本発明は、細胞のサブトラクションcDNAライブラリー(subtracted cDNA library)を作製する方法であって:a)細胞のcDNAライブラリーを作製する工程と;b)該cDNAライブラリーから二本鎖DNAを単離する工程と;c)該二本鎖DNAから二本鎖cDNA挿入物を放出する工程と;d)単離された二本鎖cDNA挿入物を変性させる工程と;e)該変性された二本鎖cDNA挿入物を、前記cDNAライブラリーから差し引くべき標識された一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせることと;f)ハイブリダイズして標識された一本鎖核酸分子を前記二本鎖cDNA挿入物から分離することにより、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する工程とを具備した方法を提供する。本発明はまた、この作製されたライブラリーの異なった用途を提供する。
本発明はまた、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。本発明は更に、単離されたメラノーマ分化遺伝子の異なった用途を提供する。
本発明は、細胞のサブトラクションcDNAライブラリー(subtracted cDNA library)を作製する方法であって:a)細胞のcDNAライブラリーを作製する工程と;b)該cDNAライブラリーから二本鎖DNAを単離する工程と;c)該二本鎖DNAから二本鎖cDNA挿入物を放出する工程と;d)単離された二本鎖cDNA挿入物を変性させる工程と;e)該変性された二本鎖cDNA挿入物を、前記cDNAライブラリーから差し引くべき標識された一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせることと;f)ハイブリダイズして標識された一本鎖核酸分子を前記二本鎖cDNA挿入物から分離することにより、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する工程とを具備した方法を提供する。
一つの態様において、前記の一本鎖核酸分子はDNAである。更なる態様において、前記の一本鎖核酸分子はビオチンで標識化される。更に別の態様において、前記の一本鎖核酸分子はビオチンで標識化され、前記の分離工程f)はストレプトアビジン−フェノール:クロロホルムを用いた抽出によって行われる。
本発明は更に、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する上記の方法であって、前記の一本鎖核酸分子が他のcDNAライブラリーに由来するものである方法を提供する。他の態様において、このcDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーである。
他の態様において、前記の一本鎖核酸分子は別のcDNAライブラリーに由来するものであり、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであり、前記細胞はIFN−βおよびMEZで処理されたHO−1メラノーマ細胞である。
他の態様において、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであり、前記細胞はIFN−βおよびMEZで処理されたHO−1メラノーマ細胞であり、前記一本鎖核酸分子はHO−1メラノーマ細胞の他のcDNAライブラリーに由来するものである。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の更に別の態様において、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであり、前記細胞は最終分化した細胞であり、前記一本鎖核酸分子は未分化細胞の他のcDNAライブラリーに由来するものである。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の更に別の態様において、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであり、前記細胞は未分化の細胞であり、前記一本鎖核酸分子は最終的に分化した細胞の他のcDNAライブラリーに由来するものである。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の一つの態様において、前記細胞は実質的に神経芽腫細胞(neuroblastoma cell)、グリア芽種多形細胞(glioblastoma multiforme cell)、骨髄性白血病細胞、乳房カルチノーマ、結腸カルチノーマ細胞、子宮内膜カルチノーマ細胞、肺カルチノーマ細胞、卵巣カルチノーマ細胞および前立腺カルチノーマ細胞からなる群から選択される。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の他の態様において、前記細胞は可逆的な増殖拘束(reversible growth arrest)またはDNA損傷を受けるように誘導されたものであり、また前記一本鎖核酸分子は非誘導細胞の他のcDNAライブラリーに由来するものである。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の更に別の態様において、前記細胞は或る一つの発生段階にあるものであり、また前記一本鎖核酸分子は異なった発生段階にある細胞から得た他のcDNAライブラリーに由来するものである。
細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する上記方法の更に別の態様において、前記細胞は癌性の細胞であり、前記一本鎖核酸分子は正常細胞から得た他のcDNAライブラリーに由来するものである。
本発明はまた、細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する方法であって:a)細胞のcDNAライブラリーを作製する工程と;b)該cDNAライブラリーから二本鎖DNAを単離する工程と;c)該二本鎖DNAから二本鎖cDNA挿入物を放出する工程と;d)単離された二本鎖cDNA挿入物を変性させる工程と;e)該変性された二本鎖cDNA挿入物を、前記cDNAライブラリーから差し引くべき標識された一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせることと;f)ハイブリダイズして標識化された一本鎖核酸分子を前記二本鎖cDNA挿入物から分離することにより、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する工程とを具備し;前記一本鎖核酸分子は他のcDNAライブラリーに由来するものであり、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであると共に、更に前記サブストラクションライブラリーを宿主細胞に導入する工程を具備した方法を提供する。
本発明は、サブストラクションライブラリーであって:a)細胞のcDNAライブラリーを作製する工程と;b)該cDNAライブラリーから二本鎖DNAを単離する工程と;c)該二本鎖DNAから二本鎖cDNA挿入物を放出する工程と;d)単離された二本鎖cDNA挿入物を変性させる工程と;e)該変性された二本鎖cDNA挿入物を、前記cDNAライブラリーから差し引くべき標識された一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせることと;f)ハイブリダイズして標識化された一本鎖核酸分子を前記二本鎖cDNA挿入物から分離することにより、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する工程とを具備した、細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する方法によって作製されたサブストラクションライブラリーを提供する。
本発明は、サブストラクションライブラリーであって:a)細胞のcDNAライブラリーを作製する工程と;b)該cDNAライブラリーから二本鎖DNAを単離する工程と;c)該二本鎖DNAから二本鎖cDNA挿入物を放出する工程と;d)単離された二本鎖cDNA挿入物を変性させる工程と;e)該変性された二本鎖cDNA挿入物を、前記cDNAライブラリーから差し引くべき標識された一本鎖核酸分子とハイブリダイズさせることと;f)ハイブリダイズして標識化された一本鎖核酸分子を前記二本鎖cDNA挿入物から分離することにより、細胞のサブトラクションcDNAライブラリーを作製する工程とを具備し;前記一本鎖核酸分子は他のcDNAライブラリーに由来するものであり、前記cDNAライブラリーはλZAP・cDNAライブラリーであり、前記細胞はIFN−βおよびMEZで処理されたHO−1メラノーマ細胞であり、前記一本鎖核酸分子はHO−1メラノーマ細胞の他のcDNAライブラリーに由来するような、細胞のサブストラクションcDNAライブラリーを作製する方法によって作製されたサブストラクションライブラリーを提供する。
本発明は、メラノーマの分化に関連した遺伝子を同定する方法であって:a)上記のサブトラクションライブラリーのクローンからプローブを作製する工程と;b)該プローブを、IFN−βおよびMEZで処理したHO−1細胞から得たの全RNAまたはmRNA、並びに未処理HO−1細胞から得た全RNAまたはmRNAとハイブリダイズさせる工程とを具備し;前記プローブが前記処理されたHO−1由来のmRNAとのハイブリダイゼーションは生じるが、前記非処理細胞由来の全RNAまたはmRNAとは全くハイブリダイゼーションを生じないか又は少ないハイブリダイゼーションしか生じないことによって、前記プローブの作製に用いたクローンがメラノーマの分化に関連した遺伝子を有していることが示される方法を提供する。
本発明は更に、細胞におけるmda−4遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッドの形成を可能とする条件下において、mda−4遺伝子の配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、前記ハイブリッドの検出によって細胞内におけるmda−4遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明はまた、細胞の組織系統(tissue lineage)を示す方法であって、上記方法を用いてmda−4遺伝子の発現を検出することを具備し、mda−4遺伝子の発現によって前記細胞の組織系統が神経外胚葉であることが示される方法を提供する。
本発明はまた、メラノーマ又は中枢神経系細胞から繊維芽細胞または上皮細胞を区別する方法であって、上記の方法を用いてmda−4遺伝子の発現を検出することを具備し、mda−4遺伝子の発現によって前記細胞がメラノーマ細胞または中枢神経系統の細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は、細胞のガンマ線照射およびUV照射によって誘起されたDNA損傷に対する応答をモニターする方法であって、特異的にハイブリダイズすることができる核酸をmda−4遺伝子の配列とハイブリダイズさせる工程を具備し、前記細胞から得た核酸のハイブリダイゼーションによって、前記細胞のDNA損傷に対する応答が存在することが示される方法を提供する。
本発明は、細胞内でシスプラチンと同様の様式で作用する化学療法剤での処理に対する応答をモニターする方法であって、前記細胞から得た核酸を、mda−4遺伝子の配列と特異的にハイブリダイズできる核酸分子とハイブリダイズさせる工程を具備し、前記細胞から得た核酸のハイブリダイゼーションによって、前記細胞が前記化学療法剤での処理に応答することが示される方法を提供する。
本発明は更に、サンプル中のI型またはII型インターフェロンを検出する方法であって、a)前記サンプルをmda−4遺伝子の5′調節要素と共に、I型およびII型インターフェロン転写調節タンパクの前記調節要素への結合を可能にする条件下でインキュベートする工程と;b)I型またはII型インターフェロン転写調節タンパクの前記調節要素への結合を検出する工程とを具備し、該結合によってI型またはII型インターフェロンの存在が示される方法を提供する。
一つの態様において、標的細胞は真核細胞である。別の態様において、前記5′調節要素は本来のmda−4遺伝子に連結され、また前記結合の検出はmda−4遺伝子の発現増大を調べることによって行われる。一つの態様において、5′調節要素はマーカー遺伝子に結合される。更なる態様において、該マーカー遺伝子はβ−ガラクトシダーゼまたはCATである。
本発明は、mda−1と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの実施例において、前記核酸はcDNAである。他の態様において、前記核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−2と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、前記核酸はcDNAである。他の態様において、前記核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−4と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、前記核酸はcDNAである。他の態様において、前記核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−5と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、前記核酸はcDNAである。他の態様において、前記核酸はゲノムDNAである。
本発明は、細胞におけるmda−5遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)該単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下で、核酸分子mda−5の配列と特異的にハイブリダイズできる少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成されたハイブリッドの検出によって、前記細胞内におけるmda−5の発現が示される方法を提供する。
本発明は、細胞内のmda−5遺伝子の発現を検出する方法を用いてmda−5遺伝子の発現を検出する方法を含む、悪性神経外胚葉細胞から正常な神経外胚葉細胞を区別する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)該単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下で、核酸分子mda−5の配列と特異的にハイブリダイズできる少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成されたハイブリッドの検出によって前記細胞内におけるmda−5の発現が示され、mda−5遺伝子の発現によって当該細胞が正常な神経外胚葉細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は、サンプル中のI型またはII型インターフェロンを検出する方法であって、a)前記サンプルをmda−5遺伝子の5′調節要素と共に、I型およびII型インターフェロン転写調節タンパクの前記調節要素への結合を可能にする条件下でインキュベートする工程と;b)I型またはII型インターフェロン転写調節タンパクの前記調節要素への結合を検出する工程とを具備し、該結合によって、前記サンプル中におけるI型またはII型インターフェロンの存在が示される方法を提供する。
一態様において、前記細胞は真核細胞である。他の態様において、前記5′調節要素は本来のmda−5遺伝子に連結され、また前記結合の検出はmda−5遺伝子の発現増大を調べることによって行われる。
別の態様において、5′調節要素はマーカー遺伝子に結合される。更なる態様において、該マーカー遺伝子はβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたはCATである。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒト・メラノーマ細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いてmda−5の発現を検出する工程とを具備し、mda−5の発現によって前記化合物がヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、mda−6と称するメラノーマの分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、前記核酸はcDNAである。他の態様において、前記核酸はゲノムDNAである。
本発明は、上記の核酸分子、即ちmda−6と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズできる、少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子を提供する。
本発明は、細胞におけるmda−6遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−6遺伝子の配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって、細胞内におけるmda−6遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明は、細胞内のmda−6遺伝子の発現を検出する方法を用いてmda−6遺伝子の発現を検出する方法を含む、悪性神経外胚葉細胞から正常な神経外胚葉細胞を区別する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)該単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下で、mda−6遺伝子を認識できる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成されたハイブリッドの検出によって前記細胞内におけるmda−6の発現が示され、mda−6遺伝子の発現によって当該細胞が正常な神経外胚葉細胞であることが示される方法を提供する。
本発明はまた、カルチノーマ細胞から腺癌細胞を区別する方法であって、上記の方法を用いてmda−6遺伝子の発現を検出することを具備し、mda−6遺伝子の発現によって前記細胞がカルチノーマ細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は更に、アクチノマイシン−Dまたはアドリアマイシンのような抗ガン剤に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−6遺伝子の発現を検出することを具備し、このmda−6遺伝子の発現によって前記細胞が前記抗ガン剤に応答することが示される方法を提供する。
本発明は、トポイソメラーゼ阻害剤に対する細胞の応答をモニターする方法であって、細胞におけるmda−6遺伝子の発現を検出する上記方法を用いてmda−6の発現を検出することを具備し、mda−6の発現によって、前記細胞がトポイソメラーゼ阻害剤に応答することが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒト・メラノーマ細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いて細胞内におけるmda−6の発現を検出する工程とを具備し、mda−6遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト白血病細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒト白血病細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いてmda−6の発現を検出する工程とを具備し、mda−6遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト白血病細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・リンパ腫細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒトリンパ腫細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いてmda−6の発現を検出する工程とを具備し、mda−6遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・リンパ腫細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト神経芽腫細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒト神経芽腫細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いてmda−6の発現を検出する工程とを具備し、mda−6遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト神経芽腫細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・グリア芽種多形細胞において最終分化を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)ヒト・グリア芽種多形細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いてmda−6の発現を検出する工程とを具備し、mda−6遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・グリア芽種多形細胞において最終分化を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は、初期段階のヒト・メラノーマ細胞をより進行したヒト・メラノーマ細胞から区別する方法であって、上記の方法を用いてmda−6遺伝子の発現を検出することを具備し、このmda−6遺伝子の発現によって、前記細胞が進行度の低いヒトメラノーマ細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は、細胞の悪性発現型を逆転させる(reversing)方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)mda−6遺伝子の発現のために該連結されたmda−6遺伝子を悪性細胞に導入することにより、細胞の悪性発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明は、細胞の悪性発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−6遺伝子を悪性細胞に導入する工程と、(c)mda−6遺伝子の発現によって前記悪性細胞の悪性転換発現型が逆転されるように、工程(b)で得た細胞を、mda−6遺伝子を発現させる適切な条件に置く工程とを具備した方法を提供する。
本発明は、対象における悪性細胞の発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)mda−6遺伝子を発現させるために該連結されたmda−6遺伝子を悪性細胞に導入し、これによって前記悪性細胞の悪性発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明は、対象における悪性細胞の発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−6遺伝子を前記対象の前記悪性細胞に導入する工程と、(c)前記細胞の悪性転換特性を逆転するmda−6遺伝子の発現を誘起することにより、前記対象における悪性細胞の発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、腫瘍形成細胞および転移性細胞における増殖抑制を誘導する方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−6遺伝子を前記腫瘍形成細胞および転移性細胞に導入する工程と、(c)前記mda−6遺伝子の発現を誘起させることにより、前記腫瘍形成細胞および転移性細胞における増殖抑制を誘導する工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、腫瘍形成細胞および転移性細胞における最終分化を誘導する方法であって:(a)mda−6遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−6遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−6遺伝子を前記腫瘍形成細胞および転移性細胞に導入する工程と、(c)前記mda−6遺伝子の発現を誘起させることにより、前記腫瘍形成細胞および転移性細胞における最終分化を誘導する工程とを具備した方法を提供する。
一つの態様において、前記細胞はメラノーマ細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、神経芽腫細胞、グリア芽種細胞またはカルチノーマ細胞(carcinoma cell)である。
別の態様において、前記調節要素はプロモータである。更なる態様において、該プロモータは組織特異的プロモータである。他の態様において、前記プロモータは誘導プロモータである。
前記連結されたmda−6遺伝子は、自明のDNA技術、レトロウイルスベクター、抗体被覆リポソーム、機械的若しくは電気的手段によって前記細胞に導入すればよい。これらの技術は当該分野において周知である。
本発明は、メラノーマの進行段階を決定する方法であって:(a)メラノーマから適切な量の細胞を採取する工程と;(b)該細胞におけるmda−6遺伝子の発現レベルを測定する工程と;(c)この発現レベルを正常細胞および異なった段階にあるメラノーマ細胞の所定の標準と比較することにより、メラノーマの進行段階を決定する工程とを具備した方法を提供する。
一つの態様では、mda−6タンパクに対する抗体によって前記発現が測定される。他の態様において、前記の発現は原位置でのハイブリダイゼーション(in situ hybridization)によって測定される。
本発明はまた、癌に対する治療の有効性を示す方法であって、癌細胞におけるmda−6遺伝子の発現レベルを測定することを具備し、該発現レベルの増大によって前記治療の有効性が示される方法を提供する。一つの態様において、前記癌はメラノーマである。他の態様において、前記癌は白血病である。別の態様において、前記癌はリンパ腫である。他の態様において、前記癌は神経芽腫である。別の態様において、前記癌はグリア芽種多形腫瘍である。更に別の態様において、前記癌はカルチノーマである。
本発明は、mda−7と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、細胞におけるmda−7遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−7と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって、細胞内におけるmda−7遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明は、ある細胞がメラノーマ細胞であるか又はカルチノーマ細胞であるかを決定するための方法であって、細胞内におけるmda−7遺伝子の発現を検出する上記方法を用いてmda−7の発現を検出する工程を具備し、mda−7遺伝子の発現によって前記細胞がメラノーマ細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は更に、メラニン細胞または初期段階のメラノーマ細胞を進行した転移性メラノーマ細胞から区別するための方法であって、上記方法を用いてmda−7遺伝子の発現を検出する工程を具備し、mda−7遺伝子の発現によつて、前記細胞がメラニン細胞または初期段階のメラノーマ細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は、悪性神経外胚葉細胞から正常な神経外胚葉細胞を区別する方法であって、細胞内のmda−7遺伝子の発現を検出する上記方法を用いてmda−7遺伝子の発現を検出する工程を具備し、mda−7遺伝子の発現によって、その組織系統の細胞は正常な神経外胚葉細胞であることが示される方法を提供する。
本発明はまた、上皮細胞から繊維芽細胞を区別する方法であって、上記の方法を用いてmda−7遺伝子の発現を検出することを具備し、mda−7遺伝子の発現によって前記細胞が繊維芽細胞であることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞において増殖抑制を誘起できる化合物を同定する方法であって:a)適切な濃度のヒト・メラノーマ細胞を適切な濃度の化合物と共にインキュベートする工程と;b)上記の方法を用いて細胞内におけるmda−7の発現を検出する工程とを具備し、mda−7遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞において増殖抑制を誘起できることが示される方法を提供する。
本発明は更に、アドリアマイシンまたはビンクリスチンのような抗ガン剤に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−7遺伝子の発現を検出することを具備し、このmda−7遺伝子の発現によって、前記細胞が前記抗ガン剤に応答することが示される方法を提供する。
本発明はまた、UV照射により誘起されたDNA損傷に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−7の発現を検出する工程を具備し、mda−7遺伝子の発現によって、前記細胞がDNA損傷に応答することが示される方法を提供する。
本発明は、細胞の悪性発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)mda−7遺伝子の発現のために該連結されたmda−7遺伝子を悪性細胞に導入することにより、細胞の悪性発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、細胞の悪性発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−7遺伝子を悪性細胞に導入する工程と、(c)mda−7遺伝子の発現によって前記悪性細胞の悪性転換発現型が逆転されるように、工程(b)で得た細胞を、mda−7遺伝子を発現させる適切な条件に置く工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、対象における悪性細胞の発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)mda−7遺伝子を発現させるために該連結されたmda−7遺伝子を悪性細胞に導入し、これによって前記悪性細胞の発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、対象における悪性細胞の発現型を逆転させる方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−7遺伝子を前記対象の前記悪性細胞に導入する工程と、(c)前記細胞の悪性転換発現型を逆転するmda−7遺伝子の発現を誘起することにより、前記対象における悪性細胞の発現型を逆転させる工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、腫瘍形成細胞および転移性細胞における増殖抑制を誘導する方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−7遺伝子を前記腫瘍形成細胞および転移性細胞に導入する工程と、(c)前記mda−7遺伝子の発現を誘起させることにより、前記腫瘍形成細胞および転移性細胞における増殖抑制を誘導する工程とを具備した方法を提供する。
本発明はまた、腫瘍形成細胞および転移性細胞における最終分化を誘導する方法であって:(a)mda−7遺伝子の発現が調節要素の制御を受けるように、mda−7遺伝子を該調節要素に連結する工程と、(b)この連結されたmda−7遺伝子を前記腫瘍形成細胞および転移性細胞に導入する工程と、(c)前記mda−7遺伝子の発現を誘起させることにより、前記腫瘍形成細胞および転移性細胞における最終分化を誘導する工程とを具備した方法を提供する。一つの態様において、前記細胞はメラノーマ細胞である。他の態様において、前記細胞は白血病細胞である。更なる態様において、前記細胞はリンパ腫細胞である。別の態様において、前記細胞は神経芽腫細胞である。更に別の態様において、前記細胞はグリア芽種多形細胞である。
別の態様において、前記調節要素はプロモータである。更なる態様において、該プロモータは組織特異的プロモータである。他の態様において、前記プロモータは誘導プロモータである。
前記連結されたmda−7遺伝子は、自明のDNA技術(naked DNA technology)、レトロウイルスベクター、抗体被覆リポソーム、機械的若しくは電気的手段によって前記細胞に導入すればよい。これらの技術は当該分野において周知である。
本発明は、メラノーマの進行段階を決定する方法であって:(a)メラノーマから適切な量の細胞を採取する工程と;(b)該細胞におけるmda−7遺伝子の発現レベルを測定する工程と;(c)この発現レベルを正常細胞および異なった段階にあるメラノーマ細胞の所定の標準と比較することにより、メラノーマの進行段階を決定する工程とを具備した方法を提供する。
一つの態様では、mda−7タンパクに対する抗体によって前記発現が測定される。他の態様において、前記の発現は原位置でのハイブリダイゼーション(in situ hybridization)によって測定される。
本発明はまた、癌に対する治療の有効性を示す方法であって、癌細胞におけるmda−7遺伝子の発現レベルを測定することを具備し、該発現レベルの増大によって前記治療の有効性が示される方法を提供する。前記癌はメラノーマ、白血病、リンパ腫、神経芽腫、グリア芽種多形腫瘍であり得る。
本発明は、細胞が老化しているか否かを決定する方法であって、mda−7の発現を検出する工程を具備し、該mda−7遺伝子の発現によって前記細胞が老化していることが示される方法を提供する。
本発明は、老化を阻害する化合物を同定する方法であって:a)複数の細胞を適切な量の化合物と共にインキュベートする工程と;b)mda−7の発現を検出する工程とを具備し、mda−7の発現の阻害によって、前記化合物が老化を阻害することが示される方法を提供する。
本発明は、mda−8と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−8と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる、少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子を提供する。
本発明は、細胞におけるmda−8遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−8の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって、細胞内におけるmda−8遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明は、悪性星状細胞腫(astrocytoma cell)からグリア細胞を区別する方法であって、上記の方法を用いてmda−8遺伝子の発現を検出する工程を具備し、mda−8遺伝子の発現によって前記細胞が正常なグリア細胞であることが示される方法を提供する。
本発明はまた、アクチノマイシン−D、アドリアマイシンまたはシスプラチンのような抗ガン剤に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−8遺伝子の発現を検出する工程を具備し、このmda−8遺伝子の発現によって、前記細胞が前記抗ガン剤に応答することが示される方法を提供する。
本発明は更に、UV照射により誘起されたDNA損傷に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−8の発現を検出する工程を具備し、mda−8遺伝子の発現によって、前記細胞がDNA損傷に応答することが示される方法を提供する。
本発明は、サンプル中のII型インターフェロンを検出する方法であって、a)前記サンプルを、II型インターフェロン転写調節タンパクの5′調節要素への結合を可能にするmda−8の5′調節要素を含んだ標的細胞と共にインキュベートする工程と;b)前記結合を検出する工程とを具備し、該結合によってII型インターフェロンの存在が示される方法を提供する。
一つの態様において、前記5′調節要素はマーカー遺伝子に連結される。更に別の態様において、前記マーカー遺伝子はβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたはCATである。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導することができる化合物を同定する方法であって:(a)適切な濃度のヒト・メラノーマ細胞を、適切な濃度の前記化合物と共にインキュベートする工程と、(b)上記の方法を用いてmda−8の発現を検出する工程とを具備し、mda−8遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導できることが示される方法を提供する。
本発明は、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子の単離された核酸分子であって、前記タンパクがヒト・タンパクである核酸分子を提供する。
本発明は、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる、少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子を提供する。
本発明は、細胞におけるmda−9遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって、細胞内におけるmda−9遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明は、細胞内におけるmda−9遺伝子の発現を検出する方法を用いてmda−9遺伝子の発現を検出することを含む、ヒト・メラノーマ細胞の進行段階を示す方法であって、a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって細胞内におけるmda−9遺伝子の発現が示され、該mda−9遺伝子の発現によってヒト・メラノーマ細胞の進行段階が示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導することができる化合物を同定する方法であって:(a)適切な濃度のヒト・メラノーマ細胞を、適切な濃度の前記化合物と共にインキュベートする工程と、(b)細胞内のmda−9遺伝子の発現を検出する方法を用いてmda−9の発現を検出する工程とを具備し、このmda−9を検出する工程は、a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって細胞内におけるmda−9遺伝子の発現が示され、mda−9遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞におけるUV照射およびガンマ線照射により生じる特定パターンのDNA損傷を誘導できる化合物を同定する方法であって、a)適切な濃度のヒトメラノーマ細胞を、適切な濃度の化合物で誘導する工程と、b)細胞内におけるmda−9遺伝子の発現を検出する方法を用いてmda−9の発現を検出する工程とを具備し、このmda−9の発現を検出する工程は、a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッド形成を可能とする条件下において、mda−9と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子の核酸配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、形成された前記ハイブリッドの検出によって細胞内におけるmda−9遺伝子の発現が示され、mda−9遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞においてUV照射およびガンマ線照射によって生じる特定パターンのDNA損傷を誘導できることが示される方法を提供する。
本発明はまた、腫瘍壊死因子または同様に作用する薬剤の存在を同定する方法であって、上記の方法を用いてmda−9遺伝子の発現を検出する工程を具備し、mda−9遺伝子の発現によって、腫瘍壊死因子もしくは同様の薬剤の存在が示される方法を提供する。
本発明は更に、酪酸フェニルまたはVP−16のような抗ガン剤に対する細胞の応答をモニターする方法であって、上記の方法を用いてmda−9遺伝子の発現を検出する工程を具備し、mda−9遺伝子の発現によって、前記細胞が前記抗ガン剤に応答することが示される方法を提供する。
本発明は、細胞内におけるmda−9遺伝子の発現を検出する方法であって:a)細胞内の核酸を単離する工程と;b)この単離された核酸を、ハイブリッドの形成を可能とする条件下において、mda−9と特異的にハイブリダイズすることができる核酸とハイブリダイズさせる工程と;c)形成されたハイブリッドを検出する工程とを具備し、前記ハイブリッドの検出によって細胞内におけるmda−4遺伝子の発現が示される方法を提供する。
本発明は、初期段階のヒト・メラノーマ細胞と、より進行したヒト・メラノーマ細胞とを区別する方法であって、前記細胞がより進化したヒト・メラノーマであることを示すmda−9遺伝子の発現を検出する工程を具備する方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導することができる化合物を同定する方法であって:(a)ヒト・メラノーマ細胞を、ヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導するのに効果的な化合物と共にインキュベートする工程と、(b)上記の方法を用いてmda−9の発現を検出する工程とを具備し、mda−9遺伝子の発現によって、前記化合物がヒト・メラノーマ細胞における最終分化を誘導できることが示される方法を提供する。
本発明は、ヒト・メラノーマ細胞におけるUV照射およびガンマ線照射により生じる特定パターンのDNA損傷を誘導できる化合物を同定する方法であって、a)ヒトメラノーマ細胞を、ヒト・メラノーマ細胞においてUV照射およびガンマ線照射により生じる特定パターンのDNA損傷を誘導するのに効果的な化合物と共にインキュベートする工程と、b)上記の方法を用いてmda−9の発現を検出する工程とを具備し、mda−9遺伝子の発現によって、前記化合物が、ヒト・メラノーマ細胞においてUV照射およびガンマ線照射により生じる特定パターンのDNA損傷を誘導できることが示される方法を提供する。
本発明は、mda−11と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−14と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−17と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明は、mda−18と称するメラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードする、単離された核酸分子を提供する。一つの態様において、該核酸はcDNAである。他の態様において、この核酸はゲノムDNAである。
本発明はまた、メラノーマ分化関連遺伝子によりコードされるタンパクのアミノ酸配列とは異なったアミノ酸配列をコードするが、発現型は変化しないDNA類およびcDNA類をも包含する。或いは、本発明はまた、本発明のDNAおよびcDNAにハイブリダイズするDNA類およびcDNA類をも包含する。ハイブリダイゼーション法は、当業者に周知である。
本発明のDNA分子にははまた、一以上のアミノ酸残基の種類および位置が天然に存在する形態とは異なるポリペプチド類縁体、抗原性ポリペプチドのフラグメント若しくは誘導体(前記タンパクについて特定される残基の全部よりも少ないアミノ酸残基を含む欠失類縁体、特定された一以上の残基が他の残基で置き換えられた置換類縁体、前記ポリペプチドの末端または中間部分に一以上のアミノ酸残基が付加された付加類縁体)であって、天然に存在する形態の性質の全部または一部を共有しているポリペプチド類縁体、抗原性ポリペプチドのフラグメント若しくは誘導体をも含む。これらの分子には、選択された非哺乳動物ホストによる発現に好ましいコドンの組み込み;制限エンドヌクレアーゼ酵素による開裂部位の設置;および容易に発現されるベクターの構築を容易にする開始DNA配列、末端DNA配列または中間DNA配列の設置が含まれる。
ここに記載され且つ権利請求されているDNA分子は、ポリペプチドのアミノ酸配列に関してこれらが与える情報の故に有用であり、また種々の組換え技術によるポリペプチドの大規模合成における生成物として有用である。この分子は、原核ホスト細胞および真核ホスト細胞を形質転換およびトランスフェクトする新規なクローニングおよび発現ベクター、並びに前記ポリペプチドおよび関連生成物を発現できる斯かるホスト細胞を培養増殖する新規且つ有用な方法を生み出すために有用である。
更に、メラノーマ分化関連遺伝子によりコードされるタンパクをコードする上記の単離された核酸分子は、抗癌活性を有する薬剤、DNA損傷を誘導できる薬剤、およびヒトメラノーマにおける増殖停止を誘導する薬剤をスクリーニングするために有用である。
メラノーマ分化関連遺伝子によりコードされるタンパクをコードする上記の単離された核酸分子はまた、悪性の中枢神経系細胞から正常細胞を識別し、カルチノーマから洗顔細胞を識別し、また上皮細胞から繊維芽細胞を識別するために有用である。
この核酸分子は、DNAまたはRNAの何れかであり得る。ここで用いる「特異的にハイブリダイズする」の用語は、それ自身の配列に対して相補的な核酸配列を認識して、相補的な塩基対の間を結合する水素結合を介して二重螺旋セグメントを形成する、核酸分子の能力を意味する。
遺伝子を特徴的に認識する核酸分子を必要とする状況が生じたときには、一つの遺伝子を他の遺伝子から識別する、配列中の領域を選択することは当該技術において周知である。このような独特な領域を見出すためには、単純な実験を計画すればよい。
上記の核酸分子と特異的にハイブリダイズできる少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子は、プローブとして用いることができる。核酸プローブ技術は当業者に周知であり、これら当業者は、このようなプローブは長さが極めて変化に富んだものであり、また該プローブの検出を容易にするために、放射性アイソトープまたは蛍光占領のような検出ラベルで標識され得ることを容易に理解するであろう。DNAプローブ分子は、当該技術において周知の方法を用いて、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードするDNA分子をプラスミド若しくはバクテリオファージのような適切なベクター中に挿入し、続いて適切なバクテリアホスト細胞中に形質転換し、該形質転換されたバクテリアホスト細胞内で複製させて、この複製されたDNAプローブを回収することによって調製すればよい。或いは、DNA合成により化学的にプローブを作製してもよい。
RNAプローブは、上記の単離された核酸分子を、T3、T7またはSP6のようなバクテリオファージプロモータの下流に挿入することによって作製すればよい。上流プロモータを有する上記分子を含んだ線形化したフラグメントと共に、標識したヌクレオチドを適切なRNAポリメラーゼと共にインキュベートすることによって、大量のRNAプローブを製造することができる。
本発明はまた、細胞内におけるメラノーマ分化関連遺伝子の発現を検出する方法であって、細胞から全細胞RNAまたはmRNAを採取する工程と;この採取した全細胞RNAまたはmRNAを、ハイブリダイゼーション条件下で、上記核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズできる少なくとも15ヌクレオチドの標識された核酸分子と接触させる工程と、前記分子にハイブリダイズした全細胞RNAまたはmRNAの存在を検出することにより、細胞内におけるメラノーマ分化関連遺伝子の発現を検出する工程とを具備した方法を提供する。
上記で合成された核酸分子は、対応するRNAまたはmRNAの存在を検出することによりメラノーマ分化関連遺伝子の発現を検出するために用いられる。細胞からの全細胞RNAまたはmRNAは、当業者に公知の方法によって単離すればよい。標識された核酸分子のハイブリダイゼーション条件は、当該技術において周知の常法的実験によって決定すればよい。前記プローブにハイブリダイズした全細胞RNAまたはmRNAの存在は、ゲル電気泳動または当該技術で周知の他の方法によって測定すればよい。形成されたハイブリッドを測定することによって、細胞によるメラノーマ分化関連遺伝子の発現を決定することができる。標識は放射性同位元素であってもよい。例えば、前記核酸を製造するときに一以上の放射性核種を取り込むことができる。
本発明の一つの態様において、核酸は溶解細胞から抽出され、また、mRNAは該抽出物からポリA尾部を結合するオリゴdTカラムを用いて単離される。次いで、ニトロセルロース上において、mRNAは放射能で標識されたプローブに曝され、該プローブはこれとハイブリダイズすることにより、相補的mRNA配列を標識する。結合は発光オートラジオグラフィーまたはシンチれーじょんカウンタによって検出すればよい。しかし、これら工程を実施するための他の方法は当業者に周知であり、上記で述べたことは単なる例に過ぎない。
本発明はまた、組織切片におけるメラノーマ分化関連遺伝子の発現を検出する方法であって:前記組織切片を、ハイブリダイゼーション条件下で、上記核酸分子の配列と特異的にハイブリダイズできる少なくとも15ヌクレオチドの標識された核酸分子と接触させる工程と;前記分子にハイブリダイズしたmRNAの存在を検出することにより、組織切片における前記メラノーマ分化関連遺伝子の発現を検出する工程とを具備した方法を提供する。
プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクターおよび他のウイルスベクターを含む種々のベクターが、当業者に周知である。本発明は更に、メラノーマ分化遺伝子により産生されるタンパクをコードする単離された核酸分子を含むベクターを提供する。
これらベクターを得る一つの例としては、挿入DNAおよびベクターDNAの両者を制限酵素に曝して両分子の末端に相補的末端を形成し、次いで、この塩基対をDNAリガーゼを用いて相互に連結する。或いは、ベクターDNA中の制限酵素部位に対応するリンカーを挿入DNAに連結し、次いで、これを該部位で切断する制限酵素を用いて消化する。他の手段もまた利用可能であり、これら手段は当業者に公知である。
一つの態様において、核酸分子はpBlueScriptのXhoI/EcoRI部位にクローン化される。プラスミド、mda−1、mda−4、mda−5、mda−6、mda−7、mda−8、mda−9、mda−11、mda−14、mda−17、およびmda−18は、1993年10月26日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国20852メリーランド州ロックウィルパークローンドライブ12301に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。プラスミド、mda−1、mda−4、mda−5、mda−6、mda−7、mda−8、mda−9、mda−11、mda−14、mda−17、およびmda−18には、ATCC受付番号第75582号、第75583号、第75584号、第75585号、第75586号、第75587号、第75588号、第75589号、第75590号、第75591号、および第75591号が夫々付与された。
他の実施例においては、mda−6遺伝子の3′フラグメントをpBluescriptプラスミドのEcoRIおよびXbaI部位にクローン化し、これをmda−6.3′と称する。このmda−6.3′は、1994年9月30日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国20852メリーランド州ロックウィルパークローンドライブ12301に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。プラスミドmda−6.3′には、ATCC受付番号第75903号が付与された。
他の実施例においては、mda−6遺伝子の5′フラグメントをpSP64プラスミドのSalI部位にクローン化し、これをmda−6.5′と称する。このmda−6.5′は、1994年9月30日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国20852メリーランド州ロックウィルパークローンドライブ12301に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。プラスミドmda−6.5′には、ATCC受付番号第75904号が付与された。
mda−6.3′およびmda−6.5′は、完全な長さのmda−6遺伝子を構成する。当業者は、このプラスミドから挿入物を容易に得ることができ、また該挿入物を連結して完全な長さの遺伝子を得ることができる。
他の実施例においては、mda−7遺伝子の3′フラグメントをpBluescriptプラスミドのEcoRIおよびXbaI部位にクローン化し、これをmda−7.3′と称する。このmda−7.3′は、1994年9月30日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国20852メリーランド州ロックウイルパークローンドライブ12301に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。プラスミドmda−7.3′には、ATCC受付番号第75905号が付与された。
他の実施例においては、mda−7遺伝子の5′フラグメントをpSP64プラスミドのSalI部位にクローン化し、これをmda−7.5′と称する。このmda−7.5′は、1994年9月30日に、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に従って、アメリカ合衆国20852メリーランド州ロックウィルパークローンドライブ12301に所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された。プラスミドmda−7.5′には、ΛTCC受付番号第75906号が付与された。
mda−7.3′およびmda−7.5′は、完全な長さのmda−7遺伝子を構成する。当業者は、このプラスミドから挿入物を容易に得ることができ、また該挿入物を連結して完全な長さの遺伝子を得ることができる。
本発明は、メラノーマ分化関連遺伝子によりコードされるタンパクの生物学的活性を有するポリペプチドを製造するためのホスト・ベクター系であって、上記のベクターおよび適切なホストを含むホスト・ベクター系を提供する。
発現のために必要とされる調節要素には、RNAポリメラーゼに結合するプロモータ配列、およびリボゾームに結合するための転写開始配列が含まれる。例えば、バクテリア発現ベクターには、lacプロモータのようなプロモータ、並びに転写開始のためのシャインダルガノ配列および開始コドンAUGが含まれる。同様に、真核発現ベクターにはRNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモータ、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボゾーム脱離のための終止コドンが含まれる。このようなベクターは商業的に入手してもよく、またまたは当該技術において周知の方法、例えば、一般にベクターを構築するための上記方法によって、既知の配列から組み立ててもよい。発現ベクターは、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクを発現する細胞を製造するのに有用である。
本発明は更に、前記ホスト細胞がバクテリア細胞(例えばE.coli)、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞および動物細胞である、上記に記載の単離されたDNAまたはcDNA分子を提供する。適切な動物細胞には、Vero細胞、HeLa細胞、Cos細胞、CV1細胞および種々の原発性メラノーマ細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
上記で説明し、且つ以下のテキストで述べるように、本発明は、細胞が最終的に分化し、不可逆的に増殖が停止するときに発現する、DNA損傷剤で処理され及び/または抗ガン剤に曝された遺伝子を提供する。従って、本発明はひょうてき細胞を最終的に分化した段階に誘導するために有用である。このような標的細胞は、メラノーマ細胞またはグリア芽種多形細胞のような癌性細胞であってもよい。この細胞が最終的に分化するときに発現する遺伝子は、レトロウイルス技術または当該技術分野で公知の他の技術によって標的細胞に導入すればよい。この遺伝子は、それ自身のプロモータまたは他の異種プロモータによって制御され得る。該遺伝子の発現は、次いで癌性細胞における最終分化および不可逆的な増殖能の喪失をもたらす。
本発明はまた、細胞の最終分化を抑制する核酸分子を提供する。斯かる分子は、分化誘発剤、抗ガン剤またはDNA損傷剤で処理された細胞において、標的遺伝子をスイッチオフすることにより最終分化を阻害するために有用である。この標的遺伝子は、アンチセンス技術によってスイッチオフすればよい。該遺伝子がスイッチオフされた後は、骨髄幹細胞のような正常細胞が、分化誘発剤、抗ガン剤またはDNA損傷剤で処理されたときに最終分化および不可逆的増殖停止に至るのを防止することができる。
アンチセンス技術は当該技術において周知である。本質的には、メラノーマ分化関連遺伝子の切片がアンチセンス配列に選ばれるであろう。該アンチセンス配列の発現によって、当該遺伝子の発現はスイッチオフされるであろう。このアンチセンス配列は、例えば電気穿孔形質導入法(electroporation transduction)、レトロウイルス挿入またはリポソーム媒介遺伝子導入のような、当該技術で周知の技術を用いて細胞内に導入すればよい。
本発明はまた、メラノーマ分化関連遺伝子にコードされるタンパクの生物学的活性を有するポリペプチドを製造する方法であって、上記のホストベクター系のホスト細胞を、前記ポリペプチドを産生させる適切な条件下で増殖させる工程と、こうして産生されたポリペプチドを回収する工程とを具備した方法を提供する。
本発明は、例えば哺乳動物細胞内での発現に適用されるプラスミドを含んだメラノーマ細胞のように、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードするDNA分子を含んだ哺乳動物細胞であって、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードするDNA分子と、メラノーマ分化遺伝子により産生されるタンパクをコードする前記DNAに対して該DNAを発現させるように相対的に位置づけられた、該DNAの哺乳動物細胞内での発現に必要な調節要素とを含んだ哺乳動物細胞を提供する。
ホスト細胞として多くの哺乳動物細胞を用いることができ、その中にはマウス繊維芽細胞NIH3T3、CREF細胞、CHO細胞、HeLa細胞、Ltk細胞、Cos細胞などが含まれるが、これらに限定されるものではない。上記で説明したような発現プラスミドは、リン酸カルシウム沈殿法、電気穿孔法のような当該技術で周知の方法により、哺乳動物細胞をトランスフェクトするために用い、或いは、例えばマイクロインジェクションによって上記プラスミドを哺乳動物細胞内に導入して、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクをコードするDNA、例えばcDNAを含む哺乳動物細胞を得ればよい。
また、本発明によれば、上記の単離された核酸によってコードされる精製されたタンパクが提供される。ここで用いる「精製されたタンパク」の用語は、メラノーマ分化関連遺伝子によってコードされる天然に存在する単離されたタンパク(天然物から精製されたもの、或いは一次、二次および三次コンホメーション並びに翻訳後の修飾が天然に存在する物質と同一であるように製造されたもの)、並びに一次構造コンホメーション(即ち、アミノ酸残基の連続的な配列)を有する天然に存在しないポリペプチドを意味する。このようなポリペプチドには、誘導体および類縁体が含まれる。
本発明はまた、上記の精製タンパクを用いて抗体を製造する方法を提供する。一つの態様において、該抗体はモノクローナル抗体である。他の態様において、該抗体はポリクローナル抗体である。
上記核酸分子から導くことができ、或いは上記精製されたタンパクを直接配列決定することによって導くことができるタンパク配列情報を用いて抗原性領域を同定し、またこれら抗原性領域に向けられた抗体を作製してターゲッティングを行って、癌を画像化しまたは治療してもよい。
本発明は、抗体を作製するために、メラノーマ関連遺伝子によって産生されたタンパク上の特定の領域を選別する方法を提供する。アミノ酸配列を当業者に周知の方法によって分析し、該配列によって構築されるタンパク中に疎水性または親水性の領域が生成されるか否かを決定し得であろう。細胞膜タンパクの場合、水性環境において、疎水性領域は細胞膜の脂質二重層に挿入されるタンパク部分を形成するのに対して、親水性領域は細胞表面に位置することがことが周知である。通常、この親水性領域は疎水性領域よりも抗原性が高い。従って、親水性のアミノ酸配列を選択して、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクに特異的な抗体を作製するために用いればよい。この選択されたペプチドは、商業的に入手可能な機械を用いて調製すればよい。別の方法としては、cDNAまたはそのフラグメントのようなDNAをクローン化し、発現させ、得られたポリペプチドを回収して免疫原に用いればよい。
これらポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、選択されたポリペプチドを用いて動物を免疫化することにより製造すればよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用い、免疫化された動物由来の抗体産生B細胞をミエローマ細胞と融合させ、得られたハイブリドーマ細胞から所望の抗体を産生する細胞を選択することによって製造される。或いは、当業者に公知のインビトロ技術によってモノクローナル抗体を製造してもよい。これらの抗体は、生きた動物、ヒト、または動物若しくはヒトから単離された生物学的組織若しくは体液中において、メラノーマ分化関連遺伝子により産生されるタンパクの発現を検出するために有用である。
本発明は、以下に記載する実験の詳細を参照することによってより良く理解されるであろう。しかし、当業者は、以下で述べる特定の方法および結果が、後述の請求範囲に更に完全に記載されている本発明の単なる例示であることを容易に承認するであろう。
第1実験シリーズ
材料と方法
細胞株、増殖条件、および馴らし培地の調製
HO−1細胞株は、49才の女性からのメラニン性メラノーマであり、継代第100代と第125代の間で使用した(6、8、13)。HO−1細胞は、ガン研究ステーリン財団(Stehlin Foundation for Cancer Research)(テキサス州、ヒューストン)のベッピノ・シー・ギオバネラ博士(Dr.Beppino C.Giovanella)から供与された。10%ウシ胎児血清を補足したダルベッコ-改変イーグル培地(DMEM)(DMEM−10)(ハイクローン(Hyclone)、ローガン(Logan)、ユタ州)中で、空気95%二酸化炭素5%の湿潤インキュベーター中で37℃で培養物を増殖させた。HO−1細胞は集密状態(confluency)になる前に約4、5日毎に継代培養(1:5または1:10)して、対数増殖期を維持した。IFN−β(2000単位/ml)、IFN−γ(2000単位/ml)、IFN−β + IFN−γ(各インターフェロン1000単位/ml)、MPA(3.0μM)、RA(2.5μM)、MEZ(10ng/ml)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)、MPA+MEZ(3.0μM+10ng/ml)、およびRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)を用い、既に記載されているように(6、8、9)して4日間処理した後の増殖に対する作用を測定した。細胞を種々の薬剤で4日間または7日間処理して、培養物を無血清DMEMで2回洗浄し、誘導剤(inducer)の非存在下でDMEM−10中でさらに14日間インキュベートして、最終細胞分化(terminal cell differentiation)と、同時に起きる増殖能力の喪失を測定した。全細胞数はZMクルターカウンターを用いて4、7、14、および21日後に測定し、生存細胞数はトリパンブルー色素排除試験(6)により測定した。最終細胞分化は、誘導剤の非存在下で3日または4日毎に培地を交換して14日間増殖させた後に増殖はないが細胞は生存しているかどうかで示した。誘導剤を除去した後の細胞数(2倍またはそれ以上の細胞集団の倍加)の増加は、可逆的増殖抑制と見なした。馴らし培地は、高濃度のMEZ(50ng/ml)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)、MPA+MEZ(3.0μM+10ng/ml)、またはRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)で24時間処理し、次にFBSを含まないDMEMで3回洗浄し、誘導剤非添加の培地(DMEM−10)で72時間増殖させたHO−1細胞から調製した。処理した培養物から馴らし培地を採取し、混入している細胞を1000rpmで10分間遠心分離して除去し、馴らし培地は遺伝子修飾活性の測定まで4℃で保存した。対照馴らし培地は、試験化合物の非存在下で蒔いてから24時間後に培地交換を行い、72時間DMEM−10中で増殖させた後の細胞から実験馴らし培地として得た。
RNA単離とノーザンハイブリダイゼーション解析
既に記載されている(14〜16)ように、適当な32Pでラベルした遺伝子プローブとプローブ結合させた全RNAのノーザンブロッティング解析により、特定のmRNAの定常状態のレベルを測定した。誘導剤で24時間処理した細胞、誘導剤で24時間処理した後誘導剤の非存在下で72時間増殖させた細胞、または誘導剤で連続的に96時間処理した細胞からのRNAを解析した。使用した誘導剤の濃度は、増殖試験で使用したものと同じである。HO−1細胞を1:2希釈の馴らし培地(等量の馴らし培地と、10%ウシ胎児血清を補足したDMEM(DMEM−10))で24時間処理、または1:4希釈の馴らし培地(1容の馴らし培地と3容のDMEM−10)で96時間処理して、遺伝子発現の変化に対する馴らし培地の影響を調べた。本研究で使用したプローブは、β−アクチン(17)、γ−アクチン(17)、c−jun(18)、c−myc(19)、フィブロネクチン(20)、gro/MGSA(21)、HLAクラスI抗原(22)、HLAクラスII抗原(HLA−DRβ)(22)、α5インテグリン(23)、β1インテグリン(24)、ISG−15(25)、ISG−54(25)、jun−B(26)、およびテネイシン(27)に特異的であった。またノーザンブロットも32PでラベルしたGAPDH遺伝子(15)とプローブ結合させて、種々の実験条件下での同様のmRNA発現を証明した。ハイブリダイゼーション後、フィルターを洗浄しオートラジオグラフィーに露光させた。
試薬
組換えIFN−β(分子の17位でセリンがシステインに置換されている(28))は、トリトン・バイオサイエンス(Triton Bioscience)(アラメダ(Alameda)、カリホルニア州)より供与された。IFN−βは、4.5×107単位/mlの濃度の凍結乾燥粉末として得られた。組換えヒト免疫インターフェロン(IFN−γ)は、既に記載されている(29)ように産生し、精製して均一にした。IFN−γは、UMDNJ−ロバート・ウッド・ジョンソン医学校(UMDNJ-Robert Wood Johnson Medical School)(ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)のシドニー・ペストカ博士(Dr.Sidney Pestka)より供与された。インターフェロンの力価は、牛腎臓細胞株(MDBK)またはヒト繊維芽細胞AG−1732細胞(30)に対する水泡性口内炎ウイルスによる細胞変性阻害測定法を用いて測定した。IFN−βとIFN−γの濃縮ストック液をDMEM−10で1×106単位/mlに希釈し、−80℃で凍結し、使用直前に融解し、DMEM−10で適当な濃度に希釈した。MEZ、RAおよびMPAはシグマ・サイエンティフック社(Sigma Scientific Co.)(セントルイス、ミズーリ州)より得た。ストック溶液はジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製し、少量ずつ分注し、−20℃で保存した。溶媒対照で使用したDMSOの最終濃度は0.01%であった。DMSOのこの濃度は、HO−1細胞の増殖、メラニン合成、チロシナーゼ活性、または抗原発現を変化させなかった。
〈実験結果〉
HO−1細胞の可逆的または不可逆的増殖抑制(最終細胞分化)の誘導
RA、MPA、MEZ、IFN−βおよびIFN−γを単独または種々の組合せで使用した場合の、増殖(可逆的および不可逆的の増殖抑制)、メラニン合成、チロシナーゼ活性、および細胞形態に対する作用を、表1に要約した。HO−1増殖を阻害する最も有効な薬剤は、IFN−β + MEZとIFN−β + IFN−γの組合せであった(図1)。残りの薬剤の抗増殖活性の相対的順序は、MPA=MPA+MEZ>IFN−γ>MEZ=RA+MEZであった。RAでは増殖阻害は起きなかった。HO−1細胞をIFN−β + MEZで96時間処理すると、増殖能力が不可逆的に失われ、すなわち最終細胞分化が起きた。これは、試験薬剤を除去した後も処理した細胞は生きてはいるが、再び増殖することができないことにより示された。対照的に、他のすべての薬剤は可逆的増殖阻害を引き起こした(非掲載データ)。これらの知見は、HO−1細胞の増殖抑制と最終細胞分化が解離していることを示している。
HO−1細胞を、MPA、MEZ、RA+MEZ、MPA+MEZ、またはIFN−β + MEZで処理すると、樹状突起様の(dendrite-like)突起に特徴付けられる明瞭な形態変化を引き起こした(非掲載データ)(6、8、10)。RA、MPA、MEZ、IFN−β、およびIFN−β + MEZは、HO−1細胞においてメラノーマ(melanoma)分化のマーカーであるメラニン合成を増強させることが既に証明されている(6、8、12)。これに対して、IFN−γは単独またはIFN−βと組合せた場合も、形態変化や、IFN−β単独で誘導されるレベル以上の形態変化やメラニンレベルの上昇を誘導しなかった(10、12)。IFN−β + MEZの場合を除いて、試験薬剤の除去後の形態変化やメラニン変化は可逆的であった(非掲載データ)。これらのデータは、HO−1細胞で誘導される特異的な細胞学的および生化学的変化(例えば、可逆的増殖抑制、メラニン合成、および形態変化)は、最終細胞分化の誘導の有無にかかわらず起きることを示している。しかし、細胞の生存性を維持しながら増殖能力を不可逆的に喪失することは、最終細胞分化の表現型に特異的な性質である。
HO−1細胞の可逆的および不可逆的増殖抑制(最終細胞分化)時の初期増殖応答とインターフェロン応答性遣伝子の発現の変化
初期応答(early responce)遺伝子であるc−fos、c−jun、jun−B、jun−D、およびc−mycの96時間の発現に及ぼす、種々の分化調節および増殖調節薬剤の影響を測定するために最初の試験を行った(図2)。いずれの実験条件においてもc−fos発現は変化せず、jun−Dでプローブ結合させた対照細胞または処理細胞から単離したRNAとはハイブリダイゼーションしなかった(非掲載データ)。しかしIFN−βとRAを除くすべての試験薬剤で96時間処理したHO−1細胞において、c−junとjun−Bの発現増加が観察された(図2を参照)。増加の程度は、IFN−γ、MEZ、またはMPAで処理したHO−1細胞では同程度であり、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、またはRA+MEZで処理したHO−1細胞で最大であった(図2を参照)。c−junとjun−Bの発現と異なり、c−myc発現は、MEZ、MPA、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで96時間増殖させた細胞では下方調節(down regulation)された(図2)。抑制の程度は、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理したHO−1細胞で大きかった。これと対照的にIFN−γ単独またはIFN−γとIFN−βを組合せてHO−1細胞を処理するとc−myc発現が増加した。
IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZによる処理とc−jun、jun−B、およびc−mycレベルの変化の時間的関係を調べるために、HO−1細胞を誘導剤で24時間処理し、全細胞質性RNAを単離し、ノーザンブロッティングで解析した(図3)。MEZをIFN−β、MPA、またはRAと組合せて観察された効果の多くは、10mg/mlのMEZのみで処理した細胞でもわずかに観察されるため、高濃度のMEZ(50ng/ml)で24時間処理したHO−1細胞からもRNAを単離した(図3)。これらの実験条件下で、c−junとjun−B発現はすべての実験条件下で誘導され、c−myc発現はIFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理したHO−1細胞でほんのわずかに低下した。IFN−β + MEZに24時間暴露することにより、c−junとjun−B発現が最大に誘導された。
可逆的および不可逆的増殖抑制/分化の誘導の間に誘導された遺伝子発現の変化が、特定の誘導剤で処理したHO−1細胞で継続するか否かを調べるために、培養物を誘導剤の存在下で24時間増殖させ、次に誘導剤のない培地でさらに72時間インキュベートしてから全細胞性RNAを単離した(図3)。これらの実験条件下で、c−junとjun−B発現はIFN−β + MEZで処理した培養物で最大に誘導された。高濃度のMEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理したHO−1細胞で、c−junとjun−B発現のわずかの増加があった。c−mycについては、IFN−β + MEZで処理した培養物では発現が顕著に低下し、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理した培養物では程度は小さかったが低下した。これらの結果は、HO−1細胞中のc−jun、jun−Bおよびc−myc遺伝子発現誘導の変化の階層は、IFN−β + MEZ>MPA+MEZ>RA+MEZであることを示唆している。後に考察するように、HO−1細胞中の遺伝子発現の変化を誘導するこの同じ強度パターンが、いくつかの別の遺伝子でも観察される。
IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZの組合せでHO−1細胞を96時間処理すると、サイトカイン応答性遺伝子のHLAクラスI抗原およびgro/MGSAの発現が増大した(図2)。これに対して、IFN−β、MEZ、MPA、またはRA単独で処理するとHLAクラスI抗原遺伝子発現を有意に変化させず、gro/MGSA遺伝子発現を有意に誘導しなかった。HO−1細胞をIFN−γ単独またはIFN−βとともに96時間処理してもHO−1細胞中のHLAクラスI抗原発現を増強したが、gro/MGSA発現は誘導しなかった(図2)。これに対して、IFN−γ単独またはIFN−βに組合せたものにHO−1細胞を96時間暴露しても、HLAクラスII抗原遺伝子(HLA−DRβ)の発現は増大したが、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理してもこの遺伝子の発現は有意に増大しなかった(図2)。これらの観察結果は、可逆的(MPA+MEZおよびRA+MEZ)および最終細胞分化(IFN−β + MEZ)の間に起きる遺伝子の発現の変化の誘導において、II型インターフェロン(IFN−γ)およびgro/MGSAに対してI型インターフェロン(白血球インターフェロンIFN−α)とIFN−βが関与する自己分泌(autocrine)ループの存在を示している。
HO−1細胞中で可逆的または不可逆的分化またはその両方の誘導にインターフェロンまたはインターフェロン様分子が関係しているか否かを調べるために、インターフェロン応答性遺伝子のISG−15およびISG−54(25、31、32)の発現に及ぼす種々の分化誘導剤および増殖抑制剤の作用を調べた。図2に見られるように、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZの組合せでHO−1細胞を96時間処理すると、ISG−15およびISG−54遺伝子発現が誘導された。
HO−1細胞の分化(MPA+MEZ)および最終細胞分化(IFN−β + MEZ)の可逆的動機付け(reversible commitment)過程におけるI型インターフェロンとgro/MGSA自己分泌性ループは、誘導剤で24時間処理した培養物または誘導剤で24時間処理した後に誘導剤の非存在下で72時間増殖させた培養物で起きる遺伝子の発現の変化の解析によりさらに支持される(図3)。IFN−β + MEZの存在下でHO−1細胞を24時間増殖させると、gro/MGSA、HLAクラスI抗原、およびISG−15遺伝子の誘導または発現の増強が起きる。同様にMPA+MEZで24時間処理するとIFN−β + MEZと同程度にgro/MGSAの発現が誘導され、一方HLAクラスI抗原およびISG−15発現への作用はより小さかった。これに対してRA+MEZまたは高濃度のMEZで24時間処理してもgro/MGSAまたはISG−15発現は誘導されなかったが、これらの処理はHLAクラスI抗原の発現を中程度に増加させた(図3)。HO−1細胞を誘導剤(IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZ、または高濃度のMEZ)で24時間処理し次に誘導剤の非存在下で72時間増殖させると、HO−1遺伝子発現に以下の変化が起きた:(1)gro/MGSAはIFN−β + MEZ処理によってのみ誘導された;(2)HLAクラスI抗原の発現の増強は以下の強度ですべての処理で誘導された、IFN−β + MEZ>MPA+MEZ≧高濃度のMEZ>RA+MEZ;(3)ISG−15はIFN−β + MEZとMPA+MEZによって同程度に誘導されたが、RA+MEZと高濃度のMEZはISG−15発現を誘導しなかった。
HO−1細胞中の可逆的および不可逆的増殖抑制(最終細胞分化)中の細胞外および細胞外マトリックス受容体遺伝子の発現の変化
IFN−β + MEZにより誘導されるHO−1細胞の最終分化は形態変化に関係しており、樹状突起様の突起の形成と特異的生化学的変化(すなわち、チロシナーゼ活性とメラニン合成の増強)が起きる(6)。同様の形態および生化学的変化は、MEZ(6、8)とMPA(11)によりHO−1細胞で誘導される。これらの形態および生化学的変化と、細胞外マトリックス分子(フィブロネクチンおよびテナスシン(tenascin))、細胞外マトリックスタンパクの受容体(α3、インテグリンおよびβ1インテグリン)、および細胞骨格タンパク(β−アクチンおよびγ−アクチン)をコードする遺伝子の発現の関係を調べるために、試験を行った。96時間処理するとすべての処理プロトコールでフィブロネクチン発現が増加したが、IFN−βとRAはHO−1細胞中のフィブロネクチンmRNAの増強誘導が最も小さかった(すなわち、ノーザンブロットに長時間暴露した後にのみシグナルが検出された)(図4および非掲載データ)。フィブロネクチン発現を増強させる最も有効な単一の薬剤はIFN−γとMPAであり、MEZはフィブロネクチン発現の誘導能力はより小さかった(図4)。IFN−β + IFN−γ、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZの組合せで96時間増殖させたHO−1細胞においても、フィブロネクチン発現の大きな増加が観察された。IFN−β + MEZはMPA+MEZ、RA+MEZ、または高濃度のMEZより、24時間処理後のフィブロネクチン発現を有効に増強した(図5)。IFN−β + MEZもまた、誘導剤の組合せを除去し誘導剤のない培地中で72時間増殖させた後、MPA+MEZ、RA+MEZ、および高濃度のMEZよりもフィブロネクチン発現を増強させた(図5)。
種々の分化誘導剤および増殖抑制剤で処理したHO−1細胞のテナスシン遺伝子の発現は、フィブロネクチンより複雑であった(図4と5)。IFN−β、MEZ、RA、IFN−β + MEZ、またはRA+MEZの存在下でHO−1細胞を96時間増殖させると、テナスシンの発現は減少したが、IFN−γ、MPA、およびIFN−β+IFN−αではテナスシン発現が増強した(図4)。IFN−γ単独またはIFN−βとともに96時間処理すると、テナスシン発現が最大になった。これに対して24時間の処理では高濃度のMEZまたはRA+MEZによってテナスシン発現は有意に変化せず、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ処理培養物ではテナスシン発現がわずかに増加した(図5)。培養物を誘導剤で24時間処理し次に誘導剤の非存在下で72時間増殖させると、高濃度のMEZおよびRA+MEZで処理した培養物でテナスシン発現が低下し、MPA+MEZまたはIFN−β + MEZ処理したHO−1細胞ではテナスシン発現の低下はわずかであった(図5)。
(1)誘導剤の存在下で24時間増殖、(2)誘導剤の存在下で24時間増殖、次に誘導剤の非存在下で72時間増殖、または(3)誘導剤で連続的に96時間増殖させたHO−1細胞の、細胞外マトリックスタンパク(α5−インテグリン、β1−インテグリン)のマトリックス受容体遺伝子の発現にも変化が観察された(図4と5)。IFN−β + IFN−γ、IFN−β + MEZ、MPA+MEZおよび程度は小さいがRA+MEZで処理したHO−1細胞中のα5−インテグリン発現で増加が観察された(図4)。高濃度のMEZ、MPA+MEZ、RA+MEZ、またはIFN−β + MEZに対して、連続的に24時間処理したHO−1細胞、または24時間処理後誘導剤の非存在下で72時間増殖させたHO−1細胞でも、α5−インテグリン発現の増加は明らかであった。これに対してRAで96時間処理した培養物ではα5−インテグリン発現は低下した。β1−インテグリンの場合、IFN−γ、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、およびRA+MEZで処理した細胞で96時間処理後の上方調節(up regulation)は明らかであった(図4)。HO−1細胞のα5−インテグリンとβ1−インテグリン発現の最も有効な誘導剤はIFN−β + MEZであった(図4と5)。上方調節のレベルは、β1−インテグリンよりα5−インテグリンで大きかった(図4と5)。
HO−1細胞の細胞骨格遺伝子(β−アクチンとγ−アクチン)の発現に及ぼす種々の増殖抑制および分化調節化合物の作用を、図4と5に示す。ほとんどの実験条件下で、β−アクチンおよびγ−アクチンmRNAレベルにはほんのわずかの変化しか観察されなかった。96時間処理した培養物では、いくつかの薬剤の処理により、β−アクチン発現低下およびγ−アクチン発現はさらに大きく低下し、増殖が抑制された。これに対して、HO−1細胞中では増殖抑制作用のないRAは、これらの細胞骨格遺伝子の発現を有意に変化させなかった。HO−1細胞のすべての3つの実験プロトコール(すなわち、24時間処理、24時間処理の後誘導剤の非存在下で72時間増殖、または連続的に96時間処理)で一般に最も顕著であった共通の変化は、IFN−β + MEZによるβ−アクチンとγ−アクチンの発現の低下であった。
分化誘導剤処理したHO−1細胞から得られた馴らし培地によるHO−1細胞中の遺伝子発現の調節
前述の試験は、インターフェロン応答性遺伝子およびgro/MGSA遺伝子がHO−1細胞の可逆的および不可逆的分化の過程で活性化されることを証明した。これらはさらに、分化過程における自己分泌性フィードバックが関与している可能性を示唆した(図2と3)。分化(高濃度のMEZ、RA+MEZ、およびMPA+MEZ)および/または最終細胞分化(IFN−β + MEZ)の可逆的動機付けを誘導する薬剤で処理したHO−1細胞は、HO−1細胞中の遺伝子発現を調節することができる因子を分泌するか否かを直接測定するために、誘導剤で24時間処理し次に誘導剤の非存在下で72時間増殖させた細胞から馴らし培地を採取した(図6と7)。HO−1細胞を等量の馴らし培地+等量のDMEM−10(1:2)で24時間増殖させるか、または1容の馴らし培地+3容のDMEM−10(1:4)で96時間増殖させた。次に全細胞質性RNAを単離し、一連の初期増殖応答、インターフェロン応答性、細胞外マトリックス遺伝子、細胞外マトリックス受容体遺伝子、および細胞骨格遺伝子の発現をノーザンブロッティングで解析した(図6と7)。フィブロネクチンとβ1−インテグリンのわずかな増加を除いて、他の実験条件(分化の可逆的動機付けが起きる)下で得られた1:2馴らし培地で24時間処理しても、試験した遺伝子(c−jun、jun−B、c−myc、gro/MGSA、HLAクラスI抗原、ISG−15、α5−インテグリン、β−アクチン、γ−アクチン、またはテナスシン)の発現を変化または誘導しなかった。IFN−β + MEZ処理したHO−1細胞から得られた1:4馴らし培地に96時間暴露すると、フィブロネクチン、HLAクラスI抗原、β1−インテグリン、およびテナスシンの発現が増大し、ISG−15発現も誘導された。IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZで24時間処理した培養物から得られた1:4馴らし培地により増大したフィブロネクチンとテナスシンの場合を除いて、いずれの実験条件下でも種々の遺伝子の発現の修飾は明らかではなかった。
HO−1細胞メラノーマ細胞株は化学的に誘導して、特異的分化マーカーを可逆的に発現するかまたは最終細胞分化をさせることができる。本研究は、これらの細胞の変化の結果として修飾される遺伝子発現の特定のプログラムを測定するために行った。最終分化および程度は小さいが可逆的分化の誘導は、発現特異的即時型初期応答、インターフェロン応答性、サイトカイン応答性、細胞外マトリックス、および細胞外マトリックス受容体遺伝子の変化に関係していた。さらに、IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞から得られた馴らし培地も、最終分化の化学的誘導剤に直接暴露した後に観察されるHO−1細胞の遺伝子発現と同様の変化を引き起こした。これらの結果は、HO−1細胞の分化の可逆的および不可逆的誘導に、共通の遺伝子発現の変化が関係していることを示している。さらに、最終分化過程は、IFN−βとgro/MGSAの両方が関与するいくつかの自己分泌性経路の活性化と相関する。
即時型初期応答(immediate early response)遺伝子(例えば、c−myc、c−fos、c−jun、jun−B、およびjun−D)は、他のモデル系の増殖および/または分化の制御に関与していることが証明されている[33〜35]。c−mycの場合この遺伝子の発現の低下は、最終分化するように誘導されるかまたは分化関連遺伝子の誘導なしで細胞増殖の低下を引き起こす条件下で、多くの型の細胞で観察される(36、40)。種々のモデル細胞培養物系での分化の制御におけるc−myc発現の直接の役割も、c−mycアンチセンス体またはオリゴマーを用いて証明されている(41〜45)。特定の系でアンチセンス体またはオリゴマーによるc−myc発現の下方調節が、誘導剤の非存在下で分化と増殖抑制を起こすことが証明されている(45〜48)。HO−1細胞の可逆的分化そして最終分化の誘導ではさらに大きく、c−myc発現が低下した。IFN−β + IFN−γで処理した細胞中のc−mycの発現増強により示されるように、c−myc発現の下方調節は増殖抑制に依存しないが、この薬剤の組合せにより、メラノーマ分化の形態学的または生化学的マーカーの誘導なしに最大の増殖抑制が起きた。種々の誘導剤によるc−myc下方調節の時間的関係と強度に基づき、HO−1細胞の最終分化の誘導にはc−myc発現の連続的抑制が必要であった。アンチセンスc−myc作成体を用いる試験は、HO−1細胞のc−myc発現と最終分化の関係を直接調べるのに有用であろう。
2つの即時型初期応答遺伝子(immediate early response genes)(c−fosとc−jun)は、核シグナル伝達系に関与する転写因子をコードする(35、46、47)。これらの遺伝子の発現は、多くの外部刺激(例えば、サイトカイン、増殖因子、血清、ホルボールエステル、神経伝達物質、およびウイルス感染)により誘導され得る(35、46、47)。c−fosとc−junのタンパクは、DNAのAP−1部位(TGAG/cTCA)に効率的に結合するAP−1転写因子複合体の一部としてヘテロダイマーを形成することができる(35、46、47)。これまでの研究で、c−junとc−fosはいずれも、TPA、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)およびオカダ酸により誘導される単球分化の間に活性化されることが示されている(48〜50)。F9胎児性癌幹細胞の分化誘導の間に、AP−1活性が上昇することが証明されている(51)。これに対してc−jun、jun−B(c−junも誘導する多くの外部刺激により誘導される)の転写促進活性は、通常はc−junに活性化されるいくつかの遺伝子の負の制御物質として作用する(52、53)。ヒト細胞中でTPAにより誘導される単球分化の過程で、jun−B遺伝子転写、定常状態mRNAレベル、およびmRNA安定性は増大している(54)。同様に、マウスの肺からの無血清馴らし培地によりマウス細胞で誘導される単球分化の過程で、jun−B発現は増強している(55)。HO−1細胞中の増殖抑制と可逆的および不可逆的分化の誘導は、以後の時点でも変化しない。TPAに誘導される単球分化(48、54)と異なり、HO−1細胞におけるIFN−β + MEZによるjun−B発現の誘導は、転写レベルでのみ制御される(56)。これらのデータは、HO−1細胞におけるc−junとjun−B発現の増強は、HO−1細胞における最終分化の誘導に直接関係しないことを示している。しかしc−junとjun−B発現の持続的上昇は、HO−1細胞における分化プログラムの構成要素であるかも知れない。
細胞分化の過程はしばしば、細胞−細胞相互作用および細胞−細胞外マトリックス相互作用ならびに細胞増殖および細胞骨格遺伝子に関係している細胞形態の大きな変化に関連している(57)。さらに細胞の形および細胞−細胞外マトリックス相互作用はまた、腫瘍形成および転移に重要な役割を果たしている(58、59)。形質転換細胞はしばしば、細胞外マトリックスタンパクの受容体をコードする、フィブロネクチン発現の低下ならびに特異的インテグリン遺伝子の発現の低下を示す(60、61)。最近特に興味深いのは、α5β1インテグリン複合体がフィブロネクチンの主要な受容体であるかも知れないことである(62)。α5β1発現の低下は腫瘍発生的に形質転換した細胞(60)中で見いだされ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のα5−インテグリンおよびβ1−インテグリンcDNAの組合せの発現過剰は、形質転換された表現型の直接の抑制を引き起こす(61)。HO−1細胞中で可逆的分化を誘導した薬剤(MPA+MEZおよびRA+MEZ)、不可逆的分化を誘導した薬剤(IFN−β + MEZ)、および分化のマーカーを誘導せずに増殖抑制を増加させた薬剤(IFN−β + IFN−γ)は、フィブロネクチン、α5−インテグリン、およびβ1−インテグリン発現を増強させた。これらの知見は、増殖抑制を起こすIFN−β + IFN−γのようなサイトカインの特定の組合せ、およびHO−1細胞の分化または最終分化の可逆的動機付けを誘導する薬剤の組合せは、細胞外マトリックスと細胞外マトリックス受容体遺伝子発現を直接修飾することができる。これらの薬剤に誘導されるこれらの細胞の変化は、本来のというよりより正常の形質転換細胞表現型を反映する。この点で、種々の分化誘導および/または増殖抑制剤による処理の結果として誘導されたテナスシン発現の変化について記載することは価値がある。テナスシンは、特化した胎児性組織、神経外胚葉性起源の細胞および腫瘍で発現される(または顕著に発現される)細胞外マトリックスタンパクである(63)。一般に、分化腫瘍に対して未分化腫瘍で高レベルに発現される(63)。HO−1細胞はテナスシンを発現し、その発現レベルはIFN−γ単独またはIFN−βとの組合せにより増加するが、その発現はIFN−β、MEZ、またはRAによる処理、またはIFN−β + MEZまたはRA+MEZの組合せ中の連続的増殖により低下する。これらの結果は、HO−1細胞を特定の分化誘導剤で96時間連続的に処理すると、これらのヒト・メラノーマ細胞によりより分化した細胞の表現型が獲得されることのさらなる証拠である。
造血細胞中の分化の過程の増殖停止機構を解析する研究は、IFN−βをこの過程における重要な自己分泌性(autocrine)増殖阻害剤であることを示している(39、64、65)。造血細胞の分化過程における自己分泌性IFN−βの関与のさらなる証拠は、(1)c−myc mRNAの低下と、分化過程に関連する増殖阻害を部分的に阻止するIFN−β抗体の能力(IFN−α抗体の能力ではない);(2)骨髄分化過程での、インターフェロン制御因子1(IRF−1)(これはIFN−β遺伝子の発現の陽性転写因子である)の誘導;(3)IL−6に関連する増殖阻害と分化の白血病阻害因子誘導を部分的に阻止するIRF−1アンチセンスオリゴマーの能力;および(4)造血細胞における最終分化の間のI型インターフェロン(IFN−α/β)遺伝子発現の誘導である(39、64、65)。ヒト・メラノーマ細胞の可逆的および不可逆的分化の特定のプログラムの誘導におけるIFN−β自己分泌性ループの可能性は、本明細書に記載の実験によっても示唆される。MPA+MEZおよびRA+MEZによる処理に由来する可逆的分化、およびIFN−β + MEZ中の増殖に由来する最終細胞分化は、I型インターフェロン応答性遺伝子(HLAクラスI抗原、ISG−15およびISG−54を含む)の発現増強を引き起こす。IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞から得られた馴らし培地で処理したHO−1細胞で、同じ遺伝子発現の変化が起きる。さらに馴らし培地はHO−1細胞の増殖抑制を誘導し、IFN−β抗体はHO−1細胞のISG−15の馴らし培地による誘導を部分的に阻止する(56)。誘導剤で処理したHO−1細胞からの馴らし培地中のIFN−βを定量する試みは成功していない(66)。HO−1誘導剤処理馴らし培地でIFN−βが定量できないと考えられる理由は、測定系の検出限界の感度(すなわち、2単位/ml以下のIFN−β)よりIFN−βの存在量が少ないためであろう。この点で、分化するHO−1系は、少量の高特異的活性自己分泌性IFN−βも産生する種々の誘導剤で処理することにより最終分化が誘導される造血細胞と同様かも知れない(39)。分化するヒト・メラノーマ細胞に産生される推定の自己分泌性IFN−βを性状解析し、ヒト・メラノーマ細胞の分化と最終分化の可逆的動機付けの両方におけるその役割の可能性を決定するにはさらなる研究が必要であろう。本研究は、自己分泌性IFN−βは固形腫瘍の分化過程にも寄与するという仮説を支持する。
IFN−β + MEZ、およびこれらの誘導剤で処理したHO−1細胞からの馴らし培地に暴露して得られる遺伝子発現の変化の解析結果は、HO−1細胞の分化過程の間に産生される別の自己分泌性因子の存在を示唆している。これらの推定の自己分泌性因子の1つは、既に単離されているMGSAと呼ぶメラノーマ増殖因子である(67)。MGSAは、ヒト悪性腫瘍細胞株Hs294Tの低密度培養物から得られた無血清増殖培地中で同定されている(67)。MGSAの遺伝子はクローン化され(68)、ヒトMGSAの推定アミノ酸配列はアニソウィッツ(Anisowicz)らが単離したヒト「gro]cDNA(現在gro/MGSAと呼ばれている)のものと同じである(69)。gro/MGSAは、ヒト・メラノーマ生検試料由来の一次細胞培養物の約70%、および染色体異常を有する良性の母斑(nevus)細胞の大部分から分泌されるが、正常の核型を有する良性の母斑細胞はMGSA産生がマイナスである(70、71)。gro/MGSAmRNAのレベルは、MGSAで処理したヒト・メラノーマ細胞で増強しており、この分子の自己分泌性機能の可能性を示している(68)。gro−αとgro−βはまた、ヒト・メラノーマ細胞中のIL−1介在増殖停止の結果として誘導される初期応答性遺伝子である(72)。さらにMGSAの発現と分泌は多の型の細胞(IL−1、TNF、リポ多糖、トロンビン、またはTPAなどの多くの薬剤で処理したヒト内皮細胞を含む)で強く誘導される(73)。これらの観察結果は、gro/MGSA産生はヒト・メラノーマ細胞に限定されないことを示唆し、特定のメラノーマ細胞の増殖を刺激する以外にgro/MGSAは炎症過程においてある役割も果たすかも知れないことを示唆する。本出願人は、gro/MGSA遺伝子発現が、可逆的分化および最終細胞分化の特定のプログラムの間にHO−1細胞中で誘導されることを証明する。これに対して分化の生化学的および細胞学的マーカーの誘導のない増殖停止は、gro/MGSA誘導を引き起こさない。IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞から得られた馴らし培地が、本来のHO−1細胞中でgro/MGSAを誘導することができることは、HO−1細胞中の最終細胞分化の誘導の間にgro/MGSAが産生され得ることを示唆している。現在メラノーマ発生におけるgro/MGSA(構造的には、血小板第4因子、β−トロンボグロブリン、結合組織活性化ペプチド−3、およびマウスKC遺伝子のような多くの別の遺伝子に関連している)の機能は不明である。しかしながら現在のデータは、ヒト・メラノーマ細胞に対する増殖刺激作用以外に、gro/MGSAはメラノーマ細胞分化である役割も果たしているかも知れないことを示唆している。
要約すると、ヒト・メラノーマ細胞の分化と最終細胞分化の可逆的動機付けに関連する分子的変化を解析するために、HO−1細胞培養系が使用されてきた。両方の過程の誘導は重複する遺伝子発現の変化が関与するという証拠が示されている。しかし変化の程度と変化の持続は、ヒト・メラノーマ細胞の最終細胞分化表現型の誘導と維持における遺伝子発現変化の規定されたプログラムが関与しているかも知れないことを示唆している。メラノーマ細胞増殖と分化におけるその正確な役割は不明であるが、分化の誘導が自己分泌性因子(IFN−βやgro/MGSAを含む)を産生させることを示すデータも提示される。ヒト・メラノーマ細胞の最終細胞分化の過程での特定の遺伝子発現変化と特定の自己分泌性因子の機能の意義を規定するにはさらなる研究が必要である。その情報はメラノーマの発生と成長過程の理解に有用であり、この新生物疾患の治療に有用な新規の標的遺伝子および分子の同定に結びつくかも知れない。さらにHO−1細胞分化モデル系は、ヒト・メラノーマ細胞の増殖能力と最終細胞分化の喪失の誘導に関与する遺伝子の同定とクローニングに理想的に適しているようである。
第2実験シリーズ
関連するタイプおよび異なるタイプの細胞の両方で差別的発現(dlfferential expression)を示す遺伝子の同定とクローニングのための分子生物学的方法が記載されている(1〜5)。多様な標的細胞中で差別的に発現される遺伝子の同定を可能にした特に強力な方法は、サブトラクション・ハイブリダイゼーション(subtraction hybridization)である(4、5)。この方法は、形質転換/悪性腫瘍表現型の進展時に特異的に発現される遺伝子(5、6)、増殖停止を受けている細胞中の遺伝子(7)、特定のDNA損傷薬剤に誘導される遺伝子(8)、B細胞成長の特定の段階で発現される遺伝子(9)、プログラムされた細胞死に関係のある遺伝子(10)の同定に使用され成功している。サブトラクション・ハイブリダイゼーションは、まれな転写産物(4、5、9、11、14)、または2つのタイプの細胞の間で小さな変動を示す転写産物(4、8、11)の同定に理想的である。本明細書に記載されるように、サブトラクション・ハイブリダイゼーションはまた、未分化親細胞に対して分化誘導された細胞で高レベルに発現される遺伝子の同定とクローニングにも理想的な方法である。さらに、反対の方向にサブトラクションを行うことにより(すなわち、未処理対照(Ind-)から分化誘導処理(Ind+))、このプロトコールは最終分化の間に抑制される遺伝子の同定にも使用することができる。
組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)および抗白血病化合物のメゼレイン(MEZ)の組合せでヒト・メラノーマ細胞を処理すると、細胞増殖が急速に停止し、最終細胞分化が誘導される(すなわち、細胞は生きているが、増殖能力はない(15〜17))。最終細胞分化は、単独で使用されたIFN−βとMEZのいずれかの薬剤に対して本質的に感受性のためまたはこれに抵抗性のため、ヒト・メラノーマ細胞でIFN−β + MEZにより誘導され得る(15、16)。これに対してメラノーマ細胞をIFN−βまたはMEZ単独で処理すると、ヒト・メラノーマ細胞株HO−1の分化表現型の可逆性変化が起きる。この系は、可逆的分化や最終細胞分化に対して、遺伝子発現のどの変化が増殖抑制に直接相関しているかを決めるのに貴重な実験モデルである。本出願人は、簡便で有効なサブトラクション・ハイブリダイゼーション方法を開発し、可逆的分化および最終分化誘導化合物で処理した細胞で発現増強を示すメラノーマ分化関連(mda)遺伝子の同定に使用した。IFN−βとIFN−β + MEZの両方、MEZとIFN−β + MEZの両方、すべての3つの処理、IFN−β + MEZの組合せのみにより上方調節される遺伝子を含む、4つのmda遺伝子が同定されている。この方法は、重要な細胞過程に関与する差別的に発現される遺伝子の単離に至る単離のモデル系に適用できるであろう。
〈材料と方法〉
細胞株と分化誘導
ヒト・メラノーマ細胞株HO−1は、49才の女性からのメラニン性メラノーマであり、継代第125代と第150代(16)の間で使用した。HO−1細胞は、10%ウシ胎児血清を補足したダルベッコ-改変イーグル培地(DMEM)(DMEM−5)中で、二酸化炭素5%−空気95%の湿潤インキュベーター中で37℃で増殖させた。細胞は、未処理のままにするか(Ind-)、或いはIFN−β(2000単位/ml)とMEZ(10ng/ml)の組合せで、2、4、8、12および24時間処理した(Ind+)。発現実験のために、HO−1細胞を未処理のままにするか、またはIFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)またはIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)で12時間および24時間処理して、細胞のRNAを単離してノーザンブロッティングで解析した(17)。
cDNAライブラリーの作成
未処理(Ind-)試料およびIFN−β + MEZ処理(2、4、8、12および24時間)(Ind+)試料からの全細胞性RNAを、イソシアン酸グアニジン/CsCl遠心分離法により単離し、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーによりポリ(A+)RNAを選択した(18)。グブラーとホフマン(Gubler and Hofmann)法に基づくストラタジーン(Stratagene)(登録商標)(ラホイア、カリホルニア州)からのZAP−cDNA(商標)合成キットを用いてcDNA合成を行った(19)。ユニークな制限部位(Xhol)の隣のオリゴ(dT)よりなるプライマーアダプタを最初の鎖の合成に使用した。2本鎖cDNAをEcoRIアダブターに結合し、次にXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化した。得られたEcoRIおよびXhoI粘着末端により、最終cDNAをlac−Zプロモーターに関してセンスの方向でλZAPIIベクター中に挿入した(20)。λZAPIIベクターは、ファージミド(phagemid)へのファージクローンのインビボの変換を促進するバクテリオファージ由来のf1配列が隣接するpBluescriptプラスミド配列を含有する(20)。2つのcDNAライブラリーを作成した:分化誘導剤で処理したcDNAライブラリー(Ind+)(テスターライブラリー);そして対照の非誘導cDNAライブラリー(Ind-)(ドライバーライブラリー)。ライブラリーをギガパックIIゴールドパッケージングエキストラクト(Gigapack II Gold Packaging Extract)(ストラタジーン(Stratagene)(登録商標))でパッケージングし、PLK−F’細菌細胞(ストラタジーン(Stratagene)(登録商標))で増幅させた。
Ind + ライブラリーからの2本鎖DNAの調製
ストラタジーン(Stratagene)(登録商標)(ラホイア、カリホルニア州)記載の大量切り出し方法を用いて、Ind+ファージミド(phagemid)ライブラリーをλZAPから切り出した[21]。簡単に説明すると、1×107pfuのInd+cDNAライブラリーを10mM MgSO4中の2×108の大腸菌(Escherichia coli)のXL−1ブルー(Blue)株および2×108pfuのエクサシストヘルパー(ExAssist helper)ファージと混合し、37℃で15分間吸収した(22)。LB培地10mlを加えた後ファージ/細菌混合物を37℃で2時間振盪してインキュベートし、次に70℃で20分間インキュベートして、細菌とλZAPファージ粒子を加熱して不活性化した。4000gで15分間遠心分離した後、上清を無菌のポリスチレン管に移し、使用するまで4℃で保存した。
2本鎖DNAを作成するために、5×107pfuのファージミドを10mM MgSO4中の1×109の大腸菌SOLR株(これらはヘルパーファージの増殖に対して非許容的であり、従ってヘルパーファージによる同時感染を防止する(22))と一緒にし、次に37℃で15分間吸収した。ファージミド/細菌を50μg/mlのアンピシリンを含有する250mlのLB培地に移し、37℃で一晩振盪してインキュベートした。遠心分離して細菌を集め、2本鎖のファージミドDNAをアルカリ溶解法(18)で単離し、キアゲン(QIAGEN)−チップ500カラム(キアゲン社(QIAGEN Inc.)、チャツワース(Chatsworth)、カリホルニア州)に通して精製した。
対照Ind - ライブラリーからの1本鎖DNAの調製
前述の大量切り出し方法を用いて、ラムダZAPから対照Ind-cDNAライブラリーを切り出した。ファージミド(5×107)を10mM MgSO4中の1×109の大腸菌のXL−1ブルー株と一緒にし、37℃で15分間吸収した。ファージミド/細菌を250mlのLB培地に移し、37℃で2時間振盪してインキュベートした。ヘルパーファージVCS M13(ストラタジーン(Stratagene)(登録商標)(ラホイア、カリホルニア州))を2×107pfu/mlになるように加え、1時間インキュベート後、硫酸カナマイシン(シグマ(Sigma))を70μg/mlになるように加えた。細菌を一晩増殖させた。ファージミドを採集し、標準的プロトコールを用いて1本鎖DNAを調製した(18)。
ハイブリダイゼーション前の2本鎖DNAおよび1本鎖DNAの前処理
ベクターから挿入体を切り出すために、Ind+cDNAライブラリーからの2本鎖DNAをEcoRIとXhoIで消化し、フェノールとクロロホルムで抽出し、次にエタノール沈殿させた(5)。遠心分離後、ペレットを蒸留水に再懸濁した。Ind-cDNAライブラリーからの1本鎖DNAを光活性化ビオチン(フォトビオチン、シグマ(Sigma)、セントルイス、ミズーリ州)を用いてビオチン化した(23)。650μlの微量遠心分離管中で、1μg/mlの1本鎖DNAを50μlと1μg/mlの光活性化ビオチン水溶液50μlを混合した。溶液を破砕した氷の中で試験管を傾けて10cmの距離で太陽灯を300ワットで15分間照射した。この溶液に光活性化ビオチンを25μl加えてDNAをさらにビオチン化して、次に前述のようにさらに15分間照射した。結合しなかったビオチンを除去するために、反応物を200μlの100mMトリス−塩酸、1mM EDTA、pH9.0で希釈し、2−ブタノールで3回抽出した。0.3Mになるように酢酸ナトリウム(pH6.5)を加え、2倍量のエタノールでビオチン化DNAを沈殿させた。
サブトラクション・ハイブリダイゼーション(Subtracted Hybridization)とサブトラクションcDNAライブラリー
サブトラクション・ハイブリダイゼーションは基本的にはヘルフォート(Herfort)とガーバー(Garber)(24)が記載した方法を少し変更して行った。650μlのシリコン化微量遠心分離管中で、400ngのEcoRI消化およびXhoI消化したInd+cDNAライブラリーと12μgのビオチン化Ind-cDNAライブラリーを、20μlの0.5M NaCl、0.05M ヘペス(HEPES)(pH7.6)、0.2%(重量/容量)ドデシル硫酸ナトリウムおよび40%脱イオン化ホルムアミド中で混合した。混合物を5分間沸騰し、42℃で48時間インキュベートした。このハイブリダイゼーション混合物を0.5M NaCl、10mMトリス(pH8.0)、1mM EDTAで400μlに希釈し、次に15μgのストレプトアビジン(ビーアールエル(BRL)(登録商標))水溶液を加え、室温で5分間インキュベートした。試料をフェノール/クロロホルム(1:1)で2回抽出し、有機相をTE緩衝液(pH8.0)中0.5M NaCl 50μlで逆抽出を行った。さらに10μgのストレプトアビジンを加え、フェノール/クロロホルム抽出を繰り返した。短時間凍結乾燥して過剰のクロロホルムを除去し、最終溶液をTE緩衝液(pH8.0)で2mlに希釈し、製造会社が勧めるようにセントリコン(Centricon)100フィルター(アミクロン(Amicron);ダンバーズ(Danver)、マサチューセッツ州)で2回抽出した。次に濃縮したDNA溶液(約50μl)を凍結乾燥した。サブトラクションcDNAを、λZAPIIベクターのEcoRI消化しXhoI消化しCIAP処理したアーム(arm)に結合させ、ギガパックII・ゴールドパッケージング・エキストラクト(Gigapack II Gold Packaging Extract)(ストラタジーン(Stratagene)(登録商標)、ラホイア、カリホルニア州)でパッケージングした。このライブラリーをPLK−F’細菌細胞を用いて増幅した。
サブトラクションcDNAライブラリーのスクリーニング
前述のエクサシストヘルパー(ExAssist helper)ファージを用いてライブラリーの大量切り出しを行った。大腸菌のSOLR株とcDNAファージミドを37℃で15分間混合し、アンピシリンとIPTG/X−galを含有するLB平板に蒔いた。白色のコロニーを無作為に選択し、単離し、LB培地で増殖させた。プラスミドのミニプレップ(miniprep)と制限酵素消化を行って挿入体の存在を確認した。挿入体を単離し、ノーザンブロッティング解析のプローブとして使用した(5、25)。IFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)、およびIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)で処理したHO−1細胞から全細胞性RNAを調製し、0.8%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜(アマーシャム(Amersham)、アーリントンハイツ(Arlington Heights)、イリノイ州)に移した。ランダム・オリゴヌクレオチド・プライミング(25)により放射標識したプローブを作成した(25)。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション後の洗浄およびオートラジオグラフィーは、既に記載されているように行った(5、18、25)。
mda遺伝子の配列
2本鎖pBluescriptDNAを鋳型としてmdaクローンの配列を決定した。DNA配列決定は、シークエナーゼ(sequenase)(米国バイオケミカル社(United States Biochemical Corp.)、クリーブランド、オハイオ州)とT3プロモータプライマー(ギブコ(GIBCO)(登録商標)、ビーアールエル(BRL)(登録商標)、ガイサーズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州)を用いてサンガー(Sanger)のジデオキシ鎖法により行った。この方法は挿入体の5’からの配列を生成する。配列は、ジーンバンクFMBL(GenBank FMBL)データベースとGCG/FASTAコンピュータープログラムを用いて同定した。
〈実験結果〉
サブトラクション・ハイブリダイゼーションは、選択した遺伝子またはこれにコードされた生成物の情報がない場合に優先的に発現されたmRNAに相当するcDNAクローンを単離する有用な方法である(1〜10)。この方法により、差別的に発現されたcDNAクローンが実質的に濃縮され、全cDNAを用いる差別的ハイブリダイゼーション法に好適である(4、5、11〜14)。サブトラクションライブラリー生成のために多くのプロトコールが報告されている[4で概説されている]。伝統的な方法は、1つのタイプの細胞のmRNAから作成した第1の鎖のcDNA(テスター)を、第2のタイプの細胞から調製したmRNA(ドライバー)
[または、特定の遺伝子調節薬剤で処理した第1のタイプの細胞]とハイブリダイズさせる[7〜9]。次にハイブリダイズしなかった1本鎖のcDNAを、ハイドロキシアパタイトのカラムクロマトグラフィーにより選択し、第2の鎖のcDNAの合成の鋳型として使用する(7〜9)。しかしこの方法には以下のようにいくつかの限界がある:ハイブリダイゼーション中にRNAを扱う必要が有りこれは問題が多い、そしてハイブリダイゼーションとカラムクロマトグラフィー後に回収されるcDNAの量が限られていることである。他のサブトラクション・ハイブリダイゼーション法では、cDNAと光ビオチン化RNAを使用する(23、26)。これは多量のmRNAが必要なこととハイブリダイゼーション中にRNAを扱う必要があり、まだ問題がある(22)。最近改良されたサブトラクション・ハイブリダイゼーションでは、テスターおよびドライバー核酸集団としてcDNAライブラリーを使用する(24、27、28)。クローン化された型に存在するドライバー配列を使用することにより、この新しい方法は、mRNAの量が少ないことに関連する問題およびmRNAの調製と扱いに由来する困難さを避けている。サブトラクション・ハイブリダイゼーション法の改良点には、ファージミドサブトラクション・ハイブリダイゼーションの使用(27);指向性の(directional)挿入体を有する1本鎖ファージミドの使用(28);テスターとして2本鎖cDNA挿入体そしてドライバーとして1本鎖cDNAの使用(21)がある。
サブトラクションライブラリーの作成のために本出願人が使用した方法は、ルーベンスタイン(Rubenstein)ら(28)、およびヘルフォート(Herfort)とガーバー(Garber)(24)の記載した方法の変法である。この方法の概略を図8に示す。サブトラクションライブラリー作成のための本出願人の方法は、λファージと市販の試薬を用いる。他の同様の方法では(22、27、28)、サブトラクション・ハイブリダイゼーションの最終生成物は2本鎖DNAに変換される1本鎖ファージミドDNAであるか、またはプラスミドベクターに結合される2本鎖挿入体である。これらの方法は2つの潜在的な欠点を有する:ファージ感染に対してプラスミドによる細菌形質転換の効率が悪いこと、そしてドライバー1本鎖DNAの調製に混入する2本鎖ファージミドを注意深く除去する必要があること。λファージをベクターとして用いることによりこれらの問題は容易に避けられる。細菌へのこのファージ感染効率は高く、しばしば109pfu/μg DNAのレベルに達する(21)。さらにこれらはパッケージングされず細菌にトランスフェクションされないため、調製に混入するプラスミドの問題も避けられる。従ってこの方法では、高力価のサブトラクションライブラリーが作成される。インビボでの切り出しによりファージミドに変換されるλUni−ZAPベクターを使用することにより、プラスミドにDNA挿入体をサブクローニングする面倒な作業が不要となる。
cDNAライブラリーとサブトラクションライブラリーは、ストラタジーン(Stratagene)(登録商標)(ラホイア、カリホルニア州)からの市販のZAP−cDNA(商標)合成キットを用いて調製した(5)。この製品は、サブトラクションライブラリーのためのいくつかの利点を有する。まず、XhoIアダプタープライマーは、ベクター中へのcDNAの単一方向の挿入を可能にする。ハイブリダイゼーションは、同じcDNAライブラリー中の相補的な分子ではなく、異なるcDNAライブラリー中の相補的な分子間でのみ起きれば、サブトラクション・ハイブリダイゼーションの効率は高いであろう。この改良されたサブトラクション・ハイブリダイゼーションは、各実験条件下からの1本鎖および2本鎖の単一方向cDNAライブラリーを用いて達成される。mdaサブトラクションライブラリーの作成のために(図8)、HO−1対照Ind-cDNAライブラリーとIFN−β + MEZ処理Ind+cDNAライブラリーを単一方向で作成した。サブトラクション・ハイブリダイゼーションの効率は、1本鎖単一方向Ind-cDNAをドライバーとして用いて確認した。第2に、バクテリオファージf1複製開始点(λZAPIIベクター中に存在する)により、バクテリオファージからのpBluescriptIISK(−)ファージミドの切り出しとヘルパーファージに補助される1本鎖DNAのレスキュー(rescue)が可能になる(20)。ZAP−cDNA(商標)キットの一部として提供される大腸菌XL−1ブルー株とSOLR株は、1本鎖および2本鎖ファージミドDNAの調製に非常に有用である。XL−1ブルー株はエクサシストヘルパーファージの増殖を許容するが、SOLR株は非許容性である(22)。ファージミドはXL−1ブルー細菌細胞中のエクサシストヘルパーファージとともに切り出される。次にファージミドをSOLR細菌細胞中で増幅させて2本鎖DNAを採取するか、またはヘルパーファージとともにXL−1ブルー細胞中で増幅させて1本鎖DNAを採取する。この方法を用いて2本鎖DNA調製物中のヘルパーファージと1本鎖DNAの混入を最小にした。1本鎖DNAと同じcDNAライブラリー(テスター)からの可能性のあるユニークな配列との間の相補的結合のため、混入によりサブトラクション・ハイブリダイゼーションの効率が低下する。このためユニークな配列が、ベクターに結合される適当な末端と2本鎖挿入体を形成することができなくなる可能性がある。第3の点は、サブトラクションライブラリーの作成のためのベクターとして使用できるUni−ZAPアームの市販品があることである。テスター挿入体は、制限酵素EcoRIとXhoIで消化することによりファージミドベクターから放出される。サブトラクション・ハイブリダイゼーションの後、相補的ハイブリダイゼーションのため2本鎖型である残りの挿入体は、EcoRIとXhoI粘着末端を有するためUni−ZAPアームに単一方向で結合される。この方法では別のベクターの必要性がなくなる。次にサブトラクションライブラリーをファージミドライブラリーに変換すれば、これはスクリーニング、配列決定、インビトロRNA転写、そして突然変異誘発が容易である。うまく設計された市販のキットが出現する前は、サブトラクション・ハイブリダイゼーションとサブトラクションライブラリー作成は時間と手間のかかる作業であった。本明細書中で本出願人が記載する方法は直接的であり、サブトラクションライブラリーの生成効率が高い。
本出願人が記載した前述の方法を用いて、対照HO−1細胞(Ind-)と最終分化誘導剤(IFN−β + MEZ)で処理したHO−1細胞(Ind+)からcDNAライブラリーを作成されている。このcDNAライブラリーの元々の力価は、(Ind-)と(Ind+)についてそれぞれ0.2×106pfu/mlと1.7×106pfu/mlであった。高力価が得られたことは、このcDNAが使用した実験条件下で生成したmRNAを代表していることを示唆している。1本鎖DNAと2本鎖DNAの純度は、制限酵素EcoRIとXhoIで消化して調べた。2本鎖DNAと異なり、1本鎖DNAは制限酵素で消化できない。これは図9で証明されており、2本鎖DNAの消化後プラスミドベクターが放出されるが、1本鎖DNAでは放出は起きない。サブトラクション・ハイブリダイゼーションのために、2本鎖DNA(テスター:Ind+)400ngと1本鎖DNA(ドライバー:Ind-)12μgを使用した。ハイブリダイゼーションを1回行った後、Uni−ZAPXRベクター中で、元々の力価が8〜10×103pfu/mlであるInd+サブトラクションライブラリーを作成した。さらにサブトラクション・ハイブリダイゼーションを行うと、挿入体を含有するコロニーの割合が低下した。これは第1回目のサブトラクション・ハイブリダイゼーションの後に残っているおそらくユニークな配列の濃度が低いためかも知れない。この観察結果は、本出願人が記載したサブトラクション・ハイブリダイゼーションプロトコールの応用が非常に有用であり、差別的に発現された遺伝子を同定するために追加のサブトラクション・ハイブリダイゼーションの必要がないことを示している。
差別的に発現される配列のサブトラクションライブラリーのスクリーニングは、いくつかの方法を用いて行われる。いくつかの研究ではサブトラクションライブラリーは、差別的ハイブリダイゼーション法を用いてスクリーニングされている(7、8、27)。しかし標的mRNAが比較的多いため、この方法の感度は限定される。我々のサブトラクションライブラリーで得られた標的配列の濃縮により、未分化HO−1細胞またはIFN−β、MEZまたはIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞中のmRNA発現の評価のためのクローンのランダム単離が可能になった。インビボの切り出し後、サブトラクションライブラリーを含有する細菌を蒔き、ランダムに単離されたクローンをプラスミドの調製に使用した。次にこれらのクローンからのEcoRI/XhoI消化cDNA挿入体を、異なる実験条件下でのmRNA発現のノーザンブロッティング解析のためのプローブとして使用した。最初に解析した70個のcDNAクローンのうち、23クローンはInd-とInd+処理HO−1細胞の間で遺伝子発現の差を示すことが見いだされた。予想されたように、IFN−β + MEZ処理したHO−1cDNAからの対照HO−1cDNAのサブトラクションにより、誘導剤で24時間処理後に発現増強を示す一連のmda遺伝子が得られた。これらには、IFN−βとIFN−β + MEZの両方で誘導可能なもの、すなわちmda−1とmda−2;MEZとIFN−β + MEZの両方で誘導可能なもの、すなわちmda−3;IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZで誘導可能なもの、すなわちmda−4;およびIFN−β + MEZでのみ誘導可能なもの、すなわちmda−5とmda−6などの、mda遺伝子が含まれていた(図10)。特定のmda遺伝子は、IFN−β + MEZに96時間暴露すると発現増強を示した(非掲載データ)。
本研究で報告された6つのmda遺伝子のうち、mda−3のみが既に報告されている遺伝子に相当する(図11)。現在mda−3の245塩基対の配列が決定されており、このcDNAは、pLD78(29)、pAT464(30、31)、pAT744(31)、およびGOS19(32〜34)の報告されている配列と>99%の相同性を有する。pLD78 cDNAは、ヒトの扁桃腺リンパ球中でTPAまたはT細胞分裂促進因子である植物凝集素(PHA)により誘導可能である(29)。mda−3はMEZ、IFN−β + MEZおよびIFN−β+TPAによる処理で24時間以内にHO−1細胞中で誘導される(非掲載データ)。pLD78 cDNAをコードするゲノムDNAの5’フランキング領域の配列は、ヒトインターロイキン2および免疫インターフェロン遺伝子の対応する領域と有意の相同性を示す(29)。pAT464およびpAT744はT細胞、B細胞および前骨髄球細胞株HL−60中で、TPAおよびPHAにより誘導され、この組合せで誘導が最大になる(31)。これに対して、これらのcDNAはヒト繊維芽細胞中では発現されないが、本研究で示されるように同様と考えられるcDNAのmda−3はヒト・メラノーマで誘導される。pAT464とpAT744は、結合組織活性化因子III、血小板第4因子、IFN−γ誘導因子、マクロファージ炎症性タンパクおよび好中球に対する走化性因子(3−10C、単球誘導性好中球走化性因子、好中球活性化因子)などの一群の分泌因子と、決定的に重要ないくつかの因子とアミノ酸の類似性を共有する(31)。GOS19遺伝子は「小誘導性」(″small inducible″)の群の遺伝子であり、これは同様のエクソン−イントロン構成を示し、システインやプロリン残基と同様の構成を有する分泌タンパクをコードする(32〜34)。GOS19−1mRNAは、ヒトの血液の単核球細胞の培養物にシクロヘキシミドまたはレクチンを添加すると直ちに増大する(32)。このcDNAは、幹細胞増殖を低下させる阻害性サイトカイン(MIPIα/SCI)をコードするマウス遺伝子と配列相同性を有する。この意味で、成人のTリンパ球で発現される主要なGOS19遺伝子であるGOS19−1は、骨髄幹細胞集団の造血性の負の制御物質をコードする。メラノーマ細胞増殖と分化におけるmda−3の役割は決定されていない。
現在、新規のmda遺伝子(mda−1、mda−2、mda−4、mda−5およびmda−6)を性状解析し、メラノーマ発生の異なる段階および増殖抑制の段階、ヒト・メラノーマ細胞での分化および最終分化の可逆的動機付けにおけるその発現を決定する研究が行われている。本出願人がここで解析したcDNAクローンは、完全なサブトラクションライブラリーのうちのほんのわずかであると強調しておく。これは、サブトラクションライブラリーは、ヒト・メラノーマ細胞の化学的分化誘導と増殖抑制に関与する別の遺伝子を同定しクローニングできる可能性があることを示唆している。さらにドライバーDNAを変更することにより、すなわちIFN−βとMEZでのみ処理されたHO−1細胞から作成されるcDNAライブラリーの組合せを用いると、最終分化した(すなわち、IFN−β + MEZの組合せで処理した)ヒト・メラノーマ細胞中でユニークに発現される遺伝子をさらに濃縮することができるはずである。
要約すると、本出願人は、差別的に発現された遺伝子の同定とクローニングに使用できるサブトラクション・ハイブリダイゼーションしたcDNAライブラリーの産生のための効率的で感度のよい方法を記載する。基本的なプロトコールは、ドライバーとしてビオチン化1本鎖DNAを使用し、ベクターとしてバクテリオファージを使用し、サブトラクトcDNAライブラリーの作成のために市販の試薬の利用可能性に依存している。このプロトコールの有用性は、ヒト・メラノーマ細胞の分化誘導剤に関連したサブトラクションライブラリー中の遺伝子(すなわちmda遺伝子)から得られた高レベルの濃縮により証明される。この方法は、差別的に発現される遺伝子の同定とクローニングに広く応用できるであろう。これらは、増殖能力を喪失するように誘導されたかまたはアポトーシス(apotosis)を受けた細胞、化学療法剤で処理された細胞、および可逆的または最終分化を誘導されたかまたは拘束された細胞中で、密接に関連したタイプの細胞の間の修飾された発現、異なるタイプの細胞の間の発現を含むが、これらに限定されない。
第3実験シリーズ
ヒトにおける悪性メラノーマ(結節型メラノーマを除く)の発生は、明確に規定された段階の不連続なシリーズが関与する進行性の過程である。集中的な科学的解明が行われているにもかかわらず、発生するメラノーマの種々の段階へのメラノーマ細胞の変換を制御する遺伝的要素は同定されていない。さらに転移性メラノーマを治療する確実に有効な方法は存在しない。本計画の長期的目標は、メラノーマの増殖、分化および進展を制御する遺伝子を規定することである。この知見は、治療法の目標を解明するのに有用となるであろう。
メラノーマ細胞における腫瘍の進展は、正常なメラニン細胞分化の変化したパターンと関係している。癌細胞の最終分化の化学的誘導は、特定の新生物に関連した負の予後を逆転するための有用な方法である。最近の研究は、組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)と抗白血病化合物のメゼレイン(MEZ)の特定の組合せが、ヒト・メラノーマ細胞を最終分化(すなわち、細胞が生きているが、増殖能力は不可逆的に喪失している)を受けるように再プログラムすることができることを示している。これに対してIFN−βまたはMEZを単独で同等量をヒト・メラノーマ細胞に適用すると、分化の可逆的動機付けが起き、すなわち誘導剤を除くと細胞増殖と分化に関連した特定の性質の喪失が再び起きる。
サブトラクション・ハイブリダイゼーションは、ヒト・メラノーマ細胞の最終分化の誘導に関連する遺伝子型の変化を検出するのに使用される。この方法を用いると、未処理メラノーマ細胞に対して最終分化を誘導されたメラノーマ細胞中の発現増強を示すcDNAを検出できる。これらの差別的に発現されるcDNA(仮に、メラノーマ分化関連(mda)遺伝子と呼ぶ)の部分的配列解析は、これらが公知の遺伝子とまだ同定されていない遺伝子の両方からなることを示している。特定のmda遺伝子は、癌細胞の増殖および/または細胞へのメラニン細胞系統の拘束に関連する新規な遺伝的要素であるかも知れない。
本計画の具体的な目的は、メラノーマ増殖、分化および進展におけるmda遺伝子の機能的な役割を性状解析することである。これを考慮して本研究は、以下の目的のために行われる:
1)メラニン細胞、母斑細胞、放射増殖相メラノーマ細胞、垂直増殖相メラノーマ細胞、および転移性メラノーマ細胞におけるmda遺伝子の発現のパターンと制御の決定;
2)mda遺伝子発現と、ヒト・メラノーマおよび他のモデル分化系の、分化の可逆的動機付け、分化誘導のない増殖抑制、DNA傷害とストレス応答および最終分化の誘導の間の関係の解析;
3)メラノーマ分化と進展に関係しているかも知れないmda遺伝子の全長cDNAの単離と、ヒト・メラノーマの分化と進展におけるその機能的役割の可能性の直接的決定;
4)適当なmda遺伝子のプロモーター領域の単離と性状解析、およびヒト・メラニン細胞、母斑およびメラノーマにおけるその制御の解析。
メラノーマ細胞の増殖能力を喪失を媒介し最終分化をするように再プログラムする遺伝子を活性化するようにデザインした実験戦略は、転移性メラノーマの有効な治療的介入のための新規な方法である。クローン化された遺伝子の機能の解明は、メラノーマ分化と進展の過程への分子的知見を与える。さらに具体的なmda遺伝子は、転移性メラノーマや他の癌原生の細胞の増殖抑制に利用できる臨床的に興味深い標的となるかも知れない。
背景と意義
悪性メラノーマは癌の進行過程の典型であり、転移性表現型の選択的性質と転移性細胞の増殖優勢性を強調する(概説1〜3)。北米人の間で発生する多くの癌のうち、メラノーマは最大の速度で増加しており、現在生まれる新生児100人に1人は最終的に表面拡散型のメラノーマを発症するであろうと予測されている(3、4)。メラノーマは初期段階では確実に治療できるが、転移性疾患や悪性メラノーマの進行した段階の患者の死の防止には外科的および化学療法的介入は事実上無効である。これらの観察結果は、転移性メラノーマの患者をより効率的に治療できる改良された治療法の必要性を強調している。
ヒトにおける悪性メラノーマ(結節型メラノーマを除く)の発生は、進化する癌細胞における一連の連続的変化よりなる(概説1〜4)。これらには、共通の後天性のメラニン細胞性母斑(母斑)への正常メラニン細胞の転換、これに続く異形母斑の発生、放射性増殖相(RGP)初期メラノーマ、垂直増殖相(VGP)初期メラノーマおよび最終的な転移性メラノーマを含む。前述のように、病変の厚さが0.76mm以下の場合はVGPの間であっても容易に治療可能であるが、現在用いられている方法はVGP病変が4.0mmを越える患者の場合は転移の進展や死を防ぐにはあまり有効ではない(生存率<20%)。この実験モデル系は、メラノーマの進行の初期相および後期相を媒介する決定的に重要な遺伝的変化を評価するのに理想的に適している。
より毒性の低い癌治療法には分化治療法と呼ぶ方法がある(5〜9)。2つの前提がこの治療法の基礎になっている。(A)多くの新生物細胞は異常な分化パターンを示し無制限に増殖する;(B)適当な薬剤で治療すると、癌細胞が増殖能力を失って最終分化するように再プログラムすることができる。この仮説の背景にあるのは、多くの癌細胞で正常な分化を介在する遺伝子は遺伝的に欠陥があるのではなく、適切に発現されないのであるという考えである。分化した表現型を誘導する適当な遺伝子が転写的に活性化されて最終細胞分化を誘導する適当な遺伝子を生成するため、具体的な例で分化治療法が成功することがある。本出願人はヒト・メラノーマ細胞を用いてこの仮説を試験した(10〜14)。ヒト・メラノーマ細胞をヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)と抗白血病化合物のメゼレイン(MEZ)の組合せで治療すると、増殖が急速に停止し、形態変化が誘導され、抗原性表現型が変化し、メラニン合成の増加と増殖能力の不可逆的喪失(すなわち、最終細胞分化)が起きる(10、11、14)。IFN−β + MEZは、各薬剤を単独で使用した場合の抗増殖作用に本質的に耐性のヒト・メラノーマ細胞の最終分化を有効に誘導する(10)。これに対して、IFN−βまたはMEZを単独で使用した場合は、ヒト・メラノーマ細胞でいくつかの同様の生化学的および細胞学的変化を誘導するが、これらの変化は誘導剤の除去により逆転することができる(すなわち分化の可逆的動機付け)(10、14)。正常なヒト・メラニン細胞に対するIFN−β + MEZの作用は報告されていないが、クラサガキス(Krasagakis)(15)らは、正常ヒト・メラニン細胞の増殖に対するIFN−β+TPA(これはメラニン細胞増殖培地中に存在していた)の作用を測定した。MEZはTPAといくつかのインビトロの性質(例えば正常なメラニン細胞の増殖に対してTPAを置換すること、プロテインキナーゼCを活性化すること、そして細胞分化を調節する)を共有する(14、16)。しかし、MEZは癌促進の第2相では非常に強力であるが、TPAに対してマウスの皮膚の腫瘍形成の開始促進モデル中でTPAを置換した時、MEZは非常に弱い癌プロモーターである(17、18)。正常なメラニン細胞を、TPA、コレラ毒素、イソブチルメチルキサンチンおよびウシ胎児血清を含有する最適増殖条件下で増殖させると、高濃度(10,000単位/ml)または白血球インターフェロン(IFN−α)、繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)または免疫インターフェロン(IFN−γ)でさえ増殖を阻害しない(15)。これに対して。TPAを含有せず増殖可能性が低下した改変メラニン細胞培地中で増殖させると、IFN−βのみが有意に増殖を阻害する。無血清培地中で試験すると、3つのインターフェロン調製物はすべてSKMel−28ヒト・メラノーマ細胞株に対して増殖阻害性であり、IFN−βが最も増殖抑制が強い(15)。IFN−βは、血清含有培地中で増殖させたいくつかの追加のヒト・メラノーマに対して、IFN−αより増殖抑制が強いことが証明されている(10)。これらの結果は、IFN−βがメラニン細胞増殖の負の制御物質であり、悪性形質転換によりインターフェロンに対する感受性が上昇するという仮説を支持する(10、15)。TPAの場合は、正常のメラニン細胞のインビトロの増殖に必須であり、ここでTPAとMEZは多くのヒト・メラノーマ細胞に対して増殖阻害性である(14〜16、19、20)。
メラノーマは癌の進行過程を解析する有用な実験モデルである(概説1〜3)。癌の進行の異なる段階である正常のメラニン細胞、母斑およびメラノーマ細胞の増殖を可能にする細胞培養系が利用できる(1〜3、20〜25)。メラニン細胞系統の細胞の性質の解析は、区別すべきメラノーマの進行の異なる段階を可能にするいくつかの性質を示している。これらには:(a)形態;(b)培養物の寿命;(c)染色体異常;(d)足場非依存性(anchorage-independent)増殖;(e)腫瘍形成;(f)HLA−DR(クラスHLAII抗原)と細胞内接着分子−1(ICAM−1)抗原の発現;(g)癌促進薬剤(12−O−テトラデカノイル−ホルボール−13−アセテート(TPA))への応答;(h)インビトロの増殖因子非依存性,(i)塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)の自己分泌性産生、および(j)サイトカインによる増殖阻害がある(概説2、21、25)。しかしメラノーマ進行モデルの限界は、初期RGPまたは遺伝的に関連したより進行したメラノーマである初期VGPメラノーマ(厚さ0.76mm未満)を発症した同じ患者から得るすることができないことである。カーベル博士(Dr.Kerbel)と共同研究者の最近の研究は、ヌードマウスで適切な操作(マトリゲル(matrigel))と癌選択により、初期段階、非腫瘍形成能またはわずかに腫瘍形成能(ヌードマウスで)のヒト・メラノーマ細胞株をより進行した腫瘍形成能および転移性状態に自発的に進行させることができることを示唆している。さらに、アルビノ博士(Dr.Albino)と共同研究者は、ウイルス性Ha−ras癌遺伝子を含有するレトロウイルスで感染させて、正常なヒト・メラニン細胞を完全なメラノーマ表現型および遺伝子型に進行させることができることを証明した。形質転換したメラニン細胞はすべてのメラノーマ性を獲得し、インビボのメラノーマ発生で起きるのと同じ細胞遺伝学的変化を示した(20)。これらの細胞株は、メラノーマ進行に関与する生化学的および遺伝学的変化を評価するのに有用であろう。要約するとメラノーマの進行の具体的な成分を明確に規定することができれば、癌進行を媒介する遺伝子型変化を規定する有用な実験モデルとなるであろう。
メラノーマ発生と進行を媒介する決定的に重要な遺伝的変化は、まだ規定されていない。最近の研究は、特定の癌遺伝子、増殖因子遺伝子(塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)以外に)、増殖因子受容体遺伝子、プロテアーゼ遺伝子および初期応答遺伝子の発現と、メラノーマ進行の関係の可能性に注目している(26〜30)。一連の転移性メラノーマ細胞株を用いて、いくつかの増殖因子(bFGF、血小板由来増殖因子(PDGF)−A、PDGF−B、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β1、TGF−α、メラノーマ増殖刺激活性(MGSA;groとも呼ばれる)、インターロイキン(IL−1αおよびIL−1β)と初期応答(c−fos、c−junおよびjun−B)遺伝子)の定常状態mRNA転写産物が発見された(27、28)。すべての転移性メラノーマ細胞株はbFGF遺伝子を発現し、大部分の転移性メラノーマは無血清培地および血清含有培地中でc−fos、c−junおよびjun−Bを発現した。試験した他の増殖因子遺伝子に関しては、各転移性メラノーマは特異的で異なる発現パターンを示した(27)。これに対して、正常メラニン細胞の2つの株は検出できるレベルで、TGF−β1mRNAを発現したがbFGF、PDGF、TGF−αまたはMGSAmRNAを発現しなかった(27)。転移性メラノーマおよび正常メラニン細胞は、c−fos、c−junおよびjun−Bを発現するが、正常メラニン細胞におけるこれらの転写産物の発現は、培地中の増殖促進薬剤の存在に依存した(28)。これに対して、血清の存在下でまたは非存在下で増殖させた転移性メラノーマ細胞では異なるレベルの初期応答遺伝子が観察された(28)。一般に、胎児性メラニン細胞に比較して転移性メラノーマではjun−Bとc−fosRNA転写産物の増加とc−junRNA転写産物の低下が観察された(28)。胎児性メラニン細胞に比較して転移性メラノーマでの初期応答遺伝子発現のこれらの差異の関連はまだ決定されていない。最近の研究では、アルビノ(Albino)ら(30)はPCRを用いて、19の転移性ヒト・メラノーマ細胞株と14の正常のヒト包皮メラノーマ細胞株中の11の異なる増殖因子のRNA転写産物のレベルを測定した。TGF−β2(19の19)、TGF−α(19の18)、およびbFGF(19の19)の転写産物が転移性メラノーマ中に見いだされたが、正常のメラニン細胞にはなかった。これに対してTGF−β1とTGF−β3は、転移性メラノーマと正常のメラニン細胞の両方で発現された。メラノーマ進行に対するこれらの変化の意義は明らかではない。しかしこれらの結果は、特定の遺伝子(bFGF、TGF−β2、TGF−αおよびおそらく初期応答遺伝子)の差別的発現が転移性メラノーマ表現型に寄与しているかまたは直接関係しているかも知れないことを示唆している。
家族性メラノーマの遺伝学的系統解析、細胞遺伝学的解析、種々の分子学的方法(腫瘍DNA試料中のLOHを同定するためのRFLP解析、およびミクロセル遺伝子トランスファー方法)に基づき、第1、6、7および9染色体の遺伝子のランダムでない変化がヒト・メラノーマの病因に寄与していることが明らかである(31〜41)。現在の解析段階で少なくとも5つの遺伝子(第1、6、7および9染色体上)が悪性メラノーマの発生に寄与し、そして腫瘍の広範な不均一性は悪性の表現型への寄与物質としての追加の遺伝子座を示している(概説38、41)。メラニン細胞から転移性メラノーマへの腫瘍の進行の提唱されたモデルは、第1および9染色体の変化はメラノーマ進行の初期の事象であり、第6および7染色体の変化は癌進行の後期の事象であることを示唆している(38、41)。ヒト・メラノーマにおける第6染色体の抑制的役割の直接的証明が最近なされた(37)。ミクロセル媒介遺伝子トランスファーを用いて、正常のヒト第6染色体がヒト・メラノーマ細胞(UACC−903)に挿入され、インビトロの形質転換性およびヌードマウスで腫瘍形成を抑制することが証明された(37)。ウェルチ博士(Dr.Welch)と共同研究者は、C8161ヒト・メラノーマ細胞株に第6染色体を挿入すると、転移性能力が抑制されるが腫瘍形成能力が抑制されないことも証明した(42)。トレント(Trent)らの結果(37)とウェルチらの結果(42)の間の見かけの不一致は、UACC−903とC8161細胞の差に関係しているかも知れない。C8161細胞はヌードマウスで腫瘍形成能と転移性の両方を示し、UACC−903細胞はヌードマウス中で腫瘍形成能であるが転移性ではない。この差は、第6染色体上の転移性サプレッサーの存在を隠してしまうか、または第6染色体が癌遺伝子と転移抑制遺伝子の両方を含有することを示唆している。C8161細胞を有する第6染色体は、その生物学的応答とIFN−β + MEZで処理した後の遺伝子発現において親株C8161細胞とは異なることが見いだされている(43)。第1、7、および/または9染色体をこれらの染色体の異常を有するメラノーマ細胞中にミクロセル媒介遺伝子トランスファーにより再導入することで、形質転換性および腫瘍形成能の同様の抑制が誘導されるかいなかを調べるには、さらなる研究が必要である。同様に、第6染色体上の推定のメラノーマ抑制遺伝子、および別の染色体上の抑制遺伝子が、ヒト・メラノーマ細胞にこれらの作用を示す機構、およびこれらの遺伝子による癌の進行を制御する機構はまだわかっていない。
最近の研究は、少なくとも23のIFN−α遺伝子と擬遺伝子(これらはすべて、9p座に位置するIFN−β遺伝子の近傍(9p22〜13)に存在する)の存在を証明した(44、45)。第9染色体上の特定の座のランダムでない変化は、メラノーマ発生の初期段階であると思われる。従って情報メラノーマDNAの90%(9/10)が、推定のメラノーマ癌抑制遺伝子が位置すると考えられる9p21上で200から300万塩基を含有するIFN−α/β遺伝子(41)と同じ領域で試験した座の1〜5について低下があったことは興味深い(40)。同様に、ホモ−またはホモ接合欠損α−インターフェロンおよびβ−インターフェロン遺伝子がヒト急性リンパ球芽球性白血病およびヒト悪性神経膠腫中に見いだされている(44〜47)。この観察結果は、インターフェロンがヒト・メラノーマおよびリンパ球芽球性白血病細胞に対して抗増殖活性を示し、従って癌抑制タンパクと見なすことができるので興味深い(概説13)。このデータは、メラノーマと白血病の両方の癌抑制座が第9染色体に位置し、特定の癌の癌抑制はインターフェロン遺伝子領域の変化が関与しているかも知れないという仮説と一致する。
IFN−β + MEZの組合せがヒト・メラノーマ細胞の細胞増殖の急速な不可逆的阻害と最終分化を誘導する機構はまだ決定されていない。アクチノマイシンDおよびシクロヘキシミドはHO−1細胞でIFN−β + MEZにより誘導された形態変化、増殖抑制および分化の誘導を阻害することができるため(49)、特定の遺伝子をこれらの薬剤で処理した後転写活性化し抑制することは、分化誘導の決定因子であるかも知れない。化学誘導を媒介またはこれにに関連する決定的に重要な遺伝子を同定および性状解析するために、修飾されたサブトラクション・ハイブリダイゼーション法を使用した(49)。この方法を用いて一連のcDNA(メラノーマ分化関連(mda)遺伝子と呼ぶ)を同定し、これはヒト最終分化したメラノーマ細胞で発現増強を示す(49)。新規の遺伝子(すなわち、その配列がいずれのDNAデータベースにも記載されていない)である特定のcDNAが同定された。適当なセンスおよびアンチセンスオリゴマーや発現作成体を用いて、メラノーマ増殖、分化および進行におけるmda遺伝子の機能的役割を決定するために研究が行われるであろう。さらにメラノーマ発生から転移性メラノーマまでの具体的な段階を示すヒト・メラノーマ細胞を用いて、癌の進行の段階と最終分化誘導の受け易さの関係を研究することができるであろう。
最終細胞分化の過程とmda遺伝子の機能の理解は、メラノーマ進行の分子的基礎を規定し、悪性メラノーマや他の癌の治療戦略を改良するのに有用であろう。
A.IFN−β + MEZによるヒト・メラノーマ細胞における最終分化の誘導
背景と意義で説明したように、多くの癌を証明するものは正常なプログラムで細胞分化を受けないことである。この仮説が正しく、かつ癌細胞の遺伝機構が正常な分化の拘束を再び得るように再プログラムすることができるならば、増殖能力の喪失と最終分化を誘導するために適当な外部刺激が利用できるであろう(5〜14)。この仮説を直接検証するために計画した研究で、本出願人は組換えIFN−βと抗白血病化合物メゼレイン(MEZ)の組合せでヒト・メラノーマ細胞の最終分化の誘導に成功した(10、11、14)。これに対して、組換え白血球インターフェロン(IFN−α)+MEZの組合せは増殖抑制を増強したが、最終分化を誘導しなかった(すなわち、処理した細胞は増殖活性を保持していた)(10)。IFN−β + MEZの組合せは、使用した各薬剤単独の増殖抑制作用に対して比較的耐性または感受性のヒト・メラノーマ細胞中の最終分化誘導に有効であった(10)。IFN−β + MEZに連続的に4または7日間暴露することによる、HO−1ヒト・メラノーマ細胞株中の最終分化の誘導は:(a)急速な(24時間以内の)増殖抑制(図12)(10、11);(b)細胞形態の大きな変化(処理した細胞は樹状突起様の突起を示した)(図13)(10);および(c)メラニン(メラノーマ細胞分化のマーカー)の誘導(メラニン性メラノーマ中)または増殖増加(メラニン性メラノーマ中)に関連していた(10)。IFN−βとMEZの用量と治療スケジュールを変えて(24時間、4日間および/または7日間)、メラノーマ分化の化学的誘導を3段階に分けることができた。これらは、初期の完全に可逆的な誘導相(低用量の誘導剤を4または7日間)、後期の部分的可逆的な誘導相(高濃度の誘導剤を4日間)、および不可逆的な誘導相(特定量の誘導剤を24時間、4日間または7日間)である(10〜14)。
ヒト・メラノーマ細胞株HO−1細胞において増殖活性の喪失と最終分化を誘導するIFN−β + MEZに対して、IFN−β+IFN−γの組合せは最終分化なしで増殖抑制の増強を誘導する(12、14、50)。さらにIFN−β + IFN−γはまた、HO−1細胞においてメラニン合成増加を誘導しない(50)。
トランスレチノイン酸で処理すると、HO−1細胞でメラニンレベルとチロシナーゼレベルが増加するが、増殖は抑制されない(14、51)。3μMのマイコフェノール酸(mycophenolic acid)(MPA)に96時間暴露すると、HO−1細胞で増殖抑制、形態変化、メラニン合成増強およびチロシナーゼ活性増強が起きる(14、51)。しかし、HO−1細胞を3μMのMPAで4日間処理し、次にMPAの非存在下でさらに7日間増殖させると、これらの作用は可逆的となる(14)。これらの結果は、使用した用量と時間間隔で、MPA(単独またはMEZとともに)はHO−1細胞で可逆的分化誘導を誘導するが最終分化は誘導しないことを示唆している。異なる薬剤が及ぼすHO−1細胞の増殖と性質への作用を表2に要約する(14)。
簡単に記載した上記研究は、増殖、形態、メラニン合成およびチロシナーゼ活性の変化は、HO−1細胞の最終分化誘導とは解離し得ることを示している。しかし、IFN−β + MEZによる処理に由来示している増殖活性の不可逆的喪失と最終分化は、関連する現象のようである。前述の種々の薬剤を用いて、どの遺伝子発現の変化がヒト・メラノーマ細胞の分化過程の構成成分と関係しているかを決定することができる。
最終分化するように誘導された3T3T細胞およびヒト・ケラチン細胞で著しい低下を示す一連のhnRNPタンパク(P2Pと呼ぶ)を認識する、モノクローナル抗体(MAbs)が最近開発された(52、53)。一方、P2Pは細胞サイクルを妨害する能力を保持する細胞(可逆的に増殖が停止した細胞を含む)中に存在する。老化の結果として増殖能力を不可逆的に喪失した細胞で、最終分化誘導とともにP2Pの喪失も観察される(52、53)。これに対して、SV40で決定した3T3T細胞は、分化の最終段階を受けず、これらの細胞はP2P発現の抑制を示さない(52)。これらの結果は、P2Pは、細胞の増殖活性に直接結びついており、最終細胞分化の一般的マーカーとして有用であろうという考えを支持する。ロバート・イー・スコット博士(Dr.Robert E.scott)(テネシー大学メディカルセンター、メンフィス、テネシー州)と共同して本出願人は、IFN−β + MEZおよびMPA+MEZに暴露して最終分化を誘導したヒト・メラノーマ細胞中のP2Pレベルの測定を開始した(図14)。最終分化を誘導するといくつかの独立のヒト・メラノーマ細胞株中のP2Pの低下が明らかであった(FO−1ヒト・メラノーマ細胞からのデータを図14に示す)。これに対して、SV40T抗原遺伝子で不死化したヒト・メラニン細胞を用いると(54)、IFN−β + MEZは最終分化またはP2Pの低下を誘導せず、MPA+MEZは増加を喪失させP2Pを低下させた。FO−1およびFM516 SV細胞の両方において、IFN−β、MEZまたはMPA単独で処理すると、増殖は抑制されたがP2Pは低下しなかった(非掲載データ)。IFN−β + MEZによるHO−1細胞における最終分化誘導によりP2Pが喪失したが、いずれの薬剤も単独ではP2Pレベルを低下させなかった(非掲載データ)。これらの結果は予備的であるが、ヒト・メラノーマ細胞における最終分化と増殖活性の不可逆的喪失の化学的誘導は、P2Pの低下が関係していることを示唆している。
B.可逆的増殖抑制、分化と最終細胞分化の可逆的動機付けを示すヒト・メラノーマ細胞における遺伝子発現の変化
本出願人は、ヒト・メラノーマ細胞における増殖抑制、形態変化、メラニン合成増加、チロシナーゼ活性増強および/または最終分化誘導に関連した広範囲の遺伝子発現変化の測定を開始した(12〜14)。本出願人が選択した薬剤は、HO−1細胞において可逆的増殖抑制、メラニン合成の誘導、形態変化、チロシナーゼ活性増強、分化または同時に増殖活性の喪失を伴う最終分化の可逆的動機付けを誘導する(表2)。本出願人がここで解析した遺伝子は:初期応答遺伝子(c−fos、c−myc、c−jun、jun−B、jun−Dおよびgro/MGSA)(14);インターフェロン刺激遺伝子(ISG−15、ISG−54、HLAクラスI抗原およびHLAクラスII抗原)(13、14);細胞接着分子(P−カドヘリン、E−カドヘリン、N−カドヘリン、およびN−CAM)(14);細胞外マトリックス遺伝子(フィブロネクチン(FIB)およびテナスシン)(12、14);細胞表面プロテオグリカン/マトリックス受容体(シンデカン、β1インテグリン(主要FIB受容体サブユニット)、α5インテグリン(主要FIB受容体サブユニット))(14);細胞骨格遺伝子(トロポミオシン−1、γ−アクチンおよびβ−アクチン)(14);そしてハウスキーピング遺伝子(GAPDH)(14)である。前記遺伝子プローブを用いた場合、ユニークな遺伝子発現変化は見いだされず、最終分化したHO−1細胞にのみ起きた。これらの結果は、HO−1メラノーマ細胞において分化の拘束または最終分化は、重複する遺伝子発現の変化の特定のパターンに関係していることを示している。後述するように、分化を拘束されたおよび最終分化を誘導されたHO−1細胞で観察される遺伝子発現の興味深い変化は、I型インターフェロン応答性遺伝子とgro/MGSA遺伝子の誘導と発現増強である。これらの結果から、特異的自己分泌性フィードバックループがヒト・メラノーマ細胞の分化過程に寄与または関係しているかも知れないという仮説に至った。
C.ヒト・メラノーマ細胞中の最終分化誘導の間の細胞周期と初期即時応答遺伝子の変化
前述のようにHO−1細胞をIFN−β + MEZで処理すると増殖抑制が起き、これはこれらの誘導剤に暴露後24時間以内に明らかになる(図12、10、14)。この系を使用して、cdc2、サイクリンA、サイクリンB、ヒストン1、ヒストン4、増殖性細胞核抗原(PCNA)、c−myc、p53およびRbなどの細胞サイクル制御遺伝子の発現に及ぼす、異なる誘導剤単独および組合せた場合の影響を評価した。これらの結果を要約すると以下のようになる:(a)cdc2とヒストン1の低下はすべての実験条件下で明らかであった。この作用は24時間後に観察され、96時間処理した細胞で最も劇的であった;(b)c−myc発現はMEZとIFN−β + MEZの24時間処理によりわずかに低し、96時間後に特にIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞で有意に抑制があった;(c)PCNAとp53の両方の遺伝子発現が、IFN−β + MEZで処理した細胞でのみ低下した;そして(d)Rbレベルはいずれの処理プロトコールでも変化がなかった。cdc2とHLAクラスI抗原では、IFN−β + MEZによりこれらの遺伝子の転写速度が低下した。同様に、IFN−β + MEZによりcdc2とヒストン1のmRNAの安定性が低下した。FACS解析による細胞サイクル分布の解析は、MEZとIFN−β + MEZの両方が48時間処理でDNA合成しているHO−1細胞の数が低下することを示した。DNA合成の最も有効な阻害剤はIFNβ + MEZであった。これらの結果は、IFN−β + MEZによるHO−1細胞の最終分化誘導は、転写および転写後レベルの両方で起きる特定の細胞サイクル関連遺伝子の抑制に関連することを示している。
c−fos、c−junおよびjun−B発現は、シクロヘキシミドおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞で超誘導(superinduce)され、これはこれらの遺伝子が即時型初期応答遺伝子(immediate early response gene)であることを示している。誘導と発現増強の時間的動力学の差異は、分化誘導剤で処理したHO−1細胞の初期応答遺伝子の間で明らかであった(55)。c−fosの場合、IFN−β + MEZはc−fos mRNAの転写を増加させ、これは1、6、および24時間の処理で明らかであったが、96時間処理ではそうではなかった。(55)。c−jun場合、mRNAの転写増加は、1、6、24および96時間のIFN−β + MEZ処理で明らかであった。c−junレベルのこの変化は転写増加を伴わず、c−jun転写産物の半減期の増加に由来した(55)。jun−B場合、IFN−β + MEZは1時間および24時間処理後RNAの転写と定常状態レベルを増加させた。IFN−β + MEZによる処理後最終分化を誘導したHO−1細胞で高レベルのjun−B mRNAが明らかであった。最終分化したHO−1細胞でc−junおよびjun−B mRNAレベルが連続的に増加することは、これらの遺伝子が最終分化表現型の維持に寄与するかも知れないことを示唆している(55)。
D.IFN−β + MEZで処理したヒト・メラノーマ細胞で誘導される自己分泌性ループ
前述のようにIFN−β + MEZで96時間連続的に処理すると、HO−1ヒト・メラノーマ細胞で最終分化が起きる。この過程は、遺伝子発現の変化の特定のパターン(2つのインターフェロン刺激遺伝子であるISG−15とISG−54、およびメラニン細胞増殖刺激活性(gro/MGSA)を含む)に相関する(14)。これらの観察結果は、分化と最終分化の可逆的動機付けの誘導は、分化促進因子(DPF)(おそらくIFN−βまたはIFN−β様サイトカインおよびメラノーマ増殖刺激活性(gro/MGSA)を含む)の産生に関連していることを示唆した。これらのDPFは次に自己分泌性機構により、分化が可逆的に拘束されたまたは最終分化したHO−1細胞で、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)とgro/MGSA遺伝子の転写と定常状態のmRNA発現を誘導することができた。処理時間と分化誘導の関係をさらに調べるためにそして自己分泌性仮説を検定するために、本出願人は2つの実験を行った。第1のセットの実験(In-Out)では、HO−1細胞を種々の薬剤(IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZおよびMEZ(50ng/mlの高濃度で)を含む)で24時間処理し、細胞をFBSのないDMEMで2回洗浄し、培養物に10%FBS含有DMEMを添加し、72時間後全細胞性RNAを単離した。第2のセットの実験(馴らし培地)では、In-Out実験で記載のように細胞を処理したが、誘導剤の非存在下で72時間増殖させた後培地を集めた(そして混入している細胞を遠心分離により除去した)。
In-Outプロトコールおよび馴らし培地プロトコールを用いて、以下を証明した:(a)使用した用量で、IFN−β + MEZは遺伝子発現の変化の最も強力な誘導剤であり、HO−1細胞で最終分化を誘導することができる唯一の組合せであった;そして(b)IFN−β + MEZにより分化または最終分化の可逆的動機付けを受けたHO−1細胞からの馴らし培地は、誘導剤により直接誘導されるものと同様のHO−1細胞の遺伝子発現変化の特定のプログラムを誘導する(14)。さらにIFN−β + MEZ処理したHO−1細胞からの馴らし培地はまた、HO−1またはFO−1ヒト・メラノーマ細胞に添加した時形態変化を誘導し増殖を抑制する(非掲載データ)。これらの結果は、HO−1メラノーマ細胞の最終分化誘導は、遺伝子発現の特定の変化に関連しており、そのいくつかは自己分泌性フィードバック機構に媒介されるかまたは関連しているという仮説を支持する。
E.IFN−β + MEZで処理したHO−1メラノーマ細胞で誘導されたメラノーマ分化関連(mda)遺伝子のクローニング
2つの類似のまたは異なるタイプの細胞の間の差別的に発現される遺伝子の同定を単離は、サブトラクション・ハイブリダイゼーションを用いて容易に達成される(概説57、58)。好感度で高効率的なサブトラクトされたライブラリーを作成する方法が開発されている(49)。IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞で差別的に発現される遺伝子の同定へのこの方法の応用を、図8に要約する。テスターおよびドライバーcDNAライブラリーを、市販のλUni−ZAPファージベクターに方向を決めてクローン化した。次にライブラリーの大量切り出しにより調製した2本鎖テスターDNAと1本鎖ドライバーDNAの間でサブトラクション・ハイブリダイゼーションを行った。サブトラクトされたcDNAはλUni−ZAPファージベクターに効率的にクローン化され、これはスクリーニングと遺伝子性状解析のための扱いが容易であった。この方法の応用可能性は、IFN−β + MEZによる処理で最終分化を誘導したヒト・メラノーマ細胞(HO−1)中で発現増強を示すcDNAの同定により証明された(図10)。IFN−β + MEZ処理(Ind+)cDNAからの未処理HO−1対照(Ind-)cDNAの1回のサブトラクションにより、未処理細胞と分化誘導剤処理HO−1細胞(メラノーマ分化関連(mda)cDNAと呼ぶ)との間で差別的発現を示す一連のcDNAが産生された。前記で略述した方法を用いて、全部で23の差別的に発現されるmda cDNAを単離したが、これはサブトラクトしたHO−1 IFN−β + MEZ cDNAライブラリーの一部のみである。これら23のmda遺伝子の部分的配列解析により、ヒトTPA誘導性遺伝子、ヒトアポフェリチンH遺伝子、IFP−53(ガンマ−2タンパク)遺伝子、インターロイキン−8(単球由来走化性因子)遺伝子、ビメンチン(vimentin)遺伝子、hnRNP A2タンパク遺伝子、ヒトマクロファージ炎症性タンパク(GOS19−1)遺伝子およびIFN−β誘導性遺伝子ISG−56を含む公知の遺伝子が同定された。さらに、従来のどの遺伝子データベースにも報告されていない配列を有する6つのcDNAが同定された。使用したサブトラクションプロトコールに基づいて予測されるように、mda遺伝子のいくつかは、IFN−βおよびIFN−β + MEZ(例えば、mda−1およびmda−2);MEZおよびIFN−β + MEZ(例えば、mda−3);IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZ(例えば、mda−4);およびIFN−β + MEZのみ(例えば、mda−5とmda−6)により、24時間以内に誘導される(図10)。おそらく重要な群のmda遺伝子は、IFN−β + MEZで96時間処理したHO−1細胞で有意な発現増強と最終細胞分化を示すcDNAにより示される(すなわち、mda−5、mda−6、mda−7およびmda−9)(すべて新規の遺伝子である)(図15)。ヒト・メラノーマ細胞における増殖制御を理解するのに有用な、最終分化したHO−1細胞とIFN−β + IFN−γによる処理で増殖の可逆的抑制を受けるように誘導されたHO−1細胞の両方で発現される、追加のmda cDNAが単離されている(すなわち、mda−4、mda−5、mda−7、およびmda−8)(図15)。増加したmda遺伝子発現はまた、IFN−β + MEZ処理で最終分化するように誘導した追加のヒト・メラノーマで誘導されるため、IFN−β + MEZ処理後のいくつかのmda遺伝子の発現増加はHO−1細胞に限定されない(非掲載データ)。前述の試験は、ヒト・メラノーマ細胞で最終分化を直接媒介するかまたはそのマーカーである遺伝子を同定するためのサブトラクション・ハイブリダイゼーション使用の実行可能性を示している。
F.C8161メラノーマ細胞および−6染色体ミクロセルC8161ハイブリッドで誘導される遺伝子発現の変化
ウェルチ(Welch)ら(42)の最近の研究は、C8161ヒト・メラノーマ細胞株に正常の第6染色体を挿入(ミクロセル染色体置換法による)すると、ヌードマウスで転移性が抑制されるが腫瘍形成能は抑制されないことを示す。C8161細胞をIFN−β + MEZ(1000単位/ml+10ng/ml)で4日間または7日問処理すると、最終細胞分化が起きる。これに対して同様の条件下で、第6染色体を有するC8161細胞(クローン6.1、6.2および6.3)は形態変化と増殖抑制を示すが、増殖性を保持する(すなわち、薬剤の組合せは可逆的最終分化に対して分化の可逆的動機付けを誘導する)。6.1、6.2および6.3細胞の最終分化の欠如は、試験薬剤を除去し誘導剤のない培地での増殖により証明された(非掲載データ)。親株C8161細胞および6.1、6.2および6.3細胞の遺伝子発現の解析は、正常の第6染色体の存在と相関する差異を示した。IFN−β + MEZを単独でおよび組合せて4日間インキュベート後の遺伝子発現の具体的な差異は:(a)MEZおよびIFN−β + MEZで処理したC8161細胞(6.1、6.2および6.3細胞ではそうではない)でのIL−8mRNAの誘導(これはIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞中でmda cDNAとして同定された):(b)C8161細胞でのIFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZによるHLAクラスI抗原mRNAの誘導(6.1、6.2および6.3細胞ではIFN−βとIFN−β + MEZによってのみ);および(c)IFN−βおよびIFN−β + MEZで処理したC8161細胞対6.1、6.2および6.3細胞でのISG−15発現の誘導の低下がある。前記の概説した研究は、IFN−β + MEZは、より分化した6.1、6.2および6.3細胞より分化の少ない転移性C8161メラノーマ細胞で最終分化誘導がより有効であることを示している。このモデル系は、ヒト・メラノーマ細胞の腫瘍形成および転移性表現型の発現における特定のmda遺伝子の役割を決定するのに有用となるはずである。
〈計画と方法〉
A.具体的な目的#1:メラニン細胞、母斑、放射増殖相メラノーマ、垂直増殖相メラノーマおよび転移性メラノーマ細胞における、メラノーマ分化関連(mda)遺伝子の発現のパターンと制御を調べる。
1.原理と一般的方法
本出願人は、ヒト・メラノーマ細胞は異常な分化パターンを示し、適当な化学処理により生存性を失わず増殖活性を不可逆的に喪失する(すなわち、最終細胞分化)ように誘導することができるという仮説を検証した(10、11、14)。IFN−β + MEZの組合せを用いて本出願人は、最終分化するようにヒト・メラノーマ細胞の再プログラミングをインビトロで達成できることを証明した(10、11、14)。第2の仮説(すなわち、最終分化は遺伝子発現の特定のプログラムの選択的活性化に関連している)に基づき、本出願人は最終細胞分化を起こすような条件下で発現増強を示す遺伝子を同定するための修飾サブトラクション・ハイブリダイゼーション・プロトコールを開発し使用した(49)。これらの研究からこのような特異性を示すメラノーマ分化関連(mda)遺伝子と呼ぶ、一連の遺伝子をクローニングした。この研究の目的は:(a)HO−1メラノーマ細胞で制御のレベルに関してmda遺伝子を性状解析する(すなわち、誘導の転写対転写後の機構);(b)特定のmda遺伝子の発現がメラノーマ発生の規定された段階に相関するか否かを決定する;(c)増殖の停止したおよび最終分化したヒト・メラノーマ細胞中で発現増強を示す追加のmda遺伝子を同定するためにサブトラクトしたIFN−β + MEZ cDNAライブラリーのスクリーニングを続ける;および(d)最終分化が誘導されたHO−1細胞中で高レベルに発現される遺伝子を濃縮する追加のサブトラクション工程を用いることである。
(a)IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞でのmda遺伝子の制御のレベルの規定:最初の試験は、HO−1細胞での誘導剤のこの組合せにより有意に上方調節(4倍〜>20倍)されるクローン化mda遺伝子の発現をIFN−β + MEZが増加させる機構に焦点を当てる。解析する遺伝子は、ジーンバンク(GenBank)またはEMBLジーンデータベースに報告されていない新規のIFN−β + MEZ誘導性遺伝子である、予備試験に記載したmda−5、mda−6、mda−7、mda−8およびmda−9である。実験の順序は以下の通りである:(1)mda遺伝子の誘導の時間的動力学の測定;(2)特定のmda遺伝子の誘導レベルが転写レベルで起きるか否かを測定;(3)mda遺伝子のいずれかは即時型初期(初期)応答遺伝子であるか否かを測定;そして(4)分化によりmda転写産物の安定性が変化するか否かを測定。
(i)mda遺伝子を同定するために使用するスクリーニング戦略は、IFN−β、MEZまたはIFN−β + MEZで24時間処理したHO−1細胞から単離したRNAのノーザンハイブリダイゼーション解析である(49)。これまでの研究では、IFN−β + MEZに24時間暴露すると、この薬剤の組合せに4日間暴露して最終分化を誘導したHO−1細胞でも観察されるいくつかの遺伝子発現の変化が起きることが示されている(予備試験)(14)。IFN−β + MEZで24時間処理した後HO−1細胞で発現増加を示すmda遺伝子を、次に誘導剤で4日間処理した後の発現増強を評価した。mda−5、mda−6、mda−7、mda−8およびmda−9免疫原は、IFN−β + MEZで24時間または96時間処理したHO−1細胞で発現増強を示した。これらの結果は、mda遺伝子の発現増加は処理の最初の24時間以内に起き、最終細胞分化の間発現増強が持続したことを示した。誘導剤に短時間暴露した後いずれかのmda遺伝子が活性化されるか否かを測定するために、時間的動力学試験を行う。HO−1細胞を短時間(15、30、45、60および120分)IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZで処理し、細胞質性RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移し、種々のmda遺伝子で連続的にハイブリダイズし、最後にGAPDH(種々の実験条件下で等量のRNAレベルの対照として)でハイブリダイズする(14)。誘導剤で処理した細胞からのRNAもまた48時間以上の間2時間毎に単離し、mda遺伝子の発現に細胞サイクル性動力学変化が起きるか否かを測定する。解決すべき重要な問題は、最終分化表現型の維持にいずれかのmda遺伝子の連続的発現が必要か否かである。これは、IFN−β + MEZで連続的に7日問(細胞は最終であるが、まだ生きている);4日間、次に誘導剤のない増殖培地中でさらに10日間インキュベート(細胞は最終のまま);および24時間処理した細胞中で10日間、次に誘導剤のない培地中で増殖(細胞は再び増殖可能性を獲得する、すなわち最終分化の可逆的動機付けを示す)させたHO−1細胞から単離したRNAを解析して決定する。
(ii)前述の試験は、IFN−β + MEZに暴露した後いずれかのmda遺伝子が誘導されるか否かを示すであろう。転写の速度を増加させることによりIFN−β + MEZがいずれかのmda遺伝子の発現を誘導するか否かを測定するために、既に記載されているようにラン・オン・アッセイ(nuclear run-on assays)を行う(55、58、59)。プロトコールの簡単な説明:未処理(対照)またはIFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)またはIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)で1、6、および24時間処理した細胞から核を単離する。RNAポリメラーゼIIであらかじめ転写開始させたRNA転写産物を、[32P]UTPの存在下で伸長させる。核RNAを単離し、G−50セファロースカラムに通して精製した後0.1M NaOHで氷上で5分間変性させる(55)。0.1M NaOHで15分間変性させ、次に2Mの冷NaOHで希釈したmda遺伝子、GAPDH DNAまたはpBR322DNA(陰性対照)を含有する2μgプラスミドDNAを含有するニトロセルロースドットフィルターに、標識核RNAをハイブリダイズさせる(55)。
(iii)c−fos、c−junおよびjun−Bは即時型初期(初期)応答遺伝子であり、すなわち誘導は新規タンパク合成に依存せず、IFN−β + MEZ処理HO−1細胞中の既存の転写因子を利用する(55)。いずれかのmda遺伝子が即時型初期(初期)応答遺伝子であるか否かを決定するために、タンパク合成阻害剤シクロヘキシミドを用いて実験を行う(55)。プロトコールの簡単な説明:約2×106のHO−1細胞を処理しないかまたはIFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)またはIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)で1時間50μg/mlのシクロヘキシミド(他の物質の添加の15分前に添加)の非存在下または存在下で処理する(55)。全RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ニトロセルロースフィルターに移し、mda遺伝子と連続的にハイブリダイズさせ、最後にGAPDHとハイブリダイズさせる(14、49、60)。定義によりいずれかのmda遺伝子が即時型初期応答遺伝子の場合は、それをシクロヘキシミドの非存在下および存在下でIFN−β + MEZで1時間誘導する。mda遺伝子が初期応答遺伝子(prlmary response gene)であるという別の証拠は、超誘導(細胞を誘導剤とタンパク合成阻害剤と同時に処理した時に起きる即時型初期応答転写産物の大量の過剰蓄積)の現象である(55、61、62)。
(iv)IFN−β + MEZがc−jun発現を増加させる能力は転写の増加は関与せず、c−jun mRNAの安定性増加の結果である(55)。転写後の機構によりIFN−β + MEZが特定のmda遺伝子の発現を変化させるか否かを決めるために、転写阻害剤であるアクチノマイシンDを用いて試験を行う(55)。プロトコールの簡単な説明:約2×106のHO−1細胞を処理しないかまたはIFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)またはIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)で24時間処理し、次にアクチノマイシンD(5μg/ml)の添加無し、または30分、1時間、2時間および3時間前添加してからRNAを単離する(55)。RNAをノーザンハイブリダイゼーション、および異なるmda遺伝子またはGAPDHとプローブさせて解析する(14、49、55)。デンシトメーターでラジオオートグラムを走査して細胞性RNAレベルを定量する(55)。これらの試験は、IFN−β + MEZがmda遺伝子転写産物のいずれかの安定性(すなわち、半減期)を変化させるか否かを示すであろう。
要約:これらの試験はmda−5、mda−6、mda−7、mda−8またはmda−9が初期応答遺伝子であるか否かを示し、IFN−β + MEZで処理したヒト・メラノーマ細胞でのこれらの発現増強が転写および/または転写後の機構の結果であるか否かを示すであろう。
(b)メラノーマ発生の過程のmda遺伝子発現の解析:我々の最終分化仮説の基本的考え方は、mda遺伝子はメラノーマおよび/またはメラノーマ発生の初期の段階(すなわち、母斑、初期放射増殖相(RGP)初期メラノーマ、および/または初期垂直増殖相(VGP)初期メラノーマ)で普通に発現されるかまたは高レベルに発現される遺伝子であるというものである。もしこの考えが正しければ、特定のmda遺伝子がメラニン細胞、母斑および初期段階メラノーマに対して後期VGPメラノーマおよび転移性メラノーマで発現低下を示すことが予測される。この仮説の支持は、SV40形質転換したヒト・メラニン細胞はIFN−β + MEZの非存在下および存在下で高レベルのmda−5、mda−6、およびmda−7 mRNAを発現することを示す予備試験から得られる(非掲載データ)。この仮説を直接検定するために、本出願人は、メラニン細胞、異形母斑(DN91D、DN(MM92E))、RGPメラノーマ(WM35)、初期VGPメラノーマ(WM793、Wm902b)、進行性VGPメラノーマ(WM983a、WM115)、転移性メラノーマ(WM9、MeWo、SK−MEL28、WM239)の細胞培養物から得られるRNAを解析するであろう(1、16、21、22、27)(ミーンハート・ハーリン博士(Dr.Meenhard Herlyn)により提供される)。本出願人は、細胞培養が必ずしもインビボで起きている過程を反映するものではなく、細胞培養は、メラニン細胞、前悪性皮膚病変、初期メラノーマおよび転移性メラノーマの臨床試料によるin situハイブリダイゼーション法を用いて強調すべきmda遺伝子の最初の指示を与えるものであることは認識している。オリゴヌクレオチドプローブによるin situハイブリダイゼーション法のために使用される方法は、リード(Reed)ら(63)およびビロック(Biroc)ら(64)により記載されたものである(ニューヨーク、スローン・ケッタリング記念癌センター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のアンソニー・ピー・アルビノ博士(Dr.Anthony P.Albino)と協働して行われる)。リード(Reed)ら(63)の試験では、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)オリゴヌクレオチド
とのin situハイブリダイゼーション法を、メラニン細胞系統の組織試料中のbFGFの差別的発現の測定に使用して成功している。臨床試料におけるmda遺伝子発現を測定するための追加の方法として、メラノーマ発生の異なる段階を示す患者試料から直接単離したRNA(ハーリン博士(Dr.Herlyn)により提供される)をノーザン解析(14、49)により評価し、必要な場合はmda遺伝子の発現のためのRT−PCR(65)により検出感度を上昇させる。上皮増殖因子受容体の発現を解析するための以前の試験で、患者から得られた広範囲のヒト中枢神経系腫瘍が評価された(66)。この試験結果は、無傷の高品質のRNAが患者試料から効率的に得られ、遺伝子発現比較試験に使用できることを、明白に示した。
背景と意義に記載したように、転移性メラノーマ細胞はTPA(またはMEZ)によりしばしば阻害され、正常のメラニン細胞および母斑のインビトロの増殖はTPA(またはMEZ)により刺激される(1、15、16、20〜23)。同様に、多くの転移性メラノーマ細胞株はIFN−βにより増殖が阻害される(8、13〜15)が、最適な増殖条件下では正常のメラニン細胞の増殖は(たとえTPAが増殖培地中に取り込まれても)IFN−βにより阻害されない(15)。これらの結果は、メラニン細胞から悪性メラノーマへの進行はTPA(またはMEZ)およびIFN−βの両方に対する応答性の変化が関与していることを示している。これらの観察結果に基づき、IFN−β + MEZの組合せに暴露したメラニン細胞系統の細胞で段階特異的作用が観察されることが予測される。もしこの作用が観察されるなら、それはIFN−β + MEZの処理による増殖阻害と最終分化の過程へのmda遺伝子の関与の可能性の直接の判断基準になるであろう。メラニン細胞系統細胞株(すなわち、メラニン細胞、異形母斑、RGP初期メラノーマ、早期VGP初期メラノーマ、先行性VGPメラノーマ、および転移性メラノーマ)(ペンシルベニアリ州、フィラデルフィア、ウィスター研究所(Wister Institute)のミーンハート・ハーリン博士(Dr.Meenhard Herlyn)により提供される)を用いて:(1)IFN−β + MEZの組合せが段階特異的増殖阻害作用および最終分化誘導を示すか否か;そして(2)段階特異的メラニン細胞系統細胞における増殖抑制の誘導および/または最終分化の誘導が、特定のmda遺伝子の発現の変化に相関するか否かを測定するために使用されるであろう。これらの試験は既に記載されているように行われる(10、14)。プロトコールの簡単な説明:増殖試験のために:細胞を35mmプレートに2.5または5×104細胞で摂取する;24時間後、培地を添加なし(対照)、IFN−β 1000および2000単位/ml、1、10および50ng/mlのMEZ、およびMEZおよびIFN−β + MEZの組合せと交換する;7日間毎日細胞数を測定する(4日目に培地を交換する)。可逆性の試験のために、細胞を異なる誘導剤で24時間または4日間処理し、次に誘導剤のない培地でさらに7〜14日間増殖させた後細胞数を測定する。24時間、4日間および7日間処理した細胞からRNAを単離し、既に記載されているようにノーザンブロッティング・ハイブリダイゼーションでmda遺伝子の発現について解析する(14)。増殖抑制と分化の生化学的マーカーには:適当なモノクローナル抗体とウェスタンブロット解析を使用してP2Pレベルの解析(予備試験)(52、53);GD3ガングリオシドやクラスIIMHCのような抗原性マーカー、および既に記載されている(50、67、68)蛍光活性化細胞ソーター解析;そして既に記載されているメラニン濃度の測定(69)がある。
メラニン細胞系統細胞の増殖抑制と最終細胞分化におけるIFN−β + MEZの段階特異的作用とmda遺伝子の役割を同定するために計画される試験は、3つの最近記載されたモデル系に補助されるであろう。これらには、(A)形質転換されたヒト・メラノーマ細胞株10Wras/早期および10Wras/後期(ニューヨーク州ニューヨーク、スローン・ケッタリング記念癌センター(Memorial sloan-Kettering Cancer Center)のアンソニー・ピー・アルビノ博士(Dr.Anthony P.Albino)に提供される)(20);(B)転移性ヒト・メラノーマ細胞株C8161および正常のヒト第6染色体を含有する腫瘍形成能だが非転移性C8161クローン(ペンシルベニア州、ハーシェイ(Hershey)、ミルトン・エス・ハーシェイ・メディカルセンター(Hershey Medical Center)、ダン・ウェルチ博士(Dr.Dan Welch)により提供される)(42、43);および(C)RGPまたは早期VGP初期メラノーマ(WM35、WM1341BおよびWM793)、これらはより進行した腫瘍形成能および転移性表現型のためのヌードマウスにマトリゲルを注射して選択された(例えば、35−P1−N1、35−P1−N2、35−P1−N3、1341−P1−N1、1341−P1−N2、1341−P2−N1など(細胞株:継代番号;ヌードマウス番号))(カナダ、トロント、サニブルーク・メディカルセンター(Sunnybrook Medical Center)のロバート・エス・カーベル博士(Dr.Robert S.Kerbel)により提供される)がある(25、70)。10Wras/早期および10Wras/後期細胞は、メラノーマ進行に関連した特定の形質を示すウイルス性Ha−ras癌遺伝子を含有するレトロウイルスにより形質転換されたヒト・メラニン細胞である(20)。10Wras/早期細胞は、TPA依存性を示し、ヌードマウスでヒト腫瘍形成能であり、正常のメラニン細胞に存在する抗原性マーカーの多くを発現する(20)。これに対して、10Wras/後期細胞はTPAにより阻害され、ヌードマウスで腫瘍形成能であり、転移性メラノーマに見られる多くの細胞遺伝学的変化を有し(染色体1、6、および9の修飾を含有する)
および転移性ヒト・メラノーマとして多くの同じ増殖因子遺伝子を発現する(20)。予備試験で考察したように、本出願人はIFN−β + MEZ処理したC8161細胞およびミクロセルトランスファー正常第6染色体を含有するC8161細胞(6.1、6.2および6.3)の遺伝子発現の変化を解析し始めた。C8161細胞と異なり、6.1、6.2および6.3細胞はヌードマウスで転移性ではなく (42)、C8161細胞で最終分化を引き起こすのと同じ濃度のIFN−β + MEZで処理しても最終分化は誘導されない。従って6.1、6.2および6.3は、メラノーマ発生においてより進行していない段階に逆戻りしたヒト・メラノーマ細胞であるかも知れない。既に考察したように、RGPまたは早期VGP初期ヒト・メラノーマは外科的に除去することにより治療できるため、同じ早期段階のメラノーマ由来のより悪化した変種を解析することは不可能であった。カーベル博士(Dr.Kerbel)と共同研究者(25)は、RGPと早期VGP初期ヒト・メラノーマをマトリゲルと組合せてヌードマウスに注射して潜在的にこの問題を解決した。次に発生した癌は、マトリゲルの必要なしでヌードマウスで腫瘍形成能であることが見いだされ、それらはまたメラノーマ進行に関連する「サイトカイン耐性表現型」を獲得した(25、70)。これら3つの細胞系は、mda遺伝子がメラノーマ進行の特定の段階に相関するか否かを決定するのに極めて有用となるであろう。この可能性を検討するために、本出願人は段階特異的細胞株を用いて前述(4.A.1.a)の実験と類似の実験を行う。もしIFN−β + MEZに対するメラニン細胞系統細胞の応答は段階特異的であるという我々の仮説が正しいなら、増殖、mda遺伝子発現および最終細胞分化に及ぼすこれらの薬剤の作用は、10Wras/早期より10Wras/後期で、C8161クローンを有する第6染色体よりC8161細胞で、そしてあまり進行していないRGPと早期VGP初期メラノーマ細胞株よりより進行したメラノーマ細胞株で大きいことが予測される。
要約:これらの試験は、メラノーマ細胞の進行の状態とmda遺伝子発現の間に直接の関係が存在するか否かを示すであろう。これらはまた、IFN−β + MEZに誘導された増殖抑制に対する応答、mda遺伝子発現および最終細胞分化がメラノーマの進行に直接関係があるか否かを示すであろう。
(c)と(d) 増殖の停止したおよび/または最終分化したヒト・メラノーマ細胞において発現増強を示す追加のmda遺伝子の同定:予備試験(E)に示したように、我々のサブトラクトしたIFN−β + MEZ HO−1ライブラリーのうちほんのわずかの割合(約2.5%)が、HO−1細胞の増殖抑制と最終分化に関連する差別的に発現される遺伝子についてスクリーニングされている。従ってまだ同定されていない多くの追加のmda遺伝子が、サブトラクトされたIFN−β + MEZ HO−1ライブラリー中に存在する。本出願人が使用した最初のサブトラクション・ハイブリダイゼーション方法により、IFN−βとIFN−β + MEZ;MEZとIFN−β + MEZ;IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZ;そしてIFN−β +MEZのみで処理したHO−1細胞における発現増強を示すcDNAが同定された(49)。IFN−β + MEZ処理により最終分化するように誘導された細胞で高レベルで優先的に発現された追加のmda遺伝子を同定するために、本出願人は追加のサブトラクション・ハイブリダイゼーション法を行う。プロトコールの簡単な説明:cDNAライブラリーは、前述のようにIFN−β(2000単位/ml)またはMEZ(10ng/ml)で2、4、8、12、および24時間処理したHO−1細胞から作成されるであろう(49、57)。IFN−β + MEZ cDNAは1本鎖DNAに変換され、次にこれは光活性化ビオチンを用いてビオチン化され、既に記載されているドライバーDNAとして使用されるであろう(49)。HO−1 IFN−β + MEZ(Ind+)サブトラクトしたcDNAライブラリーは2本鎖DNAに変換され、2本鎖挿入体は単離され、テスターDNAとして使用されるであろう(49)。次にドライバーDNAはテスターDNAからサブトラクトされ、濃縮されたHO−1 IFN−β + MEZ(濃縮−Ind+)サブトラクトcDNAライブラリーが得られる。最終分化したメラノーマ細胞で増加を示す遺伝子を特異的に同定する別の方法として、IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZで4または7日間処理したHO−1細胞からcDNAライブラリーを作成した。次にこれらのライブラリーを用いて既に記載されている(49)ようにサブトラクション・ハイブリダイゼーションを行って、IFN−β + MEZ処理した最終分化したHO−1細胞中で発現レベルが増加したcDNAのみを同定する。
要約:我々のこのHO−1 IFN−β + MEZ(Ind+)の追加のスクリーニングは、より差別的に発現されたmda遺伝子を同定する可能性を提供する。IFN−β + MEZで単独に処理したHO−1細胞から追加のcDNAライブラリーを作成し、IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞から調製したcDNAライブラリーからこの情報をサブトラクトすることにより、最終分化したメラノーマ細胞で発現増強を特定のに示す追加のmda遺伝子が同定される。
B.具体的な目的#2:ヒト・メラノーマおよび他のモデル分化系でのmda遺伝子発現と分化の可逆的動機付けの誘導、分化誘導のない増殖抑制、DNA障害とストレス応答および最終分化の誘導の関係の解析。
1.原理と一般的方法
ヒト・メラノーマ細胞、および他のタイプの細胞(例えば、筋芽細胞、神経芽細胞および白血病細胞)の最終分化誘導は、増殖能力の不可逆的喪失に関係がある(概説13、71)。従って本出願人が同定したmda遺伝子のいくつかは、増殖関連変化を誘導する種々のDNA障害剤および化学療法剤で処理した増殖抑制メラノーマ(および他のタイプの細胞)またはメラノーマ細胞で発現増強を示すことが当然推定される。確かに、予備試験は、mda−4、mda−5およびmda−8は最終分化したHO−1細胞およびIFN−β + IFN−γによる処理で可逆的増殖抑制を受けるように誘導されたHO−1細胞中で発現増加を示すことを示す(50)。さらにmda−4はまた、カフェイン酸フェネチルエステル(72)、ビンブラスチン(vinblastine)、腫瘍壊死因子−αおよびX−照射で可逆的に増殖抑制されたHO−1細胞中で発現増加を示す。HO−1細胞およびIFN−β + MEZで処理された転移性ヒト・メラノーマ細胞(すなわち、これらはメラノーマ特異的であるようである)または増殖活性を喪失するように誘導されたHO−1細胞および異なるタイプの細胞(ヒト乳癌および大腸癌を含む)(すなわち、これらは増殖特異的または分化特異的であり、メラノーマ特異的ではないようである)でのみ発現増強を示す追加のmda遺伝子が同定されている。これらの予備的観察結果に基づき、特定のmda遺伝子は、増殖可能性を喪失し最終分化するように誘導されたメラノーマ系統細胞に限定され、他のmda遺伝子は多様なタイプの細胞の増殖抑制過程に関与している中心的な遺伝子かも知れない。従って特定のmdacDNAの発現の変化が最終分化するように誘導されたヒト・メラノーマ細胞に限定されているか、またはそれらが最終分化、DNA障害および増殖停止の他のプログラムの間に修飾発現を示すか否かを決定することは重要であろう。以下の試験は、(a)ヒト・メラノーマ細胞および他のタイプの細胞でmda遺伝子発現の増強を誘導する細胞の変化の範囲、(b)他のタイプの細胞の増殖抑制と最終分化の誘導は特定のmda遺伝子の発現増強を起こすか否かを決定するために計画される。
(a)増殖抑制剤、DNA障害薬剤および化学療法剤で処理されたヒト・メラノーマ(および他のタイプの細胞)におけるmda遺伝子発現の解析:HO−1細胞における最終分化は増殖能力の不可逆的喪失に関係があるため(10、11、14)、本出願人が同定したmda遺伝子は細胞増殖と最終細胞分化に関与する遺伝子であるかも知れない。細胞増殖と最終分化の間の関係を調べるために、ヒト・メラノーマおよび他のタイプのヒト細胞でmda遺伝子発現を誘導することができる薬剤のタイプと処理プロトコールを決めるための試験を行う。試験する薬剤と処理は:増殖抑制(低血清レベルでのインキュベート)、熱ショック、ガンマ線照射、紫外線照射(UVAとUVB)、腫瘍形成能および転移性薬剤(メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、および4−ニトロキノリン−オキシド)、脱メチル化剤(5−アザシチジン、酪酸フェニル)、化学療法剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)、腫瘍壊死因子−α、タンパク合成阻害剤(シクロヘキシミド、プロマイシン、アニソマイシン)、DNA合成阻害剤(アンフィジコリン(amphidicolin)、ヒドロキシ尿素、ara−C)、転写阻害剤(アクチノマイシンD)、トポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン(camptothecin))、ポリ−ADP−リボース阻害剤(3−アミノベンズアミド)、プロテインキナーゼCアクチベータ(TPA、テレオシジン(teleocidin)、合成PKCアクチベータ(ADMBおよびDHI)(73〜75))およびホスファターゼ阻害剤(カリキュリン(calyculin)、オカダ酸(okadaic acid))がある。最初の試験は、HO−1細胞に焦点を当てる。以下の試験は他のメラノーマ細胞(メラノーマ進行の異なる段階を示す)および追加のヒト細胞(正常の繊維芽細胞および上皮細胞、神経芽細胞、神経膠芽腫、癌(前立腺癌、乳癌および大腸癌)および肉腫)が関与する。プロトコールの簡単な説明:HO−1細胞(または他の使用される実験的細胞)を種々の薬剤で異なる時間(1時間から24時間の範囲;またはある処理プロトコールでは4日間および7日間)そして異なる用量の試験処理または薬剤で処理する。RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移し、連続的に異なるmda遺伝子および最後にGAPDHとハイブリダイズさせる。特定の経路がmda遺伝子を誘導するようであれば、さらに生化学的試験を行う。例えば、もしPKCアクチベータが特定のmda遺伝子を誘導するなら、次に特定の不活性化類似体およびPKCの阻害剤を用いて試験を行い、PKC活性化と遺伝子発現の誘導の関係を求める。同様に、もしある処理プロトコールまたは薬剤がmda遺伝子発現の誘導または増強をするなら、次に試験を行って遺伝子発現のこの変化が転写時かまたは転写後かを決める(実験の詳細については具体的な目的#1を参照)。
要約:前記で略述した試験は、mda遺伝子発現がHO1細胞、他のヒト・メラノーマ細胞および別のタイプのヒト細胞で、増殖および/または分化を変化させる薬剤による処理で誘導されることができるか否かを示す。これらは、mda遺伝子発現の誘導または増強を媒介する可能性のある生化学的経路に関しての最初の情報を与える。これらの実験はまた、ヒト・メラノーマ細胞および他のタイプのヒト細胞で増殖と分化の制御においてmda遺伝子発現の変化の可能性のある機能性の意義を調べるために計画される試験(C.具体的な目的#3に記載される)で、どのmda遺伝子を使用すべきか同定する。
(b)ヒト前骨髄球性白血病(HL−60)およびヒト骨格筋培養物中の最終分化過程のmda遺伝子発現の解析:特定のmda遺伝子が、ヒト・メラノーマおよび増殖抑制を受けておりかつ最終分化誘導のない別のタイプのヒト細胞で発現される。この現象をさらに調べるためにそして追加の分化モデル系でいずれがのmda遺伝子が高レベルで発現されているか否かを調べるために、本出願人はHL−60前骨髄球性白血病細胞株(76)およびヒト骨格筋細胞(77、78)を用いて実験を行う。TPAはHL−60細胞中でマクロファージ分化を誘導し(79)、ジメチルスルホキシド(DMSO)はHL−60細胞中で顆粒球分化を引き起こす(80)。さらにHL−60細胞をDMSOを含有する培地で5日間次にTPA中で増殖させると、顆粒球から単球分化プログラムに変更する細胞が得られる(81)。これらの試験は、適当な化学的操作により特定の単球性または顆粒球性系統がHL−60細胞で誘導されることを示す。TPAとDMSOを順に増加させてHL−60細胞を増殖させて、本出願人はTPA誘導分化またはDMSO誘導分化のいずれかに定量的耐性を示す変種集団を単離した(76)。しかし、これらの耐性変種は、他の誘導剤に対して交差耐性を示さず、すなわちTPAはHL−60細胞とHL−60/DMSOR細胞で類似のパターンの分化を誘導し、DMSOはHL−60細胞とHL−60/TPAR細胞で類似のパターンの分化を誘導する。IFN−αAとIFN−βは親株HL−60、TPA耐性HL−60(HL−60/TPAR)細胞およびDMSO耐性HL−60(HL−60/DMSOR)細胞で増殖抑制を誘導するが、これらの細胞の最終分化は誘導しない(76)。しかし、IFN−αAまたはIFN−βとTPAを組合せると、親細胞およびHL−60/TPAR細胞の両方で相乗的増殖抑制を引き起こし最終分化を誘導する(76)。同様に、IFN−αAまたはIFN−βとDMSOを組合せると、親細胞およびHL−60/DMSOR細胞の両方で相乗的増殖抑制を引き起こし最終分化を誘導する(76)。この実験モデルは、ヒト前骨髄球性白血病細胞でmda遺伝子発現の増強と、増殖抑制または最終分化の特定のプログラムの誘導による増殖抑制の間に相関関係が存在するか否かを決定するのに極めて有用となるであろう。プロトコールの簡単な説明:親株HL−60細胞、HL−60/TPAR細胞およびHL−60/DMSOR細胞をIFN−β(2000単位/ml)±誘導剤(TPAを10-9および10-6Mで、またはDMSOを0.9〜1.5%で)1、3および7日間(4日目に新鮮な培地±添加物を加える)でインキュベートする。細胞数と最終分化(形態学的に成熟した細胞の存在と細胞がニトロブルーテトラゾリウム(NBT)(顆粒球特異的)を還元する能力、または非特異的エステラーゼ(マクロファージ特異的)の産生により追跡)を測定する(84)。RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移し、順に異なるmda遺伝子とそして最後にGAPDHとハイブリダイズさせる(14、49)。増殖抑制と最終分化の誘導は、親株HL−60細胞および変種HL−60細胞で濃度依存性かつ化合物依存性であるため、概略した試験はHL−60細胞で増殖抑制の程度および/または異なるmda遺伝子の最終分化と発現の間に関係があるか否かを示すであろう。
正常の成人の骨格筋から得られる筋原性外套細胞(myogenic muscle satellite cells)のインビトロ増殖方法が利用できる(82)。これらの培養物は正常の筋発生(特異的な形態学的および生化学的マーカーで追跡される過程であり、ヒト細胞の細胞分化の過程に及ぼす種々の薬剤の作用を評価するための有用な系である)を繰り返す(77、78、82)。このモデル系を用いて、本出願人はTPA(および関連化合物)は自発性および誘導性筋発生を阻害するが、IFN−αAは筋発生を増強することを既に証明した(77、78)。ヒト骨格筋培養物中の分化の阻害または増強は、特定の形態学的変化(多核筋管の発生)およびCK−BBからCK−MMへのクレアチンキナーゼイソ酵素の移行の抑制または誘導に関連している(77、78)。本出願人は、IFN−αで処理した時最終分化しないSV40不死化ヒト骨格筋細胞も開発した(83)。この実験モデルは、ヒト骨格筋細胞中で最終分化または増殖抑制の誘導の間mda遺伝子が差別的に発現しているか否かを測定するのに極めて有用であろう。プロトコールの簡単な説明:既に記載されているように診断用評価物から得られるヒト骨格筋生検試料(男性または女性患者およびおよび年齢6カ月から50才まで)から筋培養物を増殖させる(77、78、82)。筋原細胞融合の前に、細胞をトリプシン処理し、10cmの組織培養プレートに2×106細胞でまき、培養物をIFN−β(2000単位/ml)とMEZ(10ng/ml)を単独または組合せて1、4および7日間(4日目に適当な培地で交換する)インキュベートする。細胞数を測定し、形態学的(筋原細胞融合)および生化学的(CK−BBからCK−MMへのクレアチンキナーゼイソ酵素の移行)基準を用いて分化を追跡する(77、78、82)。RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移し、順に異なるmda遺伝子とそして最後にGAPDHとハイブリダイズさせる。少量のRNAのみしか利用できない時は、RT−PCR(65)を用いて早期継代骨格筋筋原細胞培養物の発現を測定する。このモデル系でIFN−βは骨格筋分化を促進し、MEZは分化を阻害する。特定の濃度のIFN−β + MEZを用いて、分化の増強、分化無しまたは分化の阻害のいずれかを得ることができる(78)。この系はヒト骨格筋培養物中のmda遺伝子発現と筋発生の誘導の関係の直接測定を可能にする。
要約:前記で略述した試験は、いずれかのmda遺伝子がヒト骨髄白血病細胞およびヒト骨格筋細胞中で増殖抑制および最終分化を誘導するか否かを示すであろう。変化が観察された場合、引き続き試験を行い、他の分化モデル(マクロファージ分化を受けるように誘導され得るU937ヒト単芽球性白血病細胞(81)、ニューロン性分化を受けるように誘導され得るPC12ラット褐色細胞腫細胞(85)、およびレチノイン酸または他の薬剤で処理されると最終分化するように誘導され得るヒト神経芽細胞を含む)でmda遺伝子が発現増強を示すか否かを決定する。さらに最終分化するように誘導されたHL−60細胞中でmda遺伝子発現の変化が観察されるなら、HL−60細胞および分化のない増殖抑制、DNA障害およびアポトーシス(apotosis)および最終細胞分化(アポトーシスの有りまたは無し)を引き起こす他の薬剤を用いてさらなる試験を行う。これらの試験は、どのようなHL−60細胞の細胞学的および生化学的変化がmda遺伝子発現の特定のプログラムを誘導するかを示すであろう。
C.具体的な目的#3:メラノーマ分化または進行に関与するかも知れないmda遺伝子の全長cDNAを単離し、ヒト・メラノーマの分化と進行におけるその可能性のある機能的役割を直接決定する。
1.原理と一般的方法
特定のmda遺伝子の機能的な意義を解析するには、全長cDNAの単離が必要である。一旦特定のmda遺伝子の全長cDNAが同定されると、以下の用途に使用することができる:(1)インビトロ翻訳系を使用してそのコードするタンパクを産生する;(2)コードするタンパクのペプチド領域に特異的なポリクローナル抗体を作成する;(3)患者のヒト・メラノーマ細胞および組織切片におけるmda遺伝子産物の位置を測定する;(4)増殖抑制および最終分化の誘導に及ぼすmda遺伝子の過剰発現の影響を決定する;および(5)増殖抑制と最終細胞分化を誘導するIFN−β + MEZの能力に及ぼすmda遺伝子発現の阻止(アンチセンスオリゴマー又は発現ベクター作成体を使用して)の影響を決定する。全長mdaのcDNAを同定し、その全長mdaのCDNAをインビトロで翻訳し、コードするタンパクの特異的ペプチドに対する抗体を産生し、コードするタンパクの位置を測定し、そしてセンスおよびアンチセンスオリゴマーと発現ベクター作成体を作成して、HO−1およびその他のタイプの細胞における増殖と分化に及ぼすこれらの影響を解析するために使用される方法を以下に説明する。
(a)全長mdaのcDNAを単離するための方策:cDNA末端の急速増幅(rapid amplification of cDNA ends)(RACE)を、限定された内部の部位とmRNAの3’または5’末端を表す未知の配列との間のmRNA鋳型から核酸配列を増幅するための方法である(86−88)。このRACE法は、この配列(すでに決定されている)を鋳型として、全長mdaのcDNAの完全な配列を得るために使用される。2つのタイプの遺伝子特異的プライマーを合成する:逆転写のためのRTプライマーとPCR増幅のためのAMPプライマーである。このAMPプライマーの配列はRTプライマーの上流に位置する。第1鎖cDNA合成は、RTプライマーから開始する。第1鎖cDNA合成後、元のmRNA鋳型をRNaseHで分解して、セントリコン・スピンフィルター(Centricon spin filters)(アミコン社(Amicon Corp.))を使用して、組み込まれないdNTPとRTプライマーをcDNAから分離する。次にTdT(末端dトランスフェラーゼ)とdATPを使用して、オリゴ−DAアンカー配列をcDNAの3’末端に付加する。AMPプライマーと、オリゴ(dT)−アダプタプライマー/アダププライマー(1:9)の混合物を使用して、PCR増幅を実施する。このアダプタプライマーは、dsDNAの形で、制限酵素SalIとXhoIに認識され消化されうる特異的配列を含有する。増幅後、このRACE産物は、特定の制限酵素(これらはcDNAを内部で切断しない)で消化され、適切なプラスミド(例えば、pBluescript)中にクローン化される。特異的挿入体を有するこのクローンは、スクリーニング(DNAフィルターハイブリダイゼーションを使用)により選択され、同時に各遺伝子の複数の独立クローンを用いて、PCR増幅過程で起こる可能性のある誤った組み込みの結果としての配列決定中の誤りを除外する。
(b)全長mdaのcDNAの性状解析:全長mdaのcDNAは、mdaがコードするタンパクと、ヒト・メラノーマ細胞の増殖と分化の調節におけるこれら遺伝要素の潜在する機能に関する情報を得るために使用される。以下に説明するように、mdaがコードするタンパクを得るために、インビトロ翻訳が使用される。一旦このタンパクの構造が決定されると、合成ペプチドが作成され、mdaタンパクの限定された領域に特異的な抗体を作成するために使用される。抗体は、メラノーマおよび他のタイプの細胞および組織切片におけるmdaタンパクの位置を測定するために使用される。
(i)タンパク構造の決定と、mda遺伝子に特異的なポリクローナル抗体の開発:一旦全長mdaのcDNAが単離され配列決定されると、タンパク読み取り枠の存在と、これらのmda遺伝子によりコードされる推定タンパクのアミノ酸組成に関する情報が入手可能になる。mda遺伝子によりコードされるタンパクのサイズを直接測定するために、全長cDNAは、pGEM−1ベクター中にサブクローン化され、(89)に記載されるように、SP6ポリメラーゼ(プロメガ社(Promega Corp.)、マディソン、ウィスコンシン州)を使用してインビトロで転写される。このインビトロで転写されたRNAは、ウサギ網状赤血球溶解物(アマーシャム(Amersham))で[36S]メチオニンの存在下で製造業者の指示通りに翻訳され、10mM Hepes(pH7.9)、1mM MgCl2、1mMジチオトレイトール、20%グリセロール、100mM NaCl、100μM ZnCl2に対して4℃で一晩透析される。タンパク産物はSDS/10〜20%ポリアクリルアミド勾配ゲル中で電気泳動により解析される。タンパクの予測されるアミノ酸構造、すなわち、疎水価、抗原価およびmdaのcDNAの推定配列に基づく折り返し構造に基づき、合成ペプチドを作成するために特異的アミノ酸が選択される(75、90)。
次に合成ペプチドは、ポリクローナル抗体を作成するために使用される(ハゼルトン・ラボラトリーズ(Hazelton Laboratories)、デンバー、ペンシルバニア州、またはカペル・ラボラトリーズ(Cappel Laboratories)、ダラム、ノースカロライナ州)。プロトコールの簡単な説明:記載(90)されるように、合成ペプチドを担体タンパクであるウシ血清アルブミンおよびCGG(ニワトリγ−グロブリン)に結合させる。二回蒸留水中の2.5mgのペプチドと5mgの担体タンパクを、20mgのエチルCDI(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)(シグマ(Sigma))またはモルホCDI(メト−p−トルエンスルホン酸1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド)のどちらかと共に水中で室温で2時間インキュベートして、PBS(pH7.2)に対して透析する。ウサギを、完全フロイントアジュバントで乳化した0.5mgのBSAペプチド(エチルCDIに結合している)により2週間間隔で免疫する。次にペプチドに対する抗血清を、CGGペプチド(モルホCDIに結合している)の結合した親和性クロマトグラフィーにより精製して、結合反応で生成した副生物を排除する。このポリクローナル抗体は、IFN−β + MEZで処理されるかまたは処理されずに、既に記載(91)されたELISA測定法により、ヒト・メラノーマ細胞で力価測定(1:50希釈から始まる1:1系列希釈により)する。
(ii)抗mdaペプチド抗体による培養細胞と患者切片試料の免疫染色:SV40不死化ヒト・メラニン細胞を使用する予備検討に基づき、本出願人らは特定のmda遺伝子産物が正常メラニン細胞においてメラノーマ細胞よりも高いレベルで産生されるであろうことを予測するであろう。この可能性を試験し、メラノーマ発生の特定の段階において、またはIFN−β + MEZ処理の結果として差が明白であるかどうかを決定するために、メラニン細胞、形成異常母斑および異なる段階のメラノーマ(RGP、初期VGP、後期VGPおよび転移性)をカバースリップ上で培養する。24時間後、培養物の1つの群を添加物なしに培地交換し、他の群は2000単位/mlのIFN−β+10ng/mlのMEZを含む新鮮培地に交換する。さらに24時間後、培養物をPBSで3回洗浄し、3.7%ホルマリンで30分間固定する(90、91)。次にこのスライドをPBSで3回洗浄し、0.2%トリトンX−100/PBSで5分間室温で処理する。さらにPBSで充分洗浄し、非特異的結合部位を2%卵アルブミン/PBSでブロッキング後、この細胞を、親和性精製した抗mdaペプチド抗体または前もって免疫した対照血清と共に30分間インキュベートする。次にこのスライドをイソチオシアン酸フルオレセイン結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗体と共に30分間インキュベートして、次いでさらに0.1%SDS/PBSで充分洗浄後、蛍光顕微鏡で検査する(90)。抗mdaペプチド抗体がメラニン細胞/メラノーマ系統組織と反応するかどうかを決定するための試験も行う。正常メラニン細胞、形成異常母斑、およびRGP、初期VGP、後期VGPおよび転移性メラノーマを表す臨床試料切片(アルビノおよびヘルリン両博士(Drs.Albino and Herlyn)により提供される)に対する抗mdaペプチド抗体の反応性は、既に記載(90、91)されるように解析する。
(iii)ヒト・メラノーマ細胞における増殖と分化に及ぼすmdaの強制発現の作用の解析:重要な問題は、任意のmda遺伝子の発現が、メラノーマの増殖を直接阻害するか、または誘導剤(IFN−β + MEZ)を添加することなく、増殖抑制と分化の誘導に関連する形態的、生化学的または遺伝子発現の変化を誘導することができるかどうかである。ヒト・メラノーマ細胞における増殖と分化に及ぼす特定のmda遺伝子の過剰発現の影響を測定するために、本出願人らは、全長mdaのcDNAを含有する発現ベクターを使用する。全長mdaのcDNAは、誘導性プロモーター(例えば、デキサメタゾン(DEX)誘導性MMTVプロモーター)と、選択可能な抗生物質耐性遺伝子(例えば、pMAMneo作成体(クローンテック(Clonetech))などのネオマイシン耐性遺伝子)を含有する発現ベクター中にクローン化される。このmda−S作成体のヒト・メラノーマ細胞中へのトランスファーにより、特定のmda−S遺伝子を含有する細胞の直接単離が可能になり、特定のmda遺伝子の発現のレベルの調節(DEX濃度を変化させることにより)が可能になる。サイトメガロウイルス(CMV)のようなプロモーターまたはβ−アクチンプロモーターの制御下で特定のmda遺伝子の連続した発現の増加は、ヒト・メラノーマ細胞における増殖能力の喪失および/または最終分化を引き起こすため、この方法が必要であろう。異なるmda遺伝子と異なる抗生物質耐性遺伝子を含有する異なるMMTVプロモーターが推進する作成体を使用することにより、幾つかのmda−S誘導性遺伝子作成体を含有するメラノーマ細胞を作成することも可能になる。調節可能な発現ベクター系の別の利点は、細胞クローンの安定性と、HO−1細胞における増殖能力と最終分化の不可逆的喪失を誘導するためには一過性のまたは持続したmda−S発現が必要であるかどうかを決定する能力であろう。プロトコールの簡単な説明:HO−1細胞(別のヒト・メラノーマ細胞株または他のヒト腫瘍細胞株)を2×106細胞/100mmプレートで接種し、24時間後、記載(92)されるように、細胞を電気穿孔法によりmda−S作成体(選択可能な遺伝子が作成体中に存在する場合は単独、あるいはクローン化された選択可能な遺伝子と一緒に)でトランスフェクションする。抗生物質耐性コロニーを選択して純粋なクローンとして単離する(92、93)。挿入遺伝子の存在は、サザンブロッティングにより測定し、内因性および外因性遺伝子の発現はRNase保護測定法(58、94)により区別される。適切なHO−1細胞株中のmda−S遺伝子の発現を増強するDEXの能力は、適切な誘導剤(10-9〜10-5M DEXまたは2000単位/mlのIFN−β)の存在下または非存在下で24時間細胞を増殖させ、次に単離してRNA発現を性状解析することにより測定される(95)。非誘導(DEXの非存在下)または誘導(DEXの存在下)条件下で、MMTV誘導性mda−s作成体を含有する細胞を、既に記載されたプロトコールを使用して、増殖の変化(10、14)、メラニン合成の増加(10、69)、細胞表面抗原性表現型の修飾(67、68、72)、P2Pのレベルの変化(52、53)、遺伝子発現のパターン(14)および増殖の不可逆的喪失(最終分化)の誘導(10、11、14)について評価する。
mda−S発現作成体試験の考えられる結果:前記で略述した試験は、3つの考えられる結果の1つを与えるであろう。第一は、単一のmda−S作成体は、増殖抑制、分化に関連する遺伝子発現の変化、およびIFN−β + MEZの非存在下での最終細胞分化を誘導することができることである。このことは、この特定のmda遺伝子がヒト・メラノーマ細胞での増殖と分化の調節における制御配列であるという証拠を提供するであろう。第二は、特定のmda−S作成体は、ヒト・メラノーマ細胞においてIFN−β + MEZにより誘導される変化の一部のみを調節する、すなわち、増殖抑制を誘導するか、増殖抑制と分化の幾つかのマーカーを誘導するか、または増殖に影響を与えることなく分化に関連する遺伝子発現の変化の幾つかのみを誘導することができることである。もしこれが起こると、ヒト・メラノーマ細胞において分化プログラムの異なる成分を誘導するmda−S作成体の組合せを使用することにより、ヒト・メラノーマ細胞において増殖能力の喪失と最終分化を誘導することが可能になる。第三は、mda−S作成体はHO−1細胞における増殖または分化プログラムになんら影響を示さないことである。この結果は当然最も有益でない結果である。これは、試験される特定のmda−S作成体がメラノーマの分化において制御要素ではないが、これらの遺伝子はIFN−β + MEZによりヒト・メラノーマ細胞の増殖抑制と最終分化の誘導中に改変されるかもしれないことを示唆する。
(iv)ヒト・メラノーマ細胞における増殖と分化に及ぼすアンチセンスオリゴマーと発現ベクター作成体の影響の解析:アンチセンスRNAは、特異的標的遺伝子の発現を妨害するための有効な方法である(96)。このアンチセンス転写産物は、標的mRNAに相補的な配列を有しており、恐らくこのmRNAにアニーリングして正常な過程または翻訳を崩壊する(96)。アンチセンス体が遺伝子の機能を阻害する機構は以下を含む:リボソームの組み立て(翻訳開始)部位および/またはコード領域に結合することによる翻訳の直接妨害;二本鎖RNAハイブリッドを特異的に切断するRNaseによるmRNA分解の刺激;および核から細胞質へのmRNAの移動の阻止(96)。以前の研究は、アンチセンス体または特定の遺伝子のオリゴデオキシリボヌクレオチド(オリゴマー)(例えば、c−mycおよびEgr−1)が細胞増殖および/または分化を調節することができることを証明した(84、97〜101)。ヒト・メラノーマ細胞における増殖と分化に及ぼすmda遺伝子発現阻止の影響を測定するために、本出願人らはアンチセンスオリゴマーとアンチセンス体を含有する発現ベクターを使用する実験を行う。
最初のセットの実験において、本出願人らは、mda遺伝子の特定領域に相補的なオリゴマーが、増殖抑制、および/または前にIFN−β + MEZにより処理されたHO−1細胞において改変されることが証明された遺伝子(すなわち、c−myc、IL−8、FIB、MGSA/gro、ISG−15、c−junおよびjun−B)の発現の変化を、誘導することができるかどうかを測定する(14、55)。前述の通り、アンチセンスオリゴマーは、多くの細胞株において細胞生理を改変するのにうまく使用され、これらは多くの遺伝子の発現に影響を与えることが証明された(概説、102、103)。翻訳開始部位または5’コード領域に相補的なmda−遺伝子特異的オリゴマーは、ヌクレアーゼ抵抗性を増加させるためにホスホロチオ酸修飾(ホスホロチオ酸オリゴデオキシヌクレオチド)により合成される(96、102、103)。多くの実験室で未修飾オリゴマーが使用されてきたが、これらは血清を補足した培地中に存在するヌクレアーゼにより急速に分解されうる(96、102)。HO−1細胞や他のタイプの細胞による実験は血清含有培地を使用するため、本出願人らは未修飾オリゴマーではなく、ホスホロチオ酸オリゴデオキシヌクレオチドを使用する。プロトコールの簡単な説明:増殖試験のために、HO−1細胞(または他の試験細胞株)を2.5×104細胞/35mm組織培養プレートに接種し、24時間後IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)、mda遺伝子の5’領域の幾つかの標的配列に相補的な種々の濃度(1〜200μM)の3’,5’−ホスホロチオ酸で末端キャップしたmdaアンチセンスオリゴマー(長さ20塩基)(mda−ASオリゴマー)またはIFN−β + MEZとmda−ASオリゴマーの組合せを含む新鮮培地を添加する。適切な対照として、培養物は同様な濃度の5’,3’−ホスホロチオ酸で末端キャップしたmdaセンスオリゴマー(mda−Sオリゴマー)またはmda−SオリゴマーとIFN−β + MEZも添加する(65、84、104)。使用するのに適切なmda−ASオリゴマーを同定し、HO−1細胞において増殖阻害に及ぼすIFN−β + MEZの影響を阻止するのに要するmda−ASオリゴマーの濃度を同定するため、7日間毎日細胞数を測定する(適切な添加物を含む培地交換は48時間毎)。適切なmda−ASオリゴマーが同定されるならば、IFN−β + MEZにより処理したHO−1細胞において誘導される遺伝子発現(14)および生化学的(10、52、53、69)および免疫学的変化(67、68、72)に及ぼすmda−ASオリゴマーの影響を測定するための次の検討のためにこれが使用される。遺伝子発現試験のために、HO−1細胞(または他の試験細胞株)を、2.5×106細胞/100mm組織培養プレートに接種し、適切な濃度のmda−ASまたはmda−Sオリゴマーを24時間後に添加する。さらに24時間または96時間後(48時間後に培地交換)RNAを単離し、0.6%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移し、c−myc、c−jun、jun−B、ISG−15、MGSA/gro、IL−8、FIBおよび最後にGAPDHと逐次ハイブリダイズさせる(14)。また、IFN−β + MEZの組合せによりHO−1細胞において誘導される生化学的、免疫学的および/または細胞性変化を、mda−ASオリゴマーが防止または減少することができるかどうかを決定するために測定を実施する。既に記載されている方法によりモニターされるパラメーターは、形態(10)、メラニン合成(10、69)、抗原発現(67、68、72)およびP2Pのレベル(52、53)を含む。試験の可能性ある結果:上述の実験は、3つの可能な結果を与える。第一は、特定のmda−ASオリゴマーが、増殖抑制、分化に関連する遺伝子発現の変化および最終細胞分化を誘導するIFN−β + MEZの能力を阻害することができるということである。第2は、特定のmda−ASオリゴマーが、HO−1細胞においてIFN−β + MEZにより誘導される変化の一部のみを修飾する、すなわち、増殖抑制を逆転するか、増殖抑制と最終分化の両方を逆転するか、または遺伝子発現の変化の幾つかのみを逆転することができるということである。第三は、特定のmda−ASオリゴマーが、IFN−β + MEZにより誘導される増殖抑制または分化プログラムになんら影響を与えないということである。
IFN−β + MEZにより処理したHO−1細胞における特定の細胞性変化および生化学的変化を阻止するのにmda−ASオリゴマーを使用する陽性の結果は、特定のmda遺伝子の発現と、分化過程の限定された成分の間の関係の強力な証拠を提供する。しかし、特定のmda−AS遺伝子の陰性の影響は、アンチセンスオリゴマーの安定性の欠如、不適切な量のアンチセンスオリゴマーまたは分化過程において複数のmda遺伝子の発現が必要であることを含む、多くの原因により発生しうる。ヒト・メラノーマ細胞において分化の化学誘導を阻害するmda−AS遺伝子発現の影響をさらに探索するために、発現ベクター作成体中にmda−ASのcDNA(アンチセンス方向にクローン化されたmdaのcDNA)を使用する実験も行われる。本出願人が向けようとする1つの問題は、特定のmda−ASのcDNAと細胞の発現のレベルと組織特異的発現と表現型の関係であるため、本出願人らは異なるプロモーターの転写制御下で幾つかの発現ベクター作成体を使用する。使用される作成体は、mda−ASのcDNAの高レベルに標的化される、構成性のまたは誘導性の転写制御を引き起こすであろう。同じmda−ASのcDNAは、以下を可能にするプロモーターを制御する発現ベクター中にクローン化される:高レベルの構成性発現(β−アクチンプロモーター(84、94));インターフェロン処理後の増大した発現(インターフェロン応答性配列(IRS)プロモーター(pTKO−1)(105);デキサメタゾン−(MMTV)誘導性プロモーターの存在下での誘導性発現(93、106);またはメラニン細胞/メラノーマ系統細胞における発現(チロシナーゼプロモーター(107))。さらに、発現ベクター作成体中に存在する、または同時トランスフェクション(93)による、異なる選択可能な遺伝子(すなわち、ネオマイシン、ヒスチジノール、ヒグロマイシン(hygromycin)など)を使用することにより、幾つかのmda−ASのcDNAを含有するヒト・メラノーマ細胞を作成することが可能になる。要約すると、異なるプロモーターの使用により、ヒト・メラノーマおよび他のタイプの細胞における増殖と分化において、mda−ASのcDNAの構成性、誘導性および細胞系統特異的(標的化)発現の直接評価が可能になる。特定のmda−ASのcDNAの発現が、HO−1および他のヒト・メラノーマ細胞における増殖抑制、遺伝子発現の変化および最終分化を誘導するIFN−β + MEZの能力を阻害するならば、これは、このmdaのcDNAの発現と、ヒト・メラノーマ細胞における増殖と分化過程との間の直接的関係の強力な証拠を提供する。プロトコールの簡単な説明:HO−1細胞(別のヒト・メラノーマ細胞株または他のヒト腫瘍細胞株)を2×106細胞/100mmプレートに接種し、24時間後、記載(92、93)されるように、細胞を電気穿孔法によりmda−AS作成体(選択可能な遺伝子が作成体中に存在する場合は単独で、あるいはクローン化された選択可能な遺伝子と一緒に)でトランスフェクションする。抗生物質耐性コロニーを選択して純粋なクローンとして単離する(92、93)。挿入遺伝子の存在はサザンブロッティングにより測定され、内因性および外因性遺伝子の発現は、RNase保護測定法により区別される(58、94)。それぞれpTKO−1(インターフェロン誘導性プロモーター)またはpMAMneo(DEX誘導性)作成体中のアンチセンスを増強するインターフェロンまたはデキサメタゾンの能力は、適切な誘導剤(10-9〜10-5M DEXまたは2000単位/mlのIFN−β)の存在下または非存在下で細胞を24時間増殖させ、次に単離してRNA発現を性状解析することにより測定される(95、105)。mda−S作成体を試験するために使用されるのと同様の細胞性(増殖と形態)、生化学的(メラニンとP2Pレベル)、免疫学的(抗原発現)および分子的(遺伝子発現)パラメーターがmda−AS作成体を試験するために使用される。
要約:これらの試験により、mdaがコードする遺伝子産物に関する重要な情報が提供され、これらは特定のmda遺伝子の発現の混乱が、ヒト・メラノーマ細胞における増殖または分化過程を直接修飾することが可能であるかどうかを示す。
D.具体的な目的#4:mda遺伝子のプロモーター領域を単離して性状解析し、ヒト・メラニン細胞、母斑およびメラノーマにおけるこれらの調節を解析する。
1.原理と一般的方法:
mda遺伝子の転写調節の基になる機構を解明するために、これらの遺伝子のプロモーター領域を解析することが必要である。これは、化学誘導、自己調節、組織特異的調節および発生調節を含むmda遺伝子の調節制御を決定する目的の研究には重要なことである。一旦mda遺伝子の適切なプロモーターが単離されると、特定のシス調節性要素に結合してmda遺伝子の発現を活性化または抑制する同等なトランス調節性因子(核タンパク)を同定するための試験を行うことができる。以下に略述される実験は、以下の目的で計画される:[a]特定のmda遺伝子のプロモーター領域をクローン化して、未処理のおよびIFN−β + MEZで処理したメラノーマ細胞におけるこれらの機能を解析するため;[b]ヒト・メラノーマ細胞におけるIFN−β + MEZ誘導を担当する特定のmda遺伝子のプロモーター領域中のシス調節性要素を同定するため;および[c]mda遺伝子の発現を活性化(または抑制)するトランス調節性要素を同定して性状解析するため。
(a)mda遺伝子のプロモーター領域のクローン化および未処理のおよびIFN−β + MEZで処理したヒト・メラノーマ細胞におけるこれらの機能の試験:mda遺伝子のプロモーター領域を単離するために、制限酵素Sau3AIでHO−1ヒト・メラノーマゲノムDNAを部分消化し、脱リン酸化ベクター(ファージまたはコスミドベクター)へ連結して、ヒトゲノムライブラリーを作成する(92)。ライブラリーをスクリーニングするためにmdaのcDNAを使用して、mda遺伝子とその5’および3’領域の両方を含有するクローンを同定する(92)。ファージまたはコスミドベクター中の挿入体が解析するには長すぎる(すなわち、10〜30Kb)ため、かつmda遺伝子のゲノムDNAの構造とサイズが未知であるため、可能性あるプロモーター領域を同定するために、挿入体をサブクローニング(約2Kbのサイズまで)する(92)。2つの型のプローブがサブクローニングのために使用される:1つはmda遺伝子のコード領域を含有し、もう1つはmda遺伝子の5’非翻訳領域に位置する配列に相補的な合成オリゴヌクレオチド(20量体)である。ファージまたはコスミドベクター中のmda遺伝子を含有するゲノムDNAは、一連の制限酵素で消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動して、ナイロンフィルターに移す(92、108)。次にこのサザンブロットをmda遺伝子のコード領域と合成オリゴヌクレオチドでプローブ結合する。この二重プローブ法により、単一プローブを使用する場合よりもより有効にプロモーター領域の同定が可能になる。後の機能解析のために、約2Kbのサイズの推定プロモーター挿入体が種々のCAT発現ベクター作成体(pSVOCAT、pUVOCATまたはpChlorAceを含む)中にサブクローニングされる(92、108、109)。
mda遺伝子の推定プロモーター領域は、サンガーのジデオキシヌクレオチド法により配列決定される(110)。転写開始部位(+1)は、既に記載(108、111)されるようにプライマー伸長により決定される。IFN−β +MEZで処理をしたか、またはしていないHO−1メラノーマ細胞の乾燥した全RNA試料を、T4ヌクレオチドキナーゼ法により作成された5’末端の32P標識オリゴヌクレオチド(25量体、mda遺伝子の5’未翻訳領域に相補的)を含有する20μlの10mM PIPES(pH6.4)−400mM NaClに再懸濁する。60℃で3時間インキュベーション後、10Uのトリ骨髄芽球症ウイルス(avian myeloblastosis virus)の逆転写酵素を含有する80μlの50mMトリス−HCl(pH8.2)−5mM MgCl2−10mMジチオスレイトール−5mMデオキシグアノシンヌクレオシド三リン酸−25μl/mlのダクチノマイシン(dactinomycin)を添加して、プライマー伸長反応を42℃で1時間進行させる。フェノール−クロロホルム抽出とエタノール沈殿後、試料を6%アクリルアミド−8M尿素配列決定用ゲルで電気泳動する(108、111)。伸長した産物の長さから、mda遺伝子の転写開始部位を決定することができる。
種々のmdaプロモーターを機能解析するために、既に記載(93、108、109)されているようにcaPO4法または電気穿孔法(ジーンパルサー(Gene Pulser)、バイオラッド(Bio-Rad))により、適切なpmdaCAT作成体をメラノーマ細胞中にトランスフェクションする。トランスフェクションの48時間後に細胞をPBSで3回洗浄し、再懸濁した細胞を手作業でペレット化して、3サイクルの凍結解凍により細胞を溶解することにより、細胞抽出物を調製する。次に、55μlの細胞抽出物を、5μlの14C−クロラムフェニコール、70μlの1Mトリス−HCl(pH8.0)および20μlの4mMブチリルCoAよりなる反応混合物中に添加することにより、CAT反応を行う(108、109)。37℃で2時間インキュベーション後、反応混合物を酢酸エチルまたはキシレンで抽出して、CAT活性をシンチレーション計測またはTLCにより測定する(108、109)。もしIFN−β + MEZによる処理後、特定のpmdaCAT作成体でトランスフェクションしたヒト・メラノーマ細胞においてCAT発現が検出されて、未処理培養物では検出されなければ、これは、特定のmda遺伝子のプロモーター領域が、IFN−β + MEZによる誘導に応答性の適切なシス作用性配列を含有することを示す。誘導が明らかにならなかった場合は、分化誘導剤で処理したヒト・メラノーマ細胞においてCAT誘導を媒介するのに充分な長さのmdaプロモーターが得られるまで、コスミドまたはファージクローンのさらなるサブクローニングおよびスクリーニングを行う。有用である可能性ある一連のCAT作成体は、合衆国バイオケミカル(United States Biochemical)(クリーブランド、オハイオ州)により開発されており、pChlorAceシリーズと呼ばれる。基本のプラスミドpChlorAce−Bは真核生物プロモーターまたはエンハンサー配列を含有せず、従ってCAT活性の発現のためにCAT遺伝子から上流の機能性プロモーターの組み込みに依存する。この作成体、pChlorAce−Eは、mdaプロモーター配列を試験するための機能性プロモーターCAT−接合部の直接試験を可能にするエンハンサー配列を含有する。プロモーター含有プラスミドであるpChlorAce−Pは、CAT遺伝子から上流のSV40プロモーターを組み込み、プロモーター−CAT転写単位から上流または下流の両方の向きでエンハンサー要素の挿入を可能にする。pChlorAce−P作成体中にmda遺伝子の異なる部分を挿入することにより、mda遺伝子のエンハンサー成分を直接同定することは可能であろう。制御プラスミドであるpChlorAce−Cは、プロモーターとエンハンサーの両方を含有し、プロモーターとエンハンサーの強度を比較するための内部標準として機能することができる。
重要な問題は、特定のmda遺伝子が組織および発生段階特異的な発現を示すかどうかである。一旦特定のmdaプロモーターが同定されると、これらはこの問題に向けて使用することができる。mda−CAT作成体を、未処理およびIFN−β + MEZ処理した正常ヒト・メラニン細胞、形成異常母斑、およびRGP、初期VGP、後期VGPおよび転移性メラノーマにおける発現のレベルについて試験する。mdaプロモーターが未処理またはIFN−β + MEZ処理した非メラニン細胞/メラノーマ系統細胞において機能することができるかどうかを決定するための実験も行われる。特定の標的細胞における発現があれば、これらの細胞では適切な調節タンパクが構成的に存在するかまたは誘導されることを示唆する。
(b)ヒト・メラノーマ細胞においてIFN−β + MEZによる誘導を担当するmdaプロモーターのシス要素(シス配列)の同定:一旦機能性mdaプロモーターが同定されると、IFN−β + MEZによる発現の誘導を担当するシス要素の位置を決めるための検討が行われる。使用する方法は、mdaプロモーター領域の一連の5’−欠失突然変異体、3’−欠失突然変異体、内部−欠失突然変異体およびリンカースキャニング(Iinker-scanning)突然変異体の作成とそのCAT誘導性活性に関する評価である。5’−欠失、3’−欠失および内部−欠失突然変異体の作成およびCAT活性のスクリーニングに関する詳細は、既に記載されている(108、109)。リンカースキャニング突然変異体は、リンカーDNA配列(例えばEcoRIリンカー)でギャップ領域を埋めてから、5’−および3’−欠失mdaプロモーター配列を合わせることにより作成される(92)。種々の突然変異体の構造は、配列解析により決定する(95、110)。mda遺伝子のプロモーター領域は種々のpmdaCAT作成体中でCATレポーター遺伝子の前に位置するため、各作成体のCAT活性は液体シンチレーションおよび/またはTLCを使用して測定することができる(108、109)。これにより、未修飾のmdaプロモーターに対する突然変異体プロモーターのCAT転写活性の直接比較が可能になる。これらの試験により、ヒト・メラノーマ細胞におけるIFN−β + MEZが誘導するmda遺伝子発現の増強を担当する特定のシス調節性要素が同定される。
(c)ヒト・メラノーマ細胞におけるmda遺伝子の転写増強活性を媒介する、IFN−β + MEZにより誘導されるトランス作用性核タンパクの同定:真核生物遺伝子発現の調節に関する現在の見解は、トランス作用性タンパクがプロモーター領域のシス要素内の特定の部位に結合して転写活性化をもたらすことを示唆している(概説、112、113)。種々の突然変異mdaプロモーターCAT作成体を使用する試験は、mdaプロモーターの活性を媒介するシス調節性要素に関する情報を提供する。トランス作用性因子(核タンパク)を同定し、これらの因子がどこでシス調節性要素と相互作用するかを決定するために実験を行う。この目標に達するために、2つのタイプの試験を行う。1つはDNase−Iフットプリンティング(メチル化妨害)測定法(108、109)であり、第2の試験はゲル遅延(ゲルシフト)測定法(109、114)である。
DNase−Iフットプリンティング測定法のために、未処理またはIFN−β + MEZ処理したヒト・メラノーマ細胞からの核抽出物を、既に記載されているように調製する(109、113、115)。DNase−Iフットプリンティング測定は、記載されているように行う(108、109)。上記実験から同定されるIFN−β + MEZ誘導のためのシス要素(約200bp)は、32Pで末端標識されて、既に記載されたプロトコール(108、109)を使用して、未処理またはIFN−β + MEZ処理したヒト・メラノーマ細胞からの粗核抽出物と共にインキュベートされる。DNase−I酵素で消化された反応混合物は、8%シーケンシングゲル(sequencing gel)で解析される(108、109)。誘導されたヒト・メラノーマ細胞と誘導されていない細胞からの核抽出物の間の差別的保護は、活性化されたトランス作用性因子の関与と、この活性化を媒介するmdaプロトコールのシス調節性要素中の特定の配列の位置に関する情報を提供する。もしこの方法を使用して差別的保護が検出されなければ、mdaプロモーター領域からの異なるサイズのDNA断片を使用するか、または部分精製した核抽出物を使用することにより、この方法の感度を改良することができる(109)。
mdaプロモーター中のシス作用性配列と転写制御を媒介するトランス作用性因子との間の相互作用を検討するための第2の方法として、既に記載されているようにゲルシフト測定法を行う(109、114)。この測定法のために、32Pでラベルしたしたシス要素は、未処理またはIFN−β + MEZ処理したヒト・メラノーマ細胞からの核抽出物と共にインキュベートして、反応混合物を5または8%ポリアクリルアミドゲルで分離する(109、114)。オートラジオグラフィー後、ゲル上のシフトしたDNAのパターンは、トランス作用性因子と、mdaプロモーター中のシス要素の特定の領域との間の相互作用に関する情報を提供する。非特異的結合の可能性を除外し、この相互作用が実際にトランス作用性因子により与えられることを確認するために、非標識シス要素(自己競合)を、二つの一組の検体に競合物質として添加する。トランス作用性因子の同定を開始するために、トランス作用性因子と他の既に同定された転写調節物質との間の関係を測定するためのゲルシフト測定法における競合物質として、異なる非標識DNA(例えば、TATA、CAT、TRE、Sp−I結合部位、NFkB、CREB、TRE、TBPなど)を使用することができる。
要約:これらの試験により、mdaプロモーター領域の同定とクローニング、mdaプロモーターにおけるシス調節性配列の同定、およびmda遺伝子の発現を活性化(または抑制)するトランス調節性配列の同定が行われる。
F.今後の検討:今回提案された研究により、ヒト・メラノーマ細胞における増殖制御、化学療法剤やDNA障害性薬剤に対する応答、および最終分化に関与するかまたはこれらを媒介する特定の遺伝子が性状解析されるであろう。一旦適切なmda遺伝子が同定されると、次にこれらは、発生およびメラニン細胞/メラノーマの生物学におけるこれらの機能的役割を直接試験するために使用することができる。非メラノーマ標的細胞におけるこれらの遺伝子の役割と分化の別のプログラムを明確にするための実験も行うことができる。今回の提案の範囲には含まれていない今後の検討は、以下を含む:(a)ヌードマウス中でインビボで増殖したヒト・メラノーマ(および他のタイプの腫瘍細胞)の増殖(腫瘍形成能および転移能力)および分化に及ぼす特定のmda−Sおよびmda−AS作成体の作用の評価;(b)発生に及ぼすmda発現の調節作用を評価するための、mda遺伝子の個々のまたは組合せの、組織特異的および組織非特異的過剰発現の両方を示すトランスジェニックマウスの作成;および(c)組織および胚発生に及ぼす特定のmda遺伝子の発現の欠損の影響を評価するための、特定のmdaヌル(null)突然変異体を有するマウスを作成するための相同組換えを用いろ遺伝子ターゲッティング法。
第4実験シリーズ
mda−1: IFN−βおよびIFN−β + MEZで処理した24時間後のHO−1細胞中で発現増強を示す新規な遺伝子。IFN−β + MEZで96時間処理したHO−1細胞では発現が減少する。(HJ3−13)。
mda−4の性質
このcDNAは新規である(種々の遺伝子データベースの解析では、mda−4の配列はヒト・インターフェロン・ガンマ誘導性タンパクと68.5%相同である)。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞中での発現
組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)(2,000単位/ml)、メゼレイン(MEZ)(10ng/ml)およびIFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せで24時間処理したHO−1細胞ではより著しく発現が増加する。
最終分化HO−1細胞、すなわち、IFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せで96時間処理したHO−1細胞の解析では、IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞では発現が増加し続ける。
免疫インターフェロン(IFN−γ)(2,000単位/ml)とIFN−β + IFN−γ(1,000単位/ml+1,000単位/ml)(注:この薬剤の組合せは、IFN−β + MEZと同程度のHO−1細胞の増殖抑制をもたらす。しかし、インターフェロンの組合せによる増殖抑制は可逆的であり、一方IFN−β + MEZの組合せでは不可逆的である)に96時間暴露後HO−1細胞では発現が増加する。
mda−4は、HO−1細胞における最終細胞分化の間にも誘導される、新規なIFN−γ誘導性遺伝子である。免疫インターフェロン応答の遺伝子マーカーとして、およびヒト・メラノーマ細胞中の最終分化の遺伝子マーカーとして有用となろう。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
mda−4の発現の増加は、HO−1、LO−1、SH−1、WM278およびWM239ヒト・メラノーマ細胞においてIFN−β + MEZによる24時間処理後に起きる。mda−4は、メラニン性FO−1ヒト・メラノーマ細胞またはC8161ヒト・メラノーマ細胞またはC8161/6.3細胞(挿入された正常なヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)において発現されないか、または誘導されない。
mda−4は、これをクローン化したヒト・メラノーマ細胞以外の別のヒト・メラノーマ細胞(すなわち、IFN−β + MEZで24時間処理後のHO−1)においても発現の増加を示す。
正常小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫(Glioblastoma Multiforme))(GBM)および正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda−4は正常小脳、GBMまたは正常皮膚繊維芽細胞では新規に発現されない。しかしIFN−β + MEZによる24時間処理後、正常小脳およびGBMの両者では誘導され、正常皮膚繊維芽細胞では誘導されない。
mda−4は、ヒト小脳およびGBM培養物ではIFN−β + MEZによる誘導に感受性であるが、正常ヒト皮膚繊維芽細胞ではそうではない。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)における発現
mda−4は、種々の癌細胞において新規に発現されず、そしてIFN−β + MEZによる24時間処理後にこれらの細胞で誘導されない。mda−4はヒト癌細胞において発現されない。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2,000単位/ml)、IFN−α(2,000単位/ml)、IFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)、IFN−α+MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)、シスプラチン(0.1μg/ml)、ガンマ線照射(3グレイで処理し、24時間後解析)による24時間処理。さらに、UV(10ジュール/mm2、そして24時間後測定)によりHO−1細胞における発現は増加する。
MEZ(10ng/ml;24時間または96時間)、IFN−β(2,000単位/ml;96時間)、酪酸フェニル(PB)(4mM;24時間、4日間または7日間処理)、マイコフェノール酸(MPA)(3μM;96時間)、トランスレチノイン酸(RA)(2.5μM;24時間)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml;96時間)、RA+MEZ(2.5μM;96時間)、アクチノマイシンD(5μg/mlを2時間、24時間後測定)、アドリアマイシン(0.1μg/ml;24時間)、ビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)、TNF−α(100単位/ml;24時間)またはVP−16(5μg/ml;24時間)により処理したHO−1細胞では、発現に変化はないか、またはあっても小さい。
mda−4は、以下の性質を示す新規な遺伝子である:1)最終分化(IFN−β + MEZによる96時間の処理)および組換えガンマインターフェロン(単独またはIFN−βとの組合せで)による96時間処理後、HO−1細胞において誘導される;2)HO−1、正常小脳およびGBM細胞以外に一連のヒト・メラノーマにおいてIFN−β + MEZにより誘導されるが、正常皮膚繊維芽細胞または3つの異なる型の癌(結腸直腸癌、子宮内膜腺癌または前立腺癌)においては、IFN−β + MEZにより発現または誘導されない;および3)特異的DNA障害性薬剤(シスプラチン、ガンマ線照射およびUV照射)により処理したHO−1細胞において発現の増加が誘導される。
この遺伝子は、サイトカイン−、DNA障害性−、および化学療法−(シスプラチン)ならびに最終分化−誘導性の、恐らく神経外胚葉由来の細胞(メラノーマおよび中枢神経系)に制限された遺伝子である。mda−4は以下のことに有用であろう:1)特定の組織系統(すなわち、神経外胚葉性)のマーカーとして(診断への応用);2)DNA損傷(ガンマ線照射およびUV照射)およびシスプラチンと同様に作用する化学療法剤による治療に対する応答を追跡するため(診断への応用);3)生物学的液体中のI型インターフェロン(IFN−αとIFN−β)およびII型インターフェロン(IFN−γ)の測定のため(診断への応用);および4)ヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘導する能力を有する化合物を同定するため(新規化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム)。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)は、ヒト・メラノーマおよび特定の中枢神経系腫瘍(GBM)において増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。この遺伝子の特定の領域のアンチセンス体もまた、分化誘導薬剤および特定の化学療法剤やDNA障害性薬剤で治療した正常組織(例えば、骨髄)への障害を防止するのに有用であろう(治療への応用)。
mda−5の性質
このcDNAは新規である(これは、ホモサピエンスの推定で転写された部分配列[受け入れ番号Z20545;UK−HGMP、エムアールシー・ヒトゲノムマッピングプロジェクトリソース(MRC Human Genome Mapping Project Resource)、センタークリニカルリサーチセンター(Centre Clinical Research Centre)、ワットフォードロード(Watford Road)、ハロー、ミドルセックス、イングランドHA1]に配列相同性を有する)。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞における発現
組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)(2,000単位/ml)、および大部分はIFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せで24時間処理後に発現が増加する。
最終分化HO−1細胞、すなわち、IFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せで96時間処理したHO−1細胞の解析では、IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞では発現が増加し続ける。
免疫インターフェロン(IFN−γ)(2,000単位/ml)とIFN−β + IFN−γ(1,000単位/ml+1,000単位/ml)(注:この薬剤の組合せは、IFN−β + MEZと同程度のHO−1細胞の増殖抑制をもたらす。しかし、インターフェロンの組合せによる増殖抑制は可逆的であり、一方IFN−β + MEZの組合せでは不可逆的である)に96時間暴露後HO−1細胞では、程度は小さいが発現が増強する(IFN−γ単独の場合より大きい)。
mda−5は、HO−1細胞における最終細胞分化の間にも発現増加を示す、新規なIFN−γ−誘導性遺伝子である。この遺伝子は免疫インターフェロン応答の遺伝子マーカーとして、およびヒト・メラノーマ細胞中の最終分化の遺伝子マーカーとして有用となろう。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
この遺伝子の発現は、IFN−β + MEZにより24時間処理した、HO−1、C8161、C8161/6.3(挿入された正常ヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)、FO−1、LO−1、SH−1、WM278およびWM239ヒト・メラノーマ細胞において増加する。この遺伝子は、不死化ヒト・メラニン細胞FM5169(SV40により形質転換された)において構成的に発現される。FM5169では、24時間のIFN−β + MEZ処理により、ある程度の上方調節が観察される。
mda−5の発現は、これがクローン化されたヒト・メラノーマ細胞、すなわちHO−1の他に7つの別のヒト・メラノーマ細胞において、IFN−β + MEZにより増加する。さらに、この遺伝子はメラニン細胞において発現し、IFN−β + MEZによる24時間処理後のその発現はほとんどのヒト・メラノーマよりも増加の程度が低い。
正常小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫)(GBM)および正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda−5は正常小脳では新規に低いレベルで発現するが、GBMまたは正常皮膚繊維芽細胞ではそうではない。しかしIFN−β + MEZによる24時間処理後、正常小脳では発現が増加(>10倍)し、GBM(小さい誘導)および正常皮膚繊維芽細胞(良好な誘導)では発現が誘導される。
この遺伝子は、ヒト小脳、GBMおよび正常ヒト皮膚繊維芽細胞において、IFN−β + MEZによる調節に感受性である。正常小脳細胞とGBMでは差のある新規および誘導性発現が見られ、正常小脳の方が新規発現も誘導性発現も高い。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)における発現
mda−5は、結腸直腸癌(SW613)と子宮内膜腺癌(HTB113)において新規に発現しないが、一方前立腺癌(LNCaP)では低いレベルで発現する。
IFN−β + MEZによる24時問処理後、mda−5の発現は結腸直腸癌(SW613)細胞において高レベルで誘導されるが、子宮内膜腺癌(HTB113)では発現が見られない。
ヒト前立腺(LNCaP)の場合には、24時間のIFN−β + MEZ処理により、mRNA発現が2〜3倍増加する。
この遺伝子は、異なるヒトの癌において新規発現および誘導性発現の両者の差のあるパターンを示す。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2,000単位/ml)、IFN−α(2,000単位/ml)、IFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)およびIFN−α+MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)による24時間処理により、HO−1細胞における発現が増加する。
mda−5は、IFN−γおよびIFN−β + IFN−γによる96時間処理により誘導される。IFN−β + MEZにより24または96時間処理したHO−1細胞において最高レベルの発現が観察される。IFN−β(2,000単位/ml)による96時間処理後の誘導は非常に低い。
MEZ(10ng/ml)(24または96時間)、MPA(3μM;96時間)、RA(2.5μM;96時間)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml;96時間)、RA+MEZ(2.5μM+10ng/ml;96時間)、酪酸フェニル(PB)(4mMPB;24時間、4日間または7日間)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)、ガンマ線照射(3グレイで処理し24時間後に解析)、UV(10ジュール/mm2;24時間後に測定)、アクチノマイシンD(5μg/mlで2時間、24時間後に測定)、アドリアマイシン(0.1μg/ml;24時間)、ビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)、TNF−α(100単位/ml;24時間)またはVP−16(5μg/ml;24時間)で処理したHO−1細胞では発現の変化は観察されない。
mda−5は、以下の性質を示す新規な遺伝子である:1)最終分化(IFN−β + MEZによる96時間の処理)の間、および組換えガンマインターフェロン(単独またはIFN−βとの組合せで)による96時間の処理後に誘導される;2)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、試験した全てのヒト・メラノーマおよびSV40で不死化したヒト・メラニン細胞において発現が増加する;3)正常小脳と正常皮膚繊維芽細胞において24時間以内のIFN−β + MEZにより高度に誘導されるが、GBMでは弱く誘導されるのみである;4)3つの異なるタイプの癌において誘導の受け方に差がある(結腸直腸癌では最も強く誘導され、前立腺癌では低い誘導を受け、子宮内膜腺癌においては誘導がない);および5)I型インターフェロン(IFN−αとIFN−β)およびII型インターフェロン(IFN−γ)の両方で処理したHO−1細胞において発現の増加が誘導される(等しい用量で使用される時IFN−βはIFN−αよりもこの遺伝子の発現をより有効に増強する)。
この遺伝子は、全てのメラノーマ、選択された癌、正常皮膚繊維芽細胞および正常小脳とGBMの両者において発現の増加を示す、サイトカイン誘導性および最終分化誘導性遺伝子である。mda−5は、以下において有用であろう:1)特定の組織系統のための、および類似した組織型(histotype)の腫瘍(すなわち、癌)を区別するためのマーカーとして(診断への応用);2)I型およびII型インターフェロン治療に対する応答をモニターするため(診断への応用);および3)ヒト・メラノーマ細胞において最終分化を誘導する能力を有する化合物を同定するため(新規な分化誘導薬剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム)。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)は、ヒト・メラノーマおよび他の群の腫瘍において増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。
mda−6の性質
mda−6は、サイクリン(cyclin)依存性キナーゼの阻害剤である分子量21,000タンパク(p21)をコードするWAF1、CIP1、SDI1と同一である。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞における発現
組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)(2,000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)およびIFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せで24時間処理したHO−1細胞では最大に発現が増加した。
最終分化したHO−1細胞、すなわちIFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)の組合せにより96時間処理したHO−1細胞を解析すると、IFN−β + MEZ処理HO−1細胞における継続した発現の増加を示し;そして(b)IFN−β(2,000単位/ml)、IFN−γ(2,000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)、マイコフェノール酸(MPA)(3μM)(HO−1細胞における増殖抑制、メラニン合成増加、形態変化を誘導するが、最終分化は誘導しない)、トランスレチノイン酸(ヒト・メラノーマ細胞におけるメラニン合成増加、チロシナーゼ活性増加誘導するが、増殖、形態は変化させず、最終分化を誘導しない)、IFN−β + IFN−γ(1,000単位/ml+1,000単位/ml)(分化のマーカーを誘導することのない増殖抑制)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml)(可逆的増殖抑制と、HO−1細胞における分化マーカーの誘導)およびRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)(増殖抑制と、最終細胞分化を誘導することのない分化マーカーの可逆的誘導)で処理したHO−1細胞においては、96時間処理後、発現には有意な変化または低下が見られない。
mda−6は、IFN−β + MEZ(これは最終分化を誘導する)によるHO−1細胞で増大するが、増殖抑制または分化の種々のマーカーを誘導する薬剤によっては同程度に増大しない、新規な遺伝子である。これは、ヒト・メラノーマ細胞において最終分化の誘導のマーカーとして有用であろう。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
IFN−β + MEZにより24時間処理した、HO−1、C8161、C8161/6.3(挿入された正常ヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)、FO−1、LO−1、SH−1、WM278およびWM239ヒト・メラノーマ細胞において、この遺伝子の発現の種々の増加が起こる。この遺伝子は不死化ヒト・メラニン細胞FM516−SV(SV40により形質転換)において構成的に発現される。FM516−SVでは、24時間のIFN−β + MEZ処理により、ある程度の上方調節が観察される。
mda−6の発現は、これがクローン化されたヒト・メラノーマ細胞、すなわちHO−1の他に7つの別のヒト・メラノーマ細胞において、IFN−β + MEZにより増加する。さらに、この遺伝子はメラニン細胞において発現し、IFN−β + MEZによる24時間処理後その発現は増加する。
正常小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫)(GBM)および正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda−6は、正常小脳および正常皮膚繊維芽細胞において高レベルで新規に発現される。mda−6は、GBM細胞においては有意なレベルで発現しない。
IFN−β + MEZによる24時間処理後、mda−6の発現は、正常小脳において増加(>10倍)し、GBMにおいて発現が誘導される。mda−6の発現は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞ではIFN−β + MEZによる24時間処理後、変化しない。
この遺伝子は、ヒト小脳およびGBMにおいてIFN−β + MEZによる調節に感受性である。対照的に、この遺伝子は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞においては発現され、処理後も発現に変化は見られない。正常小脳細胞とGBMでは新規発現および誘導性発現の差も明らかであり、正常小脳は新規発現がより高い。この遺伝子は、中枢神経系膠細胞(正常小脳細胞を含む)における増殖制御の成分でかも知れず、これは悪性GBM細胞においては抑制されている。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB112)および前立腺癌(LNCaP)における発現
mda−6は、結腸直腸癌(SW613)および前立腺癌(LNCaP)において新規に高レベルで発現される。子宮内膜腺癌(HTB113)におけるmda−6の新規な発現は低い。IFN−β + MEZによる24時間の処理は、結腸直腸癌(SW613)および前立腺癌(LNCaP)におけるmda−6の発現に有意な変化を与えない。IFN−β + MEZによる24時間の処理により、子宮内膜腺癌(HTB113)におけるmda−6の発現は、結腸直腸癌や前立腺癌と同等のレベルに誘導される。
mda−6は、異なるヒト癌において新規発現および誘導性発現の両方の差のあるパターンを示す。子宮内膜腺癌において新規発現は低く、結腸直腸癌と前立腺癌においては高い。IFN−β + MEZによる処理後の誘導性発現は、子宮内膜腺癌にのみ観察される。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2,000単位/ml;24時間)、MEZ(10ng/ml;24時間)、IFN−β + MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml;24時間)、アクチノマイシンD(5μg/ml;2時間処理後24時間増殖)、アドリアマイシン(0.1μg/ml;24時間)およびVP−16(5μg/ml;24時間)による処理によりHO−1細胞における発現は増加する。最高レベルの誘導は、24時間または96時間のIFN−β + MEZ処理;およびアクチノマイシンD、アドリアマイシンおよびVP−16で24時間処理したHO−1細胞において観察される。
mda−6の発現の低下は、酪酸フェニル(PB)(4mM)(24時間、4または7日間)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)、UV(10ジュール/mm2;処理後2時間)、ガンマ線照射(3グレイ;24時間後測定)、IFN−α(2,000単位/ml;24時間)およびTNF−α(100単位/ml;24時間)により処理したHO−1細胞において観察される。
UV(10ジュール/mm2)で処理して14または24時間後測定したHO−1細胞、およびIFN−α+MEZ(2,000単位/ml+10ng/ml)で24時間、またはビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)処理したHO−1細胞において、mda−6の発現に変化は見られない。
mda−6は、以下の性質を示す新規な遺伝子である:1)最終分化(IFN−β + MEZによる96時間処理)の間発現が増加する;2)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、試験した全てのヒト・メラノーマおよびSV40−不死化ヒト・メラニン細胞において発現が種々に増加する;3)メラノーマの初期(放射増殖相および初期垂直増殖相のメラノーマ)に発現するが、さらに進行したメラノーマ(転移性メラノーマ)では発現しないかレベルが低下する;4)正常小脳において24時間以内のIFN−β + MEZにより新規に、および高度に誘導性に発現される;5)GBMでは新規に発現されず、IFN−β + MEZによる24時間処理後GBMにおいてごく僅かに誘導される;6)正常皮膚繊維芽細胞、結腸直腸癌(SW613)および前立腺癌(LNCaP)において高レベルの新規発現が見られるが、IFN−β + MEZ処理は有意に発現を変化させない;7)子宮内膜腺癌(HTB113)細胞は、この遺伝子の発現レベルが低いが、24時間のIFN−β + MEZ処理により発現が高レベルになる;8)アクチノマイシンD、アドリアマイシンおよびVP−16により処理したHO−1細胞では発現が増加する;9)酪酸フェニル、ガンマ線照射、シスプラチンおよびTNF−αにより処理したHO−1細胞では発現は低下する;および10)正常メラニン細胞と形成異常母斑において発現が最高であり、放射増殖相(RGP)と垂直増殖相(VGP)の初期メラノーマにおいて発現が低下しており、そして転移性メラノーマにおいて発現は最低である;11)マトリゲル(Matrigel)処理RGPおよび初期VGPの初期メラノーマにおいて腫瘍形成の進行の関数として発現は低下する;12)腫瘍形成能および転移性C8161ヒト・メラノーマ細胞において発現は低く、挿入された正常第6染色体を含有する腫瘍形成能ではあるが転移性ではない3つの独立のC8161クローンにおいては発現は増加している;13)ヒト前骨髄球性白血病中のシクロヘキシミドの存在下で誘導される、即時型初期応答遺伝子。単球およびマクロファージ(12−O−テトラデカノイル−ホルボール−13−アセテート(TPA)またはビタミンD3による処理)または顆粒球(all−トランスレチノイン酸(RA)またはジメチルスルホキシド(DMSO)による処理)への分化を誘導されたHL−60細胞;14)ヒト神経芽腫細胞において酢酸フェニルとRAの組合せの処理による増殖停止と分化の関数として誘導される;および15)ヒト組織球リンパ腫U−937細胞においてTPAでの処理による分化と増殖停止の誘導中に誘導される。
mda−6は、IFN−β + MEZにより処理した、全ての試験したメラノーマ、特定の癌、正常小脳細胞およびGBM細胞において発現の増加を示す、最終分化調節遺伝子である。mda−6はまた、ヒト前骨髄球性白血病(HL−60)細胞における単球/マクロファージの誘導および顆粒球分化;ヒト神経芽腫細胞における分化;および組織球リンパ腫(U−937)細胞における分化の間に誘導される。この遺伝子はまた、アドリアマイシンとVP−16を含む、特定の化学療法剤により処理した細胞において発現が増加する。対照的に、mda−6の発現は、ガンマ線照射、脱メチル化抗癌剤である酪酸フェニル、サイトカインであるTNF−αおよび化学療法剤であるシスプラチンによる処理後低下する。mda−6は、以下のことに有用であろう:1)特定の組織系統のため、および同様な組織型の腫瘍(すなわち、癌、星状細胞腫)を区別するためのマーカーとして(診断への応用);2)VP−16や、アドリアマイシンやシスプラチンと同様に機能する化学療法剤のような、トポイソメラーゼ阻害剤に対する応答を追跡するため(新規化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム);3)ヒト・メラノーマ細胞、骨髄性白血病細胞、組織球リンパ腫および神経芽腫における最終分化を誘導する能力を有する化合物を同定するため(新規分化誘導剤および化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム);および4)腫瘍の進行の状態(すなわち、あまり侵襲的でない初期の癌において発現しているだけかまたは高レベルで発現しているか)を追跡するため。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)は、ヒト・メラノーマおよび他の群の腫瘍において増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。また特定のタイプの細胞(例えば、骨髄細胞)におけるこの遺伝子の過剰発現は、種々のDNA障害性薬剤や化学療法剤に対するこれらの細胞の感受性を低下させることもある(治療への応用)。これは、放射線治療や化学療法により誘導される障害から骨髄細胞を保護するのに有用であろう(治療への応用)。また同様に、アンチセンス体の使用は、特定の群のDNA障害性薬剤や治療剤により誘導される正常細胞における増殖抑制への感受性を低下させる(治療への応用)。またこの遺伝子は、あまり進行していない初期の星状細胞腫から、より進行した星状細胞腫(例えばGBM)を分類することに有用であろう(診断への応用)。またこの遺伝子は、初期(初期放射増殖相、初期垂直増殖相)メラノーマと後期(後期垂直増殖相、転移性)メラノーマを区別するのに有用であろう(診断への応用)。
mda−7の性質
mda−7は新規なcDNAである(この配列は、種々のDNAデータベースの既に報告されている遺伝子と相同性がない)。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞における発現
組換えヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN−β)(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)およびIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)ではより著しく、HO−1細胞の24時間処理後、mda−7の発現は増加する。
mda−7の発現の増加は、IFN−β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)、MPA(3μM)、IFN−β + IFN−γ(1000単位/ml+1000単位/ml)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml)およびRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)により96時間処理したHO−1細胞において観察される。最大の誘導は、IFN−β + MEZで観察され、続いてMPA+MEZとIFN−β + IFN−γで観察される。
mda−7誘導の相対レベルは、種々の増殖および分化調節剤により処理したHO−1細胞で観察される増殖抑制の程度に相関する。発現の最大の増加は、IFN−β + MEZでの処理により不可逆的に増殖能力を喪失し、最終分化するまで誘導された細胞において観察される。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
mda−7の発現は、IFN−β + MEZにより24時間処理した、HO−1、C8161、C8161/6.3(挿入された正常ヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)、FO−1、LO−1、SH−1、WM278およびWM239ヒト・メラノーマ細胞において増加する。この遺伝子は、不死化ヒト・メラニン細胞FM5169(SV40により形質転換された)において構成的に発現される。しかしFM5169では、24時問のIFN−β + MEZ処理により発現の増加は観察されない。
mda−7は、IFN−β + MEZにより処理した全てのヒト・メラノーマ細胞で種々に発現されるか、または種々に誘導される。対照的に、この遺伝子はメラニン細胞で発現されるが、IFN−β + MEZによる24時間処理後に発現の変化は観察されない。
正常小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫)(GBM)および正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda−7は正常小脳、GBMまたは正常皮膚繊維芽細胞において新規に発現されない。
正常小脳、GBMおよび正常皮膚繊維芽細胞においてIFN−β + MEZによる24時間処理後、mda−7の発現は誘導される。
mda−7は、ヒト小脳、GBMおよび正常ヒト皮膚繊維芽細胞において、新規に発現されないが、IFN−β + MEZによる誘導に感受性である。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)における発現
mda−7は、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)または前立腺癌(LNCaP)において新規に発現されない。
mda−7は、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)に細胞において、IFN−β + MEZによる24時間処理後に誘導されない。
この遺伝子は、ヒト癌においてIFN−β + MEZにより新規にも誘導性にも発現されない。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2000単位/ml;24時間)、MEZ(10ng/ml;24時間)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml;24時間および96時間)、IFN−α+MEZ(2000単位/ml+10ng/ml;24時間)、アドリアマイシン(0.1μg/ml;24時間)、ビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)、およびUV(10ジュール/mm2、24時間後測定)による処理によりHO−1細胞におけるmda−7の発現は増加する。またmda−7は、MPA(3μM)、IFN−β + IFN−γ(1000単位/ml+1000単位/ml)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml)およびRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)による96時間処理後にも誘導される。最高レベルの発現は、IFN−β + MEZにより24または96時間処理したHO−1細胞において観察される。
IFN−α(2000単位/ml;24時間)、IFN−γ(2000単位/ml;96時間)、酪酸フェニル(4mMPB、24時間、4日間または7日間)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)、ガンマ線照射(3グレイで処理し、24時間後に解析)、アクチノマイシンD(5μg/mlで2時間、24時間後に測定)、TNF−α(100単位/ml;24時間)またはVP−16(5μg/ml;24時間)により処理したHO−1細胞ではmda−7の発現の誘導は観察されない。
mda−7は、以下の性質を示す、増殖と分化と老化調節性の新規な遺伝子である:1)最終分化(IFN−β + MEZにより96時間処理)の間、および多くの増殖調節剤と分化誘導剤による96時間の処理後に誘導される;2)IFN−β + MEZによる24時間処理により、試験した全てのヒト・メラノーマにおいて発現が増加するが、SV40−不死化ヒト・メラニン細胞においては増加しない;3)正常小脳、GBMおよび正常皮膚繊維芽細胞において新規に発現されないが、IFN−β + MEZにより24時間以内に高度に誘導される;4)結腸直腸癌、子宮内膜癌または前立腺癌においては発現も誘導もされない;5)アドリアマイシン、ビンクリスチンおよびUV照射により処理したHO−1細胞において発現の増加が誘導される;および6)増殖するヒト神経芽腫細胞においては発現されないが、増殖抑制および最終分化の誘導後に誘導される;7)ヒト前骨髄球性白血病(HL−60)およびヒト組織球リンパ腫(U−937)細胞において発現されないが、増殖停止と最終分化の誘導後に誘導される;および8)活性に増殖するヒト細胞においては発現されないが、細胞老化により誘導される。
mda−7は、増殖および最終分化調節性遺伝子であり、IFN−β + MEZにより処理した、全てのメラノーマ(メラニン細胞は含まない)、および正常皮膚繊維芽細胞および正常小脳およびGBM細胞において発現の増加を示す。対照的に、mda−7は、一連の癌においては発現も誘導もされない。mda−7は以下のことに有用であろう:1)特定の組織系統(すなわち、ケラチン生成細胞からのメラノーマ)のマーカーとして(診断への応用);2)繊維芽細胞(IFN−β + MEZにより誘導される)を癌(IFN−β + MEZにより誘導されない)から区別するために(診断への応用);3)ヒト・メラノーマにおいて増殖抑制と分化過程(最終分化を含む)の種々の成分を誘導することのできる薬剤の同定のため(新規分化誘導剤および化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム);および4)メラニン細胞と、恐らく初期および後期メラノーマ細胞からの母斑とを区別するため(診断への応用)。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)はヒト・メラノーマにおいて増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。
mda−8の性質
mda−8は、新規なcDNAである(この配列は、種々のDNAデータベースの既に報告されている遺伝子と相同性がない)。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞における発現
IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)の組合せによる24時間処理後、HO−1細胞においてmda−8の発現が増加する。
最終分化したHO−1細胞、すなわち、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)の組合せにより96時間処理した細胞の解析結果は、mda−の継続した発現の増加を示す。
免疫インターフェロン(IFN−γ)(2000単位/ml)またはIFN−β + IFN−γ(1000単位/ml+1000単位/ml)による96時間のHO−1細胞の処理により、mda−8の発現は増大する。96時間後のmda−8の発現の増加のレベルは、IFN−γ、IFN−β + IFN−γおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において同様である(注:IFN−β + IFN−γの組合せは、IFN−β + MEZと同程度のHO−1細胞における96時間後の増殖抑制をもたらす。しかし、インターフェロンの組合せでは増殖発現は可逆的であるが、一方IFN−β + MEZの組合せでは不可逆的である)。
mda−8は、新規なIFN−γ誘導性遺伝子であり、またHO−1ヒト・メラノーマ細胞における最終細胞分化の間に発現の増加を示す。mda−8は、ヒト・メラノーマ細胞において免疫インターフェロン応答のマーカーおよび最終分化のマーカーとして有用であろう。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)により24時間処理した、HO−1、C8161およびWM278ヒト・メラノーマ細胞においてmda−8の発現が増加する。
IFN−β + MEZにより24時間処理したC8161/6.3(挿入された正常ヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)、FO−1、LO−1、SH−1およびWM239を含む別のヒト・メラノーマにおいては、mda−8の発現に変化は見られない。
この遺伝子の発現は、特定のヒト・メラノーマ細胞においてIFN−β + MEZにより増加する。
正常小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫)(GBM)および正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda−8は、正常小脳において新規に発現されるが、GBMでは発現されない。
mda−8は、正常皮膚繊維芽細胞において新規に発現される。
IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)中で24時間増殖させると、正常小脳および正常皮膚繊維芽細胞においてmda−8の発現にごく僅かな変化がある。
IFN−β + MEZに24時間暴露後、GBM細胞においてmda−9の発現は高レベルで誘導される。
この遺伝子は、正常小脳と正常皮膚繊維芽細胞の両方において新規に発現されるが、GBMでは発現されない。この遺伝子は、ヒトGBMにおいてIFN−β + MEZにより誘導されるが、正常小脳細胞および正常皮膚繊維芽細胞では発現は変化しない。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)における発現
mda−8は、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)において新規に発現される。
IFN−β + MEZによる24時間処理後、mda−8の発現は、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)細胞において影響を受けない。
mda−8は、3つのタイプの癌において新規に発現される。mda−8遺伝子の発現は、IFN−β + MEZによる24時間の処理後、3つの癌において変化がない。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2000単位/ml;24時問)、アクチノマイシンD(5μg/mlで2時間、24時間後に測定)、アドリアマイシン(0.1μg/ml;24時間)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)およびUV(10ジュール/mm2、2、14および24時間後測定)による処理後にmda−8の発現は増加する。
IFN−γ(2000単位/ml)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml)およびIFN−β + IFN−γ(1000単位+1000単位)による96時間処理により、mda−8の発現は増加する。
MEZ(10ng/ml;24または96時間)、IFN−β(2000単位/ml;24または96時間)、MPA(3μM;96時間)、RA(2.5μM;96時問)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml;96時間)、RA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)、酪酸フェニル(4mMPB、24時間、4日間または7日間)、ガンマ線照射(3グレイで処理し、24時間後に解析)、ビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)、IFN−α(100単位/ml;24時間)、VP−16(5μg/ml;24時間)、IFN−α(2000単位/ml)またはIFN−α+MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)により処理したHO−1細胞におてmda−8の発現に変化は観察されない。
mda−8は、以下の性質を示す新規な遺伝子である:1)最終分化(IFN−β + MEZにより96時間処理)の間、および組換えガンマインターフェロン(単独またはIFN−βとの組合せで)による96時間の処理後に誘導される;2)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、選択されたヒト・メラノーマでのみ発現が増加する;3)正常小脳、正常皮膚繊維芽細胞、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)において新規に発現されるが、GBMでは発現されない;4)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、正常小脳、正常皮膚繊維芽細胞、結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)および前立腺癌(LNCaP)においては発現に変化がない;5)IFN−β + MEZによる24時間の処理はGBM細胞における発現を誘導する;および6)アクチノマイシンD、アドリアマイシン、シスプラチンおよびUV照射により処理したHO−1細胞において発現の増加が誘導される。
mda−8は、サイトカイン応答性および最終分化応答性遺伝子であり、特定のヒト・メラノーマと、IFN−β + MEZにより処理したGBM細胞(IFN−γおよびIFN−γ+IFN−βによる96時間処理後のHO−1においても誘導される)において発現の増加を示す。転写阻害剤であるアクチノマイシンD、化学療法剤であるアドリアマイシンとシスプラチンおよびUV照射により処理したHO−1ヒト・メラノーマ細胞においても発現の増強は明らかである。mda−8は以下のことに有用であろう:1)正常神経膠細胞と悪性星状細胞腫(例えば、GBM)を区別するためのマーカーとして(診断への応用);2)II型インターフェロン治療に対する応答を追跡するため(診断への応用);および3)最終分化を誘導し、アドリアマイシン、シスプラチンおよびUV照射と同様な細胞毒性効果を誘導する能力を有する化合物を同定するため(新規な分化誘導剤および化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム)。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)は、特定のヒト・メラノーマおよび多形性神経膠芽腫において増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。
mda−9の性質
mda−9は、新規なcDNAである(この配列は、ヒトトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)mRNAと、138塩基対中55.1%の相同性を示す;GB−Pr;Humtgfbc)。
HO−1ヒト・メラノーマ細胞における発現
IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)の組合せによるHO−1細胞の24時間処理後にmda−9の発現は増加する。
mda−9の発現の増加は、最終分化したHO−1細胞、すなわちIFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)の組合せにより96時間処理したHO−1細胞においても存続する。
mda−9は、最終分化したHO−1ヒト・メラノーマ細胞において発現の増加を示す、TGF−βと相同性を有する新規な遺伝子である。
別のヒト・メラノーマ細胞における発現
IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml)により24時問処理したHO−1およびC8161ヒト・メラノーマ細胞においてmda−9の発現は種々に増加する。
mda−9の発現のレベルは、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10pg/ml)により24時間処理したSH−1細胞において低下する。
FO−1、LO−1またはC8161/6.3細胞(挿入された正常ヒト第6染色体を含有するC8161ヒト・メラノーマ細胞クローン:これらの細胞はヌードマウスにおいて腫瘍形成能であるが、親株C8161細胞とは異なりこれらは非転移性である)においてmda−9の発現に変化はない。
特定のヒト・メラノーマ細胞においてIFN−β + MEZによりmda−9の発現は増加する。IFN−β + MEZにより処理したC8161/6.3細胞では発現が増強せず、一方親株C8161細胞では増加を示すということは、この遺伝子の調節がメラノーマ発生のより進行した段階(すなわち、転移能力を有するメラノーマ)に関連することを示唆している。
HO−1細胞における発現に及ぼす種々の処理プロトコールの影響
IFN−β(2000単位/ml;24時間)、MEZ(10ng/ml;24時間)、IFN−β + MEZ(2000単位/ml+10ng/ml;24および96時間)、酪酸フェニル(4mMPB、24時間、4日間または7日間)、ガンマ線照射(3グレイで処理し、24時間後に解析)、TNF−α(100単位/ml;24時間)、IFN−α(2000単位/ml)、IFN−α+MEZ(200単位/ml+10ng/ml)、VP−16(5μg/ml;24時間)またはUV(10ジュール/mm2、2または14時間後測定)により処理したHO−1細胞においてmda−9の発現が増加する。
アクチノマイシンD(5μg/mlで2時間、24時間後に測定)、UV(10ジュール/mm2、24時間後に測定)、シスプラチン(0.1μg/ml;24時間)、ビンクリスチン(0.1μg/ml;24時間)、IFN−β(2000単位/ml;96時間)、IFN−γ(2000単位/ml;96時間)、MEZ(10ng/ml;96時間)、MPA(3μM;96時間)、RA(2.5μM;96時間)、IFN−β + IFN−γ(1000単位/ml+1000単位/ml;96時間)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml;96時間)またはRA+MEZ(2.5μM+10ng/ml)により処理したHO−1細胞においてmda−9の発現に変化は観察されない。
mda−9は、以下の性質を示す、配列がTGF−βに相同性を有する新規な遺伝子である:1)HO−1ヒト・メラノーマ細胞において最終分化(IFN−β + MEZによる96時間の処理)の間に誘導される;2)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、幾つかのヒト・メラノーマにおいて発現が増加する;3)IFN−β + MEZによる24時間の処理により、腫瘍形成能かつ転移性ヒト・メラノーマC8161において発現が増加するが、腫瘍形成能ではあるが転移性ではないC8161/6.3においては増加しない;および4)酪酸フェニル、ガンマ線照射、TNF−α、UV照射(2および14時間後であり、24時間後は含まない)、IFN−αおよびIFN−α+MEZを含む多くの薬剤により処理したHO−1細胞において発現の増加が誘導される。
mda−9は、IFN−β + MEZにより処理した幾つかのヒト・メラノーマにおいて発現の増加を示す、最終分化応答性遺伝子である。腫瘍形成能かつ転移性ヒト・メラノーマ細胞であるC8161においてはIFN−β + MEZにより発現の増強が誘導されるが、その復帰変異体細胞のC8161/6.3(これは、腫瘍形成能は保持しているが、転移能力を失っている)では誘導されない。脱メチル化抗癌剤である酪酸フェニル、サイトカインであるTNF−α、ガンマ線照射およびUV照射により処理したHO−1ヒト・メラノーマ細胞においても発現の増加は明らかである。
mda−9は以下のことに有用であろう:1)ヒト・メラノーマの初期とより進行したものを区別するためのマーカーとして(診断への応用);および2)最終分化を誘導し、UV照射およびガンマ線照射により誘導されるような特定のパターンのDNA損傷を誘導する能力を有する化合物を同定するため(新規な分化誘導剤および化学療法剤を同定するための薬剤スクリーニングプログラム)。一旦全長cDNAを単離すると、この遺伝子(適切な発現ベクターでセンス方向で使用される)はまた、特定のヒト・メラノーマにおいて増殖を阻害し、最終分化を誘導するのに有用であろう(治療への応用)。アンチセンス方向に使用される時、この遺伝子の発現により、正常細胞(例えば、骨髄細胞)を、特定の化学療法剤およびガンマ線照射により誘導される細胞毒性に抵抗性に設計することが可能かもしれない(治療への応用)。
IFN− + MEZにより処理したHO−1ヒト・メラノーマ細胞からサブトラクション・ハイブリダイゼーションを使用して単離した別のmda遺伝子
mda−1:IFN−βおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す新規遺伝子(HP2−36)。(ジャングとフィッシャー(Jiang and Fisher),Molecular and Cellular Differentiation,1(3),印刷中,1993)。
mda−2:IFN−βおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す新規遺伝子(HP3−31)。(ジャングとフィッシャー(Jiang and Fisher),Molecular and Cellular Differentiation,1(3),印刷中,1993)。
mda−3:MEZおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現が増加する(HP2−4)。(ヒトGOS19−1mRNA、サイトカイン(Gb−Pr:Hummipla)、ヒトTPA誘導性mRNA、pLD78(GB−Pr:Humpld78)と同一)。(ジャングとフィッシャー(Jiang and Fisher),Molecular and Cellular Differentiation,1(3),印刷中,1993)。
mda−11:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す新規遺伝子(HJ2−78)。(ラット・リボソームタンパクIF116と87.2%同一)。
mda−12:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す遺伝子(HP3−8)。(ヒトGOS19−3mRNA(Gb−Humcpgcus2)、LD78A(Gb−Pr:Humld78a)と同一)。
mda−13:IFN−βおよびIFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す遺伝子(HPS−7)。(インターフェロン刺激遺伝子−56(ISG56)(IFN−β誘導性遺伝子)と同一)。
mda−14:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時問後、発現の増加を示す遺伝子(HP2−59およびHP3−114、2回独立に単離された同じ遺伝子)。(インターロイキン−8(IL−8)(Gb−Un:M28130)、MDNCF(単球由来好中球走化性因子)のヒトmRNA(Gb−Pr:Nummdncf)と同一)。
mda−15:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す遺伝子(HP2−64)。(中間径フィラメントタンパクであるビメンチン(Gb−Pr:Humviment)と同一)。
mda−16:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す遺伝子(HP2−18)。(ヒト・アポフェリチンH遺伝子(Gb−Pr:Humferg2)と同一)。
mda−17:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時間後、発現の増加を示す遺伝子(HP2−40)。(IFP−53(Gb−Pr:Humifp)、IFN誘導性ガンマ2タンパク(Gb−Huminfig)と同一)。
mda−18:IFN−β + MEZで処理したHO−1細胞において24時問後、発現の増加を示す遺伝子(HP2−45)。(hnRNP−A1タンパク(Gb−Pr:Humrnpal)、RNA結合タンパク(Gb−Pr:Humhnrnpa)と同一)。
第5シリーズ実験
発ガン過程は、相互に関係する一連の段階を通して進行する事が多く、多くの遺伝子的変化及び環境因子によって調節される(1-6)。この多段階過程の各構成要素を制御している特定の事象をまだ明かにされずに残されているけれどもが、多くの癌細胞において繰り返し現れるテーマは、分化の異常パターンである(7-10)。加えて、癌細胞が進化し、最終的に新規表現型を発現するにつれ、または、先在する形質転換に関連した表現型の発現が増加するにつれ、分化関連形質の発現の程度が、減少していく事がよくある。悪性のメラノーマは、腫瘍の進行の過程を具現しており、転移表現型を選択する性質および転移細胞が成長を優先的させる特質が強い(11-14)。北アメリカ人口集団で発生している多くのタイプの内、メラノーマは、最も速いスピードで増加しており、現在生まれる子供の100人に1人という多くの子供が、表面拡張型メラノーマを偶発発生していると推定されている(11)。メラノーマは、初期段階では簡単に治療できるけれども、悪性メラノーマの進行した段階では、外科的及び化学的治療の介入は、患者における疾病の転移及び死を防ぐことに事実上効果がない。これらの所見によって、転移性メラノーマ罹患者をより有効に治療するために、治療的アプローチを改良しなければならない事が強調される。
ヒトにおいて、悪性メラノーマへの進展は、結節型メラノーマを除いては、進化中の腫瘍細胞中で、一連の変化が次から次へと起こる事により行われる(11-15)。これら一連の変化は、例えば正常メラニン細胞が、普通の後天性メラニン細胞の母斑(色素性母斑)にわり、続いて成形不良斑に進展し、放射状成長相(RGP)原発メラノーマ、垂直成長相(VGP)原発メラノーマ、最終的に転移性メラノーマに進展する等である(図20)。初期の進化段階では、病巣が0.76mm厚以下であれば、例えVGP中であっても、現在採用されている技術で簡単に治療できるが、該技術は、4.0mm厚を超えるVGP病巣を担持する患者では、転移の拡大を防ぎ、疾病率を低下させるために、非常に有効であるとはいえない(生存率20%)(11)。並外れて優れた本モデル系は、メラノーマの進行の初期段階でも及び後期段階でもおこる重要な遺伝子発現の変化を評価するには理想的なまでに適している。
癌治療に対する方法で有害性の少ないと思われるものに、分化治療と呼ばれる方法がある(7、9、10、16、17)。この治療的方式は、二つの前提を下敷きにしている:(A)多くの悪性細胞タイプは、分化異常のパターンを示し、その結果 抑制のきかない成長を示す。(B)適切な薬剤により処置すると、結果的に腫瘍細胞の再プログラムが行なわれ、増殖能力が失われた結果、分化に至る。この仮説の本質は、多くの腫瘍細胞において正常分化を取り行う遺伝子には、通常遺伝子的な欠陥はなく、むしろ遺伝子が適切に発現されていないのではないかという仮定にある。特殊なケースだが、分化治療を適用して結果として成功しているのは、分化表現型を誘導するに適切な遺伝子が転写活性化され、最終的に細胞分化を誘導するに必要な遺伝子産物を生産しているからであると思われる。出願人は、ヒト・メラノーマ細胞を使用してこの仮説を検証した(8、10、18ー23)。組替ヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFNーβ)及び抗白血病化合物メゼレイン(mezerein、MEZ)を組合わせてヒト・メラノーマ細胞を処置すると、成長の急停止、形態学変化の誘導、抗原性表現型の変化、メラニン合成の増加、増殖能力の不可逆的喪失、すなわち、最終的細胞分化に至る(18、21、23)。対照的に、同様のメラノーマ細胞を同量のIFN−βかまたはMEZ単独で処理すると、特異的分化に関係し、免疫学的に関係のある変化及び成長抑制は結果として起こるが、最終的分化はおこらない(18、21、24ー34)。
本発明は、ヒトメラノーマ細胞における可逆的及び不可逆的(最終)分化の過程を出願人が分析した結果を要約したものである。サブトラクション・ハイブリダイゼーションの技法を使用する事によって、メラノーマ分化関連(mda)と呼ばれる一連の新規遺伝子が、ヒトメラノーマ細胞において、分化及び成長が停止している間に発現の増加を示す事が確認されている。これらの新規に確認されたmda遺伝子が、ヒト・メラノーマ成長、分化及び形質転換進行の分子的基盤を明かにするのに有効である事が証明されるであろう。
ヒト・メラノーマ細胞における成長制御及び分化の過程の解明
HO−1細胞における最終分化の過程には、細胞表現型及び遺伝子発現における多くの変化が伴う(18、21、23、35)。生物化学的変化及び細胞質変化としては、成長抑制、メラニン合成における変化(生化学的分化)及び抗原性の変化(免疫学的分化)があげられる(18、21、23、29、34、35)。成長及び分化を構成する様々な要素とそれに対応するヒトメラノーマ細胞において誘導される遺伝子発現の変化の間の関係は、これらの過程の異なる構成要素を誘導する特殊な化合物を確定する事に助けられて、明らかにする事ができる(図21A−H)(18、21、23、33、36)。
IFN−β+組替免疫インターフェロン(IFNーγ)を組み合わせた中でHO−1細胞を成長させると、IFN−β + MEZの組み合わせた時のように、96時間後に同程度の成長抑制が起こった(23、33)。しかしながら、このインターフェロンの組み合わせでは、可逆的な成長の停止を誘発し、IFN−β単独によって誘発された上記のメラニン合成の増加を引き起こす事はない(33)。薬剤のこのような特異的組合わせによって、可逆的な成長抑制、不可逆的成長の抑制、及び最終分化誘導とを解離する事ができる。HO−1細胞を、全てトランスのレチノイン酸(RA)、マイコフェノリック酸(MPA)、IFN−β及びMEZ等の化合物で処理すると、メラニン合成すなわち可逆的生化学分化において可逆的増加が生じた(図21A−H)(23、36)。しかしながら、MPA、IFN−β及びMEZは、成長抑制を誘導するけれども、RAは、HO−1成長を変化させることなく、メラニン及びチロシンレベルを増加させる(23、26)。これらの結果によって、RAを使用するとメラニン合成の増加に直接相関する遺伝子発現の変化を、成長を抑制をする事なしに確認できる事がわかった。興味がもたれる他の化合物には、HO−1細胞中で形態的な分化を引き起こすMPAおよびMEZがある(図22)。また、HO−1細胞におけるこれらの変化は可逆的で、誘導剤なしで成長に引き続いて起こる。分化的変化のスペクトラムを不可逆的に誘導する事ができその結果,HO−1細胞において、最終的細胞分化をおこす薬剤の現在利用が可能な唯一の組合わせは、IFN−β + MEZである(18、21、23)。
HO−1細胞は、2000単位/mlのIFNーβ及び10ng/mlのMEZの存在下、96時間生育させてから、全RNAを単離しノーザレン・ブロッテング分析によって遺伝子発現を分析した(23)。細胞は、これらの条件下で生存を維持しているが、増殖能力を不可逆的に失なっている(18、23)。
可逆的成長抑制中及び最終細胞分化中にヒトメラノーマ細胞において誘導される遺伝子発現の変化を伴う自己分泌要因
造血細胞の分化中に成長停止を行なうに重要と思われる因子は、自己分泌IFNーβである(37ー39)。自己分泌IFNーβが造血細胞分化に関連していることは、(a)IFNーβの中和抗体が、造血細胞分化中に起こるc−mycレベルの低下を阻害し、成長抑制を部分的に阻害するという所見(b)ミエロイド分化中にインターフェロンの調節因子I(IRFー1)が誘導される事、(c)IRF−1のアンテイセンス・オリゴマーによる成長阻止が部分的に逆転し、インターロイキン6及び白血病阻止因子による白血病細胞において分化誘導が起こる事、及び(d)造血細胞において、最終分化中に特異的タイプIインターフェロン(IFNーα/β)遺伝子発現が誘導される事、という証拠により示唆される(37ー39)。
HO−1細胞においては、可逆的及び不可逆的分化の過程でインターフェロン反応性遺伝子、およびgro/MGSA遺伝子の発現の増加が起こっている(23)。これらの観察によって、自己分泌フィードバック経路が、分化過程中に見られる遺伝子発現の変化に寄与しているのではないかという事が示唆される。この可能性を直接検証するために、HO−1細胞を様々な誘導剤で24時間処理し、培養物を洗浄して誘導剤を除き、誘導剤を欠く培地で72時間生育させた。これらの細胞から得られたコンデイション培地を採取し、未使用HO−1細胞において遺伝子発現の変化を誘導する能力についてテストを行った(23)。INF−β+MEZによって処理された細胞から得られたコンデイション培地は、成長抑制を示し、誘導剤処理されたHO−1細胞においても見られた数多くの遺伝子発現の変化を誘導した(23、40)。これらの変化には、c−jun及びα5インテグリン、フィブロネクチン発現の増加、jun−B、HLAクラスI、ISG−15及びgro/MGSA発現の誘導がある。これらの観察によって、2つの自己分泌ループが、HO−1細胞の分化に関連しているかも知れないという事が示唆される。ひとつは、自己分泌IFN−β、もう一方は、自己分泌gro/MGSAである。IFN−β自己分泌ループは、IFN−β抗体がコンデイション培地によるISG−15誘導を部分的に中和する事ができる事と、RT−PCRによって追跡されるように、コンデイション培地によってIFN−β遺伝子が直接誘導される事によって裏付けられる(40)。IFN−β + MEZで処理されたHO−1細胞派生のコンデイション培地は、HO−1細胞で最終分化を誘導しない(40)。同様に、可逆的成長阻止、分化を誘発するその他の薬剤はまた、未使用のHO−1細胞中で、タイプIインターフェロン反応性遺伝子を誘発する事ができるコンデイション培地を産生する。これらの結果によって、ヒト・メラノーマ等の固形腫瘍においては、特有の自己分泌ループが成長阻止及び分化の過程に貢献しているではないかという事が示唆される。
ヒト・メラノーマ細胞における分化及び成長抑制過程中で様々に発現される遺伝子の確認
最終分化に至るまで誘導されたヒト・メラノーマ細胞において様々に異なる発現を行なう遺伝子を確認するために、出願人は、サブトラクション・ハイブリダイゼーション法を改良して使用してきた(図8)(41)。cDNAライブラリーを、未処理のHO−1細胞から得たポリ(A+)RNAより調整し(Ind cDNAライブラリー;ドライバーcDNAライブラリー)、またIFN−β + MEZで2、4、8、12、24(時間)処理されたHO−1細胞から得られたポリ(A+)RNAより調整した(Ind-cDNAライブラリー、テスターcDNAライブラリー)。テスター及びドライバーcDNAライブラリーは、商業的に入手可能なλUni−ZAPファージベクター中に方向性をもって(directionally)クローンされた。次に、サブトラクション・ハイブリダイゼーションを、二重鎖テスターDNAとライブラリーの大量切開によって調整された単鎖ドライバーDNAの間実行した。サブトラクトされたcDNAは、スクリーンニング操作も遺伝子定性操作もし易いλUniーZAPフアージベクター中に有効にクローンされた。未処理のHO−1コントロール(Ind)cDNAsのINF−β+MEZ処理された(Ind+)cDNAsからのサブトラクトを一回行なった結果、未処理のHO−1細胞中では、分化誘導剤処理したHO−1細胞と比較して異なる発現を示す一連のcDNAsが確認された。これらのcDNAsは、メラノーマ分化関連(mda)cDNAsと呼ばれる。最初は、70cDNAのクローンを分析し、23のクローンがIndーとInd+処理されたHO−1細胞との間で遺伝子発現に差を示すことがわかった(41)。予想されたように、コントロールHO−1cDNAsをINF−β+MEZ処理されたHO−1cDNAsからサブトラクトすると、様々な誘発剤で24時間処理した後に発現の増加を示す一連のMDA遺伝子となった。IFN−βのみならず、IFN−β + MEZ(mda−1及びmda−2)、MEZ及びIFN−β + MEZ(mda−3)、IFN−β、MEZおよびIFN−β + MEZ(mde4)、ひいてはIFN−β + MEZ(mda−5及びmdaー6)で処理されたHO−1細胞中で発現の増加を示す遺伝子が含まれていた(図10)(41)。これらの6つのmda遺伝子の中で、mda−3だけは、先に確認されていた遺伝子GOSー19ー1であった(41)。他の8つのヒト・メラノーマ細胞系を分析したところ、IFN−β + MEZで24時間処理したところ、特殊なmda遺伝子が発現を増加させる事もわかった(データ表示せず)。
上記に示す研究では、適切な誘発剤による24時間処理を行った後に、特殊なmda遺伝子が、HO−1細胞での発現の増加を示すことがわかった。IFN−β、MEZまたIFN−β + MEZで96時間処理されたHO−1細胞でmda発現をモニターする為の研究がなされた(図15)。更に、可逆的な成長抑制を誘発する実験条件下(INF−β + IFN−γ、IFN−β、IFN−γ、MEZ,MPA,MPA+MEZ、RA+MEZ)、メラニン合成の増加を誘発する実験条件下(IFN−β、MEZ,MPA、RA、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZ)形態学的変化を誘発する実験条件下(MPA、MEZ,IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZ)または、最終細胞分化を誘導する実験条件下(IFN−β + MEZ)において特殊なmda遺伝子の発現パターンが決定された。これらの実験では、最終的に分化されたHO−1細胞中で、mdaー4、mda−5、mda−6(p21)、mda−7、mda−8及びmda−9の発現の連続増加が示された(図15)。mda遺伝子の発現パターンが異なる事が、様々な分化および成長調節剤で処理されたHO−1細胞において観察された。3つのmda・cDNA遺伝子、mda−4,mdaー5、mda−8は、HO−1細胞において重なりあった誘導のプロフィルを示した。これらの遺伝子は、IFN−β + MEZ、IFN−γ、またはIFN−β + IFN−γで96時間処理したHO−1細胞で、発現の増加が示した(図15)。これらのcDNAsはどのDNAデータ・ベースにも記載されていなかったが、チロキシン反応性遺伝子の新クラスに対応する可能性がある。この可能性については、現在調査中である。INF−β、MEZ,MPA、IFN−β + IFN−γ、IFN−β + MEZ、MPA+MEZ、RA+MEZ等の成長停止誘導剤で96時間処理されたHO−1細胞で、mda−7の発現が増加した。mda−7発現の程度は、最終細胞分化も誘導するIFN−β + MEZで処理されたHO−1細胞において最大であった。HO−1細胞を96時間、RAで処理しても、成長変化を誘導しないし、mda−7の発現も誘導もしない。同様に、HO−1細胞の成長をほんのわずか阻止するIFN−γも、結果として顕著なmda−7の発現には至らなかった。mda−9の場合、HO−1細胞における発現の増加は、IFN−β + MEZで処理された最終的に分化された細胞でのみ、顕著であった(図15)。更に、様々な新規mda遺伝子の完璧な長さのcDNAsを単離し、ヒト・メラノーマ及び他のヒト細胞型において、その成長及び分化の過程中でのそれらの発現を分析する研究が進められている。
メラノーマ分化関連遺伝子6(mdaー6)は、サイクリン依存キナーゼ阻害剤、p21である
細胞サイクルの調節は、サイクリン依存キナーゼ(CDKs)と呼ばれる一連の関連酵素を順序良く活性化させた結果行われる(42)。通常の細胞において、CDKsは、CDK,サイクリン、増殖細胞核抗原(PCNA)及びp21タンパクから構成される4重の複合体中で優先的に見られる(43、44)。p21は、CDK活性をコントロールし、これによってほ乳類細胞における細胞サイクルの調節及び成長に影響を与える(43ー50)。誘導可能な野生型p53の腫瘍抑制遺伝子含むヒト・グリオブラストーマ細胞及びサブトラクション・ハイブリダイゼーションを使用して、M21、000タンパクをコードするWAF1(野生型p53活性化断片1)と呼称される遺伝子が確認された(49、50)。WAF1は、CP11(Cdk相互反応性タンパク1)と呼ばれる有力なCDK阻害剤と同じ、2つのハイブリッド系を使用して確認されたp21をコードする遺伝子である(46)。p21レベルは、老衰細胞(sdiと呼ばれる遺伝子;老衰細胞派生阻害剤)で増加が観察されている(51)。p21が過剰発現すると、腫瘍細胞の成長が阻害される(46、49、51)。野生型p53を含む細胞をDNA損傷剤で処理すると、野生型p53タンパクが増加し、p21レベルが増加する(51)。この様な状況で、p21がG1成長停止に直接寄与していると思われ、結果として、特に目的とする細胞のDNA破壊を誘導した後、その細胞枯死をもたらすのかもしれない(51)。また、近年の研究によって、p21が、サイクリン/CDKの非存在下でPCNA依存DNAの複製を直接阻止できること;またDNAポリメラーゼδを活性化するPCNAの能力を、PCNAと直接相互反応して阻止できることが実証されている(52)。これらの研究では、p21は、成長調節、細胞サイクル進行、DNA複製及び損傷を受けたDNAの修復をするにあたって、重要な役割をする成分である事が示されている。
mdaー6の配列分析では、mdaー6がCDK阻害剤p21である事が指摘されている(41)(図23A+B;遺伝子バンク協会、UO9579番)。分化誘導剤で処理したヒト・メラノーマ・ライブラリーからこの遺伝子をクローンすると、mda−6(p21)が、最終的に分化したヒト・メラノーマ細胞で観察される成長停止の誘導に寄与しているのではないかという事が示される。また、WAF1のように、mda−6が、ヒト・メラノーマ細胞中でメチル・メタンスルフオネートで処理された結果起こるDNA損傷に引き続いて誘導される(53)
。ヒト・メラノーマにおいて、mda−6の発現は、最終分化中に増加し、無血清培地で培養されると急激に誘導され、高飽和密度まで生育した細胞中で増加する(53)。いくつかの証拠によると、mda−6の発現がメラノーマの進行と逆相関している事が指摘されている(53)。これらの証拠としては、(A)活発に成長しているメラノサイト及び母斑中により高レベルのmda−6が存在し、放射状及び早期垂直成長相原発メラノーマ及び転移性ヒト・メラノーマには、低レベルで存在すること(53);(B)ヌードマウス中で自律腫瘍形成または腫瘍形成拡大のために選択された早期垂直成長相原発ヒト・メラノーマ細胞中で、mda−6の発現が減少していること(53、54);(C)正常染色体6を導入した後に、転移ポテンシャルの低下を示しているヒト・メラノーマ細胞中で、mda−6・mRNAのレベルが増大(53、55)していること、があげられる。これら最近研究を合わせると、p21(mda6/WAF1/CIP1/CAP20/sdi−1)が、メラノーマ成長、進行及び転移のネガテイブ・レギュレータとして機能しているのではないかということが指摘される。
p21に加えて、CDK阻害剤も確認されている(56ー59)。これらには:サイクリンD/Cdk4を特異的に阻害する16ーkDaタンパクp16Ink4(サイクリン依存キナーゼ4の阻害剤)(56);因子βで成長停止され、接触阻止された細胞を形質転換する際に誘導される27−kDa阻害性タンパク、p27Kip1(キナーゼ阻害タンパク1(57、58);およびヒト細胞中において予め形成されたCdk/サイクリン複合体のキナーゼ活性に結合し、阻害する28ーkDaタンパクp28Ick(サイクリン依存キナーゼの阻害剤)(59)がある。これらCDK阻害剤のいづれかまたは全てが、ヒト・メラノーマにおいて、分化誘導剤に仲介される生育の停止及び最終細胞分化の過程に寄与するかどうかは、今の処わかっていない。
要約および展望
培養されたヒト・メラノーマ細胞を適切な誘導剤で処理する事によってその発達の最初の段階まで再プログラムする事は現在可能である。この過程は、分化治療の重要な構成要素であり、結果として、このような癌細胞中での増殖ポテンシャルが急速に失われ、最終分化をまねく事ができる。適切な誘導剤を使用することにより、可逆的または不可逆的(最終細胞分化)な方法で、分化プログラム中の特殊な構成要素を操作する事が可能である。この可能性により、ヒト・メラノーマ細胞において特殊な遺伝子の役割、及び成長調節における生化学的経路、分化および発ガン性を体系的に解析する事ができる有力なモデル体系がもたらされる。IFN−β + MEZの組み合わせると、ヒト・メラノーマ細胞において、成長ポテンシャルを不可逆的に喪失させ、最終細胞分化を誘導する。類似の濃度で、IFN−βまたはMEZ単独では、分化過程中のある構成成分を誘導するが、成長ポテンシャルの不可逆的喪失または最終分化を誘導しない。IFN−β + MEZで処理されたヒト・メラノーマ細胞における最終分化の過程は、特殊な生化学、構造的、免疫学的、遺伝子発現の変化を伴う。
ヒト・メラノーマ細胞における最終分化に関連し、最終分化を制御する重要な遺伝子発現の変化を確認するために、出願人は、サブトラクション・ハイブリダイゼーションのプロトコールを改良して使用した。この方法で、分化および成長抑制剤で処理したヒト・メラノーマ細胞中での発現を増加を示す、メラノーマの分化に関連(mda)した一連の遺伝子が、前に確認されていたもの、新規なものも含めて確認された。mda遺伝子のひとつ、mdaー6は、サイクリン依存キナーゼ阻害剤p21(WAF1,CAP20,CIP1およびsdi−1とも呼称される)と同一であった。特殊なmda遺伝子の一団を使用した初期の研究では、特殊なmda遺伝子の発現の増加が、成長の停止および最終分化を誘導する薬剤で処理した後、のみならず、DNAに損傷を与える規定のクラスおよび化学治療剤での処理した後に生ずる事がわかる(図24)。また、ヒト・メラノーマを進行させるひとつの機能として、特殊なmda遺伝子はまた、神経外胚葉起源の腫瘍派生細胞と比べると通常細胞中で、および別の細胞分化モデル系において、異なる発現を行なう。
mda遺伝子を使用して更に研究を行なえば、将来的には、ヒト・メラノーマおよび他の腫瘍において、成長制御、腫瘍の進行、化学治療に対する反応性、および最終細胞分化を行なう決定因子を分子レベルで明らかにする事が意味のあることだという事が証明されるであろう。mda遺伝子は、特殊なDNA損傷経路を誘導する薬剤を確認追跡するための簡単な遺伝子スクリーニング、および癌細胞において最終分化を誘導する事ができる薬剤を確認するための簡単な遺伝子スクリーニングを担うものとしてもまた有用である事が証明されろであろう。本情報は、転移性メラノーマおよび他のヒト悪性腫瘍の治療方式を改良進展させるのに重要である事が証明されるであろう。
第6実験シリーズ
多段階発癌プロセスは、正常な増殖阻害の制御への耐性及び分化の異常パターンを含む、細胞の表現系における個別的変化によりしばしば特徴付けられる(Fisher & Rowley,1991;Knudson,1993;Hoffman & Libermann,1994;Jiang et al.,1994)。分化調節剤により特定の癌を治療することは、増殖を抑制し、より成熟し、分化した表現系を誘導する結果となり得る(Sachs,1978;Jimenez & Yunis,1978;Waxman et al.,1988,1991;Fisher & Rowley,1991;Lotan,1993)。細胞生理学において、それらの強力な効果の基礎となるメカニズムは現在知られていない。ヒトメラノーマの場合においては、組換え繊維芽細胞インターフェロン(IFB−β)と抗白血病化合物のメゼレイン(mezerein)(MEZ)とを組み合わせることにより、増殖能力及び末端細胞の分化が非可逆的に喪失することになる(Fisher et al.,1985;Jiang et al.,1993)。サブトラクション・ハイブリダイゼーション(subtraction hybridization)を用いて組み合わせられたこのモデル系は、増殖制御および癌細胞分化の分子的な基礎を定義するために用いられている(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)。分化誘導とサブトラクション・ハイブリダイゼーションとを合わせた研究方法を採用することにより、メラノーマ分化関連(mda)遺伝子と称する一連の分化において発現するcDNAが同定されたが、これは増殖抑制及び末端細胞の分化(terminal cell differentiation)の関数としての昂進した発現を表す(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)。
ヒトp21サイクリン依存型キナーゼ(Cdk)相互作用タンパク質CIP1(Xiong et al.,1993b;Harper et al.,1993)およびマウスCAP20相同体(Gu et al.,1993)は、サイクリンキナーゼのユビキチンインヒビターおよび細胞周期制御についての組み込み要素(integral component)である。この遺伝子は、ヒトグリア芽細胞腫多形細胞系統におけるwt p53タンパク質発現(El-Deiry et al.,1993)による誘導の後に同定されるWAFI(野生型(Wt)P53活性化因子−1)遺伝子と同一である。また、p21も、正常ヒト陰茎包皮繊維芽細胞におけるSDI1(老化細胞由来インヒビター−1)(Noda et al.,1994)による老化の誘導の結果として、またヒトメラノーマ細胞mda−6(Jiang and Fisher,1993;Jiang et al.,1994)における末端細胞の分化の過程の間に、独立してクローン化された。p21は、DNA損傷により、およびwt p53活性化の機能としての特定の細胞タイプにおけるアポトーシスの間に誘導される核局在タンパク質である(El-Deiry et al.,1993,1994)。p21が、哺乳動物細胞においてwt p53誘導増殖制御の重要な下流メディエータであろうことを、これらの研究は示唆する(El-Deiry et al.,1993,1994)。p53から独立した様式における、増殖を妨害された細胞のマイトジェンによる刺激に続いて、WAF1/CIP1が即時初期遺伝子として誘導されることを、幾分逆説的なデータは示す(Michieli et al.,1994)。出願人は、mda−6(WAF1/CIP1/SDI1)発現もまた機械的に異なった作用剤(mechanistically diverse acting agents)により誘導され、その結果、内因性p53遺伝子(Wolf and Rotter,1985)を欠損したヒト前骨髄性白血病細胞(Collins,1987)HL−60におけるマクロファージ/単球(TPAおよびVit D3)または顆粒球(RAおよびDMSO)が分化することを、現在出願人は証明しようとしている。分化耐性変異体を用いることにより(Homma et al.,1986; Mitchell et al.,1986)、HL−60細胞におけるmda−6発現の初期誘導と分化についての特定のプログラムの開始との間に直接の相互関連が見出だされる。出願人が得た結果によれば、持続されたp21発現を、wt p53タンパク質及び昂進されたレベルのp21(WAF1/CIP1/SDI1)mRNAの非存在下において維持することができ、タンパク質は、HL−60細胞においてp53とは独立した様式で増殖抑制及び分化誘導に関連することが示される。
[実験結果]
多様作用性分化誘導剤による治療によりHL−60細胞においてmda−6(WAF1/CIP1/SDI1)発現に増強が起こる
HL−60は、適切な誘導剤への暴露の後に単球系列及び顆粒球系列の両方に分化するように誘導され得る、分化受容能を持つ骨髄白血病細胞系統である(Gallagher et al.,1979;Huberman & Callaham,1979;Breitman et al.,1980;Collins 1987)。HL−60細胞をマクロファージ様系列(Lotem & Sachs,1979;Rovera et al.,1979)へとコミットするTPAでHL−60細胞を処理することにより、ノザンブロッティング(図25A−B)とRT−PCR(図26A−C)との両方により検出されるmda−6発現が誘導される。TPA処理(3nM)後に誘導される発現は暴露の2時間以内に起こり、mda−6レベルの昂進は最終分化したHL−60細胞において持続する(図25A−Bおよび27A−C)。同様に、Vit D3(400nM)もまた、HL−60細胞を単球−マクロファージ様系列(Miyaura et al.,1981;Tanaka et al.,1982)Aとコミットするものであり、これは、処理1時間以内にmda−6を誘導する。また、発現の昂進は最終分化したHL−60細胞において持続する(図26A−Bおよび27A−C)。RA(Breitman et al.,1980)またはDMSO(Collins et al.,1978)によるHL−60細胞での顆粒球様表現型の誘導は、mda−6 mRNA産生をも誘導する。RA(1μM)の場合において、mda−6の誘導は3時間以内は明白であり、発現は、RA処理後6日間昂進されて持続する(図25A−B、26A−Cおよび27A−C)。また、DMSO(1%)は、3時間までmda−6を誘導し、増大した発現は細胞が最終分化する5日目においても持続する(データなし)。ヒト骨髄白血病HL−60細胞におけるマクロファージ/単球分化経路と顆粒球分化経路との両方の誘導によりmda−6発現の誘導が起こることを、それらの結果は明示する。加えてmda−6発現は、HL−60分化の初期拘束段階(the early commitment stage)の間に誘導され、最終分化した細胞において持続する。MDA−6(WAF1/CIP1/SDI1)タンパク質の増加に伴うmda−6発現の昂進を確認するために、HL−60細胞をTPA(3nM)、DMSO(1%)またはRA(1μM)により12、24、48および72時間処理した後に35Sメチオニンを用いて4時間ラベル化し、WAF1/CIP1抗体を用いて溶解産物を免疫沈降させた(図28)。タンパク質をロードするための対照として、免疫沈降によりアクチンタンパク質のレベルを定量した。HL−60細胞においてMDA−6タンパク質は検出されなかったけれども、TPAまたはRAによる12時間処理により、免疫学的に反応性を有するMDA−6タンパク質が得られた。1%のDMSOで処理されたHL−60において、MDA−6タンパク質は48時間までに最初に明らかとなる。MDA−6タンパク質のレベルは、3種類すべてのインデューサー(誘導物質)により時間とともに(in a temporal manner)大きくなり、最高のレベルは72時間の時点で明らかとなった。最も活性の高い増殖抑制剤であるのみならず、最も活性の高いMDA−6タンパク質のインデューサー(誘導物質)は、TPAであった。MDA−6のN末端ぺプチド領域に対して調製されたポリクローナル抗体もまた、分化インデューサー処理されたHL−60細胞およびヒトメラノーマ細胞由来のMDA−6を免疫沈降させた。対照的に、野生型と突然変異体との両方のp53と反応するモノクローナル抗体(PAb421)を用いたところ、HL−60細胞並びにTPA、DMSOまたはRAで処理されたHL−60細胞から調製された35S−メチオニンでラベル化された溶解産物を免疫沈降させた後には、反応性のタンパク質は検出されなかった(データなし)。分化インデューサー処理されたHL−60細胞におけるmda−6 mRNA発現の昂進を誘導することにより、p53タンパク質の非存在下でのMDA−6タンパク質レベルの昂進が起こることの直接の証拠を、これらの結果は与える。
mda−6発現の誘導は、分化耐性HL−60変異体において変化する
TPAに誘導された増殖抑制及び分化に対する耐性を表すHL−60細胞の変異体の入手可能性は(Murao et al.,1983; Fisher et al.,1984; Anderson et al.,1985; Mitchell et al.,1986;Homma et al.,1986,1988; Tonetti et al.,1992)、これらの過程におけるmda−6の潜在的な関連性を評価するための有益な実験モデルを提供する。TPAの濃度を徐々に上昇させながら(3μMまで)HL−60細胞を連続的に増殖させることにより、TPA耐性HL−60変異体のHL−525を開発した(Homma et al.,1986; Mitchell et al.,1986)。これらの細胞を用いて、TPA、Vit D3およびRAによる短時間処理(1時間から12時間)及び長時間処理(1日から6日)の関数としてのmda−6発現の動力学を測定した。予想されたようにHL−525細胞は、TPA処理後にmda−6誘導に対して応答の抑制を明らかに示す(図26A−C)。3nMのTPAを用いて処理された親株のHL−60細胞は2時間以内にmda−6発現を示すが、一方、HL−525細胞における誘導は、12時間処理までは明白ではない(図26A−Cおよび27A−C)。HL−60親細胞のVit D3(400nm)処理により、12時間の試験時間にわたる継続的増加を行う1時間後にはmda−6発現を得る(図26A−C)。HL−525細胞において、mda−6発現は、Vit D3処理後2時間以内に観察され、400nMのVit D3への12時間暴露後の変異体細胞における発現レベルは、同様に1時間処理されたHL−60細胞において見られるよりも低い。RA(1μM)は、HL−60細胞において3時間後にmda−6発現を誘導し、mda−6発現のレベルは、12時間の試験時間にわたって増加する。対照的に、RA処理されたHL−525細胞においては、12時間目までmda−6の発現は明らかでない。mda−6の初期誘導に関して、TPA耐性HL−525細胞はHL−60細胞とは異なっていることを、それらの結果は示す。この、HL−525細胞におけるmda−6の初期誘導の欠如は、RA処理またはTPA処理の後に最も明らかであり、その一方で、Vit D3により、その他のインデューサーによるよりもより効果が劇的でないmda−6を誘導する能力が減衰される。それらの研究が分離(separate)RT−PCR反応を伴うために直接の定量は困難であるが、しかしながら、mda−6誘導の初期動力学及びmda−6誘導の最終レベルはともに、HL−60親細胞と比較すればHL−525細胞において減衰するようである。これらの観察は、同様の試料でのノザンブロッティング分析により補強される(データなし)。
RT−PCR分析を用いて、HL−60細胞およびHL−525細胞におけるmda−6の誘導において処理時間延長(12時間から6日へ)の効果を測定した(図27A−C)。
3種類のインデューサーについて、HL−60細胞におけるmda−6発現は、すべての種類の延長された処理時間の間中明らかであった。HL−525の場合においては、TPAおよびVit D3によりすべての時点でmda−6発現もまた誘導された。直接定量及びGAPDHの増幅を調整すろことに基けば、TPA処理HL−525細胞およびVit D3処理されたHL−525細胞におけるmda−6誘導のレベルは、同様に処理されたHL−60細胞におけるよりも低いように思われる(図27A−C)。しかしながら、用いられたRT−PCRアッセイが定量的でないため(同じ増幅反応において、体内のGAPDH制御を用いなかった)、定量的RT−PCRおよびノザンブロッティングを用いてのさらに進んだ研究が、この結論を確証するために必要であろう。RA処理されたHL−525変異体細胞の場合において、mda−6誘導の遅延は明白である。すなわち、処理後2日まで発現は検出されない(図27A−C)。HL−525TPA耐性変異体もまた、TPAによるのと同様にRAおよびVit D3による時問延長された処理の後に、mda−6発現に対して減殺された応答を示すであろうことをこの結果は示唆する。
3nMのTPA、1μMのRAおよび400nMのVit D3によりHL−60細胞の6日の増殖は強力に阻害され(対照と比較して、細胞数において60%から98%の減少)、その際、TPAが上記の群の中で最も有効である(Murao et al.,1983およびデータなし)ことを、以前の研究は示している。HL−525変異体において、増殖における単なる軽微な減少(5%未満)は、TPAまたはVit D3による処理の後に観察される。6日間にわたる1μMのRAによる処理により、細胞数において35%の減少が起こる。TPA耐性変異体はRAの増殖抑制効果に対して幾らかの交差耐性(cross-resistance)を表し、本研究について用いられるVit D3の投与に対して比較的屈折的(refractive)であることを、これらの結果は示す。HL−60におけるヒト血液の単球及び顆粒球と反応するOKM1反応性を分析(Foon et al.,1982)することによりTPAおよびVit D3の両方は同様に活性を有することが示され、一方、RAは幾分活性が減少することを示す(表4)。HL−60細胞においては、最大の誘導がTPAおよびVit D3では6日目において、RAでは4日目までに観察されるように、OKM1陽性細胞中での増加が全時間に渡ってすべてのインデューサーについて見られる。対照的に、TPAで処理されたHL−525細胞はOKM1陽性細胞において有意な増加を表さず、一方、RAは6日目で小さな効果を誘導し、Vit D3は4日目と6日目との両方におけるOKM1反応性の有効なインデューサーである。増殖抑制及び分化の誘導におけるVit D3の効果は、HL−525細胞内において直接的に関連を有する過程ではなく、それに対し、増殖抑制及び分化の誘導は、Vit D3処理されたHL−60親細胞における変化に関係があることをこれらの観察は示す。
mda−6は、シクコヘキシミド存在下でHL−60細胞において誘導される即時初期遺伝子である
mda−6発現の誘導が継続的なタンパク質合成を必要とするかどうかを確認するために、デノボでのタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)の効果およびTPAで誘導されたmda−6発現を定量した(図29A−B)。CHXを用いてHL−60細胞を1、3、6または10時間処理することにより、mda−6の誘導が起こる。加えて、HL−60細胞をTPAおよびCHXにより同時に処理するとき、mda−6誘導の相対的なレベルには影響がない。HL−525細胞において、CHXもまたmda−6発現を誘導するが、しかし、HL−60親細胞においてよりも誘導のレベルが低い。対照的に、HL−525細胞をCHXおよびTPAの両方により処理すると、mda−6発現は、CHX単独によるよりも、より大きな程度まで増大する(併発)(図29A−B)。mda−6はHL−60細胞における即時初期応答遺伝子であり、誘導には進行中のタンパク質合成が必要ではないことをこれらの結果は示す。CHX単独での、HL−60におけるmda−6発現を誘導する能力及びHL−525細胞におけるより低い程度での誘導する能力は、不安定なサプレッサーによりmda−6発現を制御し得ることを示唆する。HL−525の場合においては、TPAに誘導された分化における阻害は、その不安定なサプレッサーのレベルにおける変更に関連を有するであろう。
[実験の考察]
自発的にか、または特異的な誘導剤による処理の結果としてかのいずれかにより生じた、異った細胞タイプにおける最終分化は、分裂増殖の潜在能力の不可逆的な消失と関係がある(Sachs,1978;Jimenez & Yunis,1978; Waxman et al.,1988;1991;Fisher & Rowley,1991;Hoffman & Liebermann,1994)。大半の分化モデルにおいて、特定の遺伝子発現の変化並びに増殖停止および分化の誘導を媒介するタンパク質は、定義されていないままである。サブトラクション・ハイブリダイゼーションおよびヒト・メラノーマ細胞において末端細胞分化を誘導することが可能である薬剤を用いて、その発現が増殖停止および末端細胞分化と直接の関連を有するものであるmda遺伝子を同定した(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)。そのような遺伝子の1つのmda−6は、サイクリン依存型キナーゼのユビキチン・インヒビターであるp21をコードするWAF1/CIP1/CAP20/SDI1と同一である(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)。増殖におけるp21の直接の効果を、哺乳類細胞に発現性構築物をトランスフェクトさせることにより明らかにした(El-Deiry et al.,1993; Harper et al.,1993;Jiang et al.,準備中)。p21発現の誘導は、最初は野生型p53タンパク質に依存すると考えられたけれども(El-Deiry et al.,1993,1994)、最近の研究によれば、この推定が再評価されねばならないことが示唆される(Michieli et al.,1994)。これらは、p53タンパク質を欠損するp53ノックアウトマウス由来の静止期の繊維芽細胞におけるp21発現(Michieli et al.,1994)および最終分化ヒトメラノーマ細胞においてp53mRNAおよびp53タンパク質の発現を減少させるがmda−6 mRNAおよびmda−6タンパク質の発現を増大させることを一時的に刺激するマイトジェンとしての能力を有する(Jiang et al.,準備中)。本研究においてはp21(mda−6/WAF1/CIP1/CAP20/SDI1)が、HL−60細胞における増殖停止および分化誘導の関数としてのp53タンパク質の非存在下において誘導される、即時初期応答遺伝子であるということの決定的な証拠を示す。HL−60細胞においてp21mRNA合成およびp21タンパク質を刺激するものである、単球及びマクロファージの分化を生じさせるTPAとVit D3並びに顆粒球の分化を引き出すRAとDMSOを含む、種々のインデューサーの作用力が、骨髄白血病細胞における増殖停止および末端分化の重要な要素としての、この初期遺伝子型変化を定義する。
ミュータジェネシス(突然変異生成)の無い状態において単離されたHL−60細胞のTPA耐性変異体は、親株のTPA感受性HL−60細胞からそれらTPA耐性変異体を識別する多くの生化学的特徴及び細胞上の特徴を表すことを、以前の研究は示した(Murao et al.,1983;Fisher et al.,1984;Anderson et al.,1985;Homma et al.,1988;Tonetti et al.,1992)。HL−525のようなTPA耐性HL−60変異体細胞は、PKC−βの欠損および、場合によってはδ様PKC遺伝子発現を含んでいる、変化したプロテインキナーゼC(PKC)アイソザイムのプロフィールを表す(Tonetti et al.,1992)。HL−60細胞におけるTPA耐性は、原形質膜(細胞膜)および/またはサイト(細胞質)ゾルオルガネラ膜のいずれかの内膜(the inner leaflet)の流動性の減少に関係がある(Fisher et al.,1984)。HL−60とTPA耐性HL−60変異体との間の著しい生化学上の相違は、TPA処理後にサイトゾルから膜画分にPKCを移行させることが、後者の細胞にはできないことである(Homma et al.,1986)。TPA耐性HL−60変異体もまた、TPA処理後のタンパク質リン酸化パターンにおける改変(Homma et al.,1988)およびTPA処理後の即時初期遺伝子発現における応答の変化(Tonetti et al.,1992)を表す。本研究に最も直接の関連性を有するものは、HL−525変異体は、c−fos、c−junおよびjun−Bを含む即時初期遺伝子のTPA誘導にたいする応答が弱いことを表す、トネッティら(Tonetti et al)(1992)による観察である。c−fosおよびjun−Bの誘導のレベルは、2種類のTPA耐性クローンのHL−525およびHL−534におけるよりも、TPA処理されたHL−60親細胞において、およびTPA感受性HL−60クコーンのHL−205において、実質的にはより大きなものである。c−junの場合においては、HL−525細胞またはHL−534細胞におけるこの遺伝子発現変化をTPAは誘導しないが、その一方で、TPAによる処理後9時間までのHL−60細胞およびHL−205細胞においては誘導は明らかである(Tonetti et al.,1992)。
本研究において出願人は、TPA耐性変異体HL−525が、HL−60細胞と比較したときmda−6のTPA誘導についての応答が減衰を示すことを証明する(図26A−Cおよび27A−C)。HL−525細胞はさらに、Vit D3およびRAによる処理後のmda−6の誘導においてもHL−60細胞とは異なる(図26A−Cおよび27A−C)。これら両方の作用剤により、mda−6誘導の時間的なパターン及び強度はHL−525細胞中において減衰される。また、TPA耐性HL−525変異体は、Vit D3およびRAによる処理後の増殖停止について感受性の減少を示すが、その一方で、Vit D3は、OKT1反応性によりモニターすると、分化を誘導する能力をいまだに有している(表4)。それら2つの現象、すなわち、増殖停止および分化は、HL−525細胞中において分離可能な過程であることを、それらの発見は示している。TPA処理されたHL−525細胞及びRA処理されたHL−525細胞と異り、Vit D3処理された細胞は、mda−6について初期誘導を示す(2時間処理後)(図26A−C)。さらなる研究を必要とするのではあるが、Vit D3によりmda−6の初期誘導が、HL−525細胞が分化することを拘束する最初の決定要因(a primary determinant)であるだろうと推測したくなる。だがその一方で、長期処理された培養物(6日間)中における、mda−6によりコードされるp21タンパク質の蓄積されたレベルが十分でないと増殖停止は起こらない。
CHXがHL−60細胞中でmda−6を誘導し、且つ、TPAがmda−6発現を誘導する能力はCHXにより阻害されないので、このことは、mda−6が即時初期応答遺伝子であることを示す。HL−525細胞においてCHXは、HL−60細胞中においてよりもmda−6を誘導する効果が低く、それに対し、CHXとTPAとを組み合わせることにより、このTPA耐性変異体におけるmda−6の付加(superindution)が起こる(図29A−B)。これらの観察及び以前の研究は、HL−525変異体細胞が信号変換過程(signal transduction processes)について欠損株であり、場合によってはc−fos、c−jun、jun−Bおよびp21を含む即時初期応答遺伝子の誘導を妨害し、成いは減少させるPKC−βおよびδ様PKC遺伝子の欠損をを伴うかもしれないという仮説を支持する。次いで、TPA処理後の即時初期応答遺伝子のレベルが低いことにより、HL−525細胞における末端分化の開始において伴われるところの、続いて生起する細胞性遺伝子の誘導が遅れるかもしれない。HL−60分化の拘束期の間の即時初期遺伝子p21の誘導は、分化を開始する上で重要な要素であろうが、一方、p21の継続的な昂進が、HL−60細胞における増殖停止および末端分化の持続にとって必要であろう。HL−525変異体の場合においては、TPAによる処理はp21の初期誘導を誘導せず、増殖停止の持続を生じさせるのに十分に高いレベルのp21を生成させないであろう。
最近の研究は、p21の作用の形態についての新たな洞察を提供しようとしている。もともと、p21タンパク質は、サイクリン依存型キナーゼ(CDK)と増殖細胞核抗原(PCNA)とをもまた有する、ヒト2倍体繊維芽細胞中のサイクリンD複合体の4次構造(quaternary cyclin D complexes)の部分として同定された(Xiong et al.,1992)。p21およびPCNAは、正常なヒト繊維芽細胞においてはすべてのサイクリン及びCDKsについて多様な4次構造複合体を形成できるが、ウイルスにより形質転換された細胞においてはそうではないことを、その後の研究は証明した(Xiong et al.,1993a)。また、p21はすべてのサイクリン−CDK複合体酵素(cyclin-CDK enzymes)の活性に関与し、且つ阻害することも示された(Xiong et al.,1993b;Harper et al.,1993;Gu et al.,1993)。最近の実験は、p21がPCNAに直接結合して阻害し得ることを証明し、このことは、このタンパク質がDNA複製、DNA修復及び細胞周期の機構(machinery)についての決定的な調節因子であり得ることを示唆する(Waga et al.,1994)。CDK2の直接調節因子としての[CIP1,(Harper et al.,1993)]、一時的なトランスフェクションに続いて起こる過剰発現の後に幼若細胞(young cells)がS相を取り得る能力を阻害する能力を有する老化細胞(senescent cells)由来のcDNAとしての[SDI1,(Noda et al.,1994)]、且つサブトラクション・ハイブリダイゼーションを用いることによりヒト・メラノーマ細胞ライブラリーから単離された分化的発現分化関連cDNA(a differentially expressed differentiation related cDNA)としての(mda-6,Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)腫瘍サプレッサーp53によるp21の誘導に基づいて、2ハイブリッドスクリーニンク技術を用いることによるこの遺伝子の独立した単離(the independent isolation)により、細胞周期及び増殖制御におけるp21の重要性は補強された。p21のレベルは、細胞周期の特定の段階に依存して変化することが示された(Li et al.,1994)。血清飢餓から解放されたIMR90正常2倍体繊維芽細胞において、p21のレベルは、血清刺激の直後に最大となり、細胞がG1/S境界に達するときに減少し始め、S相の間に最低レベル表し、且つ細胞がS層を離脱して、G2相およびM相に入るときに再度増加する(Li et al.,1994)。p21は、G1/SおよびG2/Mの両方のチェックポイント経路に寄与し得ることを、これらの観察は示す。細胞周期の間の、p21のサイクリンおよびCDKとの相互作用は無作為ではないが、しかし、むしろ特異的なサイクリン−CDK複合体酵素が機能していると見なされるときに起こる(Li et al.,1994)。さらにその上、静止期の細胞および最終分化した細胞におけるp21のレベルの増加は、末端の分化にとって絶対に必要なことである、それらの細胞が再び細胞周期に参入することを妨げる上で決定的な役割を演じ得ることを示唆する。
要約すれば、増殖抑制および末端の分化についての異なるインデューサーが分化過程の初期においてp21を誘導する能力並びにp53陰性HL−60細胞系統における末端分化後のp21のレベルの昂進の持続性は、分化におけるこのサイクリン依存型キナーゼのインヒビターにとっての重要な役割を明らかに示す。増殖制御および分化におけるp21の関与についてのさらなる確証を、構造的に異る分化インデューサーがp21発現を誘導する能力並びにヒトメラノーマ(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994)およびヒト神経芽細胞腫(Jiang et al.,準備中)を含む追加された細胞系統における増殖停止により示す。さらにその上、分化についての特異的インデューサーがTPA耐性HL−525変異体において増殖停止及び分化を生じさせる能力が減少することもまた、維持されたp21の初期誘導の減少に関連を有する。誘導可能な発現ベクターを用いてp21の発現を強制することがHL−60細胞および他の分化受容能を有する細胞培養系において増殖能力及び最終分化における不可逆的な損失を誘導するのに十分であるかどうかをもさらに研究することは、当然であるように思われるし、現在進行中である。これらの実験は、野生型p53の非存在下及び存在下における細胞増殖と分化との両方を調節することにおけるp21の直接的な機能評価を可能とするだろう。
[材料及び方法]
細胞及び培養条件
起源としては、HL−60細胞はR.C.Gallo博士(ナショナル・キャンサー・インステイテュート(National Cancer Institute)、メリーランド州ベセスダ)により提供された(Collins et al.,1978;Huberman & Callaham,1979)。HL−525と称されるHL−60細胞は、5日間から8日間を休止期間として、濃度上昇(3μMまで上昇)中のTPAの存在下で102回の継代培養を行った後にHL−60細胞をクローン化することに由来する(Homma et al.,1986;Mitchell et al.,1986)。HL−525細胞変異体は、少なくとも50回から60回の継代培養(200から300細胞世代(cell generations))の間は、TPAによる細胞分化を誘導することについての耐性に関して、安定な表現型を示す。本研究において記載されている実験に先立って、TPAの非存在下で20回以上継代培養した。加湿されたインキュベーター内の5%CO2含有空気雰囲気中において37℃で、20%ウシ胎児血清、ペニシリン(100単位/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)(Grand Island Biological Co.,NY)を補ったRPMI1640培地を用いて、100−mm組織培養皿の中で細胞を増殖させた。1,25−(OH)2D3(Vit D3)およびTPAを最終濃度0.01%DMSO中に溶解し、全トランスレチノイン酸(RA)を0.1%DMSO含有培養培地中に溶解した。これらの濃度のDMSOは、細胞増殖または様々な分化マーカーの発現には影響しなかった。最終濃度0.1%のDMSOを含有する培養培地により、対照培養物を処理した。HL−60細胞およびHL−525細胞に対するDMSOの効果を試験することを目的として計画された実験をするために、組織培養培地に最終濃度1%でDMSOを添加した。CHX(10mg/ml)の貯蔵溶液を培養培地で調製した。最終濃度10μg/mlでCHXを添加した。mda−6遺伝子発現におけるタンパク質合成にとっての必要性を試験するために、30mlの培地の存在する150mmペトリ皿にHL−60細胞またはHL−525細胞(5×105細胞/ml)を撒き広げた。TPAを3nMにまで加えることの15分前に、最終濃度が10μg/mlとなるようにCHXを加えた。続いてRNAを分離し、分析するために、TPA添加後の様々な時点において細胞を収集した。
分化及び増殖の測定
血球計数室計数法(hemocytometer chamber counting)により細胞計数を行った。OKM1抗体(ニュージャージー州ラリタン(Raritan)、Ortho Pharmaceutical Corp.)との反応性についての免疫蛍光試験を、先行技術の記載に従って実施した(Murao et al.,1983)。
RNA単離、ノザンブロッティングおよびRT−PCR
Chirgwin et al.(1979)により記載されたCsClクッション(cushion)による遠心分離によりRNAを精製した。先行技術の記載(Reddy et al.,1991;Su et al.,1991;Jiang et al.,1992)にしたがって、グリオキサル/DMSOにより10μgのRNAを変性させ、1.0%アガロースゲル上で電気泳動し、ナイロン膜に移し、32Pラベル化mda−6プローブにハイブリッド化させ(Jiang and Fisher,1993)、次いで、上記の膜を取り去った後に32Pラベル化ラットGAPDHプローブ(Fort et al.,1985)にハイブリッド化させた。ハイブリッド化の後に、フィルターを洗浄し、オートラジオグラフィーのために暴露した(Reddy et al.,1991;Su et al.,1991;Jiang et al.,1992)。先行技術の記載(Adollahi et al.1991;Lin et al.,1994)にしたがって、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によりmda−6およびGAPDH遺伝子発現をもまた確認した。全細胞質RNAを30℃で10分間、15%グリセロール,10mMトリス(pH7.5),2.5mM MgCl2,0.1mM EDTA,80mM KCl,1mM CaCl2および1単位/ml RNasin(Promega)溶液中で、0.5単位DNase(Boehringer-Mannheim Biochemicals)/μgRNAにより処理した。フェノール−クロロホルムによりRNAを抽出し、酢酸ナトリウム/エタノールにより沈殿させ、RNAペレットをジエチルピロカーボネート処理したH2O中に再懸濁させた。1μgの全RNAを、1mMデオキシリボヌクレオチド3リン酸,4mM MgCl2,10mMトリス(pH8.3),50mM KCl,0.001%ゼラチンおよび0.2μgオリゴdTプライマーを含有する20μl中において200単位のネズミ白血病ウイルス逆転写酵素(Bethesda Research Laboratories)により逆転写した。0.2mMデオキシリボヌクレオチド3リン酸,2mM MgCl2,10mMトリス(pH8.3),50mM KClおよび0.001%ゼラチンを含有する緩衝液により、試料を100μlに希釈した。50pmolのそれぞれのプライマー、1.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer Cetus)を加え、試料を鉱物油で被覆し、95℃で5分間加熱し、95℃で2分間の変性と55℃で1分間のアニーリングと72℃で4分間のポリメライゼーション(重合)からなる条件を採用して、パーキン−エルマー・サーマル・サイクラー(Perkin-Elmer Thermal Cycler)内で20サイクルのPCRを行った。クロロホルムによる抽出の後に、20μgの生成物を電気泳動し、ナイロンフィルターにブロットし、mda−6またはGAPDHに特異的なプローブとハイブリッド化させた。mda−6についてのテンプレートプライマーはCTCCAAGTACACTAAGCACT(配列番号22)およびTAGTTCTACCTCAGGCAGCT(配列番号23)(いずれも5´から3´への方向、GenBank登録番号U09579)であり、ヒトGAPDHについてのテンプレートプライマーはCATGGCCTCCAAGGAGTAAGA(配列番号24)およびCGTCTTCACCACCATGGAGAA(いずれも5´から3´への方向、GenBank登録番号J02642)(配列番号25)であった。
免疫沈降分析
先行技術の記載に基づいて免疫沈降分析を行った(Duigou et al.,1991;、Su et al.1993)。対数的に増殖しているHL−60細胞について、処理しなかったか、または10cmプレート中においてTPA(3mM)、RA(1μM)もしくはDMSO(1%)により12、24、48または72時間処理したかのいずれかを行った。メチオニン欠損培地中で37℃で1時間、培養物をメチオニン飢餓とし、細胞を、ペレット化することにより濃縮し、100pCiの[35S](NEN;特殊(Express) 35S)を有するその同じ培地1ml中において37℃で4時間ラベル化した。ラベル化した後、細胞を、氷冷リン酸緩衝生理的食塩水で2回洗浄し、RIPC(20mMトリス塩基(pH7.5),500mM NaCl,0.05%ノニデット(Nonidet)P−40,100μg/mlのフェニルメチルスルホニルフルオライドおよび0.02%ナトリウムアジド)の添加により氷上で1時間溶解させた。溶解産物をエッペンドルフ・マイクロフュージ(Eppendorf microfuge)内で、遠心分離により4℃で10分間10,000×gで清澄化させた。4×10
6カウント分を含有する試料を、4℃で24時間振盪しながら、2μgのWAF1/CIP1(C−19)(Santa Cruz Biotechnology)ウサギポリクローナルIgG(もしくはMDA−6ペブチド誘導ウサギポリクローナルIgG)またはアクチン・モノクローナル抗体(Oncogene Sciences)とともにインキュベートした。その翌日、30μl(充填量(packed volume))のプロテインG−アガロース複合体(Oncogene Sciences)をそれぞれのチューブに加え、4℃で振盪しながらのインキュベーションをさらにもう1時間継続した。次いで、1mlの氷冷RIPC:リン酸緩衝生理的食塩水混合液(1:1,v/v)を用いて、プロテインGペレットを5回洗浄した。30μlのSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動緩衝液を該ペレットに加え、該試料を87℃で3分間加熱した。試料を10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、40Vで一夜流した。そのゲルは、サイズ計測するためのレインボウ(Rainbow)タンパク質マーカー(Amersham)を含んでいた。30分間、10%酢酸と10%メタノールとを合わせたものを用いることによりゲルを固定し、DMSO中で30分間インキュベートし、10% 2,5−ジフェニルオキサゾール含有DMSOを用いて30分間インキュベートし、冷水で3回洗浄し(それぞれ10分間)、乾燥し、フィルムに露光した。
第7実験シリーズ
ヒト繊維芽細胞インターフェロン(IFN-β)の組み換え体と抗白血病化合物、メゼレイン(mezerein、MEZ)を組み合わせると、最終分化(terminal differentiation)または完全な分化が誘導されてヒト・メラノーマ細胞での増殖能は不可逆的に失われる。完全に分化して増殖の阻止が起きているヒト・メラノーマ細胞で特異的に発現している遺伝子のcDNAを、サブトラクション・ハイブリダイゼーション法により同定した(Jiang and Fisher,1993; Jiang et al.,1994)。特異的メラノーマ分化関連(mda)cDNAであるmda-6について記述するが、この発現はメラノーマの進行度と増殖とに関して反相関関係にあった。mda-6は、分子量21キロダルトンの蛋白質(p21)(サイクリン-依存性キナーゼの阻害因子)をコードするWAF1/CIP1/SDI1と同一物であった。活発に増殖している正常なメラニン細胞、SV40で不死化したヒト・メラニン細胞、および異形母斑細胞株においては、mda-6のmRNAのレベルが上昇していた。一方、活発に増殖している放射増殖相および初期垂直増殖相にある原発性メラノーマ細胞においては、転移性ヒト・メラノーマ細胞と同様にmda-6のmRNAのレベルが減少していた。原発性および転移性メラノーマ細胞をIFN-βとMEZ とで処理すると、増殖の阻害とmda-6の発現の上昇が起きる。mda-6の発現はヒト・メラノーマ細胞が高飽和密度まで増殖したとき、もしくは無血清培地で増殖させたときにも増加する。抗p53抗体および抗p21抗体を使用することにより、増殖分化の阻止時にp53とp21の蛋白質レベルの間に反相関関係があることが分かった。[INF- + MEZ]によるHO-1ヒト・メラノーマ細胞における増殖阻止および分の阻止の誘導時には一時的に野生型のp53蛋白質レベルが減少したが、それにともなってp21のレベルが増加した。マトリゲル(Matrigel)支持によるメラノーマの増殖モデルでは、ヌードマウス内における自発型もしくは促進型腫瘍形成から分離した原発性ヒト・メラノーマ細胞の初期垂直増殖相においてmda-6の発現は減少した。転移性能を喪失した転移性ヒト・メラノーマ細胞ではヒト第6染色体の導入がおきて、mda-6のmRNAレベルが上昇する。以上をまとめると、これらの研究より、mda-6(p21)はメラノーマの増殖、進行、および転移における陰性の制御因子として機能している可能性がある。
ヒトにおける悪性メラノーマの発生は、小節型のメラノーマを例外として、進行する腫瘍細胞の一連の連続的変化からなっている(概説としては以下を参照されたい:Kerbel、1990;Herlin、1990;Clark、1991)。これらの変化には通常のメラノーマから一般的な後天性メラニン細胞性母斑(あざ)へ変換する可能性があり、更にその後、異形母斑、放射増殖相(RGP)原発性メラノーマ、垂直増殖相(VGP)メラノーマや最終的には転移型のメラノーマへと進行する。メラノーマは進行の初期においては治療が容易である。しかし現在行われている治療方法は、4.0mmよりも大きいVGPの病変部を持つ患者の転移や疾病率を抑えたりする点では、あまり効果的ではない(生存率は20%より少ない)。
潜在的に毒性の低い癌の治療法には分化療法という方法がある(Sachs,1978;Jimenez & Yunis,1987; Waxman et al.1988,1991; Fisher &Rowley,1991;Lotan,1993,;Jiang et al.,1994a)。この方法にとって必要な前提条件は、ある種の癌は分化増殖制御の通常の仕組みに可逆的な欠損があるということである。作用剤を単一でもしくは組み合わせで使うことで、腫瘍細胞の増殖を停止もしくは遅延させることが可能となり、それにともなって分化に関連した性質の発現が増加する(概説としては以下を参照されたい:Waxman et at.,1988,1991;Fisher &Rowley,1991;Lotan,1993;Jiang et al.,1994a)。
ヒト・メラノーマ細胞を[IFN-β+MEZ]で処理すると急速的且つ不可逆的に増殖能が失われ、遺伝子発現において特異的な変化が誘発され、細胞表面抗原の性質や最終的細胞分化の修飾が起きる(Fisherer et al.,1985,1986;Guarini et al.,1989,1992;Graham et al.,1991;Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1993,1994a)。[IFN-β+MEZ]にヒト・メラノーマ細胞の最終分化の誘導能があることは、メラノーマの増殖を負に制御して分化誘導をおこすこれらの作用剤による活性化の結果であるとの仮定がなされている。このモデルより二つのことが予想される。第一に、ヒト・メラノーマ細胞での増殖制御と分化とに関わる特別の遺伝子群の発現が、それらの通常のメラノーマにおけるものと比較して抑制されているということである。第二に、[IFN-β+MEZ]により、特殊なメラノーマ分化関連(mda)遺伝子群の発現促進、増殖抑制および、最終細胞分化が誘導されるということである(Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)。この可能性を確かめるために、また直接的にこの機構を実現するのに必要な遺伝子群を同定してクローニングするために、[IFN-β+MEZ]で処理したヒト・メラノーマ細胞株HO-1を使った変形サブトラクション・ハイブリダイゼーション方法を採用した。この方法により、[IFN-β+MEZ]で処理したヒト・メラノーマ細胞株HO-1において増大した発現を示す、一連のメラノーマ分化関連(mda)遺伝子群をクローニングした(Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)。
mda-6は、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp21をコードしている(Jiang et al.,1994a,l994b)。p21は多くの研究室でクローニングが行われてきたが、それはこの蛋白質の持つ以下のような性質のためである。その性質とは、サイクリン依存性キナーゼ(CIP1;サイクリン依存性キナーゼ(CDK)-相互作用性蛋白質-1)との相互作用能および阻害能、野生型p53(WAF-1; wild-type(wt)p53活性因子-1)(El-Deiry et al.,1993)による誘導、老化期における誘導(SDI1;老化細胞由来阻害因子-1)(Noda et al.,1994)、ヒト・メラノーマ細胞における増殖阻止や最終分化の機能の誘導(mda-6;メラノーマ分化関連遺伝子-6)(Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)である。当初、誘導は野生型p53に依存していると思われていたが(El-Deiry et al.,1993,1994)、最近の研究によって、p21もまた、p53に依存しないで誘導されることが示された(Michieli et al.,1994; Jianget al.,1994b; Steinman et al.,1994)。今回の研究において、出願人らは、ヒト・メラノーマ細胞株HO-1を[IFN-β+MEZ]で処理したときに誘導される増殖抑制および最終分化において、p21タンパク質のレベルが野生型p53タンパク質の減少につれて増大することを証明している。これらの結果により、メラノーマの増殖と分化の際に、p21とp53とが新たに相互作用することが判明した。更に、出願人らはmda-6の発現と、メラノーマの発生、分化、および増殖との間のそれぞれの関係についても示している。これらの結果は、p21の発現の変化と癌の進行との間の直接的関係を提供している。
実験結果増殖阻止および最終細胞分化の際の、ヒト・メラノーマ細胞内でのmda-6の発現増加
[IFN-β+MEZ]によるヒト・メラノーマ細胞の不可逆的増殖阻止と最終分化の分子的基礎を解明するために、出願人らは、非誘導のHO-1ヒト・メラノーマ、および分化誘導因子で処理したHO-1ヒト・メラノーマのcDNAライブラリーに対して、サブトラクション・ハイブリダイゼーション技術を使用した(Jiang & Fisher,1993)。この基本的手法を用いることにより、分化誘導因子([IFN-β+MEZ])で処理し、[IFN-β+MEZ]の誘導による増殖阻止および最終分化の機能としての分化発現を示している、サブトラクションHO-1ヒト・メラノーマ・ライブラリー内にmda-6のcDNAが同定された(Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)。分化誘導剤で処理したHO-1 cDNAライブラリーをスクリーニングし(Jiang & Fisher,1993)、更にcDNA末端の高速増殖法(RACE)を行い(Froman et al.,1988; Loh wt al.,1989;Ohara et al.,1989)、mda-6の完全長cDNAをクローニングした(Jiang et al.,1994a)。mda-6には以下のものと同じタンパク質読み取り枠が含まれている:WAF-1(El-Deiry et al.,1993)、CIP1(Harper et al.,1993)、CAP20(Gu et al.,1993)、SDI1(Noda et al.,1994)(図30)。これらの遺伝子群は、サイクリン依存性キナーゼの遍在性阻止剤、即ちp21をコードしている。
活発に増殖しているHO-1細胞を24時間[IFN-β+MEZ]で処理すると、mda-6のmRNAレベルが上昇し、増殖の阻止が起きる(Fisheret al.,1985; Jiang &Fisher,1993; Jiang et al.,1993)(図31-A-E)。一方、HO-1細胞をIFN-βまたはMEZのどちらか一方で処理すると、mda-6の誘導はより小さく、増殖阻止もより小さい(Fisher et al.,1985; Jiang & Fisher 1993; Jiang et al.,1993)。FO-1SH-1、LO1、WM-239およびWM-278などのその他のヒト・メラノーマ細胞株においても、[IFN-β+MEZ]で処理すると、mda-6の発現の促進および最終細胞分化の促進が起きる(図32)。SV40で形質転換したヒト・メラニン細胞(FM516-SV)の低密度培養では(Melber et al.1989)、メラノーマ細胞の低密度培養やほとんどの高密度培養に比べて、mda-6の新規合成は高い(図32および非掲載データ)。24時間[IFN-β+MEZ]で処理すると、mda-6のレベルは増大し、メラノーマの増殖は阻止され、96時間の誘導剤での処理ではヒト・メラノーマの培養は最終分化する(図32および非掲載データ)。一方、mda-6の発現は[IFN-β+MEZ]で処理したFM516-SV細胞内では24時間までには促進されるが、増殖はわずかにしか減少していない(15%以下)(図32と非掲載データ)。ヒト・メラノーマ細胞とは異なり、FM516-SV細胞を96時間[IFN-β+MEZ]で処理しても、その大部分の細胞では最終分化を示さない(非掲載データ)。
96時間[IFN-β+MEZ]で処理して、最終分化の誘導を受けたHO-1細胞や他のメラノーマ細胞ではmda-6の発現の上昇がしばらく続くのに対して、96時間IFN-βまたはMEZでのみ処理したHO-1細胞や他のメラノーマ細胞では増殖阻止から回復し、対照の細胞と同程度のmda-6の発現が起きる(図31A-Eおよび非掲載データ)。以前の研究からIFN-βだけでなく、[IFN-β+MEZ]もしくはMEZのみで24時間処理したHO-1細胞の増殖は、誘導剤を除去してその後更に72時間完全培地内で培養すると、その増殖阻止が持続されるが、IFN-βはそうではないことが分かっていた(Jianget al.,1993)。これらの実験条件下では、mda-6の発現は上記のどちらのタイプの処理においても上昇するが、特に残留する増殖阻止を最大にもたらす[IFN-β+MEZ]での誘導時にその発現が最大となる(Jiang et al.,1993)(図31A-E)。
分化誘導剤で無処理の時でさえも、HO-1細胞は、高密度にまで増殖させた時や(図31A-E)無血清下で増殖させたときに(図31A-E)、mda-6のmRNAを高レベルで発現する。mda-6のmRNAレベルの増加の誘導は迅速で、処理後15分以内に起きる(図31A-E)。mda-6の発現の上昇は、[IFN-β+MEZ]で処理したHO-1細胞を更にシクロヘキシミド存在下で(非掲載データ)培養し、次いで25μg/ml濃度のアルキル化発癌物質であるメタンスルホン酸メチルと2時間培養したとき(非掲載データ)にもおこることは明らかである。これらの観察より、ヒト・メラノーマ細胞においてはmda-6の発現と増殖抑制との間に直接的な関係があることが示唆される。
HO-1ヒト・メラノーマ細胞における増殖阻止および分化の際のp21と野生型p53のレベルとの間の相反する関係
[IFN-β+MEZ]でHO-1細胞を処理すると急速に増殖が抑えられ、この抑制は24時間以内には明かとなる(Fisher et al.,1985;Jiang et al.,1993)。これとは反対に、[IFN-β+MEZ]が単独でHO-1細胞におこす増殖の変化は小さい(Fisher et al.,1985;Jiang et al.,1993)。IFN-β単独、MEZ単独、もしくは[IFN-β+MEZ]で処理したHO-1細胞におけるp53のmRNAレベルを分析すると、処理後24時間以降では顕著な変化がなかったが、特に[IFN-β+MEZ]で96時間、最終分化したHO-1細胞を処理したときにp53の発現抑制が最大となった(Jiang et al.,準備中)。MEZはまた、96時間処理したHO-1細胞でp53のmRNAレベルの減少を誘導したが、一方IFN-βで96時間処理したHO-1細胞ではp53のmRNAの変化は起きなかった(Jiang et al.,準備中)。p53遺伝子発現の抑制のキネティクス(kinetics)は、分化誘導剤で処理したHO-1細胞でのmda-6の発現に関してのものとは反対であるので、増殖阻止と最終分化がp53とp21とのタンパク質レベルに与える影響を決定する実験を行った。
タンパク質の変性が抑えられる条件下(1%未満のSDS)で、野生型と変異型のp53タンパク質を認識するAb1単クローン抗体(PAb421;オンコジーン サイエンス社)、および変異型p53を認識するAb3単クローン抗体(Pab240;オンコジーン サイエンス社)を使って免疫沈降分析を行い、HO-1細胞には野生型p53タンパク質が含まれていることが分かった(非掲載データ)。本研究で評価した、FM-516-SV、LO-1、SH-1、FO-1など種々の細胞株においても野生型のp53タンパク質が存在していたが、一方WM239細胞においては変異型のp53が存在していた(非掲載データ)。アーティファクトを検出している可能性を否定するために、p53の状態が分かっている以下の細胞株、MeWo(配列決定より変異型p53を含んでいるということが以前判明したもの)、Saoa-2(p53-ヌル タイプ)、ヒト皮膚繊維芽細胞(野生型p53発現)、とSW480結腸癌細胞(変異型p53発現)(非掲載データ)のラベル化抽出液を使い、Ab1とAb3による免疫沈降実験を行った。現時点での結果は最近の研究の結果と一致しており(Volkennandt et al.,1991; Castresana et al.,1993; Greenblatt et al.,1994; Montano et al.,1994;Loganozo et al.,1994)、p53変異はヒト・メラノーマではまれで、ほとんどのヒト・メラノーマでは変異体p53ではなく野生型p53を含んでいることを示している。
p53とp21のタンパク質レベルの種々の誘導剤の効果を決定するために、以下の実験を行った。HO-1細胞を誘導剤を含まない培地(対照)、IFN-β(2000単位/ml)、MEZ(10ng/ml)、[IFN-β+MEZ](2000単位/ml+10ng/ml)を含む培地でそれぞれ24、48、72、96時間培養し、細胞を35S-メチオニンでラベルし、細胞溶解物を調整し、Ab1(PAb421)、p21(WAF1/CIP1、サンタ クルーズ バイオテクノロジー社;mda-6ペプチドに対して作成したウサギのポリクロナール抗体)、アクチン(オンコジーン サイエンス社)を使用して免疫沈降実験分析を行った(図33と図34)。mRNAのレベルに関して観察された様に、24時間IFN-β単独、MEZ単独、[IFN-β+MEZ]で処理したHO-1細胞では野生型p53タンパク質の顕著な変化は見られなかった(図33)。それとは反対に、p21のmRNAとタンパク質レベルのHO-1細胞内での誘導が見られたが、その大きさは[IFN-β+MEZ]、NIEZ単独、IFN-β単独の順に小さくなった(図31A-Eと図33)。mRNAレベルで見られたように、MEZ単独およびIFN-β+MEZで96時間処理したHO-1細胞では野生型p53の濃度は減少し、p21タンパク質は上昇した。一方IFN-β単独で48、72、もしくは96時間処理をしたHO-1細胞内では、野生型p53タンパク質は変化しなかったが、p21タンパク質は増加した(図34)。これらの結果は、(IFN-βで処理した細胞では)野生型p53タンパク質を増加させずにp21の誘導を起こすことができ、更に、残留している(residual)増殖停止および/またはは最終分化を起こす条件下でのp21のレベルの上昇は、HO-1メラノーマ細胞での野生型p53タンパク質の減少と相関することを示している。
mda-6の発現と、通常のメラニン細胞から転移性メラノーマへの進化との間の逆の関係
出願人らのメラノーマの異常分化モデルでの予測は、正常なメラニン細胞は特定のmda-6遺伝子群を高レベルで発現しているはずであり、原発性、転移性メラノーマ細胞では進行するにつれてより少量の発現に変わるというものである。図32に示したとおり、活発に増殖している低密度の、SV40-形質転換ヒト・メラニン細胞培養中におけるほうが、高密度に増殖しているヒト・メラノーマ細胞の培養よりもmda-6のレベルは高い。mda-6のレベルは、[IFN-β+MEZ]で処理した全てのメラノーマでそれぞれ異なったレベルで上昇している(図32)。mda-6の誘導は、[IFN-β+MEZ]で処理した対数増殖期にある、FM516-SV細胞内で起きる。しかしながら、6時間[IFN-β+MEZ]中で増殖させた後ではメラノーマ細胞のみが最終分化する(非掲載データ)。mda-6の発現レベルをメラノーマの進行との関係において評価するために、活発に増殖しているメラニン細胞(5検体)、異形母斑(1検体)、SV40-形質転換による不死化メラニン細胞培養(1検体)、RGP(1検体)、初期VGP(4検体)、原発性および転移性メラノーマ(6検体)を使って、mda-6とGAPDH(内部RNA発現の標準として)とのレベルを比較RT-PCR法で決定した(図35)。活発に増殖しているメラニン細胞と異形母斑においてmda-6の発現レベルが最も高く、原発性および転移性メラノーマにおいてmda-6の発現レベルが最も低かった。比較RT-PCR法によるmda-6の相対的発現量の定量は(GAPDH発現のとの比較で)、活発に増殖している通常のメラニン細胞におけるほうが、活発に増殖している転移性メラノーマ細胞よりも平均して4倍だけ、より多い量のmda-6を発現していることを示している(P<0.01)。これらの結果より、mda-6の発現とヒト・メラノーマの進行との間には反相関関係があることを示唆している。
マトリゲル(Matrigel)-進行性の原発性ヒト・メラノーマ細胞培養内におけるmda-6の発現の減少
同じ患者より連続して得たヒト・メラノーマ細胞株を樹立して研究するのは非常に難しいが、それは大部分のRGPや薄いCGPメラノーマを除去すると完全に治癒してしまうためである(Herlin,1990;Kerbel,1990;Clark,1991)。その結果、そのような腫瘍から、生物学的により進行した表現型を発現する遺伝的に関連した変異体を実験的に誘導することが必要となる。そのような方法の一つに、”マトリゲル(Matrigel)支持”腫瘍性増殖がある(Kobayashi et al.,1994)。例を挙げると、WM35、WM1341B、WM793として知られている、初期段階の原発性メラノーマ細胞においては、より後期の段階にあるヒト・メラノーマと比較して、ヌードマウス内における腫瘍性は全くないかほとんどない(Kobayasshi et al.,1994)。しかしながら、初期段階の細胞株を再構築済み基底膜抽出物であるマトリゲルと一緒に接種すると、ヌードマウス内で急速に腫瘍が増殖し、二次ヌードマウスに接種したときにすぐに腫瘍として根付く亜株の誘導が起きる(Kobayashi et al.,1994)。このような腫瘍性マトリゲル進行性亜株は、相対的mda-6の発現の様な種々の性質に関して、ほとんどもしくは全く腫瘍性でない親株の細胞との比較をすることができる。図36に示されたように、マトリゲル進行性亜株であるWM35、WM1341B、WM793において、RT-PCR法で決定されたmda-6のレベルは、元の親株由来の細胞株と比較して、それぞれの株で独自のレベルだけ減少している。mda-6の発現の相対的抑制度は、WM793株のシリーズにおいて最も大きく、マトリゲルの非存在下のヌードマウスにおいて新規の腫瘍性能が低いということで示されるように、これらの細胞株ではより進行した表現型を示している。これは。最小の発現抑制はマトリゲル-進行性 WM35RGP原発性メラノーマ細胞において生じる(図36)。親株、並びにマトリゲル-進行性RGPおよび、初期VGPメラノーマを[IFN-β+MEZ]で処理すると、mda-6の発現が増大し(ノーザンブロティングで決定)、増殖阻止が起きる(非掲載データ)。これらの結果は、mda-6の発現とヒト・メラノーマの進行およびメラノーマの増殖との間には相反する関係があることを更に支持する。
正常なヒト第6染色体を持つC8161細胞でのmda-6の発現の増大
腫瘍性および転移性のヒト・メラノーマ細胞であるC8161に正常なヒト第6染色体を挿入すると、腫瘍性を保持したまま転移性が消出する(Table5)(Welch et al.,1994)。これらの結果は、第6染色体には、C8161細胞をメラノーマ発生の進行度がより低い段階へと逆戻りさせるサプレッサー遺伝子が含まれていることを示唆している(Welch et al.,1994)。もしもmda-6の発現とメラノーマの進行性との間に直接的な相関関係があるのならば、活発に増殖しているC8161細胞は、活発に増殖している第6染色体を含んだC8161細胞よりも低レベルのmda-6を合成することになる。予期したとおり、第6染色体を含む3つの独立したC8161細胞株では、mda-6の発現が増大している(図37)。加えて、C8161とneo6/C8161雑種クローンを[IFN-β+MEZ]で96時間処理すると、増殖の阻止が起き(Tab1e5)、mda-6のmRNAの発現量が増える(図37)。これらの結果から、ヒト・メラノーマ細胞における増殖阻止および転移性阻止と、mda-6(p21)の増大した発現との間には直接的な関係があることが分かる。
実験結果の考察
メラノーマの発生および進行を媒介するゲノムの特異的な変化についてはまだ分かっていない(Herlyn,1990; Kerbel,1990;Clark,1991)。直接的にこの問題を解決するため、またヒト・メラノーマ細胞において増殖制御と分化に関わる遺伝子のクローニングをはじめるため、出願人らはサブトラクション・ハイブリダイゼーション法を利用した(Jiang & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)。cDNAライブラリーは未処理ヒト・メラノーマ細胞であるHO-1から作成し、このcDNAライブラリーから[IFN-β+MEZ]で処理して増殖能と最終分可能を不可逆的に失わせたHO-1細胞より得たcDNAライブラリーを差し引いた(Fisher et al.,1985;Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1993,1994a)。この方法で、ヒト・メラノーマ細胞で増殖阻止と最終分化誘導を指標とした促進発現をしているいくつかの新規のmda-6遺伝子のcDNAのクローンを同定した(Jiakng & Fisher,1993; Jiang et al.,1994a)。本研究において、出願人らはmda-6の分析を行っているが(Jiang & Fisher,1993;Jiang et al.,1994a)、そのタンパク質読み取り枠はWAF1、CIP1,SDI1遺伝子群と同じである(El-Deiry et al.,1993;Harperet al.,1993; Noda et al.,1994)。腫瘍抑制遺伝子p53の増殖抑制活性により直接制御され、更に制御そのものを自身で仲介する可能性のある下流の誘導性遺伝子群を同定するのに作られた方法でWAF1を同定した(El-Deiry et al.,1993)。WAF1をヒトの脳、肺、結腸の腫瘍細胞へ導入すると増殖阻止が起きる(El-Deiry et al.,1993)。更に、WAF1は野生型53を含む細胞でのDNAの損傷や、p53-関連G1期阻止やアポトーシスにおいて誘導される(El-Deiry et al.,1994)。改良型ツー・ハイブリッド・システムによりCIP1が同定され、サイクリン依存型キナーゼの潜在的阻害剤である21キロダルトンのタンパク質をコードしていることが分かった(Harperet al.,1993)。CIP1は正常な二倍体の繊維芽細胞の増殖阻止を誘導するが、SV40-形質転換二倍体繊維芽細胞では少ししか増殖阻止を誘導しない(Harper et al.,1993)。未熟な繊維芽細胞においてDNAの合成を阻止する遺伝子のcDNAを検出する方法としての、発現スクリーニング法により、老化期にあるヒト繊維芽細胞からSDI1を同定、クローニングした(Noda et al.,1994)。現在の研究ではmda-6(WAF1/CIP1/SDI1)の発現もまたヒト・メラノーマ細胞における増殖制御に関連していることと、その抑制された発現はメラニン細胞から転移性メラノーマへの進行時に見られる進行性の変化に貢献していることを示している。
癌は、癌の表現型を阻止する腫瘍阻止遺伝子及び癌の表現型を促進する癌遺伝子の発現が変化することで影響を受ける、進行性の疾患である(概説としては以下を参照されたい:Fisher,1984;Bishop,1991;Vogelstein & Kinzler,1992; Lane,1992)。最近の証拠によると、腫瘍抑制遺伝子p53は癌化のプロセスにおける主要な構成因子であることを示している(概説としては以下を参照されたい:Vogelstein & Kinzler,1992; Lane,1992;Greenblatt et al.,1994)。野生型p53の不活化や変異体p53の表現型の発現は数多くのヒトの癌のタイプにおいて見いだされている(概説としては以下を参照されたい:Vogelstein & Kinz1er,1992; Lane,1992; Greenblatt et al.,1994)。野生型p53による細胞増殖、腫瘍表現型発現の阻止の機構や、p53による不活化の過程もしくはこのような過程を促進する変異の変化を解明する方向で研究の努力が集中的になされてきている。この点で、WAF1/CIP1の様な、野生型p53で正に制御されるような遺伝子群を同定することは、この重要な腫瘍阻止遺伝子の作用機構を同定するのに重要であるかも知れないし、腫瘍の進行の過程に関する情報を提供するかも知れない。
進行性のヒト・メラノーマは、p53の変異の頻度が低いということや進行したときに野生型p53タンパク質が広く分布しているという点で、他のヒトの癌とは一線を画している(Vogelstein et al.,1991; Castresana et al.,1993; Greenblatt et al.,1994; Mantano et al.,1994; Lu,&Kerbel,1994)。Loganzoら(1994)の研究によれば、転移性メラノーマ細胞には、メラニン細胞に比較して2倍から20倍、より多いp53タンパク質が含まれていて、その大部分の検体は野生型p53を発現している。同様に、現在分析しているヒト・メラノーマ細胞株の大部分には野生型p53が含まれている。転移性メラノーマに、たとえより多くのp53が含まれているとしても、通常のメラニン細胞ではmda-6(p21)の発現レベルは、転移性メラノーマよりも高い(図35)(Loganzo et al.,1994)。メラノーマ細胞内で増大したp53タンパク質のレベルはその安定性が増大したためであることが分かり、すなわち、野生型か変異型のp53であるかには関係なく、半減期が2から5倍メラニン細胞よりも長くなったのである(Loganzo et al.,1994)。ヒト・メラノーマ細胞における野生型p53タンパク質の安定化は、このタンパク質がMDM2か熱ショックタンパク質のいずれかと結合することで起きるものではない(Loganzo et al.,1994)。転移性メラノーマでの野生型p53の安定化の機構は現在分かっていないが、p53に制御の欠陥がありそのためにp53の発現量が増大しても細胞周期の阻止から逃れられることを反映している可能性がある。事実、p53の発現の阻害はヒトのメラノーマでよく起こるし、この異常により腫瘍がより進行する(概説としては以下を参照されたい:Lu&Kerbel,1994)。これらの知見から、メラノーマは新規の悪性腫瘍であることを示唆しているがそれは、メラノーマが、通常よりの多量の野生型p53タンパク質が核内に極在しているときにおいてさえも、存在し更により進行した段階へと進む点においてである。しかし、転移性ヒト・メラノーマ細胞の野生型p53は機能的に不活性であるか(おそらく他のメラノーマタンパク質と結合して)、もしくは野生型p53タンパク質は正常で、すなわち目標遺伝子に結合して転写活性を上げているが、通常は野生型p53に応答する下流の遺伝子が転移性ヒト・メラノーマでは欠陥しているという可能性もある。転移性メラノーマで野生型p53がmda-6のレベルを上昇できなく、その結果として増殖制御の誘導もできないのは、直接的には進化進行しつつあるメラノーマの不安定性を増大することが示されている(Livingstone et al.,1992; Yin et al.,1992; Lu & Kerbel,1994)。
ヒト・メラノーマではmda-6は急速に誘導され(15分以内に)、血清除去後もそのレベルは上昇したままで、また最終分化の間においても上昇したままである(図31A-E)。一方、血清除去によりG0期で停止、もしくはミモシン処理によりG1期で停止した多形性神経膠芽腫細胞は野生型p53もしくはWAF1/CIP1のレベルを上昇させない(El-Deiry et al.,1994)。IL3を除去してアポトーシスを誘導すると、野生型p53を増大させないが、この場合と、変異体p53を含む細胞のDNAに損傷がある場合は、WAF1/CIP1のレベルは上昇しない(El-Deiry et al.,1994)。最近の研究は野生型p53はWAF1/CIP1(p21)の誘導にとって必ずしも必要なものではないことを示唆している。Michieliら(1994)は、野生型p53を含むか欠損している(p53タンパク質を欠損しているp53ノックアウト・マウス由来の繊維芽細胞)増殖阻止細胞を種々の増殖因子で刺激すると、WAF1/CIP1の一時的誘導が起きることを報告している。Jiangら(1994b)は、p53を発現しないヒト 前骨髄性白血病の HL-60細胞を顆粒球かマクロファージ/単球へ分化させる誘導剤で処理するとmda-6(p21)が急速に発現し、その発現は持続する。Steimanら(1994)はまた、p21が多くの細胞株、造血細胞や肝癌細胞などで分化誘導時にp53非依存的経路で活性化されることを示す証拠を提供している。これら3つの研究全てにおいては、p21がタンパク質合成が起きない状況下でも誘導される極初期反応性遺伝子である証拠を提供している。
現在の研究では、p21の発現が野生型p53のヒト・メラノーマ細胞における発現とは無関係に誘導されることを示す別の証拠を提供している。HO-1メラノーマ細胞において増殖阻止と最終分化誘導時に一過性のp53タンパク質の減少がそれに対応したp21タンパク質の増加をともなって起きるということは興味深いが幾分逆説的でもある(図34)。多くの細胞培養モデル系ではp53のmRNAは増殖の阻止と分化の誘導と共に減少する(Shen et al.,1983;Mercer et al.,1984; Dony et al.,1985; Shobat et al.,1987; Khochbin et al.,1988; Richon et al.,1989; Hays et al.,1991)。野生型p53には配列特異的DNA結合活性、配列特異的転写活性化能があり、多くの種類の細胞株で増殖阻止を誘導するが、一方これらの性質はp53タンパタ質の種々の変異体において失われている(Ron,1994; Pietenpol et al.,1994)。高レベルp53存在下や野生型p53の抑制後のp21のレベルの上昇時においてさえも、活発に増殖しているメラノーマではmda-6(p21)のレベルが減少することは、高レベルのp21の発現がヒト・メラノーマにおける野生型のp53の高レベル発現と両立していないことを示唆している。このようなことが起きるのは、野生型p53は直接的もしくは間接的にp21の発現を修飾する下流の遺伝子を誘導しているためである。HO-1細胞での[IFN-β+MEZ]による増殖阻止と最終分化プログラムの誘導は、野生型p53の発現の阻止を仲介する遺伝型の変化を起こす可能性があり、その結果としてp21発現の下流阻害因子が存在しないことになるかも知れない。そのかわりとして、転移性メラノーマに存在する野生型p53タンパク質は機能的に不活性であるか、野生型p53で修飾された下流経路にはメラノーマ細胞を進行させるのにとって異常があるかも知れない。この点に関して、野生型p53とp21のタンパク質レベルの間にある相反する相関関係は、MEZ単独や[IFN-β+MEZ]で誘導した増殖阻止と最終分化と関連しているが機能的には相同ではないかも知れない。
本研究では出願人らはヒト・メラノーマにおけるmda-6の影響を直接的にはアッセイしていない。しかし、第6染色体を含むC8161細胞を使った実験で、染色体の6p21.2に存在するmda-6(WAF1/CIP1/SDI1)は生体内でヒト・メラノーマにおける腫瘍増殖や転移性の進行を直接調節するという証拠を提供している。正常な第6染色体をヒト・メラノーマ細胞株、UACC-903とUACC-091に導入すると、腫瘍性が抑制されるが(Trent et al.,1990; Milikin et al.,1991)、一方、腫瘍性および転移性ヒト・メラノーマ細胞株のC8161に正常第6染色体をミクロセル導入すると転移性の阻止が起きるが腫瘍性能は保持される(Welch et al.,1994)。C8161のミクロセル・ハイブリッド(neo6/C8161)は腫瘍潜伏において小さいながらも顕著な上昇を示し、また生体内では親株のC8161細胞よりもゆっくりとした腫瘍の増殖率をもつ(Welch et al.,1994)。しかし、3つの独立したneo/C8161ハイブリッドのうちどれかをマウスに接種して更に30週間余分に経過させても、転移性の病変部は現れなかった(Welch et al.,1994)。本研究では、出願人らはC8161細胞には3つのneo/C8161ハイブリッドよりも低レベルのmda-6が含まれていることを証明している。[IFN-β+MEZ]で処理すると、親株および3つのneo/C8161ハイブリッド株全てにおいてmda-6の発現が促進し、増殖阻止もより大きくなる。これらの結果は、mda-6がヒト・メラノーマ細胞における増殖制御と転移性進行の仲介因子である可能性を強く示唆するものである。mda-6は現在、pMAMneoベクタにクローニングされているため、挿入遺伝子をテクサメタソン(DEX)で誘導発現でき、ネオマイシン抵抗性遺伝子をもつため、mda-6の発現がない条件下でもG418によるクローン選択が可能である(Jiang et al.,準備中)。この遺伝子を電気穿孔法によりC8161細胞へ導入すると、pMAMneo-mda-6を含んだG418抵抗性細胞が分離できる。DEX存在下で増殖させると、mda-6の発現が誘導され、増殖阻止が起きるが、一方DEXが存在しないと増殖阻止もmda-6の発現も起きない(Jiang et al.,準備中)。これら遺伝的に修飾したC8161細胞や誘導可能なmda-6のアンチセンス遺伝子をもったメラノーマ細胞は、mda-6の発現がメラノーマの増殖、分化と腫瘍の進行に与える影響を直接的に決定するのに便利となるであろう。
最近の研究により、mda-6(WAF1/CIP1/SDI1)のコードするタンパク質、p21が、細胞周期調節、細胞増殖、DNA修復、DNA複製といった多くの重要な細胞内プロセスに貢献する主要な因子であることが分かっている(Xiaon et al.,1992,1993a,1993b; Gu et al.,1993; Harper et al.,1993; El-Deiry et al.,1993,1994; Waga et al.,1994; Li et al.,1994)。p21はサイクリン依存性キナーゼ全ての遍在性阻害因子である(Xiong et al.,1993b)。p21のレベルは、細胞周期でどの段階にあるかということと、細胞周期制御において機能する酵素である特別なサイクリン-CDK酵素とp21とのあいだの結合によりきまる。本研究において、出願人らはmda-6(WAF1/CIP1/SDI1)の発現はヒト・メラノーマ細胞の増殖、分化、進行と相反する相関関係にあることを論証している。これらの結果は、mda-6がコードしているp21は、ヒトメラノーマ細胞における細胞分化と悪性化へ影響することができることを示唆している。増殖中のヒト・メラノーマ細胞と母斑細胞においての方が、RGP、VGPや、転移性メラノーマにおいてよりもmda-6の相対的レベルは高く、これはこの抑制タンパク質の発現が腫瘍の進行に対して負に働くという可能性を示唆している。この可能性は、mda-6の発現がマトリゲル(Matrigel)-進行性初期VGPメラノーマで減少しているということと、mda-6の発現が第6染色体で転移性が抑制されたC8161メラノーマ細胞で増加しているということから支持される。mda-6の発現とメラノーマの増殖、分化との間の直接的関係はヒト・メラノーマ細胞における[IFN-β+MEZ]による増殖阻止の誘導能によって示されている。明かに、増加したmda-6のレベルはヒト・メラノーマ細胞により許容され、増殖停止が結果的に起きるか、増殖停止と関連することとなる。しかし、最終分化したヒト・メラノーマ細胞ではp21のレベルが上昇したままでいることは、最終分化が起きるためには必要な、細胞周期への再突入を防ぐのに必要であるかもしれない。この点で、増殖能と最終分化能に関して不可逆的な消出を直接的に誘導する方法で、転移性ヒト・メラノーマ細胞でmda-6(WAF1/CIP1/SDI1)の発現を増大させる因子を同定することは、この腫瘍の治療的観点からは有益であるかも知れない。
実験材料と実験方法
細胞株と培養条件
HO-1メラノーマ細胞は49歳女性のメラノーマ患者より得たメラノーマ状のメラノーマより樹立し、125代から160代の間の継代期間中に使用した(Fisher et al.,1985,1986; Giovanella et al.,1976)。FM516-SVはSV40の大型T抗原遺伝子で不死化した正常なヒト・メラニン細胞である(Melber et al.,1989)。正常なヒト・メラニン細胞である、FM713、FM723、FM741、FM841、FM793および、異形母斑である、N3153を以前に記述された方法で患者より樹立した(Mancianti et al.,1988)。WM35はRGP初期ヒトメラノーマとWM278とから、WM1341B、WM793、WM902Bは初期VGP原発性ヒト・メラノーマから得た(Herlyn et al.,1990;Herelyn et al.,1989)。WM マトリゲル(Matrigel)-進行性のWM35である、WM1341B、およびWM793細胞はPl-N1およびP2-N1と呼び、それぞれの細胞をマトリゲル(Matrigel)と一緒にヌードマウスに接種して第1、第2継代したもので、これは以前記述した方法により作成した(MacDougall et al.,1993; Kobayashi et al.,1994)。C8161は高転移性メラニン欠乏性ヒト・メラノーマで腹壁転移より得た(Welch et al.,1991)。正常なヒト第6染色体をもつC8161株は、C8161/6.1(neo6/C8161.1)、C8161/6.2(neo6/C8161.2)とC8161/6.3(neo6/C8161.3)と呼び、以前記述されたようにして作成した(Welch et al.,1994)。転移性メラノーマ患者より分離したそのほかのヒト・メラノーマ細胞は、FO-1、LO-1、SH-1、WM239、WM239Aであった(Giovanella et al.,1976; Fisher et al.,1985; Herlyn et al.,1989;Herlyn,1990)。種々の細胞を増殖するための培養液と培養条件はそれぞれ上記の文献中の方法によった。
細胞増殖と最終細胞分化アッセイ
細胞増殖と最終分化アッセイは以前記述された方法で行った(Fisher et al.,1985,1986; Jiang et al.,1993)。細胞生存度維持のまま増殖能が不可逆的に失われることをモニターすることで、[IFN-β+MEZ]存在化で96時間増殖させた後の最終分化誘導を調べた(Fisher et al.,1985,1986; Jiang et al.,1993)。
簡潔にいうと、細胞を種々の誘導剤存在下で96時間増殖させ、次に誘導剤を除去し、無血清培地で3回細胞を洗浄した後、誘導剤非添加培地を加えた。3日おきに誘導剤非添加培地を交換して更に3、6、10日間培養を続けた。アッセイ開始後、4、7、10、14日後に細胞数を決定した。最終分化は誘導剤非添加条件下で7日から14日間培養したときに、細胞生存度が減少しないながらも細胞数が増加しないことを指標として調べた。
サブトラックション・ハイブリダイゼーション、RACE、および配列分析
サブトラクション・ハイブリダイゼーション法によるmda-6の同定とクローニングは以前記述された方法によった(Jiang & Fisher,1993)。分化誘導剤処理済みcDNAライブラリーのスクリーニング(Jiang & Fisher,1993)と、以前記述した高速cDNA末端増幅法(RACE)(Frohman et al.,1988; Loh et al.,1989;Ohara et al.,1989)により、mda-6の全長cDNAを分離した。配列分析は以前に記述された方法によった(Sanger et al.,1977;Su et al.,1993)。mda-6の全配列は、2149ヌクレオチドからなり(GenBankのU09579)、ヌクレオチド配列の95番目のヌクレオチドから始まる最長のタンパク質読み取り枠は、164アミノ酸からなるポリペプチドをコードしている。GCG/TFASTAプログラムを使って現在のタンパク質データベースと比較すると、予想したmda-6の配列はWAF1/CIP1/SDI1の配列と同等である(El-Deiry et al.,1993; Harper et al.,1993; Noda et al.,1994)。
RNA分離、ノーザン・ブロッティング、とRT-PCR法
全細胞質RNAを分離して、ノーザン・ブロッティング・ハイブリダイゼーションを以前記載の方法で行った(Reddyet al.,1991; Su et al.,1991; Jiang et al.,1992)。10μgのRNAをグリオキサール/DMSOで変性して1.0%のアガロースゲルで電気泳動し、ナイロン膜にトランスファーし、32Pでラベルしたp53プローブにハイブリダイズした(Baker et al.,1990)。以前に記載の方法で、ナイロン膜を短冊状に切断し、32pでラベルしたmda-6プローブにハイブリダイズし、更に短冊状に切断し32PでラベルしたGAPDHプローブ(Fort et al.,1985)にハイブリダイズした(Reddy et al.,1991; Su et al.,1991; Jiang et al.,1992)。ハイブリダイゼーション後、膜を洗浄してオートラジオグラフィーにかけた(Reddy et al.,1991; Su et al.,1991;Jiang et al.,1992)。mda-6とGDPDHの遺伝子発現は逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により決定した(Adollahi et al.,1991; Lin et al.,1994; Jiang et al.,1994b)。全細胞質RNAは1μgのRNA当り、0.5単位のDNアーゼ(Boehringer-Manheim Biochemicals)を使って15%グリセロール、10mMトリス(pH7.5)、2.5mM MgCl2、0.1mM EDTA、80mM KCl 1mM CaCl2 1単位/ml RNasin(Promega)中で、30℃、10分間処理した。RNAはフェノール/クロロホルム抽出し、酢酸ナトリウム/エタノールで沈殿させ、そのRNA沈殿をジエチルピロカルボネート処理済みの水に再懸濁した。全RNAのうち1μgを、1 mM デオキシリボヌクレオチド三リン酸、4 mM MgCl2、10mM トリス(pH 8.3)、50 mM KCl、0.001% ゲラチン、0.2μgオリゴdTプライマーを含む20μlの200単位マウス白血病ウイルス由来の逆転写酵素(Bethesda Research Laboratories)を使い、逆転写させた。検体は0.2 mM デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2 mM MgCl2、10 mM トリス(pH 8.3)、50 mM KCl、0.001% ゲラチンを含む緩衝液で100μlに調節した。それぞれのプライマーを50pmolと、1.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer Cetus)を加え、検体をミネラルオーイルで覆い、95℃で5分間加熱し、その後Perkin-Elmerのサーマル・サイクラーを使って、94℃での変性1分間、55℃でのアニール2分間、72℃での重合化反応3分間のPCRを25サイクル行った。クロロフォルム抽出の後、20μlの生成物を電気泳動にかけ、ナイロン膜にトランスファー後、mda-6かGAPDH特異的プローブでハイブリダイゼーションした。mda-6プライマーは5’から3’の方向にCTCCAAGTACACTAAGCACT(配列番号26)とTAGTTCTACCTCAGGCAGCT(配列番号27)の配列をもつ(ヌクレオチドの1527から1546に対応)(GenBankアクセス番号U09579)。GAPDHプライマーは5’から3’の方向にTCTTACTCCTTGGAGGCCATG(配列番号28)とCGTCTTCACCACCACCATGGAGAA(配列番号29)の配列をもつ(ヌクレオチドの1070から1053に対応)(Tokunaga et al.,1987)。
免疫沈降分析
免疫沈降分析は以前に記載された方法により行った(Duigou et al.,1991; Su et al.,1993; Jiang et al.,1994b)。10cmのプレートを使い、対数増殖期にあるHO-1細胞を無処理のままか、IFN-β(2000単位/ml)単独、MEZ(10 ng/ml)単独、もしくは[IFN-β+MEZ](2000単位/ml+10 ng/ml)で24、48、72、もしくは96時間処理した。培養液をメチオニン欠損培養液に替えて37℃で1時間培養し、メチオニンの欠乏を起こさせ、その次に遠心で細胞を回収し、100μCiの[
35S](NEN; エキスプレス
35S)を含んだ1 mlの同様な培養液で37℃、1時間(p53場合)もしくは4時間(P21とアクチンの場合)ラベル化した。ラベル後、細胞を氷で冷却したリン酸緩衝塩液で二回洗浄し、RIPC(20 mM Tris-base,pH 7.5,500mM NaCl,0.05% Nonidet P-40,100μg/ml フェニルメチルスルフォニルフルオリド,0.02% アジ化ナトリウム)を氷上で加えて1時間で溶解した。溶解物はエッペンドルフマイクロチューブを使い10,000Xg、4℃で10分間遠心した。4X10
6カウントのHO-1検体を2μgの、p53単クローン抗体(Ab1; PAb 421)(Oncogene Sciences)、WAF1/CIP1(C-19)(Santa Cruz Biotechnology)(もしくはMDA-6由来)ラビット・ポリクロナルIgGか、アクチン単クローン抗体(Oncogene Sciences)と4℃で24時間震盪培養した。ラベル化溶解物はFO-1、LO-1、SH-1、WM239、FM516-SV、SW480、MeWo、ヒト 皮膚繊維芽細胞、Saos-2細胞を使っても作成した。4X10
6カウントを含む検体を2μgのp53単クローン抗体Ab1(PAb 421)かAb3(PAb240)(Oncogene Sciences)と培養した。翌日、30μl(充填容量)のGタンパク質-アガロースをそれそれの管に加え、4℃で更に1時間震盪培養した。Gタンパク質の沈殿を氷冷した1mlのRIPC:リン酸緩衝塩液(1:1、V/V)で5回洗浄した。30μlのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動用緩衝液を上記洗浄済み沈殿に加え、87℃で3分間加熱した。検体を10%ポリアクリルアミドゲルにのせ、一晩40Vで泳動した。ゲルにはレインボータンパク質標識(Amersham)をサイズ推定の為に加えておいた。ゲルを10%酢酸+10メタノールで30分間固定し、DMSOで30分間培養し、DMSO中10%2,5-ジフェニルオクサゾールで30分間培養し、冷却水で三回(10分間ずつ)洗浄後乾燥してフィルムに露出した。
第8実験シリーズ
mda-7の性質
mda-7は新規cDNAである(すでにDNAデータベースに報告済みの遺伝子の配列とは相同性がない)。全長cDNAは1718ntで、275ntから895ntまでにタンパク質読み取り枠があり、それは206アミノ酸からなり、膜領域と糖付加の可能な部位を3つ持ったタンパク質をコードしている。
HO-1ヒト・メラノーマ細胞での発現
HO-1細胞を組み換えヒト繊維芽細胞インタフェロン(IFN-β)(2000単位/ml)、MEZ(10 ng/ml)で24時間処理したときの発現増加と[IFN-β+NIEZ](2000単位/ml+10 ng/ml)で処理したときの最大の発現増加 IFN-β(2000単位/ml)、MEZ(10 ng/ml)、MPA(3μM)、IFN-β +IFN-γ(1000 単位/ml+1000 単位/ml)、[IFN-β+MEZ](2000単位/ml+10 ng/ml)、MPA+MEZ(3μM+10 ng/ml)、RA+ MEZ(2.5μM+10ng/ml)でHO-1細胞を96時間処理すると、mda-7の発現が増加した。最大の誘導は[IFN-β+MEZ]による処理時でその次はMPA+MEZ、IFN-β+IFN-γによる処理の順となった。mda-7の誘導に関する相対的レベルは、種々の増殖分化修飾剤で処理したHO-1細胞の増殖阻止と相関関係があった。最大の発現誘導は、[IFN-β+MEZ]で不可逆に増殖能を失わせて最終分化を起こした細胞で起きた。
そのほかのヒト・メラノーマ細胞内での発現
mda-7の発現は、[IFN-β+MEZ]で24時間処理したHO-1、C8161、8161/6.3(正常ヒト第6染色体が挿入された、C8161ヒト・メラノーマ細胞株:この細胞はヌードマウスにおいて腫瘍性を持つが、親株のC8161細胞とは異なり、非転移性である)、FO-1、LO-1、SH-1、WM278、WM239ヒト・メラノーマ細胞において増加する。この遺伝子は不死化したヒト・メラノーマFM5169(SV40で形質転換)細胞内で構成発現している。しかし、[IFN-β+MEZ]で24時間処理した後はFM5169内では発現の増加は見られない。
mda-7の発現量と誘導性発現量は[IFN-β+MEZ]で処理したヒト・メラノーマ細胞全てで異なる。これとは対照的に、メラニン細胞ではこの遺伝子は発現しているが、[IFN-β+MEZ]で24時間処理した後では発現量の増加は変化しない。
ヒト神経芽腫での発現
mda-7はLANヒト神経芽腫細胞でにおいては発現していないことはRT-PCR法で決定される。mda-7の発現はRAで5日間処理しても誘導されないが、フェニル酢酸か、フェニル酢酸とRAとの組み合わせで5日間培養すると誘導される。mda-7はヒト神経芽腫細胞で増殖阻止と分化誘導の機能として誘導される。mda-7の発現はヒト神経芽腫における増殖阻止と最終分化に貢献する可能性がある。
ヒト前骨髄球白血病細胞(HL-60)と組織球リンパ腫(U-937)における発現
mda-7の発現は、RT-PCR法でHL-60やU-937においては検出できない。HL-60やU-937におけるmda-7の発現は、増殖阻止および分化誘導剤であるTPAによる処理で誘導できる。mda-7の発現は、TPAで2日間、およびRAで4日間処理して最終分化したHL -60において持続する。
前骨髄球白血病細胞や組織球リンパ腫細胞における顆粒球および亜顆粒球(単球/マクロファージ)系の分化にそって、mda-7は誘導される。mda-7の発現は造血細胞の増殖阻止や最終分化に貢献しているかも知れない。
老化期のヒトの細胞での発現
mda-7の発現は、RT-PCR法で増殖能をもつ細胞(即ち、非老化細胞である)において検出できない。IMR90を十分に培養して老化期に近付けると、mda-7の発現は検出できる。
mda-7の遺伝子発現はヒトの細胞において増殖能と反相関関係にある。mda-7の発現は老化細胞中で活性化している。この遺伝子は細胞の増殖能に貢献している可能性があり、遺伝的標識および/または細胞老化のスイッチとしての機能をするのかもしれない。
正常な小脳、中枢神経系腫瘍(多形性神経膠芽腫)(GBM)、正常皮膚繊維芽細胞株における発現
mda-7は正常な小脳、GBMや、正常皮膚繊維芽細胞内において新規の発現を行っていない。[IFN-β+MEZ]で正常な小脳、GBMや、正常皮膚繊維芽細胞を24時間処理すると、mda-7の発現は起きる。
mda-7は新規合成されないが、ヒト小脳、GBMや、正常皮膚繊維芽細胞において[IFN-β+MEZ]による誘導には感受性がある。
結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)と、前立腺癌(LNCaP)における発現
mda-7は結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)や、前立腺癌(LNCaP)において新規合成がなされる。結腸直腸癌(SW613)、子宮内膜腺癌(HTB113)と、前立腺癌(LNCaP)を[IFN-β+MEZ]で24時間処理しても、mda-7は誘導されない。
この遺伝子は[IFN-β+NIEZ]で処理したヒトの癌細胞で新規合成も発現誘導もおきない。
HO-1細胞での発現に与える種々の処理方法の効果
IFN-β(2000単位/ml; 24時間)、MEZ(10 ng/ml;24時間)、[IFN-β+MEZ](2000単位/ml+10 ng/ml;24時間)、IFN-α+MEZ(2000単位/ml+10 ng/ml;24および96時間)、アドリアマイシン(0.1ng/ml;24時間)、ビンクリスチン(0.1ng/ml;24時間)、とUV(10ジュール/mm2、アッセイは24時間後)で処理するとHO-1細胞内でのmda-7の発現は増加する。MPA(2μM)、IFN-β+IFN-γ(1000単位/ml+1000単位/ml)、MPA+MEZ(3μM+10ng/ml)、RA+MEZ(2.5μM+10 ng/ml)で96時間処理してもmda-7の発現が増加する。
[IFN-β+MEZ]で24時間もしくは96時間処理したHO-1細胞で得られる最も高い発現。
IFN-α(2000単位/ml; 24時間)、IFN-γ(2000単位/ml; 24時間)、フェニル酪酸(phenyl butyrate)(4 mM PB; 24時間、4日もしくは7日)、シス-白金(0.1μg/ml ;24時間)、ガンマ線照射(3グレイで処理し、24時間後アッセイ)、アクチノマイシンD(5μg/ml 2時間; 24時間後アッセイ)、TNF-α(100単位/ml;24時間)、もしくはVP-16(5μg/ml; 24時間)で処理したHO-1細胞内ではmda-7の発現誘導は起きない。
全般に関する結論
mda-7は増殖分化で制御され、老化と関連した新規の遺伝子で、以下に述べる性質を兼ねている:
1)最終分化時([IFN-β+MEZ]による96時間の処理)や、種々の増殖修飾剤や分化誘導剤で96時間処理したときには誘導される。
2)[IFN-β+MEZ]で24時間処理すると、調べたヒト・メラノーマにおいては発現が誘導されるが、SV40で不死化したヒト・メラニン細胞では誘導されない。
3)増殖期のヒト神経芽腫細胞では発現されないが、増殖阻止や最終分化誘導を行うと誘導される。
4)ヒト前骨髄球白血病(HL-60)やヒト組織球リンパ腫(U-937)では発現されないが、増殖停止や最終分化を誘導すると誘導される。
5)活発に増殖しているヒトの細胞では発現されていないが、細胞老化時には誘導される。
6)正常な小脳、GBM、正常な皮膚繊維芽細胞では新規発現されないが、[IFN-β+MEZ]で24時間処理すると容易に誘導がかかる。
7)結腸、子宮内膜、前立腺癌では発現も発現誘導もおきない。
8)アドリアマイシン、ビンクリスチン、UV照射で処理したHO-1細胞では、発現の増加を誘導する。
mda-7は増殖、最終分化および老化を制御する新規の遺伝子であり、全てのメラノーマ(メラニン細胞以外の)、正常皮膚繊維芽細胞、[IFN-β+MEZ]で処理した正常な小脳とGBM細胞で、その発現が増大している。mda-7は新規合成されないが、ヒト神経芽腫、白血病、組織球リンパ腫の細胞の増殖停止時や分化時に誘導される。増殖している非老化細胞ではmda-7は発現されないが、老化細胞においては発現される。対照的に、mda-7は種々の癌では発現も誘導もおきない。mda-7は以下の点で便利である:
1)特別な組織の分化系統における標識になりえる(即ち表皮ケラチン細胞からメラノーマへの分化)(診断的応用)。
2)([IFN-β+MEZ]で誘導される)繊維芽細胞と([IFN-β+MEZ]で誘導されない)癌の見分け(診断的応用)に使える。
3)増殖能を失って老化した細胞を同定するのに使える。
4)癌の分化療法時におきる癌細胞分化誘導をモニターするのに使える。
5)ヒト・メラノーマ、神経芽腫、白血病、リンパ腫を使った、分化誘導性、化学療法性薬剤を同定するためのスクリーニングで、増殖阻止や分化過程の種々の段階(最終分化を含む)を誘導する新規の薬剤を同定するのに使える。
6)メラニン細胞やおそらく母斑と、初期および後期段階のメラノーマ細胞とを区別するのに使える(診断的応用)。
この遺伝子は(適当なベクターを使ってセンス方向に発現すると)、ヒト・メラノーマの増殖を阻止したり、最終分化を誘導したりするのに使える可能性がある(治療的応用)。この遺伝子をアンチセンスの方向で使って骨髄細胞へ導入すると、化学療法や放射線による損傷を防げる可能性がある(治療的応用)。