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JP4195583B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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JP4195583B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

自動変速機の油圧制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の油圧制御装置に関し、特に、自動変速機の変速時における摩擦締結要素に対する締結圧を入力トルクに応じて可変設定する自動変速機の油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動変速機の変速は、変速機に設けられている複数のクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素を選択的に締結或いは開放させることで行うが、その際、摩擦締結要素の締結圧を適正に設定する必要がある。
【0003】
すなわち、変速機への入力トルク(エンジン発生トルク)が小さい場合には、締結圧を弱くすることで、変速ショックの発生を抑制し、一方、入力トルクが大きい場合は、比較的大きな締結圧で摩擦締結要素を締結動作させることで、変速時の応答遅れを回避する。
【0004】
この摩擦締結要素に対する締結圧は、摩擦締結要素を締結動作させるライン圧を過渡制御することで行なわれるが、摩擦締結要素の要求する最適な締結圧(ライン圧)と、自動変速機への入力トルクとは、ほぼ一次関数で表すことが知られているため、実測した変速時の入力トルクと最適な締結圧(ライン圧)との関係から、(1)式に示す一次近似式を求め、この一次近似式に基づいて締結圧(ライン圧)を過渡制御するようにしている。
y=a・x+b …(1)
ここで、y:基本締結圧(ライン圧)、x:入力トルクである。
【0005】
ところで、摩擦締結要素を構成する摩擦材の摩擦係数や、ライン圧を制御する油圧コントロール弁の発生油圧のばらつき、入力トルクの計測誤差、及びライン圧の推定誤差等の要因で、実際に発生する締結圧(ライン圧)と摩擦締結要素が要求する締結圧との間には 車両毎にばらつきがある。
【0006】
そのため、上述した(1)式に対して、その傾き定数a、切片定数b、及び入力トルクxを、特定の入力パラメータに基づいて推定すると、この各パラメータと推定値との間には、誤差Δa,Δb,Δxが生じる。この場合、基本締結圧yと、摩擦締結要素が要求する動作を得るために必要な締結圧(目標締結圧)ycとの間の誤差δ(=yc−y)は、(2)式で近似することができる。
δ≒Δa・x+a・Δx+Δb …(2)
この場合、Δxが、xの一次式d1・x+d0で近似可能であれば、上式に代入して、
δ≒Δa・x+a・(d1・x+d0)+Δb
≒(a・d1+Δa)・x+a・d0+Δb
≒Δa’・x+Δb’ …(3)
で表すことができる。
【0007】
(3)式は、Δa’とΔb’さえ求めることができれば、任意の入力トルクxに対して各誤差要因Δa,Δb,Δxによる、基本締結圧yと目標締結圧ycとの間の誤差δは補正することができることを意味する。
【0008】
この両定数a,bを補正した各々定数をac,bcとすると、目標締結圧ycは、
yc=ac・x+bc …(4)
或いは
yc=(ac/a)・(y−b)+bc …(5)
となる。
【0009】
一般に、定数ac,bcは、走行中の変速開始点においてサンプリングした入力トルクxと締結圧yとに基づいて最小二乗法により求める。そして、算出された各定数ac,bcに基づいて、(4)或いは(5)の一次近似式を設定し、この一次近似式に基づいて、入力トルクxに応じた目標締結圧ycを設定するようにしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、各車両に搭載されている自動変速機の変速の際のライン圧制御に適合する一次近似式を設定するための各定数ac,bcを最小二乗法によって求める場合、サンプリングする各定数ac,bcの変動を抑制し、算出される目標ライン圧ycを安定させるためには、多くのサンプルデータを必要とするので、当該データを保存するためにメモリ容量を確保しなければならず、コスト高となってしまう。
【0011】
又、最小二乗法は計算が複雑であるため、サンプルデータが増加するに従い、演算量が膨大化し、リアルタイムでの制御が困難となり、応答遅れが生じる。
【0012】
これに対処するに、例えば特開2001−116130号に開示されている油圧制御装置では、生産ラインにおいて、自動変速機に設けられている油圧制御装置のライン圧を生成するソレノイド弁に供給するソレノイド弁駆動電流値を異ならせながら順次出力し、このソレノイド弁駆動電流値毎の摩擦締結要素の締結圧(ライン圧)を計測し、この実測データに最も近似するソレノイド弁駆動電流値とソレノイド弁圧との関係を有するテーブルマップを基本マップとして選択し、実測データと基本マップから、最小二乗法により、ソレノイド弁圧と締結圧との関係を、一次関数(ys=a・x+b ys:ソレノイド弁圧、x:ソレノイド弁駆動電流値)として近似計算し、このときの傾き定数aと切片定数bとを制御装置に格納し、ソレノイド弁圧ysを算出する際に、ソレノイド弁駆動電流と定数a,bとを読込み、一次近似式からソレノイド弁圧ysを算出するようにしている。
【0013】
この先行技術によれば、出荷される制御装置には定数a,bの関係のみを格納しておけばよいので、相対的にメモリ容量を小さくすることができ、演算時の負担も軽減することができる。
【0014】
しかし、この先行技術では、生産ラインにおいて、車両毎にソレノイド弁駆動電流値と、そのときの摩擦締結要素の締結圧(ライン圧)とを計測した後、最も近似した基本マップを選択しなければならないため、生産ラインにおける作業が複雑化し、生産効率が低下する。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑み、生産ラインにおける作業効率を低下させことなく、自動変速機の変速動作の際の締結圧特性を補正して、入力トルクに対応した最適な締結圧を設定することのできる自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、傾き定数と切片定数とで構成された一次式に基づいて、変速開始点における入力トルクに対応する変速機に設けられている摩擦締結要素の目標作動圧を設定する自動変速機の油圧制御装置において、上記変速開始点で検出した入力トルクと上記摩擦締結要素に作用する実作動圧とを記憶するサンプルデータ記憶部と、上記入力トルクと上記実作動圧との関係から平均信頼度の最も高い値を示す上記傾き定数と上記切片定数とを記憶する補正定数記憶部と、上記補正定数記憶部に記憶されている上記傾き定数と上記切片定数とに基づき該傾き定数と該切片定数とを微少量移動させて複数の傾き補正定数と切片補正定数とを算出し、該各傾き補正定数と該各切片補正定数との組み合わせで設定される一次式の変数として上記サンプルデータ記憶部に記憶されている入力トルクを代入して算出される値を、該サンプルデータ記憶部に記憶されている実作動圧から減算して誤差を算出し、該誤差の平均値と分散値とから上記傾き補正定数と上記切片補正定数との組み合わせ毎に平均信頼度を算出する補正定数算出部とを備え、上記補正定数記憶部は、上記補正定数算出部で算出した、各組み合わせ毎の平均信頼度から、最も大きい平均信頼度を示す傾き補正定数と切片補正定数とを選択し、該傾き補正定数と該切片補正定数とで上記傾き定数と上記切片定数とを更新することを特徴とする。
【0017】
このような構成では、変速開始点における変速機の各摩擦締結要素に供給する目標締結圧を、補正定数記憶部に格納されている傾き定数と切片定数とに基づいて設定された一次式から、変速機に対する入力トルクに応じて設定する。一方、変速開始点における変速機に入力される入力トルクと変速機に設けられている摩擦締結要素に作用する実作動圧とは各運転領域毎にサンプルデータ記憶部に格納される。そして、補正定数算出部において、補正定数記憶部に格納されている傾き定数と切片定数とに基づき該傾き定数と該切片定数とを微少量移動させて複数の傾き補正定数と切片補正定数とを算出し、この傾き補正定数と切片補正定数とで設定される一次式の変数に、サンプルデータ記憶部に記憶されている入力トルクを代入して算出される値を、サンプルデータ記憶部に記憶されている実作動圧から減算して誤差を算出する。そして、この誤差の平均値と分散値とから傾き補正定数と切片補正定数との組み合わせ毎に平均信頼度を算出し、この平均信頼度の最も高い値を示す傾き補正定数と切片補正定数とで、補正定数記憶部に格納されている傾き定数と切片定数とを更新する。その結果、補正定数記憶部に格納されている傾き定数と切片定数とで設定される一次式は、サンプルデータ記憶部に格納されている傾き定数と切片定数とが更新されるに従い、学習補正されるため、変速開始点における実締結圧が次第に最適化される。
【0018】
この場合、好ましくは、1)上記平均信頼度は、上記実作動圧と上記一次式に基づいて算出した目標作動圧との誤差の頻度分布に基づいて設定される平均値と分散値とをパラメータとして、該平均値と該分散値とが共に小さい値を示すとき大きな値を得ることのできる平均信頼度関数に基づいて算出することを特徴とする。
【0019】
2)上記サンプルデータ記憶部のデータ格納領域が上記入力トルクの大きさに応じて複数のブロックに区分されており、各ブロックに該入力トルクと実締結圧とで示される座標データが設定個数ずつ格納されることを特徴とする。
【0020】
3)上記平均信頼度が同値となる組み合わせが複数存在する場合は、予め設定されている優先順位に従って1つの組み合わせを選択することを特徴とする。
【0021】
4)上記補正定数記憶部に記憶されている上記傾き定数と上記切片定数とに上下限リミッタが設定されていることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。
図1に自動変速機付きエンジンの概略図を示す。同図の符号1はエンジンで、このエンジン1の出力側に自動変速機(A/T)2が連設されている。この自動変速機2の出力側には、自動変速機2からの出力を、フロントドライブ軸(図示せず)へ伝達すると共に、リヤドライブ軸3へ選択的に分配するトランスファークラッチ等を内装すエクステンション部2aが連設されている。
【0023】
自動変速機2は、入力側からロックアップ機構付きトルクコンバータ、クラッチやブレーキ等の摩擦締結要素を有する遊星歯車式変速機構による変速機と、トルクコンバータのロックアップクラッチや摩擦締結要素の締結開放を動作させるコントロールバルブユニット4とを備え、このコントロールバルブユニット4に、各摩擦締結要素へ供給するライン圧を制御するソレノイド弁5、各摩擦締結要素に対するライン圧の給排制御を行なう複数の変速用ソレノイド弁6、及びロックアップクラッチへ供給するライン圧の給排制御により、このロックアップクラッチの締結、スリップ、開放を行なうロックアップ用ソレノイド弁7等が設けられている。尚、図においてはコントロールバルブユニット4を便宜的に自動変速機2の外部に示したが、コントロールバルブユニット4は自動変速機2内に配設されている。
【0024】
図2に自動変速機2の動力伝達列の一例を示す。同図に示すように、自動変速機2は、入力側からトルクコンバータ11、オイルポンプ12、変速機13が配設され、エンジン出力軸1aからの駆動力がトルクコンバータ11を経て変速機13の入力軸14に伝達される。
【0025】
変速機13は、二組のプラネタリギヤユニット16,17を備えており、各プラネタリギヤユニット16(17)がプラネタリキャリヤ16a(17a)、リングギヤ16b(17b)、ピニオンギヤ16c(17c)、サンギヤ16d(17d)で構成されている。
【0026】
又、入力側のプラネタリギヤユニット(以下、「フロントプラネタリギヤユニット」と称する)16の側方に、ハイクラッチ18、リバースクラッチ19、2&4ブレーキ20が並列に配設されている。ハイクラッチ18が入力軸3aとフロントプラネタリキャリヤ16aとの間の動力伝達を断続し、リバースクラッチ19が入力軸14とフロントサンギヤ16dとの間の動力伝達を断続し、2&4ブレーキ20がフロントサンギヤ16dと変速機13の自動変速部ケース21との間を断続する。
【0027】
又、出力側のプラネタリギヤユニット(以下、「リヤプラネタリギヤユニット」と称する)17のプラネタリキャリヤ17aは、フロントプラネタリギヤユニット16のリングギヤ16bと一体回転すると共に、出力軸22に連設されている。更に、この出力軸22が、エクステンション部2aに内装されているフロントドライブ軸に連設されていると共に、トランスファクラッチ(図示せず)を介してリヤドライブ軸3に接続される。
【0028】
又、両プラネタリギヤユニット16,17の外周に、ロークラッチドラム23aが配設され、このロークラッチドラム23aがフロントプラネタリキャリヤ16aと一体回転すると共に、ローワンウェイクラッチ24に連設されている。更に、ロークラッチドラム23aとリヤプラネタリギヤユニット17のリングギヤ17bとの間に断続自在なロークラッチ23が介装されている。
【0029】
又、リヤプラネタリギヤユニット17の側方に、フロントプラネタリギヤユニット16のプラネタリキャリヤ16aと自動変速部ケース21との間を係脱するローワンウェイクラッチ24と、このローワンウェイクラッチ24の空転を防止するローアンドリバース(L&R)ブレーキ25とが並列に配設されている。又、トルクコンバータ11には、インペラとタービンとをオイルを介さずに直結自在なロックアップクラッチ26が設けられている。
【0030】
このような構成による変速機13は、前進4段、後進1段の変速段を有し、各変速段がハイクラッチ18、リバースクラッチ19、ロークラッチ23、2&4ブレーキ20、L&Rブレーキ25の動作により適宜選択される。
【0031】
例えば、走行中の車速が設定車速以下の低速状態のときは、ロックアップクラッチに対する締結圧を弱めるスリップロックアップ制御を行ない、低速走行時のトルク変動を吸収し良好な走行安定性を得るようにする。
【0032】
一方、変速制御では、表1に示すように、変速機13の各クラッチ・ブレーキ(以下、「摩擦締結要素」と総称)を選択的に断続させることで、所望の変速段を選択することができる。
【0033】
【表1】
Figure 0004195583
【0034】
これら各摩擦締結要素には、オイルポンプ12から圧送されて調圧弁により所定に調圧された締結圧(ライン圧)Piが、コントロールバルブユニット4に設けられている各ソレノイド弁5,6,7の開度を選択的に制御することで、各摩擦締結要素に適宜供給され、この各摩擦締結要素を選択的に締結動作させる。尚、この締結圧(ライン圧)は、自動変速機2の入力トルクTiと変速制御時の減速比εとに応じて可変設定される。締結圧(ライン圧)を入力トルクTiと減速比εとに応じて可変設定することで、スリップロックアップ制御においてはトルク変動を効率よく吸収し、一方、変速制御においては、変速ショックの発生を抑制すると共に、良好な応答性を得ることができる。
【0035】
自動変速機2に供給する締結圧(ライン圧)の制御、及びコントロールバルブユニット4の各ソレノイド弁5,6,7の開度制御は、トランスミッション制御装置(TCU)31で実行される。
【0036】
TCU31は、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを主体に構成されており、入出力インターフェースの入力側に、図示しないエンジン制御ユニット(ECU)32が接続されて、このECU32で検出したスロットル開度θth等、TCU31の油圧制御に必要なパラメータが入力される。更に、入出力インターフェースの入力側に、変速機13の入力回転数Niを検出する入力回転数センサ33、変速機13の出力回転数Noを検出する出力回転数センサ34等が接続されており、入出力インターフェースの出力側に、ソレノイド弁駆動回路8(図3参照)が接続されている。尚、図3においては、ソレノイド弁駆動回路8が包括的に記載されているが、このソレノイド弁駆動回路8は、各ソレノイド弁5,6,7に1対1で対応している。
【0037】
CPUはROMに予め記憶されているプログラムに従い、運転状態に応じて各摩擦締結要素に供給するライン圧を設定すると共に、各ソレノイド弁5,6,7の開度を制御する駆動信号(例えばデューティ信号)を、ソレノイド弁駆動回路8を介して、各ソレノイド弁5,6,7に設けられているソレノイド弁コイル(図3参照)に選択的に出力してライン圧を設定すると共に、ソレノイド弁の弁開度を制御して各摩擦締結要素の締結圧を調整する。
【0038】
図3に示すように、TCU31には、変速時の油圧制御機能として、入力信号処理部36、基本締結圧算出部37、実締結圧推定部38、サンプルデータ記憶部39、補正定数算出部40、補正定数記憶部41、目標締結圧算出部42、出力信号処理部43を備えている。
【0039】
入力信号処理部36は、ECU32から出力されるスロットル開度θthと、入力回転数センサ33で検出した入力回転数Ni、及び出力回転数センサ34で検出した出力回転数Noの関係等からマップ参照、或いは演算により、変速機13への入力トルクTiを推定する。又、変速機13前後の入力回転数Niと出力回転数Noとの比から減速比ε(=Ni/No)を算出する。
【0040】
更に、入力信号処理部36では、減速比εの変化を監視し、この減速比εが予め設定した変化量±Δεだけ変化したとき(図6参照)、変速開始と判断し、そのときの減速比εを実締結圧推定部38へ出力し、同時にそのとき推定した入力トルクTiをサンプルデータ記憶部39と基本締結圧算出部37へ出力する。
【0041】
尚、図6には、アップシフト時の実締結圧(ライン圧)Piの変化特性が示されている。すなわち、変速時においては、実締結圧(ライン圧)Piを低圧から徐々に上昇させて、摩擦締結要素を締結動作させ、所望の変速段へアップシフトさせる。
【0042】
基本締結圧算出部37には、入力トルクTiに基づき基本締結圧Poを算出するための基本一次式(Po=a・Ti+b)が格納されており、この基本一次式(Po=a・Ti+b)に基づき入力トルクTiから基本締結圧Poを算出する。
【0043】
この基本一次式(Po=a・Ti+b)は、予め実験などから求めて設定されているもので、具体的には、適合のために使用する基本とする車両の変速開始点(図6参照)における入力トルクTiと、そのときの目標締結圧(目標ライン圧)Pcとを運転領域毎に充分な数だけサンプリングし、最小二乗法により、基本締結圧Poを導く基本一次式(Po=a・Ti+b)の傾き定数aと切片定数bとを求める。
【0044】
この基本一次式(Po=a・Ti+b)は近似式であるため、各サンプルデータ(Ti,Pc)との間には、ばらつきδ(=Pc−(a・Ti+b))を有しているが、このばらつきδの頻度分布(ヒストグラム)を調べると、図7(a)に示すように、通常はある平均値μp(≒0)と分散値σpとに従った正規分布に近似した形となる。この正規分布を基本モデルの確率密度関数p(δ)と称することにする。
【0045】
尚、この確率密度関数p(δ)をばらつきδに対する基本一次式の信頼度関数と捉えた場合、ばらつきδが、確率密度関数p(δ)の平均値μp(≒0)に近い値を示すほど高い信頼度を示し、任意のばらつきδに対する信頼度が高いほど基本一次式(Po=a・Ti+b)の信頼性は高い。
【0046】
実締結圧推定部38は、入力信号処理部36から出力された減速比εと、後述する目標締結圧算出部42で算出した目標締結圧Pcとに基づき、マッブを補間計算付きで参照し、或いは演算により、変速開始点(図6参照)での実締結圧(ライン圧)Piを推定する。尚、この実締結圧Piは、ライン圧油路中に配設した圧力センサで直接計測しても良いが、減速比εと目標締結圧Pcとに基づいて推定することで、圧力センサを備えてない自動変速機2に対しても適用することが可能となる。
【0047】
サンプルデータ記憶部39は、図4に示すように、データ格納領域が入力トルクTiの大きさに応じてr(≧1)個のブロックに区分されており、各ブロックに、入力信号処理部36から出力された入力トルクTiと実締結圧推定部38で推定した実締結圧Piとで示される座標データ(Ti,Pi)(図5参照)が所定数ずつ合計S個格納される。すなわち、例えばS0個目のブロックには入力トルクTiがC1〜C2未満のとき座標データ(Ti,Pi)が格納され、S1個目のブロックには入力トルクTiがC2〜C3未満のとき座標データ(Ti,Pi)が格納される。そして、Sr個目のブロックには入力トルクTiがCr-1〜Cr未満の座標データ(Ti,Pi)が格納される。
【0048】
この場合、各ブロックに格納される座標データ(Ti,Pi)は、古いものから順に最新のデータに更新される。これにより、トルク領域毎に座標データ(Ti,Pi)がほぼ均等に格納されることになる。従って、例えば余り高負荷運転を行なわず、低負荷側の偏ったトルク領域を主に使用するドライバであっても、座標データ(Ti,Pi)がある領域に偏ってしまうことがなく、座標データ(Ti,Pi)を運転領域全体に分散させることができる。
【0049】
補正定数算出部40では、後述する補正定数記憶部41に格納されている傾き定数acと切片定数bcとを読込み、各データac,bcを微少量±δa,±δbだけ移動させた場合の平均信頼度Rj,kを、表2に示す補正の組み合わせ毎に算出する。
【0050】
【表2】
Figure 0004195583
【0051】
すなわち、表2に示すように、この補正の組み合わせパターンは、本実施の形態では、▲1▼〜▲9▼の9通りに設定されており、この各補正の組み合わせパターン▲1▼〜▲9▼毎に算出される傾き補正定数Aj(j=1〜3)と切片補正定数Bk(k=1〜3)との組み合わせデータ(Aj,Bk)に基づき、先ず、サンプルデータ記憶部39に記憶されている全ての座標データ(Ti,Pi)について、誤差ΔPj,k(j=1〜3,k=1〜3)を(6)式から算出する。尚、組み合わせデータ(Aj,Bk)は9通りに限定されるものではなく、この補正の組み合わせパターンの一部を選択的に採用しても、或いは10通り以上の補正の組み合わせパターンで構成されていても良い。
ΔPj,K=Pi−(Aj・Ti+Bk) …(6)
【0052】
次いで、算出された各誤差ΔPj,kの平均値μj,Kと分散値σj,kとを、(7),(8)式から求める。
【式1】
Figure 0004195583
【0053】
そして、この平均値μj,Kと分散値σj,kとをパラメータとして平均信頼度関数R(μq,σq)を参照して、各組み合わせデータ(Aj,Bk)毎の平均信頼度Rj,kを算出する。尚、平均信頼度関数R(μq,σq)は、正規分布の平均値μj,Kと分散値σj,kとが共に小さい値を示すほど大きな値を取るように設定されている。
【0054】
ここで、平均信頼度関数R(μq,σq)の設定の仕方について説明する。
上述した基本一次式(Po=a・Ti+b)を、適合に使用した車両とは別の車両に搭載されている自動変速機に適用した場合、サンプルデータ記憶部39に格納されている座標データ(Ti,Pi)に基づいて誤差δ(=Pi−(a・Ti+b))を各々算出し、この各誤差δの頻度分布(ヒストグラム)を調べた結果、この誤差δの平均値の多くが基本モデルの確率密度関数p(δ)の平均値μp(≒0)に近い値を示している場合は、当該自動変速機の平均信頼度は高く、基本一次式(Po=a・Ti+b)は当該自動変速機にそのまま使用することができる。
【0055】
一方、上述した誤差δの平均値が基本モデルの確率密度関数p(δ)の平均値μp(≒0)とは異なる値を多く示すような場合、当該自動変速機の平均信頼度は低く、基本一次式(Po=a・Ti+b)をそのまま使用することはできない。このような場合、基本一次式(Po=a・Ti+b)を補正して使用する必要がある。例えば、補正した一次式をPc=ac・Ti+bcで表した場合、サンプルデータ記憶部39に格納されている座標データ(Ti,Pi)との誤差δは、δ=Pi−(ac・Ti+bc)となり、その実モデルの確率密度関数q(δ)を平均値μq、分散値σqに従った正規分布とする。
【0056】
誤差δの平均信頼度は、基本モデルの確率密度関数p(δ)の期待値E[(p(δ)]で表すことができるが、この場合、基本モデルの確率密度関数p(δ)の平均値μpと分散値σpとは既知であるので、平均信頼度関数R(μq,σq)は、(9)式で定義することができる。
【0057】
【式2】
Figure 0004195583
【0058】
尚、平均信頼度関数R(μq,σq)は、確率密度関数q(δ)の平均値|μq|と分散値σqが共に小さい値を示すときに大きな値を持つ特性を有している。
【0059】
この平均信頼度関数R(μq,σq)は演算により求めても良いが、実モデルの確率密度関数q(δ)の平均値μqと分散値σqとを軸とする平均信頼度関数マッブを設定し、この各軸の交点に、平均値μqと分散値σqとに基づいて設定した平均信頼度関数R(μq,σq)を格納するようにしても良い。
【0060】
そして、この平均信頼度関数R(μq,σq)に基づき、上述した各組み合わせデータ(Aj,Bk)の平均信頼度Rj,kを算出する。
【0061】
補正定数記憶部41では、補正定数算出部40で算出した、各組み合わせ毎の平均信頼度Rj,kから、最も大きい平均信頼度Rj,kを示す組み合わせデータ(Aj,Bk)を選択し、このパラメータAj,Bkにて、補正定数記憶部41に格納されている傾き定数acと切片定数bcとを更新する(ac←Aj,bc←Bk)。尚、この傾き定数ac、切片定数bcの初期値は、基本一次式(Po=a・Ti+b)の傾き定数a、切片定数bと同一の値に設定されている(ac=a,bc=c)。
【0062】
目標締結圧算出部42では、基本締結圧算出部37で算出した基本締結圧Poと補正定数記憶部41に格納されている傾き定数ac、切片定数bcとを読込み、(10)式から目標締結圧Pcを算出する。
【0063】
Pc=(ac/a)・(Po−b)+bc …(10)
尚、(10)式は、次の(10’)式であっても良い。
Pc=ac・Ti+bc …(10’)
出力信号処理部43では、目標締結圧算出部42で算出した目標締結圧Pcを駆動信号に変換する。この駆動信号はソレノイド弁駆動回路8を介して、ソレノイド弁5(6,7)に供給される。ソレノイド弁5(6,7)が、駆動信号に従って動作して対応する弁開度が設定されると、これに対応する摩擦締結要素に供給される締結圧(ライン圧)Piが制御される。
【0064】
その結果、例えば、図7(b)に示すように、実モデルの確率密度関数q(δ)が基本モデルの確率密度関数p(δ)に対し、分散値は同一であるが、平均値がプラス方向へずれている場合は、傾きは合っているが、切片がずれていることを示しているため、表2に示す▲1▼〜▲9▼の補正の組み合わせパターン中、パターン▲2▼の(A1,B2)の平均信頼度R1,2が最も高い値を示すことになる。従って、補正定数記憶部41では、パターン▲2▼の(A1,B2)が選択され、この値にて、傾き定数acと切片定数bcとが更新される(ac←A1,bc←B2)。その結果、図8(a)に示すように、実一次式(Pc=ac・Ti+bc)は、切片定数bcがδbだけ増加する方向へ学習補正される(bc←bc+δb)。
【0065】
一方、図7(c)に示すように、基本モデルの確率密度関数p(δ)と実モデルの確率密度関数q(δ)とを比較した場合、平均値は同一であるが分散値が広がっている場合は、傾きのみずれていることを示しているため、表2に示す▲1▼〜▲9▼の補正の組み合わせパターン中、パターン▲4▼の(A2,B1)の平均信頼度R2,1あるいはパターン▲7▼の(A3,B1)の平均信頼度R3,1が最も高い値を示すことになる。従って、補正定数記憶部41では、仮にR2,1>R3,1の場合は、パターン▲4▼の(A2,B1)が選択され、この値にて、傾き定数acと切片定数bcとが更新される(ac←A2,bc←B1)。その結果、図8(b)に示すように、実一次式(Pc=ac・Ti+bc)は、傾き定数acがδaだけ増加する方向へ学習補正される(ac←ac+δa)。
【0066】
このように、変速開始毎に補正定数記憶部41に格納されている傾き定数acと切片定数bcとが繰り返し更新されることで、実モデルの確率密度関数q(δ)が基本モデルの確率密度関数p(δ)とほぼ同一の平均値及び分散値を示す値に学習補正される。
【0067】
その結果、本実施の形態によれば、サンプルデータ記憶部39に入力される座標データ(Ti,Pi)が更新され、更に学習が進行するに従い、より高い平均信頼度Rj,kを有する傾き定数acと切片定数bcとが設定されるため、走行中に変速制御が繰り返し実行される都度に、変速開始点における締結圧Pcが次第に最適化され、良好な変速制御性、及びスリップロックアップ性能を得ることができる。
【0068】
この場合、生産ラインにおいては、車両毎に変速時の締結圧特性を調べる必要がなため、作業効率が良くなり、生産性が向上する。
【0069】
又、変速開始点における入力トルクTiと実締結圧Piとを常時監視しているため、経時劣化に対しても自動的に対応させることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0070】
更に、サンプルデータが少ない場合であっても、実一次式(Pc=ac・Ti+bc)の傾き定数acと切片定数bcとが、徐々に平均信頼度Rj,kの最も高い方向へ学習補正させることができるため、外乱の影響を受け難く、強い安定指向性を得ることができる。
【0071】
又、システムの適合に使用する車両は1台でよいため、適合および変速品質の確認に要するコストを低減することができる。
【0072】
又、従来のように、次々と入力されるサンプルデータに基づいて最小二乗法により一次式の傾きと切片とを求めるものではなく、一次式(Pc=ac・Ti+bc)の傾き定数acと切片定数bcとを微少量±δa,±δbだけ移動させたときの平均信頼度Rj,kの最も高い値を示す傾き定数acと切片定数bcとを選択し、この傾き定数acと切片定数bcとを有する一次式(Pc=ac・Ti+bc)に基づいて、目標締結圧Pcを設定するようにしたので、少ないメモリ容量およびCPU負荷での演算が可能となる。
【0073】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限るものではなく、例えば、平均信頼度Rj,kが同値となる組み合わせが複数算出された場合は、予め設定されている優先順位に従って1つの組み合わせを選択するようにしても良い。
【0074】
又、補正定数記憶部41に格納されている傾き定数acと切片定数bcとに上下限リミッタを設定するようにしても良い。
【0075】
更に、基本一次式(Po=a・Ti+b)に対する補正量γ(=(ac/a)・(Po−b)+bc)に反映係数(重み)kを掛けることで、学習した補正値を反映させる割合を任意に設定できるようにしても良い。
【0076】
Pc=(1−k)po+k・γ
=(1−k)・Po+k・{(ac/a)・(Po−b)+bc}
【0077】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、生産ラインにおける作業効率を低下させことなく、自動変速機の変速動作の際の締結圧特性を補正して、入力トルクに対応した最適な締結圧を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動変速機付きエンジンの概略図
【図2】自動変速機の動力伝達列を示す模式図
【図3】トランスミッション制御装置の油圧制御機能を示すのブロック図
【図4】サンプルデータ記憶部の説明図
【図5】サンプリングした座標データと一次式との関係を示す説明図
【図6】アップシフト時の実締結圧の変化特性を示す説明図
【図7】(a)基本モデルの確率密度関数を示す説明図、(b)基本モデルの確率密度関数と実モデルの確率密度関数とを示す説明図、(c)別態様による基本モデルの確率密度関数と実モデルの確率密度関数とを示す説明図
【図8】(a)基本一次式に対して切片のみを補正した実一次式の説明図、(b)基本一次式に対して傾きのみを補正した実一次式の説明図
【符号の説明】
2 自動変速機
13 変速機
19 リバースクラッチ(摩擦締結要素)
20 2&4ブレーキ(摩擦締結要素)
23 ロークラッチ(摩擦締結要素)
24 ローワンウェイクラッチ(摩擦締結要素)
25 L&Rブレーキ(摩擦締結要素)
26 ロックアップクラッチ(摩擦締結要素)
39 サンプルデータ記憶部
41 補正定数記憶部
a,ac 傾き定数
Aj 傾き補正定数
b,bc 切片定数
Bk 切片補正定数
Rj,k 平均信頼度
R(μq,σq) 平均信頼度関数
Ti 入力トルク
yc 目標締結圧(目標作動圧)
δ 誤差

Claims (5)

  1. 傾き定数と切片定数とで構成された一次式に基づいて、変速開始点における入力トルクに対応する変速機に設けられている摩擦締結要素の目標作動圧を設定する自動変速機の油圧制御装置において、
    上記変速開始点で検出した入力トルクと上記摩擦締結要素に作用する実作動圧とを記憶するサンプルデータ記憶部と、
    上記入力トルクと上記実作動圧との関係から平均信頼度の最も高い値を示す上記傾き定数と上記切片定数とを記憶する補正定数記憶部と、
    上記補正定数記憶部に記憶されている上記傾き定数と上記切片定数とに基づき該傾き定数と該切片定数とを微少量移動させて複数の傾き補正定数と切片補正定数とを算出し、該各傾き補正定数と該各切片補正定数との組み合わせで設定される一次式の変数として上記サンプルデータ記憶部に記憶されている入力トルクを代入して算出される値を、該サンプルデータ記憶部に記憶されている実作動圧から減算して誤差を算出し、該誤差の平均値と分散値とから上記傾き補正定数と上記切片補正定数との組み合わせ毎に平均信頼度を算出する補正定数算出部とを備え、
    上記補正定数記憶部は、上記補正定数算出部で算出した、各組み合わせ毎の平均信頼度から、最も大きい平均信頼度を示す傾き補正定数と切片補正定数とを選択し、該傾き補正定数と該切片補正定数とで上記傾き定数と上記切片定数とを更新することを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
  2. 上記平均信頼度は、上記実作動圧と上記一次式に基づいて算出した目標作動圧との誤差の頻度分布に基づいて設定される平均値と分散値とをパラメータとして、該平均値と該分散値とが共に小さい値を示すとき大きな値を得ることのできる平均信頼度関数に基づいて算出することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
  3. 上記サンプルデータ記憶部のデータ格納領域が上記入力トルクの大きさに応じて複数のブロックに区分されており、各ブロックに該入力トルクと実締結圧とで示される座標データが設定個数ずつ格納されることを特徴とする請求項1或いは2記載の自動変速機の油圧制御装置。
  4. 上記平均信頼度が同値となる組み合わせが複数存在する場合は、予め設定されている優先順位に従って1つの組み合わせを選択することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動変速機の油圧制御装置。
  5. 上記補正定数記憶部に記憶されている上記傾き定数と上記切片定数とに上下限リミッタが設定されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動変速機の油圧制御装置。
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