JP4196608B2 - 着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば産業機械部品、事務・理化学用品、生体用材料、医療用具等に好適に使用される着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来2〜3モル%のイットリア(Y2O3)を安定化剤として含む正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)は、汎用材料であるアルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素等に比較し、高強度で且つ高靱性であるといった優れた機械的特性を有するため、光コネクタフェルール、粉砕メディア、種々の刃物類、スポーツレジャー用品等に至るまで幅広く実用に供されている。
【0003】
また近年、疾病、災害などにより手足の関節機能が失われた場合に、これらを修復するために用いられている人工関節に摺動部材、あるいは老齢、疾病等によって失われた歯牙を再建するために用いられる人工歯根、アパットメント、クラウン等の生体用材料への応用も徐々に進んできている。
【0004】
しかしながら、従来のイットリア系正方晶ジルコニア(Y−TZP)は、比較的低温域(200〜300℃)において、準安定相である正方晶が単斜晶へ相転移するものであり、この相転移時には約4.6%の体積膨張が生じて内部クラックが発生しやすく、著しい強度劣化を引き起こす原因となっていることが指摘されている(以下、この相転移による劣化を「低温劣化」という)。また加えて、水分を含む湿潤環境下では、さらに相転移が加速されることも周知の事実である。
【0005】
Y−TZPは、3価のYイオンが4価のZrイオンの8配位の位置に侵入型に固溶しているため、価数の相違により、ジルコニア側に酸素欠陥が生じ、これが低温劣化を引き起こす本質的な原因になっているものと解釈されている。
【0006】
近年、焼結体の結晶粒径を約0.5μm以下に制御することにより低温劣化を抑制しようとする試みがなされているが、Y−TZPを200〜300℃の湿潤環境下に曝露した場合には容易に相転移が起こる点、或いは環境温度が約37℃と低温であっても常に湿潤環境下にある生体内では徐々に相転移が起こることが危惧され、生体材料への応用に対して慎重に対処せざるを得ない状況となっている。
【0007】
これに対して、セリア(CeO2)を安定化剤として含む正方晶ジルコニア多結晶体(Ce−TZP)は、Y−TZPとは異なり、安定化剤であるセリア(CeO2)が4価のCeイオンとしてジルコニアに固溶し、酸素欠陥が生じないため、結晶学的に低温劣化を起こさない材料であることが多くの実験データから裏付けられている。加えて、セラミックスとしては他に類を見ないほど高い靱性値を有していることも知られている。
【0008】
しかし、Ce−TZPはY−TZPに比べて、強度及び硬度が著しく低いため、従来は全く実用化されていないのが実情であった。
【0009】
一方、アクセサリー等の装飾品、あるいは刃物類、スポーツレジャー用品等においても嗜好性が求められる分野においては、ジルコニア結晶体に赤色、青色、黄色あるいは黒色に着色させたものが要求されるようになってきた。さらに、人工歯、クラウン等の生体に適用する分野においては、天然歯と同一の質感を有するカラーバリエーションを持ち、かつ審美性に優れた着色ジルコニアが強く求められている。
【0010】
このような要求に対して、ジルコニアに希土類金属、あるいは遷移金属などの酸化物を混合添加し焼結することにより、好みの色調を付与した種々の着色ジルコニアが開発されてきた。例えば特開平6−199098号公報には、イットリアを3モル%含むジルコニアに、着色剤を0.05重量%含ませた系において、ジルコニアの色調と各種着色剤の種類として、オレンジ色(CeO2)からオリーブ色(Cr2O3)、ライラック(Co2O3,Nd2O3)、黄色(CuO,Fe2O3,NiO,TiO2)、ピンク色(Er2O3,Eu2O3,Ho2O3)、茶色(MnO2)、アンバー色(Pr2O3)、緑色(Tm2O3,V2O3)に至るまで、幅広く開示されている。また特開平8−310860号公報では、黒色ジルコニア焼結体が、さらに、特開平8−33650号公報では、審美性が要求される分野として、ジルコニア製歯列矯正用ブラケットが開示されている。
【0011】
しかしこれらの着色ジルコニアは、いずれも安定化剤としてイットリアを主体として含む正方晶ジルコニア多結晶体(Y−TZP)、あるいはそれをベースとした複合結晶体であり、本質的に前記の低温劣化に関わる諸問題を抱えているために、実用上何らかの制限が加わるのが実情であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、十分な機械的特性を有し、且つ低温劣化を示さない優れた着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法は、少なくともセリアを安定化剤として含む、主として正方晶ジルコニアからなる第一相と、アルミナ粒子からなる第二相とが分散してなるジルコニア系複合セラミック焼結体であって、着色成分元素として、周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を、第二相中に含有して成る着色ジルコニア系セラミック焼結体の製造方法であって、少なくともセリアを安定化剤として含む正方晶ジルコニアからなる第一の原料成分と、アルミナ粉末中に周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有させた第二の原料成分とを混合し、所望の形状に成形した後、酸素含有雰囲気下で焼成するものである。この製造方法では、アルミナ粉末に対して、Cr、Fe、Coから選ばれる少なくとも一種の着色成分元素又はその化合物を混合して調製してなる予備調合粉末であって、この予備調合粉末全体に対する着色成分元素又はその化合物の酸化物換算での配合量がCr 2 O 3 0.01〜20モル%、Fe 2 O 3 0.01〜20モル%、CoO0.01〜15モル%のうちの、少なくともいずれかを満たすと共にこれらの酸化物換算での配合量の合計が0.01〜20モル%となるように混合した予備調合粉末を調製し、この予備調合粉末を酸素含有雰囲気下で500〜1000℃の温度範囲で加熱処理したものを、前記第二の原料成分として用いる。
【0020】
また請求項2の発明は、請求項1において、Cr2O3、Fe2O3、CoOから選ばれた少なくとも一種の金属酸化物粉末をアルミナ粉末と混合することにより予備調合粉末を調製することを特徴とするものである。
【0021】
また請求項3の発明は、請求項1において、3価のCr、3価のFe、又は2価のCoを含む金属塩、有機金属錯体、金属アルコキシドから選ばれた少なくとも一種の酸化物前駆体を有機溶媒に溶解し、アルミナ粉末と混合した後、溶媒を除去することにより予備調合粉末を調製することを特徴とするものである。
【0022】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、セリアを8〜12モル%含有するセリア系正方晶ジルコニア粉末を第一の原料成分とすると共に第一の原料成分の比表面積を5〜20m2g-1とし、第二の原料成分の平均粒径を0.1〜0.3μmとすることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、第一の原料成分と第二の原料成分とを混合・成形したものを焼成した後、その焼成温度以下の温度であり、且つ1000℃以上の温度条件で、酸素含有雰囲気下、アニール処理を施すことを特徴とするものである。
【0024】
また請求項6の発明は、請求項5において、アニール処理として、酸素含有雰囲気下、熱間静水加圧を施すことを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
まず本発明の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体を構成する各相並びに複合セラミック焼結体の構成について説明し、その後に着色成分及び添加形態について説明する。
【0027】
本発明の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体は、主として正方晶ジルコニアからなる第一相の結晶粒子と、主としてアルミナからなる第二相の結晶粒子とが分散して構成される。
【0028】
正方晶ジルコニアからなる第一相の結晶粒子は、少なくともセリアを安定化剤として含むことが必須である。セリアは、前述したように正方晶ジルコニアの安定化剤として作用すると共に、結晶学的にジルコニアの低温劣化を抑制する上で、極めて重要である。第一相中の正方晶の割合は、第一相全体に対して90体積%以上となるようにすることが好ましい。
【0029】
第一相中でのセリアの含有量は特に限定されないが、例えば第一相の全量に対して好ましくは8〜12モル%、より好ましくは10〜12モル%である。この含有量が過少であると準安定相である正方晶化が不充分となって単斜晶が支配的に多くなり、焼結した後に割れたり、マイクロクラックが内在したりするおそれがあり、強度劣化を示すおそれがある。またこの含有量が過剰であると、高温安定相である立方晶が出現し始め、正方晶量が90体積%未満となり、十分な強度、靱性が得られなくなるおそれがある。
【0030】
なお、第一相中には、ジルコニア及び安定化剤としてのセリアの他に、マグネシア、カルシア、あるいはイットリア等の他の安定化剤を含有させても良く、またその他の微量の不純物が更に含まれていても良い。他の不純物が含まれる場合には、その含有量は第一相の全量に対して0.5モル%以下であることが望ましい。
【0031】
またアルミナからなる第二相の結晶粒子中には、着色成分元素が含有される。
【0032】
着色成分元素としては、周期律表における6族(旧6a族)並びに8〜10族(旧8族)に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素のみを用いることが好ましい。また添加形態としては、主に第二相を構成するアルミナ粒子に固溶させる形で含有させ、第一相中には固溶させないようにすることが好ましい。
【0033】
ここで、従来の一般的なジルコニアの着色方法としては、無機の着色剤を添加して焼結する方法、あるいはジルコニアに希土類金属、あるいは遷移金属などの酸化物を混合添加して焼結する方法が知られている。このとき、無機の着色剤の添加は、所望の色調を得るためには、通常数十重量%以上の添加が必要となり、ジルコニアの持つ優れた機械的性能(高強度、高靱性)を損なうことが多い。またこれに対して、f軌道に空席をもつ希土類イオン、あるいはd軌道に空席があってエネルギー準位が配位子場の影響により分裂する遷移金属イオンの添加は、無機顔料の添加に比べれば微量でジルコニアを発色させることが可能であるが、ジルコニアに各種金属イオンを固溶させることによって、光の吸収域を制御して発光させるものであったので、上記金属イオンのジルコニアへの固溶が正方晶の安定化を阻害させる要因となり、機械的性質に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0034】
これに対して、本発明では着色成分として、主として第二相を構成するアルミナに優先的に固溶すると共に、好ましくは第一相を構成するジルコニアには実質的には固溶しないものを用いることにより、ジルコニアのもつ優れた機械的特性(高強度、高靱性)を維持しつつ、多種類の色調を付加することが可能となる。ここで、第一相中に不可避的に微少量の着色成分元素が固溶する場合が考えられるが、この場合でも、第一相中の着色成分元素の固溶量が、酸化物換算で0.01モル未満となるようにすることが好ましい。
【0035】
前記観点より、着色成分としては、特に周期律表6族に属する元素としてCr、8〜10族に属する元素としてFe、Coを用いることが好ましい。またこれらの元素の添加量は、前記着色成分元素の酸化物換算で、第二相全量に対して、Cr2O3が0.01〜20モル%、Fe2O3が0.01〜20モル%、或いはCoOが0.01〜15モル%となるように、少なくとも一種以上配合することが好ましく、このとき着色成分元素の添加量の合計が0.01〜20モル%の範囲となるようにすることが好ましい。各着色成分元素のより好ましい添加量はそれぞれ0.05〜8モル%であり、更に好ましい添加量はそれぞれ0.05〜1モル%である。また着色成分元素の添加量の合計の、より好ましい範囲は0.05〜8モル%であり、更に好ましい範囲は0.05〜1モル%である。着色成分元素の添加量が過少であると、十分な着色効果が得られにくくなり、この添加量が過剰であると着色成分元素をアルミナ中に固溶させることが困難となってくる。
【0036】
また本発明に係る着色ジルコニア系複合セラミック焼結体は、アルミナからなる第二相のうち、数十ナノメートルサイズの極めて微細な結晶粒子からなるものが、第一相を構成する結晶粒子内に分散した、いわゆる「ナノ複合化組織」を形成していることが好ましく、これによりジルコニア系複合セラミック焼結体の強度、硬度が飛躍的に改善される。
【0037】
より詳しく説明すると、正方晶ジルコニアからなる第一相の結晶粒子内に取り込まれた、アルミナからなる第二相の微細な結晶粒子は、第一相の結晶粒子内に熱膨張差に起因する局所的な残留応力場を形成し、正方晶から単斜晶へ応力誘起相転移する臨界応力の増大をもたらすこと、及び第一相の結晶粒子内に転移及び転移がパイルアップしたサブグレインバインダリーを形成し、第一相の結晶粒子を仮想的に細分化することにより、高強度化に有効に寄与する。その結果、セリア系ジルコニア(Ce−TZP)の欠点である低強度及び低硬度を、イットリア系ジルコニア(Y−TZP)に匹敵するレベルまで改善し、且つY−TZPの3倍以上の高い靱性を兼ね備えた強靱なジルコニア系セラミックスの実現が可能となる。
【0038】
なお、第一相を構成する粒子内に分散して存在する第二相の粒子は、着色ジルコニア系複合セラミック焼結体中の第二相の結晶粒子の全数量に対して、好ましくは2数量%以上となるようにするものであり、その割合は、多ければ多いほど好ましい。
【0039】
ここで、ジルコニア粒子の粒成長を促進させる効果を有するチタニアを第一相中に固溶させて含有させてもよい。この場合、焼結過程において、より多くの第二相の粒子を第一相内に分散させて、ナノ複合化組織の形成を促進することができる。このとき、第一相中のチタニアの含有量は、特に限定されるわけではないが、例えば、第一相全量に対して、0.02〜4モル%の範囲に留めることが望ましく、更に好ましくは0.05〜1モル%である。チタニアの含有量が過少であるとチタニアによる十分な第一相の粒成長向上の効果が得られず、また過剰となると第一相の粒子の粗大化により、著しい強度低下をもたらすことがあるため好ましくない。
【0040】
また、着色ジルコニア系複合セラミック焼結体における、第二相の含有量は、特に限定されるわけではないが、例えば、焼結体全量に対して、好ましくは0.5〜50体積%、更に好ましくは30〜40体積とする。この第二相の含有量が0.5体積%に満たないと強度、靱性向上の効果が十分に得られにくくなり、また40体積%を超えると第二相の粒子同士が互いに焼結して、第一相の粒子内に取り込まれる第二相の粒子が減少するため、緩やかな強度、靱性の低下を示し、更に50体積%を超えると第二相がマトリックス化するため、著しい強度、靱性の低下を示すおそれがある。
【0041】
次に、本発明に係る着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法について、説明する。
【0042】
着色ジルコニア系複合セラミック焼結体は、少なくともセリアを安定化剤として含む正方晶ジルコニアからなる第一の原料成分と、アルミナからなる第二の原料成分とから形成することができる。
【0043】
第一の原料成分としては、セリアを8〜12モル%含有し、残部がジルコニアからなるセリア系正方晶ジルコニア粉末(Ce−TZP)を用いることが好ましい。またこのセリア系正方晶ジルコニア粉末には、マグネシア、カルシア、あるいはイットリア等の他の安定化剤を固溶させることもできる。また他の微量の不純物が含まれていてもよいが、その含有量は酸化物換算で0.05モル%以下であることが好ましい。また焼結体のナノ複合化組織の形成を促進するために第一相中にチタニアを含有させる場合には、第一の原料成分としてチタニアを含有したものを用いるものであり、この場合、第一の原料成分中において第一相全量に対して0.02〜4モル%の範囲でチタニアを含有させることが好ましい。
【0044】
また、第二の原料成分としては、アルミナ粉末と、着色成分原料とが用いられる。
【0045】
着色成分原料としては、周期律表6族(旧6a族)並びに8〜10族(旧8族)に属する元素から選ばれた少なくとも一種の着色成分元素、又はその化合物を挙げることができる。特にCr、Fe及びCoから選ばれた少なくとも一種の元素又はその化合物であることが好ましい。この着色成分原料としては、着色成分元素の酸化物の状態のものを用いることができ、例えばCr2O3、Fe2O3、CoOの中から選ばれる少なくとも一種の酸化物粉末を用いることができる。あるいは、3価のCr、3価のFe、又は2価のCoを含む金属塩、有機金属錯体、或いは金属アルコキシドから選ばれた少なくとも一種の酸化物前駆体を用いることもできる。
【0046】
上記のような第一の原料成分及び第二の原料成分を混合して、混合原料を調製する。このとき第二の原料成分は、アルミナ粉末と着色成分原料とを別個に混合原料中に配合することができる。
【0047】
またより好ましくは、第二の原料成分として、アルミナ粉末中に、着色成分元素が含有したものを用いるものであり、この場合には、焼成により焼結体を得る際に、アルミナに対する着色成分元素の優先的な固溶を促進することができ、またジルコニアからなる第一相の周囲に着色成分原料が残存するなどにより良好な発色が阻害されることを防止することができる。
【0048】
また、第二の原料成分として、着色成分元素を含有する着色成分原料をアルミナ粉末と混合して得られる予備調合粉末を焼成することにより得られるものを用いるものである。この場合、焼成による焼結体の形成前に、予めアルミナ中に着色成分元素を優先的に固溶させることができて、焼結体中の着色成分原料の残存を更に効果的に防止することができる。
【0049】
予備調合粉末の調製時には、前記のような着色成分原料を有機溶媒中に分散又は溶解させた後、アルミナ粉末と混合し、これから有機溶媒を除去することにより、予備調合粉末を得ることができる。また予備調合粉末の焼成は、大気中等の酸素含有雰囲気下、500〜1000℃の温度範囲で加熱処理する。この処理を施すことにより、着色成分元素のイオンをアルミナ中に優先的に固溶させることができる。
【0050】
このようにして得られる第二の原料成分中には、所望の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体中の第二相の組成と同一組成で、着色成分元素を含有させる。着色成分元素としてCr、Fe、Coのうちの少なくとも一種を含有させる場合には、これらの着色成分元素を酸化物に換算した際に、第二の原料成分中に、第二の原料成分の全量に対して、Cr2O3が0.01〜20モル%、Fe2O3が0.01〜20モル%、或いはCoOが0.01〜15モル%となるように、少なくとも一種以上配合する。このとき着色成分元素の添加量の合計が0.01〜20モル%の範囲となるようにする。各着色成分元素のより好ましい添加量はそれぞれ0.05〜8モル%であり、更に好ましい添加量はそれぞれ0.05〜1モル%である。また着色成分元素の添加量の合計の、より好ましい範囲は0.05〜8モル%であり、更に好ましい範囲は0.05〜1モル%である。着色成分元素の添加量が過少であると、十分な着色効果が得られにくくなり、この添加量が過剰であると着色成分元素をアルミナ中に固溶させることが困難となってくる。
【0051】
また第一の原料成分として、セリアを8〜12モル%含有し、残部がジルコニアからなる比表面積が5〜20m2g−1のものを用いると共に、第二の原料成分として平均粒径が0.1〜0.3μmのものを用いることが好ましい。このような組み合わせの原料成分を用いると、焼結過程において、第一の原料成分から形成される第一相中に、第二の原料成分から形成される第二相が取り込まれやすくなり、より多くの第二相の結晶粒子を第一相内に分散させて、ナノ複合化組織の形成を促進することができる。
【0052】
第一の原料成分と第二の原料成分とは、所望の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体における第一相と第二相との割合と合致する配合割合で混合されるものであり、好ましくは第一の原料成分と第二の原料成分との総量に対して、第二の原料成分の割合が0.5〜50体積%、更に好ましくは30〜40体積%となるように配合する。
【0053】
次いで、このようにして得られる第一の原料成分と第二の原料成分との混合粉末を、加圧成形等により所望の形状に形成した後、焼成する。焼成条件は特に制限されないが、大気中等の酸素含有雰囲気下で、1400〜1550℃の温度範囲で3〜5時間焼成を行うことが好ましい。このときの焼成温度が1400℃に満たないと緻密な焼結体を得ることが困難となって、焼結体に十分な強度を付与することが困難となり、また焼成温度が1550℃を超えると、第一相及び第二相の結晶粒子が過剰に成長して強度の低下を招くおそれがある。このとき、焼成により、相対密度、すなわち焼結体を構成する各成分の組成比に基づいて導出される理論密度に対する、実際の焼結体の密度の百分率が、99%以上となるように焼結体を形成することが可能となる。
【0054】
また、このようにして得られる焼結体に対して、更にトランスルーセント(半透明性)を付与する処理を施すことが好ましいものであり、この場合、得られる着色ジルコニア系複合セラミック焼結体を、種々のカラーバリエーションと審美性とが要求されるクラウン等に適用する場合に好適である。
【0055】
ここで、一般にアルミナやジルコニアは、特定波長域に吸収端を持たないため、基本的にトランスルーセントを示す。更に、これらのセラミックスは、多結晶粒界の整合性を高めて光の散乱を抑制し、あるいは光の散乱源をなくした単結晶とすることにより、透明性を付与することも可能である。その代表的な例が、前者としてキュービックジルコニア、後者としてサファイアが挙げられる。これに対して、本発明に係る着色ジルコニア系複合セラミック焼結体は、各種金属イオンを固溶させることによって、光の吸収域を制御し、発色させる原理であるため、トランスルーセントの発現に対してはマイナスに作用する。従って、トランスルーセントを付与するためには、複合焼結体の粒界の整合性を高め、粒界での光散乱を抑制することが重要な要素となる。
【0056】
本発明におけるトランスルーセントを付与する処理としては、特に制限されないが、アニール処理を施すことにより焼結体中の粒界の整合性を高める方法があげられる。また、焼結体のアニール処理としては、特に酸素含有雰囲気下、熱間静水圧加圧(HIP)を施すことが、有効な手段としてあげられる。熱間静水圧加圧(HIP)を行う場合には、処理中の雰囲気は特に制限されるものではないが、アルゴン等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることができ、このとき混合ガス全量に対する酸素ガス濃度が5体積%であることが好ましい。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0058】
〈参考例1〜3〉
平均粒径0.2μmのアルミナ粉末(以下、単に「Al2O3」と表記する)に対し、着色成分として、Cr(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O又はCo(NO3)2・6H2Oの各硝酸塩を配合し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した。このとき各硝酸塩は、Al2O3と着色成分の総量に対する酸化物換算(Cr2O3、Fe2O3、CoO)でのモル分率が、表1に示す割合となるように添加した。
【0059】
次いで、乾燥した粉末をφ20mmの金型を用いて、20MPaの条件下一軸加圧成形し、更に145MPaの条件下でCIP(冷間静水圧加圧)成形して、タブレット状の成形体を得た。
【0060】
次いで、各成形体を大気中で1440℃で4時間焼成し、焼結体を得た。
【0061】
〈参考例4〜6〉
安定化剤としてCeOを10モル%含む、比表面積15m2g-1の正方晶ジルコニア粉末(以下、「Ce−TZP」と表記する)と、Al2O3と、着色成分として、Cr(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O又はCo(NO3)2・6H2Oの各硝酸塩とを配合し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した。このとき各硝酸塩は、Al2O3と着色成分の総量に対する酸化物換算(Cr2O3、Fe2O3、CoO)でのモル分率が表1に示す割合となるようにし、またAl2O3と着色成分の配合量は、得られる焼結体全量に対するAl2O3と着色成分との固溶体の体積分率が30体積%となるようにした。
【0062】
次いで、乾燥した粉末を、参考例1〜3の場合と同様に成形・焼成し、焼結体を得た。
【0063】
〈比較例1〜3〉
Ce−TZPに、着色成分として、Cr(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O又はCo(NO3)2・6H2Oの各硝酸塩を配合し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した。このとき、各硝酸塩は、Ce−TZPと着色成分の総量に対する酸化物換算(Cr2O3、Fe2O3、CoO)でのモル分率が表1に示す割合となるようにした。
【0064】
次いで、乾燥した粉末を、参考例1〜3の場合と同様に成形・焼成し、焼結体を得た。
【0065】
〈評価〉
このようにして得られる各参考例及び比較例の焼結体は、いずれも焼結体中の構成成分の組成比から導出される理論密度に対して、相対密度が99%以上となった緻密なものであり、参考例4〜6におけるジルコニアからなる第一相の結晶粒子、及び比較例1〜3では、焼結体中のジルコニアからなる第一相の結晶粒子は、X線回折により正方晶−単斜晶−立方晶の相同定を行った結果、単斜晶が5体積%以下となる、ほぼ正方晶が主相となるものであった。
【0066】
また各参考例及び比較例について、目視にて外観調査し、色調を評価した。この結果を表1にまとめて示す。この結果によると、Al2O3に対して着色成分を添加した参考例1〜3と、Ce−TZP、Al2O3及び着色成分を配合した参考例4〜6とでは、クロムを添加した場合には総じてピンク色に、鉄を添加した場合は総じて黄色に、コバルトを添加した場合は総じてブルー色にそれぞれ着色した焼結体が得られた。但し、参考例4〜6の焼結体の色調は、参考例1〜3と比較して暗色がかった色を呈した。
【0067】
これに対して、Ce−TZPに着色成分を添加した比較例1〜3では、いずれも焼結体は灰黒色を呈し、参考例1〜3の焼結体とは著しく異なる様相を示した。
【0068】
また、各参考例及び比較例の焼結体中における、着色成分元素の固溶の有無を、X線回折測定により導出される格子定数に基づき評価した。これによると、参考例1〜6では、測定されたアルミナの結晶に基づく回折ピークから導出される格子定数は、純粋なアルミナの場合よりも増大していた。ここで、Cr3+イオンのイオン半径は0.82Å、Fe3+イオンのイオン半径は0.67Å、Co2+イオンのイオン半径は0.82Åであり、いずれもAl3+イオンのイオン半径0.57Åと比較して大きいものであり、従ってアルミナの格子定数の増大はアルミナ中にこれらの着色成分元素が固溶したためと考えられる。これに対して、参考例4〜6及び比較例1〜3においては、ジルコニアの結晶に基づく回折ピークから導出される格子定数は、原料として用いたCe−TZPの格子定数と比べて変化が認められず、着色成分元素の固溶は認められなかった。
【0069】
従って、比較例1〜3の焼結体がいずれも灰黒色を示したのは、着色成分として添加した各硝酸塩粉末の色を反映したものであり、各種金属イオンの固溶による発色は一切生じていないことが明らかとなった。
【0070】
また参考例4〜6の焼結体が、参考例1〜3に比べていずれも暗色がかった色となったのは、焼結時にCe−TZP粒子周辺に存在した金属イオンがCe−TZP中に固溶せずに硝酸塩の状態で残存し、この硝酸塩の色が反映されることとなったためと考えられる。
【0071】
以上の結果により、着色成分であるCr、Fe、及びCoは、優先的にアルミナのみに固溶し、ジルコニアには固溶しないことが、焼結後の色調観察及びX線回折による格子定数の導出により、確認された。
【0072】
【表1】
【0073】
〈実施例4〜16〉
Al2O3に対し、着色成分として、Cr(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2O及びCo(NO3)2・6H2Oの各硝酸塩のうち二種又は三種を、Al2O3と着色成分の合計量に対する酸化物換算(Cr2O3、Fe2O3、CoO)でのモル分率が表2に示す割合となるように添加し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した後、乾燥して、予備調合粉末を調製した。
【0074】
この予備調合粉末を、大気中で800℃で1時間焼成し、第二の原料成分を得た。
【0075】
また第一の原料成分として、比表面積15m2g−1のCe−TZPを用いた。
【0076】
そして、第一の原料成分と第二の原料成分の合計に対する第二の原料成分の体積分率が30体積%となるようにこの二種の粉末を配合し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した。
【0077】
次いで、乾燥した粉末をφ20mmの金型を用いて、20MPaの条件下一軸加圧成形し、更に147MPaの条件下でCIP(冷間静水圧加圧)成形して、タブレット状の成形体を得た。
【0078】
次いで、各成形体を大気中で1440℃で4時間焼成し、焼結体を得た。
【0079】
〈評価〉
このようにして得られる各実施例の焼結体は、いずれも相対密度が99%以上となった緻密なものであり、また焼結体中のジルコニアからなる第一相の結晶粒子は、X線回折により正方晶−単斜晶−立方晶の相同定を行った結果、単斜晶が1体積%以下となる、ほぼ正方晶が主相となるものであった。
【0080】
また各実施例について、目視にて外観調査し、色調を評価した。この結果を表2にまとめて示す。この結果によると、実施例4〜12のように、着色成分であるCr、Fe、及びCoイオンをアルミナ中に二元系で固溶させると、それぞれの単独色を補間する色調が得られることが明らかとなった。またこのとき実施例1〜3の場合のような暗色がかった色は見受けられず、極めてクリアーなものであった。これは、予め着色成分をアルミナ粉末に固溶させた第二の原料成分を調製したことから、着色成分元素のアルミナへの固溶が促進されると共に、焼結体中に固溶されていない着色成分の残存が生じなかったためと考えられる。また実施例13〜16のように、着色成分を三元系で固溶させてより光の吸収端をより多くすることにより、灰黒色系の色調を得ることも可能であることが確認された。
【0081】
また、各実施例の焼結体中における、着色成分元素の固溶の有無を、実施例1〜3等の場合と同様にX線回折測定により導出される格子定数に基づき評価した。これによると、アルミナ中への着色成分元素の固溶が確認されると共に、ジルコニアに対する着色成分元素の固溶は認められなかった。
【0082】
以上の結果により、着色成分であるCr、Fe、及びCoは、優先的にアルミナのみに固溶し、ジルコニアには固溶しないことが確認された。また、予め着色成分をアルミナ粉末に固溶させた第二の原料成分を調製したことから、着色成分元素のアルミナへの固溶を促進すると共に、焼結体中における着色成分の残存が抑制されることが確認された。
【0083】
【表2】
【0084】
〈実施例17〜19〉
Al2O3に対し、着色成分として、Cr(NO3)3・9H2O、Fe(NO3)3・9H2Oの各硝酸塩のうちの一種を、Al2O3と着色成分との合計量に対する酸化物換算(Cr2O3、Fe2O3)でのモル分率が表3に示す割合となるように添加し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した後、乾燥して、予備調合粉末を調製した。
【0085】
この予備調合粉末を、大気中で800℃で1時間焼成し、第二の原料成分を得た。
【0086】
また第一の原料成分として、比表面積15m2g−1のCe−TZPを用いた。
【0087】
そして、第一の原料成分と第二の原料成分の合計に対する第二の原料成分の体積分率が30体積%となるようにこの二種の粉末を配合し、エタノール溶媒中24時間湿式ボールミル混合した。
【0088】
次いで、乾燥した粉末をφ68mmの金型を用いて、7MPaの条件下一軸加圧成形し、更に147MPaの条件下でCIP(冷間静水圧加圧)成形して、タブレット状の成形体を得た。
【0089】
次いで、各成形体を大気中で1440℃で4時間焼成し、焼結体を得た。
【0090】
〈比較例4〉
着色成分を配合しないこと以外は、実施例17〜19と同様にして、焼結体を得た。
【0091】
〈評価〉
このようにして得られた各焼結体は、いずれも相対密度が99%以上の緻密なものであった。
【0092】
また、各実施例及び比較例について、目視にて外観調査し、色調を評価した。この結果を表3にまとめて示す。
【0093】
また、各実施例及び比較例について、成形された直径50mm、厚み5mmの焼結体から、ダイヤモンドブレードにて3mm×4mm×40mmの角柱状試料を5枚切りだし、機械的特性評価用サンプルとした。尚、試料の稜線には、C0.1mmの面取りを施し、側面は600〜800番のダイヤモンド砥石にて研磨した。また曲げ強度の試験時には、サンプルの引っ張り面を、最終ダイヤモンドペーストにて鏡面仕上げを施すようにした。
【0094】
このようなサンプルを用い、下部スパン30mm、クロスヘッドスピード0.5mm/min、の条件下、3点曲げ試験を行い、曲げ強度を求めた。
【0095】
また、サンプル鏡面に、加重490N(50kgf)、保持時間15秒の条件下で、ビッカース圧子を打痕し、IF法により破壊靱性値を測定した。
【0096】
尚、破壊靱性値は、ビッカース圧子の押し込みにより生じたクラックの長さと圧痕の大きさを測定し、下記に示すpalmqvist型クラックに対応した、下記のNiiharaの式を用いて算出した。
【0097】
KIC=0.018Hv・a1/2・(l/a)1/2・(Hv/E)−2/5
KIC:破壊靱性値
Hv:ビッカース硬度
a:ビッカース圧痕の対角線の1/2の長さ
l:l=c−a
c:ビッカース圧痕から延びたクラックの長さ
E:ヤング率(弾性率)
これらの結果も、表3にまとめて示す。この結果によれば、実施例17〜19は、着色成分を用いていない比較例4と遜色のない機械的特性を有し、着色成分を用いても機械的強度が劣化しないことが確認された。これにより、着色成分を正方晶ジルコニアからなる第一相には固溶させずに、アルミナからなる第二相に優先的に固溶させることにより、機械的性質を維持しつつ、多種類の色調を付加することが可能であることが確認された。
【0098】
また、これらの焼結体の微細組織を、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により観察した結果、いずれの焼結体においても、第二相の結晶粒子のうち、数十から数百ナノメートルサイズの極めて微細な第二相の結晶粒子の一部が、第一相の結晶粒子内に分散した、いわゆる「ナノ複合化組織」を有していることが確認された。
【0099】
また実施例17〜19の場合と、比較例4の場合とでは、同様のナノ複合化組織が形成されており、着色成分を用いた場合でも微細組織に対する悪影響が認められず、着色成分を用いない場合と同様のナノ複合化組織が維持されることが確認された。
【0100】
【表3】
【0101】
〈実施例20〉
実施例18と同様にして焼結体を形成した後、大気中で1340℃で3時間処理し、その後1000℃まで0.5℃/minの降温速度で降温するアニール処理を施した。
【0102】
〈実施例21〉
実施例18と同様にして焼結体を形成した後、アルゴンガス/酸素の体積比が90/10の酸素含有混合ガス雰囲気下で、熱間静水圧加圧(HIP)により、1.5MPaの条件で1300℃で3時間処理し、その後100℃まで0.5℃/minの降温速度で降温するアニール処理を施した。
【0103】
〈評価〉
実施例20,21について、既述と同様の色調評価及び機械的特性評価を行った。この結果を、実施例18の結果と併せて、表4に示すと、アニール処理を施した実施例20,21では、同一組成でアニール処理を施していない実施例18と比べると、1〜2割程度の曲げ強度の改善が認められ、特に熱間静水圧加圧によるアニール処理で大きな改善が認められた。
【0104】
また、これらの焼結体の微細組織を、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡により観察した結果、アニール処理を施した実施例18と比べて、実施例20,21ではアニール処理を施したことによる結晶粒子の粒成長は認められなかった。
【0105】
この結果により、アニール処理を施した実施例20,21では、粒界における結晶性が高められて粒界界面での結晶方位の整合性が改善され、これにより焼結体の強度が向上したものと推察される。
【0106】
また各実施例について、焼結体を厚み0.2mmに薄片化し、可視光の透過度合いを目視観察することによりトランスルーセントを評価したところ、実施例18と比較して実施例20,21では若干の不透明性の改善が認められた。このようなトランスルーセントの改善は、アニール処理による粒界界面での整合性が向上した結果、粒界での光散乱が抑制されてもたらされたものと考えられる。
【0107】
【表4】
【0113】
【発明の効果】
請求項1に係る着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法は、少なくともセリアを安定化剤として含む、主として正方晶ジルコニアからなる第一相と、アルミナ粒子からなる第二相とが分散してなるジルコニア系複合セラミック焼結体であって、着色成分元素として、周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を、第二相中に含有して成る着色ジルコニア系セラミック焼結体の製造方法であって、少なくともセリアを安定化剤として含む正方晶ジルコニアからなる第一の原料成分と、アルミナ粉末中に周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有させた第二の原料成分とを混合し、所望の形状に成形した後、酸素含有雰囲気下で焼成するため、得られる着色された焼結体は、セリアにより正方晶ジルコニアの低温劣化が抑制されると共に、正方晶ジルコニアに対する着色成分元素の固溶を抑制して焼結体の強度劣化が抑制され、更にアルミナからなる第二相により焼結体の強度を向上し、十分な靱性と強度とを有するものであり、また焼成時には、着色成分元素が予めアルミナに含有されていることから、アルミナからなる第二相への着色成分元素の固溶が促進されると共に正方晶ジルコニアからなる第一相の周囲に着色成分元素又はその化合物が残存することにより発色の阻害を防止することができるものである。
【0114】
また、アルミナ粉末に対して、Cr、Fe、Coから選ばれる少なくとも一種の着色成分元素又はその化合物を混合して調製してなる予備調合粉末であって、この予備調合粉末全体に対する着色成分元素又はその化合物の酸化物換算での配合量がCr2O30.01〜20モル%、Fe2O30.01〜20モル%、CoO0.01〜15モル%のうちの、少なくともいずれかを満たすと共にこれらの酸化物換算での配合量の合計が0.01〜20モル%となるように混合した予備調合粉末を調製し、この予備調合粉末を酸素含有雰囲気下で500〜1000℃の温度範囲で加熱処理したものを、第二の原料成分として用いるため、着色成分元素による十分な着色の効果が得られると共に、第二相に固溶しきれない着色成分元素が生じることを防止することができるものであり、また第二の原料成分に予め着色成分元素を固溶させておくことができて、正方晶ジルコニアからなる第一相の周囲に着色成分元素又はその化合物が残存することにより発色の阻害を更に確実に防止することができるものである。
【0115】
また請求項2の発明は、請求項1において、Cr2O3、Fe2O3、CoOから選ばれた少なくとも一種の金属酸化物粉末をアルミナ粉末と混合することにより予備調合粉末を調製するため、この予備調合粉末の加熱処理により、着色成分元素が固溶された第二の原料成分を容易に得ることができるものである。
【0116】
また請求項3の発明は、請求項1において、3価のCr、3価のFe、又は2価のCoを含む金属塩、有機金属錯体、金属アルコキシドから選ばれた少なくとも一種の酸化物前駆体を有機溶媒に溶解し、アルミナ粉末と混合した後、溶媒を除去することにより予備調合粉末を調製するため、この予備調合粉末の加熱処理により、着色成分元素が固溶された第二の原料成分を容易に得ることができるものである。
【0117】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、セリアを8〜12モル%含有するセリア系正方晶ジルコニア粉末を第一の原料成分とすると共に第一の原料成分の比表面積を5〜20m2g-1とし、第二の原料成分の平均粒径を0.1〜0.3μmとするため、焼成時に第二相の結晶粒子の一部を、第一相の結晶粒子の内部に分散させて、焼結体の微細構造をいわゆる「ナノ複合化組織」とすることができて、焼結体の強度、硬度を更に向上することができるものである。
【0118】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、第一の原料成分と第二の原料成分とを混合・成形したものを焼成した後、その焼成温度以下の温度であり、且つ1000℃以上の温度条件で、酸素含有雰囲気下、アニール処理を施すため、焼結体の粒界の整合性を高め、粒界での光散乱を抑制することができて、焼結体のトランスルーセントを向上することができるものである。
【0119】
また請求項6の発明は、請求項5において、アニール処理として、酸素含有雰囲気下、熱間静水加圧を施すため、焼結体の粒界の整合性を高め、粒界での光散乱を抑制することができて、焼結体のトランスルーセントを向上することができるものである。
Claims (6)
- 少なくともセリアを安定化剤として含む、主として正方晶ジルコニアからなる第一相と、アルミナ粒子からなる第二相とが分散してなるジルコニア系複合セラミック焼結体であって、着色成分元素として、周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を、第二相中に含有して成る着色ジルコニア系セラミック焼結体の製造方法であって、
少なくともセリアを安定化剤として含む正方晶ジルコニアからなる第一の原料成分と、アルミナ粉末中に周期律表6族並びに8〜10族に属する元素から選ばれた少なくとも一種の元素を含有させた第二の原料成分とを混合し、所望の形状に成形した後、酸素含有雰囲気下で焼成するものであり、
且つ、アルミナ粉末に対して、Cr、Fe、Coから選ばれる少なくとも一種の着色成分元素又はその化合物を混合して調製してなる予備調合粉末であって、この予備調合粉末全体に対する着色成分元素又はその化合物の酸化物換算での配合量がCr 2 O 3 0.01〜20モル%、Fe 2 O 3 0.01〜20モル%、CoO0.01〜15モル%のうちの、少なくともいずれかを満たすと共にこれらの酸化物換算での配合量の合計が0.01〜20モル%となるように混合した予備調合粉末を調製し、この予備調合粉末を酸素含有雰囲気下で500〜1000℃の温度範囲で加熱処理したものを、前記第二の原料成分として用いることを特徴とする着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。 - Cr2O3、Fe2O3、CoOから選ばれた少なくとも一種の金属酸化物粉末をアルミナ粉末と混合することにより予備調合粉末を調製することを特徴とする請求項1に記載の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。
- 3価のCr、3価のFe、又は2価のCoを含む金属塩、有機金属錯体、金属アルコキシドから選ばれた少なくとも一種の酸化物前駆体を有機溶媒に溶解し、アルミナ粉末と混合した後、溶媒を除去することにより予備調合粉末を調製することを特徴とする請求項1に記載の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。
- セリアを8〜12モル%含有するセリア系正方晶ジルコニア粉末を第一の原料成分とすると共に第一の原料成分の比表面積を5〜20m2g-1とし、第二の原料成分の平均粒径を0.1〜0.3μmとすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。
- 第一の原料成分と第二の原料成分とを混合・成形したものを焼成した後、その焼成温度以下の温度であり、且つ1000℃以上の温度条件で、酸素含有雰囲気下、アニール処理を施すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。
- アニール処理として、酸素含有雰囲気下、熱間静水加圧を施すことを特徴とする請求項5に記載の着色ジルコニア系複合セラミック焼結体の製造方法。
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