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JP4177006B2 - グアニンバルジ修飾分子 - Google Patents
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JP4177006B2 - グアニンバルジ修飾分子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DNA中のバルジ塩基を特異的に認識することができ、かつバルジ塩基と共有結合することができるバルジ塩基認識分子、バルジ塩基認識用組成物、及びそれを用いたバルジ塩基を測定する方法に関する。また、本発明は、バルジ塩基認識分子がバルジ塩基と水素結合を形成し、かつ当該バルジ塩基と共有結合を形成することによりバルジ塩基が安定化されたDNAに関する。
【0002】
【従来の技術】
DNA及びRNA中に存在するバルジ構造は、蛋白質による核酸の認識に重要な役割を果たしている。これらの構造に特異的に結合する分子は、バルジ構造を認識する蛋白質の阻害剤としての可能性を有しているため、医薬開発の見地からも注目されている。
バルジDNA認識分子は、二本鎖DNA中に生成する不対塩基(バルジ塩基)を持つDNA(バルジDNA)に特異的に結合し、安定化する分子である。この認識分子が標的とするバルジDNAは、DNAの複製エラーや、DNA損傷の結果として生じる。また、遺伝子の異常であるバルジ塩基の有無は、遺伝病などの診断に利用されている。従って、このバルジDNA認識分子は、1)遺伝子欠損の有無を調べる診断薬、2)DNA損傷の検出薬、3)遺伝子損傷の安定化剤、4)DNA修復酵素の阻害剤などへの利用が期待されているのみならず、遺伝子の損傷や遺伝子の複製ミスなどの研究開発において重要な物質である。
【0003】
図1にバルジ塩基の例を示す。この例では、グアニン(G)がバルジ塩基として塩基対を形成することができない状態になっている。図1のバルジ塩基となっているグアニン(G)は、いずれの塩基とも水素結合をしておらず、図1に示されるように、バルジ塩基のグアニン(G)が塩基対の内側に入ることもできるし、また、図2に示すように塩基対の外側にくることもできる。いずれの場合においても、塩基対の中にバルジ塩基の存在による空間が生じることになる。図1及び図2には、このような空間部分を斜線を入れた四角形で示している。
【0004】
このようなバルジ塩基を有するDNAを検出する方法として、平面構造を持ちかつDNAをアルキル化出来るDNAインターカレーターがバルジに優先的に結合することを利用する方法が知られているが、この方法は図1又は図2に示されるバルジ塩基の存在により生じてくる空間に、芳香環とバルジ近傍の塩基とのスタッキング相互作用を利用してインターカーレーションするものである。
しかしながら、このような方法では、アルキル化を伴うものであり、かつ空間が生じた場合にインターカーレーションするもので、バルジ塩基の種類に応じて作用するものでは無く、アルキル化できる空間の存在によりインターカーレーションが起こりバルジ塩基そのものを判定するものではなかった。
さらに、この方法による従来のものは、図3に示されるようにDNA対の外側においてインターカーレーションを起こすものが多く、バルジ内に存在する塩基を区別することはできなかった。
【0005】
また、バルジ塩基を有するDNAを検出する方法として、MutS等のDNA修復蛋白が遺伝子損傷箇所に選択的に結合することを利用する方法も知られているが、この方法もバルジ塩基の種類に特異的なものではなかった。
本発明者らは、バルジ塩基を認識できるバルジDNA認識分子のコンセプトを確立し、具体的なバルジDNA認識分子として2−アルキルカルボニルアミノ−1,8−ナフチリジン誘導体を報告してきた(特開2001−89478号)。しかし、このバルジ認識分子とバルジ塩基との結合は、通常の塩基対の結合に比べて極めて弱く、また本発明者らが別に開発したミスマッチ塩基対に対するミスマッチ認識分子(特開2001−149096号参照)との結合に比べても弱いものであった。したがって、バルジ認識分子をプップ上などに固定化したとしても、バルジ塩基を含むDNAを固定化することは困難な状況であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、バルジ塩基の存在している二本鎖DNA鎖中のバルジ塩基と、バルジ認識分子との結合を強くすることにより、プップ上などにバルジ塩基を含むDNAを固定化することも可能となる、バルジ塩基認識分子を提供する。
より詳細には、本発明は、バルジ塩基と固定化が可能な程度に強く結合し得る改良されたバルジ塩基認識分子を提供することを目的としている。さらに、本発明の目的は、チップなどの担体に固定化できるバルジ認識分子、それを用いたバルジ塩基を検出、同定する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、バルジ塩基と水素結合するインターカレーターを用いて、バルジ塩基とインターカレーターの水素結合複合体が、二本鎖DNAにスタックして安定な複合体を形成することを見出してきた(特開2001−89478号)。しかし、これらのバルジ認識分子はバルジ塩基との結合が弱く、バルジ塩基を含むDNAをチップ上などの担体上に固定化することが困難なものであった。本発明者らは、この点を改良するために鋭意研究してきたところ、バルジ認識分子を水素結合したバルジ塩基と共有結合を形成させることができ、これによりバルジ塩基を含むDNAとバルジ認識分子とを完全に結合させることができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、バルジ塩基と特異的に水素結合を形成することができ、かつバルジ塩基の近隣に存在する塩基対によりスタックされ二本鎖内に安定に取り込まれ得るバルジ塩基認識分子において、当該バルジ認識分子がさらにバルジ塩基と共有結合を形成し得る官能基を有していることを特徴とするバルジ認識分子に関し、より詳細には、バルジ認識分子が、次の一般式(I)、
【0009】
【化2】
Figure 0004177006
【0010】
(式中、Aは、=C−又は=N−を示し、
Zは、−CH−又は−NH−を示し、
は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
は、バルジ塩基と共有結合を形成し得る官能基を置換基として有する炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基を示す。)
で表される化合物であるバルジ塩基認識分子に関する。本発明のバルジ認識分子は、さらにこれをチップなどの担体に結合させるためのリンカー基を有することができる。また、本発明は、このようなリンカー基により担体に固定化されたバルジ認識分子に関する。
【0011】
また、本発明は、前記した本発明のバルジ塩基認識分子を含有してなるバルジ塩基認識用組成物、並びに前記した本発明のバルジ塩基認識分子を用いて、DNA中のバルジ塩基を検出、同定又は定量する方法及びそのための測定用キットに関する。
さらに、本発明は、バルジ塩基認識分子が、特定のバルジ塩基と水素結合を形成し、当該バルジ塩基の近隣に存在する塩基対にスタックされることによりバルジ塩基が安定化されたDNAに関する。
【0012】
本発明者らは、グアニン(G)のバルジ認識分子として1,8−ナフチリジン誘導体を開発してきた(特開2001−89478号)が、この分子に基づいてバルジ塩基との共有結合を形成するための手法を種々検討してきた。その結果、バルジ認識分子のバルジ塩基の認識部位と適当な距離を隔てて反応性の官能基を設けることによりバリジ塩基と共有結合を形成することができることを見出した。本発明のバルジ塩基と共有結合できるバルジ認識分子として、例えば、1,8−ナフチリジン誘導体から誘導された、次式(II)、
【0013】
【化3】
Figure 0004177006
【0014】
で表される2−(β−(N−エポキシメチル−アミノ)−プロピオニルアミノ)−7−メチル−1,8−ナフチリジンに基づいて本発明を説明する。
本発明のバルジ認識分子は、図4に示されるようにバルジ塩基認識部(この例ではグアニン認識部)とバルジ塩基修飾部(この例ではグアニン修飾部)とからなり、図5のモデル図に示されるように、まずバルジ塩基認識部によりバルジ塩基を認識し、バルジ塩基認識部とバルジ塩基とが水素結合を形成する。次いで側鎖の活性水素がバルジ塩基の極性部分に基づいてバルジ塩基の方向に折れ曲がり、その結果、バルジ認識分子の反応性の官能基とバルジ塩基とが化学反応を起こすものと考えられる。
【0015】
このことを次のオリゴマー(1)及びオリゴマー(2)を用いて確認した。

オリゴマー(1) 5’−ATTGCGCTGA−3’
オリゴマー(2) 3’−TAACG GACT−5’
このオリゴマー(2)は、オリゴマー(1)のグアニン(G)の位置(*印を付した部分)の塩基が欠損しており、オリゴマー(1)のグアニン(G)がバルジ塩基となっている。
このオリゴマー(1)、オリゴマー(2)及び前記式(II)の2−(β−(N−エポキシメチル−アミノ)−プロピオニルアミノ)−7−メチル−1,8−ナフチリジン(以下、本明細書においては「エポキシナフチリジン」という。)をカコジル酸緩衝溶液中で室温で反応させた。反応前の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び室温で20時間後のHPLC(内部標準としてdTを用いている。)の結果のチャートを図6に示す。
反応前(図6の上段のチャート)では、チャートの左側から内部標準のdT、オリゴマー(2)、オリゴマー(1)及びエポキシナフチリジンの各ピークが観察されたが、反応後(図6の下段のチャート)では、チャートの左側から内部標準のdT、オリゴマー(2)の大きなピーク、オリゴマー(1)の小さなピーク、エポキシナフチリジンの各ピークのさらに右側の新たな生成物の大きなピークが観察された。この新たな生成物のピークは、オリゴマー(1)のピークが小さくなっていることから、オリゴマー(1)とエポキシナフチリジンとの反応生成物であることが確認された。
この結果、オリゴマー(1)とエポキシナフチリジンとの反応率は約97%であり、オリゴマー(2)との反応率は約3%であることがわかった。
【0016】
本発明のバルジ認識分子によれば、バルジ塩基と共有結合を形成して、バルジ認識分子とバルジ塩基を含むDNAが強固に結合していることから、バルジ認識分子を固定化することによりバルジ塩基を含んでいるDNAのみを選択的に固定化することができ、チップなどの担体を用いて固定化したDNAとして検出、同定又は定量化することが可能となる。例えば、ある遺伝子が1個又は数個の塩基を欠損しているか否かを検定する場合には、欠損箇所を含む当該遺伝子の断片を被検体遺伝子断片として用意し、当該断片を正常な塩基配列を有する正常遺伝子断片とハイブリダイズさせて、本発明のバルジ認識分子の存在下に反応を行うことにより、被検体遺伝子断片に塩基の欠損が有るか無いかを検出、同定又は定量することできる。
【0017】
したがって、本発明のバルジ塩基認識分子は、これをバルジ塩基認識剤として使用することができ、また、適当な担体又は測定用の資材と組み合わせることによりバルジ塩基認識用組成物とすることができる。
また、本発明は、本発明のバルジ塩基認識分子又は標識化若しくは固定化されたバルジ塩基認識分子を使用してDNA中のバルジ塩基を検出、同定又は定量するための測定方法を提供するものである。本発明の測定方法としては、前記してきたHPLCの測定でもよいが、本発明のバルジ認識分子をチップ上などに固定化して検定するDNAのいずれかを標識化して、チップ上などの担体上に残った標識物を測定することもできるが、これらの測定方法に限定されるものではない。また、測定に使用する遺伝子の断片としては特に制限はないが、好ましくは10〜100塩基、より好ましくは10〜50塩基、10〜30塩基程度の長さのものがよい。
さらに、このようなバルジ塩基の検定の際に、本発明者らが開発きたミスマッチ認識分子(特開2001−149096号参照)を併せて使用することもできる。このようなミスマッチ認識分子を併せて使用することにより、被検体遺伝子断片における欠損塩基の有無及び種類を検定できると同時に、SNPのような塩基の変化についても検定することができる。
【0018】
また、本発明のバルジ塩基認識分子はこれを単独で使用することもできるが、分子中の適当な位置に放射性元素を導入したり、化学発光又は蛍光を発する分子種を導入するなどして、標識化して使用することもできる。さらに、本発明のバルジ塩基認識分子の適当な位置においてポリスチレンなどの高分子材料やチップ上などに直接又はリンカーなどを用いて結合させて、これを固定化して使用することもできる。固定化して使用する場合には、グアニン(G)のバルジ塩基を選択的に判定することができるバルジ認識分子、シトシン(C)のバルジ塩基を選択的に判定することができるバルジ認識分子、チミン(T)のバルジ塩基を選択的に判定することができるバルジ認識分子、及びアデニン(A)のバルジ塩基を選択的に判定することができるバルジ認識分子を並べて置くことにより、4種類の塩基のバルジの存在を一度の検定により判定することも可能となる。
【0019】
本発明のバルジ認識分子は、バルジ塩基認識部及びバルジ塩基修飾部を含有し、この両部が適当な炭素鎖、好ましくは当該炭素鎖中の1個又はそれ以上の炭素原子は酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい炭素鎖によって結合されていることを特徴とするものであり、かかる特徴を有するものであれば特に制限はない。本発明のバルジ認識分子の好ましいものとして一般式(I)で表される物質を挙げることができる。一般式(I)における置換基Rは無くてもよいが(置換基Rとが水素原子の場合)、置換基Rとしてはバルジ塩基を認識するために障害にならないものであれば特に制限はなく、例えば、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルコキシ基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基でモノ又はジ置換されているモノ若しくはジアルキルアミノ基などが挙げられる。これらのアルキル基、アルコキシ基又はモノ若しくはジアルキルアミノ基における1個又はそれ以上の炭素原子は、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。置換基Rは、ナフチリジン又はキノリン骨格のいずれの位置に存在してもよく、またこのような置換基が2個以上存在していてもよい。
【0020】
本発明の一般式(I)で表されるバルジ認識分子における置換基Rは、バルジ塩基と共有結合を形成し得る官能基を置換基として有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜20、炭素数3〜10、又は炭素数3〜7のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基を示し、好ましくは当該アルキル基中の少なくとも1個の炭素原子が窒素原子(−NH−)で置換された構造を有するものである。当該アルキル基は、さらに必要ならば、例えば分子の親水性を上げるためや、DNAなどとの親和性のためにある程度の極性を有する置換基を有してもよく、このような置換基は当該アルキル基の末端に位置していてもよいし、アルキル基の他の位置に存在していてもよいし、また2個以上の置換基が存在していてもよい。このような置換基としては、例えば、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などが挙げられる。本発明のバルジ認識分子をチップなどの担体に固定化する場合には、当該アルキル基の任意の位置から担体に固定用のリンカー基を有してもよい。このようなリンカー基としては、アルキレン鎖や当該アルキレン鎖中の1個以上の炭素原子が窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はアミド結合などで置換されたものであってもよい。このようなリンカーの長さは特に制限はなく、担体に安定に固定するために必要な長さとすることができる。
【0021】
また、一般式(I)における置換基Rのバルジ塩基と共有結合を形成し得る官能基としては、室温または加温状態においてバルジ塩基と反応することができる反応性の基であれば特に制限はないが、エポキシ基、アジリジニル基、シクロプロピル基などの3員環の基が好ましい例として挙げられるが、他の反応性に基であってもよい。
さらに、一般式(I)におけるAが窒素原子であるナフチリジン誘導体が好ましいが、Aが炭素原子であるキノリン誘導体であってもよい。一般式(I)におけるZがメチレン基の場合のアミド型であってもよいし、Zが窒素原子(−NH−)の場合の尿素型であってもよい。
本発明の一般式(I)で表されるバルジ認識分子の好ましい例としては、一般式(II)で表されるエポキシナフチリジンが挙げられる。
【0022】
本発明のバルジ認識分子、好ましくは一般式(I)で表されるバルジ塩基認識分子は低分子有機化合物であり、通常の有機合成法により適宜製造することができる。例えば、アミノナフチリジンやアミノキノリン誘導体のアミノ基をカルボン酸類や置換基を有するカルボン酸又はその反応性誘導体を用いてアミド化し、次いでカルボン酸部分にバルジ塩基と反応性の官能基を導入する方法により製造することができる。例えば、前記した一般式(II)で表されるエポキシナフチリジンは、2−アミノ−1,8−ナフチリジン又は2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジンとN−保護−4−アミノ−酪酸又はN−保護−3−アミノ−プロピオン酸とを反応させてアミド誘導体とし、ついで末端のアミノ基の保護基を脱保護した後、エポキシ基を導入して製造することができる。
【0023】
本発明のバルジ塩基認識分子を用いることにより、1個又は2個以上のバルジ塩基を有するDNAにおいて、特定の塩基によるバルジ塩基と水素結合を形成させてこれを安定化させ、さらにバルジ塩基と共有結合を形成することによりバルジ塩基を含有するDNAを安定化させることができる。特に本発明のバルジ塩基認識分子は、特定のバルジ塩基と水素結合を形成し、かつ共有結合を形成するのみならず、近傍、好ましくは隣接する塩基対にスタックされ、バルジ塩基が存在しているにもかかわらず比較的安定なDNAを得ることができる。
したがって、本発明は、バルジ塩基認識分子が、特定のバルジ塩基と水素結合を形成し、かつ共有結合を形成し、当該バルジ塩基の近隣に存在する塩基対にスタックされることによりバルジ塩基が安定化されたバルジ塩基を含有するDNAを提供するものである。
本発明のDNAは、バルジ塩基が本発明のバルジ塩基認識分子と水素結合により塩基対と同様な「対」を形成し、かつバルジ塩基と「対」を形成している本発明のバルジ塩基認識分子が近傍、好ましくは隣接の塩基対を形成している塩基にサンドイッチ状に挟まれてスタックされているものと考えられる。
【0024】
本発明のバルジDNA認識分子を用いることにより、従来の技術では達成できないバルジDNA認識分子を高感度で、かつ固定化が可能となるために大量に迅速に検出、同定又は定量することができ、バルジ塩基の存在の有無や特定のバルジ塩基のみを選択して検出、同定又は定量できることから、本発明のバルジ認識分子はDNA損傷に伴う各種疾患の治療、予防又は診断に有用である。
また、本発明のDNAはバルジ塩基を有した状態で比較的安定に存在することができることから、バルジ塩基を含有するDNAの安定化や、バルジ塩基の発生原因やバルジ塩基の修復機構の解明などの研究材料としても重要である。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
実施例1 (エポキシナフチリジンの製造法)
エポキシナフチリジンの製造における反応式を次に示す。
【0027】
【化4】
Figure 0004177006
【0028】
(1)3−アミノ−N−(7−メチルピリジノ[3,2−e]ピリジン−2−イル)プロパンアミド(1.23g、5.34mmol)の無水CHCl(15mL)溶液に(S)−(+)−エピクロルヒドリン(0.6mL、7.65mmol)を加え、室温で27.5時間撹件した。溶媒を濃縮留去した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/MeOH=10:1)により精製し、目的の付加体(95.4mg、0.29mmol、5.5%)を白色固体として得た。
H−NMR (CDOD,400MHz) δ:
11.1 (br, 1H), 8.43 (d, 1H, J=8.8Hz), 8.11 (d, 1H, J=8.8Hz),
8.00 (d, 1H, J=8.0Hz), 7.27 (d, 1H, J=8.0Hz), 4.13 (m, 1H),
3.64 (m, 2H), 3.08 (m, 2H), 2.98 (dd, 1H, J=12.8,3.2Hz).
【0029】
(2)続いて、水素化ナトリウム(60%油分散液)(19.8mg、0.495mmol)の無水THF(0.6mL)溶液に、前記(1)で得た付加体(12.5mg、38.7μmol)を加え、室温で10分間撹件した。混合物を飽和NHCl水溶液で希釈した後、CHClで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させ濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/MeOH=10:1)により精製し、目的のエポキシナフチリジン(8.6mg、30.0μmol、78%)を白色固体として得た。
H−NMR (CDOD,400MHz) δ:
8.45 (d, 1H, J=8.8Hz), 8.10 (d, 1H, J=8.8Hz),
7.98 (d, 1H, J=8.0Hz), 7.25(d, 1H, J=8.0Hz), 3.22 (m, 1H),
3.15-3.07 ( 3H), 2.81 (m, 1H), 2.74 (s, 3H), 2.68-2.65 ( 2H),
2.60 (m, 2H)
【0030】
実施例2 (グアニンバルジDNAとエボキシナフチリジンの反応)
実験に用いたオリゴマー(1)及びオリゴマー(2)の塩基配列を次に示す。

オリゴマー(1) 5’−ATTGCGCTGA−3’
オリゴマー(2) 3’−TAACG GACT−5’
このオリゴマー(2)は、オリゴマー(1)のグアニン(G)の位置(*印を付した部分)の塩基が欠損しており、オリゴマー(1)のグアニン(G)がバルジ塩基となっている。
このオリゴマー(1)とオリゴマー(2)とをハイブリダイズさせたd(TCAG GCAAT)/(ATTGCGCTGA)(50μM,標準濃度)および内部標準としてdT(100μM)を含むカコジル酸緩衝溶液(50mM,pH7.0)に、実施例1で製造したエボキシナフチリジン(500μM)を加え、室温で反応させた。反応混合物をHPLCにより分析した。
分析条件:カラム ChcmcoBond 5−ODS−H(4.6x150mm)、溶出 0.1M TEAAバッファー、7−30%アセトニトリル直線勾配、0−30分、溶出速度 1.0mL/分。
生成物のHPLCピークは254nmで観測した。20時間後付加体を分取し、MALDI−TOF MS測定により分析した。
HPLCの結果を図6に示す。
【0031】
【発明の効果】
本発明のバルジ認識分子は、特定のバルジ塩基と水素結合を形成し、かつ共有結合を形成するのみならず、近傍の塩基対に安定にスタックされ、特定のバルジ塩基と共有結合により強力に結合できるものであることから、バルジ塩基を含むDNAを本発明のバルジ認識分子を用いて固定化することも可能となる。そして、チップなどの担体に本発明のバルジ認識分子を固定化することにより、特定のバルジ塩基を含むDNAのみを選択的に担体上に固定化することが可能となり、遺伝子の欠損の有無や欠損した塩基の種類を高感度で、大量にかつ迅速に検出、同定又は定量することができることになり、DNA損傷に伴う各種疾患の治療、予防又は診断に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、塩基対の内側に向いているバルジ塩基(図ではグアニン)を模式的に示したものである。
【図2】図2は、塩基対の外側に向いているバルジ塩基(図ではグアニン)を模式的に示したものである。
【図3】図3は、塩基対の外側に向いているバルジ塩基(図ではグアニン)に、塩基対の外側からインターカーレーションする様子を模式的に示したものである。
【図4】図4は、本発明のバルジ認識分子の構成部分を例示した化合物に基づいて説明するものである。
【図5】図5は、本発明のバルジ認識分子がバルジ塩基を認識し、バルジ塩基と水素結合を形成し、次いでバルジ認識分子のバルジ塩基修飾部とバルジ塩基とが反応して共有結合を形成する様子をモデル化して例示したものである。
【図6】図6は、本発明のエポキシナフチリジンとバルジ塩基を含むDNAとの反応の前(図6上段のチャート)と反応後(図6下段のチャート)HPLCのチャートを示す。反応前(図6の上段のチャート)では、チャートの左側から内部標準のdT、オリゴマー(2)、オリゴマー(1)及びエポキシナフチリジンの各ピークを示し、反応後(図6の下段のチャート)では、チャートの左側から内部標準のdT、オリゴマー(2)、オリゴマー(1)、エポキシナフチリジン、及び新たな生成物の各ピークを示す。

Claims (11)

  1. 次の一般式(I)、
    Figure 0004177006
    (式中、Aは、=C−又は=N−を示し、
    Zは、−CH−又は−NH−を示し、
    は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
    は、エポキシ基、アジリジニル基、又はシクロプロピル基を置換基として有する炭素数3〜7のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基を示す。)
    で表される化合物である、バルジ塩基がグアニンであるバルジ塩基認識分子。
  2. の置換基がエポキシ基である、請求項1に記載のバルジ塩基認識分子。
  3. バルジ塩基認識分子が2−(β−(N−エポキシメチル−アミノ)−プロピオニルアミノ)−7−メチル−1,8−ナフチリジンである、請求項2に記載のバルジ塩基認識分子。
  4. 1個以上の炭素原子が窒素原子酸素原子、硫黄原子又はアミド結合に置換されていてもアルキレン基を担体固定用のリンカー基としてさらに有している、請求項1〜3のいずれかに記載のバルジ塩基認識分子。
  5. 担体に結合されている請求項4に記載のバルジ塩基認識分子。
  6. 担体がチップである請求項6に記載のバルジ塩基認識分子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のバルジ塩基認識分子を含有してなる、バルジ塩基がグアニンであるバルジ塩基認識用組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のバルジ塩基認識分子を用いて、DNA中のグアニンであるバルジ塩基を検出、同定又は定量する方法(ただし人間の体内への適用を除く)
  9. 正常な塩基配列からなるDNAに被検体のDNAをハイブリダイズさせて、請求項1〜6のいずれかに記載のバルジ塩基認識分子の存在下に前記したハイブリダイズしたDNAを固定化する、請求項8に記載の方法。
  10. 正常な塩基配列からなるDNA及び被検体のDNAのいずれかが標識化されている、請求項9に記載の方法。
  11. 安定化されたグアニンであるバルジ塩基を含有するDNAであって、請求項1〜6のいずれかに記載のバルジ塩基認識分子が前記バルジ塩基に結合した前記DNA。
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