の低いものの順に上位10個を選択した。もちろん各々のクラスターの代表はe値の最も低いアミノ酸配列を選んでいる。このようにCASP4の課題の配列(t0091.seq)に対しアミノ酸配列データベースから10個を選択した。
それらを次に示す。
このクラスターの代表の10配列について、PSI−BLASTを用いて前述のPDB配列中から類似タンパク質配列を再探索した。その結果、上記10配列中3配列が0.1以下のe値を持つ立体構造ドメインデータベースのPDB配列を釣ってきた。
それらを次に示す。
これらのアミノ酸配列について、ORFの配列(T0087)とPIRの配列とのアライメントを第36図〜第38図、PIRの配列とPDBの配列とのアライメントを第39図〜第41図に、それぞれ示す。、
最終的に、CASP4の課題(t0087.seq)の配列とアミノ酸配列データベースPIR中の配列とのアライメント、PIRの配列とPDBの立体構造の配列とのアライメントから、第42図〜第44図に示す様に課題(t0087.seq)の配列と立体構造の配列とのアライメントを作成した。
さらにこのアライメントに基づきモデルを構築し、正解構造であるPDB:1I74_Aと立体構造フィッティングしてみた。その結果、それぞれRMSDの値が、15.862Å、13.606Å、13.159Åとなっていた。この結果でもってCASP4に提出していたとしたら、かなりの好成績として認められているだろう。ちなみに13.159ÅはCASP4コンテスト参加グループ73チーム中13位に位置している。
また、通常のPSI−BLASTで検出することの出来ないターゲットについて自動的に算出したアライメントによって国際コンテストのレベルで正解に迫ることができることを示した。
産業上の利用可能性
従来の方法等と比較し、本発明の優れた点は次の通りである。
(1)ホモロジーモデリングによる立体構造の構築において、アミノ酸配列のアライメント(並置)が与えられた場合において、参照タンパク質の座標から立体構造情報を得てアライメントが修正されるため、より正確な立体構造の構築が可能となる。
(2)アライメントの修正は、タンパク質の二次構造情報、疎水コア値情報、疎水コア距離情報等に基づいて行われ、これにより、タンパク質の立体構造の構成単位である二次構造およびその近傍にアミノ酸配列断片の挿入および欠損が入らない立体構造モデルを得ることができる。
(3)また、アライメントを修正する際に、タンパク質の立体構造を形成する物理的な疎水性相互作用の働く空間およびその近傍にアミノ酸配列断片の挿入および欠損が入らないようにすることができる。
(4)ホモロジーモデリングの手法を用いる際に、2種類の性質の異なるアライメントソフト、例えばFASTAおよびPSI−BLASTの出力結果を用いることにより、高ホモロジーから低ホモロジーのいずれの目的タンパク質に対しても、精度の良い立体構造の構築が可能である。
(5)上記(4)のアライメントソフトが複数のアライメントを算出してきた場合に、例えば(i)参照タンパク質の同士のFASTAマッチングを行い、候補となる参照タンパク質のアミノ酸配列の冗長性を排除する、(ii)アライメントからタンパク質中のCα原子の座標を作成し、立体構造マッチッグを行い、候補となる参照タンパク質の立体構造的な冗長性を排除する等の明確な基準によりアライメントの選定が可能となった点である。これにより、不必要な参照タンパク質およびアライメントの排除ができ効率的な立体構造の構築が可能となる。
(6)アライメントが、データベースから得られる以上のアミノ酸配列部分断片を含む場合においても、精度良く立体構造の構築が可能である。
(7)ドメイン区切りが未知の立体構造の配列についても、ドメイン区切りが可能となり、立体構造情報の最新の知見に基づいて、3次構造毎の立体構造の構築が可能となった点である。
(8)ORFの立体構造探索において、通常のアライメントソフトによる検索では、立体構造の精度が保証された類似のアミノ酸配列(参照タンパク質)を立体構造データベースから探し出せない場合においても、アミノ酸配列データベースを介することにより、参照タンパク質が探し出せることになった点である。これにより、立体構造が構築可能なORF数が格段に増加する。
(9)かくして、立体構造の構築対象となる任意の目的アミノ酸配列が与えられた場合において、コンピュータプログラムにより全自動でホモロジーモデリング(立体構造の構築)が可能となる。
上記の通り、本発明は、任意のタンパク質のより真に近い立体構造を精度よく効率的に構築することができる方法である。また、かくして得られたタンパク質の立体構造を規定する原子座標を含む本発明のデータベースは、特に医薬、農薬等の分子設計に極めて有用に用いることができる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2000年12月1日の日本特許出願(特願2000−367007)、2000年12月4日の日本特許出願(特願2000−368415)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。また、本明細書にて引用した文献の内容もここに参照として取り込まれる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明のタンパク質の立体構造構築方法(アライメント修正法)の一例を示すフローチャートである。
第2図は、アライメント修正法において、与えられたアライメントを、二次構造、疎水コア値、疎水コア距離等の情報に基づいて修正する方法の一例を示すフローチャートである。
第3図は、ステップI−81のCα原子座標の構築方法を示す図である。アライメントの一致部分は参照タンパク質から取得し、無い部分はN,C両端それぞれ重なった2残基の重ね合わせの根平均二乗距離(RMSD)が最小のものをデータベースから取得する。
第4図は、ローカルスペースホモロジー(LSH)を示す図である。図中のT残基に関する計算では、網をかけた(灰色の)残基が考慮される。図中下のアライメントにおける四角で囲った部分が考慮される残基ペアであり、*のマークがあるところの比率がLSHである。この場合LSHは56.2%である。
第5図は、LSHと構造保存部位(SCRs)にある比率との関係を示す図である。LSHは目的タンパク質と参照タンパク質とのCα原子の重ね合わせから計算され、SCRsにある比率は目的タンパク質の全残基数に対するSCRs中の残基数である。
第6図は、本発明の目的タンパク質の立体構造構築方法(Advanced FAMS)の一例を示すフローチャートである。
第7図は、FASTAのe値の対数とクラスター数との関係を示す図である。
第8図は、アライメントに予め作成された部分アミノ酸配列の座標データベースから得られる長さ以上の挿入部分配列(n)がある場合のCα原子座標の構築方法の一例を示す説明図である。
第9図は、本発明の特に好ましい態様の一例の基本的な流れを示す図である。
第10図は、修正前のアライメントのモデルを示すディスプレイのプリントアウトした写真である。
第11図は、修正後のアライメントのモデルを示すディスプレイのプリントアウトした写真である。
第12図は、第1位の正解構造モデルを示すディスプレイのプリントアウトした写真である。
第13図は、修正前のアライメントを示す図である。
第14図は、1箇所目と2箇所目の修正の中身を示す図である。
第15図は、1箇所目と2箇所目の修正後の中身を示す図である。
第16図は、3箇所目の修正の中身を示す図である。
第17図は、3箇所目の修正後の中身を示す図である。
第18図は、最終的なアライメントを示す図である。
第19図は、ORFの配列(tufB)とPDBの配列とのアライメントを示す図である。
第20図は、tufBの第2位のモデルを示すディスプレイのプリントアウトした写真である。
第21図は、tufBの第1位のモデルを示すディスプレイのプリントアウトした写真である。
第22図は、ORFの配列(tufB)とドメイン単位に区切ったデータベースの配列とのアライメント(1)を示す図である。
第23図は、ORFの配列(tufB)とドメイン単位に区切ったデータベースの配列とのアライメント(2)を示す図である。
第24図は、ORFの配列(tufB)とドメイン単位に区切ったデータベースの配列とのアライメント(3)を示す図である。
第25図は、ORFの配列(T0091)とPIRの配列(A86496)とのアライメント(1)を示す図である。
第26図は、ORFの配列(T0091)とPIRの配列(E70157)とのアライメント(2)を示す図である。
第27図は、ORFの配列(T0091)とPIRの配列(H64214)とのアライメント(3)を示す図である。
第28図は、PIRの配列(A86496)とPDBの配列(1G8K_G)とのアライメント(1)を示す図である。
第29図は、PIRの配列(E70157)とPDBの配列(1G8K_G)とのアライメント(2)を示す図である。
第30図は、PIRの配列(H64214)とPDBの配列(1G8K_G)とのアライメント(3)を示す図である。
第31図は、PIRの配列(A86496)を介したORFの配列(T0091)立体構造の配列(1G8K_G)とのアライメントを示す図である。
第32図は、PIRの配列(E70157)を介したORFの配列(T0091)と立体構造の配列(1G8K_G)とのアライメントを示す図である。
第33図は、PIRの配列(H64214)を介したORFの配列(T0091)と立体構造の配列(1G8K_G)とのアライメントを示す図である。
第34図は、ORFの配列(T0091)と立体構造の配列(1G8K_G)との最終的なアライメントを示す図である。
第35図は、本発明のアミノ酸配列データベースを介した参照タンパク質探索方法により、立体構造が構築可能なORF群が拡大することを模式的に示す図である。
第36図は、ORFの配列(T0087)とPIRの配列(E84046)とのアライメントを示す図である。
第37図は、ORFの配列(T0087)とPIRの配列(G64503)とのアライメントを示す図である。
第38図は、ORFの配列(T0087)とPIRの配列(S74940)とのアライメントを示す図である。
第39図は、PIRの配列(E84046)とPDBの配列(1IBJ_C)とのアライメントを示す図である。
第40図は、PIRの配列(G64503)とPDBの配列(1VPE)とのアライメントを示す図である。
第41図は、PIRの配列(S74940)とPDBの配列(1G6S_A)とのアライメントを示す図である。
第42図は、PIRの配列(E84046)を介したORFの配列(T0087)と立体構造の配列(1IBJ_C)とのアライメントを示す図である。
第43図は、PIRの配列(G64503)を介したORFの配列(T0087)と立体構造の配列(1VPE_)とのアライメントを示す図である。
第44図は、PIRの配列(S74940)を介したORFの配列(T0087)と立体構造の配列(1G6SA1)とのアライメントを示す図である。
Claims (5)
- 任意の目的タンパク質と立体構造が既知の参照タンパク質とのアライメントを行い、選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質の立体構造を構築する方法において、該アライメントを高ホモロジー用アライメントおよびプロファイルアライメント用の2種類のソフトウエアを用いて行い、参照タンパク質およびアライメントの該選定は、該2種類のソフトウエアで検出されたすべての参照タンパク質とのアライメントについて、参照タンパク質同士を該高ホモロジー用アライメントソフトウエアを用いて再アライメントを行い、該参照タンパク質同士のホモロジーが高い場合には、該目的タンパク質とのe値が高い参照タンパク質ならびにアライメントを排除することを特徴とするタンパク質の立体構造構築方法。
- 高ホモロジー用アライメントのソフトウエアがFASTAであり、プロファイルアライメント用のソフトウエアがPSI−BLASTである請求項1に記載の方法。
- 複数のアライメントが、ソフトウエアによって候補として選ばれてきた場合、個々に選定された参照タンパク質およびアライメント情報に基づいて目的タンパク質のCα原子座標を算出し、Cα原子座標同士で立体構造のフィッティングを行い、各座標の根平均二乗距離(RMSD)が一定の値以下の場合は同一の立体構造であると判断して、目的タンパク質との間でe値の高い方の参照タンパク質およびアライメントを排除して、さらに参照タンパク質およびアライメントが選定される請求項1または2に記載の方法。
- 根平均二乗距離(RMSD)が3.0Åである請求項3に記載の方法。
- 立体構造の作成が、選定されたアライメントの情報に基づいて、アミノ酸中のCα原子について選定された参照タンパク質の立体構造から座標を取得し、目的関数を最小化するようにCαの原子座標を最適化し、最適化されたCαの原子座標に主鎖の他の原子を付加して目的関数を最小化するように主鎖の原子座標を最適化し、最適化された主鎖の原子座標に側鎖の他の原子を付加し目的関数を最小化するように最適化することにより行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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