JP4132566B2 - クランクシャフトミラーのカッタおよびカッタ用チップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトミラーのカッタおよびカッタ用チップに係り、詳しくは、さらい刃を有するタイプのクランクシャフトミラーのカッタおよびカッタ用チップに関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、自動車のエンジン等に用いれられるクランクシャフトを、クランクシャフトミラーによってミーリング加工することが知られている。
このようなクランクシャフトミラーのカッタによって、加工されるクランクシャフトを図8に示す。図8において、クランクシャフト100は、メインジャーナル101およびピンジャーナル102を備え、各ジャーナル101,102の軸方向両端にはジャーナルスラスト部103が設けられ、さらにこのジャーナルスラスト部103の外側にはカウンタウエイト104が設けられている。また、ジャーナル101,102とジャーナルスラスト部103とでなす角部には、コーナアール部105が形成される場合と、図中二点鎖線で示すような溝部106が形成される場合とがある。
【0003】
このようなクランクシャフト100の加工を行うクランクシャフトミラーのカッタとして、ジャーナルスラスト部103の側面部と、溝部106とを同一のチップで荒加工し、この荒加工面をさらい刃でさらい加工するカッタが開示されている(特許2796907号公報参照)。このようなカッタでは、クランクシャフト100の溝部106の加工にのみさらい刃が用いられているため、クランクシャフト100のコーナアール部105の加工におけるさらい刃の利用が求められていた。
【0004】
このような要求に応えるために改良されたクランクシャフトミラーのカッタとして、図9または図10に示すようなカッタ110,120が開示されている(特開平10−156617号公報参照)。
図9(A)において、カッタ110は、リング状のカッタ本体111を有しており、このカッタ本体111の内周面には、各ジャーナル101,102の外周部およびジャーナルスラスト部103の側面部を荒加工する第1チップ112が円周方向へ沿って複数設けられている。また、カッタ本体111の内周側の両側面には、カウンタウエイト104の側面部を荒加工する第2チップ113が円周方向へ沿って複数設けられている。このうち、第1チップ112のうちの少なくとも各列の一枚は、さらい刃112Aとして他の第1チップ112Bに対して軸方向振れ(軸方向への突出量)が最大となるようにカッタ本体111にセットされている。具体的に、図9(B)に拡大して示すように、さらい刃112Aが、他の第1チップ112Bに対してδ分だけ軸方向へ突出している。
【0005】
このような構成において、カッタ110を回転させてクランクシャフト100をミーリング加工していくと、他の第1チップ112Bでジャーナル101,102の外周部とジャーナルスラスト部103の側面部とが荒加工されるとともに、第2チップ113でカウンタウエイト104の側面部が荒加工される。ここにおいて、第1チップ112の各列の一枚がさらい刃112Aとなっているため、他の第1チップ112で荒加工されたジャーナルスラスト部103の側面部がさらにさらい加工される。つまり、他の第1チップ112Bによる荒加工面を、さらい刃112Aによって平坦面にならしてジャーナルスラスト部103の面粗度を向上させようとしている。
【0006】
図10(A)において、カッタ120は、カッタ110と同様に、カッタ本体121と、第1チップ122と、第2チップ123とを備えている。
ここで、このカッタ120に設けられたさらい刃122Aは、カッタ110のさらい刃112Aと異なって、カッタ本体121の内周側の両側面に一枚ずつ配置され、図10(B)に拡大して示すように、他の第1チップ122Bに対してδ分だけ軸方向へ突出している。このようなさらい刃122Aにおいても、カッタ110のさらい刃112Aと同様に、ジャーナルスラスト部103の側面部のさらい加工が可能となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したようなカッタ110には、荒加工する他の第1チップ112Bと、さらい加工するさらい刃112Aとで同一形状のチップが用いられており、他の第1チップ112Bによって荒加工されたコーナアール部105の形状(図9(B)中実線で示す形状)が、コーナアール部105の最終加工形状、すなわち設計上の所望加工形状とされている。このため、他の第1チップ112Bによって最終加工形状に形成したコーナアール部105を、さらい刃112Aによって図中二点鎖線で示す部分までさらい加工すると、他の第1チップ112Bが形成した最終加工形状が壊されてしまうという問題がある。
【0008】
一方、カッタ120では、さらい刃122Aがカッタ本体121の側面に取り付けられているので、さらい刃122Aが突出したδ分だけ、さらい刃122Aの切刃形状と他の第1チップ122Bの切刃形状との外周を結んだ輪郭線に段差が生じてしまう(図10(B)参照)。そして、このような段差が生じている他の第1チップ122Bおよびさらい刃122Aによって荒加工を行うと、他の第1チップ122Bによって荒加工したコーナアール部105およびジャーナルスラスト部103の形状(図10(B)中実線で示す形状)を、さらい刃122Aによって図中二点鎖線で示す部分までさらい加工することになる。このため、クランクシャフト100のジャーナル101,102の外周面からジャーナルスラスト部103の側面へと続く稜線に段差を形成してしまうという問題がある。
【0009】
つまり、さらい刃112A,122Aを備えたカッタ110,120でクランクシャフト100の荒加工を行った場合、さらい加工により、他の第1チップ112B,122Bが形成したコーナアール部105またはジャーナルスラスト部103の側面部等の形状をミクロ的に壊してしまっている。このため、設計上のクランクシャフト100と、カッタ110,120によって加工されたクランクシャフト100との間で寸法形状にミクロ的なずれが生じてしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、さらい刃によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部およびコーナアール部または溝部を設計上の所望形状に加工できるクランクシャフトミラーのカッタおよびカッタ用チップを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のクランクシャフトミラーのカッタは、上記目的を達成するために、以下の構成を備える。
請求項1に記載の発明は、リング状のカッタ本体の内周面側または円盤状のカッタ本体の外周面側に複数の切削用チップが設けられ、これらのチップによってクランクシャフトのピンジャーナルまたはメインジャーナルの外周部と、これらジャーナルの軸方向両端に位置するジャーナルスラスト部の側面部とを荒加工するクランクシャフトミラーのカッタであって、前記チップのうちの少なくとも一枚のチップがさらい刃として他のチップに対して軸方向振れ(軸方向への突出量)が最大となるように、かつ径方向の振れが最大とならないように前記カッタ本体にセットされ、当該さらい刃の切刃形状は、前記ジャーナルとジャーナルスラスト部とでなす角部に形成されるコーナアール部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、前記ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有し、前記他のチップの切刃形状は、前記さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が前記共通部分を残して切り欠かれていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、さらい刃の切刃形状は、ジャーナルとジャーナルスラスト部とでなす角部に形成されるコーナアール部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有している。一方、さらい刃以外の他のチップの切刃形状は、さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が切り欠かれている。
さらい刃のR切刃部位と、他のチップのR切刃部位とは一部が共通となっているため、さらい刃のR切刃部位と、他のチップのR切刃部位とは一部が重なり合った状態で、少なくとも他のチップのR切刃部位の延長線上にはさらい刃のR切刃部位が位置している。つまり、さらい刃のR切刃部位は、他のチップのR切刃部位を補間する形状となっている。
これにより、他のチップのR切刃部位とさらい刃のR切刃部位とが加工するコーナアール部の形状は同一なので、さらい刃によるさらい加工を行っても、他のチップが荒加工したコーナアール部の形状を壊すこともなければ、クランクシャフトのジャーナルの外周面からジャーナルスラスト部の側面へと続く稜線に段差を形成することもない。
そして、このようなさらい刃のR切刃部位および側面切刃部位を、クランクシャフトの設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部およびコーナアール部を設計上の所望形状に加工できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、リング状のカッタ本体の内周面側または円盤状のカッタ本体の外周面側に複数の切削用チップが設けられ、これらのチップによってクランクシャフトのピンジャーナルまたはメインジャーナルの軸方向両端に位置するジャーナルスラスト部の側面部と、このジャーナルスラスト部と前記ジャーナルとでなす角部に形成される溝部とを荒加工するクランクシャフトミラーのカッタであって、前記チップのうちの少なくとも一枚のチップがさらい刃として他のチップに対して軸方向振れが最大となるように、かつ径方向の振れが最大とならないように前記カッタ本体にセットされ、当該さらい刃の切刃形状は、前記溝部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、前記ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有し、前記他のチップの切刃形状は、前記さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が前記共通部分を残して切り欠かれていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、さらい刃の切刃形状は、ジャーナルとジャーナルスラスト部とでなす角部に形成される溝部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有している。一方、さらい刃以外の他のチップの切刃形状は、さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が切り欠かれている。
さらい刃のR切刃部位と、他のチップのR切刃部位とは一部が共通となっている。つまり、さらい刃のR切刃部位と、他のチップのR切刃部位とは一部が重なり合った状態で、少なくとも他のチップのR切刃部位の延長線上にはさらい刃のR切刃部位が位置している。すなわち、さらい刃のR切刃部位は、他のチップのR切刃部位を補間する形状となっている。
これにより、他のチップのR切刃部位とさらい刃のR切刃部位とが加工する溝部の形状は同一なので、さらい刃によるさらい加工を行っても、他のチップが荒加工した溝部の形状を壊すこともなければ、クランクシャフトの溝部の内周面からジャーナルスラスト部の側面へと続く稜線に段差を形成することもない。
そして、このようなさらい刃のR切刃部位および側面切刃部位を、クランクシャフトの設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部および溝部を設計上の所望形状に加工できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のクランクシャフトミラーのカッタにおいて、前記さらい刃の側面切刃部位のノーズRは、前記チップの一刃当たりの送りをf、前記カッタ本体の有効刃数をZ、面粗度をHthとした場合、
【0020】
【数2】
【0021】
で表されることを特徴とするものである。
この発明によれば、さらい刃の側面切刃部位のノーズRを上記の式により決定することで、カッタの一回転当たりの送りfZを、さらい刃を基準に設定しても所定の面粗度を確保できる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクランクシャフトミラーのカッタにおいて、前記さらい刃のR切刃部位が、前記ジャーナルの外周部から離れる方向に切り欠かれていることを特徴とするものである。
この発明によれば、さらい刃のR切刃部位が前記ジャーナルの外周部から離れる方向に切り欠かれているので、さらい刃をジャーナルの軸方向へずらしても、さらい加工によって、他のチップが荒加工したコーナアール部のジャーナル近傍に位置する部位を壊すことがない。従って、クランクシャフト加工の際、さらい刃をジャーナルの軸方向へずらせば、さらい加工で他のチップが荒加工したコーナアール部のジャーナル近傍に位置する部位を壊すことなく、クランクシャフトの寸法調整を行うことができる。
なお、本発明の請求項5,6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のカッタに用いられるチップである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2および図3(A)には、本実施形態に係るクランクシャフトミラーのカッタ1の要部が示されている。
このカッタ1は、リング状のカッタ本体10を備え、このカッタ本体10の内周面には、図8に示すようなクランクシャフト100のメインジャーナル101またはピンジャーナル102の外周部と、各ジャーナル101,102の両端に位置するジャーナルスラスト部103とを荒加工するための本発明のチップとしての第1チップ20が円周方向へ千鳥状に略等間隔に複数設けられている。つまり、第1チップ20は、カッタ本体10の内周面に円周方向へ沿って2列取り付けられている。
また、カッタ本体10の内周側の両側面には、カウンタウエイト104の側面部を荒加工するための第2チップ30が円周方向へ略等間隔に複数設けられている。
【0024】
第1チップ20は、扁平な略直方体状に形成されており、ねじ等の固着具201によって、カッタ本体10に着脱可能に取り付けられている。
第1チップ20の各列のうちの一枚の第1チップ20はさらい刃21として、図3(B)に拡大して示すように、他の第1チップ22に対して軸方向振れが最大となるようにカッタ本体10にセットされている。つまり、さらい刃21は、他の第1チップ22に対してカッタ本体10の軸方向への突出量が最大となるようにカッタ本体10にセットされている。具体的に、本実施形態では、さらい刃21は、他の第1チップ22に対してδ分だけ軸方向へ突出している(図3(B)参照)。なお、第1チップ全体を表現するときは、符号20を用い、さらい刃とさらい刃以外の第1チップとを区別して表現するときは、さらい刃に符号21を、他の第1チップに符号22を用いて示す。
【0025】
さらい刃21の切刃形状は、図3(B)に拡大して示すように、各ジャーナル101,102とジャーナルスラスト部103とでなす角部に形成されるコーナアール部105を加工するR切刃部位21Aと、ジャーナルスラスト部103の側面部を加工する側面切刃部位21Bとを備えている。
R切刃部位21Aは、コーナアール部105の最終または所望の加工形状と一致している。
また、側面切刃部位21Bは、平坦面(無限大)または径の大きなRとなっており、径の大きなRの場合のRは、次式で表される。
【0026】
【数3】
【0027】
なお、fは第1チップの1刃当たりの送り、Zはカッタ本体10の有効刃数、Hthは面粗度である。
【0028】
ここで、さらい刃21のノーズRをrとした場合、面粗度は次式で表される。
【0029】
【数4】
【0030】
さらい刃21の側面切刃部位21BのノーズRを上記の式により決定することで、カッタ1の一回転当たりの送りfZを、さらい刃21を基準に設定しても所定の面粗度を確保できるようになる。
【0031】
一方、さらい刃21以外の第1チップ22の切刃形状は、さらい刃21のR切刃部位21Aと一部共通のR切刃部位22Aと、ジャーナルの外周部を加工する外周切刃部位22Bとを備えているとともに、さらい刃21の側面切刃部位21Bに相当する部分および側面切刃部位21Bに連続するさらい刃21のR切刃部位21Aの一部に相当する部分が切り欠かれている。
さらい刃21のR切刃部位21Aと、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとは一部が共通となっているため、さらい刃21のR切刃部位21Aと、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとは一部が重なり合った状態で、少なくとも他の第1チップ22のR切刃部位22Aの延長線上には、さらい刃21のR切刃部位21Aが位置している。つまり、さらい刃21のR切刃部位21Aは、他の第1チップ22のR切刃部位22Aを補間する形状となっている。
【0032】
これら第1チップ20のカッタ本体10へのセットは、さらい刃21のR切刃部位21Aと、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとの共通部位が重なり合うようにさらい刃21および他の第1チップ22を配置することで行う。これにより、さらい刃21のR切刃部位21Aおよび他の第1チップ22のR切刃部位22Aの外側を結ぶ輪郭形状に段差が生じないようになる。
【0033】
一部共通したR切刃部位21A,21Bをそれぞれ有するさらい刃21および他の第1チップ22を上記のようにカッタ本体10にセットすることで、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとさらい刃21のR切刃部位21Aとが加工するコーナアール部105の形状は同一となる。このため、さらい刃21によるさらい加工を行っても、他の第1チップ22が荒加工したコーナアール部105の形状を壊すこともなければ、クランクシャフト100のジャーナル101,102の外周面からジャーナルスラスト部103の側面へと続く稜線に段差を形成することもない。
【0034】
そして、このようなさらい刃21のR切刃部位21Aおよび側面切刃部位21Bを、クランクシャフト100の設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃21によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部103およびコーナアール部105を設計上の所望形状に加工できる。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。
まず、クランクシャフト100を図示しないチャック等によって、クランクシャフトミラーに所定姿勢で固定する。この状態で、カッタ1を図1の矢印方向に回転させながら、クランクシャフト100を切削加工していく。
具体的には、他の第1チップ22で、ジャーナル101,102の外周部およびジャーナルスラスト部103の側面部、すなわち、図4に示す151の部分を荒加工するとともに、第2チップ30で、カウンタウエイト104の側面部、すなわち、図4に示す152の部分を荒加工する。
ここにおいて、他の第1チップ22で荒加工されたジャーナルスラスト部103およびコーナアール部105は、さらい刃21で、図4に示す153の部分がさらにさらい加工される。これにより、他の第1チップ22による荒加工面は、さらい刃21によって平坦面に均されて面粗度が向上し、ジャーナルスラスト部103の側面部の荒加工後の仕上げ面加工が不要になる。
【0036】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
さらい刃21の切刃形状は、ジャーナル101,102とジャーナルスラスト部103とでなす角部に形成されるコーナアール部105の最終加工形状に対応したR切刃部位21Aと、ジャーナルスラスト部103の側面部を加工する側面切刃部位21Bとを有している。一方、さらい刃21以外の他の第1チップ22の切刃形状は、さらい刃21のR切刃部位21Aと一部共通のR切刃部位22Aを有するとともに、さらい刃21の側面切刃部位21Bに相当する部分および側面切刃部位21Bに連続するさらい刃21のR切刃部位21Aの一部に相当する部分が切り欠かれている。
さらい刃21のR切刃部位21Aと、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとは一部が共通となっているため、さらい刃21のR切刃部位21Aと、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとは一部が重なり合った状態で、少なくとも他の第1チップ22のR切刃部位22Aの延長線上には、さらい刃21のR切刃部位21Aが位置している。つまり、さらい刃21のR切刃部位21Aは、他の第1チップ22のR切刃部位22Aを補間する形状となっている(図3(B)参照)。
これにより、他の第1チップ22のR切刃部位22Aとさらい刃21のR切刃部位21Aとが加工するコーナアール部105の形状は同一なので、さらい刃21によるさらい加工を行っても、他の第1チップ22が荒加工したコーナアール部105の形状を壊すこともなければ、クランクシャフト100のジャーナル101,102の外周面からジャーナルスラスト部103の側面へと続く稜線に段差を形成することもない。
そして、このようなさらい刃21のR切刃部位21Aおよび側面切刃部位21Bを、クランクシャフト100の設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃21によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部103およびコーナアール部105を設計上の所望形状に加工できる。
【0037】
さらい刃21の側面切刃部位21BのノーズRを下記の式により決定しているので、カッタ1の一回転当たりの送りfZを、さらい刃21を基準に設定しても所定の面粗度を確保できる。
【0038】
【数5】
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態において、さらい刃21のR切刃部位21Aは、他の第1チップ22のR切刃部位22Aと一部共通であれば、途中でジャーナル101,102の外周部から離れる方向に切り欠かれたものであってもよい。
このような場合、当該さらい刃のR切刃部位がジャーナル101,102の外周部から離れる方向に切り欠かれているので、当該さらい刃をジャーナル101,102の軸方向へずらしても、さらい加工によって、他の第1チップ22が荒加工したコーナアール部105のジャーナル101,102近傍に位置する部位を壊すことがない。従って、クランクシャフト100加工の際、当該さらい刃をジャーナル101,102の軸方向へずらせば、さらい加工で他の第1チップ22が荒加工したコーナアール部105のジャーナル101,102近傍に位置する部位を壊すことなく、クランクシャフト100の寸法調整を行うことができる。
【0040】
前記実施形態では、さらい刃21をカッタ本体10の内周面に設けたが、図5に示すように、さらい刃40をカッタ本体10の両側面に一枚ずつ設けてもよい。このように配置されたさらい刃40の切刃形状は、前記実施形態のさらい刃21と同様に、各ジャーナル101,102とジャーナルスラスト部103とでなす角部に形成されるコーナアール部105の最終加工形状に対応したR切刃部位40Aと、ジャーナルスラスト部103の側面を加工する側面切刃部位40Bとを備えている。
従って、さらい刃40の切刃部位40A,40Bをクランクシャフト100の設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃40によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部103およびコーナアール部105を設計通りの形状に加工できる。
【0041】
前記実施形態では、第1チップ20は、ジャーナル101,102の外周部と、ジャーナルスラスト部103の側面部と、コーナアール部105とを加工するものであったが、これに限らず、メインジャーナル101またはピンジャーナル102とジャーナルスラスト部103とでなす角部に形成される溝部106と、ジャーナルスラスト部103の側面部とを加工する、図6(A)に示すような第1チップ60を備えたカッタ6であってもよい。
第1チップ60のうちの、少なくとも各列の一枚の第1チップ60がさらい刃61として他の第1チップ62に対して軸方向振れ(軸方向への突出量)が最大となるようにカッタ本体10にセットされている。具体的に、図6(B)に拡大して示すように、さらい刃61は、他の第1チップ62に対して軸方向へδ分だけ突出している。なお、このようなカッタ6に、適宜カウンタウエイト104の側面部を加工するチップや、ジャーナル101,102の外周部を加工するチップが設けてもよい。
【0042】
さらい刃61の切刃形状は、溝部106の最終加工形状に対応したR切刃部位61Aと、ジャーナルスラスト部103の側面部を加工する側面切刃部位61Bとを有している。
一方、他の第1チップ62の切刃形状は、さらい刃61のR切刃部位61Aと一部共通のR切刃部位62Aを有するとともに、さらい刃61の側面切刃部位61Bに相当する部分および側面切刃部位61Bに連続するさらい刃61のR切刃部位62Aの一部に相当する部分が切り欠かれている。
【0043】
つまり、さらい刃61のR切刃部位61Aは、前記実施形態のさらい刃21のR切刃部位21Aと同様に、他の第1チップ62を補間する形状となっている。このため、他の第1チップ62のR切刃部位62Aとさらい刃61のR切刃部位61Aとが加工する溝部106の形状は同一なので、さらい刃61によるさらい加工を行っても、他の第1チップ62が荒加工した溝部106の形状を壊すこともなければ、クランクシャフト100の溝部106の内周面からジャーナルスラスト部103の側面へと続く稜線に段差を形成することもない。
そして、このようなさらい刃61のR切刃部位61Aおよび側面切刃部位61Bを、クランクシャフト100の設計上の各部寸法に対応して形成すれば、さらい刃61によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部103および溝部106を設計上の所望形状に加工できる。
【0044】
前記実施形態において、カッタ1は、リング状のカッタ本体10と、このカッタ本体10の内周面側に配置された第1チップ20および第2チップ30とを含んで構成されているが、本発明に係るカッタはこれに限定されるものではなく、図7に示すような、円盤状のカッタ本体51と、このカッタ本体51の外周面側に配置された第1チップ52および第2チップ53とを備えたカッタ50であってもよい。このようなカッタ50の場合、さらい刃は、カッタ本体51の外周面に設けられた第1チップ52のうちの各列の少なくとも一枚を軸方向へ突出させたさらい刃54Aであってもよく、また、カッタ本体51の外周側の両側面に各一枚ずつ設けられたさらい刃54Bであってもよい。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、さらい刃によるさらい加工を行ってもジャーナルスラスト部およびコーナアール部または溝部を設計上の所望形状に加工できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るカッタを示す側面図である。
【図2】前記実施形態のカッタを内周面側から見た図である。
【図3】前記実施形態のカッタおよびチップを示す拡大図である。
【図4】前記実施形態のチップによるクランクシャフトの切削部位を示す図である。
【図5】本発明の変形例の要部を示す図である。
【図6】本発明の他の変形例の要部を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の変形例を示す図である。
【図8】加工対象としてのクランクシャフトを示す側面図である。
【図9】従来のカッタおよびチップを示す図である。
【図10】従来の他のカッタおよびチップを示す図である。
【符号の説明】
1 カッタ
10 カッタ本体
20 チップである第1チップ
21 さらい刃
21A R切刃部位
21B 側面切刃部位
22 他のチップである他の第1チップ
22A R切刃部位
22B 外周切刃部位
100 クランクシャフト
101 メインジャーナル
102 ピンジャーナル
103 ジャーナルスラスト部
105 コーナアール部
106 溝部
R ノーズ
δ 突出量
Claims (6)
- リング状のカッタ本体の内周面側または円盤状のカッタ本体の外周面側に複数の切削用チップが設けられ、これらのチップによってクランクシャフトのピンジャーナルまたはメインジャーナルの外周部と、これらジャーナルの軸方向両端に位置するジャーナルスラスト部の側面部とを荒加工するクランクシャフトミラーのカッタであって、
前記チップのうちの少なくとも一枚のチップがさらい刃として他のチップに対して軸方向振れが最大となるように、かつ径方向の振れが最大とならないように前記カッタ本体にセットされ、
当該さらい刃の切刃形状は、前記ジャーナルとジャーナルスラスト部とでなす角部に形成されるコーナアール部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、前記ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有し、
前記他のチップの切刃形状は、前記さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が前記共通部分を残して切り欠かれている
ことを特徴とするクランクシャフトミラーのカッタ。 - リング状のカッタ本体の内周面側または円盤状のカッタ本体の外周面側に複数の切削用チップが設けられ、これらのチップによってクランクシャフトのピンジャーナルまたはメインジャーナルの軸方向両端に位置するジャーナルスラスト部の側面部と、このジャーナルスラスト部と前記ジャーナルとでなす角部に形成される溝部とを荒加工するクランクシャフトミラーのカッタであって、
前記チップのうちの少なくとも一枚のチップがさらい刃として他のチップに対して軸方向振れが最大となるように、かつ径方向の振れが最大とならないように前記カッタ本体にセットされ、
当該さらい刃の切刃形状は、前記溝部の最終加工形状に対応したR切刃部位と、前記ジャーナルスラスト部の側面部を加工する側面切刃部位とを有し、
前記他のチップの切刃形状は、前記さらい刃のR切刃部位と一部共通のR切刃部位を有するとともに、前記さらい刃の前記側面切刃部位に相当する部分および前記側面切刃部位に連続する前記さらい刃の前記R切刃部位の一部に相当する部分が前記共通部分を残して切り欠かれている
ことを特徴とするクランクシャフトミラーのカッタ。 - 請求項1または請求項2に記載のクランクシャフトミラーのカッタにおいて、
前記さらい刃の側面切刃部位のノーズRは、前記チップの一刃当たりの送りをf、前記カッタ本体の有効刃数をZ、面粗度をHthとした場合、
で表される
ことを特徴とするクランクシャフトミラーのカッタ。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のクランクシャフトミラーのカッタにおいて、前記さらい刃のR切刃部位が、前記ジャーナルの外周部から離れる方向に切り欠かれている
ことを特徴とするクランクシャフトミラーのカッタ。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のクランクシャフトミラーのカッタでの前記さらい刃として用いられることを特徴とする
クランクシャフトミラーのカッタ用チップ - 請求項1〜4のいずれかに記載のクランクシャフトミラーのカッタでの前記他のチップとして用いられることを特徴とする
クランクシャフトミラーのカッタ用チップ
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